日本小児循環器学会雑誌 4巻3号 356∼366頁(1989年)
左室性単心室症に対するSeptation手術
(人工中隔作成術)後の血行動態について
(昭和63年10月24日受付) (平成元年1月20日受理)墳沢田
青黒神
東京女子医大日本心臓血圧研究所 循環器小児科1),小児外科2) 現千葉県こども病院循環器科3) 裕之1)3)中沢 誠1) 今井 博身2) 福地 晋治2) 里見 進1) 片山 博視1) 高尾 ワヨ エ ユ晴義良
康 元 篤 key words:左室性単心室症, Septation手術,心室分割比,人工心室中隔 要 旨 S.LL.型の左室性単心室症に対するSeptation手術後7例の血行動態につき人工心室中隔の運動を中 心に分析した.人工心室中隔は収縮期には著明に新しい右室側へ突出し,拡張期には軽度左室側へ突出 する運動が認められ,これは収縮期拡張期を通じて両心室の圧関係を反映したものであった.この運動 は右室の駆出率の増大(76%)に寄与する一方,左室の駆出率を低下(47%)させる結果となっていた. このことから両心室のバランスが保たれるためには左室が大きく分割されていなくてはならないと考え られた.対象症例での術後シネアンギオにより計測した容積比は右室対左室が37対63と左室が大きく分 割されており,両心室の1回拍出量係数はよく一致し,かつ良好な1回拍出量係数,心係数が得られて いた.また術後患児の生活状況も良好で,適切な分割比であったと考えられた.いずれの症例も術前の 肺動脈圧からみるとフォソタソ手術のリスクは高いと考えられた症例であったことからもSeptation手 術は有意義であることが示された. 緒 言 単心室症に対する心内修復手術には大別してフォン タン型手術とSeptation手術が考えられるが,現在で は前者1)2)が主流であり後者の報告は少ない3団.しか し前者は肺血管床が十分大きくまた肺動脈圧の低いこ とが重要な必要条件であり8)この点で手術適応外とな る症例も少なくない.一方後者は単心室のタイプ,房 室弁と大血管の空間的な位置関係9}1°)および左右房室 弁の機能,大きさのバランスなどから解剖学的に適, 不適はあるものの,フォンタン手術に比較しより良好 な心機能が期待され,また肺血管床に関する適応の制 約はより小さいと考えられる.このためSeptation手 別刷請求先:(〒280−02)千葉県千葉市辺田町579−1 千葉県こども病院循環器科 青墳 裕之 術のみ可能である症例もあり今日重要な手術法となっ てきた.特にS.L.L.型の左室性単心室症(Van Praagh 分類III−A)11}は房室弁と大血管の位置関係が最もSe− ptation手術に適する単心室症のタイプのひとつであ り,ほぼ平面的なパッチにより心室の分割が可能であ る.近年当院でもこのタイプの症例に対してはSepta− tion手術を積極的に行っている.従来このタイプの単 心室症に対するSeptation手術後の血行動態について は詳細な報告が見られず,今回は特に人工心室中隔の 動きに注目して分析を試みた. 対 象 1986年7月より1988年2月までの間に当院に於て S.LL.型の左室性単心室症(Van Praagh分類III・A) に対し経心房的アプローチによりSeptation手術を施 行したのは9例であった.このうち,良好な心血管造日小循誌 4(3),1989 357−(41) 表 1 症例 性 手術時 年齢
合併心奇形
既 往 手 術 Septation手術時追加手技 1 男 4 大動脈縮窄症 動脈管開存症 肺動脈絞拒術 動脈管結紮術 心室間孔拡大術 心室間孔狭窄 卵円孔開存症 Subclavian Hap method ペースメーカー植え込み手術 2 男 1 肺動脈弁下狭窄症 卵円孔開存症 (一) 肺動脈弁下筋切除 ペースメーカー植え込み手術 3 男 13 左側房室弁上異常膜様物 1)Blalock・Hanlon手術 左側房室弁上異常膜様物除去 肺動脈絞拒術 ペースメーカー植え込み手術 2)Left Blalock・Taussig手術 4 男 8 肺高血圧症 (一) 心室間孔拡大術 ペースメーカー植え込み手術 5 男 4 肺高血圧症 卵円孔開存症 肺動脈絞拒術 肺動脈絞拒術解除 6 女 6 完全房室ブロック 肺動脈絞拒術 肺動脈絞拒術解除 卵円孔閉鎖 ペースメーカー植え込み手術 ペースメーカー交換 7 男 9 動脈管開存症 三尖弁逆流 肺動脈絞拒術 心室間孔拡大術 肺動脈絞掘術解除 ペースメーカー植え込み手術 表2 術前カテーテル検査データ 症 例 左室容積対正常% 左室駆出率 % 左室拡張末期圧 (mmHg) 肺動脈圧 (mmHg) 肺血管 抵抗値 (単位.m2) 1 524.0% 53.8% 19 22 1.18 2 243.6% 76.7% 7 25 2.16 3 167.4% 542% 7 22 1.96 4 314.8% 62.3% 5 50 3.82 5 319.5% 4L6% 8 24 1.94 6 192.4% 51.3% 11 36 11.10 7 296.2% 66.3% 11 23 1.89 平均 294.0% 58.0% 9.7 28.9 3.44 標準偏差 108.8% 10.6% 4.3 9.7 3.22 影像がえられなかったため分析困難であった2例を除 く7例を対象とした.人工心室中隔の素材にはブタ心 膜とダクロンによるコンポジットパッチを使用した. 人工心室中隔のsuture lineは両房室弁,半月弁,心室 間孔,乳頭筋などの位置関係などによりおおむね自然 に決定されたが,心尖部ではやや右に寄せ,新しい右 室が小さめになるようにした.年齢は1∼13歳平均7 歳2ヵ月で合併心奇形,既往手術,Septation手術施行 時の追加手技を表1に示した.また術前の心カテーテ ル検査データを表2に示した.術前の心室容積は,主 心室部分のみをArea−Length法により計測し,痕跡的 右室部分は含めなかった. 方 法 術後約1ヵ月の時点での心電図及び胸部レントゲン を評価した. 心臓カテーテル検査は手術後28∼65日,平均36日に 施行した.前投薬にMeperidine 2mg/kg Hydorox− idine Pamoate lmg/kgを用いた.左右心室の同時圧 を評価し,また熱希釈法により心係数を求めた.両心 室造影は正面側面の2方向で撮影し,新しい体動脈側 心室(以下左室)は痕跡的右室の部分(痕跡的右室部 分左室容積:図1A)をSimpson法により,術前の主 心室に属していた部分(主心室部分左室容積:図1B) をArea−Length法により計測して合計した(左室総容 積).新しい肺動脈側心室(以下右室)(図1C)はArea− Length法にて計測した(右室容積).なお乳頭筋等に 関する容積の補正は,Area−Length法にて計測した術 前の左室部分に対してはGrahamらの方法により12) Vが15ml以上のとき V’=O.974V−3.1 Vが15ml以下のとき V’=0.733V 同じくSimpson法にて計測した痕跡的右室部分に対 しては13) V’=0.649Vにより行った. (V’:補正後の容積,V:計算された容積). また右室容積と左室総容積の合計を心室総容積,右 室容積と主心室部分左室容積の合計を主心室総容積と した.これらの容積を中沢らの正常値14}と比較した. 左室:BSAi・‘3×72.5 右室:BSA1・43×75.1 超音波断層検査は心臓カテーテル検査の前1週間以 内に施行,画面をVTRに記録しこれを再生しながら 計測した.まず左右の房室弁が同時に短軸像として描 出されるプレーンを求めここよりトランスデューサー を心尖に向かって平行にスキャンし,房室弁弁尖の動 きの見えなくなったプレーンを心室短軸像とした.こ の面において左右心室の断面積及び横径(人工心室中 隔の付着点間を結ぶ方向の最大径),縦径(横径と垂直 な方向の最大径)を拡張末期及び収縮末期において計日本小児循環器学会雑誌 第4巻 第3号 図1 心室容積計測法.左上:左室造影正面像,右上:左室造影側面像,左下:右室 造影正面像,右下:右室造影側面像 A:痕跡的右室部分左室容積,B:主心室部分左室容積, C:右室容積 A+B:左室総容積,B+C:主心室部分総容積, A+B+C:総心室容積(本文参照) 測し,各々につき (拡張末期の計測値一収縮末期の計測値) 拡張末期の計測値 を求め心室断面積縮小率,横径短縮率,縦径短縮率を 計算した.なお左室断面積には痕跡的右室は含めな かった.更に両房室弁の中央を通り両心室,心房が描 出される断面を4腔断面像とし,この断面と心室短軸 面にて人工心室中隔の湾曲度を拡張末期と収縮末期に 求めた.湾曲度は人工心室中隔の付着点間を直線で結 び,この直線から人工心室中隔の最大偏位部までの距 離(S)を付着点間の跡離(L)で除してパーセントで 表し,人工心室中隔が右室側へ凸の時プラス,左室側 へ凸の時マイナスの符号をつけた.心室短軸像におけ る計測法の模式図を示した(図2). なお有意差検定はPaired t−testによった. 結果:
1)機能的予備能力はNYHAによる心不全の重症
度分類により表現すると,1∼2度2例(症例1,6) 他の症例は1度であった. 図2 人工心室中隔湾曲度計測法 2)術後の心電図は検査施行時,正常洞調律4例,1 度房室ブロック1例,完全房室ブロックは乳児期発症 のもの(症例6)1例,および術後発生1例(症例2) であった.この2例は今回の検査時VVIモードにて心 室ペーシング中であった.胸部レソトゲンによる心胸 郭比は58∼78%平均64%であった. 3)心臓カテーテル検査の結果(表3) 心室造影側面像にては収縮期に於て人工心室中隔は平成元年5月1日 359−(43) 表3 カテーテル検査データ 症例番号 体表面積 (m2) 心係数(1/min/m2) 右室容積対正常% 痕跡的右室 部分左室容積 対正常% 主心室部分 左室容積 対正常% 左室総容積 対正常% 1 0.54 3.3 120.8% 59.4% 179.8% 239.1% 2 0.46 4.05 96.2% 29.4% 131.1% 160.4% 3 1.11 4 69.4% 35.8% 75.2% 111.0% 4 0.82 4.81 83.3% 18.3% 138.3% 156.6% 5 0.74 6.4 103.7% 27.7% 95.0% 122.8% 6 ⑪.72 4.07 52.6% 41.9% 108.3% 150.2% 7 0.95 3.49 66.3% 15.7% 98.3% 114.0% 平均 0.76 4.30 84.6% 32.6% 118.0% 150.6% 標準偏差 0.21 0.97 22ユ% 13.8% 322% 40.8% 心室総容積 対正常% 右室容積/ 心室総容積 % 左室総容積/ 総心室容積 % 右室容積 ml 主心室部分 左室容積 ml 主心室総容積 ml 主心室総容積 対正常% 364.3% 34.4% 65.6% 37.6 54.0 91.6 305.0% 260.1% 38.3% 6L7% 23.8 31.3 55.1 230.7% 182.9% 39.3% 60.7% 60.5 63.3 123.8 147.1% 242.9% 35.5% 64.5% 47.1 75.5 122.6 224.6% 2302% 46.7% 53.3% 50.7 44.8 95.5 202.6% 204.7% 26.6% 73.4% 24.7 49.1 73.8 162.8% 182.7% 37.6% 62.4% 46.3 66.2 112.5 167.0% 238.3% 36.9% 63.1% 4L5 54.9 96.4 205.7% 58.2% 5.6% 5.6% 12.6 13.7 23.7 50.2% 右室容積/ 主心室総容積 % 主心室部分 左室容積/ 主心室総容積 % 右室 駆出率% 痕跡的右室 部分左室 駆出率% 主心室部分 左室 駆出率% 左室総容積 駆出率% 右室一回拍 出量係数ml/min/m2 41.0% 59.0% 67.0% 一19.5% 58.1% 38.9% 46.7 43.2% 56.8% 78.2% 64.6% 65.5% 65.3% 40.4 48.9% 51.1% 89.4% 66.6% 43.6% 51.0% 48.7 38.4% 61.6% 90.4% 51.7% 51.9% 51.9% 52.0 53.1% 46.9% 80.3% 60.9% 29.4% 36.5% 55.0 33.5% 66.5% 70.4% 43.9% 29.9% 33.8% 24.2 41.2% 58.8% 58.1% 53.8% 48.2% 49.0% 28.3 42.7% 57.3% 76.3% 46.0% 46.7% 46.6% 42.2 6.0% 6.0% 11.0% 27.7% 12.6% 102% 11.0 左室一回拍 出量係数 ml/min/m2 右室最大 収縮期圧
mmHg
左室最大 収縮期圧mmHg
右室/左室 最大収縮期 圧比 右室 拡張末期圧 (mmHg) 左室 拡張末期圧 (㎜Hg) 右室拡張末期 圧一左室拡張 末期圧 (㎜Hg) 51.7 32 112 0.29 13 10 3 54.4 37 95 0.39 10 7 3 42.9 75 110 0.68 15 11 4 54.1 41 135 0.30 17 6 11 28.5 37 100 0.37 10 7 3 32.0 64 113 0.57 15 11 4 39.6 56 100 0.56 13 15 一2 43.3 48.9 109.3 0.45 13.3 9.6 3.7 9.8 15.1 12.3 0.14 2.4 2.9 3.5LVG
RVG
DIASTOLE
SYSTOLE
T.H. 図3 心室造影側面図.左上:左室造影拡張期,右上: 左室造影収縮期,左ド:右宝造影拡張期,右下:右 室造影収縮期 著明に右室へ突出する運動が認められた(図3).心係 数は4.3+1.01/min/m2(平均±標準偏差,以下同様) であった,心室総容積は対正常左室の238.3±58.2%, 主心室総容積は術前が294.0±108.8%であったのに対 し205.7±50.2%であった.各心室の拡張末期容積は右 室が対右室正常の84.6±22.1%,左室は主心室部分が 118.0±32.2%,痕跡的右室部分が32.6±13.8%で左室 総容積は対左室正常の150.6±40.8%であった.右室容 積,左室総容積の総心室容積に対する比率は各lt 37± 6%,63±6%と左室容積が有意に大きく分割されて いた(p<0.01).また主心室総容積に対する右室容積 と主心室部分左室容積の比率は43±6対57±6であっ た.駆出率は右室が76.3±11,0%,痕跡的右室を含め た左室が46.6±10.2%で右室が大きく(p〈0.01)この 結果1回拍出量係数は右室が42.2±11.Oml/m2左室が 43.3±9.8ml/m2であった(図4).なお,図4および以 下図5,9でopen circleで示した症例7は7例中最も 右室駆出率の低かった症例である. 右室対左室の最大収縮期圧比は0.45±O.14,最小 0.29,最大0.68で全例右室圧が低かった(図5).一方 拡張期は症例5の左室右室同時圧に示したように症例 1∼6ではその全般にわたり右室圧が高かった(図 %Normal 200 100 RV LV 100 50 RV LV mVM2 100 50 RV LV 図4 左:対正常心室容積,中央:駆出率,右:一回 拍出量係数 RV:右室, LV:左室総容積 症例7(Open circle)は最も右室駆出率が低かった. (本文参照)mmHg
100 50 0 P<OO 1RV LV
mmHg
15 10 5 P<OO5RV LV
図5 左:最大収縮期圧,右:拡張末期圧 症例7(Open circle)のみ左室の拡張末期圧が右室の それより高くなっている.(本文参照) 6).拡張期圧の代表として左右心室の拡張末期圧を比 較すると,右室拡張末期圧は13.3±2.4mmHg,左室拡 張末期圧は9.6±2.9mmHgと有意に右室が高く(p< 0.05),その差は平均で3.7mmHgであった.なお症例 7のみ右室拡張末期圧が13mmHg,左室拡張末期圧が15mmHgで後者が2mmHg高かった(図5).
房室弁逆流は症例1,7において左側の三尖弁に軽 度(Seller’s分類1度)を認められた.有意な心内短絡 を認めた症例はなかった. 2)超音波断層検査の結果(表4) 人工心室中隔は輝度の強いエコーとして全例明瞭に平成元年5.月1日 361 (45) 表4 超音波検査データ 人工心室中隔湾曲度 症例番号 心室短軸像 4腔断面像 右室断面積縮小率% 右室縦径短縮率% 右室横径短縮率% 左室断面積縮小率% 左室縦径短縮率% 短縮率%左室横径 収縮末期 拡張末期 収縮末期 拡張末期 − n乙 3 4 5 ρ0 7 26.4% 23.3% 22.2% 40.9% 20.7% 20.0% 29.6% 15.4% −12.5% −6.9% −2.8% 3.2% −12.5% 4.6% 13.3% 22.1% 10.9% 32.4% 7.7% 16.7% 22.9% 一17.1% −5.3% −8.9% −9.0% −3.3% −10.3% 2.7% 75.7% 82.8% 63.9% 74.0% 43.8% 73.1% 29.5% 57.1% 71.1% 39.1% 68.8% 37.5% 71.7% 22.2% 31.6% 40.4% 30.4% 19.4% 22.8% 14.9% 9.1% 23.0% 14.3% 38.8% 20.2% 15.3% 19.3% 15.6% 一8.1% −10.0% 0.0% −5.4% −9.8% −17.9% −5.9% 18.8% 22.0% 39.3% 27.1% 212% 20.3% 18.2% 平均 26.2% 一1.6% 18.0% 一7.3% 63.3% 52.5% 24.1% 20.9% 一8.2% 23.8% 標準偏差 6.8% 9.4% 7.8% 5.7% 18.0% 182% 10.0% 7.9% 5.1% 6.9% 100一 50・ 0・ mmHg 図6 左室右室同時圧 S.」. 観察され,心室短軸像にても4腔断面像にても収縮期 には著明に右室側へ突出し拡張期にはほぼ平面化する 大きな往復運動が認められた(図7). 各症例の収縮末期および拡張末期における人工心室 中隔の湾曲度を図8に示した.収縮末期には心室短軸 像にて+26.2±6.8%,4腔断面像にて+18.0±7.8% と全例で著しく右室側へ凸であった.一方拡張末期に 於いては,4腔断面像で6例,心室短軸像にて4例が マイナス即ち左室側へ凸であり,4腔断面像にて一 7.3±5.7%,心室短軸像にて一1.6±9.4%であった. 症例7のみいずれの断面でも拡張末期の人工心室中隔 が右室側へ凸であった. 心室短軸像における右室断面積の縮小率は63.3± 18.0%と著明に大きかったが,横径と縦径の短縮率を 比較すると前者が24.1±10.0%であったのに対し,後 図7 断層エコー図(症例4).左上:4腔断面像拡張 末期,右上:4腔断面像収縮末期,左下:心室短軸 像拡張末期,右下:心室短軸像収縮末期 Case t 2 3 4 5 6 7 Short Axis % CO 20 0−20 ●Systob
4Chamber View
% 40 20 0 −20 oDiasto㎏ 図8 人工心室中隔湾曲度.Short Axis:心室短軸 像,4Chamber View:4腔断面像1諸 50 P<001 1ぱ 50 0 1ぱ 50 0
li王;
o 一20 −20 RV LV RV LV RV LV 図9 左:断面積縮小率,中央:縦径短縮率,右:横 径短縮率 症例7(Open circle)は右室の断面積縮小率,縦径 縮小率とも最も小さかった.(本文参照) 者が52.5±18.2%と大きかった.一方左室断面積縮小 率は20.9±7.9%と小さく,横径短縮率は23.8±6.9% とほぼ右室と同様であったが縦径短縮率は一8.2± 5.1%と収縮期に逆に延長していた. なお症例7は右室の縦径の短縮率,断面積縮小率と も7例中最も低かった(図9). 収縮期の右室左室圧比と超音波断層心室短軸像にお ける収縮期の湾曲度,右室駆出率との間には相関はみ られなかった. 考 案 単心室症に対する血行動態的修復手術としてはフォ ンタン型手術1)2)とSeptation手術3)”6)があるがフォン タン型手術の手術適応は厳格であり,近年その適応は 拡大されてはいるものの15),肺血管床に関する条件即 ち肺動脈圧および肺血管抵抗値の低値であることは必 須の条件でありこの点でフォンタン型手術の適応外と なる症例も多い.また術後の運動に対する反応の低下 を指摘する報告もあり16)その長期予後が必ずしも良好 とはいえない17}.一方Septation手術の多数例の報告 はまだ少なく,その成績も死亡率50%4},65%5),44%6), など全体としての成績はまだ不良である.しかし,肺 血管床の条件からみた手術適応はフォンタン型手術に 比較し拡大が可能であり,また肺循環に対しても Pumping chamberがあるという意味でより生理的な 修復と考えられ,その意義は大きい.特に単心室症の 38%11)を占める(S.L.L)型の左室性単心室症(Van Praagh分類III・A)は房室弁と大血管の位置関係か ら,ほぼ平面的なパッチによる心室の分割が可能であ る9)10)ことからそのよい適応と考えられる.このタイプの単心室症に対するSeptation手術に限っては
Feldtらは生存率82%5), Mackay6}もこのタイプでか つ心室間孔狭窄のないものに於いては死亡率18%と良好な成績の報告も見られる.当院ではこのVan
Praagh分類III・A型の左室性単心室症に対し計11例 のSeptation手術を施行しており初期の2例について はすでに報告されているが9)今回は86年7月から88年 2月の間に経心房的アプローチにより手術を施行した 9例のうち,良好な術後血管造影が得られず分析が困 難であった2例を除いた7例を対象とした.なおこの 9例は手術後5ヵ月∼24ヵ月(平均12ヵ月)経過した 現在全例外来にて経過観察中である. Septation手術後の血行動態についての分析はきわめて少なくShimazakiらのVan Praagh分類のCI
及びC−II型の単心室症各1例に対する手術後につい ての報告18)があるのみで,上述のようにSeptation手 術の最も良い適応のひとつであるIII−A型の単心室症 の術後についての詳細な検討は見あたらない.そこで 今回は特に人工心室中隔の動きに注目して, III−A型単 心室症に対するSeptation手術後の血行動態について 検討を行った.なお人工中隔の動きに関しては,それ が収縮期に著しく右室側へ突出することについては超 音波MモードにてSewardら19), Dotyらが4),断層エ コーにて中埜らが2°)指摘しているが血行動態との関連 については分析していない.またShimazakiら18)はシ ネアンギオによる同様の観察からそれが右室の駆出を 強化するであろうと推測しているがこれはC型単心 室症に対する術後の2例についてである. 左室性単心室症の心室容積は,その主心室部分全体 の形態が正常左室に近似していると考えられることよ り,Area・Length法によってシネによる計測が可能で ある21).Septaion術後の心室形態は複雑であるため, 今回は術前の主心室(左室)に属していた部分(新し い右室及び,主心室部分左室)をArea−Length法によ り,また痕跡的右室部分は正常右室に準じSimpson法 によって計測し,新しい左室は主心室部分と痕跡的右 室部分を合計するという方法を試みた. 心係数の4.31/min/m2は当院におけるフォンタソ手 術後の三尖弁閉鎖症群の2.451/in・m2,単心室症群の 2.751/min・m2と比較し非常に良好であった22). 今回のシネアンギオ及び超音波断層による観察によ り,人工心室中隔は収縮期には著明に右室側へ突出す ることが認められた.これは正常心室中隔の収縮期に 於ける運動と方向が全く逆である.右室短軸方向の断 面積縮小率は左室のそれに比べ著明に大きかったが,平成元年5月1日 更に中隔の付着点間を結ぶ方向(横径)とこれと垂直 な方向(縦径)一即ち人工心室中隔の運動する方向一の 短縮率を比較したところ,縦径の縮小が著しかった. このことからこの運動が収縮期の右室容積の減少に大 きく関与していることは明かである.この運動の大き さには拡張期の人工心室中隔の形態も寄与していると 考えられる.即ち超音波断層にて拡張末期の人工心室 中隔の形態を観察すると症例7のみ4腔断面像でも心 室短軸像でも右室側へ凸であったが,他の症例は4腔 断面像では全例,心室短軸像でも4例が収縮期とは逆 に左室側へ凸であった.つまり人工心室中隔は拡張期 には左室側へわずかに凸,収縮期には著明に右室側へ 凸になるという往復運動をしておりこの拡張期の形態 は人工心室中隔の運動をより大きくし,右室縦径の短 縮率及び駆出率を高くする要素として関与していると 考えられる.実際拡張期にも人工心室中隔が右室側へ 凸であった症例7は右室縦径短縮率が最も小さく,右 室断面積縮小率,右室駆出率とも7例中最低であった. また中隔の収縮期の湾曲度と右室駆出率の間に相関の なかったことも拡張期の中隔形態の関与を示唆する. 他方この人工心室中隔の運動は左室に関してはその 縦径が収縮期に逆に延長していたことから理解される 様に,その駆出率を低下させる要因となる.また新し い左室の約5分の1の容積を占める痕跡的右室は,時 相が主心室よりやや遅れ,その収縮も正常左室より劣 ると考えられる.このため新しい左室が良好な挙動を 保持するには左室心筋収縮力の良いことが必要であ る.今回対象症例では術前の駆出率は平均58±11%と 良好であり,また拡張末期圧も症例1を除きほぼ正常 であった.なお症例1は術前の著しい心室間孔狭窄の ため(圧差:85mmHg)心室容積も著明に大きくこの 点で例外的な症例であった. 低い駆出率ながら新しい左室が正常の一回拍出量を 保つためには正常左室容積より大きい必要がある.ま た今回の観察から,特異な人工心室中隔の運動により 術後の駆出率は左室に比較し明かに右室が大きくなる ため,左右心室が等しい心拍出量を保つ為には左室の 拡張末期容積が右室に比較し大きくなっていなけれぽ ならないと考えられた.今回の計測では,術前の主心 室総容積が対正常左室の294±109%であったが,術後 は206±50%とほぼ正常左室の2倍に縮小していた(心 室総容積は238%).しかし左室側を大きくしたSepta− tionの結果,左室総容積は正常左室容積の151%と大 きく,駆出率が47%と正常値より低下しているにもか 363−(47) かわらず1回拍出量係数は正常に保たれていた.また 右室の駆出率は77%と左室のそれに比較し著明に大き くなっていたが,容積比は右室対左室が37対63と左室 が大きくなっているため,左右心室の1回拍出量係数 はよく一致しており良好なバランスをとりうる分割で あったことが示された.Van Praagh分類III−A型の 症例における心室の分割比についてのシネアンギオか らの検討の報告は従来見あたらない.Mac Kayらの報 告6)では外科医の術中の推測から左室容積に対する右 室容積の比率は0.4∼1.0であったとしている.すなわ ち右室は左室と同じかまたはそれより小さく分割して いる.またMcGoon3)は右室が小さめとしているが数 量的な分析はしていない.いっぽうSekiら23)24)は犬を 用いた実験をもとに左右心室の容積比はほぼ正常つま りほぼ等しいものが良いとし,人工心室中隔の位置は 左室の自由壁の長さが心室外周の35%と50%の中間に なるように造設するのが適切であるとし,すなわち心 室全長の等分点よりも8%左室側へ寄せるのがよいと している.しかし今回の観察から,右室の駆出率の方 が左室のこれより大きくなることは明かであり左右心 室容積を等しく分割することは不適切であると考えら れた.今回の症例のごとく右室対左室総容積が37対63, すなわち約4対6の分割は今回の分析結果からバラン スの良い分割比といえる.なおこの分割比は左室容積 に痕跡的右室を含めたものであるが,痕跡的右室の容 積は平均で正常左室の33%であり主心室のみに関する 分割比は右室対左室が43対57であった.この容積比に ても右室の駆出率が77%と非常に大きいことより考察 すると,更に右室容積の比率を小さくすると今回の対 象症例と等しい一回拍出量係数を保つ為にはさらに右 室の駆出率が大きくなる必要があり,不適当と思われ る.ただし実際にはSeptation operationのsuture lineは両房室弁,乳頭筋,心室間孔とtrabecular se− ptumの関係,刺激伝導系などの走行により予め決定 されているものといわれ,調節可能であるのは心尖部 付近のみのようである3)6). 人工心室中隔がこのような運動をするためには両心 室の圧関係が重要である.収縮期に右室側へ突出する ためには右室圧の方が低くなくてはならないが,対象
例は全例右室圧が低く右室左室収縮期圧比は
O.28 一一 O.68であった.この値と右室駆出率の間には特 に相関は見られなかったが,これは術後右室圧が左室 圧のおよそ70%以下であれぽ良好な血行動態を保ちう ることを示す.しかし仮に,著しい肺高血圧症や肺動脈狭窄症の遺残により右室圧が左室圧に等しいかまた はそれを越えた場合は血行動態が著しく障害されるこ とが予想される. 一方拡張期に於ては前述のように右室圧が左室圧よ り高いことが右室の駆出にとって有利と考えられる. この意味で左室の拡張期圧を上昇させる左側房室弁逆 流はこの手術の術後に於て不利な要因である.よって 左側房室弁逆流に対しては,十分な注意が必要であり, その著しい症例に対しては弁形成術や弁置換術が必要 と考えられる.また心室機能の温存のため心室切開を 避けた径心房的アプローチが望ましい. 肺血管床の条件についてはとくにフォンタン手術と 対比されるが,対象例の術前の平均肺動脈圧は全例 フォンタン手術適応の上限8)より著しく高く,また肺 血管抵抗値も2単位・m2以上はリスクが高いとされる が13),7例中3例が2単位・m2を越えていた.このよう にSeptation手術はフォソタン型手術に比較し,特に 肺血管床に関して手術適応が著しく広いと考えられ, この手術の有意義である点の1つである.従って肺動 脈狭窄症を合併しないかまたは軽く,肺高血圧症の存 在する症例では乳児期に肺動脈絞拒術を施行し,将来 その肺血管抵抗値がフォンタソ手術の適応を越えてい る場合でも,Septation手術であれぽ施行しうる可能 性もある. 左室性単心室症に対するSeptation手術後の長期予 後および運動能力等についてはまだ報告がなく今後の 検討が待たれる.なお人工心室中隔の運動が将来どう 変化するかについても興味深いが症例2および6につ いて手術後約1年での超音波検査による観察ではこの 運動は退院時と全く同様であった. 結 語 S.L.L型左室性単心室症(Van Praagh III・A)に対 するSeptation手術後の7例についてその血行動態に つき人工心室中隔の動きを中心として分析した.人工 心室中隔は収縮期には著明に新しい右室側へ突出し, 拡張期には軽度左室側へ突出する往復運動をしており これは収縮期拡張期を通じて両心室の圧バラソスを反 映したものであった.この運動は右室の駆出率を著明 に大きくすることに関与しているが,逆に左室の駆出 率を小さくするため,両心室のバランスすなわち1回 拍出量が等しく保たれるためには左室が大きく分割さ れていなければならないことが判明した.今回の対象 例では右室と左室の容積比は37対63と左室が大きく分 割されており,その血行動態は非常に良好であった. References 1)Gale, A.W., Danielson, G.K., McGoon, D℃. and Mair, DD.:Modified Fontan operation for univentricular heart and complicated congeni− ta川esions. J. Thorac. Cardiovasc. Surg.,78: 831,1979. 2)Marcelletti, C., Mazzera, E, Olthof, H., Sebel, P.S., Duren, D.R., Losekoot, T.G. and Becker, A.E.:Fontan’s operation:An expanded Hori・ zon。 J. Thorac. Cardiovasc. Surg.,80:764,1980. 3)McGoon, D.C., Danielson, G.K., Ritter, D.G., Wallace, RB., Malone, JD. and Marceletti, C.: Correction of the univentricular heart having two at「iovent「icula「vavles. J. Thorac. Car. diovasc. Surg.,74:219,1977. 4)Doty, D.B., Shieken, RM. and Lauer, R.M.: Septation of the univentricular heart. J. Thor− ac. Cardiovasc. Surg.,78:423,1979. 5)Feldt, R.H., Mair, DD., Danielson, G.K., Wal・ lace, R.B. and McGoon, D.C.:Current status of the septation procedure for univentricular heart, J. Thorac. Cardiovasc. Surg.,82:93,1981. 6)McKay, R., Pacifico, AD., Blackstone, EH., Kirklin, J.W。, Bargeron, LM.:Septation of the univentrictular heart with left anterior subaortic outlet chamber. J. Thorac. Car− diovasc. Surg.,84:77,1982. 7)Stefanelli, G., Kirklin, J.W., Nafte1, D.C., Black− stone, E.H., Pacifico, A.D., Kirklin, J.K., Soto Benigno and Bargeron, LM.:Early and inter−mediate・teml(10 year)results of surgery for univentricular atrioventricular connection (“Single Ventricle”). Am. J. CardioL,54:811, 1984. 8)Choussat, A., Fontan, F., Besse, P., Vallit, F., Chauve, A. and Brecaud, H.:Selection criter・ ia for Fontan’s procedure: Pediatric Car− diology, R.H. Anderson, EA. Shineboume, eds., Edinburgh,1978, Churchill Livingston, p.559 −566. 9)Arai, T., Ando, M. Takao, A. and Sakakibara, S、二Intracardiac repair for single or common ventricle:Creation of a straight arti丘cial se− ptum. Bulletin Heart Institute Japan,14:81, 1972. 10)Ando, M.:Anatomic types of single or com・ mon ventricle in Japanese. J. Jpn. Assoc. Thor− ac. Surg.,23二964,1975. 11)Van Praagh, R.V., Ongley, P.A. and Swan, H.J. C、:Anatomic types of single or common ven− tricle in man. Morphologic and geometric aspects of 60 necropsied cases. Am. J. Cardiol.,
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