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Fig.5 学級雰囲気調査結果

(3)授業中の行動観察

 第2章2.3.8.(3)で示した行動観察カテゴリを用い,授業中の行動観察 を行った.授業記録のビデオから,2名が観察・評価を行った.一致率 を求めたところ,いずれの内容についても75%以上であった.ここで は,筆者の記録にもとつく結果について示す.45分間を1分間ごとに 区切り,45セルとした.図6および図7は,45セルのうち,該当す

る行動が観察されたセルが占める割合を示した.

 児童の「授業とは関係ない行為」が大きく減少した.preでは「授業 とは関係ない行為」が47%で観察されたが,postにおいては,9%だ った.また,「他人に対する攻撃的・妨害的行為」は,4%から0%,「他 人に対する受容的・援助的行為」は0%から9%へと変化した.

50%

40%

30%

20%

10%

0%

一◆一関係ない行為

尋攻撃的・妨害的

一卜受容的援助的

pre post

Fig,6 授業中の行動観察結果(児童)

 また,教師の「児童に対する否定的行為」は,7%から2%と,あま り変化が見られなかったが,「児童に対する受容的・援助的行為」は,

2%から33%へと増加した.

35%

30%

25%

20%

15%

10%

5%

0%

    /    /    /

  /   /

命〜、/

 7、一一.一、噛

『曽一

ゆ一否定的

,聾誓穴子一助的

pre post

Fig.7 授業中の行動観察結果(教師)

3.2.2 C市立D小学校第6学年

 A町立B小学校の場合と同様に,観察されたエピソードから行為カテ ゴリを抽出したものを【ポジティブ】【ネガティブ】【ニュートラル】の カテゴリ別に分類し,全体の行為カテゴリ数における割合を比較した。

ここでは,児童相互の対人行動カテゴリについて述べる.なお,期聞は 指導前と指導中の二期に分けた.それぞれの期間,エピソード数,行為 カテゴリ数は別表の通りである.

Table15 懸盤ごとのエピソードと行為カテゴリ数 指導前 指導中

i期間 4/16〜6/1 6/11〜 7/10

止ピソード数 101 94

全行為カテゴリ数 107 94 i児童相互の

c行為カテゴリ数 52 55

100%

90%

80%

70%

60%

50%

40%

30%

20%

10%

0%

難三

  難

指導前 指導中

ロポジテイブ 圏ニュートラル 囲ネガティブ

Fig.8 D小学校6年 児童相互の行為カテゴリ率

 社会的スキルを指導する前と指導中を比較すると,ポジティブな行為 が指導中に増加するとともに,ネガティブな行為が減少していた.

以下,各期ごとの特徴を表すエピソードについて述べる.

【指導前】

指導前の特徴

 朝の会や終わりの会は私語が多く進行しないことが多い.また,些細 なことでトラブルが起こる.伸雄は,予備観察時よりも落ち着いて行動 するようになっている.一志や光政にかかわるトラブルが多い.

①伸雄

NO.10

5島々は体育をした.運動場でハードルの練習である.最初に,ウォーミ ングアップで走る.男女それぞれ2列ずつで,4人が一緒に走る.担任が

「4人で競争だよ」という.筆者は伸雄と一緒に走ることにする.伸雄に

「よろしくね」と言いながら握手の手を差し出すと,伸雄も手を出す.握 手をする.伸雄が,「先生,無理せんでいいからね.」という,何のことか 分からなかったが,よく聞くと,「無理に僕に気をつかってゆっくり走ら なくてもいい」という意味だった.筆者と競争して負けるとどんな行動に 出るか心配だったが,一年前と比べるとかなりその辺の対処の仕方や考え 方は身に付いてきたのかもしれない.「じゃあ,伸雄君を抜かすよ.いい?」

と聞くと,「いいよ」と言う.競争すると,他の子が途中でつまずきかけ たりして,伸雄よりも遅くなった.すると伸雄は「遅いなあ」と言う.う つぶせになってスタートしたり,後ろ向きになってスタートしたりと,何 回か違ったパターンで競争をする.他の子からも伸雄に対して嘲笑や冷や かしはなかった.

NO.13

いよいよハードルをつかった練習に入る.筆者は伸雄についていくつもり はなかったが,伸雄の方から「どこ走ればいい?」と聞いてくるので(ハ ードルは一つ一つの距離の違いによって3コースに分かれている)「どこ でもいいよ,自分の好きなところで走ればいい」と答える.最初は筆者も 走ったが,すぐにゴール地点でみんなの様子を見ることにした.すると,

伸雄の抜き足が上手だったので,「伸雄君,左足が上手だね」と本人に近 づいて言った.すると伸雄は「だって,ぼく左利きだから」と答える.機 嫌は悪くはない.体育の時間は,本人に苦手意識があり,なかなか運動を

しょうとしないが,今回はかなりやる気になっている,

NO.14

一通り練習した時点で,担任が,上手な見本として一枝と伸雄を指名した.

伸雄は抜き足が上手ということで指名されたのだ.伸雄がみんなの前で,

一人で走ってみる.五郎が「うまい」と言う.伸雄が帰って来たので,「ぼ ら,さっき先生が言ったように左足が上手だって言われたでしょ」という と,「でも,最初はちょっと間違えた、後の2回はできたけど」と,ちょ っと不満そうに言うが「でも,よくできてたよ」と筆者が言う.

NO.24

お手本どして次郎,清志らが担任に指名されて演技をする.みんなが拍手 をするが,伸雄も拍手していた.

NO.80

運動場に出るときに伸雄と一緒になる.階段を下りていると,伸雄が階段 を踏み外した.本当に踏み外したという感じには見えなかったが,足が痛 い,捻挫かもしれない,骨折かもしれない,足にダメージを受けたと筆者 に言う.降りてくる他の子も「のぶちゃんどうしたん,階段から落ちたん」

と声をかけてくる.大造や一枝など,他の子も声をかけてくる.

 伸雄は予備観察時(当時5年生)から「なぜぼくだけ○○なんだ」と 言って腹を立てることが多く,それが原因で学級全体がもめてしまうこ

とがある.腹を立てると机やいすを蹴飛ばしたり他人に大声で文句を言 う.それで授業が中断することもあった.

 6年生になって筆者が学級にいると,伸雄は筆者に話しかけてくるこ とが多かった.担任からも,伸雄にかかわってほしいと依頼されていた こともあり,4月当初から筆者は伸雄に対して援助的なかかわりをする

ことになった.

 6年生になってからは次第に落ち着きが見られるようになり,かんし ゃくを起こすことは少なくなった.また,本人が勘違いをして腹を立て ていることもあるので,その場合は他の児童や担任が説明すると「ごめ んなさい」と謝るようにもなってきた.

 また,他の児童が伸雄に対して「すごい」「どうしたん」と,やさし い言葉をかけることもあった.伸雄が他の児童に対して拍手をする場面

も見られた.

②一志

NO.41

食事のあいさつを一志がする.一志は,みんなが席に着くように,また,

静かにするように促すが,なかなか全員がそろわない.だから,一志はふ てくされたように何度も注意するが,二三男等がふざけている.一志は何 度も二三男を注意するが,あまりにも時間がかかるので,五郎等から早く しろと文句が出る.一志はそれに対して,言い返すこともなく不満そうな 表情を見ぜている.時間がかかりすぎて,みんなはしらけたような雰囲気 になる.いい加減にしてよという雰囲気を感じる.仕方なく担任が声をか ける.「みんなでさっとやれば時間はかからないだろう.早くしなさい」

やっと一志はごちそうさまでしたと言うがほとんど聞こえなかった.本人 は納得していないだろうと思われる.

NO.65

全員が一通り走った後,自分の選んだコースへ行く.

その時,一志が選んだコースには,男子は一志一人だった.だからか,他 の男子にからかわれた様子.その言葉は筆者は聞いていない.一志はふて くされて,見学している隆之のところへ行く.それでも他の男子が,はぶ てちょるんか.かえれ一や.」と言ったので,一志はさらにふてくされた 様子で下足箱へ向かう.担任が,以前のこと(自宅に帰ったこと)なども あるので,隆之に,「隆之君,一志君についちょってくれ」と頼む.しば らくして隆之が運動場に出てくる.一志君はどうしてると聞くと,教室で 自分の席に座っているという.「いつもぼくだけいじめられる」と言って いたと隆之が筆者に言う.給食なので,教室にはいると一志が机にうつぶ せている.そのうちに担任が一志を連れて教室から出ていく.

 学級内のトラブルに一志がかかわっていることが多い.特に,給食の あいさつをするときは騒然とする.一志があいさつをする係なのだが,

あいさつをしょうとしても静かにしない児童がおり,一志がその児童を 注意するのに時間がかかる.他の児童はそれを見ていやになり文句を言 い出す.担任が一志をなだめたり援助したりして収まることが多いのだ が,それでも毎回のようにトラブルが起こり,時にはあいさつをするだ けで10分以上も時間がかかることがある.

 また,一志は何か言われるとすぐにふてくされて教室を飛び出すこと

もあり,時には自宅に戻ってしまうこともある.