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The Japan Society for Clinical Immunology

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Academic year: 2022

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(1)

1.は じ め に

主要組織適合遺伝子複合体(major histocompati- bility complex; MHC)は抗原提示細胞のT細胞への ペプチド抗原提示に必要な,免疫系において重要な 分子である.ヒトのMHCはヒト白血球抗原(human leukocyte antigen; HLA)と呼ばれる.MHCは,様々

な自己免疫疾患における感受性遺伝子の中で最も寄 与が大きい遺伝子である1).これらの事実から,異 常なT細胞応答が自己免疫疾患を引き起こす可能 性が考えられてきた.しかしながら,MHC分子に よる疾患感受性を説明できるペプチド抗原は未だ同 定されていない.

近年,著者らはMHCクラスII分子が細胞内のミ スフォールド蛋白質を,蛋白質全長のままで細胞表 面へ輸送するという従来知られていなかった新しい 機構を発見した.興味深いことに,MHCクラスII 分子によって細胞表面に提示されたミスフォールド

43 回総会ポスター賞受賞記念論文

総  説(推薦論文)

推薦者:第43回総会長 佐野 統

ミスフォールド蛋白質とMHCクラスII分子の複合体は,自己抗体の標的である 日 和 良 介*1, 2, 3,荒 瀬   尚*1, 2

Misfolded proteins complexed with MHC class II molecules are targets for autoantibodies Ryosuke Hiwa*1, 2, 3 and Hisashi arase*1, 2

*1Laboratory of Immunochemistry, World Premier International (WPI) Immunology Frontier Research Center,

*2Department of Immunochemistry, Research Institute for Microbial Diseases, Graduate School of Medicine, Osaka University

*3Department of Rheumatology and Clinical Immunology, Graduate School of Medicine, Kyoto University

(Accepted December 24, 2015)

summary

Major histocompatibility complex (MHC) molecule is important for immune system through its function of presentation of peptide antigens. MHC is the gene most strongly associated with susceptibility to many autoimmune diseases. We recently found a novel function of MHC class II molecules to transport cellular misfolded proteins to the cell surface without processing to peptides. Interestingly, misfolded proteins transported to the cell surface by MHC class II molecules were found to be a specific targets for autoantibodies produced in patients with autoimmune diseases such as rheumatoid arthritis and antiphospho- lipid syndrome. Furthermore, autoantibody binding to misfolded proteins complexed with MHC class II molecules is strongly associated with the susceptibility to autoimmune diseases conferred by each MHC class II allele. Therefore, misfolded proteins associated with MHC class II molecules might be involved in the pathogenesis of autoimmune diseases.

Key words    major histocompatibility complex (MHC); human leukocyte antigen (HLA); autoimmune diseases; autoanti- body; misfolded protein

抄  録

主要組織適合遺伝子複合体(major histocompatibility complex; MHC)クラスII分子は,T細胞にペプチド抗原を 提示する際に用いられる,免疫系において重要な分子である.また,MHC分子は様々な自己免疫疾患の感受性に 最も強く影響を与える遺伝子である.著者らは,分解を免れた小胞体内のミスフォールド蛋白質を細胞表面へ輸送 するという,MHCクラスII分子の新しい機能を発見した.興味深いことに,ミスフォールド蛋白質とMHCクラ スII分子の複合体は,関節リウマチや抗リン脂質抗体症候群などの自己免疫疾患で出現する自己抗体の特異的な 標的であることが明らかになった.さらに,ミスフォールド蛋白質⊘MHCクラスII複合体に対する自己抗体の結 合と,MHCクラスIIアリルによって規定される疾患感受性の間に強い相関関係が認められた.ミスフォールド蛋 白質⊘MHCクラスII複合体は自己免疫疾患の発症あるいは病態に関与している可能性が考えられる.

*1 大阪大学免疫学フロンティア研究センター免疫化学 研究室

*2 大阪大学微生物病研究所免疫化学分野

*3 京都大学大学院医学研究科内科学講座臨床免疫学

(2)

蛋白質は,自己免疫疾患で産生される自己抗体の標 的であることを見出した2).本稿では,ミスフォー ルド蛋白質⊘MHCクラスII複合体と自己免疫疾患 の関わりについて概説する.

2MHC分子の機能

MHCには,ほとんどすべての細胞に恒常的に発 現するクラスI分子と,抗原提示細胞などの限られ た細胞に発現するクラスII分子がある.クラスI分 子は主に内在性のペプチド抗原をCD8陽性T細胞 に提示し,クラスII分子は主に外来性のペプチド 抗原をCD4陽性T細胞に提示する.MHCはT細 胞応答だけでなく,胸腺におけるT細胞分化にも 関与しており,獲得免疫系において重要な分子であ る.

MHC分子には多様性があり,MHCクラスII分 子のアリルは,様々な自己免疫疾患の感受性と関連 している1).MHC分子はT細胞への抗原提示に関 わることから,疾患感受性アリルが自己抗原ペプチ ドを提示することが,自己免疫疾患の発症に関与し ているのではないかと考えられてきた3).しかしな がら,MHCアリルによる疾患感受性を説明しうる ペプチド抗原は未だ同定されておらず,MHC分子 がどのように自己免疫疾患の感受性に影響を与えて いるかは明らかになっていない.

3MHCクラスII分子による ミスフォールド蛋白質の細胞表面への提示 近年,著者らの研究グループでは,MHCクラス II分子が細胞内のミスフォールド蛋白質を蛋白質全 長のままで細胞表面へ輸送するという,新しい機能 を発見した(図14)

正常なMHCクラスI分子は,β2ミクログロブリ ンと結合したヘテロダイマーとして発現している.

MHCクラスI分子が細胞表面に輸送されるために は,β2ミクログロブリンと結合し,さらに抗原ペ プチドが結合することで,MHCクラスI分子が正 常な立体構造をとることが必要である.HLAクラ スI分子に対する抗体の中には,β2ミクログロブ リンと結合していないミスフォールドしたHLAク ラスI分子を特異的に認識し,正常なHLAクラスI 分子には反応しないモノクローナル抗体がある.著 者らは,いくつかの培養細胞株がこのモノクローナ ル抗体によって認識されることに注目した.これは つまり,ミスフォールドしたHLAクラスI分子が,

何らかのメカニズムによって細胞表面に輸送されて いることを示している.

著者らは発現クローニングによって,ミスフォー ルドしたHLAクラスI分子の発現に必要な分子の 同定を試みた.その結果,予想外にも,同定された 分子はHLAクラスII分子であった4).HLAクラスI 分子とHLAクラスII分子を共発現させると,細 胞表面に正常なHLAクラスI分子は発現せず,ミ スフォールドしたHLAクラスI分子のみが発現し た.さらに,HLAクラスII分子のペプチド結合部 位に親和性の高い抗原ペプチドによって,HLAク ラスI分子の発現が阻害された.このことから,ミ スフォールドしたHLAクラスI分子は,HLAクラ スII分子のペプチド結合部位に結合していること が明らかになった.さらに,免疫沈降法によって,

HLAクラスII分子と結合しているのは,蛋白全長 のHLAクラスI分子であることが判明した.ミス フォールドした卵白リゾチーム(hen egg lysozyme;

HEL)蛋白質も同様にMHCクラスII分子によって

細胞表面へ輸送された.MHCクラスII分子によっ て提示されたミスフォールドHEL蛋白質は,HEL 特異的なB細胞を活性化させた.このことから,

MHCクラスII分子によって細胞表面へ提示された ミスフォールド蛋白質が,免疫応答に関与する可能 性が示唆された.

MHCクラスII分子には,小胞体内のミスフォー ルド蛋白質を分解せずに細胞外へ輸送するという新 1 MHCクラスII分子によるミスフォールド蛋白質の ミスフォールド蛋白質では,立体構造の一部がほどけてペ提示 プチド様の構造が露出する.このペプチド様構造がMHC ラスII分子のペプチド結合部位に結合すると,ミスフォー ルド蛋白質は蛋白分解機構を逃れ,MHCクラスII分子によっ て細胞表面へ輸送され,提示される.

(3)

たな機能があるということが明らかになった.前述 の通り,以前から知られているMHCクラスII分子 の機能はペプチド抗原を提示することであり,全長 の蛋白質がペプチド結合部位を介してMHCクラス II分子と結合するという現象は一見不可解なものに 思われるかもしれない.しかし,MHCクラスI分 子と異なり,MHCクラスII分子のペプチド結合部 位はその両端が開いている5).このため,蛋白質が ミスフォールドすることでペプチド様の構造が露出 すれば,その部分がMHCクラスII分子のペプチド 結合部位に結合することが可能である.実際,小胞 体内ではインバリアント鎖が全長の蛋白質としてペ プチド結合部位を介してMHCクラスII分子に結合 している.

インバリアント鎖とMHCクラスII分子の親和性 は比較的強く,インバリアント鎖によって,小胞 体内の蛋白質とMHCクラスII分子の結合は阻害さ れていると考えられてきた.しかし,MHCクラス II分子とインバリアント鎖の親和性はMHCクラス IIアリルによって異なる6).従って, MHCクラスII 分子に対する親和性が,インバリアント鎖よりもミ スフォールド蛋白質の方が高ければ,小胞体内で MHCクラスII分子とミスフォールド蛋白質が結合 することができると考えられる.

4.自己免疫疾患におけるミスフォールド 蛋白質⊘MHCクラスII分子複合体

ミスフォールド蛋白質がHLAクラスII分子と結 合することで蛋白分解を逃れ,全長の蛋白質のまま 細胞外に輸送されることがわかった.通常,小胞体 内のミスフォールド蛋白質はendoplasmic-reticulum associated degradation(ERAD)などの機構で速やか に分解され細胞外へは放出されないため7),そのよ うなミスフォールド蛋白質に対しては免疫寛容が成 立していないと思われる.

通常,MHCクラスII分子は抗原提示細胞でしか 発現していない.しかし,ヒトでは,インターフェ ロン(IFN)-γなどのサイトカイン刺激によって,

血管内皮細胞などの非免疫細胞でもMHCクラスII 分子の発現が誘導される.このような状況では,小 胞体内のミスフォールド蛋白質がMHCクラスII分 子と結合することで蛋白分解を逃れ,細胞外に輸送 されうる.MHCクラスII分子によって提示された ミスフォールド蛋白質は,正常蛋白質とは異なる抗 原性をもった抗原,すなわちネオセルフ抗原として 免疫細胞に認識される可能性がある(図2).

多くの自己免疫疾患の標的組織において,MHC クラスII分子の発現が増加していることしている ことが以前から知られている.例えば,通常,甲状 腺組織にはMHCクラスII分子の発現がみられない

2 ミスフォールド蛋白質⊘MHCクラスII複合体の自己免疫疾患の病態への関与を示す模式図

炎症や感染などでインターフェロン(IFN)などのサイトカインが産生されると,非免疫細胞にMHCクラスII発現が誘導さ れる.ERAD(endoplasmic-reticulum associated degradation)などによる蛋白分解を免れたミスフォールド蛋白質とMHCクラスII が小胞体内で結合すると,ミスフォールド蛋白質がMHCクラスII分子によって細胞表面へ輸送される.ミスフォールド蛋白質

⊘MHCクラスII複合体は自己抗体の標的となり,「ネオセルフ」抗原として自己反応性B細胞を活性化させる.

(4)

が,橋本病やバセドウ病の甲状腺組織では,MHC クラスII分子が高発現していることが観察される8). しかし,非免疫細胞はCD80/86のような補助刺激 分子を発現しておらず,MHCクラスII分子を発現 してもT細胞応答を起こすことはできない.この ため,自己免疫疾患の標的臓器におけるMHCクラ スII分子の発現増加は,炎症の結果であって病原 性に関与するものではないと考えられてきた.しか し,前述のようにMHCクラスII分子に提示された ミスフォールド蛋白質は抗原特異的B細胞を刺激 することができるので,MHCクラスII分子とミス フォールド蛋白質の複合体が自己免疫疾患における 自己抗体の標的となっている可能性が考えられる.

そこで,著者らは自己免疫疾患で産生される自 己抗体が,MHCクラスII分子によって細胞外へ輸 送されたミスフォールド蛋白質を認識するかどう かを検討した.関節リウマチ(RA)では,HLA-

DR4(HLA-DRB1*04:05など)を始めとする複数

のアリルが疾患感受性アリルとして同定されてい る.これらのHLA-DRβ分子の70−74番のアミノ酸 配列(第3可変領域)に共通性(QKRAA, QRRAA, RRRAA)が見出され,shared epitope(SE)と呼ば

れている9).RA患者の70−80%で出現するリウマト

イド因子(rheumatoid factor; RF)は,変性したIgG のFc領域に対する自己抗体である.IgGは2つの 重鎖と2つの軽鎖から構成され,重鎖のみでは正 常なIgGの構造をとることができず,細胞外へ分 泌されることもない.ところが著者らは,HLA-DR 分子によってIgG重鎖が細胞表面に輸送されるこ とを明らかにした10).さらに,RA患者血清中のRF は,膜型のIgG重鎖には結合せず,HLA-DR分子

と結合したIgG重鎖には結合することがわかった.

IgG/HLA-DR複合体に対する抗体価は,RA患者で

はRFの抗体価と高い相関関係が認められたが,RF 陽性の全身性エリテマトーデスや健常人では陰性な いしは低値であった(図3).このことから,IgG/

HLA-DR複合体に対する抗体は,RAに特異的な抗

体であることが判明した.加えて,RA患者の滑膜 組織でIgG重鎖⊘HLA-DR複合体が検出された.こ れらの結果から,IgG/HLA-DR複合体は,RFの特 異的な標的であることが示唆された.

次に著者らは,血栓症や習慣性流産を引き起こ す自己免疫疾患である抗リン脂質抗体症候群(anti- phospholipid syndrome; APS)においても同様な現 象が認められることを明らかにした11).APSも,

HLA-DRアリルによって疾患感受性が異なる.抗リ

ン脂質抗体の一つに抗β2-glycoprotein I(β2GPI)抗 体がある.遊離のβ2GPIは環状構造をとっている が,リン脂質と結合すると線状の構造となり,この 線状構造の時に自己抗体が結合しやすいことが知ら れている.しかし,リン脂質とβ2GPIの複合体が 自己抗体の真の対応抗原であるかどうかは明らかで ない.著者らは,β2GPIもHLA-DR分子によって 細胞表面に輸送されることを明らかにした.さらに,

HLA-DR分子によって提示されたβ2GPIはAPS患 者の自己抗体によって認識された.通常の臨床検

査で抗β2GPI抗体が陰性の患者でも抗β2GPI/HLA-

DR複合体抗体が検出され,約80%の患者で陽性 となることから,β2GPI/HLA-DR複合体がAPSに おける主要な自己抗原である可能性が示唆された

(図4).HLA-DRと結合したβ2GPIは,リン脂質 と結合した時と同様に構造が変化してそのエピトー

3 IgG重鎖/HLA-DR分子複合体は,関節リウマチの自己抗体の特異的標的抗原である

関節リウマチ患者では,リウマトイド因子と抗IgG/HLA-DR複合体抗体価は高い相関を示す.全身性エリテマトーデスや健常 人ではリウマトイド因子が陽性であっても抗IgG/HLA-DR複合体抗体価が低い(文献8より改変).

(5)

プが露出し,自己抗体が結合できるようになってい るのではないかと推測される.また,APS患者の 流産に至った胎盤組織を調べると,β2GPI/HLA-DR 複合体が検出された.これらの結果から,β2GPI/

HLA-DR複合体がAPSの病態に関与している可能

性が示唆された.

5.自己免疫疾患に対する感受性とミスフォールド 蛋白質⊘MHCクラスII分子複合体

前述の通り,MHCクラスII遺伝子は,様々な自 己免疫疾患の疾患感受性に最も影響を与える遺伝 子である.また,MHCクラスIIのアリルによって RAなどの種々の自己免疫疾患における疾患感受性 が異なることが知られている.そこで,HLA-DRア リルによる疾患感受性とミスフォールドタンパク質

⊘HLAクラスII複合体に対する自己抗体の相関を調 べた.RAにおいて,それぞれのHLA-DRアリルに よるRAの感受性を表すオッズ比と,IgG/HLA-DR 分子複合体に対する自己抗体の結合性の間に高い相 関関係が認められた(図5).RA感受性のHLAク ラスIIアリルを持つ人は,自己抗体の標的を生成 しやすいことが示唆された.HLAクラスIIアリル によって規定される疾患感受性と関連するペプチド 抗原は今までに同定されておらず,IgG重鎖/HLA- DR複合体はHLAクラスIIによる疾患感受性と関 連する初めての分子と言える.これらのことから,

ミスフォールド蛋白質⊘MHCクラスII複合体は,

自己抗体の標的として自己免疫疾患の病態に関与し ている可能性が考えられる.

6.今後の展望

これまでの著者らの研究から,ミスフォールド蛋 白質とMHCクラスIIの複合体が,自己抗体の特異 的な標的であることが示唆された.著者らは,RA やAPS以外の自己免疫疾患についても同様の現象 が認められるかどうか解析を行っている.

今後,ミスフォールド蛋白質⊘MHCクラスII複 合体がどのように自己免疫疾患の発症あるいは病態 に関与しているのか,そのメカニズムを解明する ことが重要である.特に,ミスフォールド蛋白質⊘

MHCクラスII複合体に対する自己抗体が産生され る機序を明らかにする必要がある.また,自己免 疫疾患においてIgG型の自己抗体が出現すること 4 β2GPI/HLA-DR複合体は抗リン脂質抗体症候群における主要な自己抗体である

抗リン脂質抗体症候群(APS)患者の血清を用いて,抗β2GPI/HLA-DR抗体の力価を求め,従来から用いられている抗リン脂 質抗体の抗体価と比較した.抗β2GPI/HLA-DR抗体は,従来から用いられている,抗β2GPI抗体や抗カルジオリピン抗体より も感度が高い(文献9より改変).

5 IgG重鎖/HLA-DR分子複合体に対する自己抗体の 結合は関節リウマチの感受性と強い相関を示す IgG重鎖/HLA-DR分子複合体に対する関節リウマチ患者 の自己抗体の結合能は,HLA-DRの各アリルによる関節リ ウマチの感受性と高い相関を示した(文献8より改変).

(6)

から,自己抗体の産生にはT細胞が関与している はずである.ミスフォールド蛋白質⊘MHCクラスII 複合体に対する自己抗体の産生における,T細胞の 関与を明らかにすることも,今後の研究課題である.

さらに,ミスフォールド蛋白質がMHCクラスII 分子によって細胞表面へ輸送されるメカニズムは,

自己免疫疾患を惹起するために存在するとは考えに くく,何らかの生理学的な役割があることが推測さ れる.この生理学的な意義も,今後明らかにするべ き事象の一つであると考えられる.

ミスフォールド蛋白質⊘MHCクラスII複合体の 自己免疫疾患への関与がさらに明らかになれば,

自己免疫疾患の治療への応用が期待される.ミス フォールド蛋白質⊘MHCクラスII複合体が形成さ れる過程で,IFN-γなどのサイトカインによる非免 疫細胞でのMHCクラスII発現が重要と思われる.

この経路によるMHCクラスII発現を阻害すること が治療標的になりうるのではないかと考えられる.

そのような薬剤として,HMG-CoA還元酵素阻害薬,

いわゆるスタチンがある.スタチンは,in vitroで はIFN-γ刺激によって誘導されるMHCクラスIIの 発現を,MHCクラスIIの主要制御因子であるMHC class II transactivator(CIITA)を介して抑制する12). しかしながら,脂質異常症に対して臨床使用されて いるよりも高濃度の条件でなければ,MHCクラス II発現抑制効果は発揮されない.このため,スタチ ンは自己免疫疾患の治療薬としては用いられていな い.スタチンとは異なる作用機序でMHCクラスII の発現を制御する薬剤の開発が求められる.

7.お わ り に

ミスフォールド蛋白質とMHCクラスIIの複合 体が自己抗体の特異的な標的であることが示唆さ れた.以前から知られているペプチド抗原を提示 するというMHCクラスIIの機能から見れば,ミス フォールド蛋白質を輸送するという機能は新説であ る.しかし,ミスフォールド蛋白質⊘MHCクラスII 複合体に自己抗体が結合するという現象は,MHC クラスIIのアリルによって疾患感受性が異なる理 由を説明しうるものである.また,免疫寛容が成立 しているはずの自己抗原に対して疾患に特異的な自 己抗体が出現するメカニズムの一つと考えられる.

ミスフォールド蛋白質⊘MHCクラスII複合体と自 己免疫疾患の病態との関連を解明すべく,さらなる 知見が求められる.

文   献

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12) Kwak, B., et al.: Statins as a newly recognized type of immunomodulator. Nature medicine. 6: 1399−

1402, 2000.

参照

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