イングラン ドの民間部門在宅介護労働者
資 料
イ ングラン ドの民間部門在宅介護労働者
三 富 紀 敬
はじめに
イギ リスの医療 と福祉 のサー ビスに関す る政策文書 は、労働力問題 とこれへの対応 をその一部 に 含 む。労働力問題 に主題 を絞 った政策文書 も相次いで公刊 され る (1)。 これは、医療や福祉 が対 人サ ー ビスの一種 であることに照 らして当然 といえば当然の ことであ り、 この分野 において深刻化 す る労働力不足の問題 を考 えて も了解 される。 しか し、労働力問題 とこれへ の対応 を政策的に論ず ることは、 これ らの事情 に止 まらない。 それは、サー ビスの質の向上 との関わ りである。労働者の 職業資格 の取得 を含 む職業能力の向上 な しに、サー ビスの質 を引 き上 げることは困難である とい う 理解が、政策文書 に強 く流れている。
こうした動 きは、政策文書に止まらない。『高齢者にす ぐれたケアを提供する』 と題 してキング ス・ファン ドか ら最近出版 された著書など (2)も 、同様の認識から労働力問題について論 じなが
ら政策課題 を正当に提示する。
ここに紹介するのは、英国在宅介護協会の調査結果『誰が今世話をするか一 イングランドの民間 部門在宅介護労働力に関する最近の特徴¬』 (2004年)の概要である。
英国在宅介護協会は、民間在宅介護事業者 を代表する組織 として1989年に設立 される。協会は、
高い介護基準 に沿 うサービスの提供 を始めサービス利用者の権利 と福利の遵守お よび介護労働者 の権利 と厚生の擁護 を『業務規約』 に掲げ、その実現 を傘下の企業や団体に求めている。協会は、
200年にも同様の調査 をおこない、『誰が世話 をするか―イングラン ドの民間部門在宅介護労働力 の特徴=』 と題する調査報告書 を公表 している。この報告書について筆者は、『賃金 と社会保障』
誌に解説を付けた上でその全文を翻訳 し紹介 したことがある (3)。
保健省 (DH)は、地方 自治体の購入する在宅介護サービスの時間数に関する資料 を定期的に集 約 し、 これを公表 している。 しか し、自治体の資金以外の私的に購入 されたサービスに関する情報 は乏 しい。同様に、民間部門の在宅介護労働者に関する情報 も僅かであるもコミュニティケア政策 の展開と共に在宅介護に寄せ られる期待が年を追って大 きくなり、また、「供給主体の多元化」の 名の下 に自治体によるサービス供給の比率が低下 していることを考えるならば、保健省の収集する 情報の限界は、是非 とも克服 されなければなるまい。
在宅介護労働者に関する調査は、先の2000年調査 を除いてもこれまでにお こなわれなかったわけ ではない。 しか し、それらは残念 なことにいずれも不定期の調査である (4)。 問題の重要性 に照
―
‑83‑―
らす な らば、一回限 りではな く定期的な調査であることが期待 される。英 国在宅介護協会が2000年 に続 く調査 をおこなったことは、このように考えるならば大いに評価 される。
2004年の調査は、4年前のそれ と同 じように民間在宅介護部門における労働力の規模 をはじめ採 用 と定着化の困難性、職業資格および在宅介護労働者の受けた職業訓練に関する情報の入手を目的 にする。
調査票は、2004年5月 に事業所に送付 される。調査票の回収率は、回答者の属性別に事業所 (配 布数
3,584、
回収数538、
20.3%、 以下同 じ)、 在宅介護労働者 (3万2,256、 2,895、
9.0%)、 登録マ ネージャー(3,584、 561、
15。7%)である (5)。尚、在宅介護労働者
(home care worker)の
職名は区々である (home carer,domicmary care worker,support worker,independent hving assistant and care auxilia町 )。 在宅介護労働者 という場合には、これらの職名で呼ばれる労働者 を指す。
以下においては、調査結果の理解 を助けると考えられる場合には、他の調査研究からも一部を引 用 しなが ら紹介 をしていきたいと考える。
1.民間在宅介護部門の特徴
在宅介護サービスは、拙著 『欧米のケアワーカーー福祉国家の忘れ られた人々一』
(ミ
ネルヴァ 書房、2005年)において述べた(6)よ
うに長い問自治体 を民間非営利部門 と並 んで主要な供給主 体 にする。 しか し、その位置は80年代以降に徐 々に低下する。 自治体は、サービスを直接 に給付 す る主体 としては後景に退 き、かわってサービスの購入者 として大 きな位置を占めるようになる。こ の傾向は、21世紀に入って一段 と顕著に現れる (表1)。表1:イ ングランドにおける供給主体別週当た り在宅介護時間 (推計値)の推移 実 数 (時間)
比 率
(%)2000年
(A) 2003年 (B) (A) (B)自治体の直接給付 自治体の購入 と民間部門 による給付
民間部門の直接給付 国民保健サー ビスの購入
と民間部門による給付
1, 324,400
1, 354,000 948,653
66, 373
1, 043, 200
2, 069, 800 499, 970
168,060
35。 9
36。 7 25。 7
1. 8
27.6
54. 7 13. 2
4. 4
計 3,693,426 3, 781.030 100.0
100。 0
(資
料 )Government Stadstical Service,Corrmunity care statistics 2003 Home care services for adults,England,DH,2004,Bill McClimont and Kim Grove,Who cares now?an updated prome of the independent sector home care worldorce in England,UKHCA,2004,p.32.イングランドの民間部門在宅介護労働者
世帯 当た りのサ ー ビス時間は長 くなる傾 向 にある。週平均 のサ ー ビス提供時間は、4.1時間 (94 年)から7.0時間 (2000年)あるい は8.6時間
(2003)へ
と延長 される。 これは、在宅介護サー ビス が要介護度の高い人々に傾斜 的に給付 されるに至 った ことを示す。世帯当た りのサー ビス時間を供 給主体別 に見 る と自治体 について短 く、民 間部 門で相対 的に長 い。週平均 のサ ー ビス提供 時 間は、それぞれ3.7時間 と7.2時間 (94年)あるい は7。0時 間 と9.1時間 (2003年)であ る。格差 は確 か に縮小 す る ものの、依然 として認 め られ る。 これは、夜 通 し (ovemight)あ るいは住 み込み
(live―
in)によ るサー ビスが殆 ん どもっぱ ら民間部門に担 われることによる。介 護労働 者 の規模 は、在 宅介護 サ ー ビス時 間 と労働者一 人 当た りの平均 時 間 を基 に推 計 され る。 この作業か ら在宅介護部門の労働者16万 3,000人 の計数が導かれる (表
2)。
この結果 は、キ ン グス・ファン ドか ら公刊 された研究成果に示 される推計結果 (16万 2,000人)と もほぼ重 な り合 う (7)。 民間部門の在宅介護労働者 とケアマネージャー等は、表に示す ように全体のおよそ3分の2を
占める (65。3%)。表2:在宅介護部門の労働者数の推移
実 数 (人) 比率 (%)
2000年 (A) 2003年 (B) (B) 自治体の在宅介護労働者
自治体の在宅介護ケアマネージャー と管理労働者
民間部門の在宅介護労働者
民間部門の在宅介護ケアマネージャー と管理労働者
64. 500
7, 000 121, 500
500
499 500
7, 000 97. 500
000
30. 4
4. 3 59.8
5。 5
計
202, 500 63, 000 100.0(資
料)Btt McChmont and Kim Grove,op.cit,p.39.(注)(1)比率の欄は、筆者が新たに加えた。
週平均労働時間は、事業所 によれば26時 間、労働者 自身の回答 に従 えば30時 間である。ちなみに 2000年 の調査結果 は、それぞれ21時 間 と27時 間である。いずれの場合 も事業所 による報告 よ りも労 働者 か ら寄せ られた回答 において長 い。 これ は
2つ
の要因による。 まず、労働者か らの回答 は、パ ー トタイマー とりわけ週労働時間の短いパー トタイマーか ら少 な く、 これ とは反対 にフルタイマー か ら相対 的に多 く寄せ られる傾向にある。い まひ とつ は移動時間の扱 いである。す なわち、事業所 は要介護者 に対す るサー ビス提供時間だけを労働時間 とみな して報告す るのに対 して、労働者 は、移動時間を労働時間の一部 と考 えて回答す る。
週500時 間以下の介護サー ビス を提供す る事業所 は、お よそ半数
(48.6%)で
ある。 これ らの事業‑85‑
所は、民間部門の提供する介護サービス総量の僅かに5%を占める。他方、週1,500時間以上 を提供 する事業所は、事業所総数のおよそ5分の1(19.0%)であるにもかかわらず、介護サービス総量 では5分の4(80%)を占有する。 これ らの結果を2000年調査のそれ と比較するならば、週当た り サービス時間の短い事業所の市場占有率の低下 と同 じく長い事業所、言い換えれば大規模事業所に よる占有率の上昇 とを読み取ることが出来る。
自治体 によるサービスの直接給付が前出の表 1に 示すように減少 し、これに代わって自治体によ る購入 と民間事業所 によるサービス給付が増加 したことか ら、これは、より多 くの事業所が自治体 との取引比率を引 き上げる結果 として現れる。自治体から購入 して提供するサービスの時間が全体 の75%以上 を占める事業所は、2000年の46%から2004年には61.3%へ と増加する。これを事業所の 規模別に見ると自治体 との取引比率の高さは、規模の小 さい事業所において相対的に低 く、他方、
規模の大 きな事業所で高い。すなわち、自治体か ら購入 し提供するサービスの時間が全体の75%以 上 を占める事業所は、週500時間未満の事業所において51.0%で あるのに対 して週500時以上999時間 以下の事業所66.0%、 週1,000時間以上の事業所74.6%で ある。自治体 との取引比率は、民間営利事 業所 と非営利事業所 とにおいても異なる。それは、民間営利事業所で73%であるのに対 して非営利 事業所
87%と
後者について 目立って高い。労働者の提供するサービスの種類 を、買い物や調理および清掃などからなる家事援助 と入浴や衣 服の着脱などの対人援助 とに区分するならば、家事援助に当てられる時間は、総サービス時間の15
%(2000年)から22%(2004年)へと僅かなが らその比重 を増やす傾向にある。
2.在宅介護労働者の構成 と労働条件
回答 を寄せた在宅介護労働者の主力は、性別に女性である (91.3%)。 前回の調査結果 (94.6
%)とほぼ同様である。登録マネージャーに占める女性の比率
(89.5%)に
較べ るとやや高い。平 均年齢は42歳である。年齢階層別の構成 を見ると50歳以上の比率が低下を示す (31.5%、 2000年、 28.2%、 2004年)。 これは、 とりわけ老齢年金の受給年齢 (男性65歳、女性60歳)に属する年齢階 層に顕著である。高齢の要介護者は、一般に年齢 を重ねた高齢労働者からのサービス給付 を好む傾 向にある。政府は、高齢者 の労働力率を引 き上げてその労働生涯を延長する為の政策 も独 自に採用 する。にもかかわらず50歳以上の在宅介護労働者の比率は、既に示 したように減少する。これは、職業訓練の受講による職業資格の取得 を義務付けられたことに関わる。資格の取得は、「再び学校 に通 うこと」 を意味する。50歳以上の在宅介護労働者がこれに対する心理的な抵抗感を抱いてお り、
これが、50歳以上の年齢階層に属する労働者比率の低下を招 き寄せるのである。
在宅介護労働者の10人中
1人
は、エスニ ックマイノリテイに属する (11.5%)。 2000年 の結果(6.5%)に
較べ ると増加である。人口全体に占めるエスニ ックマイノリテイの比率(7.9%)よ
りイングランドの民間部門在宅介護労働者
も高い。
在宅介護部門における平均勤続年数は、2000年の4年に較べると2004年には5.3年と伸びている。
2年以下の勤務年数の労働者は40。2%を占める。 これを含めて5年以下の労働者が3人中2人以上 を占める (66.9%、 表
3)。
2000年に較べるとこれ らの短い勤務年数の労働者の減少 を見て取るこ とが出来る。これは、新規採用数の 目立った減少の結果である。新規採用数の減少は、後に述べる ように全国最低基準に沿って2003年4月 から全ての新規採用者に導入尋1練が義務付けられ、また、介護サービスの少な くとも50%は、2008年4月 までに国家職業資格2級を保有する労働者に担われ なければならない、 という法制度上の変更による影響 を無視するわけにいかない。
表3:在宅介護労働者の在宅介護部門における勤務年数別比率
(単位
:%)
2000年 2004年 1年未満1年 2年 3年 4年 5年
22. 1 15. 1 13. 5 10.6
8。 2 7. 7
14. 3 14. 0
11。
9 11. 1
8. 6
6。 9 5年以下小計
6年以上10年以下
10年以上15年以下
16年以上20年以下
21年以上25年以下
26年以上30年以下
31年以上
77. 2 13.8
5。 6 2. 2
0。 7
0。 3 0. 2
66. 9
19。 8
7。
1 3. 6
1. 3
1. 1
0. 2
計
100.0 100.0(資
料)表2に 同 じ、53頁。在宅介護部門における平均勤務年数 は、登録マネージャーについて10年 と長い。介護労働者のお よそ倍である。2年以下の勤務年数の登録マネージャーはお よそ7人中
1人
である (15.6%)。 こ れ を含めて5年以下の登録マネージ ャーは3人中1人
である (33.4%)。 いずれの年数 も先の介護 労働者のそれに較べ ると目立 って少 ない。週 当た り労働時間は平均30時 間である。2000年 の27時 間に較べ る とやや長い。 これ らは、いずれ も介護労働者 の回答 による。事業所 の回答 に従 えばいずれ もやや短 く、26時 間 (2000年)と21時 間
―
‑87‑―
(2004)である。回答者 による相違の要 因については、先 に述べ た通 りである。
週当た り労働時間の分布 は、2000年 か ら2004年 にかけてやや縮小 の傾向を示す (表
4)。
週30時 間以下 の短時間労働者 は、64.5%(2000年
)から54.7%(2004年
)へと減少す る と共 に、週51時 間 を超す長時間労働者 も同 じ期 間に8.2%から6.0%への同 じく減少である。週66時 間 を超す介護労働者も前出の表に見るように一握 りであるとはいえ依然として確認される。これらの中には、要介護 者の自宅に住み込んで働 く労働者
(live―in wOrkers)が含まれる。
表4:在宅介護労働者の最近7日間における週労働 時間別分布
(単
位:%)
2000年 2004年 0‑5時間6‑10時 間
11‑15時 間
16‑20時 間
21‑25時 間
26‑30時 間
31‑35時 間
36‑40時 間
41‑45時 間
46‑50時 間
51‑55時 間
56‑60時 間
61‑65時 間
66時間以上
5。 2
9。 9 10。 3 16. 0 11.4 11. 7
8. 4 10. 1 4. 9
3。 7
1. 7
1. 2
0。
7 4. 63. 0 4. 7 6. 2 15. 0 11.4 14. 4 10.4 18. 8
4. 8
5。 3
1. 6
1. 7
0。
7 2. 0計
100.0 100.0(資
料)表2に 同じ、55頁。(注
)(1)四捨五入のために100.0に
ならない場合がある。(2)登録ケアマネージャーを含まない。
登録 マ ネージ ャーの週労働 時 間は、平均40時間であ る。労働 時 間の分布 は、介護労働 者 と異 な る。週30時 間以下の登録マネージャーは少 ない (13.1%)。 その主力 は、週31時 間以上40時 間以下
(52.2%)も
しくは週41時 間以上50時 間以下(22.8%)の
長 さで働 く。週51時 間以上 の登録 マ ネー ジ ャーは、相対的に多い (11.9%)。調査対象 の7日間に2箇所以上 の事業所 で働 いた ことのある介護労働者 は、僅 かである (6.5%)。
この うち3箇所以上 の事業所で働 いた こ とのある介護労働者 は、 さらに少 ない (0。6%)。 2000年 の
イングラン ドの民間部門在宅介護労働者
結果 (14%、 2%)に較べるといずれ も減少である。三度働 きもしくは三度働 きは、国民保健サー ビスの労働者 をは じめ介護助手、介護事業所を派遣先にする派遣労働、清掃や家事手伝いなどであ る。
移動時間と移動に要する経費の扱いは、就業条件の中で重要な事柄の一つである。これ らが どの ように扱われているかについての回答状況は、労働者 と事業所 とで異なる (表
5)。
事業所 は、移 動に要する経費などが要介護者 との接触時間 (∞ntact time)と して労働者に支払われる金額の中 に含 まれる、 と考えている。 しか し、労働者はそうした事実について正確 に伝 えられているとは限 らない。回答状況の相違はこの結果である。表5:要介護者宅間の移動費用 と移動時間の扱い
(単
位:%)
労働者の回答 事業所の回答 移動に要す る費用の支払い移動時間の有給による扱い
移動時間の有給扱いの場合に時間当た り賃金の適用
57.0 29.0
69.0 38.0 77. 0
(資
料)表2に 同 じ、66頁。(注
)(1)空 欄 は、調査項 目にないことを示す8以下のことは、調査結果に照 らして疑 う余地のないことである。すなわち、労働者の3人中2人 は、移動時間に対する賃金支払いを受けていない。移動時間に対する手当てがなされるように期待 する。
事業所の多 くは介護労働者の採用の難 しさを訴えている (74.4%)。 この難 しさは、2000年の結 果
(76.0%)と
ほとんど変わらない。事業所の一部には、介護労働者の採用や定着化が思 うに任せ ないことか ら事業規模の縮小 を余儀な くされる。求人の広告 を出 して も、求職者からこれという応 答 もない。低賃金 と低い労働条件 とが、そうした芳 しか らざる状況の要因として指摘 される。週労 働時間の保障がないことに由来する労働時間の変動の大 きさや労働における安全性の欠如なども指 摘 される。採用 と定着化に向けた方法 としては、定期的な求人広告
(29.0%)を
始め時間当た り賃金の引 き 上げ (26.3%)、 離職者 との面談 (17.8%)、 職業訓練の実施(17.0%)な
どが注 目される。他方、労働諸条件の引 き上げ (5.8%)や労働時間の保障 (2.7%)お よびキャリア形成機会の提供 (1.9
%)などの方法を採用する事業所は、見 られるようにいずれも少ない。
年間の移動率は18.8%で ある。
‑89‑
3.在宅介護労働者の職業資格 と訓練
介護基準に関する2000年法は、い くつかの新 しい課題を提示する。まず、介護サービスを提供す る事業所 は、ソーシャルサービス監査委員会 (CSCI)に登録すると共に、監査委員会の定める作 業標準 を遵守 しなければならない。さらに、介護労働者の採用に当たっては、最低 3日 もしくは21 時間の導入訓練 をおこなわなければならない。また、サービスの50%は、国家職業資格2級を保有 する介護労働者によつて担われなければならない。
このうち委員会の定める作業標準に関する情報 を介護労働者に伝 えた事業所は、多い (87.7%)。
これを登録マネージャーに伝えた事業所 も多い (93.4%)。
新規採用者の導入訓練に関する定めは、サービス利用者の安全 を担保する為に採用 された重要な 措置の一つである。2003年4月 1日以降の適用である。導入訓練は、2000年法の定めにもかかわら ず全 く実施 されない場合 も少な くない。 これを含めて2000年法の定めに抵触する例が優 に過半を超 す (表
6)。
これは、表に示 されるように労働者はもとより事業所による回答にも示 される。これ と同様の調査結果は、J。フランシス (Jennifer Francis)他 による調査の示す ところである (8)。表6:導入訓練 の時間別 回答者別状況 (単位
:%)
労働者の回答 事業所の回答 0時間1‑10時 間
11‑20時 間
21‑30時 間
31‑40時 間
41時間
7. 1
45。 2 2 1. 2 13. 3 7. 35。 8
17.0 29.4 27. 7 14.0 11. 9
(資
料)表2に 同じ、97頁、99頁。国家職業資格2級の取得に関する定めは、2008年 4月 1日 までに満たさなければならない。国 家職業資格2級以上の取得者は、事業所の回答によれば8.5%(2000年)から僅かに増 える (9,9%、
2004年)。 これを準備中の労働者 も8.9%か らかな りの増加 を示す (18.0%、 2004年)。 これ らを含 めてソーシャルワークの職業資格 を取得 した労働者 などの全体的な状況は、別表の通 りである (表
7)。
これ と同様の調査結果は、J。フランシス他 によつて も示 される (9)。 国家職業資格 を既 に 保有する労働者はもとより取得に向けて準備中の労働者に関する計数を見る限 り、2000年法の示す目標の実現は、不可能な状況である。
イングランドの民間部門在宅介護労働者
表7 職業資格保有及 び準備 中の労働者比率
(単
位:%)
保有労働者 準備中労働者 国家職業資格 介護2‑4級ソーシャル ワーク資格 登録看護師資格 他
9。 9
0. 1
0. 6 0. 518.0
0. 1
0. 3 0. 5(資
料)表2に 同じ、75頁。(注
)(1)事業所の回答による。労働者比率 とは、事業所に雇用されている全従業員に占める割合である。
国家職業 資格 の取得 による賃金引上 げの効果が認め られる。時間当た り賃金 は、2級の職業資格 を保有す る労働者 に とって僅かであるとはいえ高い (表
8)。
2級の職業資格 の取得 に向けて準備 中の労働者の時間当た り賃金 は、平均 よ りもかな り低 い。 これ とは反対 に3級の職業資格 を保有す る労働者 の時間当た り賃金 は、2級の職業資格 を持つ労働者のそれ よ りも高い。3級の職業資格 の 取得 に向けて準備 中の労働者の時間当た り賃金 は、全労働者のそれ を僅 かであるとはいえ上 まわる。在宅介護労働者 と登録マネージャーが、 自分の生活時間の一部 を割いて学習 し職業訓練 に参加す るのであって、それ らが全 て労働 時間 として扱 われない と断ず る見方 は、調査結果 に照 らして支持 され ない。国家職業資格 の取得 に関わる訓練 は、事業所 の回答 によれば労働時間 として扱 われるこ とが多い (51%)。 訓練 の費用 も事業所の負担 による とい う回答が、介護労働者 と事業所 とでかな りの差異 をともなうとはいえ、最 も多い (39.0%、
69%)。
表8 時間当た り賃金の職業資格有無別等級別比較
(単
位:%) 3級以上資格保有者
2級資格保有 者
全在宅介護 労働者
4.50ポ ン ド以下
4.51ポ ン ド以上5。 50ポン ド以下
5.51ポ ン ド以上6.50ポ ン ド以下
6.51ポ ン ド以上7.50ポ ン ド以下
7.51ポ ン ド以上10.00ポ ン ド以下
10.01ポ ン ド以上
0. 0 22. 8 41. 1 23.9 11. 7
0. 6
0. 6 31.4 44. 1 18. 0
5。 7
0。 2
1. 3
33.5 42.3 16. 9
5. 4 0. 7
計 100.0 100.0 100.0
(資
料)表2に 同じ、100頁。現在 の仕事 を続 けてい く上で さらなる職業訓練 を必要 にす る と答 える比率 は、介護労働者 と登録 マネージャーのいずれ も高い (40%、
47%)。
‑91‑
お わ りに
ここにその概要 を紹介 した調査 は、ス コッ トラン ドにおいて も実施 され、同 じ2004年 に結果が公 表 され る (10)。 ここに紹介 した結果 は、ス コッ トラン ドの調査 か らも同 じように読み取 ることが 出来る。 しか し、在宅介護サー ビスの料金 を巡 っては、イ ングラン ドとス コッ トラン ドとで実 に大 きな違いが生 まれてお り、 これが、在宅介護サー ビスの担い手 に与 えた影響 を無視す るわけにいか ない。 た とえば在宅介護サー ビス を受 けた65歳 以上の高齢者 は、2002年 を底 に年 を追 って増加す る
(2万4,161人 、2002年 、3万9,105人、2005年)(11)。 これは、 イ ングラン ドとは明 らか に異 な る動 きである。ス コッ トラン ドの調査結果 については、機会 を改めて紹介 したい と思 う。
(1)Departrnent of Health,The Social care workforce:developing a new national agenda,a conference held on 26/27 May 2004 at Chelsea village,Stadord bridge,London SW6,DH,2004,
pp.1‐
73,Scottish Executive, National strategy for the development of the social service workforce in Scodand,a plan for action 2005‑2010,Scottish Executive,2005,pp■ ‐65.
(2)]Derek Wanless,Securing good care for older people,King's Fund,pp.1‑310 and i‐ xxxiv, Jamice Robinson and Permy Banks,The Business of carln3 Kings FШ
ld inqwmg mtO care
services for older people in LOndon, King's Fund,2005,pp。 1‐176 and i‐xxviii,Wilha Laing, Trends in the London care market 19%2024,Kings Fllnd,2005.(3)拙 訳「 イ ングラ ン ドの民 間部 門在 宅介護労働力 の特徴 」、 同「誰が世話 をす るか」 『賃金 と社 会保障』 1330号 、2002年9月下旬号、
12‑30頁
。14)Yllng R and Wistow G,Expe五 ences of independent sector hoIIle care pro宙 ders:analysis of
the January 1995 UKHCA survey,UKHCA and Nuttield lnstitute for Health,1995,Yung
R and Wistow G,Dorniciliary care markets:growth and stability,UKHCA and Nuffield hstitute for Health,1996,Hardy B,Report of 1997 stlrvey of UKHCA members,UKHCA and Nutteld hstitute for Health,1998,Ford」 and als,Creatmg job?the employment potential of domiciliav care,The Poucy Press,1998,Mathew D,Corrunlssioning home care‐ changing practice;dehverlng quality?UKHCA,2003.(5)Bi■MCClimont and Kim Grove,Who cares now?an updated prome of the independent sector home care worldorce in England,UKHCA,2004,p.18.
(6)前掲拙著、127頁 。
(η
Derek Wadess,op.cit,p.123.(8)Jennifer Francis and Ann Netten,Home care workfers careers,commitments and modvations, PSSRU Discussion paper,2053,October 2003,p■
2.
イングラン ドの民間部門在宅介護労働者
(9)Jemifer Francis and Ann Netten,op.cit,p.4 and p■
2.
(10)Btt MCClimont Kim Grove and Michele Berry,Who cares now?an updated proile of the independent sector home care worldorce in Scodand,UKHCA,2004.
(11)SCOttish Executive,Statistics release;free personal and nursing care Scotland 2002‑2005,p.5,
―
WoSCOdand.gov.ピ
iblcations/2006/03/27130345/0.本稿 は、科学研 究費補助金 (研究課題「医療 ・福祉 サー ビス領域 の雇用創 出 と労働力の専 門職化 に関す る英仏2カ国比較研 究」、研 究種 目 基盤研究 (C),課題番号
18530199)に
よる成果の一 部であることを申 し添 える。‑93‑