学級への社会的スキル指導の効果とその可能性
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(2) ルの解決策を考える(学級活動2時間),少人. の男子に話しかけたり,一緒に遊んだりとい. 数の人間関係や学級全体の人間関係を作るゲ. う姿を見かけるようになる.. ーム(3時間),男子1名への個別なかかわり.. ・学校では全く声を出さない男子Bが,笑った. ih)記録の方法. りふざけているうちに「うっ」などの声がし. ・社会的スキル指導の時間や教科での指導,お. ばしば出るようになった.7月の終わりには. よびゲームは毎回ビデオ記録をした.学級で. 男子とは声を出して会話をするようになり,. の個別な関わりや,日常の学校生活における. 9月には女子2名とも会話をする.. 行動等については,参与観察による記録を行. (2)学級雰囲気調査. つた.. ・全17項目のうち,「やるきのある」,「あたた. iv)結果の分析. かい」,「のびのびできる」,「いごこちのよ. ・エピソード分析. い」,「まとまりのある」などの項目で5点. 参与観察から得られた社会的スキルに関連し. 以上(やや∼非常に)に印を付けた人数が増. た事象をエピソードとして記録し,時系列に. 回した.「やるきのある」52.2%→70%,「あ. 沿って,学級成員の変化について質的に分析. たたかい」39.1%→70%,「のびのびできる」. した.. 34.8%→・52%,「いごこちのよい」30%→・48. ・学級雰囲気調査. %,「まとまりのある」26.1%→・39%.. 根本(1983)の用いた項目を使用し,6/5およ. (3)授業中の行動観察結果. び7/13に実施した.. 5/30(pre)と9/4(post)の授業を2名で観察. ・授業中の行動観察. し,分析した.授業中において,児童の「授業. 観察カテゴリを作成し,授業中の対象行動に. とは関係ない行為」が47%から9%へと大き. ついてタイムサンプリング法による分析を行. く減少した.また,教師の「児童に対する受容. つた.. 的・援助的行為」が2%から33%へと増加し. 3.結果 本調査(A町立B小学校) (1)エピソード分析. た.. 4.考察 本研究は,学級へ社会的スキル指導を行い,. ・孤立していた女子Aが女子のグループの中に. その効果を確かめることであった.学級への社. 入って給食を食べるようになる.このころか. 会的スキル指導が,学級の雰囲気や児童の行動. らAの表情が次第に明るくなる.7月には暗. 変容に対して効果があったと考えられる.. い顔を見かけることがなくなるとともに積極 的に担任や他の子とかかわるようになり,担. 今後は,学級経営の視点を取り入れた社会的 スキル指導について検討したい.. 任も驚いている.. ・他の子のランドセルを持ってきたり,作業を 手伝う姿をよく見かけるようになってきた.. 主任指導教官 今 塩 屋 隼 男. ・休憩時間に他の子と全く遊ばなかった男子A. 指導教官 鳥 越 隆 士. が女子と一緒に遊ぶようになる.9月には他.
(3) 学位論文 学級への社会的スキル指導の効果とその可能性. 兵庫教育大学大学院 学校教育研究科 障害児教育専攻. MOO102F 藤井典明.
(4) 目次. 第1章 問題と目的 1.1 学級における様々な問題・・・・・・・・・・・・… 1.2 子ども問題と社会性・・・・・・・・・・・・・・… 1.3 社会的スキル訓練の先行研究・・・・・・・・・・… 1.3.1 社会的スキルの定義・・・・・・・・・・・・…. 1 2 3 3. 1.3.2 引っ込み思案の子や,. 攻撃的・妨害的な子に対する社会的スキル訓練… 4 1。3.3 学習障害の子に対する社会的スキル訓練:・・・… 6 1.3.4 学級(集団)への社会的スキル訓練・・・・・… 7 1.4 目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 12. 第2章 方法 2.1 予備調査・・・・・・・・・・・・・・・・・… ・・13 2.1.1 予備観察・・・・・・・・・・・・・・・… ・・13 2.1.2 児童の社会性とその指導に関するインタビュー・ ・・13 2.2 本調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・… ・・13 2.2.1 期間及び対象学級・・・・・・・・・・・・・… 13 2.2.2 アセスメントの方法・・・・・・・・・・・・… 15 2.2.3 社会的スキル指導の実際(A町立B小学校第6学年)・16 2.2.4 社会的スキル指導の実際(C市立D小学校第6学年)・18 2.2.5 社会的スキル指導の方法・・・・・・・・・・… 21 2.2.6 介入方法の検討と修正・・・・・・・・・・・… 27 2.2.7 記録の方法・・・・・・・・・・・・・・・・… 27 2.2.8 結果の分析・・・・・・・・・… ,・・・・… 27. 第3章 結果 3.1 予備調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 3.1.1 予備観察・・・・・・・・・・・・・・・・・… 3.1.2 児童の社会性とその指導に関するインタビュー… 3.2 本調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 3.2.1 A町立B小学校第6学年・・・・・・・・・・… 3.2.2 C市立D小学校第6学年・・・・・・・・・・…. 31 31 33 36 36 55.
(5) 第4章 考察 4.1 本調査 A町立B小学校第6学年・・・・・・・・… 69 4.1.1 エピソードに見る児童の変容・・・・・・・・… 69 4.1.2 学級雰囲気調査・・・・・・・・・・・・・・… 73 4.1.3 授業中の行動観察・・・・・・・・・・・・・… 73 4.1.4 社会的スキルの授業・・・・・・・・・・・・… 74 4.2 本調査 C市立D小学校第6学年・・・・・・… ゼ・76 4.2.1 エピソードに見る児童の変容・・・・・・・・… 76 4.2.2 社会的スキルの授業・・・・・・・・・・・・… 78 4.2.3 「学級がうまく機能しない状態」と. 社会的スキル指導・・…. 81. 第5章総合考察および今後の展望 5.1 学級経営と社会的スキル指導・・・・・・・・・・… 82 5.2 担任へのコンサルテーション・・・・・・・・・・… 82 5.3 社会的スキル指導の位置づけ一教育課程編成基準一… 83 5.3.1 社会的スキル指導が可能な時間数の算出・・・… 83 5.3.2 社会的スキルの年間計画案・・・・・・・・・… 85 5.4 今後の課題… 一・・・・・・・・・・・・・… 87 まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 文献 謝辞. APPENDIX. 88.
(6) 第1章 問題と目的 1.1 学級における様々な問題 近年,小学校における様々な問題が取り上げられることが多い.「い じめ」「学級崩壊」「不登校」等,そのほとんどは子どもの人間関係に関 する問題である.子どもは,友達とのコミュニケーションがうまくいか ないことを実感している.大きな問題にならないとしても,友達との相 互交渉の中で,伝えたいことがうまく伝わってなかったり,一部を聞い て判断してしまったりということが多く見られる.以前は,人間関係を 作ることの苦手な子が学級に数人いて,担任が様々な形で関わりを持ち ながら,学級内へ働きかけていた.しかし,現状は,ほとんどの子が友 達との関係に困難を感じているようである.. 例えば2年前に筆者が担任していた高学年の学級で,次のようなエピ ソードがあった.. いつも仲のよい絵里子と朋子がけんかをしているようだった.筆者は朋 子に事情を聞く.すると,朋子は以下の出来事を話した. 絵里子が朋子に「今日一緒に帰ろう」と誘った.朋子はすでに佐織と帰 る約束をしていたので,「佐織ちゃんが一緒だけどいい?」と答える.す ると絵里子は「いいわよ,分かった.どうせ私と一緒に帰りたくないんで しょ」と言って走って校門から外へ出ていく.朋子が絵里子に声をかける が,絵里子は聞く耳を持たない.今日になっても絵里子は機嫌が直ってい ない.朋子をにらみ,話しかけても無視される状態だという. そこで,筆者が2人の仲をとりもつことになる.筆者が絵里子と話をし てみると,「朋子は私(絵里子)と一緒に帰りたくないと言った」と話す. そのことを朋子に伝えると,「それは違う.佐織ちゃんと一緒に帰る約束 をしていたので,佐織ちゃんが一緒でもいいかと聞いた.一緒に帰りたく ないと言ったのではない」と答える.筆者が双方の言い分をそれぞれに伝 えることを何度か繰り返す.その結果,絵里子は自分の早とちりだという ことを理解し,2人の仲は元に戻り,今までと同じように話をするように なる.. このように,小学校の学級において,人間関係に関するトラブルは多 い.学級における人間関係作りの問題点について,いくつかその傾向を あげてみる.. (1)主張が強すぎたり,その反対に主張ができなかったりする (2)相手に十分自分の意思を伝えることが苦手. 1一.
(7) (3)相手の働きかけにうまく応答ができない (4)相手のコミュニケーション行為を正確に読み取ることができない. つまり,児童の人間関係に関する問題が現代の小学校において深刻と なっているのが現状である.. 1.2 子ども問題と社会性 門脇(1999)は「学校生活が失ったものを一括りにしていえば,子ども たちの間の仲間意識,連帯感,つながり意識といったものであろう」と 述べ,それを「浅薄化」「限定化」「断片化」「喪失化」という4つの傾 向として捉えている.具体的に言えば,親しいつきあいがない(浅薄), 大勢で遊ぶことがない(限定),その時その時のつきあいでしかない(断 片),つきあいそのものがなくなりつつある(喪失)ということである. そのために,子どもたちの対人関係能力や問題解決能力が習得されない のだとした.そして,「子どもの仲間集団は衰退化してきている.仲間 集団を構成する子ども同士の仲間関係が非常に希薄になってきている」 のは,地域社会の中で「遊び」が変化したことに起因するものとした. 尾木(2000)は「休み時間などのトラブルなども,ほとんどがささいな ことがきっかけなのですが,自制心がうまく働かず,結局授業中にまで 持ち込むことになってしまいます.仲直りも極端に下手になっているよ うです。つまり,これらは,セルフコントロールがうまくゆかなくなっ ているために起きる現象群です」と述べ,現代の子どもたちにセルフコ ントロールが身に付いていないことを指摘している. こうした,子どもの社会性の問題は近年特に議論されてきた.子ども の社会性を育む場として,学校教育をその対象とする必要があるとする 指摘も多い.道徳教育の充実や「心の教育」の提案も,その奥底には変 化する子どもに対応し切れていない学校教育の現状を表しているとも言 える.. 小野瀬(2000)は,これら社会性に問題のある子どもには「道徳性が必 ずしも十分に身に付いていない」ことを指摘し,「教科学習をはじめ, 学校での活動全体を通して社会性を育てるという視点で考える必要があ る」と提案した.また,少子二等にともなうギャングエイジの消滅等に より,子ども同士で仲間関係を築く機会が少なくなったことから,「何 らかの形で対人関係スキル等の社会的知識やスキルを身に付ける場を設 ける必要がある」とも指摘する.. .2一.
(8) 中央教育審議i会(1997)はその答申の中で,「友人は,同年齢の者の割. 合が大きくなってきている.友人との付き合い方について,平成4年の NHK世論調査を見ると,『親友』との付き合い方であっても,『心の深 いところは出さないで』と『ごく表面的に』と答えた者の合計は,中学 生で35.1%,高校生で29.3%に上り,『普通の友達』との場合は,中 学生で84.3%,高校生で90.2%の者がそう答えている.こうしたこと を背景に.生活体験や社会体験の不足もあって.子供たちの人間関係を 作る力が弱いなど社会性の不足が危惧される」とし,「生きる力」を育 むための教育改革を提言した.また,学級経営研究会(2000)は「学級経 営の充実に関する調査研究最終報告書」において,学級崩壊に見られる ような「学級がうまく機能しない状況」の原因の1つとして,「子ども の集団生活や人間関係の未熟さの問題」を挙げている.そして,社会性 を伸ばすためにも,「子どもの人間関係を支援し,楽しく,充実した居 場所づくりをすることが大切」であり,「学校や学級がその舞台」であ るとしている.. このように,学校や学級において,社会性を育む教育活動が求められ ており,それはよりよい人間関係づくりを目指すのみならず,「学級崩 壊」を予防する手だてとしても考えられていると言える.. 1.3社会的スキル訓練の先行研究 社会性を身に付けさせるために行われる技法の1つとして社会的スキ ル訓練:(Social Skills Training以下SSTと呼ぶ)がある.. SSTは,主に,精神医学で用いられる場合と,教育学や心理学で用い られる場合とがある.前者は,精神障害者の社会参加を促すための「生 活技能訓練:」である.後者は,発達心理学から見た技能としての「社会 的スキル」である.ここでは,前者については言及しない.以下,後者 の立場から見た社会的スキルについて説明をする.. 1.3.1社会的スキルの定義 社会的スキルの定義は,必ずしも一致した定義が得られていないのが 現状である.渡辺(1996)は,従来挙げられてきた定義をまとめ,「社会的. 相互作用における機能という点からの定義付け」について分析を行って. 一3一.
(9) いる.その結果,スキルを「行動」「反応」「能力」「行為」と分類した が,従来の定義は「社会的スキルの効果や場の状況にまで踏み込んだも のとはなっていない」とした.その中でも,Michelsonら(1983)の定義 が本質的な要素を含んでいると紹介している. Michelson:L.,Sugai D.P.,Wood R.P.,Kazdin AE.(1983)は,次の7点. を操作的定義として提案している.. ①社会的スキルは主に学習(たとえば,観察,モデリング,リハーサ ル,フィードバック)を通して獲得される.’. ②社会的スキルは,効果的かつ適切な働きかけと応答を必要としてい る.. ③社会的スキルは,特殊で,はっきりとわかりやすい言語的な行動か ら成り立っている.. ④社会的スキルは,社会的強化(自分の社会的環境から与えられる肯 定的反応)を最大にするものである.. ⑤社会的スキルは,本来相互交渉を含むものであり,効果的かつ適切 な応答性(相互性とタイミング)を必要としている. ⑥社会的スキルが実際に使用されるかどうかは,その場面に特殊な環 境の特徴いかんにかかっている.. ⑦社会的スキルの実行にみられる欠如や過多は,特定化することがで き,介入の目標にすることができる.. この定義は,社会的スキルの行動的側面だけではなく,獲得や効果に 関する点も加味されており,社会的スキル研究においては,もっともわ かりやすい定義であるといえよう.また,Michelsonら(1983)は,子ど もの対人行動訓練を具体的にモジュールとして提案した.現在行われて. いる子どもへのSSTは,このモジュールが基盤となっている.その意 味でも,上記の定義が教育におけるSSTを行う上で最も適切なもので あると考えられる.. 1.3.2 引っ込み思案の子や,. 攻撃的・妨害的な子に対する社会的スキル訓練 子どもに対する社会的スキル指導は,近年多くの研究が行われている. それらは大きく分けて,社会的相互交渉の問題に関する研究と,仲間関. 一4一.
(10) 係に関する研究とがある.社会的相互交渉の問題に関しては,その頻度 や程度の改善を目標とした研究が多い.たζえば,引っ込み思案あ子に 対する社会的スキル指導である.引っ込み思案とは,仲間との社会的相 互交渉が少ないことを意味している.佐藤ら(1993a)は,引っ込み思案児. への社会的スキル訓練について,モデリングとフィードバヅクを中心と した介入によって社会的相互作用率の増加を促してきた例を紹介してい る.佐藤ら(1993a;1998a)によって引っ込み思案児の社会的スキル訓練が. 行われている.そこでは,コーチング法に基づく社会的スキル訓練を行 い,「遊びへの参加」「適切な社会的働きかけ」「適切な応答」という3 つの社会的スキルを獲得することによって社会的孤立行動が減少したと いう結果を報告している.. また,攻撃的で妨害的な子どもに対する社会的スキル訓練も多く試み られてきた.攻撃的な行動や妨害的な行動によって仲間内において孤立 的な地位に追い込まれる例は,園や学校でも多く見られる.攻撃的な行 動や妨害的な行動をとってしまうのは様々な理由がある.佐藤ら(1993b). は,攻撃的な行動の激しい子どもに対する介入について,2つの考え方 を紹介した.1つは,向社会的スキル訓練モデルであり,もう1つは, 攻撃的行動や妨害的行動を低減させるモデルである.向社会的スキル訓 練モデルでは,ポジティブな遊び訓練が有効であることが認められてお り,問題行動を低減させるモデルではセルフコントロールスキルの獲得 をはかる訓練が示されている.佐藤ら(1993b)は,攻撃的な幼児に対して,. コーチング法を使用した社会的スキル訓練を実施しており,セルフコン トロール尺度の改善は図られたと報告している.また,佐藤ら(1993c)は,. 攻撃的な幼児に対する社会的スキル訓練における,訓練効果の維持に関 する研究も試みている.ここでは,訓練室の社会的スキル訓練に加えて 自然場面での社会的スキル訓練を行うことによって,攻撃的・妨害的行 動の減少と1ヶ月後の般化を認めたと報告している. 以上のように,引っ込み思案の子や,攻撃的・妨害的な子に対する社 会的スキル訓練が多く試みられている.しかし,般化・維持については, 佐藤ら(1998)をはじめ,多くの研究者からその難しさが指摘されおり,. 社会的スキル訓練においては,訓練後の般化や維持の促進が大きな課題 となっている.. 一5一.
(11) 1.3.3 学習障害児に対する社会的スキル訓練 学習障害とは,LDに関する全米合同委員会(NJC:LD)(1981,1988)によ. ると,「LDとは,聞く,話す,読む,書く,推理する,ないし算数の 諸能力の習得と使用に著しい困難を示す,さまざまな障害群を総称する 術語である.これらの障害はその個人に内発するものであって,中枢神 経系の機能障害によると推定され,それは全生涯にわたって起こる可能 性がある.行動の自己調節や,社会的認知 社会的相互交渉における問 題は,:LDにもあり得るが,それ自体がLDの本質ではない. LDは他 のハンディキャヅプ状態(例えば,感覚障害,精神遅滞,重度の情緒障 害),あるいは(文化的な差異,不十分ないし不適切な教え方といった). 外的な影響に伴って起こる可能性もあるが,それらの状態や影響の結果 そのものではない.」(下線は藤井による)との統一見解がある.また,. 我が国においては,「学習障害及びこれに類似する学習上の困難を有す る児童生徒の指導方法に関する調査研究協力者会議」(1999)が中間報告 で以下の定義をまとめて報告している.「学習障害とは,基本的には, 全般的な知的発達に遅れはないが,聞く,話す,読む,書く,計算する,. 推論するなどの特定の能力の習得と使用に著しい困難を示す,様々な障 害を指すものである.学習障害は,その背景として,中枢神経系に何ら かの機能障害があると推定されるが,その障害に起因する学習上の特異 な困難は,主として学齢期に顕在化するが,学齢期を過ぎるまで明らか にならないこともある.学習障害は,視覚障害,聴覚障害,精神薄弱, 情緒障害などの状態や,家庭,学校,地域社会などの環境的な要因が直 接の原因となるものではないが,そうした状態や要因とともに生じる可 能性はある.また,行動の自己調整,対人関係などにおける問題が学習 障害に伴う形で現れることもある.」(下線は藤井による). このように,学習障害においては,社会性の未熟さが,その本質的な 障害ではないが随伴する障害として定義の中に認めることができる. 上野(1992)は,社会的スキルに関しても,特徴的な症状が見られると し,その症状として次の点を挙げている.社会的・対人文脈の中での判 断力の弱さ.衝動性のコントロールの不足.フラストレーション耐性の 低さ.仲間の行動に対する注意力の足りなさによる,ソーシャル・キュ ーに対する敏感さの欠如などである.学習障害児に,対人スキルの未熟 さや歪みが見られることから社会的スキル訓練の対象として多くの研究 が試みられてきた.公的機関や民間機関車での個別指導がその中心であ り,そのほとんどが一定の効果が見られたとしている.しかし,在籍学. 一6一.
(12) 級や地域社会での般化や,獲得したスキルを維持するのが難しく,社会 的スキルトレーニングの大きな課題とされてきた.ある民間のトレーナ ーは筆者に対しても「学校や学級の中でもう少し配慮されれば般化・維 持は促進されると思う」と語った.つまり,学校教育の中で社会的ズキ ルに関する教育活動がなされれば,学習障害を持つ子どもたちの社会的 スキルの向上をさらに促すことができるということである.言い換えれ ば,学校教育の中でこそ社会的スキルに関する教育活動が求められてい るといってもよいだろう.. 1.3.4 学級(集団)への社会的スキル訓練 学校における個別なスキル指導は,「保護者の同意が得られにくい」「個. 別な指導はラベリングを強化させる」等の理由により,学校では実施が 難しい.藤枝・相川(1999)も,「対象児童のみを学級集団から引き離して. トレーニングするやり方は,教育上問題があ」り,「児童が直面する対 人問題は,大半が学級集団の中にあると考えられる」ため,学級単位で の社会的スキル訓練の必要性を述べた.こうした主張から,学級集団全 体への社会的スキル訓練が最近行われるようになってきた.学級全体へ の社会的スキル訓練はいくつかの利点がある. 竹内・濱口(1998)は「特定の児童が受けた社会的スキル訓練の般化を. 促進するという事に限らず,学級集団内の子どもたち同士の人間関係の 規範を形成したり,望ましい対人行動の遂行を促進する全ての児童のス キル向上や,周りの子に働きかけて対象児のスキル般化を目指すことが できる」と述べている.. 藤枝・相川(1999)は,「クラス全体に対するSSTは一種の仲間媒介法 (peer mediated method)であり,個別のSSTよりもトレーニングの般化. 効果が期待できる.対象児童のみならず,周囲の児童の社会的スキルも 向上するからである」と述べている. Bierman&Greenberg(1996)は, Promoting Altanative THinking Strategie. (PATHS)カリキュラムを作成し,集団への社会的スキル訓練を試みて いる.その目的として,以下の3点が述べられている. ①学級の全ての児童のスキルを向上させる. ②全ての児童の「素直さ」と学業態度を向上させることによって,学 級風土を管理し,プラス面へと改善する.こうして,リスクのある 児童の不適切な行動を刺激することを減じることができる.. 一7一.
(13) ③友人が抱える問題に対して,自制的,非攻撃的解決策を発揮するた めに,友人と教師のサポートを増し,積極的な学級風土を創り出す. Jordan&Metais.(1997)は,協同学習を通して社会的スキルを身に付け. る試みを行っている.ここでは,個人がそれぞれの役割を果たすよう義 務づけられ,グループでの協同学習を通して社会的スキルを必要とする 場面を作り出している.また,生徒自身が社会的スキルのアドバイザー になる場面を設定しているのは興味深い. 佐藤(1998a)は,学級全体に対して実施する社会的スキル指導の意義に ついて,以下のように述べている. 「個別的に社会的スキル指導を実施してきた対象児(引っ込み思案児や攻撃児など). が,社会的スキルを使おうという意欲を高めるためには,対象児の周囲の友だちが うまく応答してくれることも必要である.その為に,対象児に対する指導に加えて, 対象児を含む学級全体に対するスキル指導が役立っだろう」. 「仲間関係について学ぶ機会が少なくなっているために,対人関係に自信の持てな. い子供が増えてきた現代社会の実情から,特に仲間関係に問題を抱える幼児がいな い学級でも,学級全員の社会的スキルを磨き,互いがよりよい仲間関係を築けるよ うに指導することは非常に重要である」. 個別なSSTが必要な子にとっても,周囲の働きかけが重要である. 周囲の応答が適切であれば,社会的スキルの苦手な子どもへの自然な強 化にもなる.その意味においても学級で実施する社会的スキル指導が必 要であるといえよう.. 相川(1999)は,学級集団で行う社会的スキル指導を「ソーシャルスキ ル教育」と名付け,その目的を3つのレベルで提示した.(Table 1). Table1 ソーシャルスキル教育の3つのレベル. 問題回避レベル. 問題を生み出しにくい健康的な面を促進させる発 B促進的なレベルでの教育活動 問題を生み出さないようにするレベルでの教育活. 早期発見対応レベル. 問題の早期発見早期対応レベルでの教育活動. 開発的レベル. ョ. .8..
(14) 相川(1999)は,「学級で行うソーシャルスキル教育は,開発的レベルを. 本来の目的とする」と述べている.社会的スキルを学ぶことによって人 づきあいの楽しみ方を学び,集団の中で楽しく時間を過ごせるようにな る.そうなると,仲間関係の悩みやトラブルが減少し,心理的な健康さ が身に付くようになる.したがって,問題を生み出しにくくなるという のである.これは,King&Kirschenbaum(1992P考え方に基づいている と思われる.King&Kirschenbaumは,「社会性発達プログラム」を作成 し,そのプログラムを支えている信念を「社会的適応の問題を早期に発 見して,望ましい環境を整えてあげれば,子どもの悩みは非常に少なく なって,自尊心が高まり,子どもたちの適応上の問題を悪化させずに仲 間によるマイナスの評判を解消できる」と述べている. これらの視点は,石隈(1999)の提案する心理教育的援助サービスの中 の「一次的援助サービス」と同じ視点である,石隈は,一次的援助サー ビスについて,「対象とする母集団の全ての子どもがもっと思われる基 礎的な援助ニーズや多くの子どもが共通にもっと考えられるニーズに応 じることを目指す」とし,促進的・予防的援助の必要性を提案している.. 先にあげたように,社会的スキル訓練は,スキルの未熟な子どもに対す る訓練であった.しかし,学級を対象とした社会的スキル訓練において は,個別なトレーニングとはその目的が異なり,予防的視点が中心とな っている.. 以上の点からも,学級への社会的スキルに関する指導が必要であり, 児童の社会性を育む取り組みとして適切であると考えられる. 学級集団に対する社会的スキル訓練に関する研究をTable 2に示す. ただし学会誌等で発表されたものに限っている.. 一9一.
(15) 狛ble2 集団への社会的スキル指導研究 指導の時間. 石形諸. 発表年 対象者. スキルの内容. 竹内・濱口. 1998. ’」淳校3年生. 舛間から賞賛されたときの受け答え,仲間か 道恵・学級活動. ャ学校5年生. 逡s法を表明されたときの受け答え,件間こ. ^週1時背計4. s満を述べる. 梺イずつ. 樹亜的な聞き方,会話,感情を分かち合う. 1s45分を. 後藤・佐藤・高山 1998. ノ」出校2年生. Rs 藤枝・ネ酬. 1999. 小学校3,4,. 樹亜的な聞き方,あったかいメッセージ,感. T,6年生. 薰. 各45分. 分かち合う,自分を守る,自己コントロ. [ル,社会白鼎顧薪決. 藤枝・石川・相川 1999. 小学4年生. 作櫛)入り方・誘い方,やさしい言勲・け,. 且閧. 思いやる,上手な頼み方,あたたかい. 記述なし. fり方 金山・後藤佐藤. 2000. ’」淳校3年生. 社会的働きがナスキル,規牽性スキル. 1s45分を4 刀{ゲーム4s. 後藤・金山・佐藤. 2000. 小学校2年生. 好意的な働きがナと応答. 1s45分を3 刀`4s. 上手に聞く,社会的働きがナ,仲間強化. 1っのスキルに. m」電学校3年生. 貝梅・佐藤・岡安. 2000. 1」、学校3年生. Rs 藤枝・木訓. 佐藤,日高後藤,. 2001. 2000. 小学校4年生. 年長児. 作鼎脇秀い方・入り方,やさしい言葉かけ,. 1っのスキルに. 且閧. Qs. 思いやる,上手な頼み方. 積極的な聞き方,あたたかいメッセージを送 驕C感情を分かち合う. 金山・日高・西本 2000. 年中児. 適切なネ±会的動きがナ,適切な応答. 1s20∼30 ェを6s. 1s20∼30 ェを6s. E渡辺・佐藤・. 松田・金山・岡村 2001. 年中児. E佐藤. 樹亜的な聞き方,イ喘の入り方,あたたかい. 10分を3s,. セ葉がナ. ゥ由遊び蝪面に. ィナる強化. 金山・松田・岡村 2001. 年中児. 適切な働きがナ,適切な応答. 齧ハ8s. E佐藤 嶋田. 2000. 教室と自由遊び. 帷. 聞き方. 学年集会/2セ. bション. ※Table中のsはセッションを意味する、. 10.
(16) ここでは,小学生を対象とした集団社会的スキル訓練に関する先行研 究について検討する.. 集団への社会的スキル指導では,スキルの未熟な子だけではなく,学 級に所属する全員を訓練対象としている.その指導法は,コーチング法 (後:藤・佐:藤・高山,1998;貝母・佐藤・岡安,2000)やコーチング法に. トークン強化法を取り入れた方法(金山・後藤・佐藤,2000;後藤・金 山・佐藤,2000),モデリングと行動リハーサルを中心とした方法(竹内 ・濱ロ,1998;藤枝・相川,1999;藤枝・相川,2001)がある.また,. 内容はそのほとんどがKing&Kirschenbaum(1992p社会性発達プログ ラムのモジュールを参考に実施されたものである. King&Kirschenbaum(1992滋先述したように,社会的適応の問題を早 期に発見して,望ましい環境を整えることが,子どもたちの適応上の問 題を悪化させずにすむという理念に基づいて社会性発達プログラムを作. 成した.そのプログラムにおける,スキル獲得の基本理論は, Bandula(1977)の社会的学習理論の枠組みであり,モジュールの形式は Michelsonら(1983)の社会的スキル訓練モジュールを参考に作成されてい る.訓練の基本的な手続きは,問題場面の提示,モデリング,リハーサ ル,フィードバックである. 佐藤(1996)はコーチング法の特徴である社会的スキルの認知的要素の. 教示とそれに引き続く行動的要素の定着をはかる方法を提案した.つま り,社会的スキルを認知と行動の両面から教えることで自発的な社会的 スキルの運用を目指したものである.相川(1999)の「1ノーシャルスキル 教育」の具体的な手続きも同様である.. さて,これらの社会的スキル訓練は,全てが社会的スキル指導の時間 を学級活動等の時間を使って集中的に指導したものである.1つのスキ ルに対して1単位時間(45分)から2単位時間(90分)をかけて指導を 行っている.ただ金山・後藤・佐藤(2000)のみが,訓練の一貫として,. 学習したスキルの定着化を図るために「構造化された自由遊び時間」に おけるゲームを通した訓練を取り入れている.. 訓練効果の測定は,児童自己評定用社会的スキル尺度,社会的スキル の教師評定用紙が用いられ,・研究目的にあわせて,目標スキルに対応し た児童用評定用紙や孤独感尺度,ソシオメトリヅク指名法を併用してい る.竹内・濱口(1998)は社会的スキル評定尺度を用いないで,課題場面 における行動を自由記述させ,総発音数を数量化するとともに,自己統 制,柔軟性,共感性の観点に該当する成分が反応の中に含まれているか 否かを評価する方法によって効果を測定した. 一11.
(17) それぞれの結果を見ると,社会的スキルの効果が認められたとの報告 が多く,集団への社会的スキル指導によって,児童の社会的スキル向上 の可能性が示唆されている.しかし,ソシオメトリック指名法において は「友達関係の改善は見いだされなかった」報告(竹内・濱口,1998;後 藤・佐藤・高山,1998)や,「自己評定,他者評定ともに問題行動領域にお ける訓練効果は見られなかった」(後藤・佐藤・高山,1998)といった報告. もある.また,児童による社会的スキルの自己評定においては効果が見 られない,または一部にのみ効果が見られるが,教師評定においては効 果が見られた(後藤・佐藤・高山,1998;藤枝・相川,1999;藤枝・石川 ・相川,1999;金山・後藤・佐藤,2000;藤枝・相川2001)とする報告 が多い.. これらの研究においていくつかの課題が示唆されよう.1つは,社会 的スキルの自己評定や他者評定だけではなく,行動指標にもとつく測定 を用いた研究である.社会的スキルは実際に行動上に表されてこそ有用 であり,認知面の変容によってスキル向上を判断するのは不十分なので はないか.また,行動変容を周囲との関係と併せて捉えることも必要だ と考えられる.もう1つは,学級活動等を使った指導だけではなく,教 科学習の時間における社会的スキル指導や個別な社会的スキル指導等, 他の時間を使って実施・検討されることである.社会的スキル指導が効 果をあげるためには,日常生活の中で自然に強化をうけ(佐藤1998b), 実際の問題を使う(相川,1999)ことが必要であるとも言われる.学校にお いて総合的に社会的スキルが指導されれば,その効果がさらに期待され るところである.. 1.4 目的 したがって,本研究は,学校生活全般において社会的スキル指導の導 入をはかり,学級成員への効果とその可能性を確かめることを目的とす る.具体的には以下の2点である. (1)学級集団に社会的スキル指導を導入し,学級成員に及ぼす影響を検 即する.. (2)学校・学級に即した社会的スキル指導導入の形態や時間,内容およ びその指導法を,学校現場のニーズや現状から明らかにする.. 以上の2点について検討する.. 一12一.
(18) 第2章 方法 2.1 予備調査 2.1.1 予備観察 A町立B小学校3年生およびC市立D小学校5年生で参与観察:を行 い,以下の2点を確認することにした. (1)小学校の学級において,どのような対人行動上の問題があるのか. (2)社会的スキルがどのように実行されているか.. 期間は2000年9月1日から9月28日であった.各小学校とも,週あ たり2日とし,1日あたり約2∼3時間程度の時間を充てた. 社会的スキルに関する内容について関連した事象をエピソードとして 記録し,質的分析を加えた。. 2.1、2 児童の社会性とその指導に関するインタビュー 学校現場において,児童の社会性に関する問題はどのように受け止め られているのか.また,社会性に関する指導の必要性はどの程度なのか. それらを明らかにするために,教師ヘインタビューを行った.対象者は,. 教頭2名および教務主任2名の計4名.記録はテープレコーダに録音し, 逐語記録を起こした.逐語記録からエピソードとして内容を抽出し,K J法によって分析した.. 2.2 本調査 2、2.1 期間及び対象学級 (1)期間. 本調査の期間は,2001年4月16日∼7月18日および,9月1日∼29 日であった.本調査は2校で行った.それぞれの学級には週あたり2日 程度とし,担任と協議をしながら授業参観やスキル指導について行うこ ととした.ただし,4月は学年はじめの期間でもあり,それぞれの学級 経営に支障が出ないように配慮した. (2)対象学級とその概要. ①A町立B小学校:第6学年. 児童数23名 一13一.
(19) A町は人口約1万五千人前後の農業を中心とした地域であるが, 都市部へのべヅドタウンという性格も併せ持っている.. 特にB小学校の校区は複数の住宅地を抱えており,1980年前後 は児童数が年々増加していた.最も児童数が多かった時は500甲唄 の児童が在籍していた.しかし現在は,児童数が減少し180名前後 を推移している.. 現在B小学校の児童数は183名で,各学年とも30名から40名の 在籍数で1学級編成である.したがって進級にともなう学級編成は なく,第1学年に入学したときから卒業までをほとんど同じメンバ ーで過ごすことになる.また,障害児学級が設置され,現在第6学 年の児童が2名在籍している.生徒指導上の大きな問題もなく,不 登校やその他の深刻な問題を抱えた児童もいない.学校全体として も落ち着いた雰囲気の中で教育活動を行っている.. 第6学年は男子10名,女子13名の合計23名が在i籍しており, 障害児学級から2名の児童が給食時間と体育のみ交流している.数 年前から幸子へのいじめが深刻化し,学級内で「○○菌がうつる」 「きたない」等の言葉が幸子に向けられるようになった.当時の担 任はなんとかいじめがなくなるようにと努力し,第4学年の終わり からそうした言葉は聞かれなくなった.しかし,幸子への態度が大 きく変わることはなく,遊びの仲間に入れるとか,一緒に給食を食 べることは全くと言ってよいほどなかった.1名の女子だけが幸子 と一緒に行動するようになった.その子も他の子から遊びに誘われ ることもなくなり,女子2名の孤立状態が続いている.また,太郎. は第1学年の当初,保護者より当時の担任に,AD/HDと診断さ れているとの報告があった.太郎は長いものにこだわりを見せ,登 下校中に長い棒を常に持って他の子をつつくなどの行動があり,他 の保護者から学校へ苦情が寄せられたこともある.学級内でも他の 子と協調して遊ぶことやみんなと同じ行動をすることを避けるが, 学年が進むにしたがって落ち着きも見られるようになった.他の子 も太郎に対して好意的に受け止めており,いじめや仲間はずれをす ることはない.. 高学年になると女子の中で友達関係が難しくなり,泉子がその中 心的存在となる.他の児童は不満を抱きながらも泉子には逆らえず, がまんしているという状態が続いている.. 第6学年の担任は男性で年齢は38歳.教:職歴は本採用から数え ると9年目であるが,前任校で教務主任を4年経験しており,現在 一14一.
(20) の公務分掌は生徒指導主任である.. ②C市立D小学校:第6学年児童数33名 C市は県の中でも有数の工業地域で,工業と商業中心に発展して きた都市である.しかし,近年は他の地域に商業の中心が移ってし まうとともに,工業生産の衰微が目立ち,人口は少しずつ減少して いる.. D小学校はC市の中心に位置し,県・市営住宅とともに民間のマ ンションが屹立する中にある.現在の児童数は415名.各学年は50 人から80人前後で,それぞれ2学級で編成されている.転出入が 多く,1年間で20人から30人が転出入をする.したがって学級の 在籍数が大きく変わることもあるので,学級編成を毎年度々ってい る.. 第6学年は男子18名,女子15名の合計33名.本学年は前年度 からもトラブルの多い学年であり,6学年に進級する際の学級編成 も難しかった.個々に配慮が必要な児童が多く,人間関係も複雑で あった.本学級は中でも対応が難しい児童が多く,担任も昨年度か ら引き続き持ち上がることになった.友達づきあいが難しい一志や 伸雄,感情の起伏が激しい為男,不登校状態の聖子等,担任1人で は抱えきれないのではないかと思われた.校長も学年当初から「学 級崩壊の可能性がある」と心配し,筆者に対しても「慎重に」と話 していた.担任は男性で年齢は42歳.教職経験:は19年目であり, 過去,教務主任等も経験している.現在の公務分掌は生徒指導主任.. 第5学年の時からの持ち上がりで,半数の児童は前年度に担任した 児童である.. 2.2.2 アセスメントの方法 ・4月16日から5月15日までの期間を充てた. ・担任へのインタビューと行動観察に基づいてアセスメントを行い,標 的スキルを決定した.また,指導方針を決定するために,事前に社会 的スキル指導の内容を含む授業を行った.なお,標的スキルは「年度 当初の学級づくりに必要なことがら」「担任として身に付けてほしい. 一15.
(21) スキル」「問題行動が見られる児童への指導」等を考慮して決定した.. 2.2.3社会的スキル指導の実際(A町立B小学校第6学年) (1)アセスメント. アセスメント期間のエピソード数は52.エピソードの内容を児童相 互の対人行動の視点で分類すると,「授業中の私語」「孤立」「自分勝手 な行動」が多く見られた.. 孤立傾向を示していたのは,啓太と,幸子の2名である.対象児童が 6年生であり,「仲間入りスキル」の未獲得による孤立状態ではないと 考えた.担任へのインタビューからも,「仲間入りスキル」の問題では なく,学級内の人間関係等が大きく関与しているのではないかと思われ た.啓太が孤立傾向を示すのは,他の児童の遊びが啓太の不得意なもの であることや,啓太が読書や調べ学習を好むことによるものと推測され た.幸子は今まで学級内で差別的な対応をされてきた経験があり,それ が孤立的行動に結びついていると考えられた.これらのことから,孤立 傾向の改善には,啓太や幸子の行動変容を促すよりも他の児童の認知及 び行動変容を図ることが効果的であると判断した. また,自分勝手な行動が多いのは,相手の立場に立って考えることや, 相手の感情を理解することが未熟であることが大きな要因ではないかと 思われた.たとえば,相手がいやがっているのにそれが分からずちょっ かいを出したり,相手の気持ちを考えずに自分の不満感情をそのままぶ つけたりすることがあった.したがって,King&Kirschenbaum(1992), 相川(1999)の「他人の気持ちを分かってはたらきかける」スキルを中心 とした指導を行うこととした. アセスメントの一貫として社会的スキルの内容を取り入れた授業を行 った.教科指導の中で社会的スキルの内容を指導してもかえって混乱し てしまうのではないかと思われた.したがって,教科指導よりも道徳や 学級活動を活用して集中的に指導を行った方がよいと判断した.教科で は「どうぞ」「ありがとう」といったあたたかい言葉かけや,上手な聴 き方を少しずつ取り入れていくことにした.また,人間関係づくりゲー ムを好み,あたたかい雰囲気の中で実施することができた.. 一16一.
(22) (2)社会的スキル指導の方針 本学級への社会的スキル指導の方針として次の2点を定めた. ・スキル指導の時間を使ってモデリングとリハーサルに時間をかけ,学 んだことが教科や日常生活に生かせるように配慮する. ・ゲームや学級集会等を利用し,自然にスキルを身につけていけるよう な場を工夫する.. (3)社会的スキル指導の内容 以下,本学級で行った社会的スキル指導を示す.(Table3). 学級全体への実施時間はそれぞれ単位時間(1単位時間は45分)で ある.. 社会的スキル指導導入段階として,「友情形成スキル」を初めに取り 上げることにした.佐藤(1996,1998a)は,社会的スキル指導の内容につ いて次のように述べている.. 「これまでに社会的スキル指導を実施した経験から言えることは,社会的スキルが まずい子どもたちは上の3っの社会的スキルのいずれにおいても何らかの不足や欠 如の状態にある.しかし,こうした子どもに先ずどのスキルから教えることが最も 経済的で効果的かというと,教え易さ,子どもにとっての使いやすさや負担度,仲 間からの受け入れ度,社会的適応への貢献度のいずれから判断しても,友情形成ス キルの習得を先ず最初に考えるべきであろう.そして,このスキルがある程度定着 した後で主張性スキルや社会的問題解決スキルを子どもの状況に合わせて標的スキ ルとする事を提案したい.」. 以上の点をふまえて担任と協議し,導入段階として「上手な聞き方」 をとりあげることにした.. 社会的スキル指導についての理解を図った後に,「あたたかい言葉か け」「気持ちを分かってはたら.きかける」「トラブルの解決策を考える」. の指導を行うことにした.ただ,学級の実態は変化し続けるものである から,常に担任と協議しながらその内容と方法について検討した上で実 施することとした.. 一17一.
(23) Table3 A町立B小学校第6学年における社会的スキル指導 嵩,全 へのb スキル指導の内容 上手な聞き方 あたたかい言葉かけ. 応. 実施時間. 教科1時間 教科1時間 学級活動1時間 自己理解と他者理解 学級活動1時間 気持ちを分かって働きかける 学級活動1時間 トラブルの解決策を考える 学級活動2時間 少人数の人間関係や学級全体の人間関 学級活動3時間 係を作るゲーム. 実施日 5/16 7/6 6/6. 6/12 6/22. 7/6.7/10 5/2,6/13,. 77. 個別な対応 ・啓太への個別なかかわりとして,以下のことを配慮することとした. ①筆者が他の子との間に立つことにより,他の児童との交流が進むよう に心がける.. ②自然な雰囲気の中で他の児童との交流が図れるようにし,特に強い介 入は慎むようにする.. ③啓太がどんな気持ちで日常生活を送っているのかを受容的に理解する ように努める.. 啓太は他の男子と一緒に遊ぶことがほとんどない児童である.他の児 童へ「遊ぼう」と言って仲間に入ったり,他の児童から誘われることも ない.給食時間は他の児童と一緒に食べていても会話をすることもほと んどない.したがって,啓太が他の児童と自然に会話をしたり遊んだり することができるように配慮した.. 具体的には,筆者が啓太と会話をしたり遊んだりすることで,その場 に他の児童が参加できるようにした.6年生なので,仲間入りのスキル 指導をしょうとしても,それを啓太が受け入れるのは難しい.また,筆 者に対して他の児童が積極的にかかわることも多いので,筆者が啓太と 他の子の仲介役になることもできると考えた.. 2.2.4社会的スキル指導の実際(C市立D小学校:第6学年) (1)アセスメント. アセスメント期間のエピソードは70.その中で,自己主張の強さや 他人の気持ちを理解しないことによるトラブルが多く見られた..また,. 一18一.
(24) 授業中の私語や勝手な発言も多かった.担任とスキル指導の内容につい て協議し,「上手な聞き方」「あたたかい言葉かけ」「気持ちを分かって 働きかける」のスキルを中心とした介入を行うことにした. なお,問題行動が見られる児童に対する指導を併せて行うことにした. 伸雄は他の児童とのコミュニケーション場面において,腹を立てたり文 句を言ったりすることが多く,他の児童とのトラブルが起きることが多 い.予備観察及びアセスメント期間において,筆者が伸雄に対して受容 的なかかわりをしたときに気持ちを静めたり,場面の状況を正しく理解 することができたことがあった.例えば次のエピソードである.. 伸雄は自分がボールを当てられたことが気に入らず,「ぼく,保健室へ行く」 「骨折した」と言いながら体育館を出ようとするが出はしない.そのまま体 育館の隅にいて文句を言い続ける.担任は審判をしているので伸雄にはかか わることができない.そこで,観察者が伸雄と話すことにする.伸雄が「ボ ールを当てられたところがひりひりする」「(ボールを当てた)白に文句を言 う」と言う.観察者が「あれは,先生が当てたんだ.ごめんね.許してくれ る?」と言うと,「うん」と言い,それから当てられたことは言わなくなる. しかし,「ぼくはボールを1回しか投げてない」と言う.「今度こんなことが あったら白銅に『死刑』と言ってやる」という.. 観察者は,「そうか,死刑と言ってやるのか」「文句が言いたいんだね」と共 感的な声かけをすると少しずつ落ち着き,みんなの中へ入る.. したがって,伸雄に対しては筆者が共感的・受容的なかかわりをする とともに,トラブルが生じた場合にはその場介入を試みることにした. 一志は他の児童とかかわる中で,ふてくされたり教室を飛び出したり することがある.担任も一志に対しては個別なかかわりを持ちながらも 悩んでおり,一志への個別なかかわりを筆者に希望していたが,具体的 なかかわりの視点を持つことができなかったので,今後の検討事項とし た.. また,アセスメントの一貫として社会的スキル指導を教科学習の一部 に導入した授業を行った.その際,児童の反応がよく,筆者のフィード バヅクをすぐに模倣する児童がいた.社会的スキル指導を取り入れた授 業も可能であるとの感触を得た.また,十分に時間をとる必要があると きは道徳や学級活動の時間を活用することにした.. 19一.
(25) (2)社会的スキル指導の方針. 本学級への社会的スキル指導の方針として次の3点を定めた. ・教科学習の中で,社会的スキルをうまく使っている行為を取り上げな がらスキル指導をすすめる. ・モデリングやリハーサルに時間を要する場合や,教科の中では扱えな い場合をスキル指導の時間として設ける. ・個別な働きかけを必要とする児童への配慮を特に心がける.. (3)社会的スキル指導の内容 本学級における指導内容についてはTable4に示すとおりである.. なお,A町立B小学校における指導と同様に,導入段階として「上手 な聞き方」をとりあげることにした.社会的スキル指導についての理解 を図った後に,「あたたかい言葉かけ」「気持ちを分かってはたらきかけ る」等の指導を行うことにした. また,学級の具体的な問題を取り上げた指導も行った.その際に,か らかいや嘲笑が表面化しないように配慮するとともに,学級に合った指 導方法を案出した.. なお,本学級における指導は諸事情により中断されたため,Table4に 示した指導内容は指導した内容であり,計画した内容の全部ではない.. Table4 C市立D小学校第6学年における社会的スキル指導 当級全 への土会的スキル指導の内容 実施時間 スキル指導の内容 上手な聞き方 教科1時間 あたたかい言葉かけ 学級活動1時間 気持ちを分かって働きかける 学級活動1時間 ・適切な応答 トラブルの解決策を考える. 教科1時間 学級活動1時間 学級活動1時間. 実施日 5/14 6/11. 6/18 6/4. 6/21. 6/30 フェアプレースキル 616 ・教師と児童の人間関係を作るゲーム 凸級活動1時階 個別な対応 ・伸雄への個別なかかわり ①筆者と伸雄との間によりよい人間関係ができるように配慮する. ②受容的なかかわりの中で自信を持たせるとともに,感情を自己コン トロールできるように配慮する. ③必要であればその場介入法による指導を行う.. 一20一.
(26) 2.2、5社会的スキル指導の方法 スキル指導の時間は第1章で述べた相川(1999)の進め方を基本にした. つまり,【インストラクション】→・【モデリング】→【リハーサル】→ 【フィードバヅク】の展開を基本とし,内容によって応用的な展開をし た.,. また,スキル指導のみの内容ではなく,向山(1998a)の提案する「力の ある資料」を用いた教師の語りをできるだけ取り入れるように努めた.. また,その学級の実情を踏まえ,より社会的スキル指導がスムーズに 進むように心がけた.. 主な社会的スキル指導について,展開の概略を示す.以下の展開例は 基本的な枠組みであり,実際は実施学級によって若干の違いがある.(展 開の詳細はAppendixを参照) (1)あたたかい言葉かけ. 活動内容. 丁able5 「あたたかい言葉かけ」展開例 援助の留意点. 1 導入 トラストフォール. 2 インストラクション ・相手を理解するポイント(言語的 側面と非言語的側面) ・言葉かけの効果. ・気持ちよく社会的スキルを学ぶために,あたたかい雰 囲気を作り出すように心がける.. ・言葉かけをする側にとっても,脳の働きが変化するこ とを示し,適切な動機付けを図る.. ・モデリングやリハーサルに結びつくように,具体的な 言動を理解させる.. ・言葉かけと脳. 3 モデリング ・望ましい行動(ほめる,励ます, 心配する). ・言葉をかけられる側の感情に注目させ,その影響につ いて考えさせる.. ・希望する児童に体験(言葉をかけられる側)させ,そ. ・望ましくない行動(けなす,欠点. の感情を言語化させることによって他の児童の理解を. を指摘する,バカにする). 深める.. 4 リハーサル. ・スクリプトに記入したことを発表し,よりよい言葉か げを考えるとともに,肯定的なフィードバックを与え, 意欲付けを図る.. 5 般化へのアドバイス. ・スキルが使えそうな場所,人間関係,時などを示し(ま. たは考えさせて),いろんな場面でスキルを使ってみ るように促す.. 一21.
(27) ここでは,岡田(1998)の実践を取り入れた授業を行った.脳内革命を 使った実践である.具体的には次の話題を取り入れた.. ノルアドレナリンの話 人間は、意地悪をしたり悪口を言ったりすると、脳からノルアドレナリンというもの すごい毒を持った物質が出てきて、病気になったり、老化が進んだり、早死にしたり する、脳が自分自身を攻撃する。いつも怒っていたりイライラしたりしているとこの 毒のせいで病気になったり早死にしてしまう。 エンドルフィンの話 逆に脳からいい薬も出る。βエンドルフィンという。どんなに嫌なことがあっても前 向きにプラス思考でプラス発想で考えて生きていれば脳には体にいい薬(ホルモン) が出ていつも若くて、病気にもなりにくく、長生きする。つまり「あなたは、この世 に必要な人、もっともっと元気に活躍して。」と脳がいい薬を出す。その薬は、悪性の 病気でも治すくらいの薬である。このように人間というのは、人の嫌がることをした ら自分で自分を攻撃して、人のためにいいことをしたら、自分が自分を健康にする。. (2)気持ちを分かって働きかける. Table6 活動内容. 「気持ちを分かってはたらきかける」展開例 援助の留意点. 1 インストラクション. ・表情を手がかりにして,表れている感情を推理させる.. 感情の非言語的側面を知る.. ・表情,身振りなど 2 表情をモデリングする.. ・4っの表情をしてみることによって非言語的側面に関 する認識を確かめる.. 3 インストラクション 感情の言語的側面を知る.. ・声の大きさ. ・感情は,言語的,非言語的手がかりによって推し量る ことができることを確認する.. ・声の強さなど. 4 対応の仕方を考え,モデリング する. 対応の仕方について考える, ・笑っている人に. スクリプトを用意し,それぞれのスクリプトに対して どんな気持ちがしたかを尋ね,対応の違いによって受 ける印象も変わることを実感させる.. ・泣いている人に. ・それぞれの対応のうち,もっとも相手の気持ちに添う. ・怒っている人に. のはどれかを考えさせることによって,対応の仕方の 大切さを感じ取らせる.. 5 適切な対応のリハーサルを行う.. ・適切なスクリプトをリハーサルし,感情の変化や受容 感を感じさせる.. 22一.
(28) ・/貌雛. 霧;. <ぞ. 繍 瓢島 ’. ’震蕩携舞ゴi. r 姦」 .. ’擁霧iiil舞. 隅;. 癒. Fig.1 感情を表す表情. ここでは,感情を表す表情を写真で提示した.写真はそれぞれ「喜び」 「怒り」「悲しみ」「平常」を表したものである.これらの写真から読み とることのできる表情をもとに非言語的側面について考え,言語的側面 も合わせて感情と感情表出の特徴について理解を促した.また,それぞ. れの感情を表出している相手に対する対応の仕方を考えるとともに,適 切な対応について考えさせた.適切な対応の仕方が分かったら,リハー サルを行い,フィードバックを与えた.. 一23一.
(29) (3)トラブルの解決策を考える. Table7 「トラブルの解決策を考える」展開例 活動内容 援助の留意点 1 トラブルが生じたときの対処 法を書き出す.. 2 それぞれの方法についての問 題点を考える.. 3 もっとも良い方法を選び出す.. ・具体的な場面を提示し,解決のための方法をできるだ けたくさん書き出してみるようにさせる.. ・結果についての予想を立てながら,それぞれの方法の 良い点と問題点について考えさせる.. ・2で考えたことを元に,どの方法がもっとも適切かを 判断させて選ばせる.. 4 場面を変えて考えてみる.. ・1と違った状況を提示し,3の方法が当てはまるかど うかを考える.. ・判断が難しいときは,解決法をたくさん出すことから 始め,判断する材料とする.. 5 リハーサルをする.. ・選んだ方法を用いて1eaderとの間でリハーサルをし,. 肯定的なフィードバックを与え,よい点や改善点につ いて自覚させる.. 6まとめ ・教師の話を聞く.. いじめにあった女の子の実話を紹介し,トラブルが起 こす深刻な問題について意識させる.. 「トラブルの解決策を考える」は,内容が多く,1時間では扱えない. ため2時間かけて行うこととした.1時間目で活動の1∼3までを実施 し,2時間目に4以降を実施した.. 一24一.
(30) (4)気持ちを分かってはたらきかける 一教師のサイコドラマを導入して一. Table8 「気持ちを分かってはたらきかける」展開例 援助の留意点 活動内容 1 教師のロールプレイを見る. 学級での具体的な場面(ここではふてくされ)を取 り上げる.. 2 演じた教師にインタビューをす. インタビュー内容を事前に伝えておくこととする.. る. 3 もう一度ロールプレイを見る. ・役割とその感情を認識してロールプレイを見ること. により,行為とその裏にある感情を明確に意識させ る事を目的とする.. 4 子どもたちからプレーヤーにイ ンタビューをする. 5 自分がプレイヤーだったらど うするかを考える. 6 リハーサルを行う. ・プレイヤーに質問したいことがあれば質問をする時 間をとる.. ・ふてくされてしまったp1に対してどのようなはた らきかけをするとよいかを具体的に記述させる.. ・書いた子どもに前に出てきてもらい,p1に対する はたらきかけをリハーサルする.. 7 感想を書く. 池島(1997)は,教師がサイコドラマを演じることによって,いじめら れている子の気持ちを理解するとともに,いじめていた子の行動が変容 した事例を挙げている.ここでは,教室で問題となっている具体例を取 り上げ,池島の事例を参考にしながら授業を行った.ここで取り上げた 「ふてくされ」は,学級全体の雰囲気を壊し,学級全体の学習や作業を 中断させるほど深刻な問題だった.しかし,学級活動で取り上げること は難しかった.また,筆者も,社会的スキル指導の中に児童のロールプ レイを導入することに自信がなかった.したがって,教師によるサイコ ドラマを取り入れた.なお,この内容はC市立D小学校のみで行った.. 一25.
(31) (5)上手な聞き方(教科指導の中でのスキル指導一国語科一). 活動内容. Table9 「上手な聞き方」展開例 援助の留意点. 1 音読し,読み方と言葉の意味に ついて確認する.. 範読した後3回以上音読させ,詩の流れをつかませ る.. とほうにくれる. ことづけ 2 作者と話者について考える.. ○ 発表するときに,発表者の方を向いて聞くことや, うなずくように聞くことの大切さを知らせる.. ○ よい聞き方を実感するために,よそを向いて聞く, 話しながら聞くことを体験させる. 3 詩の内容を読みとる.. ・「だれ」「なに」「いつ」「迷って」「とほうにくれて」. 一〉「それでも」「手わたさなくちゃ」の言葉の変化に 気づかせ,三連から雰囲気が変わることを理解させる.. ○ よい聞き方ができている場合を賞賛し,聞き方の意 識付けをする.. 4 四連を追補する.. 板書した人が発表するときに,聞き方の復習をし, 最後まで聞き方について意識させる.. 相手の話を聞くことは授業中でも必要なスキルである.また,小学校 では授業の中で「相手の方を向く」「相手の目を見る」などの指導を行 っていることが多い.また,一定期間集中して指導すると,それが授業 中の態度形成につながり,教師が指示や援助的かかわりを行わなくても できるようになる.そこで,教科指導の中で「上手な聞き方」の指導を 取り入れることにした.. (6)人間関係づくりゲーム. 楽しみながら人間関係づくりが出きるゲームを学級活動に取り入れ た.福井教育サークル(1992),みんなの会(1991),小学校特別活動研究. 一26一.
(32) 会(1995,1996,1997)を参考にし,学級に合わせた内容を選んで実施した.. 2.2.6 介入方法の検討と修正 介入後,担任へのインタビューを行い,児童の反応や学級の雰囲気, スキル指導の内容について協議した.その中で次回の予定を立てるとと もに,スキル指導の方法を検討した.. 2.2.7 記録の方法 学級での個別な関わりや,日常の学校生活における行動等については, 参与観察による記録を行った. 社会的スキル指導の時間や教科での指導,およびゲームは毎回ビデオ 記録をした.ビデオ記録をもとに,ストップモーション方式を応用した テクスト記録を作成し,検討を加えた.. 2.2.8 結果の分析 (1)エピソード分析. 参与観察から得られた社会的スキルに関連した事象をエピソードとし て記録し,時系列に沿って,学級成員の変化について質的に分析した. また,エピソードからそれぞれのエピソードを構成する対人行動を行 為カテゴリとして抽出した.行為の主体者とその相手との視点で見ると, 【児童→教師】,【教師→児童】,【児童+児童】の行為カテゴリが見出さ. れた.それぞれの行為カテゴリを分類し,【児童+児童】について検討 を行った.【児童+児童】に分類された行為カテゴリを,「ポジティブな 行動」と「ネガティブな行動」,「ニュートラル」の3つに分類し(Table 伯参照),観察された割合を比較した.比較する際に観察期間を分けた.’. A町立B小学校の場合は1期からW期とした.1期はスキル指導前,ス キル指導期間を前期と後期にわけ,それぞれをII期とIII期とした.また,. 9月をフォローアップ期間とし,IV期とした。 C市立D小学校の場合は 参与観察が中断されたこともあり,指導前と指導中に分けることにした. また,時系列に沿った学級での社会的スキルに関するイベントや,個 人の変容を事例として取り上げ,分析を行った.. 一27一.
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