は じ め に 皮膚の樹状細胞とマクロファージは,皮膚免疫応 答の制御においてそれぞれ肝要な役割を担う.本稿 では,これらの細胞の皮膚免疫における役割を概説 する. 1)皮膚免疫応答における樹状細胞の役割 元来,皮膚の樹状細胞の主な役割は,所属リンパ 節におけるナイーブT 細胞への抗原提示と引き続 くエフェクター/メモリー T 細胞の誘導である.皮 膚内で抗原を捕捉した樹状細胞は,さらにケラチノ サイトなどからの炎症性シグナルを受けて活性化し, ケモカインレセプターであるC-C chemokine receptor (CCR)7 や C-X-C chemokine receptor(CXCR)4 の発現を上昇させることで,C-C motif chemokine
特集:樹状細胞とマクロファージ
総 説皮膚免疫における樹状細胞・マクロファージの役割
小野さち子,椛 島 健 治The role of dendritic cells and macrophages in the skin immunity
Sachiko OnO and Kenji KabashimaDepartment of Dermatology, Kyoto University Graduate School of Medicine
(Accepted August 1, 2016)
summary
The skin is one of the largest organs in the human body, which acts as the primary interface with the external world. In view of its protective role, mammalian skin consists of physical and immunological barriers. The water-impermeable stratum corneum and the tight junctions in the granular layer work at the epidermal level work as the most important first and second “physical” barriers. Upon antigen invasion to the skin, the integrated innate and acquired immune systems in both the epider-mis and derepider-mis are activated in a coordinated manner to neutralize the external intruder as the strong third “immunological” barriers. Dendritic cells and macrophages are known to play pivotal roles in such immunological barriers. Intra-vital analysis of the murine skin by two-photon microscopy enabled us to assess the habituate and the direct interactions of various cells in the skin in situ, which reside or infiltrate upon inflammation. We introduce the recent works how dendritic cells and macrophages orchestrate the skin immunity, highlighting the importance of sequential leucocyte cluster formation in the efficient activation of memory T cells in the skin, which can be attributed as ‘inducible skin-associated lymphoid tissue (iSALT)’.
Key words inducible skin-associated lymphoid tissue (iSALT); Langerhans cells; dermal dendritic cells; tissue-resident
macrophages; perivascular macrophages
抄 録 皮膚は消化管や肺と並び,生体を外界と隔て,微生物や抗原などの外来異物から生体を守る最大の免疫臓器であ る.皮膚には3 つのバリアが存在する.まず,第一のバリアである表皮角質層と第二のバリアである表皮顆粒層 のタイトジャンクションが,液体や多くの外来抗原の侵入を物理的に阻む.これらの物理的バリアを超えて外来 抗原が皮膚に侵入すると,皮膚に常在あるいは浸潤するさまざまな免疫細胞が皮膚支持細胞と協調し,第三の免疫 学的バリアとして外来抗原に対応した皮膚免疫応答を誘導する.皮膚の樹状細胞とマクロファージは,いずれもこ の第三の免疫学的バリアにおいて鍵となる細胞である.近年,細胞特異的な誘導除去マウスの開発や,二光子励起 顕微鏡を用いたリアルタイムでの生体内の細胞の時空間的動態・細胞間相互作用の観察が進み,様々な免疫応答の 詳細が皮膚においても明らかとされてきている.樹状細胞と組織在住マクロファージによる誘導型皮膚リンパ組織 (inducible skin-associated lymphoid tissue: iSALT)の形成を含めたこれらの細胞の皮膚免疫制御における最近の知見
について紹介する.
ligand(CCL)21 や C-X-C motif chemokine ligand (CXCL)12 を発現する真皮リンパ管,続いて所属 リンパ節へと遊走する1−3).この遊走の過程でmajor histocompatibility complex(MHC)class2 お よ び CD80・CD86 といった副刺激分子の発現を上昇さ せ,所属リンパ節内でナイーブT 細胞からのエフェ クター/メモリー T 細胞の分化誘導を効率的に行う. 皮膚の樹状細胞は,表皮に存在するランゲルハンス 細胞と真皮樹状細胞に大別され,真皮樹状細胞はさ らにいくつかのサブセットに分類される4, 5).近年, これらの樹状細胞サブセットの皮膚免疫における異 なる役割が明らかとされつつある. 1:表皮ランゲルハンス細胞 ヒトならびにマウスにおいて,ランゲルハンス 細胞は表皮細胞全体の2 − 4 %を占め,密なネット ワークを形成する様にして表皮に分布する.ランゲ ルハンス細胞は,樹状細胞の一つとして分類される が,細胞表面抗原などからは,むしろ,脳のミクロ グリア細胞や肝臓のKupffer 細胞と同様に,表皮内 で高度に分化した組織在住マクロファージの一つで あると考えられてきた.また,真皮樹状細胞や組織 在住マクロファージが骨髄由来細胞から発生するの に対し,ランゲルハンス細胞は胎生期の造血組織に 由来し,胎生期に表皮内に生着後,成獣となってか らも生理的状態下において表皮内で自律的な細胞集 団の維持と増殖を行うという特色がある6, 7).一方 で,炎症下では骨髄由来細胞によって補充される8). ランゲルハンス細胞は抗原提示に特化し,多く の微生物の抗原捕捉とプロセシングに肝要な分子 であるLangerin や CD205 を発現する.また,ラン ゲルハンス細胞に特徴的に認められるBirbeck 顆粒 は,受容体依存性の抗原取り込みや細胞内輸送に重 要である.カンジダの皮膚感染マウスモデルでの T-helper(Th)17 型の免疫応答の誘導には,ランゲ ルハンス細胞上のDectin-1 を介した抗原の認識が必 要であることも知られる9).同様に,ヒトのランゲ ルハンス細胞上に発現するCD1a は細菌の膜脂質由 来の抗原を提示する分子である. ランゲルハンス細胞は,皮膚免疫においてさらに 独特の役割を担う.そのひとつは,タイトジャンク ションを超えた抗原の取り込みである.タイトジャ ンクションは,表皮角質層下の顆粒細胞層に存在 し,多くの抗原に対するサイズバリアを形成してい る.すなわち,ウイルスや蛋白由来の多くの外来抗 原は分子量が大きく,通常,タイトジャンクション を通過して表皮内から間質へ侵入することはできな い.しかしながらランゲルハンス細胞は,定常状態 から,樹状突起を上方の角質層へと伸ばしている (図1 a).こうしてタイトジャンクションを超えて 樹状突起を角質上層内へ伸展し,これらの外来抗原 の捕捉を可能とする10, 11).実際に,高分子蛋白であ る卵白アルブミン(OVA)蛋白をマウスの皮膚へ塗 布しても,タイトジャンクションを超えた真皮内へ のOVA 蛋白の侵入は認めないが,ランゲルハンス 細胞の存在下でTh2 型の免疫応答が誘導される12). 他にもランゲルハンス細胞の特異的な側面として, 免疫応答に際する抑制性の作用が,接触皮膚炎のマ ウスモデルである接触過敏反応や13−16),マウスのリー シュマニア感染症モデルなどにおいて報告されてい る17).これらの報告では,ランゲルハンス細胞から のinterleukin(IL)-10 産生による CD4T 細胞の活性 化抑制や,ランゲルハンス細胞単独でのT 細胞プ ライミング不全などがその機序として想定されてい る.しかしながら,ランゲルハンス細胞の免疫応答 における誘導性・抑制性の役割は,接触性皮膚炎を 含む多くの皮膚疾患で未だ結論が出ておらず5),引 き続き研究報告の蓄積が必要である. 2:真皮樹状細胞 真皮樹状細胞は,幾つかのサブセットに分かれ, 皮膚間質へと侵入した抗原に対する免疫応答を迅速 に誘導する.真皮樹状細胞も,抗原捕捉後は所属リ ンパ節へ遊走しナイーブT 細胞への抗原提示を行 うが,その一方で,再度同じ抗原が皮膚へと侵入し た際には皮膚局所において集塊(クラスター)を形 成し,皮膚を巡回するエフェクター/メモリー T 細 胞を活性化する.このような樹状細胞の二重の役割 について,その細胞動態と絡めて概説する. i)真皮樹状細胞の種類 樹状細胞は,CD11c 陽性 MHCclass2 陽性として 画分される細胞集団である.形質細胞様樹状細胞を 除き,真皮には少なくとも5 つのサブセットが存在 する.真皮を移動中のランゲルハンス細胞,単球由 来樹状細胞,Langerin 陽性真皮樹状細胞,CD11b 陽 性真皮樹状細胞,Langerin/CD11b 両陰性真皮樹状細 胞である18). このうち,Langerin 陽性真皮樹状細胞は真皮樹 状細胞の10−20%を占め,XCR1 陽性サブセットと
して検出される画分と重なり,かつCD103 陽性サ ブセットを含む.これらの真皮樹状細胞サブセッ トは,高いクロスプレゼンテーション能を有し, 自己抗原,あるいはHerpes simplex virus(HSV)と
いったウイルス抗原に対する細胞障害性CD8T 細胞 (cytotoxic T: Tc1)分化誘導の責任サブセットである 事が明らかとされた19).また,前述の通り,カンジ ダの皮膚感染マウスモデルにおいて,ランゲルハン ス細胞がTh17 細胞を誘導する一方で,Langerin 陽 性真皮樹状細胞はTc1, Th1 細胞を誘導する9). CD11b 陽性真皮樹状細胞は,真皮樹状細胞の 70− 80%を占める主要な画分であり,Langerin 陰性真皮 樹状細胞とも呼称される.本サブセットは,OVA 蛋白を抗原としたTh2 型の皮膚免疫応答や,Th17 型の別の代表的炎症性皮膚疾患である尋常性乾癬の マウスモデルであるイミキモド塗布乾癬様皮疹誘発 モデルで,ランゲルハンス細胞と並びIL-23/IL-17 シグナルを軸とした免疫応答に主要な役割を担うと 報告されている20−23).一方,単球由来樹状細胞や, Langerin/CD11b 両陰性真皮樹状細胞の皮膚免疫応答 における役割は未だあまり知られていない. また,T 細胞の分化誘導には,このような異なる 真皮樹状細胞サブセットあるいはランゲルハンス細 胞による制御に加え,皮膚のケラチノサイトなどの 常在細胞が局所で産生するサイトカインが重要であ ると考えられている.例えば,アトピー性皮膚炎の マウスモデルにおいて表皮で産生が著増するThymic
stromal lymphopoietin(TSLP) や IL-33 は Th2 型 の 炎症応答を誘導し,尋常性乾癬や真菌・細菌感染等 で表皮から産生されるIL-1β,IL-6 や Tumor necrosis factor(TNF)α は樹状細胞からの IL-23 産生を誘導 し,T 細胞からの IL-17 産生を促す.いずれの樹状 細胞がどのサイトカインシグナルを受け取り,どの ような免疫応答を生じやすいのか,今後の更なる解 明が期待される. ii)皮膚における真皮樹状細胞の抗原捕捉 樹状細胞の細胞表面マーカーであるCD11c 蛋白 遺伝子のプロモーター下流に黄色蛍光蛋白(yellow fluorescence protein: YFP)を発現する CD11c-YFP マ ウスを用いた皮膚内の樹状細胞の観察によって,抗 原捕捉の前後の真皮樹状細胞の動態が明らかとなっ た.定常状態において,マウス耳介内で活発に真皮 を動きまわる真皮樹状細胞は,接触過敏反応におけ る抗原であるハプテンを皮膚に塗布すると,動きが 一過性に増強する.樹状細胞は,こうして運動性を 増加させることで,皮膚内での抗原捕捉機会を増や し,リンパ管から所属リンパ節への遊走機会を増加 させている.また,抗原を捕捉した樹状細胞は,所 属リンパ節に向かうだけでなく,一部は真皮内にと どまり樹状細胞クラスターを形成し,皮膚局所にお ける免疫応答の担い手ともなる(後述).そのいず れにおいても,樹状細胞動態は,G-protein coupled receptor(GPCR)を介したシグナルで制御されてお 図1 マウス耳介皮膚の樹状細胞・マクロファージ像 (a) 2 光子顕微鏡で撮像した定常状態での表皮内ランゲルハンス細胞の立体像.Bar = 15μm. (b) ハプテン塗布後の CD11cYFP マウス耳介における真皮樹状細胞クラスター(点線囲い)の形成.Bar = 50μm. (c) FITC- デキストラン静脈投与による定常状態での皮膚マクロファージの描出.Bar = 50μm. (A) (B) (C)
り,脂質メディエーターの一種であるLeukotriene B4(LTB4)の受容体(BLT1)はその制御因子の 1 つである24).
iii)真皮樹状細胞クラスターによる iSALT の形成 1980 年代に,皮膚関連リンパ組織(SALT: skin-associated lymphoid tissue)という概念が Streilein ら により提唱され,皮膚局所でも抗原の獲得・プロセ シング・T 細胞への提示が可能であり,皮膚は単に 二次リンパ組織で生じた炎症反応の舞台ではなく炎 症反応開始の主座である可能性が示唆された25, 26). その後,実際にエフェクターT 細胞の皮膚内での 活性化に樹状細胞が必要であることは示されたが, その詳細な機構は明らかでなかった. 前述の通り,真皮樹状細胞の一部は抗原塗布後に 真皮内でクラスターを形成する(図1 b).著者ら は,この樹状細胞クラスターが,皮膚でのエフェ クターCD8T 細胞活性化に必須な構造であること をマウスの接触過敏反応モデルを用いて明らかと した27).抗原であるハプテンが皮膚に曝露すると, 表皮角化細胞からのIL-1 の刺激を受け,真皮血管 周囲のマクロファージはケモカインの一つである CXCL2 を産生し真皮樹状細胞を血管周囲へ遊走さ せる.こうして形成された血管周囲のマクロファー ジ,真皮樹状細胞の集塊は,血管より皮膚に侵入し てきたメモリーT 細胞に効率的に抗原を提示し活 性化する.実際,皮膚のマクロファージを欠損させ たマウスでは皮膚での樹状細胞集塊形成が抑制され 皮膚炎反応も減弱した.また,前述のLTB4−BLT1 シグナルも本クラスター形成に寄与した. この組織マクロファージ-真皮樹状細胞クラス ター-エフェクターT 細胞の一連の相互作用なら びに会合は,定常状態では存在せず,炎症によって 皮膚局所に誘導されことから,著者らはこれを誘導 型皮膚リンパ組織(inducible SALT: iSALT)と命名
した28)(図2 ).ヒトの接触皮膚炎以外にも,代表 的な皮膚炎症疾患である乾癬でも樹状細胞とT 細 胞が集塊を形成することが知られており29),Th1 あ るいはTh17 細胞が,皮膚局所で類似した活性化の 制御を受けている可能性がある.さらに,代表的 皮膚腫瘍であるヒトの皮膚メラノーマ病変とその マウスモデルにおいて,腫瘍周囲にリンパ球と樹 状細胞からなる細胞集塊を認め,三次リンパ組織 様構造(Tertiary lymphoid structures: TLS)として腫
瘍予後と相関することから現在注目されている30). この腫瘍周囲TLS は iSALT と同様にエフェクター/ メモリーT 細胞の活性化の場を提供するのみなら ず,ナイーブT 細胞のプライミングの場として働 いている可能性が高く,大変興味深い31).同様に, iSALT や TLS は,現在腫瘍領域で応用が進んでい 図2 皮膚における iSALT の模式図 接触皮膚炎惹起相において,①− ⑤の順に皮膚免疫応答が進む.
る免疫チェックポイント阻害薬の効果の場となって いる可能性を有しており,治療前後でこれらのリン パ組織構造がどう変化するかなど,研究が加速して 進んでいく領域であろう. 2)皮膚免疫におけるマクロファージの役割 マクロファージは,貪食機能に優れた細胞であ り,病原体,死細胞,細胞や細胞外マトリックス由 来の老廃物といった不必要な物質の排除を担う事で 生体の防御や恒常性の維持を担う.さらに,マクロ ファージは,病原体を認識する多くのレセプターを 発現し,自然免疫応答と獲得性免疫応答のいずれに も寄与する.また,成長因子を分泌し,血管増殖, コラーゲン新生,線維化を通じて皮膚の創傷治癒に おいても肝要な働きをする.マクロファージの機能 は非常に多彩であるが,皮膚における役割の理解は 樹状細胞と比較すると未だ体系的とはいえない.本 稿では皮膚におけるマクロファージの最近の知見を 幾つかピックアップして概説する. i)皮膚のマクロファージの種類 皮 膚 炎 に 際 し,Ly6c 陽 性 CCR2 陽 性 CX3C chemokine receptor 1(CX3CR1)陰性の炎症性単球 が多く皮膚へと浸潤する.これらは,一部は単球 由来樹状細胞へと分化するが,多数はM1 型マクロ ファージとして初期の炎症誘導に働く.一方で,皮 膚には元々Ly6c 陰性 CCR2 陰性 CX3CR1 陽性の組 織在住のM2 型マクロファージが存在し,組織修復 や炎症収束過程において主要な役割を担う.興味深 いことに,マウスの皮膚慢性アレルギー性炎症モデ ルにおいて,好塩基球が皮膚局所で分泌するIL-4 の働きによって,M1 型から M2 型マクロファージ へマクロファージの形質が変化することが報告され ている32).このように,炎症性単球と組織在住マク ロファージの皮膚炎症,皮膚免疫応答における働き は一連の流れの中で協調して働いている. ii)組織在住マクロファージの分布 表皮におけるランゲルハンス細胞と同様に,組織 在住マクロファージはマウスおよびヒトの皮膚の 真皮内において,真皮ネットワークを形成する様 にして密に存在する(図1 c).ヒトの皮膚の三次元 的観察から,真皮樹状細胞よりも少し下層にマクロ ファージのネットワークが存在する事が報告されて いるが33),その意義は不明である.また,もう1 つ の特徴的な配置として,皮膚血管やリンパ管に沿っ て存在するマクロファージ集団とその間隙に存在す るマクロファージ集団があり,血管周囲のものに関 してその特化した役割が報告されている. iii)創傷治癒におけるマクロファージの役割 創傷治癒は皮膚マクロファージが関与する最も代 表的な病態であり,その役割を理解することは,皮 膚炎の制御という観点からマクロファージの働き を考える上で重要である.前述の様に,創傷形成 直後の皮膚炎症に際し,炎症性単球由来のM1 マク ロファージが創傷部に集積し,TNFα や IL-6 といっ た炎症性サイトカインや活性酸素を産生する.他 方,組織在住のM2 マクロファージは transforming growth factor(TGF)β や vascular endothelial growth factor(VEGF)といった血管新生や線維化にかかわ るサイトカインを産生することで,創傷環境を血管 新生や線維化や再上皮化へと誘導する.こうしてマ クロファージが組織のリモデリングを促すことで創 傷治癒が進む. iv)血管周囲マクロファージの役割 前述のマクロファージの配置に関して,著者らは 血管周囲マクロファージの新たな役割として,前述 の通りiSALT への関与を報告した. 血管周囲マクロファージについて,他にも皮膚免 疫における興味深い報告がある.すなわち,血管周 囲マクロファージが好中球の皮膚への流入を制御す るというものである34).α 溶血毒素を産生する黄色 ブドウ球菌の局所皮膚感染下では,感染部位のマク ロファージが毒素によって消失するが,このように して血管周囲マクロファージが消失した部位から は,マクロファージによるケモカイン産生が無いた め,好中球の流入が生じず,ブドウ球菌排除が障害 された.血管周囲マクロファージの白血球流入制御 機構は肺,腸管などの他臓器でも注目されているが, それぞれの組織で一見すると逆の作用を発揮してい る点が興味深い35, 36).皮膚血管周囲マクロファージ による他の血球の流入制御についても,今後の検討 が期待される. v)組織在住マクロファージと免疫細胞クラスター iSALT とよく似た構造として,膣粘膜組織にお けるMemory lymphocyte clusters(MLCs)と呼ばれ る組織在住マクロファージとresident memory CD4
T 細胞のクラスター形成が報告された37).MLCs では,組織在住マクロファージが分泌するCCL5 と,resident memory CD4T 細胞が分泌する低濃度の interferon(IFN)γ が相互作用して互いを維持し, HSV2 再感染時の効率的な CD4T 細胞活性化につな がる.皮膚と粘膜,CD8T 細胞と CD4T 細胞という 相違はあるが,iSALT も MLCs も局所におけるマク ロファージが他の細胞の活性化制御に密接に関わる 事を明らかとしており,マクロファージの皮膚免疫 における重要性を改めて示唆している. 最 後 に 皮膚において,樹状細胞,マクロファージはそれ ぞれ豊富に存在し,免疫応答の主役とも言える役割 を担う.しかしながら,皮膚局所におけるこれらの 細胞の役割や他の細胞との相互作用については,未 だ十分解明されていない.著者らは,組織在住マク ロファージと樹状細胞の皮膚局所における相互作用 が代表的な皮膚免疫応答のひとつである接触皮膚炎 反応の成立に肝要であることを報告したが,このよ うな皮膚局所における免疫細胞の相互作用は他の細 胞同士でも行われている可能性が高い.アトピー性 皮膚炎,乾癬,皮膚感染症,皮膚腫瘍などの他の代 表的皮膚疾患においてiSALT あるいは iSALT に類 似した構造が認められるか,そしてそれにはどの様 な細胞同士の相互作用が関与し,他臓器と比較して の皮膚の特殊性や普遍性などが解明されることに期 待したい. 文 献
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