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博士(工学)檜佐彰一 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)檜佐彰一 学位論文題名

大型蒸気およびガスタービンに生じる      軸 振 動 現 象 に 関 す る 研 究

学位論文内容の要旨

  工ネルギー変換機器としての蒸気夕一ビン,ガスタービン等のターボ機械は主要な エネルギー変換機として長い歴史を有しており,今日においても我々の社会生活を支 える基幹動カとして主要な役割を果している。現在,これらの夕一ボ機械は機器単体 及び複合サイクル(コンバインドサイクル)とレての発電プラントの大容量化と共に,

省資源,省エネルギーの観点から,高効率で稼働率に優れた高い信頼性と柔軟な運用 特性を要求されている。これらを実現するうえで工学上の多くの研究開発成果が貢献 してきているが,このなかで大型夕一ボ機械,すなわち大型回転軸系の軸振動現象を 精度良<把握レ,機器設計に生かすことは機器を安全かつ効率良く運用するうえで最 も重要なことのーつである。

  従来,筆者が知る範囲で,当分野での研究を大別すると,(1)回転軸の固有値解 析(一般には軸の危険速度として扱われる),(2)回転軸に残存する不釣り合いに よる軸の不釣り合い振動の予測,不釣り合いの位置とその量の評価法,(3)回転軸 に生じる不安定振動現象の解明等が挙げられる。これらの諸振動事象は対象とする機 器の運転条件,回転軸の形状,軸受を含む支持系の特性により影響をうけるので,個々 の機器を対象とレた振動事象の解明とその対策に関する研究が必要となる。特に回転 軸の軸振動問題を解くうえで,解析上の境界条件としての軸受油膜の静特性,動特性,

軸受支持特性の精度の高い把握とその軸振動に及ぼす影響評価が重要となる。また,

作動流体の高温高圧化によるェネルギーポテンシャルの上昇により,新たに流体の励 振カによる振動現象が経験されており,その早急な解明と効果的な対策が高効率な原 動機の実用化に重要となってきている。

  本研究はこの様な状況に鑑み,従来の研究成果を踏まえつつ大型夕ーボ機械のなか でも代表的な蒸気夕ービン,ガスタービンの各発電システムにおける回転軸系の軸振 動 現 象の定 量的 把握 と新 たな振 動現 象の 解明 ,その 対策 に関 するも ので ある 。   対象とする軸系は横置きに配置された回転軸とそれを支える支持系から構成されて いる。この支持系は軸受台,軸受本体,軸受油膜から成り,その静的,動的特性はこ の回転軸系の振動に非常に大きな影響を与えることが従来の研究,実機での運用経験 より明らかにされてきている。特に軸受油膜の静的,動的特性は当振動現象を解明す るうえでの基本となる特性である。この特性は軸受形状,使用条件等で大きく異なる。

この様な祝点から軸受の特性,特に大型夕ーボ機器に適用されている大口径軸受の実 サイズ,実使用条件下での特性解明が必要となる。更にこの様な基本的な事項の解明 に加え,蒸気等の流体カによる新たな軸振動現象の解明は機器性能,機器信頼性を包

(2)

括的に考慮した合理的な設計を行う上での必要事項となる。

  第1章,第2章では大型夕ーボ機械である蒸気夕ービン,ガスタービンの回転機械 としての特徴とそこに発生する種々の軸振動現象,そのシミュレーション技術,評 価法について述べている。ここで,境界条件としての軸受油膜特性の重要性につい て述べると共に新たな振動現象とレての蒸気カによる励振振動,ガスタービンのよ うな柔構造回転体での多自由度振動系の特徴を述べた。

  第3章では軸振動解析上の基本境界条件たるヰ0|受油膜の静特性,動特性の実験的研 究成果について述べたものである。本試験の特徴は実サイズ,実機使用条件下で,動 特性に影響を及ぼす油膜圧力分布,温度分布を静特性として把握すると共に加振機に よる油膜のバネ,減衰定数を求める動特性試験の実施にある。設計製作した試験装置 は試験機能として世界有数の機能を有レており,供試軸受として大型夕ービン発電機 に適用される大口径の楕円型軸受とパッド型軸受を用いている。本章では試験装置の 特徴,試験方法,計測システム及び試験により得られた各軸受の静特性,勁特性とそ の実機適用結果について述べた。

  第4章では蒸気カによって誘発される軸系の不安定現象を静止部と回転体との偏心 による狭間隙分布でのトルクアンバランスと回転体の円周方向に生じる非対称圧力分 布によるものとレ,シール用ラビリンスを用いた実験的解析について述べたものであ る。本試験解析結果並びに構築した狭間隙部の非圧縮流れ解析モデル結果より軸系の 安定解析結果を行うことで狭間隙部内のスワール流れが不安定化カとして作用するこ とについて明らかにしている。

  第5章 では 第4章で 得ら れた 狭間隙 部流 れに ついて より一般化した数値解析モデ ルの構築を行い,流体の圧縮性の影響と不安定化カの発生形態を明らかにレた。圧 縮性に関しては音速の理論値と解析モデルとの比較によりその妥当性を検証すると 共に実用範囲での流体条件では実用上その影響は少ないことを明らかにし,またス ワール流れを伴う狭間隙部で流れの形態とそれによる不安定化力発生メカニズム,

及び偏心率が大きいほど不安定化カが強く作用することを明らかにレた。また構築 した解析モデルの発展性について述べた。

  第6章 では ガス タービンの軸系を例として,軸系が柔構造の要素より構成されて いる回転系,即ち多自由度の系における新たな簡易物理振動解析モデルを構築し,

その有用性について実験検証した結果について述べたものである。多数の自由度を 有するケーシング,剛性評価が困難な組み立て式口ー夕,支持部の締結構造からなる 軸系に対し,予め個々の振動特性(固有値)を把握レておくことで複合構造体とし ての解析モデルを構築し新たな固有値の把握を可能としてしヽる。また本解析モデル はバネ,質量系でモデル化を行っており,剛性評価の不確かさのある要素部分の重 み付けを行うことで解の収束性を高めている。

  第7章 では第3章から 第6章 で得ら れた 研究 成果と 従来 の研 究成 果,新 たな 実験 的研 究お よび実 機で の運用経験を基に,第2章で述べた大型夕ーボ機械に発生する 振動現象に対して構築した軸振動異常診断システムについて述べたものである.本 システムは異常振動の周波数,時間,負荷,回転依存性等の振動特性,振動とその 発生要因と相関,数値シミュレーションによりほぼ発生異常振動の特性とその要因 を定量的に把握可能としたもので,その一部は実用に供されているものである。な お,ここでは,実験的研究でのラビング振動,口一夕クラック振動現象の試験成果 を併せて述べている。

  第8章 は ま と め で あ り , 本 論 文 で 得 ら れ た 研 究 成 果 を と りま と め て い る 。

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

大型蒸気およびガスタービンに生じる      軸 振 動 現 象 に 関 す る 研 究

  工ネルギ ー変換機 器、とし ての蒸気 夕ーピン 、ガスタービン等のターポ機械は主要な ェネ ル ギ 一変 換 機と し て 長い 歴史を 有してお り、今日に おいても 我々の社 会生活を 支 える 基 幹 動カ と して 主 要 な役 割を果 している 。現在、こ れらのタ ーポ機械 は機器単 体 および複合サイクル(コンパインドサイクル)としての発電プラントの大容量化と共に、

省資 源 、 省エ ネ ルギ ー の 観点 から、 高効率で 稼働率に優 れた高い 信頼性と 柔軟な運 用 特性 を 要 求さ れ てい る 。 これ らを実 現するう えで工学上 の多くの 研究開発 成果が貢 献 して き て いる が 、な か で も大 型回転 軸系の軸 振動現象を 精度良く 把握し、 機器設計 に 生か す こ とは 機 器を 安 全 かつ 効率良 く運用す るうえで最 も重要な ことのー つである 。   本 研 究は こ の 様な 状 況に 鑑 み、従来 の研究成 果を踏まえ つつ大型 蒸気夕ー ピン、ガ スタ ー ピ ンの 各 発電 シ ス テム におけ る回転軸 系の軸振動 現象の定 量的把握 と新たな 振 動現 象 の 解明 、 その 対 策 を論 じたも のである 。対象とす る軸系は 横置きに 配置され た 回転 軸 と それ を 支え る 支 持系 から構 成されて いる。この 支持系は 軸受台、 軸受本体 、 軸受 油 膜 から 成 り、 そ の 静的 、動的 特性はこ の回転軸系 の振動に 非常に大 きな影響 を 及ば す こ とが 従 来の 研 究 や実 機での 運用経験 より明らか にされて きている 。特に軸 受 油膜 の 静 的、 動 的特 性 は 本振 動現象 を解明す るうえでの 基本とな る特性で ある。こ の 特性 は 軸 受形 状 、使 用 条 件等 で大き く異なる 。この様な 視点から 軸受の特 性、特に 大 型夕 ー ポ 機器 に 適用 さ れ てい る大口 径軸受の 実サイズ、 実使用条 件下での 特性解明 が 必要 と な る。 さ らに こ の 様な 基本的 な事項の 解明に加え 、蒸気等 の流体カ による新 た な軸 振 動 現象 の 解明 は 機 器性 能、機 器信頼性 を包括的に 考慮した 合理的な 設計を行 う 上での必 要事項と なる。

  本研究の 主要な成 果は次の4点に要約 される。

  (1)軸 振動 問 題 を解 析 する 上 で の基 本 境界 条 件 であ る 軸受 油膜の静 特性、動 特性を 実験 的 に 研究 す るた め 、 軸受 特性試 験装置を 開発,製作 したが、 本試験装 置は世界 有 数の 試 験 機能 を 有し て お り、 供試軸 受として 大型夕ーピ ン発電機 に適用さ れる大口 径 の楕 円 型 軸受 と バッ ド 型 軸受 を用い ている。 これによっ て、実サ イズ、実 機使用条 件

元 彦雄       一 重 田藤 川 山 工藤 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副

(4)

下で、動特性に影響を及ぼす油膜圧力分布、温度分布を静特性として把握するととも に、加振機による油膜のばね、減衰定数を求める動特性試験を実施し、各軸受の静特 性 、 動 特 性 、 と そ れ ら を 実 機 に 適 用 し た 場 合 の 結 果 に つ い て 述 べ て い る 。   (2)蒸気カによって誘発される軸系の不安定現象を、動翼先端からの蒸気リークの 不均衡に起因する回転軸のトルクアンバランスと、回転軸の狭間隙シール部に生じる 円周方向の不均衡な圧力分布によるものとして実験的に論じた。本試験結果ならびに 構築した狭間隙部の非圧縮流れ解析モデルの結果より軸系の安定解析を行い、狭間隙 部 内 の ス ワ ー ル流 れ が 不安 定 化カ と して 作 用す る こと を 明ら か にし て いる 。   (3)上述の狭間隙部流れについて、より一般化した数値解析モデルを構築し、流体 の圧縮性の影響と不安定化カの発生形態を論じている。すなわち,圧縮性に関しては 音速の理論値と解析モデルとの比較を行うことによりその妥当性を検証するとともに 実用範囲での流体条件では実用上その影響は少ないことを明らかにし,またスワール 流れを伴う狭間隙部での流れの形態とそれによる不安定化力発生ヌカニズム、および 偏心率が大きいほど不安定化カが強く作用することを明らかにしている。また構築し た解析モデルの発展性についても論じている。

  (4)ガスターピンの軸系を例として、軸系が柔構造の要素より構成されている回転 系、すなわち多自由度の系に対する新たな簡易物理振動解析モデルを構築し、その有 用性について実験的に検証している。多くの自由度を有するケーシング、剛性評価が 困難な組み立て式ロー夕、支持部の締結構造からなる軸系に対し、あらかじめ個々の 振動特性(固有値)を把握しておくことから複合構造体としての解析モデルを構築し新 たな固有値の把握を可能にしている。また本解析モデルは、ばねー質量系でモデル化 されており、剛性評価に不確かさのある要素部分に重み付けを行うことで解の収束性 を向上させている。

  これを要するに、著者は、大型蒸気およびガスターピンに生じる軸振動現象を論じ、

大型回転軸系の振動に関して有益な知見を得たものであり、振動工学ならびに機械工 学の進歩に貢献するところ大なるものがある。

  よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

参照

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