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博士論文審査報告書

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Academic year: 2022

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(1)早稲田大学大学院 基幹理工学研究科. 博士論文審査報告書. 論. 文. 題. 目. 表面マイクロパターンを用いた 神経細胞の形状および機能制御 Geometrical and functional operation of a neuron using micropatterned surfaces. 申. 請. 者. 河野 翔 Sho KONO 電子物理システム学専攻. 分子ナノ工学研究. 2018 年 2 月.

(2) 半導体素子製造プロセスの1つとして進展してきたリソグラフィ技術は、 今日、固体基板表面の加工だけでなく、生体分子や細胞を対象としたパター ン形成にも活用されるようになった。そこでは、従来のフォトリソグラフィ に 求 め ら れ て き た 感 光 性 だ け で な く 、 熱 や pH に 対 す る 感 応 性 を 有 す る ポ リ マー膜や単分子膜も用いられる。生体分子や細胞に対する親和性を有し、な お か つ 培 養 液 中 で パ タ ー ン 形 成 を 実 行 で き る 分 子 も 開 発 さ れ て い る 。1  m 以 下の精度が達成され、それにより単一細胞レベルで細胞接着位置を規定し、 細胞の伸展範囲や分裂方向を制御できるだけでなく、神経細胞の突起伸長方 向や本数といった細胞部位ごとの形状制御も可能となっている。特に脳神経 系では、個々の神経細胞を情報処理素子として見なすことができ、半導体デ バイス製造におけるリソグラフィの役割からも類推されるように、近年、実 神経細胞を素子とする神経細胞回路の構築も試みられている。 上記の背景の下、申請者は、単一細胞レベルでの神経細胞の接着位置や神 経突起の伸長経路の制御により、神経細胞回路を分散培養系で構築するため の要素技術開発に取り組んだ。本論文は、申請者を中心として開発された 3 つ の 要 素 技 術 、 (1) 細 胞 ダ メ ー ジ を 軽 減 で き る 液 中 細 胞 パ タ ー ニ ン グ 法 、 (2) 単一神経細胞をパターン上で長期培養するための細胞形状制御、および、 (3) マ イ ク ロ パ タ ー ン を 用 い た 興 奮 性 / 抑 制 性 判 別 法 、 に つ い て 論 じ た も の であり、5 章で構成されている。 第 1 章「序論」では、細胞パターニング技術に関する先行研究の長短所を まとめ、それらを神経細胞に適用する際の課題について論じている。特に神 経細胞の脆弱性と、単一細胞レベルでの神経細胞パターニングの必要性につ いて論じており、神経細胞回路の構築に向けて必要となる要素技術を挙げな がら研究目的を明らかにしている。 第 2 章「 可視 光応 答 性酸 化チ タン の 光触媒 作用 を活 用 した液 中細 胞パ タ ー 二ング法の開発」では、パターン形成時に細胞に導入されるダメージ軽減を 目的として、可視光応答性酸化チタンの光触媒能を活用した液中細胞パター ニング法の開発に関して述べている。細胞接着を時空間的に制御するために は、細胞が接着する足場を細胞培養環境下(培養液中)で改質する必要があ る。これを実現できる方法の1つとして、酸化チタンの光触媒能を活用した 液中細胞パターニング法が提案されていた。酸化チタンは化学的に安定かつ 透明な材料で、生体適合性を有し、細胞培養の足場材料に適する。しかしな が ら 、 こ の 方 法 は 波 長 360-370 nm の 紫 外 光 を 照 射 す る こ と を 前 提 と し て お り、照射時に細胞にダメージが導入されることが問題となっていた。申請者 は、異なるスパッタ条件の下で石英基板表面に酸化チタン薄膜を蒸着し、結 晶 構 造 お よ び 光 触 媒 能 を 実 験 的 に 評 価 し た 。ま た 、波 長 4 2 0 ± 2 0 n m の 可 視 光 の照射量に応じて、酸化チタン薄膜表面に成膜したオクタデシルシラン単分 子膜(疎水性かつ細胞非接着性)が分解される様子を水に対する接触角変化 として計測した。X 線解析、吸光度測定、および水に対する接触角の測定結 果 か ら 、酸 素 ガ ス を 流 入 せ ず に 6 4 0 ℃ で 成 膜 し た 酸 化 チ タ ン 薄 膜 が 酸 素 欠 損 を含むルチル構造をとり、可視光応答性を示すことを確認している。また、 コ ラ ー ゲ ン を 含 む 培 養 液 中 で 約 1 kJ cm-1 の 可 視 光 ( 波 長 420±20 nm) を 照 射すると、照射領域のオクタデシルシラン単分子膜がコラーゲンと置換する こ と 、 そ し て 光 照 射 部 位 の み に PC12 細 胞 ( ラ ッ ト 副 腎 褐 色 細 胞 腫 ) が 接 着 す る こ と を 示 し て い る 。こ の よ う に し て 表 面 に 接 着 し た 細 胞 集 団 に 隣 接 し て 、 1.

(3) さ ら に 約 1 kJ cm-1 の 可 視 光 を 培 養 液 中 で 照 射 し 、 培 養 を 継 続 す る と 、 新 た な照射領域に向かって細胞が遊走し増殖する結果も得ている。最後に、酸化 ス ト レ ス マ ー カ ー CellROX を 用 い て 、 PC12 細 胞 に 導 入 さ れ る 酸 化 ス ト レ ス を定量的に評価し、可視光応答性酸化チタンを用いた液中細胞パターニング において導入される酸化ストレスが、紫外光照射による場合に比して十分に 低く抑えられることを示し、可視光応答性酸化チタンの光触媒作用を活用し た液中細胞パターニングが高い有用性を有すると結論している。 第 3 章「単一神経細胞の長期培養に向けた細胞部位の形状制御」では、軸 索と樹状突起の伸長方向を規定したパターン上で単一神経細胞を長期的に培 養するための手法について述べている。細胞体を接着させるための円形パタ ー ン( 直 径 1 5  m )を 中 心 に 、放 射 状 に 伸 び た 4 本 の ラ イ ン パ タ ー ン( 1 0 0  m ×1 本 , 20 m×3 本 ) を 持 つ マ イ ク ロ パ タ ー ン 上 で 単 一 神 経 細 胞 ( ラ ッ ト 海馬細胞)を培養すると、ラインパターンに沿って神経突起が伸長し、さら に 非 対 称 的 に 長 い ( 100 m 長 ) の 1 本 の ラ イ ン パ タ ー ン 上 に 伸 長 し た 突 起 が 軸 索 に 分 化 し 、 残 り の 3 本 の 短 い ラ イ ン パ タ ー ン 上 ( 20 m 長 ) に 伸 長 し た突起は樹状突起となる ことが報告されていた 。この実験事実と 第 2 章で論 じられた液中パターニング法とを融合すると、細胞培養環境下において軸索 と樹状突起とを非標識で判別し、相互に接続することができるため、申請者 は、この方法が特定の接続構造を有する神経細胞回路を構成する手法として 活用できることを示唆している。一方、申請者は、このマイクロパターンを 用 い て 単 一 神 経 細 胞 を 培 養 す る と 、 培 養 7 日 目 の 生 存 率 が 13.3%に ま で 落 ち 込むことを予備実験の段階で把握していた。申請者は、パターンの形状を改 良することにより、マイクロパターン上の単一神経細胞の生存率を向上でき ると考え、細胞体接着部位、軸索伸長経路、および、樹状突起伸長経路のそ れぞれの寸法について検討した。その結果、軸索伸長経路(1番長いライン パターン)の長さを十分に長くし、なおかつ細胞体が接着する中央の円形パ タ ー ン を 直 径 2 5  m に し た マ イ ク ロ パ タ ー ン 上 で 培 養 す る と 、生 存 率 を 向 上 させられることを実験的に明らかにした。加えて、この結果は海馬神経細胞 だけでなく、大脳皮質神経細胞にも適用できることを実験的に示した。 第 4 章「 表面 マイ クロパ ター ンを 用 いた抑 制性 /興 奮 性神経 細胞 の非 標 識 判別」では、第 3 章でマイクロパターンを活用することにより、生きた状態 の神経細胞の細胞種を非標識で判別できる新手法について述べている。ラッ ト大脳皮質の主要な神経回路はグルタミン酸作動性の興奮性神経細胞と GABA 作 動 性 の 抑 制 性 神 経 細 胞 で 構 成 さ れ る 。 興 奮 性 細 胞 と 抑 制 性 細 胞 は そ れぞれ特異的な遺伝子発現パターンを有するため、その違いに基づいて両者 を判別できるが、そのためには免疫染色や遺伝子導入といった化学固定や蛍 光標識を前提とする手法に頼らざるを得なかった。申請者は、興奮性細胞と 抑制性細胞とでは軸索伸長速度に差があり、これを興奮性細胞と抑制性細胞 の判別の基準として採用できること、さらに、第 3 章で構築した非対称マイ クロパターン上で単一神経細胞を培養すると、最も長いラインに沿って伸長 した突起が軸索に分化することを根拠にして、両者を組み合わせた新しい判 別法の検討を行った。すなわち、マイクロパターン上で神経細胞を培養し、 一番長いラインパターンに沿って伸長する軸索の伸長速度を計測することで、 その神経細胞が興奮性または抑制性細胞のどちらであるかを判別できるかを 実 験 的 に 検 証 し た 。 そ の 結 果 、 培 養 6 日 目 に お け る 軸 索 長 に 対 し て 11 0  m 2.

(4) をしきい値と設定し、それより長い軸索を持つ細胞を興奮性、短い軸索を持 つ 細 胞 を 抑 制 性 と 判 別 す る と 、 98%の 確 率 で 興 奮 性 / 抑 制 性 細 胞 の 判 別 が 可 能であることを見出した。マイクロパターンが形成されていない一様な表面 で培養された神経細胞では、培養日数の経過に応じて軸索長がばらつき、興 奮性/抑制性判別のためのしきい値が設定できないことも実験的に示してい る。申請者はこの結果から、マイクロパターン上では神経突起の伸長方向と 本数が予め規定されるため、細胞ごとの極性形成のタイミングがある一定の 範囲に収まり、その結果、明瞭なしきい値の下で興奮性/抑制性細胞の判別 が可能になったと結論している。 第 5 章「結論」では、以上の内容をまとめて結論が述べられ、さらに今後 の展望についても述べられている。 以上のように、申請者は、単一細胞レベルでの細胞パターニングによる神 経細胞回路構築のための 3 つの要素技術を構築した。本論文では、一貫して 神経細胞への適用を念頭に手法が構築されているが、第 2 章で論じられた液 中細胞パターニング法は細胞へのダメージを低減できることから汎用性の高 い方法論となっており、例えば、異種細胞界面の構築と解析に応用展開でき る。ま た、第 3 章 および 第 4 章 で論 じられ た 興 奮性 / 抑制性 神経 細胞 の 非標 識判別法は、細胞を生かした状態で、なおかつ非標識で判別できる新しい方 法であるのに加え、マイクロパターンが細胞分化のタイミングを一定に揃え る役割を有するという新たな知見も示している。よって、本論文を博士(工 学)の学位論文として価値あるものと認める。 審査分科会開催年月 審査委員 主査. 早稲田大学教授. 博士(工学)早稲田大学 谷井孝至. 副査. 早稲田大学教授. 工学博士(早稲田大学) 川原田洋. 副査. 早稲田大学教授. 工学博士(東北大学) 庄子習一. 副査. 早稲田大学教授(任期付) 博士(薬学)東邦大学 谷口彰良. 3. 2018 年 2 月.

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参照

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