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イーストサセックス州の在宅介護者

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(1)

著者 三富 紀敬

雑誌名 静岡大学経済研究

3

3

ページ 93‑135

発行年 1998‑11‑10

出版者 静岡大学人文学部

URL http://doi.org/10.14945/00000655

(2)

イース トサセ ックス州の在宅介護者

 

イース トサセ ックス州の在宅介護者

は じめに

本 稿 は 、本誌他 で扱 って きた イギ リスの在 宅介護者 に関す る作業 の一部 であ る。

州 内の都 市 と農村

イー ス トサ セ ックス州 は、イ ングラ ン ド南東部 の州 であ る。州都 ブライ トン・ ホーブ市 は、 の ちの 国王 ジ ョー ジ4世 (King George )が皇 太 子 時代 の1783年 に訪 れた都市 と して、 また、は るか遠 くに フラ ンス を望 む海岸保養 地 と して も良 く知 られ る。州都 か らロ ン ドンまでの所要時 間 は、ブ ライ トン駅 とロ ン ドン・ ビク トリア駅 あ るい は ロ ン ドンブ リッジ駅 の間 を走 る列車 で1時

間前後 で あ る。1時間 に5‑6本の列車 が 、朝 はや くか ら夜 遅 くまで ブ ライ トン駅 をロ ン ドンに 向 けて 出発す る。州都 とその近郊 の都市 は、ロ ン ドンにいか に も近 い距 離 にあ る。 日帰 りの往 復 乗 車 券が 、 ロ ン ドンの 自然 史博物館 や ウ ィンブル ドン・テニス博物館 な どの割引 き入館 券 と組 み 合 わせ て発 売 されてい る。当初 の予想 にたが わず好調 な売 れゆ きの ようであ る。 ロ ン ドンヘ の近 さに注 目 した企画 な らで はの売上 げ実績 で あ る。 ロ ン ドンまでの所要時間は、 自動車 を使 って も 90分 程 であ る。 イギ リスの首都 に至便 な位 置 にあ る といえ よう。

ところで、イングラン ドは、8つの地方 に区分 される

(1)。

これは、国家統計庁 (ONS)の 準 による区分である。イース トサセ ックス州は、これに従 えばサ ウスイース ト地方に属する。 こ の地方は、ロン ドンの全ての 自治区 と12の州 をもって構成 される。この地方は、イングラ ン ドは もとよ リウエールズやスコッ トラン ドの諸地方 に較べて も最 も豊かな地方 として知 られる。これ

‑93‑―

(3)

は、教育水準 をは じめ労働力率、持家率、長期 の疾病患者比率、民間医療保険の加入率、家計収 入の水準 、犯罪発生率、自家用車保有率及び製造業従業員の粗付加価値額 などのごく基本的 な統 計指標の どれを取 り上げて もそ うである

(2)。

労働力率や民 間医療保険の加入率 な どは、イギ リス で最 も高 く、他方、長期の疾病患者比率 と犯罪発生率は、 もっ とも低 い。

サ ウスイース ト地方の豊か さは、イース トサセ ックス州 にも妥当するか といえば、残念 なが ら そ うでない。州の労働 と生活の条件 は、最 も豊かな地方 にあつてむ しろ例外的に厳 しい。その厳 しさは、イギ リスの中で も目立つ程 である。表1は、人 口と就業及び住宅等 に関する諸指標 を一 覧 した ものである。賃金水準の低 さは、サ ウスイース ト地方は もとよ リイギ リスの平均 に比 べ て も目立 って低 い。これ とは反対 に、長期 にわたって疾病 を患 う患者の比率は、仕事 を持つ大 人の いない世帯比率や低社会階層比率あるいは自家用車のない世帯比率 などと共 に際立って高い。 日 立つ程の高 さは、表の諸指標 に示す ようにサ ウスイース ト地方 は もとよ リイギ リスの平均 に較 ベ て も確認 される。これ らの事実の一部は、州社会サー ビス部やブライ トン・ホーブ市議会 に よっ て も公式 に確 かめ られる

(3)。

労働 と生活 の例外 的な厳 しさは、相応の要 因にそった特徴 であ る。

州内にある事業所の多 くは、小規模 なそれである。事業所 のお よそ4分3は9人以下の事業 所 によって 占め られる。製造業の就業者 は、10%にさえ満 たない。 これは、全国平均のお よそ半 分である。他方、先端技術の分野 に働 く就業者 は、イギ リスの中で最 も少 ない。農家 を含 む 自営 業者の比率は、全 国的に見て も高い部類である。

州における労働 と生活の厳 しさを語 る時、広大 な農村 の存在 を指摘 しないわけにいかない。殊 にコ ミュニテ ィーケアや在宅介護者 について論ずる時に農村 とその影響 を視野の外に置 くのであ れば、それは、明 らかに片手落 ちと言 うべ きであろ う。 しか し、多 くの旅行者、とりわけ州都 ブ ライ トン・ホーブ市やイース トボー ン市あるいはヘーステ ィング市 など州内の主要 な都市 だけを 足速に訪ねた人々は、州内の農村 とその影響 と言 つて も相応の実感 をもって受け止め られないの ではなかろうか。 5月 初頭の 日差 しは、春先 きと言 えどもいかにも穏やかである。車窓の外 に広 がる耕地は、来の花 をまとって実に牧歌的である。 うさぎを耕地のそ こか しこに見つけるの も、

じっ と目をこらせば線路 を走る列車の中か らで さえむずか しいことでない。 しか し、農村 の存在 とその影響 は、州内を足速 に駆 け回る旅行者の 目にいかに美 しく映ろうとも、そ こに暮 らす 人 々 に大 きな問題 を投 げかける。

農村 とそ こでの暮 らしを牧歌的 に描 くのは、何 も旅行者 に限 らない。イギ リスの大都市 に住 む 人々 も、 しば しば同 じ像 を描 きがちである。農村 の抱 える問題は、牧歌的な印象 に押 されて脳 裏 に浮かぶ ことさえ少 ない。そ うした誤 りは、政策立案者 によって もしば しば犯 され る。『 コ ミュ

‑94‑―

(4)

イース トサセックス州の在宅介護者

イ ース トサセ ックス州 にお ける人 口・ 就業及 び住宅等関連諸指標

(1)

[資]Office fOr National Statistics, 1991 Census, key statistics for urban and rural areas, Great Britain, The Stationary Office, 1997, p.65, p.106,p.121,p.139,pp.204‑205,pp。 209‑

21l and pp.243‑245,Central Statistica1 0ffice,New Earnings Survey 1995, Part E, E108.

1‑Elll.1,C)ffice for National Statistics,Regional trends 32, 1997 edition, The Stationery Office,1997,p。 127よ り作成 。

[注](1)賃金水準 のみ1995年 、他 はいずれ も91年 の実績 であ る。

(2)Long一term illnessをさす 。

(3)社会階層I〜 (N)をさす 。

(4)イ ー ス トサ セ ックス州 を含 む次 の12の 州 か らなる。Bedfordshire,Berkshire,Buckingham‐

shire, East Sussex, Essex, Halnpshire, Hertfordshire, Isle of Wight, Kent, Oxfordshire, Surrey and West Sussex. Central Statistica1 0ffice, New Earnings Survey 1995, Part E,

El10。 2.

(5)空欄 は、不 明である。

(単位 :ポ ン ド,%)

イース ト サ セ ックス州

ロ ン ドンを除 く サ ウス イース ト 地方

(4)

イ ギ リ

1。

年金支給開始年齢以上の人口比率 1昇

2.長期の疾病患者(2)比

3.仕事 を持つ大人のいない世帯比率

4。

パー トタイム比率 1曇

5。

賃金水準

肉体労働のフルタイム

  1霙

 1晏

6.低社会階層世帯

(3)の

比率

7.大人一 人の世帯比率

8。

年金生活者一人のみの世帯比率

9。

シャヮー、風 呂、 トイ レな どのない も しくは共用の世帯比率

10。

自家用車 のない世帯比率

8.90 17.48 13.08 41.40

4.66 37.17

263.2 168.0 385.5 277.9 32.67 32.36 19.99 1.99

36.51

6.38 12.06

9。

92 30.64

300.5 197.2 445.5 290.2

24.97 14.32

19

6。

44 12.28 12.35

35。

62

3.34 37.75

291.3 188.1 443.3 288.1 31.31 26.79 15.08 1.25

33.35

‑95‑―

(5)

ニテイーケアに関するグリフイス報告』(1988年)がそうである。これに続 く『コミュニテイー ケア白書』(89年)も しかりである。これらの『報告』と『白書』は、地域における被介護者の 暮らしとその条件について多面的な分析を施しながら、農村とそこでのサービス受給について黙 して語ろうとしない

(4)。

自治体社会サービス部と保健局の手になる『コミュニテイーケア計画』

の多 くも、『グリフイス報告』を手本にするせいであろうか農村について一言なりとも触れない。

数少 ない例外 は、イース トサセ ックス州の コ ミュニテ イーケア計画 (1996‑99年及び97‑2000年

)

である。州社会サー ビス部は、農村 に関す る項 目を計画の優先事項 に掲 げ、独 自に必要 な施策 に ついて約束する

(5)。

農村 に住 む人々のニーズは、都市 に暮 らす人々のそれ と格別のちがい を持つ わけで ない。両者 に大 きな相違がある とすれば、それは、ニーズ 自体でな くニーズ を充足する度合いである。農村 の人口密度は、計数 を引 き合いに出す まで もな く低 い。人々は、あちらこちらに点在する住宅 に 暮 らす。住宅 とサー ビスの供給場所 とは、かな り離れる。気の遠 くなる程 に離れることも、稀 れ でない。保健訪問員やホームヘルパーなどの専 門職者 は、都市 に関す る限 り日に6人の患者 を訪 ねることが出来る。他方、農村 について言 えば 1日 に3人がせいぜ いである。両者のちがいは、

移動 に要す る時間の長 さに起因する。移動時間は、効率化 を名 目にするサー ビス供給場所の統 合 と集中化 につれて長 くなる傾向にある。この影響 は、農村で特 に大 きい。住み込み医のいない小 病院は、あちこちの農村で閉鎖 される。診療所 は、都市の大 きな病 院に統合 される。イース トサ セ ックス州で実際 に進め られたことの一部である。結果は、無医村 の増加である。表2は、そ の 一端 を示す。表中バ トル、ウインチ ェルシー、ライ、ウツクフイール ドの4自治体 は、いず れ も 農村部 にある。人口 も、多い 自治体で さえ6,000人 を下 まわる。診療所 や病 院 な どは、一見 して 明 らかな ようにこれ らの 自治体の多 くに存在 しない。他の施設やサー ビス もしか りである。ブ ラ イ トン・ホーブ市やイース トバー ン市 との落差は、歴然 とす る。移動時間の 自治体問格差は、施 設の統合 と集中化 をへ て さらに広が る。州 内には、前 出の表2に示す ライ町な どよ り人口の少 な い町村 も多い。状況はそれ らの町村 において一段 と深刻である。銀行 (常)や高齢者のデ イケ ア、警察 (常)や住民相談事務所 さえ持 たない町村 は、表3のように圧倒的 と評 して良い程 に 多い。

実労働時間当た りの移動時間は、州内のホームヘルプ・サー ビスを例 に示す な らば都市部の あ る自治体で

1.38、

同 じく農村部の 自治体で3.22である (96年

)。

移動時間の格差は、同 じ自治体 の 中で も都市部 と農村部 とではっ きりと異 なる。実労働時間当た りの移動時間は、州第2の都 市 ル イス市 を例 に取 るな らば都市部1.57に対 して農村部4.91である(6)(96年

)。

両者の格差は著 しく大

‑96‑―

(6)

イース トサセ ックス州内6自治体における職業0生活関連施設及びサー ビス等の状況

  (2)(3)(ヵ 所、人

)

  (%)

ω

ウ ッ ク フ ィ ー

.バ

ω一〇 一〇

lC)

(E)

一〇

職業紹介・コンサルテイング会社 図書館

診療所 医師 病 院

家事援助 サ ー ビス会社 看護婦・介護者斡 旋 派遣会社

社会 サ ー ビス 。福祉 団体 ナー シ ングホーム 慈善団体

カウンセ リング・助言 団体 在宅介護者 グループ 障害者情報サ ー ビス

0

1

0 3

1

0

0     1     6   0     0   0

0 0 0 0 0

0

0 0 0 0 0 0

0 0 0 3 0

0

0   0     2     1     1     0

5

1

2 2

1

0

2

1

8 3 2 0

53 4 37 90 4

16

16 55 85 38 10 11

14 7 4 25 3

10

6 21 23 19 6 2

0.0 25.0 0.0 3.3 25.0

0.0

0.0 1.8 7.1 0.0 0.0 0.0

0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

0.0

0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

0.0 0.0 0.0 3.3 0.0

0.0

0.0 0.0 2.4 2.6 10.0 0.0

9。

4 25.0

5。

4 2.2 25.0

0.0

12.5 1.8

9。

4 7.9 20.0 0.0

0 419 0.0 6.4

イース トサセ ックス州の在宅介護者

[資料]B五tish Telecommunication,Yellow pages,Tunbridge Wells 1993/94,Tunbridge Wells 1997/98,BHghton 1998/99,CareLine,No.6,March 1990よ り作成。

[注](1)『イエローページ』における表記は、上か ら順 に次 の通 りであ る。Employment Agencies and Consultants,Libraries, Clinics, Doctors(Medical Practitioners), Hospital, Domestic Service,Nursing Agencies and Care Agencies, Social Service and Welfare Organisations, Nursing Home, Charitable Voluntary Organisation, Counselling and Advice, Carers Groups, E)isabled lnformation Services.

(2)バトル、ウインチェルシー、ライは97年度、ウックフイール ドは93年度、ブライ トン・ホープ、イー ス トバーンは98年度の実績である。但 し、在宅介護者 グループは、市町村の別な くいずれ も90年3月 の 実績である。

(3)空欄 は、不明である。      

‑97‑―

(7)

イ ー ス トサ セ ックス州 ル イス域 内23町 村 の各種 施設及 びサ ー ビスの有 無

(1)

  

(力

)

 

(高 %)

 

 lA)   し (B) 商店 (常 設

)

銀行 (ク

)

小学校 中学校

高齢者 のデ イケア 村 内の医師

他村 を拠 点 にす る医師 歯科 医師

病 院

ク リーニ ング店 美容 院

足病医

集会所 (教会 のホール

)

住民相談事務所 援助 グルー プ 図書館 (常 設

)

スイ ミングプール 高齢者 クラブ 平 日に走 る鉄道

平 日18時 以降 に走 る鉄道 平 日に走 るバ ス

平 日18時 以降 に走 るバ ス コ ミュニテ イーバ ス 警察 (常駐

)

9 2 11 2 2 4 3 3

1

6 6 6 5 0 5

1

3 6 5 3 15 8 4 0

14 21 12 21 21 19 20 20 22 17 17 17 18 23 18 22 20 17 18 20 8 15 19 23

39。 1

8.7 47.8 8.7 8.7 17.4 13.0 13.0 4.3 26.1 26.1 26.1 21.7 0.0 21.7

4。

3 13.0 26.1 21.7 13.0

65。

2 34.8 17.4 0.0

4.6 18.4

19。

9

[資料 ]Sussex Rural Community Council,SRCC rural services data base 1991(with supplemen‐

tary data 1993), village services available in parishes with in the district of Lewes, Sussex Rural Community Council,1993,pp.2‑47よ リタト成。

[注 ](1)1993年 時点の実績である。

―‑98‑―

(8)

イース トサセックス州の在宅介護者

きい。社会サービスの予算は、この格差 を考慮 に入れるならば農村 に手厚 く配分 されて しか るべ きであろ う。サー ビスの均等 な受給 は、これを基盤 に して こそ可能である。事態 は、残念 な こ と にその ように進んでいない。む しろ反対である。地域間の差別的な扱 いの詳 しい実証は、容易 な 作業でない。 しか し、地域 間の差別的な扱 いは、争 う余地のない事実であるように思 える。一例 をあげよう。州中部のウィールデン地域 と合併前のブライ トン市 は、ほぼ同 じ規模の人口であ (7)(13万 214人14万 3,582人91年

)。

前者は、言 うまでもな く農村地域である。人口1人当た りの社会サービス支出は、前者に薄 く後者に厚い。すなわちブライ トン市のそれは、後者の2倍 である。社会サービス部の取扱い件数はtブライ トン市について30%程多い。社会サービスの現 場を担当する職員は、ブライ トン市についてウィールデン地域の2倍以上である。この結果は、

ブライ トン市の住民に有利なサービスの給付である。ホームヘルプ・サービスの時間は、75歳 上の高齢者について見るとウィールデン地域について平均で3分1程短い (92年

)。

サー ビ スの受給は、専門職者の移動に要する時間の地域間格差を考慮に入れないことから農村において 著 しく不利な結果である。

サー ビスの利用 に関する情報の不足 は、農村 におけるサー ビスの欠如や不足のひとつ として大 きな問題である。殆 ど全ての自治体 は、移動図書館 を毎週 もしくは隔週 に走 らせて住民の要望 に 応 える

(8)。

しか し、移動図書館 は、図書の貸 出 しを主な目的にす る。サー ビスに関する情報 の提 供 を業務のひ とつにあげる移動図書館 は、残念 なが ら少 ない。村役場は、この種 の情報 を掲示板 に時折掲示す る。教会や郵便局それに商店は、社会サービス部のパ ンフレッ トな どを建物の一角 に置 くことか ら情報源のひとつである。 しか し、情報の不足 は、これ らをもって して も克服 で き ない。農村 に住む人々は、どのようなサービスが どこに用意されているか知 らないばか りにそれ を利用できない。サービスの地域間格差は、こうした事情によっても否応な く生まれ強められる。

交通手段の欠如は、農村におけるサービスの利用を大 きく左右する。海岸沿いに州の東西 を走 る鉄道は、単線である。州の南北をつなぐ鉄道は、僅かに 2つ の路線にすぎない。そのうちの

1

本は、州の北部 と中部とをつな ぐだけで、州の南北を文字通 り縦断する路線ではない。これらは、

鉄道の相次 ぐ廃線の結果である。バス路線 もしか りである。目的地に着 くまでに2‑3回乗 り換 える例は、鉄道とバスとを問わず多い。これは、海岸沿いを東西に走る鉄道の場合も例外でない。

まして州の南北をつなぐ鉄道やバスの利用は、目的地に辿 り着 くまでに数回にわたる乗 り換えを 覚悟 しなければならない。州内の公共交通は、利用者本位 とは程遠い現状にあるとかつて批判 さ れたことがある。エセックス大学の教授による93年当時の指摘である

(9)。

その根拠のひとつは、

乗 り換えの多 さである。この批判は、今 日にもそのまま妥当する。乗 り換えは、93年以降に一段

‑99‑―

(9)

と多 くなった と言 う方が、む しろ正確である。人は、公共交通の不備 をなげいてばか りいないで 自家用車 を大 いに利用すれば良いではないか、と言 うか もしれない。 しか し、交通手段 を必要 に する人々の中には、自家用車 を持 たない例 も少 な くない。 自家用車のない世帯比率 は、前 出の表 1に示 した ように例外 的に高い。自動車のハ ン ドルを握れない人々 も、長期 に疾病 を思 う人 々や 一人暮 らし世帯の相対的な多 さといった別の事実に重ねあわせて考 えるならば、けっ して無視す るわけにいかない数である。交通手段の確保 は、サー ビスの存在 と利用方法 を知 る人々にとって さえ足枷 にな りかねない。

社会サー ビス部 は、公共交通の不備 と自家用車のない世帯の多 さに関心 を寄せ 、その是正 に乗 り出す。是正の方法は、主に3つである。第1に、ボランテ ィア・ グループや団体の奨励である。

2に、よ り多 くのボランテ ィアの発掘である。第3に、グループや団体間の協力の促進である。

具体的 に°

は建物や資源の共同利用 による効率化である。社会サー ビス部は、これ らにそって交 通 手段の確保問題 を是正す るべ く一定の資金 を投入する。これ らの努力は、各地で一定の成果 と し て実 を結ぶ。これを否定す るわけにいかない。 しか し、大 きな限界のあることも憶す ることな し に指摘 しなければならない。ボランテ ィア団体の運営 による地域交通セ ンターなどは、表4に す ように10%を前後す る自治体 に確認 されるだけで、他の90%前後 の 自治体 に存在 しない。状 況 は、交通手段 を独 自に配備 してサー ビスを提供す る赤十字社や クロスロー ドなどのボランテ イア 団体 について も同様である。状況 は、社会サービス部の 日論見通 りに進 んでいる とは言いがたい。

ボランテ ィア団体 は、この州 にも数多い。ブライ トン/ホーブ市 ボランテ イア・サー ビス協 議 (BHCVS)に 加入す る団体 だけを取 つて も261を数える。0(97年

)。

また、イース トボー ン 市ボランテ イア・サー ビス協議会 (EAVS)の それ も、先の協議会 とほぼ同 じ230団体 にの ぼ (98年

)。

ちなみにイース トボー ン市 の人口は、8万人程である (8万1,395人91年

)。

団体 と 人口 とを較べ るならば、ボランテ イア団体の数の多 さを感 じ取 っていただけるのではないか と思 われる。これ らの団体 は、チ ヤリテ イー法の適用 を受 ける団体 にふ さわ しく誠実 な努力 を重 ね る ように見受け られる。 これは、幾つかのボランテ イア団体 を直接 に訪れた り手紙で問い合わせ た 際にいつ も親切 この上 ない応対 に接 した とい う体験のせいばか りで ない。 きき取 つた内容 や入手

した資料の検討か らも引 き出 される結論である。

団体 の組織 と活動 は、幾つかの角度か ら特徴づ け られる。

1に、団体の事務所 は、州内の主要 な都市 に配置 される傾向にあ り、農村部 のそれは著 し く 手薄である。

一‑100‑―

(10)

イース トサセックス州の在宅介護者

イ ース トサ セ ックス州 ウ ィールデ ン区域 にお けるボ ラ ンテ ィア団体 の有 無 と活 動状 況

(1)

   (%) 1.訪間の有無 と頻度

a。

あり

 │::T農

b。

な し

0.0 14.3 14.3 19.0

2.4 2.4 9.5 19.0

47.6

2.昼食 クラプの有無 と頻度

a。

あ り 1毎 2.4

14.3 9.5

7.1

毎週 2週1度 月に 1度

33.3

66。 7

7.1

92.9 14.3 85.7

7.1

92.9 4.8

95。

2 2.4 97.6 11.9 88.1 11.9

88。 1

11。

平均

a。

あ り

b。

な し

[資 料]SusseЖ Rural Community Council,Going local,a strategy for rural care in East Sussex on behalf of East Sussex County Council and East SusseЖ , Brighton and Hove Hcalth Authority, Fourth draft 2/10/97(First draft;1l AuguSt 1997),p.13よ り作成。

[注 ](1)1997年初頭 における実績である。

(2)この場合の援助は、特 に在宅介護者に限定 されない。広 くコミュニテイーケアの対象者への援助 グループで ある。

(3)上に示す2つの団体の他に次の2団体 をさす。Care fOr the Carers East SusseЖ,Rescal Now.

b。

な し

援助 グループ

(2)の

有無 と援助の頻度

a。

あり

 │::T農

b。

な し

地域交通センター (CTC)の有無

a。

あ り

b。

な し

社会交通手段計画センター(SCSC)の有無

a。

 あ り

b。

な し

近隣者介護計画 (GNCS)の 有無

a。

あ り

b。

な し

足病治療 クラブ (CC)の有無

a。

あ り

b。

な し

赤十字在宅サー ビスの有無

a。

 あ り

b.な

クロスロー ド、メンカップ

(3)な

どの有無

a。

あ り

b。

な し

住民相談事務所の有無

a。

 あ り

b。

なし

︲ 6   

(自

治体

)

︲4   28

  3 39   6 36   3 39   2 40  

︲ 4

.   5 37   5 37

―‑101‑―

(11)

アルッハ イマー病協会 (ADS)は、州内に事務所 を構 える。この協会 は、痴呆症患者 とそ の 在宅介護者及びその友人や隣人あるいは専 門職者 を対象 にサー ビスを提供す る。サー ビスは、情 報の提供や相談窓日の開設、一時休息及び教育訓練 など多岐 にわたる。在宅介護者の寄せ る信頼 は厚い。事務所 は、ブライ トン・ホーブ市 をは じめイース トボー ン市、ヘーステ イング市それ に ベ クセル市の 4カ 所 に開かれる。4つの 自治体 は、最 も少 ない場合で さえお よそ4万人、最 も多 い とお よそ23万人、平均お よそ11万人の人口規模 を誇 るい)(91年

)。

いず れ も州 を代表す る 自治 体である。海岸線 を東西 に走る列車の主要な停車駅 を持つ 自治体 とい うことで も共通す る。

エイジ 。コンサー ンは、この州 において も大 きな影響力 を持つ。その 目的は、州内に暮 らす高 齢者 の「生活の質」の改善である。高齢者の権利 について周知 しなが ら各種のサービスを提供 す る。『アクテ イブ・エイジ』(Active Age)と名付 け られる機 関紙 は 、州 内 に3万3万5,000部 の配付実績 を持つυ)(96‑97年

)。

読者層が45歳以上の中高年齢層 (30万 9,596人、91年)であ る と仮定すれば、機 関紙 は、45歳以上層の

9。

7‑11.3%に当たる人々に読 まれる勘定 になる。電話 や 事務所 を訪れての相談は、年間5,000件を超す0(97年

)。

この相談は、年 を追 って伸 び る傾 向 に ある。お よそ2,500人のボランテ ィアを擁する (98年

)。

その主力 は、高齢者で あ る。 この団体 に 加入す る地域 グループは、26である )。 グループは、 1自 治体 に1つであるか ら26の自治体 に存 在す る勘定である。州内106自治体のお よそ4分1に存在す ることになる。 グループ を地 図 に 落 してみ る と、農村 部 に当たる州の中央部 に も散見 される。 しか し、グループの多 くは、海岸線 の都市沿いにある。先のアルツハ イマー病協会 に類似の傾向を見て取 ることがで きる。エイジ・

コンサー ンは、アルツハ イマー病協会の4.2倍に当たる収入 を運用する団体である (96年

)。

しか し、組織 と活動の都市部への傾斜 は、財政力の相対的に豊かなエイジ・ コンサー ンを してさえ免 れないのである。

2に、窓回の開設 日数 と時間の長 さは、地域間の格差 を伴 う。

ヘーステ ィング・ ローザー地域の住民相談事務所 を例 に取 り上げてみ よう。相談の件数は、 1

6,000件を超す (96年

)。

前年度 に較べ ると

5。

7%の伸 びである。相談の内容 は、消費者問題 、 公的 な諸手当、住宅、法律問題、雇用就業 な どの順 に多い。この相談事務所 は、域 内に 2カ 所 の 窓口を設ける。ヘーステ イングス市 とライ町 とである。 2カ 所の相談事務所 は、いずれ も駅前 に 程近い通 りにある。 しか し、窓日の開設 日数 と時間は異 なる。前者 は、週 5日 のべ32時間である。

他方、後者 は、週 2日 のべ4時15分であるい)。 これ らの格差 は、州内の他の住民相談事務所 に も確認 される。窓日の開設 日数は、農村部において少 な く、相談 に当たる時間 も農村部で短い )。

この例外 は、イース トサセ ックス州の住民相談事務所 を見 る限 り存在 しない。窓口開設 日数の短

―‑102‑―

(12)

イース トサセックス州の在宅介護者

さは、農村 にサー ビスを届ける他の団体 に も共通 に確認 されるつ。相談などに応ずる時間 もおの ず と短い。

同 じボランテ ィア団体 といえども、都市部 にだけ事務所 を構 える場合には、その窓口開設 時 間 も長い。アルツハ イマー病協会 は、電話 による相談 を週 5日 のべ37時30分にわたって受付ける。

痴呆症 に関す る電話相談は、これ とは別 に開かれる。それは、週 7日 のべ84時間にわたつて 開か れる。この他 に事務所 を直接訪れて休息 を取 ることも可能である。これは、週 4日 のべ14時間 の 枠内である。 これ らの窓口開設時間は、州内4つの事務所 にはぼ共通する。農村部 にも足場 を置

くボランテ ィア団体 とは、明 らかに違 う特徴 である。

3に、公共交通手段 を利用で きない人々向けのサ ービスが、ボランテ ィア団体 によって も担 われる。

ボ ランテ ィア団体 による交通手段 の運用は、イギ リスの各地に見ることが出来 る。この州 に取 り立ててめず らしいことではない。被介護者が病院やデイセ ンターに通 った り、観劇や買物 あ る いは小旅行 に出掛 けた りするための手段 として、この州 において も好評である。アルツハ イマ ー 病協会やエイジ・ コンサー ンもこれを運用す るボランテ ィア団体である。この州 にやや独 自の運 用は、農村 における交通手段の欠如や不足 に着 目す る取 り組みである。これは、サセ ックス農村 地域協議会 (SRCC)の 手掛 ける事業のひとつである。この協議会は、農村地域の発展 を 目標 に企業の誘致、住宅の整備、教育訓練水準の向上及び コ ミュニテ イーケアなどにかかわる事 業 を 手掛 ける。農村地域の交通にかかわる事業は、州内 7カ 所 にお いて進行 中であ る(0(98年

)。

の種 の事業 は、ロン ドンなどの大都市のボランテ イア団体 にとって想像 しがたい取 り組みである。

最後 に、ボランテ ィア団体 によるサー ビスの給付 を待 ち続 ける人々の発生 とその累積である。

社会サー ビス部や保健局か らの助成金 は、 どのボランテ ィア団体 において も減 らされる傾向 に ある。ボランテ ィア団体 は、これに代わる財源 を求めて四苦八苦の状態である。財源の問題が 、 定例総会 に提 出される議案の冒頭 を飾 る例 もさ してめず らしくない。財源の上手な確保 をテーマ にす る講習会が開かれる今 日この頃で もある。財政状況の厳 しさは、ボランテ ィア団体 とその活 動 に幾つかの陰 を落 としは じめる0。 そのひ とつ は、事務所の一部閉鎖である。エイジ・コンサー ンの苦衷 にみ ちた選択である。また、職員の削減 と所定外労働時間の増加である。ボランテ ィア の不足 は、職員の削減や不補充の中で指摘 されは じめた問題である。これらは、エイジ・コンサー ンと住民相談事務所の双方に起 きている問題である。さらに、サービスの給付 を首を長 くして待 ち続 けなければな らない人々の発生 とその累積 である。アルツハ イマー病協会や クロスロー ドな どの団体 の経験である。 しか も、新 しいサー ビス と りわけ農村部 におけるその開発 は、財源 の 目

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(13)

途が立 たないことを理 由に しば しば見送 られる。これは、サセ ックス農村地域協議会の公式 に認 める事実であるい)。 サービスを待 ち受 ける人 々の列 は、この見送 りに伴 つて確実 に増 える こ とに なろう。

特徴 の うちの幾つかは、他の州 において も確認 される。

 保健 省援助事業 (1986‑89年)とボランテ ィア団体

保健大臣は、「地域 における介護 の支援」 と題する計画 を1984年に公表す る。予算 の総 額 は、

1,050万ポ ン ドである。 3カ 年 にのぼる計画は、介助 を要す る人 々の援助 に当た るボ ラ ンテ ィア や家族 な どの支援 を目的にす る。計画 に盛 り込 まれる事業の1つは、3地域 の選定 とそ こにお け る支援の試験的な実施である。3地域 は、大 くぐりに言えば2つの取 り組みを求め られる。まず、

域 内のボランテ イア団体が、在宅介護者のニーズ に沿 うようにサービスを立案 し拡充す ることで ある。い まひとつは、在宅介護者問題へ の関心 を域 内において高めることであ る。選定 され た地 域 は、ここに扱 うイース トサセ ックス州 をは じめ大マ ンチ■スター州南東部の繊維工業都市ス トッ クポー ト市及びウエス トミッ ドランズ州のバー ミンガム市 に近いサ ン ドウェル市である。この事 業 は、全 く新 しい試み をその うちに含 む。ボランテ ィア団体 の共同組織 を地域 内に創設 し、そ こ を経 由 しなが ら傘下のボランテ ィア団体 に資金 を援助 してサー ビスの立案 と拡充 に努めることで ある。それぞれ20万ポ ン ド、あわせて60万ポ ン ドの資金が、共同組織 に3カ 年の計画で配分 され る。

保健 省 の援 助事業 の経緯 と概 要 な どは、保 健省 の発行 になる数種類 の報告書0)に よつて容易 に 知 る こ とが で きる。 また 、援助 事 業 を担 った3地域 の経験 の一部 は、あ ま りに有 名 な『グ リフ イ ス報告』の提言にも、特にボランティア団体の役割にかかわる提起に学び取 られ盛 り込 まれる。

しか し、これらの報告が援助事業の全容をどの程度伝え、事業の直面 した全ての問題からどの よ うに教訓を学び取ったかと言えば、やや疑間である。ボランティア団体の役割が強調 される一方 で、団体の存立基盤になると殆 どもしくは全 く論 じられない。また、農村の在宅介護者 とその支 援には『グリフイス報告』でさえ黙 して語ろうとしないからである。これらの限界が、なぜ避け られなかつたのか、これはこれで検討を要する問題であろう。以下では、この問題に立ち入らず、

イース トサセックス州においてこの援助事業に直接かかわつた人々からのきき取 りや独 自の入手 資料を拠 り所にしなが ら、主に援助事業 とボランテイア団体について検討 してみたい。

援助事業は、イース トサセックス州においては社会サービス部々長K・ ヤング (Ken Young)

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(14)

イーストサセックス州の在宅介護者

氏か ら州内のボランテ ィア団体 に紹介 される。氏 は、州が3つの選定地域のひとつ に指定 され る な らば在宅介護者の利 にかな うとして、名乗 りを上げるようボランテ ィア団体 に促す。州内の ボ ランテ ィア団体は、この呼びかけに応 えて運営委員会 を85年夏 に開 く。援助事業 の受入れは、 こ こで決 まる。共同組織 の設立 もあわせて決め られる。事業 を主に担当す る職員 は、社会サー ビス 部の予算 を基 に採用 され、同 じ年の11月 4日 か ら業務 に着手す る。この職員は、当初の3‑4週

間州庁舎の一角で作業 を行 ったのち、同 じ年の12月 9日 か らエイジ・コンサー ンの事務所 (ル ス市)に移 って執務 に当たる。

共同組織の最初の公式会議 は、11月 25日 に開かれる。この会議で討論 され明 らかになったのは、

次 の事項である。第1に、在宅介護者の援助 を既 に手掛 ける個人や団体 を確認 して接触す る必要 性である。第2に、在宅介護者 と接触 してそのニーズやニーズに対応するサー ビスの開発の必要 性である。第3に、在宅介護者 に関す る教育訓練 の必要性である。第4に、ボラ ンテ イア団体 に 早急 に資金 を助成す る必要性である。最後 に、援助事業が 3カ 年 に限 られることか ら、一切 の業 務 に手早 く着手 し執行する必要性である。援助事業の広報 は、以上の討論 に沿 って翌86年 2月 旬 に行 われる。広報 は、共同組織 の設立 と在宅介護者 を援助す るボランテ ィア団体への資金助 成 2点に絞 られる。同 じ月の24日には、助成の第1回申込みについて決定 され る。1人の フル タ イム職員 と2人のパー トタイム職員が、これ らの業務 と相前後 して募集 にかけ られ採用 される。

共同組織 は、在宅介護者のための援助 (The Care fOr the Carers)と 名付 け られ る。 その構 成 は、州内の主要 なボランテ ィア団体 と社会サー ビス部々長 との間でおお よそ決め られる。共 同 組織の委員は、地域のボランテ ィアグループと州 レベルのボランテ ィア団体か ら選ばれる。 この うち後者 には、エイジ 。コンサー ン・ イース トサセ ックス (AGES)な どの ように全 国規模 の 団体 の州組織 も含 まれる。比較 的小 さな在宅介護者のグループは、結果 として共同組織 に委員 を 出さず に終わる。その半ばの理 由は、3年とい うご く限 られた期 間内に援助事業 を完了 しなけれ ばな らない ことか ら、委員の選 出をやや急いだことにある。その後、数人の在宅介護者が小 さな グループか らも選出 されて委員 に名 を連ねる。共同組織 は、最終的に24人をもって構成 される。

その内訳 は、ボランテ ィア団体13人、社会サ ー ビス部や保健局な どの代表6人、在宅介護者2人 保健 。社会サービス省2人、その他1人である。この うちボランテ ィア団体 は、全 国団体の州組 7人と州独 自の組織6人か らなる。ほぼ半数づつの構成 と言 えよう。

共 同組織の最初の会合 は、2つの ことを決める。第1に2つの小委員会の設立 と委員の選 出 である。これは、助成金の配分審査小委員会 と調査研究及び教育訓練小委員会 である。第2に 2つの小委員会への権限の集中である。共同組織 は、4半期 に1度会合 を開 き、他方、その下部

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(15)

組織 としての小委員会 は、年 に6‑7回の会議 を催 して実務 に当たる。ボランテ ィア団体へ の助 成 は、1件当た り年間2万5,000ポ ン ドの枠内であれば共同組織 の事前 の承 諾 な しに助成金 の配 分審査小委員会 によって決裁 される。小委員会への権限の集中は、共同組織の内部にも議論のあっ た ところである。それは、共同組織 にこそ権限を持たせて、小委員会 を名実共 にその下部機構 に 位置づ けるべ きだ とい う主張である。 しか し、この議論は、州内の交通事情 を主な理由に退 け ら れる。州内の移動 に要す る時間は、少 な くとも半 日を要する。これに会議の時間を加えれば、丸々 一 日仕事 になる。ま して州外 か ら駆 けつける委員 もいることか ら、24人全員が一堂に会する こ と な ど、そ う頻繁 にで きる話 しでない。共同組織への権限の集中は、ざっとこの ような議論 に沿 っ て退けられ、小委員会への権限の移譲 とい う選択肢 に落ち着 くのである。

共同組織 は、保健省の報告書 に従 えば州内15のボランテ ィア団体 に資金 を助成す る

0)。

しか し、

資金 は、州内のボランテ ィア団体の資料 と聞 き取 りによるならばこれ よ り2つ多 い17団体 に よる 19の計画 に助成 され る●)。

(1)ルイス地域一時休息計画

この計画は、以前か らある在宅介護者 グループによって申請 され、共同組織の助成 を得たの ち 86年10月 に発足す る。運営委員会が、専 門職者 と在宅介護者 をもって構成 され計画の管理 に当 たる。計画の 目的は、週当た り4時間 までの一時休息の機会 を在宅介護者 に定期的に保障す る こ とである。サー ビスの受給 は、被介護者の年齢や障害の程度 に左右 されない。唯一の基準 は、在 宅介護者が介護作業 による緊張 を強い られていることである。1人の調整役 と4人のヘルパーが 採用 されて業務 に当たる。1回の訪問当た りの利用者負担 は、 1ポ ンドである。在宅介護者によつ て支払 われる。ヘルパ ーは、ルイス市 とその北部の村 々をサービスの範囲にす る。サー ビスは、

毎月20‑21人の在宅介護者 に届け られる。一時休息は、1人当た りの月平均 で10‑12時間である。

サー ビスの照会があったのち調整役が出向いてアセスメン トを行 う。サービスは、アセスメ ン ト に沿 って給付 される。ヘルパーは、被介護者 と在宅介護者のニーズにあ うようにサー ビスを調 整 す る。在宅介護者 に対す る追加的な援助 も、在宅介護者の グループによって行 われる。但 し、 こ れは、月に1度である。計画は、高 く評価 される。在宅介護者のお よそ8人7人は、被介護者 を安心 して委ね られるサー ビスであ り、自由な時間を確保 して友人や隣人 ともま じわる絶好の機 会である と好意的な評価 を寄せ る (回答者16人14人87.5%)。 同 じく2人1人は、ヘルパー か ら他のサ‐ ビスや公的な手当について教 えて もらうなど、有益 な情報 を手 に入れる機会 として も積極的な評価 を与 える。

‑106‑―

(16)

イース トサセックス州の在宅介護者

(2)知的障害児のためのカルーセル放課後 クラブ計画

この計画 は、ブライ トン市 を拠点 にす る。知的な障害児 とその在宅介護者のニーズに応 えるた めの計画である。知的障害児 を放課後 に預か り、これによって在宅介護者 に自由な時間を確保 す る。自動車が児童の送迎用 に準備 される。在宅介護者 は、リラクゼーシ ヨンのためのグルー プに も加入 して、その中で 自由な時間をす ごす ことも出来る。2人の療法士が採用 されて業務 に携 わ る。いずれ もパー トタイムである。このサー ビス も好評である。ざっと次の ような評価である。

信頼で きる療法士 に児童 を預 ける ことがで き、加 えて個人 としての時間を確保 で きることか ら、

疲労感 もいつ とはな しに和 らぐ。

(3)ポルゲイ ト地域在宅介護者計画

この計画 は、幾つかの 目的 を持つ。それは、自宅で被介護者の世話 に当たる在宅介護者 に援助 す ること、地域内で利用で きる援助 について知 らせ ること、公 的な諸手当について周知すること、

在宅介護者の負担 を和 らげるためにヘルパーを派遣す ることなどである。5人の職員 に加 えて4 人のボ ランテ ィアが、業務 を担 う。2つの在宅介護者 グループの援助 も手掛 ける。この グルー プ は、総勢35人の在宅介護者か らなる。2つの グループとも隔週 に会合 を開 く。 ここには、平均10 人の在宅介護者が出席 して情報 を交換す る。職員は、手分 けを して この会合 に参加す る。計画 は

『在宅介護者情報便覧』を一般開業医に も配布す る。ニューズ レターは、 四半期 ご とに発 行 され て一般開業医 と在宅介護者 に届 け られる。教育訓練講座の開催 も計画のひ とつである。これは、

専 門職者や在宅介護者 それにボ ランテ ィア団体の職員 を対象 に開かれる。その内容は、痴呆症 、 介護技術 、コ ミュニケーシ ョンの技法 な どである。この計画 も、至極好評 であ る。その理 由は、

他 のサー ビスや公的 な手当についての情報の入手、同 じ境過の在宅介護者 との話 し合いによる気 遣いや不安の軽減、被介護者 を安心 して預け られることな どである。

)在宅介護者協 同組合

この団体 は、85年10月 に結成 される。ブライ トン市 とホーブ市 を主な拠点 にす る。結成 に至 る 経緯は、次の ように説明 される。重度の精神疾患の人々を看 る在宅介護者 は、長い問誰か らの援 助 もな しに来 る 日もくる日も介護 を一 身に担い続 けて きた。その健康は、知 らず しらずの うちに む しばまれる。一般開業医は、重度の精神疾患 々者 に付 き添 う人々を多 くの場合 に在宅介護者 と して認めることもない。家族や友人あるいは隣人 として認めるのが、ご く普通の ことである。在 宅介護者 は、いつ とはな しに同 じ境遇 にある人々と話 し合 ってみたい とい う欲求 にか られて、 イ ギ リス精神分裂症患者協会 (SAGB)を 訪れ、その会員 になる。組合 は、この協会 の援 助 を得 て生 まれる。計画 は、情報の提供 と助言である。デイセ ンターや公的な手当な どの情報 を提 供す

……107‑―

(17)

る。助言 も、す ぐれて実際上のそれである。ボランテ ィアが、一切の業務 を引 き受ける。平均 す る と週 に5人の在宅介護者が訪れる。この計画 もいたって好評である。

(5)アルツハ イマー病協会一時休息計画

この計画は、86年5月 の発足である。その 目的は、痴呆症の被介護者 を自宅で看 る在宅介護者 に一時休息の機会 を設 けることである。特別 に訓練 された介護者が派遣 されて、被介護者 と在 宅 介護者の双方 と親 しい問柄 をつ くる。この介護者 は、毎週数時間を被介護者 と一緒 にす ご し、在 宅介護者が介護の場 を離れ られるように条件 を整 える。在宅介護者 は、 1日24時間、週丸 々7日

とも介護 に追 われて精 も根 も尽 きはてそ うになった時、派遣 される介護者 と交代 して一時休息 の 機会 を得 る。2人の職員が この計画のために採用 される。1人は フル タイム、いまひとりはパ ー トタイムである。週当た り平均で28人の在宅介護者が、このサー ビス を利用す る。200人の在宅 介護者が、88年9月 までに利用 した勘定である。一時休息は、片時 も休 むことさえ出来なか った 在宅介護者 にひ と時の安息 を与 えるだけでない。一時休息 は、外 出の機会 として も利用 されて被 介護者 とだけ向 き合 って きた在宅介護者の生活空間を広げ させ て くれる。一時休息は、被介護 者 のためにささげて きた時間を、在宅介護者 とそのニーズをかなえる時間にほんの一時であれ変化 させて くれる。在宅介護者 は、だか らこそ派遣 される介護者の好意あふれる対応 に感謝の意 を込 めて礼 を言 うのである。計画 に注文のないわけで ない。それは、夕方の時間帯 における一時休息 である。 日中における一時休息の利益 を大いに評価す るか らこそ申 し述べ られる要望である。

(6)エイジ・ コンサーン・ホーブ市在宅介護者援助計画

この計画は、87年7月 の開始である。その 目的は、在宅介護者のための土曜 クラブの設立 であ る。エイジ・ コンサー ンは、在宅介護者 グループを数年来運営 して きた経験か らこの計画 を立案 す る。この土曜 クラブは、同 じ境遇の在宅介護者が くつろいだ雰囲気の中で話 し合い、励 ま し合 うことを主な目的にする。土曜クラブの会合は、87年11月から隔週に開かれる。翌88年10月 にな ると毎週開かれる。12人の在宅介護者が、被介護者 と一緒にいつ も出席する。1人 の職員が、パー トタイマーとして採用 され、数人のボランティアと共にこの土曜クラブの運営を支える。在宅介 護者の評価は高い。好評の理由は、土曜クラブに出掛けるならば「誰か と話せ る」「同 じような 問題を抱える人に会える」「他のサービスや公的な手当などについての情報 を手 に入れることが 出来る」などである。

(7)ホーブ市在宅介護者センター

センターは、その名の示す通 り在宅介護者のための施設である。センターは、電話を介 して情 報を流す と共に在宅介護者の相談に当たる。センターは、在宅介護者の集まる場所である。在宅

‑108‑―

表 2  イース トサセ ックス州内 6自 治体における職業 0生 活関連施設及びサー ビス等の状況 実   数 (2)(3)(ヵ 所、人 ) 比   率 (%) バ ト ル   ω ウ インチ ェルシI B ライ町 0 ウ ックフィールド  0 ラ ブイトン ・ホーブ市0 イ ース ト .バーン市 0 ω一〇 0一〇 lC)(E) 0 一〇 職業紹介・コンサルテイング会社 図書館 診療所 医師 病 院 家事援助 サ ー ビス会社 看護婦・介護者斡 旋 派遣会社 社会 サ ー ビス 。福祉 団体 ナー シ
表 3  イ ー ス トサ セ ックス州 ル イス域 内23町 村 の各種 施設及 びサ ー ビスの有 無 (1) 実    数 (力 所 ) 比   率 (高 %)あ り lA)な し (B) 商店 (常 設 ) 銀行 (ク ) 小学校 中学校 高齢者 のデ イケア 村 内の医師 他村 を拠 点 にす る医師 歯科 医師 病 院 ク リーニ ング店 美容 院 足病医 集会所 (教会 のホール ) 住民相談事務所 援助 グルー プ 図書館 (常 設 ) スイ ミングプール 高齢者 クラブ 平 日に走 る鉄道

参照

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平成9年10月15日 第44巻 日本公衛誌 第10号 779 養護学校通学児童の在宅介護の実態と介護者の健康状態 垰田 和史 村松 大治 橋本

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