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博士論文審査報告書

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Academic year: 2022

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(1)早稲田大学大学院理工学研究科. 博士論文審査報告書. 論. 文. 題. 目. Interaction Control on Thermoresponsive Intelligent Interfaces for Applications in Microfluidic Systems マイクロ流体システムへの応用を目指した 温度応答性インテリジェント界面での相互作用制御. 申 氏. 名. 専攻・研究指導 (課程内のみ). 請. 者. 井戸田 直和 Noakazu Idota 応用化学専攻. 化学工学研究. 2006 年. 2月.

(2) 近年、微少量で迅速な反応・分離・分析を実現させるマイクロ流体システ ムの開発が著しい進歩を遂げている。マイクロ化学プロセスの基礎となって い る の は 、微 小 空 間 に お け る 物 理 化 学 的 特 性 や 高 い 比 表 面 積 で あ る 。つ ま り 、 マイクロ流路内の材料表面の物性がプロセス効率に大きく反映され、表面科 学的知見から流路表面を改質する試みがなされている。このような界面での 分子間相互作用の解明は、材料表面の特性を活かしたデバイス創製や微小空 間での最適なプロセス設計に欠くことのできない情報となる。 本学位審査論文では、新規マイクロ流体デバイス表面を設計し、温度応答 性界面と分子との相互作用を解析している。外部刺激に応答し物理化学的性 質を変化させる機能性高分子の基材表面への導入は、マイクロ流路界面での 分子間相互作用を容易に制御できる手段として有効と考えられる。本研究で は 、 温 度 刺 激 で 水 と の 親 和 性 を 可 逆 的 に 制 御 し う る 機 能 性 高 分 子 の ポ リ (Nイ ソ プ ロ ピ ル ア ク リ ル ア ミ ド ) ( P I PA A m ) を 固 定 化 し た 表 面 に 着 目 し て い る 。 P I PA A m は 水 溶 液 中 で 下 限 臨 界 溶 液 温 度 ( L C S T ) を 境 に 水 分 子 と の 親 和 性 が 不連続に変化し、基材表面に導入すると、温度変化のみで水分子や疎水性物 質 と の 親 和 性 を 制 御 で き る 。材 料 表 面 に P I PA A m 分 子 を 精 密 に 制 御 し 導 入 し たナノ界面での水分子との相互作用を明らかにし、温度制御による流体の on-off ス イ ッ チ ン グ を 可 能 と す る イ ン テ リ ジ ェ ン ト 表 面 を 開 発 し て い る 。 さ ら に 、表 面 グ ラ フ ト 構 造 の 観 点 か ら P I PA A m 修 飾 界 面 と 生 理 活 性 物 質 と の 相 互作用を解析し、温度変化によって生体分子の溶出挙動を動的に制御しうる マイクロ流体システムを提案している。本学位審査論文は 6 章より構成され ており、以下に順次審査要旨を述べる。 第 1 章では、固体表面への高分子の精密グラフト手法と高分子グラフト界 面での微視的な力学的解析から、高分子グラフト表面を利用したマイクロ流 体 シ ス テ ム へ の 応 用 に つ い て ま と め て い る 。 さ ら に 、 P I PA A m を グ ラ フ ト し た基材表面のインテリジェントバイオマテリアルとしての応用研究を述べ、 これらの背景のもと、本論文の目的と意義を議論している。 第 2 章 で は 、表 面 開 始 ラ ジ カ ル 重 合 お よ び 電 子 線 照 射 重 合 に よ り 、P I PA A m を内腔表面のみにグラフトしたシリカキャピラリーを調製している。いずれ の P I PA A m 修 飾 キ ャ ピ ラ リ ー で も メ ニ ス カ ス 高 さ が 約 3 0 ℃ を 境 に 急 激 に 変 化し、キャピラリー内径の変化に関わらず所定温度での接触角が一定である ことを確認している。この結果は、キャピラリー内腔表面への修飾、および グ ラ フ ト さ れ た P I PA A m 層 の 水 和・膨 潤 に よ る 内 径 変 化 は 無 視 で き る こ と を 示 唆 し 、実 際 に 電 子 顕 微 鏡 観 察 や P I PA A m 修 飾 カ バ ー ガ ラ ス 表 面 の 温 度 に 応 答 し た P I PA A m 層 の 厚 み 変 化 か ら も 、内 径 変 化 は き わ め て 小 さ い こ と を 実 証 している。この温度応答性キャピラリー内で水を送液すると、相転移温度以 下できわめて大きな送液圧を要するのに対し、高温側で未処理キャピラリー と同等の低い送液圧となることを見いだしている。また、小さな温度変化で 再 現 性 よ く 完 全 な 流 れ の on-off ス イ ッ チ ン グ を 実 現 し て い る 。 こ の 結 果 は 、.

(3) マイクロ空間での表面特性を利用し、ナノメートルレベルで表面グラフトさ れ た P I PA A m 層 の 温 度 変 化 に よ る 水 和 / 脱 水 和 変 化 が マ イ ク ロ 流 体 の 流 れ に 大きく影響することを示している。このような結果はこれまで例が無く、 P I PA A m 修 飾 キ ャ ピ ラ リ ー を 用 い た 新 規 な 温 度 制 御 型 マ イ ク ロ 流 体 o n - o f f ス イッチングバルブシステムを開発している。 第 3 章では、温度応答性界面での水分子や生理活性物質の相互作用を詳細 に 検 討 す る た め に 、表 面 開 始 原 子 移 動 ラ ジ カ ル 重 合 ( AT R P ) 法 を 用 い て 精 密 に グ ラ フ ト 制 御 さ れ た P I PA A m 修 飾 表 面 を 調 製 し て い る 。表 面 開 始 AT R P 法 に よ る P I PA A m 修 飾 表 面 は 、高 い 平 滑 性 を 維 持 し た ま ま 、リ ビ ン グ 重 合 の 特 徴 である重合時間の増加に伴うポリマー厚みの直線的な増加を確認している。 これらの表面の温度変化に応答した表面ぬれ性特性は、重合時間の延長にと も な い LCST 以 下 で は よ り 親 水 性 を 示 し た の に 対 し 、 LCST 以 上 で は 重 合 時 間 に 依 ら ず ほ ぼ 一 定 で あ る こ と を 見 い だ し て い る 。 次 に 、 AT R P 重 合 開 始 剤 の 導 入 密 度 を 制 御 し 、 P I PA A m グ ラ フ ト 密 度 が 表 面 ぬ れ 性 に 与 え る 影 響 を 検 討 し て い る 。 L C S T 以 下 で は P I PA A m グ ラ フ ト 密 度 の 増 加 に と も な い 親 水 性 が増加する一方、高温側では密度に依らず一定であることを確認している。 す な わ ち 、 P I PA A m グ ラ フ ト 量 の 増 加 と と も に 膨 潤 時 の 親 水 性 度 が 大 き く な り 、凝 集 時 は 自 由 末 端 P I PA A m 鎖 が 強 く 疎 水 性 凝 集 し 、ほ ぼ 一 定 の 疎 水 性 を 示 す こ と を 示 唆 し て い る 。以 上 の こ と か ら 、表 面 開 始 AT R P 法 に よ り P I PA A m 層厚みとグラフト密度を三次元的に制御し、表面ぬれ性を変化させられる温 度応答性表面の作製に成功している。 第 4 章 で は 、表 面 開 始 AT R P 法 に よ り 高 い 平 滑 性 を 有 す る P I PA A m 修 飾 雲 母表面を調製し、水存在下で温度を変化させたときの共振表面ずり伝達の距 離 依 存 性 を 測 定 し て い る 。 2 5 ℃ で は 、 P I PA A m 修 飾 雲 母 表 面 間 が 長 距 離 分 離 し て い る 状 態 か ら ず り 伝 達 が 生 じ た の に 対 し 、3 5 ℃ で は 凝 集 時 の P I PA A m 層 間の接触に基づく距離からずり伝達が生じたことを見いだしている。この結 果 は 、 L C S T 以 下 で の 表 面 に グ ラ フ ト さ れ た P I PA A m 層 の 膨 潤 挙 動 を 考 慮 し て も 、さ ら に 遠 距 離 か ら の P I PA A m 修 飾 雲 母 表 面 間 の 相 互 作 用 が 生 起 し て い ることを示している。既往研究から、この遠距離からのずり伝達は水分子の み の 構 造 化 と い う よ り も 、 P I PA A m 分 子 鎖 と 水 分 子 と の 水 素 結 合 と 側 鎖 イ ソ プロピル基の疎水性水和による影響が大きいと考察している。この結果は第 2 章 で 示 し た P I PA A m 修 飾 キ ャ ピ ラ リ ー か ら な る マ イ ク ロ 流 体 バ ル ブ シ ス テ ム で 、相 転 移 温 度 以 下 で の 表 面 グ ラ フ ト P I PA A m 層 と 水 分 子 と の 強 い 相 互 作 用が送液圧増加の要因となっていることを明らかにしている。 第 5 章 で は 、表 面 P I PA A m 層 厚 み と 密 度 を AT R P 法 に よ り 変 化 さ せ た と き の P I PA A m 修 飾 表 面 と 培 養 細 胞 と の 相 互 作 用 を 、血 管 内 皮 細 胞 の 接 着 挙 動 か ら 考 察 し て い る 。 P I PA A m 修 飾 表 面 で は 、 P I PA A m 層 厚 み の 増 加 に と も な い 血 管 内 皮 細 胞 の 接 着 が 抑 制 さ れ 、P I PA A m 層 厚 み 3 0 n m 以 上 で 細 胞 伸 展 が ほ とんど観察されず、細胞非接着性表面となったことを見いだしている。同様.

(4) に 低 密 度 P I PA A m 修 飾 表 面 上 で も ポ リ マ ー 厚 み の 増 加 に と も な い 、顕 著 に 細 胞接着性が低下したことを確認している。これは、培養細胞の接着に表面固 定 化 さ れ た P I PA A m 分 子 鎖 長 と そ の 水 和 変 化 が 大 き く 寄 与 す る こ と を 示 し て い る 。 次 に 、 P I PA A m 層 厚 み と 密 度 を 考 慮 し た ポ リ マ ー グ ラ フ ト 量 で 規 格 化 す る と 、低 密 度 P I PA A m 修 飾 表 面 ほ ど ポ リ マ ー グ ラ フ ト 量 の 増 加 に 伴 う 細 胞 非 接 着 性 が 強 く 発 現 す る こ と を 見 い だ し て い る 。 P I PA A m 修 飾 表 面 と 培 養 細 胞 と の 相 互 作 用 制 御 に は 、表 面 グ ラ フ ト さ れ た ポ リ マ ー 量 に 加 え 、P I PA A m 分子鎖の運動性を考慮した表面設計が重要であることを確認している。 第 6 章 で は 、 表 面 グ ラ フ ト さ れ た P I PA A m 鎖 の 分 子 構 造 の 違 い に 伴 う P I PA A m 修 飾 表 面 と 疎 水 性 生 体 分 子 と の 相 互 作 用 を 解 析 し 、 マ イ ク ロ 流 体 シ ステムを利用した生体分子の溶出制御を検討している。生体分子として疎水 性 ス テ ロ イ ド 類 を 選 択 し 、 表 面 開 始 AT R P 法 に よ る 高 密 度 自 由 末 端 鎖 P I PA A m 修 飾 中 空 キ ャ ピ ラ リ ー 、 電 子 線 重 合 法 で 調 製 し た 三 次 元 架 橋 P I PA A m 修 飾 多 孔 性 モ ノ リ ス キ ャ ピ ラ リ ー か ら の 溶 出 挙 動 を 検 討 し て い る 。 高 密 度 自 由 末 端 P I PA A m 鎖 修 飾 キ ャ ピ ラ リ ー は 、温 度 上 昇 に と も な い ス テ ロ イ ド 類 の 保 持 時 間 が P I PA A m 修 飾 モ ノ リ ス キ ャ ピ ラ リ ー よ り も 顕 著 に 延 長 し た こ と を 見 い だ し て い る 。疎 水 性 の 高 い テ ス ト ス テ ロ ン に 関 し て 、P I PA A m 修飾モノリスキャピラリーでは温度上昇にともないピーク幅が増大したのに 対 し 、 P I PA A m 修 飾 中 空 キ ャ ピ ラ リ ー で は 温 度 上 昇 と と も に ピ ー ク が よ り 対 称性を示すことを確認している。多孔性モノリスキャピラリー中にグラフト さ れ た P I PA A m は ハ イ ド ロ ゲ ル 層 を 形 成 し 、高 温 側 で は テ ス ト ス テ ロ ン と の 疎水性相互作用とゲル内への溶質の拡散でテーリングを誘発する一方、 AT R P 法 で 調 製 し た 表 面 は 高 密 度 で 鎖 長 制 御 さ れ た P I PA A m 層 が 形 成 さ れ た 結 果 、温 度 に 応 答 し た P I PA A m 鎖 の 運 動 性 が 非 常 に 高 く 、ス テ ロ イ ド 分 子 の 拡 散 な し に 効 率 よ く 保 持 し た 。 以 上 よ り 、 AT R P 法 に よ る 高 密 度 で 鎖 長 制 御 さ れ た P I PA A m グ ラ フ ト 構 造 を マ イ ク ロ 流 路 表 面 に 適 用 し 、カ ラ ム ク ロ マ ト グラフィーで用いる充填剤を使うことなく、高効率に生理活性物質を分離す る新しい分離システムへの応用が期待される。 以上のように、本学位審査論文では、精密制御された温度応答性インテリ ジェント表面を新規に調製し、その界面とさまざまな分子との相互作用を表 面科学的観点から解析している。これらの表面設計に基づくマイクロ流体シ ステムへの応用により、マクロスケールでは実現できない流動状態や相互作 用の制御に有効であることを明らかとしており、新しいマイクロ流体デバイ ス の 開 発 に 貢 献 す る 独 創 的 な 研 究 で あ る 。 従 っ て 、 本 論 文 は 博 士 (工 学 )の 学 位論文として価値のあるものと認める。 2006 年 1 月 審 査 員 (主 査 ) 早 稲 田 大 学 教 授. 工 学 博 士 (早 稲 田 大 学 ). 酒井. 清孝. 早稲田大学教授. 工 学 博 士 (早 稲 田 大 学 ). 平沢. 泉. 早稲田大学助教授. 博 士 (工 学 ). 常田. 聡.

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