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秘密婚とイギリス近代

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Academic year: 2022

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(1)

について

二︑婚姻約束訴訟

第一章

第二章

一︑婚姻の当事者について

二︑当事者達はどのような仕方で堅固な単一体に正しく結ばれるのか

三︑婚姻の目的について

四︑秘密婚について

一︑スウィンバーン

H . S w i n b u r n e  

i婚姻約束もしくは婚姻契約論A

T r e a t i s e   o n

  Sp o u s a l s   o r   M a t r i m o n i a l   C o n t r a c t

s 課題ー教会挙式婚と秘密婚ー

ガウジ

W i l l i a m G ou ge  

秘 密 婚 と イ ギ リ ス 近 代

ウィリアム﹁家族の諸義務について

Of D o m e s t i c a l l   D u t i e s ﹂と婚姻方式

( 一 )

栗 原

11 ‑‑1 ‑41 (香法'91)

(2)

する反対討論の一部分である︒

こ の

発 ︱

︱ ︱

口 か

ら ︑

この 発言 は︑

教区で許可証による私的な結婚には好都合ですが︑ ャ

ペル

では

課 題

│ ー

' 教 会 挙 式 婚 と 秘 密 婚 ー ー

この法案に対 キース・チャペル

K e i t

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における

﹁婚 姻予 告

B a

n n

s の布告と公けの結婚が我が人民の精神と気質に反することは明らかです︒教区で婚姻予告を布告

してもらうことは慎み深い若い少女達に衝撃を与えます︒若者達は彼らの仲間の冷かしに非常に長い時間前もってさ らされることを好みません︒許可証によって結婚するには貧しき人々が節約しうる以上の金銭を必要とします︒我が

人民がいかに私的な結婚を好みわずかな金銭を節約するのを好むのかは︑

多数の結婚を他の教区教会の結婚の数と比べることによって納得させられましょう︒私の調査によれば︑キース・チ

一年 に六

00

0

件の結婚が行なわれていますが︑聖アン教会

S t .

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では︑そこは人口の多い

第一章

一年 に五

0

件以上の結婚が行われることはめったにありません︒

しかも︑費用の差は八ないし一

0

シリングを越えませんが︑これが夫婦の全財産に等しいこともあります︒閣下︑こ

の法案が法律になれば働き好きで勤勉な人々の結婚を大部分妨げるであろうことは︑それゆえ明らかであります︒﹂

一七五三年五月七日︑秘密婚

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e を禁止するために制定されるハードウィック婚姻

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e   A

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(2 6 

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.   C .   3

3.

)が庶民院において第二読会にかけられたとき︑

ハードウィック婚姻法制定以前のイングランドでは︑婚姻は多様な仕

方で行われていたのみならず︑秘密婚が庶民の婚姻として受容されていたことが窺える︒キース・チャペルが十八世

紀前半において秘密婚で繁盛した教会やチャペルのうちのひとつであることは言うまでもない︒

教会挙式婚のみならず︑多様な変則的婚姻

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e が有効な婚姻とみなされてきたのは︑イングランド 四

11‑1 ‑42 (香法'91)

(3)

秘密婚とイギリス近代 (一)(栗原)

のように言う︒﹃我は

の婚姻法︑すなわちイングランドで用いられた教会法

C a

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n

La

wでは婚姻の有効な成立を両当事者の自由な合意に

求めるという合意主義的婚姻理論が一七五三年のハードウィック婚姻法の制定に至るまで維持されてきたことにあ

る︒この合意主義的婚姻理論によって︑﹁婚姻約束

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﹂︑特に﹁現在形の言葉を用いての婚姻約束

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﹂が婚姻の成立とみなされ︑教会挙式をともなうことなく多様な仕方で婚姻の有効な成立が認めら

れている︒この合意主義的婚姻理論は大陸では一五六三年のトレント会議

Th

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t によって廃棄され︑

婚姻方式は教会挙式婚に統一化されたが︑イングランドでは︑一六

0

四年の教会法

C a

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16 

04

にみられるように

教会挙式婚への統一化の試みが教会によってなされたにもかかわらず︑教会自体が一貫した対応を欠いたこともあり︑

多様な変則的婚姻が有効な婚姻として残されることになった︒﹁初期近代イングランドにおいて︑婚姻は当惑させるほ

(3 ) 

どの多様な仕方でなされうる契約

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であり︑婚姻の定義は困難をともなうだけであった﹂とまで評された

ここにこの時期のイングランドの婚姻法の歴史的特質が窺える︒

ハードウィック婚姻法制定以前のイングランドにおいてとられた婚姻方式は教会挙式婚と秘密婚とに分けることが

できる︒教会挙式婚には︑婚姻予告

Ba

nn

による教会挙式婚と婚姻許可証

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e による教会挙式婚とがあ

婚姻予告による教会挙式婚では︑婚姻予告は教会挙式の前に次のように行われる︒﹁結婚しようとする全てのものの

婚姻予告は︑日曜日もしくは祝祭日ごとに三回︑教会において朝の礼拝もしくは

︵朝の礼拝がないならば︶晩の礼拝

のときに︑第二日課

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n の直後に公示されねばならない︒牧師補

Th

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e は慣習的方式に則り次

る ︒ ほ

どで あり

︵居

住地

名︶

N

︵名 前︶ と︵ 居住 地名

N

︵名前︶との婚姻の予告を公示する︒この二人が

聖なる縁で結ばれべからざる理由もしくは正当な障害を知るものがあれば︑なんじらそれを申し立てべし︒これ第一

11‑1 ‑43 (香法'91)

呵・"•• '"'"""'  '""''""""'""''""""""'""'"'""""'""""'""""""'""""'""""""'"'"'""'   ..

(4)

回︵第二回︑第三回︶

この三回の婚姻予告において︑婚姻約束などの先約や︑血縁関係や姻族関係などから生じる婚姻障害を訴えるもの

がいなければ︑聖婚式が教会において共通祈躊書

Th

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r の式文に従い挙行される︒そして︑

婚姻予告による教会挙式婚には様々な規制がともなっている︒

住する教区教会もしくはチャペルで︑

が居住する教区教会もしくはチャペルにおいて︑

(5 ) 

べきことが定められている︵六二条︶︒また︑

一 六

0

四年の教会法には規定されていないが︑臨降節

A d

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や四句節

(6 ) 

L e

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などの時期も婚姻が事実上禁止されていた︒さらに︑﹁ニ︱歳以下の子供達は︑彼らの親達の同意なしに︑彼らの

親達が死亡している場合には彼らの保護者達

G u

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a n

s や彼らの主人達

G o

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s の同意なしに︵婚姻︶契約を結ん

だり︑結婚したりしてはならない﹂ことも定められている

( 1 0 0

条︶︒しかし重要なことは︑一六

0

四年の教会法に

違反してなされた婚姻であっても違法ではあるが無効とみなされないことである︒

第二の教会挙式婚は結婚許可証によるものである︒この方式によって︑婚姻予告をすることなく両当事者の一方が

居住する教区教会もしくはチャペルで挙式することが認められるばかりでなく︑臨降節や四句節にも挙式することが

できる︒結婚許可証の発行は︑

(4  

の予

告な

り︒

﹄﹂

( 1 0

一条︶︒しかし︑主教の宗教法顧問 日曜日もしくは祝祭日ごとに三回︑礼拝のときに公示され﹂︑﹁両当事者の一方

共通祈躊書に従い︑午前の八時から十一一時までの間に挙行される﹂

﹁主教の地位にある者︑許可証発行を委任された主教代理

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e s ︑大主教や主教の代理法務官

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l ﹂に与えられている

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r に許可証の発行が認められ︑主教の宗教法顧問が下級僧侶を代理人としてその発行にあたらせる地域

もあり︑婚姻許可証の発行者は地方によって様々であった︒婚姻許可証の発行にあたっては︑﹁先約︑血縁関係︑姻族

関係などの婚姻障害もしくは婚姻を妨げる他の法的理由がないこと︑当事者の一方に他の第三者との婚姻契約もしく

一 六

0

四年の教会法では︑婚姻予告は﹁両当事者が居

四四

11‑‑‑1~44 (香法'91)

(5)

秘密婚とイギリス近代

あっ

た︒

S p o u s a l s

(婚

姻約

束︶

︑ M ak in S g u r e   ( 婚 約 ︶

のひとつの表われ﹂ と慣習上称される私的な契約によって婚姻は成立するとみなされ続けており︑

q )  

りなく︑酒場︑納屋︑私宅︑公道︑牧草地などで結ばれているその意味では︑

であり︑教会によってその根絶が試みられたとはいえ︑十七世紀においても継続する庶民の婚姻 秘密婚が行われるのは︑両当事者の

一 六

0

四年の教会法における婚姻の挙式に関する規定のある部分に違

反してなされた婚姻のことを意味している︒婚姻予告の三回の公示もしくは有効な許可証なしでなされた婚姻︑

くはチャペル以外で行われた婚姻︑ が居住する教区の外で行われた婚姻︑禁止された特定の時期や定められた時間外に行われた婚姻︑合法的な教会もし

イングランド教会の僧侶の面前でなされない婚姻等々は秘密婚とみなされる従

って︑秘密婚には教会で行われるものもあるし︑

﹁現在形の合意﹂によって教会挙式なしに婚姻が成立するとみなされるからで

(一)(栗原)

みた婚姻方式であった︒従って︑秘密婚とは︑ これら二つの教会挙式婚は︑

ある

が︑

四五

この種の秘密婚は﹁古き伝統の継承 これらの私的な哭約は︑教会とは関わ は婚姻に関して教会裁判所で係争中の訴訟がないこと︑当事者達は彼らの親達の︑親達がいない場合には彼らの保護者達もしくは主人達の明示の同意を得ていること︑当事者達は当事者達のひとりが居住する教区教会もしくはチャペ

( 1 0

条 ︶

ルで午前の八時から十二時までに公けに挙式すること﹂などの保証が求められる

婚姻許可証による教会挙式婚は三回の婚姻予告を省略し︑臨降節や四旬節にも挙式することができる点では便利で

その発行と登録などの手数料を含めて八ないし一

0

シリングの費用を必要とすることから︑庶民が利用しう

る婚姻方式ではなかった︒婚姻許可証による教会挙式婚は上流階級に限られたことから︑

ルとみなされていた︒

一 六

0

四年の教会法を通じて教会公認の婚姻方式とされ︑教会がそれへの統一化を試

そうでないものもあるわけである︒ 一種のステイタス

H a n d f a s t i n g   (

婚 約

︶ ︑

T r o t h p l i g h t

(夫

婦約

束︶

々 二

シンボ

11‑1 ‑‑45 (香法'91)

(6)

また︑婚姻予告による教会挙式婚や結婚許可証による教会挙式婚などにおいてその手続きのある部分を欠く教会挙

式婚も秘密婚とみなされる︒この種の秘密婚では︑十七世紀末から十八世紀前半において︑フリート監獄Fleet

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及びその周辺地域で行われた﹁フリート婚Fleet

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﹂が

最も

有名

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︑ ランドにおいて様々な地域で広範に行われていたと言ってよい︒それが広範に行われていた理由は︑様々な歴史的理

由から大執事The

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判管

轄権

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存在にある特別教区は各主教区内に多数存在し︑大執事や主教の管轄権が及ばないことから秘密婚を行うところも

多く︑秘密婚を求める多くの人々が特別教区の教会やチャペルを挙式するために訪れている︒また︑

ャペルのなかには一六

0

四年の教会法の婚姻規制からの免除特権を主張するものも多い︒そのような教会やチャペル では︑三回の婚姻予告なしに︑午前の八時から十二時までの時間に限られることなく︑教区以外の人達の結婚式が行

ハードウィック婚姻法によって禁止されるに至るまでの秘密婚の歴史を探ることにある︒教会挙式

婚への統一化が試みられる一方で︑秘密婚が行われていた歴史的原因を究明し︑

ならなかったのかを﹁フリート婚﹂

そのために︑最初に︑十七世紀前半に出版された家政書のうちで代表的なものとされるウィリアム

Go ug e﹁ 家族 の諸 義務 につ いて Of

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ピューリタンの

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﹁婚 姻約 束も しく は婚 姻契 約論 T A

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本稿の課題は︑ わ

れて いる

︵教会挙式︶婚姻観が明らかにされよう︒次に︑教会法上の婚姻をヘンリ 慣習であったと言うことができる︒

︵一

六二

二年

か ら

︵一 六八 六年

スウィンバーン ﹁婚姻方式﹂の部分を検討する︒それに ガウジ

W i

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の実態とともに究明するのが課題となっている︒ さらに︑秘密婚はなぜ禁止されねば それら教会やチ この種の秘密婚は十七世紀イング

四六

11‑1 ‑46 (香法'91)

(7)

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ゃwQ‑¥Q心や'悩誕-Ek<'.~母器

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圭ぼ共令心涵恕砦S藍淑孟M<~如森0,やご芯器丑初菜心足割l-0~~K如混芦ヤ沿~J心足+.!. ~0

(ー)W. Cobbett, The Parliamentary History of England Vol. 15, (London, 1813), P. 19. 

(N) ̲L... 2:, ,¥ .L~ 甘筈如翠ゃ考匁Sf~..lJ

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涎唸翫濫「\\,入ギ入•〗,入―<呈函:bl'‑1.'1砦姦S笞笞こ

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・沢」(「祖遭藍

噂炉l兵<這)~~l-0

(M) L. Stone, The Family, Sex and Marriage in England 1500‑1800 (Weidenfeld & Nicolson, 1977), P. 30.  i 1ば抱l宜'

('S1') The Book of Common Prayer, And Administration of the Sacraments, and other Rites and Ceremonies of the Church, 

according to the Use of The Church of England, (1663 edition), P. 329. ~ 「手疑工」竺十ギ羊嘉

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*8

砦姦半赴記訊桐裡

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袖芯亘l'(-t2芯'基似旦竺r-<(0~~~o

(U")) E. Cardwell, Synodalia: a collection of articles of religion, canons and proceedings of convocations, Vol. 1, (Oxford 1842, 

Rep. Gregg Pub. 1966), P. 282. 

(<.0) M. Ingram, Church Courts, Sex and Marriage in England, 1570‑1640, (Cambridge 1987), P. 213. 

︵圏獣︶

︵ー︶

(じ)E. Cardwell, op. cit., P. 305. 

(oo) R. A. Marchant, The Church under the Law 

(Cambridge, 1969), PP. 20‑21.  Justice Administration and Discipline in the Diocese of York 1560‑1640, 

(en) E. Cardwell, op. cit., P. 305. 

(三)R. A. Marchant, op. cit., P. 21; 

J. 

R. Gillis, For Better, For Worse British Marriages, 1600 to the Present, (Oxford, 1985), P. 

53. 

(;::::) M. Ingram, op. cit., P. 213. 

心)

J. 

R. Gillis, op. cit., P. 20, P. 92. 

(芝)R.H. Helmholz, Marriage Litigation in Medieval England, (Cambridge, 1974), P. 31.  (16,¥?~) Lr  │IIII 

之茉

牛︸心晦知涵 k(‑

回キ

(8)

つ︑ガウジの家族観の基本的特徴をボすことにする︒ の諸問題を明らかにすることができよう︒ が出版されている︒ウィリアム

第二章

頁を越える大著から︑

ウ ィ リ ア ム ガ ウ ジ W i l l i a m G

o u g e  

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十六世紀末から十七世紀前半にかけて︑

と婚姻方式

ピューリタニズムの影響下︑新たな家族倫理の構築を訴える多くの家政書

ガウジ

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(一五七八ー一六五三︶

によって一六二二年に書かれた﹁家 族の諸義務について

Of

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s ﹂は︑そのなかでも最も広く読まれたもののひとつであり︑出版後一

0

間に三版を里ねた当時のベストセラーであった︒

親と

f

︑主人と奉公人の関係について︑ ﹁家族の諸義務について﹂は︑聖書にもとづく家族の基盤の原理的考察に始まり︑当時の家族関係を構成する夫と妻︑

それぞれが相互に負う義務が八つの講話として編成されている︒この七

00

ガウジの家族観の全体像を示すことは︑本稿の直接の課題ではない︒本稿は︑婚姻の成立にか かわる問題を扱う第二講話

Th

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e の前半部分﹁夫婦の正しい結合

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f e ﹂だけを検討することになるが︑ガウジが考えるキリスト教徒にふさわしい婚姻の仕方と︑

それにともなう現実

﹁家族の諸義務について﹂に関しては︑我が国では上野雅和教授による研究がある︒そこで︑教授の研究に依拠しつ

﹁家族の諸義務について﹂では︑家族内の個別的関係が﹁家族内における最初のそして最も主要な二人である夫婦﹂ ( 1

4 )  

M .  

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PP

. 36‑37 

﹁家族の諸義務について

四八

11~- 1~4s (香法'91)

(9)

秘密婚とイギリス近代 (一)(栗原)

四九

から始められ︑﹁共通の相互の義務

Co mm on M u t u a l l   D u t i e

s ﹂としての愛情によって結合された夫婦中心の家族が根

幹にすえられている︒この時代の家族を構成する他の二つの関係である﹁親と子﹂︑﹁主人と奉公人﹂の関係は家族内

における第二︑第三の関係として位置づけられている︒さらに︑﹁夫と妻﹂︑﹁親と子﹂︑﹁主人と奉公人﹂の三つの関係

は︑それぞれが前者への後者の服従をその喫機として含んでおり︑ガウジの考える家族像は﹁主人と奉公人﹂の関係

を内含する﹁家父長制的夫婦家族﹂であったと言えよう︒ガウジは︑このような家族像を信仰の原基的単位として位

置づ

け︑

さらに︑教会や国家を含む社会の改革のための原点として菫視したわけである︒

﹁家族は教会や国家の育成の場

S e m i n a r y

である︒家族はミツバチの巣箱のようなものであり︑そこで育成されて︑

多くのミツバチの群が巣ばなれする︒というのは︑全ての人々が家族のなかで生まれ︑育てられ︑家族から教会や国

家に送り出されるからである︒人類と人類の増殖の始まりは家族からであった︒﹂

そし

て︑

ガウジの家族観の社会的背景について︑上野雅和教授は次のように位置づけている︒

﹁このようなピューリタンの牧師による家族とくに夫婦関係の重視は︑当時の都市の商人・職人階層の要求に対応す

るものでもあった︒彼らの家族は︑生産の場︑生活の場︑信仰の場の統一体であり︑家族員全員の生活の拠り所であ

った︒家族のかなめとなるのは夫婦であり︑夫婦の協力いかんが家族の運命を左右した︒しかし対外的には︑家長

1 1

夫が家族の代表者であり︑妻子のみならず使用人をも含めた家族全員の生存について責任を負わされた︒自由競争︑

生活自己責任の世界で生き抜くためには︑夫婦の自発的な相互協力とともに有能な家長

1

1夫の意思による家族統制が

必要であった︒このような家族が最も効率的に機能しうるような新しい家族規範︑彼らはこれを求めていた︒ピュー

(6 ) 

リタンの牧師は︑この要求に応えるという形で︑彼らの家族改革を進めることになる︒﹂

しかし︑ガウジの説く妻の夫への絶対的服従が庶民家族における妻達の現実に必ずしも対応したものでないことも︑

11‑1 ‑49 (香法'91)

(10)

(7 ) 

この点をめぐるガウジと妻達の論争から指摘されている︒

(l

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分のセクションを本文中に示す形で進めたい︒

政策と法

以下

では

︑ 第二講話の前半部分

﹁夫婦の正しい結合﹂

4欧米資本主義国﹂所収東大出版会

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19 81 ).  P .

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0.

 

セクスのストラットフォード・ル・バウ

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w )

で生まれた︒父親はジェントルマン身分で︑母親はロンドンの商人の娘であるが、月親の一~人の兄弟は説教僧となっている。ガウジはケンブリッジで学び、論理学とヘブル語の講師となったが(一六0

二年︶︑父親の希沼を受け人れ結婚のためにロンドンに赴き︑説教僧となった︵ニハ0八年︶︒この時期にピューリタンとしての方向

を明確にし︑ブラックフライアーズ

( B

l a

c k

f r

i a r s

)

の叩アン教会の牧師職に就任した︵一六一.一年︶︒﹁家族の諸義務について﹂は︑

このときに教区民に対して行った説教をもとにして出版されたものである︒その後︑じ教制に反対して﹁遊びの主い

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^

I年︶︒長期議会召集後︑ウェストミンスター家教会議の委員に選ばれ︵一六四三1

粛なる同盟と契約﹂に署名したが︑チャールズ.世の裁判には反対している︒卜七枇紀前半の代表的な長老派ピューリタンであった︒

詳しくは︑日本韮腎教団出版屈編ーキリスト教人名辞典﹂(‑九八六年︶二四八頁参照︒

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Vol•(Oxford,1917) 

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271

27 3.

( 2

) ﹁家族の諸義務について﹂の八つの講話は︑次にように編成されている︒第一講話﹁家族の諸義務がぷされている聖書の部分の解説

について﹂︑第二講話﹁一︑夫婦の正しい結合︑二︑夫婦の間の一般的な相肛の義務﹂︑第三講話﹁妻達の特殊な諸義務﹂︑第四講話

﹁夫達の特殊な諸義務l︑第五講話﹁f供達の諸義務﹂︑第六講話﹁親達の諸義務﹂︑第七講話﹁奉公人達の諸義務﹂︑第八講話﹁主人

( 3

) 上野雅和﹁イギリス婚姻思想史﹂︵福島正夫編﹃家族

(4)W•

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16 22 , 

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17 9.  

( 5 )  

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17 . 

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を紹介することになるが︑

注は

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最小限度ですまし︑

五〇

該当部

11 ‑‑1  50 (香法'91)

(11)

秘 密 婚 と イ ギ リ ス 近 代 t)  (~

に適さないとし

ローもその年齢を女性は十一函歳︑

男性は卜四歳と定め︑

この年齢以前には婚姻の必要性もないし婚姻

がどのような仕方で堅固な単一体に正しく結ばれるのか︑

当事者に関して︑次の二つが追求される︒

マ法もコモン すなわち︑婚姻が正しく成立するためにとられるべきプロ

ー﹁誰が婚姻相手を求めることができるのか﹂という婚姻資格の問題と︑

2﹁どのような相手が選ばれるべきか﹂という婚姻相手としてふさわしい条件が論じられている︒

第一の婚姻資格については︑﹁配偶者に避けられない危険をともなうことなく︑婚姻の本質的義務を果たすことがで

きるものは全て婚姻することができる﹂

l)

とされている︒神は最初に成人のアダムを創り︑神がアダムのために

妻を捜し出したとき成人の妻を創ったように︑年齢の成熟は正当で合法的な婚姻を完行するために必要である︒

2)

︑婚姻資格の第一に年齢の成熟を挙げている︒さらに︑婚姻を求めるべきでないものとして︑

婚姻の本質的義務を果たすことができない性的不能者︵しかし︑女性の不妊は婚姻を妨げない︶と︑結婚する当事者 一︑婚姻の当事者について セスがホされる︒ そ

して

この点をよりはっきりさせるために︑一︑親密に結ばれるであろう婚姻の当事者達の問題と︑

( 6

) 上野雅和﹁イギリス婚姻思想史﹂六ーI

( 7

) 卜野雅和﹁前掲論文﹂六︱I

﹁夫婦とは︑婚姻の絆によって正しく結ばれるものたちのことであり︑ ガウジは︑夫婦を次のように考える︒

それによって︑

ロー

二︑当事者達

(l  

二人は︱つの肉にされる︒﹂

11 ‑‑‑1 ‑‑‑‑51 (香法'91)

(12)

を危険にさらすことになる伝染病に感染し︑

のない場合には︑

のもののなかで︑ どんな職業であれ︑ それをうつす人達を挙げている(§3︑4 ︑

5 )

︒そ

して

これらの障害

どんな身分であれ︑全ての人達が合法的に結婚することができる︒婚姻は全て また全ての人において名誉なものだからである

6)

第二の婚姻相手にふさわしい条件には︑﹁婚姻の本質もしくは存在そのものにとって不可欠な事柄﹂と︑﹁婚姻の楽

前者にかかわる事柄として次のことが挙げられている︒①同種のもの︑すなわち︑人間が選ばれねばならない︒② 異性であること︑すなわち︑男性は女性を選び︑女性は男性を選ばねばならない︒③神の法によって禁止された親等 の血縁関係や姻族関係にないことである︒い自由の身であること︑すなわち︑第三者と結婚したり︑婚姻喫約を結ん でいたりしないことである︒二人は︱つの肉にならねばならないからである

7)

後者の婚姻の楽しみや幸福のために不可欠な事柄として︑結婚する当事者達の間で︑年齢︑財産︑身分︑信仰など

﹁婚姻相手を求める当事者は︑成熟した年齢で︑同意を与えることができ︑婚姻にともなう義務を果たすことができ

ねばならないのと同じように︑選ばれる相手は年齢の点でほぼ一致していなければならない︒年齢の同等さによって︑

結婚する人達は子供の出産やお互いに対する婚姻の義務の相互の実行によりふさわしいものとなり︑二人のあらゆる

つきあいをより幸福なものとしうる︒しかし︑この年齢の同等さは︑結婚する二人が全く同じ年齢であるかのごとく︑

厳密に受け取られてはならない︒五歳もしくは十歳︑あるいはそれよりもわずかに上の違いもありうるかもしれな

年齢の同等さについて の同等さが挙げられている(§9 

1 0  

ー ︑

2 )

ー ー

しみや幸福のために不可欠な事柄﹂とが挙げられている︒

11‑‑1 ‑‑52 (香法'91)

(13)

秘密婚とイギリス近代 (一)(栗原)

リベカ自身に知らせている

︵創 世記 二四

・五 八︶

﹁外見的な財産と富のある程度の同等さも︑結婚しようとする当事者達を︑ふさわしいものとする︒それらの違いか

ら一方が他方を侮辱するようなことは生じないからである︒大資産家の男性が貧しい女性と結婚すれば︑彼は彼女を

自分の女中として考え︑彼女が彼に対して妻ではなく情婦にふさわしく振まうことを期待するであろう︒従って︑こ

のような婚姻は︑婚姻よりもむしろ屈従

B o

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e を生じるものと言えよう︒また︑金持ちの女性が貧しい男性と結婚

外見的な身分についても同じことが言える︒王族︑貴族︑ジェントルマンは︑自分達と同じ身分のものと結婚する

のがよい︒婚姻によって自らを上昇させることを考え︑自分自身の財産や身分よりも上のものと結婚することをめざ

す人達がいるという現実は︑このことに反している︒

(3 ) 

えで

ある

︒﹂

これが︑多くのものが妻や夫を求めるときに追求する唯一の考

二︑当事者達はどのような仕方で堅固な単一体に正しく結ばれるのか

聖書のなかで︑年頃の当事者達が婚姻へと進むためにとらねばならない三つの段階が我々に対して命じられている︒

これら三段階とは︑①相互に好感をいだき合うこと︑②実際の婚姻喫約︑③結婚の公けの挙式︑のことである︒

①年頃の人達の間で結婚する前にかわされねばならない相互の好感について(§13)

﹁親もしくは他の保護者の側が最初に好感をもち︑それから彼らによってそのことが結婚する当事者に知らされるこ

ともある︒リベカの保護者達が︑アブラハムのしもべによって出されたイサクの申し出に好感をいだき︑ するならば︑彼女は主人の顔をして彼を支配すると思われる︒ 財産と身分の同等さについて

そのことを

11‑1‑‑‑53 (香法'91)

''""''''"'""""""""""""""""""""'"'""""""'"'""""""'""""" 

(14)

②婚姻契約について

•1

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契約の方式について

好感

は︑

4︑

( §

︵二 人を 結び つけ る︶

5︑

16 

17 

18 

人に相談するのがよい︒婚姻は重要な事なので︑ の父母に話したようにである

お互いに対して相 また︑結婚する当事者達の側が最初に好感をもつこともある︒そのとき︑その当事者が親の支配下にある場合には︑

それ以上進む前に︑事は親に移されねばならない︒サムソンがペリシテびとの娘に会って好感をもち︑そのことを彼

︵士師記一四・ニ︶︒当事者がいずれの支配下にもないのであれば︑賢明で理解力ある友

互の愛情があるかどうか知るために︑

一人以上の人の助言を必要としよう︒性急さによって生じる不幸を 防止することができるからである︒当事者達の一方によってこのように好感がいだかれたのちに︑

その好感は好感をいだかれた他方の側に移されねばならない︒

ソンは彼が妻にと望む女性のところに行って︑話をした

婚姻相手と考えるとき︑充分な数の証人達の前で︑

かく

して

︵士師記一四・七︶︒最初に相互に好感をよせ合い︑

心のなかに固くいだかれていれば︑愛情は二人の間で永久に継続すると思われる︒

にかわのようなものである︒﹂

サム

お互いの

お互いがいだき合う相互の愛情と

﹁両当事者が相互にいだいている好感をお互いに表わし︑慎重な考慮と親切な助言にもとづき︑お互いをふさわしい

お互いに結婚するという共同の合意と完全な約束がなされること

が必要である︒契約が正しくなされることが婚姻の始まりだからである︒堅固な契約が正しく成立することによって︑

二人は婚約中の夫婦

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として実際にみなされ︑都合のよい折に二人は結婚式を挙げるという 率直な約束がなされたことになる︒契約の形式はこのために設けられている︒最初に男性が女性の手を握って次のよ

うに言う︒﹃我

A

は︑なんじ

B

を我が婚約せし妻とし︑しかるべき都合のよいときに︑なんじと結婚することを固く約

束する︒﹄次に︑女性が男性の手を握って次のように言う︒﹃我

B

は ︑

なんじAを我が婚約せし夫とし︑しかるべき都

五四

11-~1~-54 (香法'91)

(15)

秘密婚とイギリス近代 (一)(栗原)

婚姻契約を必要とする理由について

( §

1 6

)  

合のよいときに︑

(5 ) 

なんじと結婚することを認めることを固く約束する︒﹄﹂

必要なものである︒神が哭約を裁可し︑

五五

﹁婚姻喫約は︑全ての時代において続けられた古き慣習であったが︑私は斐約が絶対に必要であり︑契約の欠如が婚

姻を無効にし︑不法な婚姻とするとまであえて断言するつもりはない︒しかし︑私は︑婚姻が祝福され︑成功するこ

とを望む全てのキリスト教徒に対して︑結婚する前に兜約が結ばれるように助言したいほど︑兜約は確かに当然かつ

それを我々に対して神の言葉によって命じたということ以外に︑芙約が結ば

れるべき理由が他にないならば︑神を恐れる人達をしてそれを利用するように説得するだけで十分である︒神の言葉

によって︑婚姻哭約が勧められたということは︑反論のない極めて自明なことである︒このために︑純然たる未婚女

性と婚約中の娘と既婚の妻との間に法律が差異をつけることは︑非常に明白である︒それゆえ︑婚姻契約を結んだ人

達は︑独身者と既婚者の中間の地位にいる︒彼らは単なる独身でもなく︑実際に結婚しているのでもない︒﹂

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婚姻前に︑婚姻哭約が結ばれることが必要なのかを示す理由として︑次の七つの理由が挙げられている︒

﹁り契約は婚姻の栄誉

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を高めるからである︒婚姻は︑慎重かつ熟慮のうえ︑徐々に一段ごとに完行され︑仕

上げられるべきものだからである︒

回契約は︑神の言薬のなかで正当とされる聖なる目的のために︑主への恐れをいだいて結婚しようとする人達と︑

欲望を満たすためとか肉体的目的のためだけで結婚しようとする人達とを区別する︒というのは︑この人達は︵結婚

の︶引き延しを認めることはできないからである︒しかし︑結婚前の契約によってこの厳粛な準備を利用する人達は︑

この神聖なものにふさわしい全ての事柄が正しく実行されることを望んでいることを示している︒ 哭約の必要性について

( §

1 5

)  

11‑1 ‑55 (香法'91)

...'""''"'"'・・・・・・・・・‑

(16)

契約は結婚する二人の当事者が同居する前に二人の心をより固く結びつける手段である︒

婚姻の始まりなので︑神が契約を結んだ二人に夫婦となる心の準備をさせたことは︑契約を結んだ当事者達への神の

めもたせる手段である︒ というのは︑契約は

契約は︑契約を結んだ二人に︑神の言葉が求めるような婚姻にともなう夫婦の義務を実行する覚悟をあらかじ

というのは︑契約は二人に婚姻の保証を与えるからである︒

契約は多くの隠された不都合を発見する手段である︒哭約がなければそのような不都合は明るみに出ないであ

契約は︑未婚女性や寡婦を誘惑したり強奪したりする多くのたくらみや悪習を防止するであろう︒というのは︑臼

親もしくは保護者が自分の支配下にある娘達もしくは他のもの達のためにふさわしい婚姻の準備をし︑全ての事柄が

決定され︑結婚日も決められ︑結婚式のための全ての事柄が準備されていたときに︑その結婚を妨げようとするもの

が︑狡猾な手段で︑結婚式が行われる日の朝でないにしてもその数日前に︑花嫁を連れ去り︑花嫁を別の男と即座に

結婚させるということが生じているからである︒男達をこれほど大胆にさせるのは︑秘密婚も完行されれば法律上有

効であることを男達が知っているからである︒しかし︑法律上の契約はこのような被害を防止するであろう︒うヽ~

とし

のは︑このような強奪結婚を完全に無効とするからである︒

旧契約は︑︑結婚する当事者達をして二人の住居にふさわしい物を全て準備するようにより奮起させる手段であ

(7 ) 

る ︒ ﹂

佃 契 約 の 濫 用 に つ い て

﹁契約に非常に多くの意味をもたせることは︑前述の契約理論に反している︒多くのものが契約を結婚そのものとみ ろ

う︒

( §

1 7

)  

ホ)

助言を明らかに示すものだからである︒

`ー︑

五六

11‑1 ‑56 (香法'91)

(17)

秘密婚とイギリス近代 (一)(栗原)

なし

( §

1 9

)  

そのために結婚式よりも契約により厳粛な意味を認めている︒そのうえ︑契約後には結婚しているかのごとく

相手を知る自由があると多くのものが思っている︒それは不当で不誠実な悪習である︒﹂

い哭約と婚姻の間の時間的間隔について

( §

1 8

)

﹁どれだけの時間的間隔が芙約の成立と結婚の完行との間に経たねばならないかは︑契約を結んでいる当事者達とそ

の保護者達の賢察にゆだねねばならない︒というのは同一の時間を正確に決めることはできないからである︒しかし︑

両極端だけは避けられねばならない︒従って︑結婚は契約後にただちに挙式されべきではない︒それでは前述の契約

の目的と理由が無意味になるからである︒また︑あまりに長く引き延ばされるべきではない︒婚約をして妻を手に入

れ︑それから外国へ出かけ数年間不在となるという多くのものがとるやり方は不当なものである︒

我が教会及び他の教会の立派な慣習が示すところによれば︑少なくとも三週間が契約と婚姻の間に経たねばならな

いとされている︒というのは︑契約は︑結婚式が挙げられる前に三回︑

(9 ) 

であ

る︒

③ 婚 姻 の 公 け の 挙 式 に つ い て

婚姻を完行させる最後の段階は︑公けの挙式である︒それには︵宗教上の聖別と︑佃世俗の祝福とがある︒

︵ 婚 姻 の 宗 教 上 の 聖 別 に つ い て

﹁婚姻の宗教上の聖別は︑日中︑教会の広々とした正面で︑聖職者の祝福によって行われる︒婚姻の宗教上の聖別は︑

三つの理由から必要とされる︒その第一は︑婚姻は一種の公けの行為だからである︒婚姻が整然と行われるかいなか

は︑家族︑教会︑国家の利益もしくは損失に資するものである︒

五七

それも週一回ずつ公示されねばならないから

というのは︑婚姻によって家族が創設され︑教会と

国家は強化され持続されるからである︒その第二は︑婚姻は栄誉をともなうものだからである︒二人の人を結びつけ

11‑‑1 ‑‑‑57 (香法'91)

(18)

る神聖で侵すべからざる絆だからである︒

その第三は︑婚姻は神との契約だからである︒神は男性と女性を婚姻で結

これらの理由から︑婚姻は日中に挙式され︑

も︑その証人となり祝福を添えるものも自由に近づきうる公けの場所で行われることが必要であると考えられてきた︒

it 

婚姻の世俗的祝典について

その婚姻に異議を唱え︑

そして正当な理由があればそれを妨げるもの

公けの場所のなかでは教会が最も適していると考えられる︒教会は祈りの場だからである︒そのうえ︑結婚式を挙げ︑

結婚する当事者達を結びつけるのは︑聖職者が最もふさわしいと思われる︒聖職者は神の立場

Ro om

におり︑神は神の

聖職者によって当事者達を結びつけ︑彼らを祝福するからである︒﹂

﹁先に述べた婚姻の聖別で︑婚姻は実体に関しては完全に完行されるのであるが︑栄誉なものをより厳粛にするため

さらに婚姻の世俗的祝典が加えられることが必要である︒世俗的祝典には︑婚姻の外見上の厳粛さを宣言する ために利用される正当な慣習が含まれている︒友人達が集い︑友人達は最上の衣服を身につけて︑教会への行き帰り

に花婿と花嫁につきそい︑祝宴を開いて喜びを示す︒﹂

﹁婚姻が定められた目的は︑婚姻の栄誉に重みを加えることである︒その目的は特に一二つある︒その第一は︑人類が

増やされるであろうということである︒しかも単に増やされるだけでなく︑正当な血統をもつ明瞭な家族が増やされ

るであろう︒家族は︑都市や国家の育成の場

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であり︑教会もこの聖なる種子によって保持され繁殖される

であろう︒その第二は︑男達は私通を避け︑神聖かつ栄誉ある自分達の器

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s を持つであろうということである︒ 一︑婚姻の目的について

( §

2 4

)  

びつける最高の動作者

A g

e n

t だからである︒

五八

11‑‑‑1~58 (香法'91)

(19)

秘密婚とイギリス近代 日(栗原)

五九

この目的は婚姻の栄誉に重みを加えている︒その第三は︑夫婦はお 互いにとって相互の助け手であるということである︒子供をつくるための助け手であるのと同じように︑子供を育て るための助け手であり︑家族を創設するための助け手であるのと同じように︑家族を正しく統治するための助け手で

ある︒繁栄のときに身を慎み︑逆境のときに耐えるための助け手である︒﹂

四︑秘密婚

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について

﹁私人の家もしくは他の秘密の場所でなされたり︑充分な数の証人もなく教会でなされたり︑夜中になされたり︑合

と同じくらいに︑何らかの不正がその婚姻に付着していることを意味している︒このような婚姻がうまくいくという 望みはない︒婚姻への祝福を得るために是認される手段が無視されているところにどんな祝福がそれに対して期待さ れようか?﹂

( l )  

W .  

G

o u g e ,   o p .  

cit 

••

P .   1

79 . 

( 2 )  

Ib id

  ••

P .  

18 8.  

( 3 )  

Ib id ., P  P.

 1

89

1 90 . 

( 4 )  

Ib id

  ••

P .  

196

19 7. (5 J) I  bi

d  ••

P .  

19 8.  

( 6 )  

Ib id .,

P  

P.

 1 98

1 99 . 

( 7 )  

Ib id ., P  P.  2 0

 0

20 2.

法的な僧侶もなしになされたりする秘密婚は︑違反している︒

このような秘密の追求が婚姻の栄誉と威厳を落とすの

男は腐敗した性質から欲望に走りがちなために︑

11-~1 ‑‑‑59 (香法'91)

(20)

いちばん確かな証拠である﹂と考えられ︑ もなう現実の諸問題が明示されている︒

( 8 )  

Ib id ., P .     2 02 . 

( 9 )  

Ib id ., P   P.  202

20 3.

( 1 0 )   I bi d. ,  PP . 203

20 5.

( 1 1 )   I bi d. ,  P .  

20 6.  

( 1 2 )   I bi d. ,  PP . 

209

21 0.

( 1 3 )   I bi d. , 

P .   2

05 . 

第二講話の前半部分﹁夫婦の正しい結合﹂を長々と紹介したが︑キリスト教徒にふさわしい婚姻の仕方とそれにと

婚姻は財産︑身分︑宗教などが同等な男女による愛情にもとづく結合であるべきであるというガウジの婚姻理念は︑

財産めあての婚姻や身分違いの婚姻が生じているという現実に直面していることが窺えよう︒

婚姻予告による教会挙式婚に至るまでの婚姻の三段階の手順が示されている︒第一段階は︑適齢期の男女が出会い︑

相互に好感や愛情をいだきあうようになる婚姻の前段階としての求婚Courtshipの段階である︒しかし︑

柄のひとつとして︑

(2 ) 

なのである︒

この求婚の

段階は両当事者の自由な選択によって成就されるのではない︒親の同意が必要とされる︒子供は﹁親の支配下Under

P a

r e

n t

s   Government﹂に置かれていることから︑﹁子供の服従は親の権威を最もよく証明し︑子供が親に示す尊敬の

この服従義務から︑﹁子供が親の同意なしに物事を行うのを控える﹂べき事

子の婚姻が位置づけられている子供が自分の婚姻に対して親の同意をえることは﹁子供の義務﹂

第二段階は婚姻契約である︒これによって婚姻は始まると位置づけ︑婚姻契約中の二人は未婚者と既婚者の中間的

六〇

11‑l ‑60 (香法'91)

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