著者 三富 紀敬
雑誌名 静岡大学経済研究
巻 3
号 3
ページ 51‑92
発行年 1998‑11‑10
出版者 静岡大学人文学部
URL http://doi.org/10.14945/00000654
論 説
富
在宅介護者研究の課題 と視角
は じめに
本 稿 は、本誌他 で扱 って きた イギ リスの在宅介護 者 につ いての作業 の一部 で あ る。
I
日本における在宅介護者の「生活の質」障害を持つ高齢者への援助は、今 日の日本においてごくあた りまえのこととして論 じられる。
疾病や障害を抱える高齢者の援助を不用であると断ずる人々は、おそらく一人としていないであ ろう。 しか し、在宅介護者への援助 (Caring for Carers,Care for Family Careg市 ers)やその 必要性について問われた時に、これを積極的に肯定する人々は、どの程度の数になるであろうか。
残念なが ら少ないのではなかろうか。本田隆男氏は、次のように述べて在宅介護者への援助 とい う発想に乏 しい日本の現状に警鐘 を鳴 らしておられる。「老人介護についての本 は多数出版 され ていますが、介護する側のケアの方法について書かれた本は…読んだことがありませんでした
(1」
。 本田氏が、両親の介護に向き合いなが ら引 き出された知見である。在宅介護者への援助について 書かれた著書は、本田氏の指摘 される通 りわが国に乏 しい。大塩 まゆみ氏の訳書『女はどこまで 看るのか―アメリカの在宅老人ケアー』(勁草書房、90年5月 、編著者は、T.ソマーズとL.シー ルズ、87年発行)が、今 日に至っても数少ない成果である。 この訳書 は、在宅介護者 に対す る「強い援助システム」の必要性から出発 して、アメリカにおける「介護者のためのサー ビス
(2」
について展望する。
在宅介護者は、はた して援助を必要にしない人々なのであろうか。その生活は、被介護者 とし
―‑51‑一
て の高齢 者 の暮 しに較べ るな らば僅 か な問題 しか ないのか も知れ ない。あ るいは、第三者 の 目に 触 れ ない程 のい わば見 え ざる障害 を抱 えるだけの こ とか も しれ ない。在宅介護者 は、だか らこそ 介護 を担い続 けるのか もしれない。 しか し、在宅介護者は、介護 を担 うことによって様 々な影響 を被 る。自由な時間は、介護 に費やす時間の長 さに応 じて縮減 される。久 しく休暇なぞ取 らない 例は、めず らしくない。時間の長 さばか りでない。被介護者の求めに応 じて深夜に起 き、睡眠 を 中断 されることもさして珍 しくない。介護 と仕事 との両立 さえ立 ちいかないことから、やむな く 離職 を迫 られる例 も多い。離職 は、月々の収入や職場での友人関係 を失 なうに止 まらない。公 的 年金の受給資格 に も連動する。離職 は、か くして生涯 にまたがって影響する。介護は、いつ果 て るとも知れない作業で もある。在宅介護者は、長い介護時間 とも相 まって健康を損 うことも少 な くない。 しか し、介護 を代って担 う人 もいないことか ら、我が身 さえ も省 りみず介護 を一身に担 い続 ける。それは、家族の一員 として当然の務めであると一蹴 した り、あるいは愛情の発露 であ ると美化するだけで解決 される類の ことでない。在宅介護者は、被介護者 と同 じように人たるに 値する生活 を保障 され、これによってその健康は もとより家族生活、職業生活及び広 く社会生 活 を安ん じて送るようでなければなるまい。
在宅介護者 とその負担 に関す る調査研究は、アメリカにおける老年学 などの成果 にも学 びなが らわが国において も少 な くない。それは、看護学 、介護技術論、老年学 、社会学、法律 学 あるい は社会政策の諸分野 にまたがる
(3)。
これ らの成果か ら学 び取 ることは、少 な くない。特 に在 宅介 護者のス トレスに関す る調査研究 に教 えられることは多い。 しか し、これ らの調査研究は、負担 を解消す るための援助 、とりわけ休息や休暇の保障による人間 らしい社会生活の回復 となる とや や 自制 されるせいであろ うか、これ といった展望 を示 していない。在宅介護者 を扱 った文学作品の相次 ぐ出版 は、近年 に注 目される動 きである
(4)。
これ らの作 品 は、在宅介護者の抱 える負担の大 きさと援助の必要性 について実に具体性 に富む叙述 を加 えてい て、興味深い。在宅介護者 に対す る休息や休暇の保障は、多岐にわたる援助の一環 として繰 り返 し述べ られる。有吉佐和子『洸惚の人』(新潮社 、72年6月 )は、勤め先か らの帰 りを急 ぐ立花 昭子 の姿 か ら 始 まる。昭子 は、東京銀座の法律事務所でベテランの タイビス トとして働 く。夫信利 は、一流 商 社の次長の職 にあ り、帰 りの遅い 日が続 く。昭子は、老人性痴呆症の義父茂造84歳の介護 を一 身 に担 う。夫信利は、会社 の忙 しさを回実 に介護 に加わろうとしない。昭子は、食事の用意 はい う にお よばず衣服の着脱や入浴の介助 、検温 、入歯の着脱、排便の介助 、失禁への対応あるいは福 祉事務所 との接渉 などの一切 を手掛 ける。
―‑52‑―
昭子 は、茂造の老人ホームヘの入所 を考 えて福祉事務所 を訪ねる。 しか し、軽 費老人ホーム は どこも満員であ り、「ホームに入れたい と思 う方で も半年か ら一年 も空 くの を待 たな きゃな らな い…」 こと、さらに「徘徊 は、 どこのホーム もワ1受けないです よ。 とて も手が足 りませんのでね」
とつれな く指摘 されて、「茂造 が収容 され る ところはない…
(5)」
こ とを悟 る。 しか も、昭子 は「老人を抱 えた ら誰かが犠牲 になることは、どうも仕方がないですね」あ るい は「主婦 の方 に、
しっか りして頂 くよ り方途がないです
(6」
とまで言われ、一途の希望 さえも失 って福祉事務所 を あ とにす る。昭子 は、夜中に一度起 きて茂造の小用 を手伝 うようになる。その うち夜 中に三度 も起 こされ る 状態 に至 る。茂造が頻繁 に 目をさます に及んで、昭子の睡眠不足 は、救いがたい ものになる。大 学受験前の息子敏 は、介護 に手 を貸 して くれるものの、夫の信利 は、実の父茂造の姿 に見てみぬ ふ りを決め込む。昭子の懇願 に背 を向けての ことである。法律事務所 を無断で欠勤することも、
昭子の意 に反 して生 まれる。睡眠不足 は、視力の衰えや身体 のけだるさな どとして昭子 を襲 う。
体重 はがつ くりと減 り、市販 の精神安定剤 を時々飲 む癖 もつ く。法律事務所の若 い女性 も96歳の 老いた母 を抱 えて結婚で きないのだ、 と打明ち話 しをす る。昭子 は、たび重 なる欠勤 をへ て週3
日の出勤 に変更す る。月収 は、確実 に減る。 しか し、昭子 は、仕事 を失 なうのではないか とい う 心細 さか ら解放 されて安堵す る。週 4日 を家で過 ごす ことになって、暮 らしの中に潤いをと心掛 ける時間的な余裕 も出来 る。昭子は、10年来やつた ことのない土 い じりに手 をつ けて しば し楽 し い時間をす ごす。
介護 を殆ん ど一身に負 う昭子 は、勤め先である法律事務所 の理解 を得 ることによつて週の労働 時間を短縮 し、ようや く人間 らしい生活 を一時的に しろ取 り戻すのであ る。
沖藤典子 『女が職場 を去 る日』(新潮社、82年2月 )は、実の父茂の発病か ら他界 までを看取つ た著者 による記録である。
典子 は、大学時代 に結婚 、卒業 と同時 に東京の市場調査会社 に勤める。彼女の夫明は、東京 に 本社のあるT建設会社 に勤務す る。典子 は、母他界のあ と札幌で一人暮 しを していた父 を東京郊 外の相模原市 に連れて来て一緒 に住 む。父 は、首の痛み を訴 えて1975年 4月 に入院、同 じ年 の6 月に手術の結果、悪性腫瘍 と判明す る。夫 は、この時既 に北海道 に単 身赴任 中である。典子 は、
市場調査 とい う相 当に神経 をす リヘ らす仕事 に加 えて、受験期 にある娘の教育 と父の介護 とに奔 走す る。
典子 による介護 は、発病か ら 8カ 月余 、手術 してち ょうど 5カ 月に当たる 日の父の他界 まで続 く。介護の作業 は、体 の清拭 をは じめ寝間着の着脱、大学病院か らの薬の受け取 りと与薬、病室
―‑53‑―
での付添い、歩行の介助 、男性用の尿瓶や漢方薬の購入、排尿の介助、書類の作成、寝台 自動車 の手配及び介護職者への相談などに及ぶ。中学3年生の娘 は、家の様子 を見かねて血 まみれの衣 服 を始末 し、砕 け散 ったガラスの片づ けなどを自らお こなって母 を助ける。
典子 は、介添人の斡旋 を頼むために相模原市役所老人課 を訪ねる。 しか し、市 としてそ うい う サー ビスを手掛 けていない と断わ られる。市の委託 による介添人は、「親戚 のない一人暮 しで し か も寝 た きり老人、更 に生活困窮者の ところに行 っている
(7)...」
ことか ら、その対象 にな らない と断わられる。父は、病院から退院 したあとはあたかも放 り出されたかのような状態である。典 子は、在宅介護者 として重症患者の父 とともにこのような状態に立ちむかわなければならない。典子は、ごく普通に生 きて来た人間の一人として病人をより快適に過させるにはどうすれば良い のか、皆 目見当さえつかない。汗に濡れた父の寝巻を一人でどうやって取換えれば良いのか途方 にくれる。看護の知識のないことが悔 まれてならない。病院は、父のような重症の患者を退院さ せる時に保健所 とか近 くの一般開業医とかと連絡を取 りあって、せめて週に一度 くらいは様子 を 見に来るとか、家庭内看護についての細々とした相談に乗って くれるとか、そうした措置を講 じ るわけにいかないであろうか、と思うのである
(3)。
典子の率直な希望である。父は、身体障害者の認定を受けたことから医療費を免除される。大学病院のケースワーカー清 田さんにてきぱきと教えてもらったお陰である。
しか し、申請の書類 をそろえた り届けた りするのは、家族の仕事である。典子は、司法関係で 代行 して くれる人がいるように福祉 にも公的に代行 して くれる機関があればどんなに助かるであ ろう、と思 う。典子は、Kセンターの川田部長の もとに出向いて仕事の打合せの一段落したのち、
部長から次のような話 しを聞 く。「子供にも手がかか り、収入 もあまり高 くな く、 自分の生活で 精一杯の人が老人を抱えている。いわゅる 生活困窮者"ではないから行政からは助けてもらえ ない。そ ういう状況の中で、女の人が苦労 しているという事なんですね
(9」
。典子は、これといった人的なサービスも受けられないことから父の病状の悪化につれて一段 と 重い負担を抱える。会社勤めをしなが ら病人と子供を抱えて、疲労 と闘う毎日である。父は、再 入院 してからというもの昼 も夜 も良 く眠る。典子 も、父の睡魔に引きず り込まれるように眠 り込 む。 しか し、会社はもとより家で も息さえ抜けない日々が続 くと、ちょっとしたことにも苛 々 し 腹を立てる。「ママ も忙 しいなあ。大分やせた じゃないか。子供達 も元気ないよ●
0」
と上京 して 来た夫に指摘 される。重い負担は、経済生活にも及ぶ。夏のボーナスも病院の払いで消える。月 給の半分は、家政婦への支払いにあてなければならない。確かに生活困窮者ではない。しか し、生活に困窮 していることは事実である。典子は、仕事に就 きながら病人を抱えることの苦 しさと
―‑54‑―
悲 しさを味わう。職場の同僚はもとより仕事の相手先に対 しても、また、病人と子供に対 しても、
何 もか も中途半端になったことを一人悔いる。そ して、一体何に向かって頑張 り責任を果そ うと していたのであろうか、と自間をくり返す。最後は、父への看病に専念する道を選んで長期の体 暇届けを会社に出す。父は、この決心か ら僅か2週間のちに他界する。
典子が介護に追われる姿は、これといった行政サービスの支援 もなしに「女の人が苦労 してい るというい)・
"」
様子そのものに他ならない。柳博雄『夫婦の親―ふた りの関係が試 されるとき―』(三五館、96年 7月 )は、一人暮 らしの 父を大阪の自宅に引 き取つた直後に始まる介護の日々をつづったものである。93年9月初旬か ら のことである。柳夫妻の静かな生活は、父と一緒に暮 らすようになってからというものすっか り 消えて しまう。著者柳は、社会部の記者である。生活は、いたって不規則である。帰宅が深夜 を 過 ぎることもあれば、夜帰 らないこともある。柳は、実の父の介護を本来ならば自分で担わなけ ればならないと思 う。しか し、マンションの一室で父 と四六時中むかい合うのは、妻である。妻 は、気を使いす ぎるのではないかと思えるほどに父のことに掛か りきりである。介護の作業は、
衣服の着脱をは じめパ ッドの交換、おむつの購入 とおむつ替え、清拭、シーツの取 り替え、見守 りあるいは徘徊の父の捜索などに及ぶ。このうちおむつの交換は、夜の11時、未明の3時、明け 方の7時と4時間お きの作業である。40度を超す熱の出た時など、3日 3晩、寝ずに父の様子 を 見守 り続けなければならなかった。
介護の負担は、妻の体調不安 として現われる。手足の しびれ、肩こり、腰痛あるいは目まいを しば しば訴える。父 と一緒に住むようになって3カ 月程すると、近 くの診療所に足繁 く通 うよう になる。精神安定剤、血圧降下剤、筋肉の鎮痛消炎剤などを袋いっばいに持ち帰って、自ら服用 する。急に自髪の 目立ちは じめるのも、この頃からである。妻は、健康を損なうにつれて夫への 批難を口にする。「私を解放 して…お金 も何 もいらないから。私が自分の時間を好 きなように使 えるようにして。のんび りと寝 られるようにして」。「…なぜ女だけが、こんな負担を負わなけれ ばならないのかがわからないのよ」。「そういう世の中っておか しくないの
?。
"」
。妻は、介護の ために利用されているだけであると幾度 となく感 じたことから、離婚届を夫の前に出す。夫が書 類に署名 して くれたならば、そのまま区役所に提出するつ もりであったという。妻は、介護の手引 き書に「少 し納得できない点を感 じる」として不満 をもらす。「みな権威の ある男の人の視点か らしか書かれていないように思えるのです。自宅で黙々と作業をしている人 に、理屈 と面倒な仕事 を押 しつけているとしか思えないからですr131」 として、例をあげる。た と え
│ゴ
「患者の落ち度を責めないで。叱った りすると逆効果」「あれも駄 日、これ も駄 目と禁止 し―‑55‑―
ま くるの も患者 によくない」な どと手引 き書 にある。
柳夫妻 は、ホームヘルパーの派遣 を週 3日 、 1日 3時間 にわた って受 ける。1時間当 た り約 900円の利用者負担 を伴 なう。2泊3日 のシ ョー トステイも、申請か ら 2カ 月余 りの ち に可 能 に なる。夫妻 は、シ ョー トステイに父 を預 けている間、夜中に起 きておむつの交換 を しな くて も済 む。妻は、「1カ 月のうち、10日 ぐらいショー トステイさせてもらえるなら、 自宅で この まま頑 張れるかもしれないい)」 ともらす。 しか し、期待は裏切 られる。特別養護老人ホーム側の事情で、
翌月半ばに 2泊 3日の許可を得るだけである。
妻は、著書のあとが きの中で介護の日々を振 り返って次のように言 う。「介護 は一人ではで き ないと思います…社会的に大 きな支える組織が出来ていかない限 り、一人で介護の苦 しみを強制 される妻や娘が増える一方だと思います。め」。夫は、妻の指摘に共鳴する。それだけに「 自宅介 護」がほぼ無条件の前提 として位置づけられる介護保険問題の論議に、深い疑念を示す。
ショー トステイは、夫妻の指摘 されるように在宅介護者にひと時の休憩を保障 して くれる。 こ れは、昭子はもとより典子の体験 しえなかったことである。在宅介護者の援助は、この事例 に関 する限 り政策の中に位置づけられ始めているといえよう。しか し、シヨー トステイの頻度 と期 間 は、在宅介護者の期待に反 して少なく、また、短いことも事実である。介護の手引 き書は、妻の 実感に従えば在宅介護者向けに書かれるはずであるにもかかわらず、もっばら被介護者の人権 に なにが しかの目を配るばか りで在宅介護者の人格 を軽んずるのである。在宅介護者の援助は、 こ うして見ると確固とした理念に沿いなが ら多方面に浸透済みである、と評するわけにいかない。
在宅介護者の「生活の質」
(QOL)が
、被介護者のそれとあわせて問いなお されなければなら ない。在宅介護者の援助は、介護を担 う人々に人たるに値する生活を保障するために必須の課題 である。文学作品の主張は、在宅介護者の負担 と援助の必要性に即 して読み込むならば、以上のように 理解 されよう。在宅介護者に関する調査研究は、こうした主張を真正面から受け止めてこそ実 り 多い成果を世に問うことになろう。
Ⅱ
諸外国における在宅介護者の「生活の質」
諸外国の在宅介護者は、どのような特徴 を持つであろうか。介護は、その担い手の健康や家庭 生活及び社会生活にどのような影響 として現われるであろうか。在宅介護者への援助は、どの よ
うに展開されているであろうか。在宅介護者の規模や構成について検討 した上で、援助の拠 りど
―‑56‑―
ころ としての在宅介護者憲章 (Carers charter)に も可能な限 り触れなが ら考 えてみ たい。取 り 上げる国々は、順 にアメリカ、オース トラリア、イギ リスの他 にスウェーデ ンや カナダな どであ る。幾つかの国際機関 と団体 の動 きに もあわせて触れてみたい。
(1)アメ リカ
在宅介護者 もしくは家族介護者 について一般 に承認 された定義は、今 日において もこの国にな い。これは、専 門研究者は もとよ り政策担当者あるいは在宅介護者諸団体 においてもそうである。
連邦議会の下院 。高齢化特別委員会 (SCA)は、88年の報告書 において 日常生活上の援助 を 要す る高齢者の世話 に当たる14歳以上の人々だけを在宅介護者 と定める。
0。
この定義は、保健 ・ 人的サー ビス省 (DHHS)の 雑誌 『エ イジ ング』(Ageing)編 集部 に よる88年 当時 のそれ0とも内容の上で重 な りあ う。最近では、家族介護者 に関する調査項 目を西暦2000年の人口調査 の一 部に加 えるように求める法案が、やや異 なる定 義 を加 える。 この法案 は、家族介護 者 (family careg市er)と在宅介護者 (caregiver)と を区別す るい)。 前者 は、この法案 に よる と被介護 者 と配 偶関係 もしくは親戚関係 にある在宅介護者である。後者は、入浴や衣服 の着脱 を含 む被介護者 の 日常生活 もしくは買物や金銭の管理 な どを含 む 日常生活上の援助 を無償の下に行なう個人である。
この うち後者 は、介護 を担 う家族は もとよ り被介護者の友人や隣人あるいはボランテ ィアか ら構 成 される。後者は、前者 よ りもはっ きりと広い概念である。 もとよ り、両者は、高齢の被 介護者 を看 る人々に限って在宅介護者 とす る考えを退 け、障害者の世話 に当たる人々も在宅介護者に含 める立場である。両者は、この限 りにおいて共通する。これは、全国家族介護者協会 (NFCA)
の定義0と完全 に一致する。 しか し、全国介護同盟 (NAC)は 、在宅介護者 の全 国団体 と し て同 じ立場 にあるとはいえ異 なる定義 をお こな う。在宅介護者 は、この団体 によると50歳を超 す 近親者や隣人 に無償の介護 を提供す る少 な くとも18歳以上の人々などとして定義 されるい)。 これ は、被介護者 を50歳以上の高齢者 に限ることか ら、下院・高齢化特別委員会や保健 。人的サ ー ビ ス省のいずれ も88年の定義 と内容の上で重 な りあ う。先の法案の定義に較べ るならば、明 らか に 狭い。50歳未満の在宅介護者は、同 じく介護 を担 うとはいえこの定義か ら除外 されるからである。
在宅介護者 に関する調査研究は、筆者の知 る限 りで も70年代の中葉以降に見ることが出来る。ゝ 在宅介護者 は、高齢者 を世話する人々に限って も200万人か ら600万人にす ぎない と推計 されるの)。
88年当時の結論である。 しか し、この結論 は、全 国介護同盟 とアメ リカ老齢退職者協会 (AAR P)の共同による96年調査及びこれを基 にす る推計作業 によって くつがえされる。電話 を備 えた 世帯のお よそ4軒に1軒は、この共同調査 に よると50歳以上の高齢者 を世話す る少 な くとも1人
―‑57‑―
の在宅介護者 を世帯の一員に数える。これは、アメ リカの人口比23.2%に当たる2,240万人程の在 宅介護者 を意味す る。在宅介護者の主力は、他の諸指標 とともに表1に示す ように女性である。
彼女たちは、被介護者の妻であ り、娘であ り、あるいは息子の妻である。女性 は、妻 をは じめ母 親、賃労働者及び在宅介護者 とい う実 に多岐にわたる役割 を担 う。
表1 アメ リカの在宅介護者に関する諸指標
(11(2)
(%)
率 比
1.在宅介護者 の規模 と比率
2.性別構 成
a.男 性
b.女 性
3.平均 年齢 と年齢 階層構 成
a.平均 年齢
b.51歳以上
4。
人種 別構 成a。
自 人b.非白人
5。
就 業 ・不就 業状 態 及 び就 業 形態 別構 成a。
フル タイムb.パー トタイム
c.老齢 退職
d.非労 働 力
6.居住 形 態 別構 成
a。
同 居b。
別 居7.週当た り平均 介 護 時 間 と介 護 時 間別構 成
a.週当 た り平 均 時 間
b.週21時 間以上
c.週40時 間以上
8。
主 た る在宅介護者 の規模 と比率9.介護期 間別構 成
a.5年以上
22,411,200
6,275,136 16,136,064
41(歳
)
14,701,747
18,290,000 4,121,200
11,609,002 2,756,578 3,563,381 4,415,006
4,706,352 17,704,848
17.9(時間
)
8,919,658 4,100,000 9,188,592
16,718,755
28 72
65。
681.6 18.4
51.8 12.3
15。
9 19.721 79
39.8 18.3 41
74.6
―‑58‑―
b。
7年以上c.11年以上
10。
介護の諸影響別構成a。
家族生活 に影響あ りb.情緒 的な安定 に影響あ り
c.休暇の縮少
d.影響 な し
11.家族 による援助 な しの規模 と比率 12.サー ビスの利用 な しの規模 と比率
13.在宅介護者の担 う介護労働 の経済的な価値 14.関係企業の経済的な損失
62
44。 1
43 55 43 45
75。
8 62 13,894,9449,883,339
9,636,816 12,326,160 9,636,816 10,085,040 16,987,690 13,894,944 3ソL(ドル
)
114億 7,400万 (ドル
)
[資料 ]NatiOnal Alliance for Careg市ing and American Association of Retired Persons,Family caregiving in the lUoS.,findings froln a national survey,NAC and AARP,1997,pp.10‑11 and pp.21‐24, ]Donna LoWagner,Comparative analysis of caregiver data for caregivers to the elderly 1987 and 1997, National Alliance for Caregiving,June 1997, pp.4‐ 5, National Family Caregivers Association, A National report on the status of caregiving in America,NFCA, November 1997, pp.5‐ 6 and p.8, MetLife Mature Market Group, The MetLife study of employer costs for working caregivers, based on data from Family Caregiving in the lU.S.; finding from a national survey, MetLife Mature Market Group and National Alliance for Caregiving, June 1997,p。 7 よリイ乍成。
[注](1)1996‑97年の時点における諸指標である。
(2)合計は、四捨五入のために一致 しない箇所 もある。
子供 を持 ちなが ら働 く既婚女性 (成人)は、連邦統計局 の資料 に よる と2,470万 人で あ る。 この うち45‑49歳層女性のお よそ8%は、フル タイムの仕事 に就 きなが ら保育 と介護 とを同時に担 う。
女性 は、多様 な世代の世話 に携 わる。女性 は、比較的遅 くに子供 を設けるな らば、乳幼児 の保 育 と歳老いた両親の介護 とを同時に担 わなければならない。仕事 の前後 に家事 と育児そ して介護 に 精 を出す女性 の姿 は、今 日のアメ リカで さして珍 しくない風景の一部である。
在宅介護者のお よそ3人に2人は、前出の表に示す ように仕事 を持つ。この比率は、アメ リカ の労働力率 ●)(66.8%、 96年)に較べ る とやや低 い。フル タイムで働 く比 率 は、 アジ ア系 の在 宅 介護者 について相対的 に高 く、自人や黒人あるいはラテ ンアメリカ系 について概 して低 い。 この 相違 は、週 当た りに費や される介護時間の人種別格差 によって説明 され る。介護時間の週 当た り 平均 は、お よそ18時間である。女性 は、男性 に較べ る と介護 に長い時間を費やす。女性の介護 時 間は、男性の週15時間30分を20%程度上 まわる18時間40分である。女性 は、在宅介護者 の員数 の レベルで見るならば4人中3人を下 まわる。 しか し、これを投下 される介護時間の レベルで考 え
―‑59‑―
る と4分の3を超す。週当た りの介護時間は、アジア系の在宅介護者 について相対的に短い。
介護 は、在宅介護者の生活は もとよ り家族 をも巻 き込み なが ら進め られる。家族への影響 を避 けるわけにいかない。在宅介護者は、被介護者の世話 に削 く時間の長 さに応 じて家族 との時間 を 圧縮 しなければならない。休暇の取得 を断念 した り、趣味 に当てる時間を否応な く削 らなければ ならない。これ らの影響 は、痴呆症の高齢者 を抱 える場合 に一段 と大 きい。
在宅介護者は、被介護者 に頼 りにされる存在であ りなが らいつ も健康であるわけでない。身体 的な疲労 は、介護時間 と介護期 間が長 くなるにつれて蓄積 される。時間帯 を問わずに被介護者 の 求めに応 じなければならないことも、同 じ結果 を生 む。夜間における作業は、人間の生理的 な リ ズムに反す る時間帯の ことであるだけに強い疲労感 として在宅介護者の身体 に残る。疲労 を訴 え る在宅介護者 は、男性 よりも女性 に多い。これは、女性 による介護時間の長 さを考えるならば当 然 に予想 された結果である。影響 は、在宅介護者の身体や精神 に止 まらない。金銭上の苦 しさも 影響のひ とつである。経済的な窮状 を訴 える声 は、仕事 を持つ在宅介護者 よりも職業 に就か ない 在宅介護者か ら、よ り多 く発 っせ られる。金銭上の苦 しさは、収入の有無や水準 に止 まらない。
介護 に伴 な う出費 を覚悟 しなければならない。これに由来する苦 しさである。この種の出費は、
月平均171ドルである。この額は、在宅介護者 の平均年収 (3万5,000ド ル)の
5。
9%に相 当す る (171ドル×12カ月=2,052ド ル)。
在宅介護者は、体 に感 じる疲労や経済的な窮乏 にただ手 をこまね くばか りでない。神への祈 り は、最 もしば しば採用 される手段である。在宅介護者の4人に3人近 くは、この手段 をあげる。
次いで多いのは、友人や隣人に会 って話す ことである。同 じく3人に2人が示す手段である。
仕事 を持つ在宅介護者は、疲労のあま りその意 に反 して会社 を休 むこともある。これは、在宅 介護者 にとって我が身を守 るための手段 である。さらに進んでやむな く離職することも避 けられ ない。介護 に専念する時間が確保 される一方で、所得や フリンジベ ネフィッ トなどの利益 を手放 す ことと引 き替 えである。これ らは、企業 にとって も経済的な損失 を伴 なう。欠勤者 に代わる労 働者 を手当 して配置 しなければならない。離職者のあ と補充のために新 しい人材 を雇い入れる こ とも考 えなければならない。企業は、いずれの場合であれ経済的な負担 を覚悟 しなければな らな い。これ らの負担 は、全国介護同盟他の推計によると年に114億 7,400万 ドルにのぼる●)(96年
)。
在宅介護者 による無償の介護は、年間3兆ドル もの経済的な価値 を持つい)。 これは、全 ての保 健サー ビスの少 な くとも3分の2に相当する。 しか し、在宅介護者へのサー ビスは、全般的 に乏 しい。例 えば一時休息のサービスは、在宅介護者の7人に1人程 によって享受 されるにす ぎない (14.1%、 96年
)。
食事の宅配サー ビスの受給 も、同 じ程度である(15。
6%)。 これ らは、人種 別 に一‑60‑―
見る とアジア系の在宅介護者 について最 も低 い。黒人、ラテ ンアメ リカ系 もアジア系 についで低 い。自人の受給比率は、やや高い とはいえ極端 に低 いアジア系のそれに較べてのはな しである。
乏 しい受給状況は、連邦会議の下院・高齢化特別委員会 によつて も早 くか ら指摘 される。特 に公 的なサー ビスの乏 しさは著 しい。下院・高齢化特別委員会で さえ も「在宅介護者 は、これ までの ところ公的な計画か らの これ といった支援 もな しに高齢者への長期 にわたる介護サー ビスを担 っ ているい)」 と率直 に評す る。
保健・人的サービス省 は、在宅介護者のニーズを認め、そのニーズにふ さわ しい援助の必 要性 とその方策について公式 に示すレ)。 それは、第1に、教育訓練 である。在宅介護者 は、高齢 者 の 疾病や障害について知 りたい と考 えている。高齢者 にどの ように応 えていけば良いのかを知 るた めである。介護技術 に関す るニーズ も高い。サー ビスの存在 とその利用方法 を知 りたい とい う声 も多 い。 しか し、教育訓練 の機会 は、残念 なが ら少 ない。第2に、一時休息機会 の保障であ る。
在宅介護者は、介護 に追われる日々を過 ごす。い きおい友人や隣人 との接触 さえ も疎遠 にな りが ちである。在宅介護者が、自由な時間を保障 され介護 を忘れて時 を過 ごす ことも必要である。第 3に、情緒的な援助である。在宅介護者の援助 グループは、同 じ立場の人々が介護の負担 を共有 し悩み をわかちあ う上 において、実 に有益 な集団である。第4に、経済的な窮状 に対す る援助 で ある。手当の支給や所得税 か らの控 除な どの方法が考 えられる。最後 に、在宅介護者の抱 える間 題の社会的な共有である。在宅介護者が一人でない ことを実感で きるように、また、その負担 を わかちあ う意思のあることをアメリカ社会 として示す ことである。
保健 。人的サービス省 と同種の認識は、州政府 とその担 当部局 によって も示 される。数多 い州 政府の中で も最 も先駆的な取 り組みは、カリフォルニア州政府のそれである。州政府 は、1984年 に法律 を制定 して在宅介護者セ ンター (CC)を設立す る●)。 このセ ンターは、お よそ1万人 の 在宅介護者 を対象 に各種のサー ビスを提供する。 このサー ビスは、カウンセ リング、教育訓練 、 在宅介護者 グループの支援及び一時休息 などである。この うち一時休息 は、在宅介護者 に自由 な 時間 を保障す る試みである。その仕組みは、こうである。セ ンターは、代理の介護者 を雇 うに足 る金額 を在宅介護者 に助成する。在宅介護者 は、これを基 に代理 の介護者 を雇 う。被介護者 の世 話 を委ねて介護か ら一時的に しろ離れることがで きる。一時休息 は、この補助金制度 によつて79 3人の在宅介護者 によって享受 される (95‑96年
)。
しか し、 この4倍前後 に当 た る3,000人以上 の在宅介護者が、待機者名簿に名 をつ らねて順番の来るの をず っ と待 ち続ける。サー ビス享受 の 保障は、長 く待 ち続 けたか らといってあるわけでない。待機者名簿 に名をつ らねる人々の20%は、 待 ち切 れな くなって被介護者 をナーシングホームに入居 させ るか、もしくは待 っている間に被 介‑61‑
護 者 の死 を迎 えるかの いず れか に よって 、名簿 か ら消 えてい く。いずれ も事情 は どうあれ一 時 休 息 の ため の補助金 制度 を利用で きない。補助金 の枠 さえ拡大 され るな らば、 日途 のつ くはな しで ある。評価の高いカリフォルニア州 に して、こうした状況である。他の州における状況は、想像 に難 くない。
在宅介護者の援助 は、企業 における人事管理の課題で もある。『フォーチュン』誌 (Fortune) の上位500社は、アメリカを代表す る企業の代名詞である。これ らの企業 は、介護責任 を負 う従 業員のための援助計画 を用意す る。その内容 は、情報の提供 、相談や助言、柔軟 な勤務形態 の導 入 などである。一時休息のサー ビスを計画 に盛 り込む企業 は、残念 なが ら少 ない。家族及び医療 休暇法は、93年に制定 されて12カ 月の無給休暇の権利 を50人以上規模企業の従業員 に保障す る。
従業員総数の16.8%に当たる人々は、連邦議会の指名を受 けた専 門委員会の推計 による と家族 及 び医療休暇法 にい う休暇取得の事 由を抱 えるい)。 この法律 は、仕事 と介護あるいは仕事 と保 育 及 び介護の負担 に耐 えかねる従業員 による休暇の取得 を促す ことになろう。 しか し、取得 は、休 暇 中の無給扱 いを考 えるならば相対的に高い賃金 を手 にす る従業員 に傾斜することにならぎるを得 ない。
医療保健制度は、在宅介護者の協力 を得て こそ充分に機能する。被介護者の症状 についての在 宅介護者の観察は、専 門職者 にとって有益 な情報源である。 しか し、被介護者の退院計画は、在 宅介護者のことなどおかまいな しに立案 され実施 に移 されて来た。在宅介護者 は、被介護者 の容 態や症状 について これ といった説明を受 けることな しに被介護者 を自宅 に迎 え入れ、世話 に当た らなければならない。専 門的な訓練 を退院に先立 って受けることもなかった。専 門職者が在 宅介 護者 についての認識 を改め、両者の協力関係 を築 く試みが先駆的には70年代後半か ら着手 され 、 最近 ようや くに して各地の病院において広が りつつあるい)。
在宅介護者の団体 は、在宅介護者の心覚 え とで も称す る項 目い)を定めて援助 に乗 り出す ととも に、運動の指針 に も位置づける。
(2)オース トラ リア
在宅介護者 は、オース トラリア統計局 (ABS)に よると長期の疾病や障害 を抱 える人々に非 職業的な介護 を提供す る者、と定義 される。同種の定義は、在宅介護者の団体 によって も試 み ら れる。「在宅介護者 は、慢性的な疾病や障害 を抱 えて援助 を要する人の世話 に当 たる無給 の家族 構成員 、友人 もしくは隣人である
e)」
。 これは、西 オース トラリア在 宅介護 者協 会 (CAWA)の定義である。専 門研究者の定義 もこれ らに著 しく類似す る内容である
(0。
高齢 の被介護 者 を看―‑62‑―
る人々だけを在宅介護者 とする定義 は、筆者の知る限 リオース トラリアに存在 しない。在宅介護 者 と言 う時に、そ こには、高齢者 を看 る人々のみならず障害児の世話に当たる母親 も含 まれる。
また、定義は、家族構成員、友人及び隣人を全 て包括する内容である。家族介護者に絞 り込 む例 はない。これ らの事情 は、イギ リスにおいて も確認 される。アメリカとはやや異なる特色である。
在宅介護者 は、表2に示す ように15歳以上人口の16.4%に当たる223万 7,100人である (93年
)。
表2 オース トラ リアの在宅介護者 に関する諸指標
('1(2)
(%)
率 比
1.在宅介護者 の規模
a。
15歳 以上b.15歳未満 の児 童
(3)
2.性別構 成
a。
男 性b.女 性
3.年齢 階層構 成
a.60歳以上
4.使用 言語別構 成
a.英 語
b.アボ リジアニ語
c。
そ の他 の言語5。
就 業 ・不就 業状態 及 び就 業形態 別構 成a.男性 フル タイム
b.同パ ー トタイム
c.同失業
d。
同非労働 力e。
女性 フル タイムf。
同パ ー トタイムg。
同失業h。
同非労働 力6.居住 形態別構 成
a。
同 居b.別 居
7.居住 地域 別構 成 a.都 市
2,237,100 33,800
1,159,000 1,077,900
614,204
1,331,850 750 167,400
50,771 11,187 13,500 30,302 54,623 66,678 17,500 123,499
1,509,100 728,000
1,335,000
51.8 48.2
40。
788.79 0.05 11.16
48.0 10.6 12.8
28。
7 20.8 25.46。
7 47.167.5 32.5
89.0 16.4
―‑63‑―
b.農 村
8。
介護期 間別構成a.5年以上
b。
10年以上9.介護の諸影響別構成
所得の減少 もしくは支 出の増加 日中の外 出に影響あ り
c.休日の取得 に影響あ り
d.家事 に影響 あ り
e.睡眠に影響あ り
f。
交友関係 に影響あ り10。
所得 の主 な形態及び水準別構成a.賃金所得 を主 にす る
b.公的年金及び公的手当を主にする
c.週当た り200オース トラリア ドル以下の所得水準 11.サー ビスの利用状況別構成
a。
一時休息の利用あ りb。
公 的なサ ー ビスの利用あ り12.在宅介護者の担 う介護労働 の経済的な価値
a。
金額 (億オース トラリア ドル)
b.GDP比 率
165,000
750,0001ス」ヒ 591,000
253,823 286,836 287,918 286,295 188,338 235,422
141,419 269,611 262,158
63,100 55,706
180‑1::
11.0
50以 上 39.4
46.9 53.0 53.2 52.9 34.8 43.5
27.8 53.0 53.6
11.7 21.6
[資料 ]Richard Madden,Focus on families;caring in families‐ support for persons who are older or have disabilities, Australian Bureau of Statistics, 1995, Carers Association of South Australia, Who cares?, values and best practice in training and delivery in com‐
munity care training pathways for caring,ITAB conference 15‐16 May 1997,CASA,1996, p.5, Australian Carer, newspaper of the CAA, No.8, April 1998, p.10, Speech for Averil Fink,Carers Association of Australia to be presented at first conference on family care, London, 14‑15 May 1998,p.8,CAA,Annual report 1994‐ 95,pp.16‑17,CAA,National con―
sultations of carers―undertaken by CAA September 1994, CAA, 1995, pp.9‐10, p.17 and
pp.50‐
52, CAA, Annual report 1995‐ 96, pp.16‐17 and p.20,CAA, Ca三 ng enough to be poor;a survey of carers'income and income needs, CAA, February 1997, p.15, Louise Neild Gilmore,The Carer's handbook,how to be a successful carer and look after your¨self too,Allen and Unwin,1995,p.12よ り作成。
[注](1)諸指標の年次は、次の通 りである。 1〜
3、
5〜7、
9〜11、
12b a上段 :94年 、12a下段 :93年 。(2)1〜12の諸指標のそれぞれの合計は、次の通 りである。
2、
6:15歳以上の在宅介護者22り賓,100人、 3〜4、
7〜8:15歳以上の同居の在宅介護者150万 9,100人、5a〜d:15歳以上の男性の主たる在宅 介護者10万5,760人、5e〜 h:同じく女性26万 2,300人、9:15歳以上 の主 た る在宅介護者54万1,200 人、10a〜b:同じく主たる在宅介護者50万 8,700人、10c:同じく48万 9,100人、1l a:同じ く54万1,
200人、1l b:同 じく25万 7,900人。 (3)これは、上のlaの外数である。
―‑64‑―
15歳未満 の児童3万3,800人が、これ とは別 に在宅介護 を担 う。児童 は、その親 も しくは兄弟姉 妹の介護 に当たる。調理や清掃 だけを担 うこともあれば、衣服 の着脱、入浴の介助あるいは与薬 な どを手掛 ける場合 もある。
在宅介護者の過半 は、オース トラリア統計局の調査 によると前 出の表 に示 した ように性別 に男 性である。 これは、在宅介護者団体の調査結果 と明 らかに異 なる。 しか し、統計局の調査 が最 も 高い信頼性 を持つのではないか と判断 して これに従 うことに した。在宅介護者 は、被介護者 との 血縁関係別 におお よそ6つに分類 される。第1に、一方の配偶者が他方の配偶者 を看 ることであ る。第2に、娘 もしくは息子が両親の世話 に当たることである。 この場合 に多い例 は、娘 に よる 介護である。第3に、母 もしくは父が、介護 を要する息子や娘 を看 ることである。この場 合 に多 いのは、母 による介護である。第4に、姪が、おばなどの近親者 を看 ることである。第5に、友 人が友人の世話 に当たることである。最後 に、近隣に住 む人々が、何の血縁関係 もないにもかか わ らず介護 を要す る人々のニーズに応 えることである。
介護 は、多 くの場合 に夫あるいは妻 とい う婚姻関係の延長線上 にある。介護 は、愛の発露であ ると指摘 される根拠 もここにある。 しか し、夫 との関係は、介護の始 まりとともに妻 としての関 係か ら母 としてのそれへ と変化する。娘や息子 は、乳幼児期 に受 けた保護 に報いなければな らな い とい う一種の義務感 を抱 きなが ら、老父母の介護 に加わる。これは、親子関係の逆転を伴なう。
娘や息子 は、介護の開始 を契機 にその老父母 を世話 し保護す るのである。母親は、障害 を抱 える 我が子の介護 に当たる時、この介護 を親 としての務めの延長線上 に位置づける。この感情は、我 が子がす っか り成長 して障害者 になった場合 にも変わ らない。母親は、親の責任のひとつ と して 介護 を担 うことか ら、自らを在宅介護者の一員 として認識す るまでにかな りの時間を要すること
も少 な くない。
オース トラリアの人種構成 は、アボ リジアニの存在 を考えただけで も決 して単一でない。言語 は、人種 の構成 を反映 して多様である。これは、在宅介護者の人種別構成や使用言語別の構成 に もあてはまる。アボ リジアニ語 を話す在宅介護者 は、前出の表2に示す ように少数 とはいえ確 認 される。
在宅介護者 は、労働市場 と緑のない存在 と見 なされることもある。その労働力率は、介護 の負 担のない労働者 に較べ ると確 かに低 い。その理 由のひとつは、在宅介護者 に占める高齢者比率 の 高 さであ る。いまひとつは、介護 と仕事 とのあつれ きの結果 としての非労働力化である。しか し、
在宅介護者 を労働市場 と無縁 の存在 と見 なす ならば、それは、現実離れ した見方である。就業状 態 にある在宅介護者 は、前出の表 に示す ように少 な くない。多 くの在宅介護者 は、自分の個 人的
―‑65‑―
あるいは職業的な満足感 を満たすために、また、自分 と家族の生活の糧 を得るために仕事 に携 わ ることを望 む。 しか し、労働市場 は、在宅介護 を担 う人々に好意的でない。希望 に逆 って離職 を 余儀 な くされた り、フル タイムか らパ ー トタイムに転換す る在宅介護者 もいる。日雇 いで働 く在 宅介護者の存在 も伝 えられる。これは、介護 との両立 に促が された不本意な選択である。在宅介 護者 は、フルタイムの地位 にあるか らといって至極安定的 な境遇 を約束 されるわけでない。仕事 と介護 とのあつれ きは、フルタイムの職 にある人々にも認め られる。昇進は、教育訓練への参加 を条件 にす る。人事考課は、在宅介護者 に概 して不利で もある。在宅介護者が、あたか も介護 を 全て に優先す る第1の役割 と考 え、仕事 を第二義的に位置づ けるかの ように見 なされがちである。
これ らは、昇進の遅れ として在宅介護者の身に降 り懸かる。
在宅介護者 は、一緒 に住 む被介護者 を看 る場合ばか りでない。異なる住居 に住 む人々の世話 に 当たる場合 もある。友 人や隣人による介護 は、後者の最 も明確 な例である。結婚 して世帯 を構 え た娘が、親の住いに通 って介護 を担 うことも後者の一例である。これ らは、欧米諸国に も一般 的 に見 られる現象である。特 にオース トラリアにだけ認め られる事象でない。
介護 は、在宅介護者 の健康 を蝕 む。2人の次の発言は、その典型的な事例 であ る。「私 の健 康 状態 は、精神的・身体的な重圧の下で完全 に悪 くな りま した。慢性的な疾患 さえ抱 え、今では 、 半ば障害者 の状態 にさえあ ります。私 は、ず つ と世話 して来た母 を施設 に入れ、私の家 を売 り払 い ま した。自分 にとって暮 らしやすい住いに移 りました。雇主の理解 を得て、週 に 3日 の勤務 に 変 わ りま した。私は、医療処置 を定期的 に受 けてい ます。」。これは、母親 を23年間 にわた つて 世話 し続 けた56歳の男性の発言である。「私は、夜 中に ぐつす りと眠るわけ にい きませ ん。必ず 睡眠 を中断 され ます。時々、夜の2時に起 きたか とお もえば、朝の6時に も起 こされ ます」。 こ れは、2歳になる障害児の母親の発言である。
在宅介護者 の不眠や不安あるいは重圧感は、お よそ5つの要因か ら説明 される。第1に、身体 に も負担の大 きい介護作業である。 しか も、いつ終 るとも知れない作業である。第2に、不 充 分 な、 もしくは全 く存在 しない援助の現状である。第3に、サー ビスなどに関す る情報の不足 で あ る。第4に、被介護者 とだけ向 きあ うことか ら来る社会的 な孤立である。最後 に、被介護 者 と自 分 自身の将来に対す る懸念や不安である。 これ らの要 因は、農村 における人口密度の極端 な まで の低 さや医療機関の欠除などを考えると、都市 よりも農村 において一段 と強 く働 く。農村の少 な くない在宅介護者 は、周囲のいかに も牧歌的な風景 とは裏腹 に文字通 り孤立無援 の下で介護 に取 り組み、その代償 として 自らの健康 を害する。
各種 の『在宅介護者情報便覧』は、「在宅介護者の燃 えつ き症候群のめず ら し くない」 こ とを
―‑66‑―