治癒時の皮膚の再構成を促すが、アトピー性皮膚炎の皮膚表面では、Plasmin 活性が高いことが知られ ており、皮膚バリア機能を破壊する要因として治療の標的とされている。
ENO1 がアトピー性皮膚炎の皮膚表面に多く発現していることと、Plasminogen receptor として機能 することから、ENO1 は、アトピー性皮膚炎の皮膚表面における Plasmin 活性を促進する可能性が考え られる。しかし、ENO1 が皮膚表皮ケラチノサイトで Plasminogen receptor として機能することや、皮 膚バリア機能との関係は知られていない。本研究は、アトピー性皮膚炎の角層中に高発現する原因や ENO1 の皮膚における機能について調べ、皮膚状態の新規角層バイオマーカーとしての可能性、アトピ ー性皮膚炎や皮膚状態を改善する新たな標的としての可能性について検討することを目的として行っ た。
[結果]
角層中 ENO1 量の Sandwich Enzyme linked immune solvent assay (Sandwich ELISA)法による新規定量 方法の確立
本研究では、ヒト角層中の ENO1 量と皮膚機能との関係を調べるにあたり、多検体のヒト角層中の ENO1 量を安定的に定量する必要があると考え、Sandwich ELISA 法の開発を行った。固相化抗体、検出 抗体、検量線用精製タンパク抗原、希釈および角層中タンパク抽出用の Buffer について 196 通りの組 み合わせの検討を行い、1.6 倍程度の ENO1 量の変化を有意な差として検出可能な、新規 Sandwich ELISA 法を確立した。本 ELISA 法を用いて、アトピー性皮膚炎患者と健常者の角層中 ENO1 量を比較したとこ ろ、過去の報告と同様にアトピー性皮膚炎患者の角層中 ENO1 量は、健常者よりも多いことが確認され、 その差は約 10 倍程度であることが示された。
角層中 ENO1 量は皮膚バリア機能、不全角化と関係する
であるという仮説を裏付けた。
ENO1 は Plasmin を介して表皮ケラチノサイトのバリア機能を低下させる
角層中 ENO1 量と皮膚バリア機能に負の相関関係があったこと、ENO1 が癌細胞や免疫細胞において、 Plasminogen receptor として機能するという報告から、ENO1 の plasmin を介した皮膚バリア機能破壊 への可能性を検討した。ヒト表皮ケラチノサイトに ENO1 を過剰発現させたところ、TJ 構成タンパクの 発現量低下、TEER 値の低下が認められ、細胞間隙が増加している様子が観察された。また、ENO1 と Plasminogen の共染色による共局在性を確認し、Plasmin の添加による細胞間接着の脆弱化が起こる様 子が観察されたことから、ENO1 が表皮ケラチノサイトでも Plasmin receptor として機能し、Plasmin により細胞間接着を弱めると考えられた。さらに、ENO1-Plasiminogen 結合阻害剤であるトラネキサム 酸を、ENO1 を過剰発現させた表皮ケラチノサイトに添加したところ、TJ 構成タンパクの発現量低下や TEER 値の低下は抑制された。これらの結果から、ヒト表皮ケラチノサイトにおいて ENO1 は、 Plasminogen receptor として機能し、Plasmin の活性を促すことにより、皮膚バリア機能を破壊する と考えられた。
[結論]
角層中 ENO1 量は、皮膚バリア機能や不全角化と相関することから、新たな皮膚状態の評価法として 用いることが可能と考えられる。さらに、ENO1 の過剰発現は、皮膚表皮ケラチノサイトのバリア機能 を低下させることが示され、これは、ENO1 の Plasminogen receptor としての機能により、Plasmin 活 性を細胞膜付近で促進させることに依ることが示唆された。アトピー性皮膚炎の皮膚表面では、 Plasmin 活性が高いことが知られており、ENO1 は Plasmin の活性を高くしている原因である可能性が 考えられる。これらのことから、ENO1 はアトピー性皮膚炎および皮膚バリア機能の改善のための新た な標的となる可能性が示された。
[研究成果が掲載された論文]