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ボランティア団体による在宅介護者の援助

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ボランティア団体による在宅介護者の援助

著者 三富 紀敬

雑誌名 静岡大学経済研究

3

2

ページ 39‑91

発行年 1998‑10‑10

出版者 静岡大学人文学部

URL http://doi.org/10.14945/00000653

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ボランティア団体 による在宅介護者の援助

は じめに

本稿 は、本誌 ほかで述べて きたイギ リスの在宅介護者 に関す る作業の一部である。

グ リフィス報告 と在宅介護者の援助団体

ボランティア団体 は、社会サー ビスの領域で実に重要な役割 を担 って来た。20世紀の初頭 には、

公的な社会サー ビス (the public social service,the state social se面 ce)が序々 に拡充 され はじ める。 しか し、公的な社会サー ビス とニーズ との隔た りは、いかにも大 きい。 ボランティア団体 は、この空 白を埋 める為 に少な くない役割 を果たす。多 くの人々は、H.A.メス (Henry Ao Mess) によればボランティア団体 とその援助なしには見るも無残な生活に追い込まれたであろう、 と言 われる(1ヽ ボランティア団体の担 う社会サービス (the v01urltary social service)は 、公的な社 会サービスの不備 を補 うにとどまらない。新 しいサービスの開発にパイオニア的な役割をも担 う。

ボランティア団体の開発するサービスは、その積極的な意義が認められて公的な社会サービスの 一部 としても取 り込 まれ広 く普及するのである。ボランティア団体は、 こうして社会サービスの 一角を量質の双方において担 うのである。

在宅介護者の援助 を目的にする団体 の誕生 は、数多いボランテ ィア団体の中で も比較的新 しい 部類 である。戦後 の1965年における独身女性 とその扶養者ナショナルカウンシル(NCSWHO)

の結成が、最初の経験である。ヽ その後、81年には、ケン ト州 に本拠 を置 く在宅介護者協会が結 成 され活動 を始 める。 これは、在宅介護者だけをもって在宅介護者の為 に活動するはじめての組

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織である。この協会 は、結成か ら数 えて5年後 の86年までに300以上 の在宅介護者グループを傘 下 に収 めて、活動 を重ねる。さらに、88年には、在宅介護者全国協会が結成 され る。この協会 は、

全国に120の地域組織 と6万人 の会員 を擁 しなが ら、在宅介護者の援助 に乗 り出す0。

在宅介護者 の援助 団体 とその役割が公文書 では じめて積極的 に評価 され るのは、88年のグ リ フィス報告 においてである●L

グ リフィス報告 は、サー ビスの立案や調整主体 と供給主体 とを同一視 しない。サー ビスの立案 と調整 は、政府や 自治体 に主 として担われ、その供給 は、家族や友人 あるいは隣人、公的機関や 民間企業 さらにはボランティア団体 な どの多様 な主体 に担われ る。供給主体 の多様化 こそ消費者 の利 にかなう。 なん となれば消費者の選択肢 は、供給主体 の多様化 に促 されて広がる。供給主体 間の競争 は、消費者の獲得 をめ ぐって否応 な く促 され、消費者のニーズにそ うサー ビスの開発 も おのず と進む。競争 は、消費者の獲得 を目的にすることか らサー ビスの種類 に とどまることな く 価格 にも及ぶ。 これはこれで消費者 の利益 につなが るばか りでな く、財政の効率的な運用 を至上 命題 にす る政府や 自治体 に とって も旨みのある話である。グ リフィス報告 は、 この ような見地か らコミュニティーケア政策の原則 と目的について次の ように述べ る。第1に、被介護者が居住介 護施設や病院でな く、出来 うる限 り自宅で暮 らせ るようにす ること、第2に、在宅介護者への援 助 を通 してその負担 を軽 くす ること、第3に、被介護者が通常の生活 をご く普通 に過 ごせ るよう に相応の援助 を行 うこと、第4に、肉体的・ 情緒的な障害や不調か ら生ず るであろう精神的な重 圧 を軽減す ること、第5に、援助 を要す る人々のニーズや願望 に合 うサービスを費用効率の最 も 高い方法で提供すること、最後 に、地域 内の人々 を援助す る為 に域 内のすべての源泉 を活用す る こと、 この源泉 には、在宅介護者 をはじめ国民保健 サー ビス、社会サービス、 ボランテ ィア団体 とその活動な どが含 まれること、 これ らである。グ リフィス報告 は、ボランティア団体 について 独 自の項 目を起 こして、その財政的な支援 に言及す る。 この言及が コミュニテ ィーケア政策 に関 する先の定式化の延長線上 にあることは、言 うまで もない。

グ リフィス報告の提言 は、保健 0社会保障大臣か ら議会へ89年に提出され る報告書(りに も受 け 継がれ る。 さ らに、90年に法制化 され、3年後 の93年4月 に施行 され る国民保健 とコ ミュニ

ティーケアに関す る90年法 に具体化 され る。

在宅介護者の援助団体 は、こうした流れの中で新 しい関心 を呼ぶ。在宅介護 の多 くは、グ リフィ ス報告が正当に認 めるように家族や友人 あるいは隣人 な どか らなる在宅介護者の担 うところであ る。在宅介護者への援助が、被介護者へのそれ とは別個 に認 め られ、 しか も、在宅介護 を無償で 担 う人々へめ支援 を手掛 けるボランテ ィア団体 の役割 も公文書で正式 に認知 されたのである。 そ

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の意義 は大 きい。 しか し、公的な支援 は、団体 に対す る安定的な資金の提供 と同義でない。む し ろ逆である。サー ビスの供給主体 の多様性 を主張 し、相互の競争 を求めるか らである。公的な資 金の援助やサービスの委託 は、新 しく契約(contract)の考 え方に沿 って進 め られ る。 ボランテ ィ ア団体 と言 えども、その枠外 に置かれ優遇 され るわ けでない。契約 を獲得す るにふ さわ しい運営 が、 ボランティア団体 にも求め られ る。契約 は、他の供給主体 との競争 を経なければな らない こ

とか ら、一定の人員や設備機材の配置 も避 けるわけにいかない。契約 に成功す ることもあれば、

当初 の期待や予測 に反 して失敗す ることもある。一定の資金 を投 じた上での契約の失敗 は、痛手 である。

契約の考 え方は、政府や 自治体 とボランテ ィア団体 の間に持 ち込 まれ るだけでない。 それは、

ボランティア団体 とサー ビスの受給者 との間 にも新 しい装いの下 に導入 され る。 その法的な拠 り 所 は、直接支払いに関する96年 (Community care(direct pttment)act 1996)で ある。)。

社会サー ビスは、 自治体 によるアセスメン トを経て一定の基準 を満たす場合 に給付 され る。現 物給付 と一般 に言われ るサー ビスである。サー ビスの供給主体 には、 自治体か ら所要の代金が支 払われ る。96年法 は、こうした従来のや り方 とは別 のサー ビス受給のあ り方、すなわち、社会サー ビスの給付要件 を満たす人々にサー ビスを直接給付する代わ りに金銭 を支給 し、サービスの選択 と受給 をこれ らの人々 に委ねる形態 を新 しく導入す る。アセスメン トを経て一定の基準 を満たす 人々 は、サー ビスに相 当する額 の現金給付 を選択 して も、あるいは従来か らの現物給付 を選 んで もよい。人々の自由な判断に委ね られ る。既 に現物給付 を受 けて これを継続す る人々 も、現金給 付 に転換す ることが出来 る。現金給付 を選択す ると、サー ビスの供給主体 を選 び抜 き、サニ ビス を実際 に受給 しなければな らない。この選択権 は、18歳未満 と65歳以上 の人々 に付与 されない。

選択権 を行使 す るにふ さわ しい台旨力 を持たない と見なされ るか らである。 また、サー ビスの自由 な選択 と言 っても近親者や同居者 との契約関係 は、除かれ る。言い換 えれば在宅介護者へのサー ビスの委託 は、除外 され る。近親者や同居者 をサービスの供給主体 として選抜 し、 これに対価 と して現金 を支払 つてはな らないのである。96年法 は、保健省 の案内によるとサー ビスを必要 にす る人々の独立 と選択の保障 を歌い文旬 にする。

サー ビスを必要 にする人々の選択 は、96年法 による新 しい制度 にそって確かに広が ることにな ろう。 しか し、次の ことを忘れ る訳 にいかない。すなわち、サー ビスの受給 を巡 る係争 は、供給 主体 を選択 した本人が負わなければな らない とい うこと、これである。サー ビスを必要 にす る人々 は、障害や疾病の由に援助 を要す る人々である。 これ らの人々が、サー ビスの受給 を巡 る係争 に どのように対応で きるであろうか。疑間の残 る所である。

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96年法 は、在宅介護者の援助団体 を含むボランテ ィア団体 にも新 しい難題 を突 きつける。すな わち、サー ビス需要の多様化である。サー ビスは、現物給付の下では主 として自治体か らボラン ティア団体 に依頼 されて来た。 この種の依頼 は、サービスの供給 にこれ といった問題 さえ生 じな い限 り、同 じ供給主体 に繰 り返 され ることを常 にす る。 しか し、現金給付が制度化 され、 これを 選択す る人々が増 えるにつれて、サー ビスの依頼 も自治体か ら一人 ひ とりの住民へ と変化す る。

ボランティア団体 は、サー ビスの依頼 を手 に入れ る為 に広 く住民 にむけて団体 とサー ビスの周知 に努 めなければな らない。 これなしに顧客 を確保す るわけにいかない。 まして顧客の拡大 な ど望 むわけにいかない。周知 は、なにが しかの経費 を要する。 しか も周知が、サー ビス水準の絶 えざ る向上 に裏打ちされない限 り徒労 に終わるであろうことも、 自明である。在宅介護者の援助団体 96年法 にやや懐疑的な評価 を下(つすの も、 このように考 えると根拠のないわけでない。

以下では、在宅介護者の援助団体 としてその名 を良 く知 られ るクロスロー ド (CrossrOads)と 在宅介護者の為 のプ リンセス・ ロイヤル トラス ト (The Princess Royal Trust for Carers)及 び バ‐ナー ド(BamardOs)の 3つを取 り上 げる。利用す る資料 を3つの団体別 にあらか じめ紹介 し てお こう。

クロスロー ドは、年次報告書 をはじめニューズンター、各種 のパ ンフレッ ト、調査報告書及び 雑誌論文である。 この うち年次報告書 は、代表者の報告 をはじめコーディネーター報告、在宅介 護者の援助実績 とサー ビス満足度調査、収支報告及 び募金者一覧な どか らなる。年次報告書 は、

主 に 96〜97年版である。一部 に80年代 中葉か らの版や97〜98年度 も含 まれ る。これ らの資料 は、

全国に250を数 える地域組織 の40%ほどに当た るお よそ100の地域組織 をはじめ、全国 に10箇 所の地方本部及びウォー リックシャー州のラグビー市 に本拠 を置 く中央本部 か ら提供 を受 けた も のである。 また、調査報告書 は、地域組織の手掛 けた ものか ら中央本部 による成果 まで様々であ る。いずれの調査 も、専門研究者や機関に作業 を委託 した成果である0。 雑誌論文 は、『コ ミュニ ティーケア』誌に掲載のそれである。 この雑誌は、在宅介護者の問題に同種の専門誌の中でも比 較的はや くから関心を寄せ、その一環 としてクロスロー ドとそのサービスについても幾度か誌面 に取 り上げる0。他の雑誌にも取 り上げられているように思われるが、残念なが ら充分 と言える程 に検索 していない。クロスロー ドには、資料の他にささやかなが ら聞き取 り調査を行っている。

これは、ロンドン・サザック自治区に事務所を置 くクロスロー ドの地域組織 に対する調査である。

この事務所は、自治区営住宅の一角の教会にある。ここの管理責任者であるS。 ワー ド(Sue Word) さんを97年8月 に訪ねて聞き取った結果である。

在宅介護者の為のプリンセス・ロイヤル トラス トは、年次報告書をはじめ在宅介護者ニュース、

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『在宅介護者情報便覧』、各種のパ ンフンッ ト及び調査報告書である。この うち年次報告書 は、代 表者の報告 をはじめ在宅介護者の援助実績 と計画、収支報告な どか らなる。内容 の上ではクロス ロー ドのそれ と重な りあうものの、やや簡略化 された内容 とい う印象を免れない。年次報告書 は、

主 に96‑97年版である。これ らの資料 は、全国に60を数 える地域組織 の3分2以上 の43地 組織 とロン ドンに事務所 を置 く中央本部か ら提供 を受 けた ものである。在宅介護者の為のプ リン セス・ ロイヤル トラス トにも聞 き取 り調査 を手掛 けている。 これは、ロン ドンの8つの地域組織 のひ とつであるサ ッ トン自治区な らびにスコッ トラン ドのエジンバ ラ市 に事務所 を構 えるロジア ンの両組織 か らの間 き取 りである。2つの地域組織 は、いずれ も自治区や市の中心街の一角に事 務所 を構 える。いかにも至便 な場所 にある。聞 き取 りは、クロスロー ドの場合 と同 じく97年8月

に行われた。

バ ーナー ドは、年次報告書 をはじめ援助実績評定書及びニューズンターな どである。 この うち 年次報告書 は、在宅介護 を担 う児童 に対す る援助 の計画 と実績 な どか らなる。

尚、資料 の うち年次報告書の記載 は、全ての地域組織 で統一 されているわけでない。 また、記 載事項 は、大 くぐりに統一 されていて も細部 に亘 ると区々である場合 も多い。た とえば在宅介護 者の援助実績やサー ビス評価 は、多 くの地域組織 によって年次報告書 に記載 され る。 しか し、そ れが、 ひ とつの例外 もなしに実数 をもって示 され るか と言 えば、残念なが らそうでない。棒 グラ フや円グラフだけをもって示 され実数の添 えられない例 は、少な くない。 これでは、援助実績や サー ビス評価のおお よその動 きを当該 の地域組織 についてつか まえることがで きるだけである。

他の地域組織 との比較 に耐 えうるよう実数や比率 を導 くわ けにいかない。 この為 に、以下 に紹介 す る計数 は、全て同 じ地域組織 のそれではない。 ある場合 は、比較的多 くの地域組織 を網羅する 計数 とこれに基づ く検討であって も、他の場合 は、やや少ない地域組織 にかかわる平均値 とこれ を拠 り所 にす る議論であった りす る。 この ことをあ らか じめお断 りしておきたい。

 クロス ロー ド

クロスロー ドの活動 は、アメ リカで発行 された著書の邦訳 を通 して我が国にも紹介 されている。

この団体 は、訳書 によると「地域で生活する障害者 に対 し、全国共通でケア・アテンダン ト(Care attendant)を 派遣 している。……家族が崩壊する危険を防 ぐよう援助 しなが ら、施設への入所 を 回避す るよう試みている。それはまた、現状 の公的サー ビスを補充 した り、 コミュニティーケア の水準 を高めた りす ることを目的 としている(1°」と紹介 され る。クロスロー ドは、この訳書 に従 え

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ば障害者の施設入所の回避や公的サー ビスの補充及びケア水準の向上 を目的 にす るようである。

しか し、 クロスロー ドは、後 に詳 しく述べるように在宅介護者の為の在宅介護支援 を目的に設立 され運営 され る。訳書 は、 クロスロー ドの最 も肝心な姿 を伝 えていない。 また、訳者 は、 クロス ロー ドの目的について訳者 として必要 と思われる説明を加 えていない。

クロスロー ドの誕生 は、およそ四半世紀前の1973年に遡 る(11ヽ それは、バー ミンガム市でモー テル を経営す る家族 にまつわるテレビ番組のメロ ドラマに端 を発す る。 ドラマの題名 は、 クロス ロー ドである。 ドラマの主人公 は、モーテルの経営者の息子S.リ チャー ドソン(Sandy Richard‐

son)で ある。 リチャー ドソンは、不運 にも自動車事故 に遭 い、一時的な麻痺状態 に陥 る。彼 は車 椅子 に乗 つて自宅 に戻 る。話の筋 は、 リチャー ドソンの不運 な事故 に沿 って展開 され る。

この番組 の視聴者の一人 に、N.ク レー ン (Noel Crane)がいた。 この男性 は、 ノース・ウェー ルズで休 日を過 ごした折 りに海 に潜 って首の骨 を折 った経験 の持 ち主である。彼 も車椅子 に乗 っ て病院か ら自宅 に戻 る。重度の麻痺状態 にあった ことか ら、自宅 に居て彼の母親 に介護 される日々 を過 ごしていた。クレー ンは、テレビ局 に電話 をか け、「 リチャー ドソンの窮状 についての描写 は、

いかにも現実離れ している」 とやや抗議の思いを番組の担当者 に伝 える。 クレー ンは、 その後母 親 と共 にメロ ドラマ番組 の助言者 として登用 され、在宅介護 のあ りの ままの姿 を番組 の助言者 と

して担当者 に伝 える。番組 の担当者であるR.フ トソン (Reg Watson)は、 クレー ンの自宅 を訪 ねて母親 の介護負担のあ り様 に心 を動かされ る。

テレビ局 は、クレーンと母親の話 な どにつ き動かされてメロ ドラマの基調 に手 を加 える。T.ス コッ ト (Tony Scott)と い う若い男性 を番組 に登場 させ るのである。スコッ トは、身体障害 を抱 えることか ら自宅で彼の母親T.ヘレン (Tony Helen)に介護 され る境遇 にある。番組 に新 しく 登場 したスコッ トは、介護 の負担 に耐 えかねる母親 を少 しで も楽 に出来ないか と、その方法 につ いて考 えを巡 らせ る。番組 に流 された解決の方法 は看護婦 を雇い入れ、 これによって母親 に暫 く の休息 を確保することである。 この番組がテレビを通 して流 され るや、数百通の手紙が視聴者か らテ ンビ局 に寄せ られ る。手紙 の内容 は、共通す る。在宅介護 を担 う人々の負担 を軽 くして束の 間であれ休息の機会 を確保す るサー ビスなど一体存在す るのか、 といつた文面である。テンビ局 へのあか らさまな抗議である。

テレビ局 は、H.エバ ンズ(Hudson Evans)博 士の助言 も得て1万ポン ドを73年に基金 として 拠出す る。番組で流 した虚構のサー ビスを実際のサー ビス として具体化 し、在宅介護 を担 う人々 を援助す る為 の基金である。この当時の18歳以上人 口の年間平均賃金 は、1,866.8ポ ン ドである

(週35。9ポン ド×52週、全職種男女、73年4月)。 拠出額 は、 この5.4倍に相当す る。

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(8)

クロスロー ドは、テレビ番組 と同 じ名称 の下 に団体 として設立 される。最初 の計画 は、イング ラン ド中部のウォー リックシャー州東部の都市 ラグビー市で始 め られ る。後 にケア・ アテンダン トと呼ばれ る介護代行者5人を雇い、28家族 に援助 の手 を差 しのべ ることになる計画の出発であ る。 クロスロー ドの協会 としての出発 は、77年で あ る。最初 の代表者 は、P。 オスボー ン (Pat

Osborne)である。

クロスロー ドは、74‑77年の最初 の計画時 に在宅介護者 (Carer)と い う用語 を考 えつかない。

当時 は、在宅介護者 に相当する用語 として母親 (mOthers)、 父親 (fathers)、 (husbands)ぁ るいは妻 (wives)な どの表現 を当てる。ケア・アテンダン トと称 され る介護代行者 とそのサー ビ スは、医療専門職者やホームヘルパーの団体か ら強い反対 にも出会 う。職域の侵害を懸念 しての イギ リスな らではの動 きである。しか し、82年31地域組織 を経て87年の初頭 には、全国で114 の地域組織 を抱 え、お よそ3,000の家族 にサー ビスを届 けるまでに発展す る(12、 今 日では、イギ リス国内だけで も250以上 の地域組織 を傘下 に擁 し、 さらに、オランダにも5つの地域組織 を持 (10。 ケア・ アテンダン トは、イギ リス国内に限って も4,000人を超す。

クロスロー ドは、その設立の経緯か らも伺 えるように在宅介護者の援助 を目的にする。 クロス ロー ドの「 あなたは、イギ リスの700万人の在宅介護者のひ とりではないですか。 もしそうな ら ば、 クロスロー ドはあなたに手 を差 しのべ ます」とうた う案内パ ンフレッ ト(14)は、団体 とその目 的について間答の形式 を取 りなが ら次のように紹介す る。「 クロスロー ドとは何で しょうか。クロ スロー ドは、在宅介護者 に実際上の援助 を提供するボランティア団体です。/クロスロー ドは、な ぜ設立 されたのですか。 クロスロー ドは、病人や障害者あるいは年老いて体の弱った高齢の肉親 や友人 の介護 に当た り、介護か ら離れて休息 を取 らなければな らない、しばしば忘れ去 られた人々 としての在宅介護者 にサー ビスを届 ける為 に設立 され ました。/サー ビスは、どのように給付 され ますか。イギ リスに240以上 ある地域組織 を通 して給付 され ます。/クロスロー ドは、どのような ことをす るのですか。あなたの地域のクロスロー ドは、在宅介護者 に休息を与 える目的で在宅介 護者 に代わって介護 を担 う訓練 されたケア・ アテンダン トを自宅 に派遣 し、実際的な援助 を行い ます。/ケア・ アテンダン トは、何 をす るのですか。ケア・アテンダン トは、在宅介護者 を介護か ら解放する為 にお宅 に出向 きます。彼女たちは、在宅介護者が 日頃手掛 ける作業 を最 も効果的に 行 うよう教育 を受 けています。彼女たちは、だか らこそ個々のニーズに熟知 し在宅介護者が安ん

じて休息 を享受で きるように取 り計 らえるのです。」

地域組織 の運営 は、その自治 に委ね られ る。 クロスロー ドの目的は、 この ことか ら地域組織 に よつて異なるのではないか と推測す るむきもあるか と思われる。そこで、屋上屋 を重ねるようで

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はあるものの、地域組織 の年次報告書か ら該当す る箇所 を紹介 しておきたい。 ロン ドン・ キャム デン自治区に事務所 を置 く地域組織 の例である。 クロスロー ド・ キャムデンの計画 は、4つの目 的に沿 って運営 され る。0。 1に、障害や重い疾病 を患 う人々、例 えば身体障害や知的障害、痴 果症、エイズあるいは年老いて体 の弱 った人々 を世話す る肉親や友人の負担 を軽減す ること、第 2に、病院や長期介護施設への入院や入所 を避 ける為 に援助す ること、第3に、在宅介護者が健 康 を損 な うことのないように援助す ること、最後 に、 日中はもとよ り週末 あるいは夜間な ど在宅 介護者 に最 もふさわ しい時間帯 に援助 をす ること、 これ らである。

クロスロー ドが在宅介護者の援助 を目的にす る団体であることは、 ここか らも容易 に読 み取れ るように思われ る。他の地域組織 も、筆者の収集 した資料や聞 き取 り調査 に照 らす限 り、 クロス ロー ド・ キャムデンと同様 の目的 を掲 げて在宅介護者の援助 に乗 り出す。

クロスロー ドは、在宅介護者や専門職者の中では比較的良 く知 られ る団体である。ある全国調 査 による と、在宅介護者の5人1人強 は、 クロスロー ドを知 っている(22%)。 他方、在宅介護 者でない人々になる と、この比率 は8人1人を下 まわ る(10(12%、 93年3月)。 後者 による認知 度 は、やや低い と言わなければな らない。クロスロー ドが在宅介護者 の援助 を目的 にす るだけに、

止むを得ない結果か もしれない。

ク●スロー ドを訪ねる在宅介護者 は、幾つかの媒体 を介 してクロスロー ドを知 り地域 の事務所 に接触す る。19の地域組織(1つ、合計2,159人の在宅介護者の照会機関等 を一覧す ると、その過半 は、公的な機関による照会である。社会サー ビス部の照会が最 も多い (886人 、41.0)。 次いで在 宅介護者本人 もし くは家族 (586人 、27.1%)、 保健局 (530人 、24.5%)、 他のボランテ ィア団体 な ど (75人 、3.5%)及びその他 (82人 、3.8%)である。社会サー ビス部 と保健局 による照会 は、

両者で全体の3分2に近い。

クロスロー ドヘの照会 とアセスメン トを経てサー ビスを受 けた在宅介護者 は、性別で は女性 に 多い。表1に見 る通 りである。

F国勢調査』の95年版 による在宅介護者の性別構成 を参考 までに表中に示 してある。在宅介護 者の性別構成 は、これで見 る限 り女性 に著 し く傾斜す るわけでない。しか し、クロスロー ドのサー ビス受給 は、女性 にはっきりと傾斜す る。男性の在宅介護者 は、 この表の限 りで言 えばサー ビス の受給 を逆 に差別 されているようにも見 える。なぜであろうか。女性 は「女の仕事」のひ とつ と して介護 を甘んじて受 け入れ、 この為 にサー ビスの受給 にも著 しく消極的な態度 を示す、 とか て指摘 された ことさえある。サー ビスの受給 は、女性が「女の仕事」 としての介護 を一人前 に担 えない ことの証明 とも受 け取 られ るか らである。 また、サー ビスは、主 として男性 に給付 され、

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(10)

クロス ロー ドのサービスを受けた在宅介護者の性別構成(lXの

実 数 (人)

比 率 (%)

クロスロー ド地域組織 国勢調査95年版

669

1,695

28.3 71.7

42.1 57.9

2,364 100.0 100.0

[資]クロスロー ド地域組織 の年次報告書及びOPCS,Informal carers,HMSO,1998,p.宙 よ り作成。

[注](1)1996年4月〜97年3月までの期間である。

(2)クロスロー ドの地域組織 の うち次の21組織 についてである。LB of Sutton,LB of Lambeth,LB of Enfield,B五stol SOuth,MorlmOuthshire,AbercOnwy,Croesffordd Gofalu arn Gofalwyr,Newbury and DistHct,Penarth and The Vale,Chester―Le―Street,Derby and SOuth Derbyshire,Kirkcaldy,Ton‐

bridge Edenb五dge and Sevenoaks,Adroddiad Blynyddol,GlenrOthes,Guilford,York and District, Harrogate and Craven,Redb五 dge,Selby District,Lewes area,Taff Ely.

女性への給付 は差別的 に扱われ るとも指摘 されて きた(10。 男性 をサァ ビスの上 で優遇 す る根拠 は、良 く知 られ る次の ような通念である。男性の役割 は、職業 に就いて所得 を手 にし、これによっ て家族 を扶養することである。その男性が介護 を今ひ とつの役割 として担 うことになれば、職業 との均衡 を失 うことにもな りかねず、巡 りめ ぐって家族の経済的な基盤 は揺 らぎかねない。サー ビスは、男性 にこそ優先的に給付 され、これによって彼の職業生活ひいては社会の基盤 としての家 族の安定 を計 らなければな らない。サー ビスの給付 における女性の冷遇は、その結果にすぎない。

前出の表1は、 この種の従来か らの指摘 を くつが えすに足 る材料 を提供 しているようにも見受 けられ る。 しか し、 そのような解釈 は、事実 に反する。女性の在宅介護者 は、サービス給付の逆 差別 を受 け、その旨みに酔 い しれ るわけでない。女性の在宅介護者 は、のちに示す計数 と重ねあ わすな らばおのず と推測 され るように男性の在宅介護者 よりも重い負担 を、いかにも長い期間に 亘 ってその両肩 に負い続 ける。 クロスロー ドによるサービス給付の性別格差 は、介護負担の格差

を映 し出すにすぎない。

クロスロー ドのサー ビスを受 けた在宅介護者の年齢 は、表2の通 り概 して高い。

ここで も、国勢調査95年版 の結果 を参考 までに示 してある。サー ビスを受 けた在宅介護者の3 人 に1人弱 は、70歳以上の年齢階層である。クロスロー ドは、在宅介護 を担 う児童 にも門戸 を開

くことか ら、サー ビスを受 けた在宅介護者 には、19歳以下の年齢階層 も僅かであれ含 まれ る。 し か し、これを含む29歳以下の在宅介護者 は、全体の3.3%を占めるにす ぎない。 これ らの年齢階 層の構成 は、国勢調査95年版 に見 る在宅介護者の平均的な姿 と異 なる。70歳を超す在宅介護者

‑47二

(11)

クロス 回― ドのサー ビスを受けた在宅介護者の年齢階層別構成(lXa

実 数 (人)

比 率 (%)

クロスロー ド地域組織 国勢調査95年 版(0 10‑‑19蔵

20‑‑29慶 30‑‑39蔵 40‑‑49慶 50‑‑59蔵 60‑‑69后 70‑‑79慶 80‑‑89涜 90歳以上

・4 45

・99 249 378 362 34︲

・83

0.8 2.5 11.2 14.0 21.2 20.3 19.2 10.3 0.4

20.1 28.3 31.1

20.5

1,779 100.0 100.0

[資]クロスロー ド地域組織の年次報告書及び OPCS,Informal carers,HMSO,1998,p.16よ り作成。

[注](1)1996年4月 〜97年3月 までの期間である。

(2)ク ロスロー ドの地域組織のうち次の15組織 についてである。Selby Dis ct,Lewes area,Guilford, York and District,Harogate and Craven,Redb五 dge,Adroddiad Blynyddol,Derby and South Derbyshire,Chester Le―Street,Penarth and The Vale,Newbury and District,Croeffordd Gofalu am Gofalwyr,Monlnouth Borough,B五 stol South,LB of Lambeth.

(3)年齢階層の区分は、以下の通 りであ り、クロスロー ドのそれ とやや異なる。16‑29歳 、30‑44歳 、45‑64 歳、65歳以上。

は、国勢 調 査95年版 に よ る と5人1人で あ る。他 方 、29歳以 下 の在 宅 介 護 者 は、ク ロ ス ロー ド の サ ー ビス を受 けた人 々 の お よそ6倍に近 い5人1人を数 え る。こ こか ら次 の よ うに言 え よ う。

ク ロ ス ロ ー ドの サ ー ビス を受 けた在 宅 介 護 者 は、 総 じて高 い年 齢 階 層 の人 々 か ら構 成 され る と う こ とで あ る。

在宅介護者 と被介護者 との血縁関係 は、前者 の介護負担 を間接的にしろ示す指標 として重要 ある。両者の血縁関係 を18の地域組織2,862人について見 ると、在宅介護者 は被介護者の配偶者 である場合が、最 も多 く過半 に近い。9(1,267人44.3%)。 これに次いで多いのは、同 じく子供 (791人 、27.6%)、 親 (553人 、19.3%)、 他の親戚 (139人 、4.9%)、 兄弟姉妹 (50人 、1.7%)、

友人 もしくは隣人 (36人 、1.3%)、 その他 (12人 、0.4%)及び不明 (13人 、0.5%)である。 こ の うち在宅介護者が被介護者の配偶者 もしくは親である場合 は、居住形態別 に言 えば同居である。

配偶関係 にある者 もしくは介護 の関係 を取 り結ぶ親子 は、イギ リスにおいて別居する とは考 えに くいか らである。他方、在宅介護者が被介護者の子供、他の親戚 あるいは兄弟姉妹である場合 は、

総 じて別居である。子供が親 の近 くに住んで介護 を担 う例 は、イギ リスにおいて特 にめず らし 光景でない。あ りふれた光景 のひ とつである。 このように整理す ると、被介護者 と同居 して介護

‑48‑―

(12)

を担 う人々 は、全体 の3分2に近 い (1,820人 、63.6%)。

在宅介護者の介護負担 は、被介護者 との同居・ 別居別 にはイギ リスの専門研究者が一人の例外 もな しに認 める●のように同居の場合 に目立 って高い。 これは、介護 に費やす時間の長 さによって も確かめ られ る。週当た りの介護時間 は、被介護者 と同居 しなが ら介護 を担 う場合 に長 く別居 し なが ら世話 に当たる場合 に概 して短い。例 えば週20時間以上 に亘 って介護 を担 う人々の4人3 人弱 は、国勢調査95年版 による と被介護者 と同 じ屋根の下 に暮 らす(73.0%)いヽ クロスロー ド のサー ビスを受 けた在宅介護者 は、 この ように考 えると介護負担が重 く被介護者の世話 に費やす 時間 も長 いように推測 され る。

クロスロー ドのサー ビスを受 けた在宅介護者 は、重度の疾病や障害 を抱 えて健康な体 に戻 る目 処 に乏 しい被介護者の世話 に当たる。在宅介護者の看 る被介護者の疾病及び障害別の構成 は、25 の地域組織 、4,064人の実績 に即 して見 ると多い順 にアルツハイマー・痴果症 (655人 、16.1%)、

脳卒中 (567人 、14.0%)、 高齢 による身体 の弱 まり(335人 、8.2%)、 知的障害 (253人 、6.2%)、

パーキンソン病 (215人 、5。3%)、 硬化症 (213人 、5.2%)、 末期患者 (195人 、4.8%)、 脳性小 児マ ヒ(184人 、4.5%)、 関節炎 (154人 、3.8%)、 悪性腫 (125人 、3.1%)、 心臓病 (85人 、2.1%)、

自閉症 (72人 、1.8%)、 慢性心臓疾患 (61人 、1.5%)、 脳損傷 (48人 、1.2%)、 てんかん (47人 、 1.2%)、 ダウン症候群 (44人 、1.1%)、 視聴覚障害 (40人 、1.0%)、 エイズ (38人 、0。9%)、 臓疾患 (34人 、0.8%)、 運動神経疾患 (31人 、0.8%)、 多重損傷 (29人 、0。7%)、 脊髄損傷 (29 人、0.7%)、 脊髄披裂 (24人 、0.6%)、 骨粗 しょう症 (23人 、0.6%)、 その他 (563人 、13.9%) である。幼。被介護者の疾病や障害の多 くは、現代の医学 をもってして も解決 しがたい類のそれで ある。疾病や障害の進行 は、医学的な知見 と技術 の革新 に支 えられて一時的にしろ停止 させた り遅 くした りす ることもで きる。 しか し、根本 的な解決 を望むわけにいかない疾病や障害である。 ク ロスロー ドのサー ビスを受 けた在宅介護者の多 くは、こうした疾病や障害を抱える被介護者の世話 に当たるのである。在宅介護者の介護負担 はおのず と重 く、介護 に費やす時間 もこれに応 じて長い。

介護の時間が長いばか りでない。介護 に当てる期間 も、 クロスロー ドのサー ビスを受 ける在宅 介護者 について総 じて長い。表3の通 りである。介護期間の分類 は、中央統計調査局 によると1

年未満、1‑2年3‑4年5‑9年10‑14年15年以上である。 この うち最 も長 い15年 以上 に該当する在宅介護者 は、国勢調査95年版 によると13%である。これに10‑14年の人々 を 加 えて も23%である。他方、クロスロ‐ ドの分類 は、1年未満、1‑5年6‑10年11‑25年

26‑50年51‑80年81年以上 である。11年以上 は4人1人を超す(25。7%)。 この うち4半 世紀 を超 えて介護 を担 う人々は10人1人を超 す(10.5%)。 20人1人近 くは、半世紀以上 に

‑49‑―

(13)

実 数 (人)

比 率 (%)

クロスロニ ド地域組織(0 国勢調査95年 版(→

1年 未 満 1年以上5年以内 6年以上10年以内 11年以上25年 以内 26年 以上50年 以内 51年以上80年 以内 81年以 上

14.2 38.9 21.3

15。2 6.2 4.0 0.3

1,680 100。0

クロス ロー ドのサー ビスを受けた在宅介護者の介護期間別構成(lX幼

[資]クロスロード地域組織の年次報告書及びOPCS,InfOrmal carers,HMSO,1998,p.28よ り作成。

[注](1)1996年 4月97年3月までの期間である。

(2)ク ロスロー ドの地域組織のうち次の12組織についてである。Nenrbury and Dist五ct,Swansea Neath Port Talbot,Brighton and DistHct,Croesffordd Gofalu am Gofalwyr,Derby and South Derbyshire, Kirkcaldy,Chesterfield and North East Derbyshire,Selby DistHct,Lewes area,York and District, Harrogate and Craven,RedbHdge.

(3)合計は、四捨五入のため100.01こ ならない。

(4)期間の区分は、 1年未満、 1年以上 2年以内、 3年以上 4年 以内、5年以上 9年 以内、10年以上14年 内、15年以上である。この為に、クロスロー ド地域組織のそれと必ずしも一致しない。

亘 る在宅介護者 で あ る (4.3%)。 気 の遠 くな る程 の長 さ と言 えないで あ ろ うか。 イギ リス人 の平 均 寿命(男73.9歳、女性79.2歳93‑95年(20)とぁゎせ て考 えるな らば、在宅介護者 の20人

1人近 くは、生涯 の殆 どを介護 と共 に生 きて きた と言 って もあなが ち誇 張で あ るまい。

介護 に費 やす時 間 と期 間 の驚 く程 の長 さは、在宅 介護 者 の生活 に影 を落 とさず におか ない。 こ こで は、年次報告書 の計 数 に拠 りなが ら2つの レベ ルで考 えてみたい。

その一 つ は、職業生活 へ の影響 で あ る。職業生活 を営 む人 々 の比 率 は、在宅 介護者 で相対 的 に 低 い。 また、就業形 態別 に もフル タイム比 率 は低 く、パ ー トタイム比 率 が高 い。就業形 態別 の特 徴 は、 も とよ り就業者比 率 の低 い中で の話 で あ る。 これ らは、 イギ リスの専 門研 究者 が広 く確 か めた。のよ うに介護 と職業生活 との あつれ きに起 因す る。在宅 介護者 は、 この種 の あつれ きに心 を 痛 めなが ら職 業生活 か ら身 を引 き介護 に専念 す る道 を選 び取 るので あ る。 これ らは、 クロス ロー ドのサ ー ビス を受 けた在宅介護者 に も妥 当す る。 しか し、 その就業者比率 の低 さは、表4に示 す よ うに他 の調査 にみ る在宅介護者 の比 で はない。一見 して明 らか な ように他 の調査 にみ る在宅介 護 者 の半分 さ え も下 まわ る。この低 さは、在宅 介護 者 全 国協 会 の会 員 を対 象 にす る93‑94年調査 の結果●D(就業者 率19.7%)に近 い。 この協会 の会員 は、在宅介護者 の中で も比較 的重 い負担 を

‑50‑

(14)

クロス ロー ドのサー ビスを受けた在宅介護者の就業状態別構成(lX幼

実数(人)

(%) クロスロー ドのサ

ービスを受けた者 国勢調査

95報(0 エセックス大学91年 調査

SCOPE

94年 調査(→

フルタイム パー トタイム

自 営 業    介護の為 に離職 老 齢 退 職   (夫)

   16歳未 満   

00 72

・3

78 58 27

13.1 11.2 0.0 20.4 5.3 37.8 10.3 1.8 0.1 0.0

50.3 18.8 0.0 6.7

24.2

39.0 11.8 7.9 5.5 0.0 17.3 11.0 0.0 0.0 7.5

100.0 100.0 100.0

[資]クロスロー ド地域組織 の年次報告書及びOPCS,InfOrmal carers,op.cit.,p.19,Louise Corti,Heather LauHe and Shirley]Dex,Caring and employment,Employment Departrnent,Research series,No。 39, November 1994,p.30,B五 an Lamb and Sarah Layzell,Disabled in B亘 tain;behind closed doors,the carers'expeHence,SCOPE,1995,p.57よ リイ乍成。

[注](1)クロスロー ドに関す る計数 は、1996年4月〜97年3月までの期間である。

(2)クロスロードに関す る計数 は、地域組織のうち次の11組織 についてである。York and District,RedbHdge, Selby DistHct,Lewes area,Adroddiad Blynyddol,Derby and South Derbyshire,TOnb五dge EdenbHd‐

ge and Sevenoaks,BrightOn and DistHct,Swansea Neath Port Talbot,Brent,Newbury and District.

(3)合計 は、四捨五入のため100.0にな らない。

)調査報告書 には比率のみの表示のため、小数点以下 を再計算 にそって示すわ けにいかない。合計 は、四 捨五入 のため100.0にな らない。

負 う人々によって構成 され る。 また、老齢退職年齢 に属する会員の多い ことも、いまひ とつの特 徴 である。就業者比率の極端 な低 さは、会員の重い介護負担 と年齢構成 に起因すると言 えそうで ある。 これは、 クロスロー ドのサー ビスを受 けた在宅介護者 にも妥当する。

クロスロー ドのサー ビスを受 けた在宅介護者 は、働 く意欲 をなえさせ るわけでない。5人1

人強の在宅介護者 は、前出の表 に示す ように失業の状態にある。介護 に携わ りなが らも働 く意欲 を持 ち、求職活動 もあわせて行 う人々である。 こうした状態の人々は、 これ も前出の表 に示すよ うに他の調査 にみる在宅介護者の3‑4倍にのぼる。重い負担 を長 く抱 える人々が、なぜ求職の 意欲 を失わないのであろうか。一定の推測 は可能である。働 くことによる所得の確保である。 し か し、確たる解答 を得 る為の材料 は、収集 した資料 には残念なが らない。

いまひ とつは、健康への影響 である。介護の負担 は、経済的な影響にとどまらない。身体や精 神 の状態 にも影 を落 とす。それ は、介護 に費やす時間 と期間が長 ければ長い程 はっきりとした形

‑51‑―

(15)

をとって現れ、在宅介護者にも意識される。クロスロー ドのサービスを受けた在宅介護者の健康 状態は、他の調査にみる在宅介護者に比べても芳 しくない。表5の通 りである。前者における介 護負担の重さが、健康状態の悪化 として意識にのぼるのである。

以上の検討は、次のように要約されよう。クロスロー ドのサービスを受けた在宅介護者の負担 は、同じ境遇にある他の人々より重 く、その経済的・ 身体的な影響 は、他の在宅介護者のそれを はっきりと上 まわる。

クロスロー ドは、イギリス全体で2万7,047人 の在宅介護者に306万 3,917時 間の援助 を提供 する。0(95年4月‑96年 3月)。 このうちウェールズ地方について言えば、同じ期間に2,164人 の在宅介護者に22万2,260時 間の援助である。同じくスコットランド地方について、6,577人 の 在宅介護者に58万8,770時 間の援助である。クロスロー ドは、イギ リス全体やウェールズ及びス コットランドの在宅介護者の数、それぞれ 680万 人、35万人あるいは75万 人 (90年)とあわせ て考 えるならば、そのO.4‑0.6あ るいは0。9%に当たる人々にサービスを届 けた ことになる。

サービス給付の頻度は、表 6の 通 りである。週に一回の頻度が最 も多 く、 これに週2‑6回が続 く。

クロスロー ドは、在宅介護者のニーズにすばや く、かつ的確に対応することを謳い文旬にする。

他のボランティア団体はもとより営利団体 との激 しさを増す競争に打ち勝つ為に、在宅介護者の

タロスロー ドのサービスを受けた在宅介護者の健康状態(lX幼

[資]クロスロー ド地域組織の年次報告書及び Gillian Parker and Dot Lawton,Different types of care, different types of careri evidence from GHS,HMSO,1994,p.44よ り作成。

[注](1)1996年4月 〜97年3月 までの期間である。

(2)ク ロスロー ドの地域組織のうち次の14組織 についてである。Islw卿,Derby and South Derbyshire, Tonbridge Edenb五 dge and Sevenoaks,Adroddiad Blynyddol,York and DistHct,Harrogate and Craven,LB of Bamet,Selby Dist五 ct,Lewes area,Aberconwy,Newbury and District,LB of Brent, LB of Southwark,Swansea Neath Port Talbot.

実 数 (人)

比 率 (%)

クロス●―ドのサービスを受けた者 国勢調査85年版    

ま ず ま ず ス トンスを感 じる   

非常 に悪い 障害者である 体の弱い高齢者である

1,130 90 29 334 22 104 117

::}88

13

1,826 100.0

‑52‑―

(16)

クロス ロー ドのサー ビス受給の頻度別在宅介護者構成(lXa 実 数 (人)

2 4 319 612 91 56 28 326 2

比 率 (%)0

一 日に1回以上 一 日に1回 一週 に2‑6回

一週 に1回 二週 に1回 一 カ月 に1回 学校 の体 み   

0.1

0。3 22.2 42.5 6.3 3.9 1.9 22.6 0,1 100.0

[資]クロスロー ド地域組織の年次報告書より作成。

[注](1)1996年4月 〜97年3月 までの期間である。

(2)ク ロスロー ド地域組織のうち次の 9組織 についてである。NeWbury and DistHct, B五stol South, BHghton and District,Barking and Dagenham,Derby and South Derbyshire,Kirkcaldy,Chesterfield and NoJh East Derbyshire,Guldford,LB of Bamet.

(3)合計 は、四捨五入のため100.0にならない。

ニーズに感応的で水準の高いサービスの提供を掲げる。クロスロー ドの打ち出す差別化政策の武 器は、 これである。 この政策 は、謳い文旬に掲げられるばか りでな く日々のサービスの中に生か される。クロスロー ドの地域組織は、前にも述べたようにサービス満足度調査を定期的に実施 し て、その結果を日常の援助に生かす。 この調査は、サービスの規則性 をはじめ好意性、有益性、

効率性、信頼性及び柔軟性など合計 16項 目について在宅介護者の評価を求める内容である。評価 の選択肢は、非常に良い、良い、満足、貧弱、いかにも貧弱の5つである。10地 域組織の2,104 人にのぼる満足度調査の結果は、非常に良い (1,796人85.4%)、 良い (192人9.1%)、 満足 (21人1.0%)、 貧弱 (83人3.9%)、 いかにも貧弱 (12人0.6%)である。つ。満足以上の評 価をあわせると90%を超す(2,009人95.5%)。 なかでも評価の高い項目は、非常に良いを選択 した在宅介護者だけを示すにとどめるが、利用の容易性 (98.4%)、 好意性 (95.3%)、 信頼性 (92.5%)、 融通性及び快い対応(90.6%)などである。クロスロー ドの差別化政策は、サービス の提供 される現場で実を結んで正当に評価 されていると言えよう。

在宅介護者は、いつ終わるとも知れない介護のつらさを身にしみて知 るだけに、クロスロー ド のサービスを率直に評価する。「私は、2年前に脳卒中を患い、それからというものずっとベ ッド に寝たままの年老いた母親の介護に当たってきました。クロスロー ドのケア・アテンダン トがやっ て来て、 とても大 きな援助 をして くれました。経験を積んで魅力的な人格の持ち主でしたから、

‑53‑

表 1  クロス ロー ドのサービスを受けた在宅介護者の性別構成 (lXの 実 数 (人 ) 比 率 (%) クロスロー ド地域組織 国勢調査95年版 性 性男女 669 1,695 28.3 71.7 42.1 57.9 計 2,364 100.0 100.0 [資 料 ]ク ロスロー ド地域組織 の年次報告書及び OPCS,Informal carers,HMSO,1998,p.宙 よ り作成。 [注 ](1)1996年 4月 〜97年 3月 までの期間である。 (2)ク ロスロー ドの地域組織 の う
表 2  クロス 回― ドのサー ビスを受けた在宅介護者の年齢階層別構成 (lXa 実 数 (人 ) 比 率 (%) クロスロー ド地域組織 国勢調査95年 版 (0 10‑‑19蔵 記 20‑‑29慶 滝 30‑‑39蔵 長 40‑‑49慶 遠 50‑‑59蔵 遠 60‑‑69后 記 70‑‑79慶 陀 80‑‑89涜 晃 90歳以上 ・445・99249378 36234︲・838 0.82.511.2 14.021.220.319.210.30.4 20.1 28.331.120.5 計 1,779
表 4  クロス ロー ドのサー ビスを受けた在宅介護者の就業状態別構成 (lX幼 実数 (人 ) 比 率 (%) クロスロー ドのサ ービスを受けた者 国勢調査95報(0 エセックス大学 91年 調査 SCOPE94年 調査 (→ フルタイム パー トタイム 自 営 業 失    業 介護の為 に離職 老 齢 退 職 主   婦 (夫 ) 学    生 16歳 未 満 そ   の   他 00720・38.78582720 13.111.20.020.45.337.810.31.80.10.0 50.31
表 6  クロス ロー ドのサー ビス受給の頻度別在宅介護者構成 (lXa 実 数 (人 ) 2 4 319 612 91 56 28 326 2 比 率 (%)0一 日に1回以上一 日に1回一週 に2‑6回一週 に1回二週 に1回一 カ月 に1回学校 の体 みた ま に 他 0.10。322.242.56.33.91.922.60,1 100.0 [資 料 ]ク ロスロー ド地域組織の年次報告書より作成。 [注 ](1)1996年 4月 〜 97年 3月 までの期間である。 (2)ク ロスロー ド地域組織
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