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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 工 学 ) 石 山 達 也

     学位論文 題名

Molecular Dynamics Study of Kinetic Boundary Condition at an InterfaCebetWeenVaporandItSCOndenSedPhaSe

(蒸気とその凝縮相界面での気体論境界条件に関する分子動力学的研究)

学位論文内容の要旨

  近年,マ イクロ・ナノテクノロジー が注目される中,これまで巨 視的にしか扱われてこなかっ た 物理 現象 の 原子 ・分 子レ ベルでの微覘的解明やメ ゾスケール繊覘的スケールと 巨視的スケー ルとの中間 スケーッレ)での解明が急速に進展しつっある.理工学における基礎プロセスのーつで ある蒸気と その凝縮相界面での蒸発・ 凝縮過程もまた原子・分子レ ベルでの微視的解明が必要と されている 研究テーマであり,さらに 現実の諸問題への応用という 点から,とくに非平衡蒸発・

翻 縮 i員 程 の 微 視 的 J晴 報 を 巨 視 的 記 述 に 組 み 込 む こ と が 要 求 さ れ て い る .   界面での 蒸発・凝縮過程を扱うにあ たっては,連続体仮説に基づ く流体力学はまったく用をな さず,気体 分子運動論(以下,「気体論」という)や分子動力学を用いる必要がある,このうち気 体論は分子 集団の速度分布関数を扱う ことにより,分子運動の統計 的陸質を求める気体力学であ る.これに よれば気液界面で熱・物質 輸送をともなう問題を原理的 には分子レベルで扱うことが で きる.っまり,気体論 における支配方程式であるBoltzmann方程式を解けばよい のであるが,

問題は界面 での境界条件にあり,当該 分野の現决は以下に述べる仮 定に基づいた境界条件を使用 せざるを得 なぃ状況にある.

  気体論に おける境界条件(以下,「 気体論境界条件」という)は ,界面において凝縮相(固相 もしくは+fロ)から蒸気相(気相)ヘ 向かう分子の速度分布関数を 指定することによって与えら れる.この 速度分布関数は,凝縮相か ら蒸発するものと蒸気相から 界面に入射した分子が界面で 反射するも のの和として表される.こ のうち,蒸発の速度分布関数 は蒸気の状態にかかわらず凝 縮相温度の 平衡分布(Maxwell分布)に 等しいと仮定されている.ま た,気体論境界条件には気体 論のレベル では未知のパラメータであ る凝縮係数が含まれており, この値が具体的にどのような 値をとるの かは未だ明らかではなぃ.

  本研究は,上記の2つの 問題,すなわち,蒸発の速 度分布の関数形と凝縮係数の 値を,気体論 よ りも 第一 原 理に 近い 立場 である分子動力学法を用 いることにより明らかにする ことを目的と してなされ たものである.

    ―29―

(2)

  本 論 文 は 全 5章 で 構 成 さ れ て お り , 各 章 の 概 要 は 以 下 の と お り で あ る .   第1章は序論であり,関 連する従来の研究を総括し ,本研究の背景と目的につい て述べた.ま た,本研究において提案 する蒸発,翻霜の定義を簡潔 にまとめるとともに,真空への蒸発現象に 注目した理由を明確に述 べた.

  第2章では本研究で用い た計算手法である分子動力 学法について記述した.本研 究では,単原 子分子であるアルゴンに 加えて,多原子分子である水 とメタノールのシミュレーションも行う・

シミ ュレ ーシ ョ ンに 必要なNewtonの運動方程 式の差分解法,多原子分子 の計算に必要な回転運 動に対する剛体分子モデ ルの分子動力学アルゴリズム を詳細に記述した.さらに,平衡状態,非 平衡状態(真空への蒸発)のシミュレーションで用いる境界条件および密度,温度,圧力,速度分 布関数等の統計量の定義 について述べた.

  第3章では単原子分子で あるアルゴンの平衡!伏態と真空への蒸発シミュレーションの方法,結 果について記述した.その中で,蒸発の速度分布の関数形と,平衡状態の凝縮係数(蒸発係数)の 値を評価した.真空への 蒸発下において,蒸発の速度 分布関数は,凝縮相温度が アルゴンの3重 点 温 度 近 傍 の 場 合 に は 半Maxwu分 布 に な る こ と , さ ら に凝 縮相 温度 が 上昇 する にっ れて 半 Mam^′eu分布からずれる ことを示した.また,平衡状態の凝縮係数は,凝縮相温度の減少関数で ある こと を明 ら かに し,凝縮相温度が3重点 以下の温度で1に近づくこと ,臨界長に近づくに従 って0に近づくことを明ら かにした.

  第4章では多原子分子である水とメタノーッレの平衡状態と真空への蒸発シ.ミュレーションの方 法と結果について記述した.水やメタノーッレは,アルゴンと比較して分子構造が複雑であり,分 子内電荷の分極に伴うク ーロンカが働く.それにもか かわらず,凝縮相温度が低温の場合には,

アルゴンの場合と同様の結果が得られた.すなわち,蒸発の並進速度分布関数が半Ma瓢^℃11分布 とな るこ と, 回 転角 速度 分布 がM隅veu分 布と なること,平衡状態の凝縮 係数が1に近い値をと ることを明らかにした. 水やメタノールに特有の会合 陸が顕著にあらわれるのは,凝縮相温度が 比較的高温の場合であり ,クラスター形成に伴う分布 関数のずれが見られることを示した.しか し,平衡状態の凝縮係数 は臨界点近づくに従って0に 近づくことなど,その振る舞 いはアルゴン の場合と定阯的に同じで あることが明らかとなった. 真空蒸発下における界面での水とメタノー ル分子の配向性について も調べ,凝縮相温度が低温に なるほど配向陸が強くなることを明らかに した,

  第5章は結論であり,本 研究で得られた結果を総括 した.

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学 位 論 文 審 査の 要 旨

     学位論文題名

Molecular Dynamics Study of Kinetic Boundary Condition at an InterfaCebetWeenVaporandItSCOndenSedPhaSe

(蒸気とその凝縮相界面での気体論境界条件に関する分子動力学的研究)

  蒸 気と その 凝縮 相 界面 での蒸発・凝縮は 、理工学の分野で数多く見 られる基礎的物理現象 のーっである。例えば、天体 現象、大気現象、キャビテ ーション現象、化学蒸着等は、蒸発・

凝縮 と深 くか かわ っ てお り、これらを理論 的に扱う際には、相界面で の蒸発・凝縮を適切に 考慮 する 必要 があ る 。し かし、蒸発・凝縮 は相界面での微視的スケー ルの物理に支配されて おり 、流 体を 連続 体 とし て扱 う流 体力 学 では 記述 できず、Boltzmann方程式に基づく分子気 体力学により解析されなけれ ばならない。

本研 究は 、分 子気 体 力学 で用 いら れる 蒸 気と その 凝縮 相 界面 での 境界 条件 (以下、気体論 境界 条件 とい う) を 、さ らに微視的な理論 である分子動力学を用いて 定式化することを目的 としてなされたものである。 気体論境界条件を定式化す る際には、蒸発・凝縮といった原子・

分子 レベ ルで の微 視 的現 象をぃかに定義す るかということが最も困難 な問題である。この問 題に 対し て、 著者 は 、蒸 発現象が蒸気の状 態に関わらず凝縮相のみの 状態によって決まるも のと 定義 し、 真空 蒸 発の 分子動力学シミュ レーションを行うことによ り、境界条件の蒸発部 分を明らかにした。シミュレーションは、分子構造が比較的単純な単原子分子(アルゴン)と、

それがより複雑な多原子分子 (水とメタノール)に対し てなされた。本論文で得られた成果を 要約すると次のようになる。

(1)ア ル ゴ ン の 真 空 へ の 蒸 発 シ ミ ュレ ー ショ ンに おい て、 凝 縮相 温度 が3重点 温度 近傍 の     と き には 、蒸 発の 速 度分 布関 数が 半Maxwell分 布 にな り、 さら に 凝縮 相温 度が 上昇 す     る に っれ てそ れが 半Maxwell分布 から ずれ る。 ま た、 蒸発 係数 は 、凝 縮相 温度 の減 少

311

雄 靖

史 猛

   

川 田

楽 野

授 授

授 授

   

   

(4)

    関数であり、凝縮相温度が3重点以下の温度で1に近づく。

(2)水やメタノールは、アルゴンと比較して分子構造が複雑であり、分子内電荷の分極に     伴うクーロンカが働く。それにもかかわらず、凝縮相温度が低温の場合には、アルゴ     ンの場合と同様の結果となる。すなわち、蒸発の並進速度分布関数は半MaxweU分布     となり、回転角速度分布がMaxwell分布となる。また、蒸発係数は1に近い値をとる。

    水やメタノールに特有の会合陸が顕著にあらわれるのは、凝縮相温度が比較的高温の     場合であり、クラスター形成に伴う分布関数のずれが見られる。しかし、蒸発係数が     凝縮相温度の減少関数となることなど、その振る舞いはアルゴンの場合と定性的に同     じである。

  以上の結果に基づき、著者は、気体論境界条件の蒸発部分が、凝縮相温度が臨界点に近く ない限り、蒸発係数と凝縮相温度の飽和蒸気のMaxwell分布との積で記述されることを明ら かにした。この結果は、蒸発・凝縮にかかわる分子気体力学、さらには界面科学の発展に貢 献するところ大なるものがある。よって、著者は北海道大学博士(工学)の学位を授与され る資格があるものと認める。

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参照

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