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博士論文審査報告書

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Academic year: 2022

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(1)早稲田大学大学院理工学研究科. 博士論文審査報告書. 論. 文. 題. 目. 臨床化学検査における 外部精度管理調査に関する研究 A Study on Control Survey in Clinical Chemistry. 申. 請. 者. 石井 成 Naru Ishii 機械工学専攻 経営システム工学専門分野 クオリティマネジメント研究. 2005 年 12 月.

(2) 臨床化学検査とは,健康および疾患時の動態を化学的に解明するため,血 液に代表される人間の体液中の化学成分を測定し分析することである.測定 される値には無視できない誤差が付随するため,測定の精度管理が重要な課 題 と な っ て い る .精 度 管 理 の 目 的 は ,( 1 ) 日 常 検 査 で の 誤 差 の 大 き さ と 種 類 を 知 り , (2) そ の 誤 差 が 臨 床 的 に 許 容 で き る も の で あ る か を 判 断 し , (3) 許 容 で き な い も の で あ れ ば 原 因 を 追 及 し ,( 4 ) そ の 原 因 を 日 常 の 検 査 の 中 か ら 排 除 し て 精 度 を 改 善 し ,( 5 ) 誤 差 が 除 去 で き な い も の で あ れ ば ,よ り 精 度 の 高 い 分 析 技 術 の 導 入 な ど を 検 討 し ,( 6 ) 日 常 検 査 の 精 度 を 一 定 水 準 に 保 つ ,の 6 点 で あ る. 精度管理には,大きく分けて内部精度管理と外部精度管理がある.内部精 度管理とは,臨床化学検査を実施している各施設が独自に行っている日々の 精度管理のことである.一方,外部精度管理とは各施設の測定能力を比較・ 評 価 す る た め の 調 査 で ,一 般 に 以 下 の よ う な 手 順 で 行 わ れ る .( 1 ) 測 定 対 象 と な る 試 料 を 用 意 し ,参 加 施 設 に 配 布 す る .(2)各 施 設 に お い て ,検 査 項 目 ご と に 日 常 と 同 様 の 方 法 に よ っ て 試 料 濃 度 の 測 定 を 行 う .( 3 ) 測 定 値 を 回 収 し ,集 計 す る . (4)各 施 設 の 測 定 能 力 を 評 価 す る . 日本医師会,日本臨床衛生検査技師会などでは,精度向上を目的として臨 床化学検査を実施している施設を対象とした外部精度管理調査を行っている. この調査では調査主催者が同一試料を多数の施設に配布し,濃度の測定値を 各施設から受け取り,各種の分析によって参加施設を評価している.日本医 師 会 で は こ の よ う な 調 査 を 毎 年 1 回 ず つ 行 い , 約 2300 施 設 が こ れ に 参 加 し ている.各施設の測定能力は,測定値の平均値と標準偏差をもとに評価され ている.しかしこの平均値は真値とは限らず,また真値を知る方法は存在し ない.臨床化学検査における精度管理においては,この真値が未知であると いう問題が常につきまとう.測定技術の進歩によって従来よりも真値に近い 値を測定することは可能となるが,誤差を根絶することは不可能であるし, 新しい測定方法に対応するためのコストもかかる.また測定方法が施設によ って異なる検査項目もあり,方法によって測定値に偏りが生じることや,病 態判別の指標である基準範囲が異なる場合もある. この外部精度管理調査において施設間差を把握し,分析結果に基づいて各 施設が測定の改善を行って施設間差が改善されることが望ましい.しかし外 部精度管理調査にはさまざまな問題が存在するため,施設間差を正確に把握 することは困難となっている. 本研究では,臨床化学検査の外部精度管理調査に関する問題,特に調査で 配布する試料の問題について論じている. 第一に,調査において測定対象として用意される,人工的に合成された血 清である管理血清の性状に関する問題を扱っている.人間から採取された血 清である生血清を大量に用意することはできないため,外部精度管理調査で は管理血清を用いて調査を行う.しかし各検査施設では,人間から採取され 1.

(3) た血清である生血清を日常的に測定しており,測定のための設備も生血清を 対象として設定されている.管理血清は人間や動物の血清に濃度調整のため の成分を添加して作成されるために生血清と異なる性状を持つ場合があり, 試薬との反応など測定に影響が及んで本来の測定能力が発揮されない恐れが ある. このため管理血清には,本来の測定対象である人間から採血された生血清 と 性 状 が 類 似 し て い る こ と が 要 求 さ れ る .し か し ,性 状 と 一 口 に 言 っ て も 様 々 な物理,化学的特性が考えられ,それらを網羅的に調べるのは困難である. そこで本研究では,統計的方法を用いて管理血清の性状を効率よく評価する 方法を提案している. 第二に,各施設に試料を配布する過程において試料が変質してしまう問題 を扱っている.外部精度管理調査では全参加施設に同一の試料を配布する必 要があるが,その含有成分には不安定なものが多い.また酸化,加水分解, あるいは自己分解などによる濃度の低下や酵素の失活,代謝変化などによっ て含有成分濃度が変化してしまうことが確認されている.試料を配付する際 には凍結保存処理を施すなどその保存には配慮がなされているためにこのよ うな変質の発生はまれであるが,調査対象の施設が多いため毎年数件は発生 していると考えられる.変質した試料を受け取った施設は,正しく測定を行 っても本来の濃度と異なる測定値を報告するために測定能力を不当に評価さ れてしまう.このため調査主催者は何らかの方法で試料の変質を検出し,再 配布などの処置を行う必要がある.そこで本研究では,各施設から報告され た測定値を統計的に分析することで試料の変質を検出する方法を提案してい る. 本論文は次の 5 章からなっている. 第 1 章では本研究の序論として,研究の背景と目的などを述べている. 第 2 章では,臨床化学検査の精度管理における従来の研究を概観し,本研 究の位置づけを明確にしている. 第 3 章では,外部精度管理調査において各施設に配布される,人工的に合 成された血清である管理血清の性状評価について論じている.複数の施設に おける生血清と管理血清の測定値を比較することによって,両者の性状の類 似性を 統計 的に 分 析する 方法 を提 案 してい る .提 案法 では 2 施 設に おけ る測 定値をプロットして散布図を作成し,直線のあてはめを行う.この時,両軸 の測定値に誤差が含まれているため,単回帰分析ではなく関数関係の問題と して扱うことが必要である.また,実際のデータに適用することで有効性の 検証を行っている.提案する方法を用いることにより,通常の測定による測 定値のみから生血清と性状の異なる管理血清を検出することが可能となり, 生血清と異なる性状を持つ管理血清を排除できることを示している. 第 4 章では,配布過程にて試料が変質を起こし,正しい測定値が得られな 2.

(4) い問題を扱っている.過去に発生した変質の事例調査と,試料を変質させる 実験によって変質の特徴を把握し,外部精度管理調査における各施設の測定 値と変質による試料の劣化のモデル化を行う.そして,外部精度管理調査で 得 ら れ た 測 定 値 か ら ,変 質 し た 試 料 を 統 計 的 に 検 出 す る 方 法 を 提 案 し て い る . 提案する方法により,外部精度管理調査において変質の起こった試料を特定 し,施設の不当な評価を防止できることを示している. 第 5 章では,本研究の考察を行い,結論と今後の課題を述べている. 以上を要するに,本研究は統計的な手法によって外部精度管理調査で用い る管理血清の性状を評価する方法と,調査時に変質した試料を調査データか ら検出する方法を提案し,外部精度管理調査における試料に関する問題を解 決している.まず検査施設での測定値のモデル化を行い,複数施設における 測定値に関数関係モデルを仮定した.このモデルによって生血清と管理血清 と の 測 定 値 を 比 較 し ,検 定 に よ り 性 状 の 違 い を 検 出 す る 方 法 を 提 案 し て い る . また数種類の管理血清を評価する実験を行い,生血清との性状の違いの検出 が可能であることを示している.次に外部精度管理調査における試料の変質 について,施設から報告された測定値を分析して変質した試料を検出する方 法を提案している.提案法は同一施設で測定した複数試料の測定値を比較し ており,試料濃度の真値が未知であること,各検査施設の測定には偏りがあ ることについての工夫がなされている.また実際に変質した試料を用いた実 験を行い,外部精度管理調査の測定値からこれらを検出できることを示して いる.以上のように,本論文の結果はいずれも実験により検証されており, 実用性が高い.提案方法で用いている統計的手法は,実験の方法や臨床化学 検 査 に 付 随 す る 問 題 に 対 し て 工 夫 が な さ れ ,解 析 事 例 と し て の 価 値 も 大 き い . 本研究の成果により,臨床化学検査の精度管理のレベルが向上し,医療の質 向上につながることが期待できる.よって本論文は博士(工学)早稲田大学 の学位論文として価値あるものと認める. 2005 年 10 月 審 査 員 (主 査 ) 早 稲 田 大 学 教 授. 工 学 博 士 (東 京 大 学 ). 棟近. 早稲田大学教授. 理 学 博 士 (東 京 工 業 大 学 ). 逆瀬川浩孝. 早稲田大学教授. 工 学 博 士 (東 京 大 学 ). 髙田. 祥三. 早稲田大学教授. 工 学 博 士 (大 阪 大 学 ). 永田. 靖. 医 学 博 士 (東 京 医 科 歯 科 大 学 )中 山. 年正. 雅彦. (財 )緒 方 医 学 化 学 研 究 所. 3.

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