等高線図を用いた
2
因子模擬実験高 橋 武 則 * 楊 国 林 判
S i m u l a t i v e Experiment o f Two F a c t o r s by C o n t o u r
T a k e n o r i T a k a h a s h i and K o u l i n Y o h
要 旨 本研究では,多因子実験の基礎として
2
因子実験を位置づけ,これを通常の講義用教窒内で 実施することができる簡単な模擬実験を用いて教育を行う方法と,そのカリキユラムを具体的に提案す る。今回の報告では,模擬実験として紙ヘリコプターを採用し,その変数として翼長と足幅を取り上げ る場合を紹介する。これらを選んだ理由は,実験が簡単であることと応答曲面を単純にするためのもの であるO また,実験を視覚的に(幾何学的に)理解させるために等高線図を活用する。とりあげる実験 のタイプは望白実験であり,カリキュラムの最終段階では確認実験を実施する。ところで,初心者の実 験においてはしばしば外れ値が発生し,これが実験の解析の段階で受講者の理解を混乱させるという問 題がある。そこで,これに対する頑健性のあるアプローチも提案する。1 .
は じ め にコンビュータによるデータ処理の発達した今 日,多因子実験のデータ処理そのものは容易で あるため,気軽に多因子の実験が実施されてい る。そして,実験結果に重回帰分析を適用する ことが少なくない。しかしながら,多因子実験 を確実に理解し,再現性のある統計的推測を行 うためには,理論教育と計算演習だけでは不十 分で,本番の実験の前に模擬実験による教育を 行うことが必要である。
多国子の実験の基本は
2
因子にある。実験自 体の基本は1
因子実験ではあるが,条件の組み 合わせが扱えるのは2
因子実験からであるから である。実験結果を解析し考察する上で,視覚 的表現は重要である。視覚的表現が可能なのは,2次元および工夫した3次元である。前者は散 布図であり,これは
2
次元データ(Xl
,X2)
を打点したものである。後者は高線図であり,
これはy=
f (Xl
,X2)
を2
次元平面上に表現し たものである。2
つの因子の効果というものを,*非常勤講師数理統計学
**本学助教授生体情報工学
( 4 3 )
等高線図を用いた模擬実験を通して,体験的に 身体で理解することはたいへん意義がある。
望大実験(より大きな値を得ることを目的と する実験)は興味深いが,これは誤差がかなり 小さくないと困難で、あるため,初心者には望目 実験(目指す値に近づけることを目的とする実 験)の方が望ましい。望目実験の場合でも,誤 差はできるだけ管理し,外れ値を生じないよう に注意しかっ誤差のばらつきを小さくしなけれ ばならない。そこで,本研究では,模擬実験と して紙ヘリコプターを取り上げ,外れ値に頑健 でかかっ実験誤差を小さくするアプローチを提 案し,実施例を紹介する。
本研究は
2
変数の重回帰分析を多変数の重回 帰分析のための準備と位置づける。紙ヘリコプ ターの場合には,翼長,翼幅,足長,足幅,紙 質,重さの6
変数を取り上げることができるが,今回はこれらのうちの
2
つをとりあげる。その 組み合わせはいろいろあるが,翼長と足幅の組 み合わせが初心者にとって実施し易いので,実 施例ではこのケースをとりあげる。そして,z
変数の場合には等高線図の作図が可能で、あるた め,これを作図して滞空時間 Yと翼長
Xl
と足 幅X2
の関係を把握する。2 .
等高線図と統計的推測2 . 1
等高線図の概念結果を Y,原因を (Xl,X2) としたとき,
因果関係の数学的表現方法には,代数的表現と 幾何学的表現がある。
(1) 代数的表現:数式表現
因果関係 (y:結果,X:原因)を代数的に 関係式で表現する。
y=
f
(Xl, X2)関数
f
としては様々なものが存在している。( 2 )
幾何的表現:図形表現原因が一つならば
2
次元のグラフ(横軸X, 縦軸 y) で表現することができる。原因が二つならば, (横軸 Xl,縦軸 X2) の
2
次元平面上 にY
の値を等高線として表現することができ る。この表現方法を用いると,いろいろな考察 が可能になる。代表的な数学的考察には以下のものがある。
①ある条件 (Xl,X2)のもとでの Yの値
②ある Yの値をとりうる (Xl,X2)の組み 合わせ
③Yのとる最大値あるいは最小値とそのとき の条件 (Xl,X2)
数式表現ができれば解析的な処理が可能になる が,常に数式表現が可能というわけではない。
そのときには図形表現が有効である。また,数 式表現が可能な場合でも,図形表現を併用する と因果関係を視覚的に理解できるので,解析を 行う上で有効である。
因果関係そのものの表現ではないが,
3
次元 の状態を2
次元上に表現する図形表現の代表的 なものに,地形図における等高線と天気図にお ける等圧線がある。これらは原因が2
つの場合 の因果関係の表現に対して応用することができ る。関係式が y=f
(Xl, X2)のとき,このY
をXl
軸,X2軸の2
次元座標上に表すことが できる。すなわち得られたデータ Yの値を順にY l = f
(Xll, X21) Y2=f
(X山 X22)Yn=
f
(Xln, X2n)というように座標上の該当位置に記入してい く。そしてYに関して同じ値を通る点を結んで、
2
次元平面上に線を描く。この方法により,地 形図では地形が把握でき現在位置を確認したり 進むべき方向を決定することができ,また,天 気図では気圧配置を把握して天気の予報が可能 となる。本研究では,実験の解析と推測におい て等高線図を大いに活用する。2 . 2
等高線図作成手1 )
頂とポイント 等高線図の概要は以下の通りである。(1) 因子 Xl,X2に対する
2
次元座標を用意 する。( 2 )
因果関係 Y=f
(Xl, X2)に関するデー タに対して,2
次元座標上の対応する (Xl, X2)の位置に Yの値を記入する。与えら れた全てのデータについて同様にする。( 3 )
記入したデータの相対的位置関係を考慮 して値が等しい点を結んで線(等高線)を 描く。(4) データのないところも推測して等高線を 描く。このとき,比例配分の考え方を用い て以下のように作図する。
まず,値が既知の点同士を直線で結ぶ。その 直線を比例配分することによって直線上に点を
とり,値を当てはめる。
図
2 . 1 ( 1 )
に示すように,4
点A( 9 0 )
,B ( 1 0 0 )
, C (96), D (108)の値が分かつている場合を考 える。ここで,図2. 1 ( 2 )
のように点A,Bを結
んだ直線A Bを5
等分すると点イの値は94であ り,同様に直線A D
を9
等分すると点ロの値が94
,直線A C
を3
等分すると点ハの値が94とな る。したがって,値の等しいこの3
点イ,ロ,ハを結ぶことにより値94の等高線が得られる。
その他の値についても同様にして線で結んで、
いくと図
2 . 1 ( 3 )
のようになる。これは標高差が2
間隔の等高線図である。この例のように,内 分点を用いて作図することはほとんどの場合大 きな問題を生じないが,外分点を用いて作図す因子模擬実験
図
2 . 1
ることはしばしば危険を伴う。前者は回帰分析 における内挿にあたり,後者は外挿にあたる。
2 . 3
等高線図を用いての推測作成した等高線図を利用すると次のことを推 測することが可能で、ある。
①ある条件
(Xl
,X2 )
のもとでのY
の値②ある Yの値をとりうる
(Xl
,X2 )
の組み 合わせ③Yのとる最大値あるいは最小値とそのとき の条件
(Xl
,X2 )
実際に推測に用いるために等高線図を作成す
( 45 )
B
( 2 )
横から見た図図
2 . 2
ニ山の等高線図る場合には,データの取り方に注意しなければ ならない。データを取る点(データを取る条件) の決め方次第で,等高線図の正確さが左右され てくる。多くの条件の組み合わせでたくさんの 実験を行えばより正確な等高線図が得られるで あろうが,現実には実験に費やせる時間や材料 は限られていることがほとんどである。したが って,望大実験の場合には,
(Xl
,X 2 )がどの
ような条件のときに Yが最大になるのかについ て,ある程度仮説をたてて,その組み合わせの 実験を行ってデータをとる方が無駄が少ない。また,逐次実験で山登りを行う場合には
1
回 目の実験のデ}タを用いて部分的に等高線図を 作成し,それを2
回目の実験の条件を決める手 がかりにするとよい。このようにすれば,少な い実験回数でも効率よく山登りを行うことができる。
ただし,全く予想外の等高線図になることも ある。例えば図
2 . 2
のように,頂上が1
っとは 限らない場合もありうるので,データをとる点 については十分考慮する必要がある。2
.4 等高線図の作成演習演習はやさしいものから難しいものへとステ
ツプアップしていくのがよい。統計実験のため の等高線の教育の場合には,誤差なしから誤差 ありへ,交互作用なしから交互作用ありへ,単 純な応答曲面から複雑な応答曲面へと進めるの がよい。
例題でとりあげる実験は望大実験(値が大き いほど望ましい)を想定しており,
3
回の実験 はより大きい値や頂上を求めて山登りをしてい る。そして,頂上の標高は1 0 0
で,等高線は標 高が1 0
刻みでかっきりのよい数値( 9 0
,8 0
,7 0
,ーというように)で作成している。
なお,図中に用いるデータの外側の記号は以 下の通りである。
0:
1
回目の実験,口 2
回目の実験,ム:
3
回目の実験, ( ) :補助情報2 . 4
.1 誤差がない場合(等高線図の基本) 実際の実験では誤差が存在するが,作成練習 では誤差が無い場合で行う。その際,交互作用 がある場合とない場合とを行う必要がある。ま た,できれば多少複雑な場合も練習しておくと よい。(1) 交互作用がない場合
図2.3の例題は,等高線図の作図において比 較的やさしい場合である。山(応答曲面)は尾 根のない単純な山で,作図は容易で、かっ頂上も 見つけやすい。
( 2 )
交互作用がある場合図2.4の例題は,尾根が存在する場合で初心 者には多少難しい。しかしながら,全体として は単純な構造なので,馴れればとくに問題では ない。
(3) 応答曲面が複雑な場合
複雑な場合も練習しておく方がよい。実験領 域を広くとると,複雑な応答曲面になることが 少なくない。図2.5の例題は,簡単な数式表現 では表せないかなり複雑な場合である。
2
.4. 2
誤差がある場合(1) すべての条件での繰り返しがある場合 通常,同じ条件のもとで実験を繰り返しでも 毎回必ず同じ結呆が得られるわけで、はない。つ まり,同じ
Xl
,X2
の組み合わせのもとでも何5 5 1 5
ぷi : ; i J
るj j J J i J
三j j J J J j j J i i J i i f J J j J J J ;
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牛牛主ド幽i
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日+5
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i : : j : : : j : : j : : : : i : : : i ; ; : i : ; j ; ; : i : : : i : : ; i : : : i : : : i : : i i : : : j : : : i : : : ! : : : j
(1) 演習問題例 1
図
2 . 3
演習問題例 1図
2 . 4
演習問題例2
等高線図を用いた
2
因子模擬実験 回か繰り返して得られた結果には誤差が加わっている。したがって,
2
次元座標上にY
のデー タを記入する際には,それらの平均値を求めて その値を用いる。時間が十分にある場合には,十分な繰り返し数のデータを取ることによりぱ らつきを小さくできるので,より精度の高い図 を得ることができる。
①同じ
(Xl
,X 2 )
の条件で得られた複数の Yに関してその平均値を求める。②その平均値を
f (Xl
,X 2 )
の結果と考え て,2
次元座標上に記入する。③誤差なしの場合として等高線を描く。
④描き上げた等高線図から,
Y
の値の最高値,およびそのときの
(Xl
,X 2 )
の組み合わ せを予想する。もし繰り返しが少なくて平均値のばらつきが小 さくない場合には,まず平均値そのものを用い て誤差なしの場合として薄く鉛筆で等高線を引 き,その後でばらつきの大きさを考慮しかっ全 体の構造をバランスさせた上で最小自乗法的感 覚で等高線を引くとよい。
( 2 )
一部の条件において繰り返しがある場合 もし一部の条件 (k個の条件)において繰り 返しをとることができれば,k
個のR (
範囲) を求めることができ,これより以下のように誤 差の評価が可能になる。a = (R/ d 2 )
これを誤差の情報として,(1)と同様に作図する。
繰り返しがあるところは平均値を用い,繰り返 しがないところはデータそのものを用いる。
(3) 繰り返しがない場合
繰り返しがない場合には平均値を用いること ができないので,最初から見当をつけて描くし かない。回帰分析において繰り返しのない場合 に,全体の点のバランスを見て最小自乗法で直 線や曲線を引くことになるが,このような感覚 で
2
次元の等高線を作図する。ただしこの方法 は,誤差が十分小さくなければ困難である。2 . 5
代表的な関数と等高線図図
2 . 6
に,独立変数が2
つの多変数関数を等 高線図で表現した場合の代表なケースを紹介す( 4 7 )
j j j i j j i l l J R T J 1 2 1 1 F R t l
; ; : i ? と ; 組 表 j i j J J J j J 3 1 J i l l J J j J j J j
十寸
. . . t .
母盟十十・・1・" " [ " ' j
せtT‑j‑"'f"'y"'[i 2 5 2 j i i j ! ? ? j i E 2 2 2 7 1 1
(1) 演習問題例 3
る。各々の図の下に対応する関数を示しておく。
これにより,幾何学的状態と代数的構造との関 係を理解することができる。
代表的な関数と等高線の関係を理解しておく と,等高線図の作図に有効である。範囲を極端 に広く取らなければ,
1
次の関数(Xl
やX2
の 項)で表現できることが多く,少し広く取ると 時には2
次の関数(X1 2
やX 2 2
の項)が必要になることもある。そして ,
2
次の関数の場合,楕円の向きが斜めに傾いている場合には,積の 項
( X I X 2
の項)が必要になる。この感覚が養 われると,全体のバランスから当てはまりそう なパターンが見えるので,フリーハンドで作図 しでも回帰分析で得る式とほぼ同様の等高線を 描くことができる。3 .
実験に取り上げる機体の特徴と 条件の組み合わせ3 . 1
実験に取り上げる機体図3
. 1
に示す機体が,本研究で取り上げる機 体である。これには翼長,翼幅,足長,足幅,Xz Xz X2
、
、h 、
①
Y=81XI +c XI XI
②
Y =a2X2+C
③
Y =alXl +azXz+c
Xz X2
̲ . Xl , XI
j
④
Y = a l l X 1 2 +alX 1 +c
⑤Y=allXI2 +31XI
十c
X2 X2
XI XI
⑥
Y = a l l X 12 + a 2 2 X2 2
⑥Y = a l l X l2 + a 2 2
](22
+ 8 1 X I + a 2 X 2 +c
+aJ2XIX2 + a I X I + a 2 X 2 + C
図2. 6
代表的な等高線図と多項式重り,紙質の
6
つの因子がある。このうち紙質 のみが質的因子で,他の5
つの因子はすべて量 的因子である。3.2
条件の組み合わせ2
因子実験に対する条件の組み合わせは,5
つの量的因子から2
つの因子を取り上げ,各々XI
2
A.2
置の畳e ( ) B
麓 の 幅 ( ) C. 患の ~ð ( )D.
是 の 哩 ( )r
Ji2111
日!?!て γ
ず寸凶γγ
づ「「アナ77γ
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トー」ーート・・4‑4‑4‑‑F "
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ト・4
・・‑ト・4
・‑‑トー聞4
馴聞a
ト‑‑ト....~--・主婦 a-l-- ト・ 4・・・トベー品ト M ・ 4・園田ト・民 4 馳師四ト・咽 4 圃圃圃ト--~・・ートイー -178
ト・4
・ート・トート‑ ‑ 1
・明ートート圃+・聞ト,+ート聞‑:‑‑・}・・+ート‑4‑
ート開園←齢W
ト・1 ‑ " ‑
トートー+‑+‑‑18
岳」叩Lームーl-....-I一←.1_.._....t.,____....l.,.-.-.-t,...,...-.J....-...,_J.ー」ー,.l-._ムー ι"..-~ー-t~..._...I-.ーふ...,.J,_ーームー---'----'-ー」ー」告
(縦一日盛り
4mm
,横一日盛り7mm)
図3 . 1
実験用の紙ヘリコプタ一機体用紙4
水準ずつの合計16
の組み合わせを取り上げる ことにする。2
因子の組み合わせで多因子実験 の基礎を理解させることと,応答曲面を等高線 図で幾何学的に理解させるために4
水準x 4
水 準の1 6
の格子点上でデータを検討させる。4 .
手書きのための実験近年は等高線図をコンピュータで作図するこ とができるが,教育の初期の段階では手書きで 作図することは,応答曲面というものを理解す る上で重要で、ある。しかし,手書きするために は,十分管理された実験でなければならない。
すなわち,外れ値がなくかっ誤差のばらつきが 十分小さいことが必要である。本章ではこれら のためのポイントを解説するb
4 . 1
前提としての誤差の低減と管理 等高線図を手書きで作図するためには,誤差 が十分小さいことが要求される。このためには,以下の諸点について作業標準を作成し,慎重に 作業を行うことが必要である。
(1) 製作
図
4 . 1
オンラインの特性要因図図
4 . 2
オフラインの特性要因図滞 空 時
凋
道具類を大いに活用する。紙の切断の際は,
カッターと定規で正確に切る。折る際には,角 が直角になった道具(アルミ製のアングル[文 献24参照],フロッピーディスクの箱など)を 用いて直角を正確にだす。この道具は製作後に,
角度が直角になっているかどうかを確認する検 査具としても利用できる。
( 2 )
格納(飛行前待機/飛行後保管) ( 49 )製作後飛行までの間,機体を変形しないよう に保存する。足長が極端に長くない場合には紙 ヘリコプターを逆さまに(逆
T
の字に)して机 の上に置いておくとよい。飛行時以外は紙ヘリ コプターにクリップをつけではならない。飛行 後も直ちに回収したらクリップを外し,同様の 方法で机の上に置いておく。(3) 移動(運搬/手渡)
移動にあたっては,必ずトレイ(下敷きやノ ートや教科書でもよい)に載せる。また紙ヘリ コプターをつかんで移動する際には,足の部分 を持ち逆さまの状態で移動する。もし,紙ヘリ コプターにクリップをつけた場合には,必ずク リップの位置をつかむ。
( 4 )
クリップの選択クリップはばらつきの大きい製品である。し たがって,適当に用いるとクリップのばらつき (重さのばらつき)が実験誤差を大きくしてし まう。たくさんのクリップの中から同じ様なク リップを事前に選択した上で用いなければなら ない。最もよい方法は全ての紙ヘリコプターに 対して一つのクリップだけを用いることであ り,このことによりクリップのばらつきをゼロ にすることができる。ただし,この方法は時間 がかかるとういうデイメリットがある。
4.2 ライン生産の導入 (38)とポイン卜 図4
. 1
のオンラインの特性要因図は実験誤差 管理のためのものである。図4.2のオフライン の特性要因図は,実験条件の検討と前提条件の 管理のためのものである。(1) 前提条件:結果Yに強く影響を与える が,実験の聞は一定の値をとるもの。
( 2 )
実験条件:結果 Yに強く影響を与える可 能性があるので,実験で取り上げて条件 を意図的に変更するもの。(3) 実験誤差:結果Yに影響を与えるが,実 験で取り上げていないもの。この影響は 無作為化により確率化する。
2
因子の実験では,変数の組み合わせが16
通 りあるため,様々な条件の機体を作成すること になる。したがって,もし個人個人がそれぞれの条件の機体を別々に製作するならば,ぱらつ きは大きくなり,かつ外れ値がしばしば登場す ることになる。これを防ぐためには,ライン生 産の導入が有効であり,これを導入すると以下 のメリットがある。なお,製作後の調整におい ても同様であり,複数の調整者が個別に調整す るのではなく,調整それ自体もラインを組んで 実施する。
(1) 異常機体の混入を防ぐことができる。
( 2 )
ぱらつきを小さくすることができる。( 3 )
正規性を確保することができる。( 4 )
生産速度や調整速度をスピードアップす ることができる。実際にライン生産を行う上でのポイントは以 下の通りである。
①最終調整者は必ず一人にする。複数の調整 者が最終調整をすると,ぱらつきが大きく なり,外れ値が生じやすくなる。
②調整の速度を上げたい場合には,予備の調 整者を割付けて予備の調整を行わせる。こ の場合でも調整自体に関して
3S ( S p e c i a
目l i z a t i o n :
専門化,S i m p l i f i c a t i o n :
単純化,S t a n d a r d i z a t i o n :
標準化)を行い,ライン 方式で調整し,かっ最終調整者は一人でな ければならない。③実験全体を管理する人(リーダー)をおき,
作業の割付や時間管理を行う。
④時間管理はタイマーを用いると便利であ る。時間の経過を全員に知らせ,きちんと した作業を行わせる。
⑤オフライン(実験)であっても必ずライン を組んで製作する。
⑥実験の前に必ず標準機でオンライン(決ま ったデザインの機体の量産)のライン作業 をすべきである。このことで実験誤差が把 握でき,かつ実験誤差の低減ができる。
⑦各種の器具の利用と製作のノウハウを明ら かにし,事前に与える。
4 . 3
機体と飛行と計測の繰り返しのもとで のメジアン外れ値の影響を防ぐために,繰り返しをとり
等高線図を用いた 因子模擬実験 メジアンを採用するのがよい。これは同時にば
らつきを小さくする。その際,繰り返しは3固 とすると,実験の数をおさえることができ,計 算が楽で,かっぱらつきも小さくすることがで
きる。
(1) 同一条件の機体を
3
機製作する。( 2 )
一つの機体は,合計3
回の飛行を行う。(3) 一回の飛行に対して, 3人が計測する。
4 . 4
製作練習と飛行練習本番実験を成功させるためには,製作の練習 と飛行の練習をすることが望ましい。その際に とりあげるべき条件は以下の通りである。本番 の実験では,
4
水準x4
水準の全部で、16
の組み 合わせを実施するが,練習にあたってはそのう ちの端点にあたる条件(相対的に難しい条件) をとりあげることが重要で、ある。(1) 最低限の練習として,最小の機体と最大 の 機 体 (
2
機)は必ずとりあげる。これら の条件は,製作と飛行が全体の中で相対的 に難しく,またぱらつきが異なる可能性が ある。( 2 )
できれば四隅の点(4
機)をとりあげる とよい。これらの条件は,2
因子の各々に おける最小条件と最大条件の組み合わせで ある。(3) 明らかに特殊な組み合わせがあれば,さ らにそれを追加する。
ただし,周囲の点のすべてを行おうとすると 製作練習だけで
12
機となり,これは多過ぎる ので,そのような練習は不必要で、ある。4 . 5
確認実験等高線図の確認のために,最終段階で特定の 条件を決めて確認実験を行うとよい。まず,確 認する条件を決め,予測(推定)される滞空時 間の平均を等高線図より比例配分で求める。次 に,その条件の機体を
5
機を製作し,各々の機 体を3
回飛行させ,各飛行はいずれも3
台のス トップウオッチで計測する。そして,メジアン( 3
台の計時のメジアン)のメジアン(3
飛行 のメジアン)を各機体の滞空時間の値とする。そして,それらのメジアン(
3
機のメジアン)( 5 1 )
を,機体条件のもとでの値とする。これが,等 高線図から求めた予測値におおむね近いかどう かで判断する。
5 .
実 験 例5 . 1
実験の概要初心者には応答曲面の単純なもの(凸曲面で きるだけ平面に近いタイプ)の方が理解しやす いので,本研究では紙ヘリコプターの翼長と足 幅をとりあげている。
(1) 実験の無作為化
いずれの実験の場合にも,飛行の順番はラン ダムにしている。これは機体数分の数字を書い た畿を作成し,これらをよく混ぜたうえで抜き 取ることにより飛行の順番を決定すればよい。
製作についてもその順番をランダムにした方が よいが,条件の組み合わせが複雑な場合には混 乱の原因になるので順番に行うこともしかたが ない。ただし,習熟効果や疲労が順序として入 るかもしれないので,解析の段階では順序の影 響の有無について確認する。
( 2 )
予備練習としての1
因子実験と単回帰分 析これまでに紹介したポイントをきちんと行っ ていれば,回帰分析における誤差の
4
つの仮定 (独立性,不偏性,等分散性,正規性)はおお むね満たされる。そこで,翼長のみをとりあげ て単回帰分析を試み,与えられた滞空時間(タ ーゲット)をもっ紙ヘリコプターの製作に挑戦 してみるとよい。これはゲーム性もあり,受講 者は意欲的に取り組むとともに,2
因子実験の ためのよい予備練習となる。まず,目指すべき滞空時間(ターゲット)を 与える。次に,予備解析として翼長(あるいは 足幅)に関して広めの範囲に対して
5
水準を用 意し,繰り返し1
のデータをとって回帰線を求 めさせる。これでもマクロ的な見当はつくが,次に本解析を行って精度の高い回帰式を求めさ せる。すなわち,予備解析の式より,新たな要 求(ターゲット)の値が余裕をもって内挿とな
る位置を求め,
3
水準繰り返し5
で本番の解析 を行うのがよい。本番の解析で精度の高い回帰線(回帰式)が 得られたら,逆推定で機体の条件を決定する。
この条件に対応するデザ、インを作図し,これを コピーして量産する。量産した紙ヘリコプター の滞空時間の平均値が,与えられた滞空時間 (ターゲット)に近いかどうかで実験全体の評 価を行う。この具体例の紹介は紙面の都合で省 略する。
(3)
2
因子実験と等高線図1
因子の予備実験で良好な結果が得られた ら,2
因子の実験を行う。その具体例は次節以 降で紹介する。5 . 2
実験における様々な繰り返し表5
. 1
は,同じ条件の機体を3
機製作し,各々の機体を
3
回飛行させ,各々の飛行に対し て3
台のストップウオッチで計測した結果であ る。以後これを,略して3
機体3
飛行3
計測と 呼ぶ。表5
. 1
の実験は機体,飛行,計測のすべてに 繰り返しをとっているが,実際の実験では繰り 返しの取り方は様々である。最も繰り返しの少 ないケースは,1
機体1
飛行1
計測である。3
機体3
飛行3
計測のケースから1
機体1
飛行1
計測のケースにおいて,どのような違いがある かを以下の5
ケースについて検討する。(1)
3
機体3
飛行3
計測( M e d .o f Med
欄)( 2 ) 3
機体1
飛行3
計測(F1
欄)(3)
1
機体3
飛行3
計測( M e d .
の欄)( 4 ) 1
機体1
飛行3
計測(F1
の欄の各条件の先頭行)
(5)
1
機体1
飛行1
計測(F1
欄の各条件の 先頭行の (1)欄)なお,表5
. 1
の中の各種の記号の意味は以下 の通りである。①取消ライン(=)の付きのデータは,計時 に失敗したことを意味している。
②「様」の欄は飛行の様子を示しており,そ の表現は以下の通りである。
x スタートのかけ声と,紙ヘリコプター
の発進がずれている。
A:
不自然な飛行(変則飛行),B:気になる飛行,
C:少し気になる飛行
③*印は各飛行における
3
人の計時①,②,③ のメジアンのことで,これを各飛行の計測 値とする。④波線型のアンダーラインは各々の飛行にお けるメジアンのメジアンのことで,これを 各機体の計測値とする。
⑤#印は④で求めた各条件における
3
機体の メジアンのことで,これを各実験条件の計 測値とする。5 . 3
各種の結果と等高線図実験領域は応答曲面がかなり単純な範囲を選 んでいる。本節では,表
5 . 1
のデータに対して いろいろな点で繰り返しをなくしたときにどう なるかを,5
つのケースについて実施する。図5 . 1
から図5 . 5
までの5
枚の等高線図における実 線は,誤差を考慮せずに平均値に基づいてヲ│い た等高線図である。標高については1 0
刻みで20
,3 0
,……というように作成しており,各等高線 の標高は図中の丸括弧( )の中に示している。一部の図には点線の等高線があるが,これは誤 差を考慮しかっ全体の構造も考慮した等高線で ある。この描き方が可能な場合(図
5 . 1
と図5 . 2 )
にのみ点線の等高線図を示している。5 . 3
.13
機体3
飛行3
計測 (Med. of Med.欄より)これは応答曲面を最も見つけ易いケースであ り,この結果は図
5 . 1
に示している。実線は誤 差を考慮せずにヲ│いた等高線である。これを作 図した後で,誤差を考慮しかっ全体の構造を考 慮してヲ│いた等高線が点線である。すべての条 件の機体,飛行,計測において繰り返しを3
固 とり,メジアンを用いているので誤差を考慮し ない段階でも,かなり容易に等高線図を作成す ることができる。5 . 3 . 2 3
機体1
飛行3
計測 (F 1欄より)このケースは,応答曲面を次に見つけ易いも
表
5 . 1 2
因子実験の結果因 子 概
11~
飛 行 の 繰 り 返 し M母d.翼 足 体 行
F 1 F2 F3
M坦
d.of
畏 隠 到。 繍 様
<1> <2> <3>
様<1> <2> <3>
様<1> <2> <3>
Med.6 4 43
章42 38 40 32 *39
車並立41 39
罪4 0
2
x41 49
寧45
章生主43 39
事42 49 39 4 2 4 0 3 47
寧44
舎% 盟 主46 36 34 25
事3 1 3 8
6 6 4 43 37
牢38 27
申27 22 C 32
幸毛主 型30 # 3 0 5 34 *38 39 34 22
位 孟39
車3 1 22 3 2 3 0
日29
姐Z 25 28 23
車27
寧27 24 38 2 7 6 8 7 X
車35 25 40 33 27
車3.124 1 9
申20 3 1
8 29 揖 25 23 29
牢32 34 3 1 24
申25 # 2 5 2 5 9 39 33
事37
本24 31 18 24
申1 6 16 2 4
6 1 0 10 1 8
車1 8 10
A 串14 13 16 1 9 13
申l立1 6 1 1
A 市12 1 1 17
A27 20
事26 14
牢14 13 1 4 1 5 1 2 i l l 23 6 1 5
寧1 2 10
A 串17 18 14
帯1 57 4 13
事ま且49 41 43
事48 50 36
寧45 46 4 6 1 4 35 50
事45 52 49
串生呈59
事50 48 4 9 4 7 1 5 46
車生148 47 45
市46 48
事47 40
再4 7 7 6 1 6
車34 38 29 25
事26 40 C 44
日 旦29 3 3
17 41
車49 50 38
寧42 47
A 申34 37 31
事4 2 4 2
I1 8
並 立43 39 47
事44 40 39 35
事38 4 3 7 8 1 9 41 49
申45
主孟呈28 32
車29 34 28 2 9
20 39 35
車38
車28 29 26 33
市34 45
非3 4 3 4 21
寧40 46 40
事33 31 35
世 皇38 40 3 8
7 1 0 22 38
姐 旦24 3 1
串28 20
事32 36 26 2 8
2 0 I
23 C 29 20
事24 10 18
事12 2 1
車2.0 . 20 # 2 0 24
A27
位旦19
A 章25 26 21 # : 20
寧17 2 0 8 4 25 64
事59 55 59 68
車66 68
車65 59 6 5
26 63 57
姐 ♀55
申54 5 1 61
申63 55 6 0 6 1 27 70
串7 1 77 63 56
牢60
世 よ69 60
事6 1
8 6
2BC 59
申E
立58
A56
市56 55
事60 66 59 # 5 6 29
世 且55 61
申52 52 56
寧61 65 60 5 6 5 6 30 62
ヰ参 位Z 6 1 53
寧56
寧55 60 66 5 7
8 8 31 55
寧皇呈45
A 事52 50 54 B 59 54
車54 5 2 32 44
申47 50 5 1
寧!536 41 51
牢43 4 5 5 0 33
申54 55 45 43 49
事46 54
寧50 45 # 5 0 8 10 34
市生旦47 53
A45
車49 51
A36
車36 34 4 9
35
日 世 且30 27
A34 26
事33
A 申29 % 30 2 9 3 9 36 33
主主皇40 C 34 23
本31 43 46
事44
者3 9 4 37 74
事77 79 7 1
哩70 63
車70 81 70
書7 0
38 61 66
盟 主70 52
事56 63
寧65 67 6 2 7 0 39
牢7 1 75 63 79 72 亀 1 . 4 . 77
車75 67 7 4
19 6 40
宜52 52 56 65 59
事63
岨E 69 57 5 9 41 66
事69 74
主1 1 73 63 7 1 77
牢74 7 1 6 4 42 63 58
寧59 70 79
牢7 1 66 63
主主4
事6 4 19 8 43
車65 67 62
A 車52 62 49 C 52 65
並 ヱ 話5 7
44 63
申74 14 58 65
姐 立 申64
舎$60 6 4 5 7 45 63 66
本64 54
車53 49 53
牢55 57 5 5 9 1 0 46 B
事46 53 44
A52
寧43
舎ヰ 車49 52 41
帯4 6
47
車44 48 38
A44
車42 37 47 52
申49 4 4 4 6
一
48 53
組z.51 52
牢52 55 49 56
車53 5 2
」( 5 3 )
のであり,この結果は図5
. 2
に示している。実 線は誤差を考慮せずにヲ│いたものである。これ を作図した後で,誤差を考慮しかっ全体の構造 を考慮してヲ│いたのが点線である。図5. 2
を図5 . 1
と比較すると,3
機体1
飛行3
計測の結果 は3機体3
飛行3
計測の場合に近い結果が得ら れている。このことは室内の気流の状態および 飛行作業が比較的安定していることを意味して いる。この実験は秋に実施されたもので,気温 が適度で、あったために,ゼミ用の定員2 0
名程の 小さ目の部屋を締め切った上で、エアコンを止め たままで実施している。したがって,飛行につ いては繰り返しがなくとも比較的よい結果を得 ている。もし,夏期や冬季でエアコンの類を稼 働させたならば,その影響はでるであろう。ま た,換気装置が稼働していたり,窓、やドアが開 閉されたり人が移動したりする場合にもその影 響はでるであろう。5 . 3 . 3 1
機体3
飛行3
計測(Med.
の欄より)図5
. 3
の応答曲面は,誤差を考慮しなくても マクロ的には単調な性質をもっているので,等 高線の作図に巧みな経験者ならば標高差10
の等 高線は何とか作図できる。しかし,ミクロ的に みると単調性が崩れている箇所があるため,初 心者にとっての作図は困難なものになる。このケースにおいては,製作の繰り返しをと っていないので,製作における問題が結果に反 映している。前二者に比べると,とくに足幅が 広くなった場合の製作に問題がでている。
5 . 3 . 4 1
機体1
飛行3
計測(F1の欄の各条件の先頭行より) 図5
. 4
においてはマクロ的な単調性が失われ ているので,等高線の作図はかなり困難である。とりあえず,妥当と思われる作図の結果を示し てはいるが,この等高線図が示している応答曲 面には多少の疑問が残る。
5 . 3 . 5 1
機体1
飛行1
計測(F 1欄の各条件の先頭行の(1)欄より) 図5
. 5
においてはマクロ的な単調性がかなり 失われているので,等高線の作図は極めて困難表
5 . 2 3
機体3
飛行3
計測の結果の重回帰分析 (A) 寄与率・誤差の自由度・誤差の標準偏差4
6 7 XI 8 9
〈翼長) 図
5 . 1 3
機体3
飛行3
計測4
図