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応用倫 理学の方法論 をめ ぐって

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応用倫 理学の方法論 をめ ぐって

一WREと 設 計 問 題 アナ ロ ジー を参 考 に一

坪 井 雅 史

は じめ に

わた した ちの 日常 的 な場面 で の道徳 的行為 を導 く道 徳 的推論 の過 程 は、

従 来の倫理学が 焦点 を当てて きた道徳判 断や行為 の正 当化 の仕方 とは根 本

的 に違 うの ではな いか。私 た ちが道徳 的にふ る まえ るには何 が必要か を考

え るに は、行為 の正 当化 の文 脈 を離 れ て、発見 の文脈 か ら道徳的推論 の過

程 を再 考す る必 要が あるので はないか。筆 者 は これ まで もこう した観点 か

ら道徳 的推論 に関す る研究 を進めて きた。 この小論 で は、 こう した研究 の

延 長線上 に、応 用倫 理学の方法 論 に関す るJ.フ ァ ン ・デ ン ・ホーベ ンの

議論 と、C.ウ ィ トベ ックの議論 を参考 に しなが ら、応 用倫 理学方法 論 に

行為 者の視点 を導入す る ことの重要性 と、パ テ ィキ ュ ラ リズムの可能性 に

つ いて考察す る。

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1.応 用 倫 理 学 の 方 法 論 に 関 す るJ.フ ァ ン ・デ ン ・ホ ー ベ ン の 議 論

一 応 用 倫 理 学 の 方 法 に お け る対 立=ジ ェ ネ ラ リ ス トvs . パ テ ィキ ュ ラ リス トー

フ ァ ン ・デ ン ・ホ ーベ ン は、 応 用 倫 理 学 の 重 要 な 課 題 は道 徳 判 断の 正 当 化 の 問 題 で あ り、 この 正 当 化 の 問題 に対 して は、 主 に 次 の3つ の ア プ ロ ー チ が あ る とす る{1)。

① エ ン ジ ニ ア リ ン グ ・モ デ ル(engineeringmodel)

② 原 則 主 義(principiism)

③ パ テ イ キ ュ ラ リ ズ ム のparticularist、 あ る い は 「反 理 論 の antitheoretical」 立 場

① の エ ンジ ニ ア リ ン グ ・モ デ ル は、 具 体 的 な倫 理 的 判 断 の 正 当 化 に は 、 普 遍 的 な道 徳 原 理 を単 に適 用 す れ ば よい とす る考 え 方 で あ る。 ② の 原 則 主 義 は 、専 門 に応 じた よ り特 殊 ない わ ゆ る 中 間 レベ ル の 原則 が 必 要 だ とす る 考 え方 で あ る。 ③ の パ テ ィキ ュ ラ リズム の 立 場 は、 そ の最 も極 端 な もの と して は、 道 徳 判 断が 個 別 の 歴 史 、ユ ニ ー ク な ケ ー ス 、 状 況 の 詳細 な 内容 に 結 びつ い て お り、 あ る ケ ー ス か ら得 られ た結 論 を他 の ケ ー ス に0般 化 した り外 挿 した りす る こ とは で き ない(た とえ 「レ リヴ ァ ン トに類 似 して い る」

と して も)と して 、状 況 に対 す る適切 さ を重 視 して道 徳 原則 を用 る こ とを 拒 否す る立 場 で あ る。

これ らの 対 立 の 主 軸 を道 徳 的 ジ ェ ネ ラ リス トと道 徳 的 パ テ ィ キ ュ ラ リス トの 対 立 と した 上 で 、 フ ァ ン ・デ ン ・ホ ー ベ ンは 、① の 極 端 な ジ ェ ネ ラ リ ス トも③ の 極 端 なパ テ ィキ ュ ラ リス トも、 次 の2つ の 応 用 倫 理 学 に お け

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応 用 倫 理 学 の 方 法 論 を め ぐっ て61

る方 法 の 妥 当性 に 関 す る も っ と も ら しい基 準 を満 た して い な い とす る。

基 準1:道 徳 的 実践 と議 論 の 〈豊 か さ〉 と く複 雑 さ〉 に対 応 で き る 基 準2=道 徳 的 推 論 の 〈ダ イ ナ ミク ス〉 を モ デ ル 化 し、 推 論 の 跡 を た

ど る助 け とな る

これ らは、 倫 理 学 方 法 論 が 、 状 況 の 変 化 に伴 う信 念 の 変 化 に も対 応 で き る もの で な け れ ば な らな い こ とを示 して い る。 した が っ て 、 文 脈 化 され た 個 々の 道 徳 的知 覚 と一 般 的 原則 と を統 合 で きる よ うな、 道 徳 的 意 志 決 定 の 力学 的dynamicモ デ ルが 必 要 で あ り、 両 極 端 な立 場 は批 判 され る こ とに な る。 そ こか ら、 フ ァ ン ・デ ン ・ホ ー ベ ン 自身 は 、② の 原 則 主 義 の 立 場 か

ら 「広 い 反 照 的均 衡WideReflectiveEquilibriumの 方 法(以 下WREと

記 す)」 と呼 ば れ る もの を擁 護 す る。 こ れ は ビー チ ャム とチ ル ドレス が 、 生 命倫 理 学 に もっ と もふ さわ しい 方 法 概 念 と して採 用 した の と 同 じ方 法 と

され る 。

以 下 、 ① と③ の 問題 点 と、② の 内容 につ い て もう少 し詳述 して お こ う。

1‑1.「 エ ン ジ ニ ア リ ン グ ・モ デ ル 」 の 問 題 点

エ ンジ ニ ア リ ン グ ・モ デ ル とは 、 一 般 原 理 を具 体 的 な ケ ー ス に演 繹 的 に 適 用 す る こ と に よっ て 、 個 々の ケ ー ス にお け る行 為 の 正 当化 が 可 能 だ とす る考 え で あ る。 そ の モ デ ル の前 提 にあ る考 え方 は 次 の よ う な もの で あ る。

① 倫 理 学 理 論 は普 遍 的 に妥 当す る 道 徳 原 理 の知 識 の 明確 な集 合 に よっ て構 成 され る 。② 諸 事 例 につ い て の議 論 の 余 地 の な い くらい 明 白 な経 験 的記 述 が 可 能 で あ る。 ③ この 道 徳 的 知 識 の 集 合 は論 理 的 演 繹 に よっ て 、価 値 中 立 的 か つ 公 平 に 適 用 され る ω 。 この モ デ ル の 問 題 と して 、 フ ァ ン ・デ ン ・

ホ ーベ ンは 次 の よ うな 点 を指摘 して い る(3)。

・規範 の衝突 の 問題 …私 た ちは1つ の場 面 で異 な る2つ 以 上 の道 徳 原理

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が 適用 され、その結果 が衝 突す るこ とに よる ジ レンマ状 況 に陥 る こ とが あ る。

・現 実性 の問題 …実際 の道徳判 断の場 面 につ いて研 究 してい る人 々が

、 こ れ らの一般 的原理 に言及す る こ とは全 く、 あ るいはほ とん どない。

・例 外 に対処 で きない

・原理の正 当性 の問題 …原理 を含 んで い る前提 となる知識が普遍 的規則 の 形 にで きるのか疑 問であ り、 さ らにそ れが どの程 度特 権 性を持つ か も疑 問であ る。

・基 本的概 念の解釈 の多様 性や曖昧 さの 問題 …具 体 的な場 面で何 が その原 理 にか なった ことなのかが明確 で ない。

以 上 の よ う な問 題 点 に鑑 み て 、 彼 は原 理 を単 に 現 実 に 当 て は め る だ け で 判 断 の正 当 化 を図 ろ う とす るエ ンジ ニ ア リ ング ・モ デ ル を採 用 しな い 。

1‑2.パ テ ィ キ ュ ラ リズ ム ・反 理 論 の 問 題 点

パ テ ィキ ュ ラ リ ズ ムや 、 反 理 論 の 立 場 は次 よ う な考 え に 反対 す る。 す な わ ち、 すべ て の 理 性 的 人 格 を統 べ る よ うな 普 遍 的 に妥 当す る 原理 ・原則 を 特 定 す る こ と、 これ らの抽 象 的 な 原 理 ・原則 を計 算 問 題 を解 くよ う なや り 方 で 倫 理 問題 に 適 用 す る こ と、 道 徳 的 問 題 に対 す る答 え を演 繹 す る た め の 手 続 きを特 定 しよ う とす る こ とで あ る 。 パ テ ィキ ュ ラ リス トに と っ て最 も 重 要 な の は、状 況 に対 す る適 切 さで あ り、個 別 の 歴 史的 文 脈 の な か で 人 に 正 義 を なす とい う理 想 で あ る(4)。

こ う した パ テ ィ キ ュ ラ リズ ム ・反 理 論 の 立 場 の 妥 当性 につ い て は 、 「理 論 」 の解 釈 、 す な わ ち そ の 言 葉 に何 を含 め るか に よっ て 判 断 は分 か れ る。

しか し、 そ の こ とを度 外 視 して も、 パ テ ィキ ュ ラ リズ ム ・反 理 論 の 立 場 に は、 次 の よ う な問 題 が あ る と され る(5)。

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応 川 倫 理 学 の 方 法 論 をめ ぐっ て63

・理論 と理 論 化 は私 た ち の実 践 の 一 部 で あ る。 … あ る具 体 的 な事 例 の 中 に 一般 的 な原 則 を見 出 し、 他 の ケ ー ス に 当 て は め て み る こ とは 自然 な こ と で あ り、 私 た ちの 道 徳 生 活 の 一 部 で あ る。

・道徳 的 正 当化 を ブ ラ ッ クボ ック ス化 す る。 … パ テ ィキ ュ ラ リス テ ィ ッ ク な判 断 は 、原 理 や 原則 に基 づ かず に個 々 の状 況 に応 じて 行 う もの で あ り、

した が っ て そ の 状 況 に お け る 当 の 判 断 を正 当 化 す る根 拠 を示 す こ とが で きず 、 場 当 た り的 な判 断 に 陥 る。

1‑3.原 則 主 義 の 方 法 と し て のWRE

以 上 の よ うな理 由か ら、 彼 は上 記 の2つ の 極 端 な 立場 に代 えて 、 個 々 の 状 況 に応 じた 「中 間 レベ ル」 の 原則 を作 り出 し、 そ れ に よっ て個 別 の 状 況 に即 しつ つ も原 則 を尊 重 す る、 い わ ば折 衷 的 主 義 的立 場 と もい え る原 則 主 義 の 立 場 を支持 す る。 そ の 方 法 と して 、WREが 、 応 用 倫 理 学 の 方 法 論 と

して最 適 で あ る とす る(6)。WREと は 、 直 観 的 な道 徳 判 断 と道 徳 原 則 、 そ して背 景 的 理 論 そ れ ぞ れ の 間 の フ ィー ドバ ック に よっ て 、 常 識 的 判 断 と理 論 との 間 の 均 衡 を保 と う とす る もの で あ るf7)。 そ れ に よ っ て 、 エ ン ジ ニ ア リ ン グ ・モ デ ル の持 つ 硬 直性 や パ テ ィキ ュ ラ リズ ム の もつ 場 当 た り的性 格 の 間 を取 り持 と う とい うの で あ る。

こ う した フ ァ ン ・デ ン ・ホ ー ベ ンの 考 え方 に 対 す る評 価 は、 後 に述 べ る と して 、 次 に 工 学 倫 理 教 育 の 方 法 論 と して、 倫 理 問題 と設 計 問題 の ア ナ ロ ジー の 有 用 性 を訴 え るC.ウ ィ トベ ックの 見 解 を参 照 して お こ う。

2.応 用 倫 理 学 方 法 論 に お け る新 た な方 向 よ る歴 史 的 概 観 の 紹 介

ウ ィ トベ ッ ク に

ウ ィ トベ ックの 倫 理 問 題 と設 計 問 題 との ア ナ ロ ジー 論 を見 る前 に 、 応 用

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fi4

倫 理学 の 方 法論 の歴 史 的変 遷 に 関す る彼 女 の概 観 を紹介 して お こ う(S)。

彼女 は、応 用倫理学 の方法論が 、応 用倫理の 問題 を合理性 に基づ いた演繹 論理 と同種 の思考法 で解 決 しよ うとす る従来 の抽象 的思考法 か ら、社 会的 文脈 の中で行為 を評価 す るこ との重 要性 の認識 に基づ いた、実践 的転 回 を 遂 げた と考 え る。従 来の方法 を彼女 は 「 「 応用倫 理」 アプローチ」 と呼 び、

つ い最近 までの、実践倫理 ・専 門家倫理へ の支 配的 アプローチで あ り、抽 象 か ら始め、 それ らを個 々の事 例 に応用 しよう とす る もの だ とす る。 ファ

ン ・デ ン ・ホー ベ ンのエ ンジ ニ ア リ ング ・モ デ ルが これ に 当た る であ ろ う。 こう した考 え方 に、実践 的転 回が もた らされたの には、変化 のた めの 4つ の契機が あった と分析 してい る。 すなわ ち、① 道徳規則 や原則 は、常 に個 々の社 会状 況へ の応用 の 中で学習 され る もの だ と考 える人 々か らの、

哲学的倫理学 は抽象 的な学 問領域 だ とす る考 えへ の批判。② 「 信 頼」 の よ うな文脈か ら抽 象 して扱 うこ とが がふ さわ し くない主題へ の関心 が 高 まっ た こ と。③ 道徳 的生活 にお け る性格 の中心 的役 割へ の配慮。④新 しい状況 に対応 す るた めの倫理的 ガイ ドライ ンを作 る必 要性 。 これ らが、 倫理学 に お ける実践 的で個別 的 な ものへ の関心 の シフ トを促進 した。

こう した契機 に よって、倫 理学方法論 が抽 象 的思考法 か ら、実践 的転 回 を経 た ことは、社 会 的文脈 の 中で行為 を評価 す るこ との重要性 が 、特 に医 療分 野 な どの専 門家 の実践 にお いて認識 された ことを表 している。例 えば、

ジ ョンセ ンと トゥー ル ミンは倫 理的推論 を個 々の事 例か ら始 める こ とを支 持 す る理論 的考察 を進めた。彼 らの カズ イス トリーの方法 は、一 般的 な倫 理 的 原理 を応用 す る こ とによって状 況 を評価す るの とは異 なった、道徳判 断のモ デルを提 供 した もの と言 え る。その他 に も、生活 か らの事 例 が広 く 使 用 され る ようにな り、教育 にお ける 「 ケース メソ ッ ド」が語 られ るよう

にな った。

こう した個別 ・文脈依存 的 な ものへ の配慮 は、 フ ァン ・デ ン ・ホ ーベ ン

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応 川 倫 理 学 の 方法 論 をめ ぐ って65

の 分 類 に よれ ば 、 一 種 の パ テ ィキ ュ ラ リ ズ ム に含 ま れ る だ ろ う。 そ れ は、

類 似 の事 例 か らの 類 比 に よ っ て直 面 して い る 問 題へ の 対 応 を考 え る もの で あ り、上 に定 義 した 極 端 な形 で の パ テ ィキ ュ ラ リ ズ ム とは異 な る と して も、

命 題 化 され た 叙 述 に よ って完 全 に記 述 され る よ う な抽 象 的 な状 況 の類 似性 で は な くr行 為 者 の経 験 や 、 類 似 性 につ い て の わ れ わ れ の あ る種 の 直 観 に

よ って 、 一 般 化 で きな い 個 別 ・具 体 的 な ものへ の 配 慮 が 可 能 とす る 点 で 、 緩 や か な 意 味 で パ テ ィキ ュ ラ リズ ム と言 っ て よい だ ろ う。

しか し、 そ れ らの 方 法 に お い て 利 用 され る ほ とん どの事 例 が 、 既 に遂 行 され た行 為 の 倫 理 的評 価 が 求 め られ る、既 に完 成 され た 事 例 で あ っ た 点 を、

ウ ィ トベ ック は批 判 的 に評価 す る。 つ ま り、 これ らの事 例 は、 倫 理 問 題 を 抽 象 的 な 視 点 か ら二 つ 、 あ る い は そ れ以 上 の 選択 肢 の 評価 を決 定 す る 「決 定 問題 」 と捉 え た上 で 、 選択 問題 に 「正 しい」 答 え を見 出す こ と は、 実 際 の倫 理 問 題 を扱 う上 で そ れ ほ ど役 に立 た な い と言 うの で あ る。

そ して 彼 女 は 、 具 体 的 事 例 に 対 す る こ の よ う な 審 判 の 視 点judge perspectiveか らの 考 察 を、 行為 者 の 視 点agentperspectiveか らの 考 察

に よっ て 補 足 す る よ う提 唱 す る。 行 為 者 は 、批 判 的傍 観 者 とは違 っ て、 倫 理 的 評価 の 基 準 を明 確 にす る だ けで な く、 状 況 を よ く調 べ 、 で きる だ け 多 くの 競 合 す る制 約 を満 たす に は ど う した らよい か を考 え だ さ な け れ ば な ら な い。 したが って 、 道 徳 判 断 を下 す 能 力 は 、 道 徳 問 題 に対 処 す る た め に必 要 な要 素 の 一 つ に す ぎず 、 そ の他 に も可 能 な選 択 肢 を工 夫 して 考 え 出 し、

洗練 させ る な ど とい っ た総 合 の 能 力 が 必 要 だ とい うの で あ る。

重 要 な の は、 彼 女 に よれ ば、 ジ ェ ネ ラ リス トだ けで な く、 上 に紹 介 した 極 端 な もの で は な い と して も、 パ テ ィキ ュ ラ リス トも、 教 育 を視 野 に入 れ た応 用 倫 理 学 の 方 法 論 を考 え る に 当 た っ て 、 審 判 の 視 点 に 立 つ 点 で 同 じ問 題 点 を抱 えて い る と され る点 に あ る。

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3.ウ ィ トベ ッ ク に よ る倫 理 問 題 と 設 計 問 題 の ア ナ ロ ジ ー

3‑1.倫 理 問 題 と設 計 問 題 と の ア ナ ロ ジ ー と は

ウ ィ トベ ッ ク は、 「近 年 の 倫 理 学 お よび応 用 倫 理 学 の ほ と ん どが 、 道 徳 的 行 為 者 の 視 点 を無 視 」 して 、 「審 判 の 視 点 、 つ ま り 「ど こ に も な い 」 場 所 か ら、 関係 な い 立 場 で 問 題 を眺 め 、 そ れ を 「人 間 に関 す る数 学 の 問 題 」 で あ るか の よ う に扱 う批 評 家 の 視 点 」 か ら倫 理 問 題 に取 り組 む こ とに よっ て 、 倫 理 問 題 に対 す る誤 解 を招 い た と批 判 す る(9)。 そ して 、 人 が 道 徳 問 題 に直 面 した 時 に、 賢 明 に責 任 あ る行 為 をす る こ とが で きる よ う教 育 す る た め に、 行 為 者 中心 ア プ ロー チagent‑centeredapproachの 重 要 性 を強 調 す る 。 そ して 「設 計 問 題 と倫理 問題 との 類 似 性 に 目 を向 け る こ とは 、倫 理 問題 の解 決 につ い て 考 え、 また倫 理 問 題 に 関 して しば しば見 られ る誤 解 を た だ す の に 有 益 」(10}で あ り、 さ らに 「行 為 者 中 心 の 学 習 は倫 理 的 判 断 や 評 価 に焦 点 を 当 て る倫 理 教 育 を補 う もの で あ る」 と述 べ る。

彼 女 に よれ ば 、 「設 計 問 題 と は、 人 の 欲 求 や ニ ー ズ を満 た す た め に 、 も の や 工 程 をつ くる(あ るい は修 理 す る)と い う問 題 」(11)で あ り、 エ ン ジ ニ ア は 「他 の 人 の 設 計 を分 析 す る能 力(つ ま り、 設 計 に対 す る鋭 い批 評 家 にな る こ と)は 設 計 者 と して持 って いれ ば役 立 つ 技 能 で は あ るが 、 そ れ だ け で優 れ た 設 計 者 に な れ る わ け で は な い」(12)こ と、 つ ま り 「理 論 的 問 題 ば か りで な く、 実 践 的 問 題 が 重 要 で あ る こ と、 ま た、 分 析 的思 考 ば か りで な く、 総 合 的 思 考 が 重 要 で あ る こ と」q3)を 理 解 して い る とい う。

こ う して 「エ ンジニ ア リ ン グに お け る設 計 問 題 は 、 や っか い な 倫 理 問 題 と同 様 、 きわ め て 多 くの 制 約 を受 け る」 が 故 に 、 倫 理 的 問 題 に 直 面 した 人 々 が 、 「単 に 判 断 を下 す 以 上 の こ と を しな くて は な らな い 。 す な わ ち 、 何 をな すべ きか を考 え出 さ な け れ ば な らな い」 こ と を認 識 す る上 で 、 設 計

問題 との ア ナ ロ ジ ー の 有 効 性 を指 摘 す る。 「設 計 の 過 程 は、 特 に 設 計 を単

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応 川 倫 理 学 の 方 法 論 を め ぐっ て67

に分 析 す るの とは 異 な っ た仕 方 で 、 行 為 者 が 倫 理 問題 に対 応 す る際 の さ ま ざ ま な 局 面 を 照 ら し出 して くれ る 」(14)の だ が 、 「倫 理 学 は こ れ ま で 、 分 析 的思 考 の 方 に 重 点 をお き、 倫 理 問題 を分 析 して そ れ らに対 す る可 能 な答

え を探 る こ とに 力 を注 い で きた 。 分析 は重 要 で あ る が 、 対 応 策 を考 え る に は そ れ だ け で は 不 十 分 で あ る」 こ と を設 計 問 題 が 示 唆 す る とい うわ け で あ る(15)。

なか で も、 倫 理 問題 を考 え る に あ た っ て も重 要 な 、 設 計 問題 を特 徴 づ け る3つ の ポ イ ン トと して彼 女 は次 の3点 を強 調 してい る。

① 工 学 設 計 の 興 味深 い 問題 や 現 実 の 問題 にお い て は、 正 しい 答 え な い し 対 応 策 が 一 つ しか な い とか 、 正 しい 対 応 策 の 数 が あ らか じめ 決 ま っ て い る とい っ た こ とは 、 た とえ あ って も稀 で あ る。 また 、 二 つ の 解 答 が そ れ ぞ れ 異 な っ た 種 類 の 利 点 を持 つ とい う場 合 が あ り、 した が っ て 、 候 補 とな る任 意 の 二 つ の解 答 に お い て、0方 が 他 方 よ り議 論 の 余 地 な

く優 れ て い る とは 限 らな い(16)。

② 正 解 が 一 つ しか存 在 しな い と い う こ とは な い に して も、 考 え うる 対 応 策 の な か に は明 らか に許 容 で き ない もの が あ り、一 た と え正 しい 答 え は 一 つ で は な い に して も、 間違 った 答 え は存 在 す る一 、 い くつ か の 解 答 が あ るな ら、 そ こに は優 劣 が あ る(17)。

③ 以 下 の 全 て の 条 件 を満 たす こ と(18)。

・望 ま しい 成 果 また は 目的 を達 成 す る こ と

・当 の 行為 に対 す る 指 定 条 件 あ る い は明 示 され た 規 準 を満 た す こ と

・深 刻 なマ イナ スの 結 果 を引 き起 こ しか ね な い事 故 お よ び そ の 他 の誤 りに対 す る合 理 的 な安 全 策 を講 ず る こ と

・背 景 に存 在 す る制 約 条 件 に従 う こ と(す べ て の 倫 理 問 題 に お い て は、

背 景 に あ る制 約 条件 と して、 い か な る 人 の 人 権 で あ れ そ れ を侵 害 し て は な ら ない とい う要 請 が 含 まれ る)

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ss

こう した設計 問題の特徴 は、 われわれが倫理 問題 に対処す る際 に も当て は まる点であ り、 それが倫理 問題 に対す る従来 の倫理学 的 な考 え を補 う新 た な視点 を提 供す る とい うの であ る。

3‑2.設 計 問 題 か ら得 られ る4つ の道徳 的教 訓

設計問題 の これ らの特徴 に配慮 す るこ とは、 倫理 問題 を考 えるに当たっ て これ まで重 視 され て こな か った 次 の よ う な 点 に光 を 当 て る こ とに な る(19)。

① 置かれ た状 況の 中の未知 の要素 お よび不確 か な要素の検討 を考察す る こ とか ら始 める こと。… あい まい さ と不確 か さを受け入れ、 問題 を固 定化 しない こ とが重要 であ る。

②実行 可能 な さま ざまな解決 策 を探 る とい う ことは、問題 を明確 化す る こ ととは別 であ り、解決 策 を探 るため には よ り多 くの情 報 を必要 とす る。 …既 に述べ た ように、倫理 問題 をあ らか じめ対立す る諸価値 や問 題 の生 じてい る状 況が設定 され たジ レ ンマ もし くは多肢選択 問題 と見 なす よ り、 自由記述 問題 と見な した方が 適切 に対処で きる。 倫理 問題 は型 どお りの 「 決定 問題」 では な く、 問題 を解 決 しよう とす る と常 に 新 た な情報 が必要 とされ、 その1青報 に よっ て さらに問題状 況 や問題そ

の ものが変化 す る とい う性 質 を持 ってい る。

③ 時 間の制約 の もとで行動 す るこ とにかかわ る ものであ り、多 くの場合、

最初 か らい くつ か可能 な解 決策 を同時並 行 的 に進め てい くこ とが重要 で ある。

④ 倫理 問題 を静 的で固定化.した状況 と捉 え、決 ま り切 った解決 策 しか な

い とす る考 え とは対照 的 に、 問題状 況 は動 的性 質 をもってお り、それ

に伴 った さまざ まな問題 をは らんでい る。 問題状 況 とそれ に対 す るわ

れ われの理 解 は、 どち らも時 間の経過 と と もに変化 し発展 してい くも

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応 刑 倫 理 学 の 方 法 論 をめ ぐっ て6g

の で あ る 。

4.設 計 問 題 との ア ナ ロ ジ ー を ど う評 価 す る か

4‑1.応 用倫 理 学 方 法 論 か ら見 た設 計 問 題 との ア ナ ロ ジ ーの利 点

ウィ トベ ックの議 論 は主 に専 門家育成 の一環 と しての倫 理教育 を念頭 に 置 いた議論 だが、 もちろん必ず しも専 門家教 育 に限る もの では な く、道徳 教育一般 につい ての、そ して さ らに教 育の 視点か ら見 た倫理学 の新 たな方 向性 を示 唆 した もの と言 え よう。

倫理 問題 と設 計問題 の類似 点 は、 ウ イ トベ ックが論 じてい た よ うに、何 が最善 の解 であ るかが容易 に分か らない とい う点 にあ る。 それ は、問題へ の様 々な対 処法が可 能であ るか らとい うだけで な く、問題その ものが あ ら か じめ明確 で はないか らで もある。伊藤 に よれ ば、両 者の類似点 は、 その 解決 に よって は じめて問題その ものが定式化 され る点 にあ り、 さ らに 「 解 を提示す るこ とがその 問題 を理解 す るための手段 となる」。そ して、「 設計 問題 に解 を与 え る、す なわち要求 を満 たす 設計 を行 う とい うことは、 その 問題 自体 を定式化 し、詳細化 し、 具体 化す る とい う仕 方で、 い わば問題 自 体 を創造 す る作業 で もある」⑳ とされ る。

この ように、設計 問題 との アナ ロジーは、倫 理 問題 につ いて、既 に固定

化 された過去 の事 例 を後 か ら評価 す るので はな く、 現在進行形 の行為 の過

程 で、 われ われがそ の問題 をどの ように考 えた ら よいか につ い て論 じた も

のであ る。常 に変化す る状況 の なか で、 どの ように問題 に対 処 した らよい

のか とい う極 め て実践 的な倫理 的思考 の在 り方 を明確 にす る点で、設 計 問

題 との アナ ロジーは有効 であ る ように思 われ る。 ウ ィ トベ ックが指摘 す る

よ うに、従 来の倫 理学 は一般 に行為 の正 当化 の理 論 を構築 す る ことに焦点

を当てて きたが ゆえに、 われ われの生 きた道徳 的推 論過程 を明 らか に しよ

(12)

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うとは して こなか った。 もち ろん、それが どこまで可 能かは不 明で ある と して も、 こう した取 り組 みは、倫理 の教 育 を考 える場合 には特 にそ うであ ろ うが、 われ われ の道徳的推論 の過程 を明 らか に し、 それ をふ まえた応用 倫理学の方法論 を考 える上 で も有用 であ るよ うに思 われる。

また、 伊藤 が述べ る ように(21)、設計 問題 と倫 理 問題 の アナ ロ ジーは、

その拡張 に よって、道徳 判 断 一般 の さまざ まな制約 条件 を考 え る場合 に、

従 来の倫理学 であ ま り視野 に入 れ られて こなか った個 々人の価値 観や、人 生 につい ての意 味づ け、 自己 イメー ジの形 成 まで も視野 に入 れなが ら、多 様 な制約 の 中での最善 の選択 を見 出す過程 と して、道徳判断の プ ロセスを 考 え直す必要性 を含意す る もの と も解釈 で きよ う。

た だ し、両者 の 間には次の よ うな相違 点 もあ り、 それ をふ まえた上 で、

倫 理 問題 を行為 者 の視点 か らさ らに詳細 に描 写 して い くこ とが 必 要 にな る。 すなわ ち、 設計 問題 には、 その解 決が暫 定的 な ものであ って か まわな い、つ ま りい ったん設計 した もの を制 作 し作 品 をテス トした上で 、不具 合 が あれば修正 す る とい う手順 が織 り込 まれ てい るのに対 して、倫 理 問題 の 場合、 いったん答 え を出 して しまえば、それ はわれ われの行為 と してす ぐ

さま他者 に影響 を与 える ことになる とい う違いが あ るの ではないか。 もち ろん、い ったん行 った行為 に対す る フォロー は可 能 だが、 その フ ォロー 自 体が新 た な倫理 的対処 であ り、既 に為 された こ とを しなか った ことにで き るわけでは ない。 したが って、倫理 的行為 につ いて は、事後的 な新 たな倫 理的行為 に よる対処 は可能で あって も、事前 にその行為 の影響 を テス トす る ことはで きない とい えよう。

こう した意味 で、倫理問題 は発 見の文脈 の中 に、試行や テス トを含 まな いや り方での 正 当化 を組 み込 ん だ問題解決法 を必 要 とす る もの とい える。

設計 問題 は正 当化 の文脈 を発 見の文脈 の中 に組 み込 むこ とが相対 的 に容易

な構造 になってい るが、倫理 問題 で はそれ が困難 であ り、正 当化 の問題 に

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応 用 倫 理 学 の 方 法 論 をめ ぐっ て71

よ りセ ンシ テ ィブ に な る必 要 が あ る。 そ して そ の た め に は、 倫 理 判 断 の 正 当化 とい う概 念 自体 の 見 直 しが必 要 と され て い る と言 え るの で は なか ろ う か。

4‑2.設 計 問 題 との ア ナ ロ ジ ー へ の 批 判

倫 理 問 題 を設 計 問題 との ア ナ ロ ジー に よ って 考 え よ う とす る考 え に 対 し て は 、石 原 の を次 の よ うな批 判 が あ る。

「工 学 倫 理 ・技 術 者 倫 理 に は と もす れ ば 、 状 況 主 義 的 で 集 団 内 的 な 視 点 が 強 調 され る傾 向 あ る よ うに思 わ れ る 。 工 学 倫 理 は実 践 的 な道 徳 的 行 為 者 の 視 点 に立 つ こ と よ っ て 、倫 理 学 全 般 の 再 検 討 を迫 る可 能 性 を 秘 め て い る が 、 使 い 方 に よ っ て は 、 非 倫 理 的 行 為 の 正 当化 の 論 理 に も な りか ね な い」。(22)

「(状況 の)複 雑 性 」 や 「行 為 者 の 視 点 」 を過 度 に 強 調 す る こ とに は 一一一 種 の倫 理 学 的 な危 険性 が つ き ま と うの で は な い だ ろ うか 。 そ の つ どの 状 況 の 「制 約 」 を強 く受 け止 め れ ば、 ほ とん どの 非 倫 理 的 行 為 が 正 当 化 され て し ま う可 能 性 が あ る。 そ れ ゆ え に、 倫 理 学 者 は 行 為 者 の そ の つ どの 状 況 に過 度 に同 情 的 に な るべ きで は な く、 あ る種 の 物 分 か りの 悪 さ を発 揮 す べ き なの で は な い か 。 倫 理 学 者 は 、 あ えて 審 判 者 の 視 点 か ら、 個 別 の事 例 にお い て 行 為 者 が と るべ きで あ っ た 行 為 を 判 定 し、

類 似 の状 況 に お い て 、 行 為 者 が 利 用 で きる ガ イ ドラ イ ン を作 って い く べ きで あ ろ う。」(23)

こ こで の 懸 念 は、 倫 理 学 者 が 行 為 者 の 視 点 に立 つ こ とに よっ て 、 判 断 の 正 当化 に お い て も倫 理 的 制 約 と他 の 制 約 との オ レー ドオ フ の結 果 、 倫 理 的 制 約 の重 み が 不 当 に軽 ん じられ る こ とで あ ろ う。 もち ろ ん 、 こ う した事 態 は望 ま しい とは 思 わ れ な い。 しか し、ウ ィ トベ ッ クが 問 題 に して い るの は 、 我 々 が倫 理 学 者 と して で は な く一 人 の 入 間 と して倫 理 的 問題 に直 面 した 際

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に どう考 えた らよいか とい うこ とである。 その際、個 々人が倫理 学者の よ うに 「 物 分か りの悪 さ」 を発揮 す る ことは、何 が トレー ドオ フにか け られ てい るのか を安 易 に固定化 させ ようとす る態 度 に陥 りやすい とい う問題 を は らんで くる。 重要 のは価値 の ジ レンマ状況 に 陥った際 に、問題 を設定 し 直す こ とや、複 数の価値 を満足 させ るための新 たな選択肢 を創造 し、 よ り よい解 を見 出す ことで あろ う。 「 物 分か りの悪 さ」 は既 に確 定 した過去 の 判 断 を批 評す る には必要 な態 度で あるが、現在 進行 中の問題解 決 プロセス においては、状況 を固定化 させ 、創造的対応 を困難 にす る点で問 題で はな か ろ うか。 これ に関 して ウ ィ トベ ックは次の ように述べ てい る。

「さま ざまな事柄 を考慮 しな けれ ばな らない場 合 には、 それ ぞ れの事 柄 に付随 した道 徳的 な要請 や価値 のあいだ で、 緊張や対立 が生 じるこ

ともあ るだ ろ う。 しか した いて いの場合 、 これ らの要請 の多 くを、少 な くとも部 分 的 に、同時 に満 たす ことは可 能 であ る し、実際 そ うす る こ とが知恵 の証 であ る。 近年 、倫理 問題 に対す る一見常識 的 とも思 わ れ るこの よ うな考 え方の影 が 薄 いの は、倫 理 問題 を相反す る原則 ある いは義 務の あい だの解消不 可 能 な対立 と解釈 す る風 潮が あるため であ る。 」(24

さ らに、 こう した倫理教 育の場 での倫理学(者)の 役割 を考 えた場 合、諸

価値 の トレー ドオ フを考 える際 に倫理的価値 の重 要性 をその根拠 とともに

強調す る ことは必要 であろ う。 しか し、 こ うした役割 に加 えて、 われ われ

の倫理的判 断の構 造 やプ ロセス を明 らか に し、 そ う した対処法 の 中にいか

に新 たな正 当化 の システム を組 み 入れ るか を探 求 し、 それ を教育 に反映 さ

せ てい くこ とが 、今後 は よ り重 要 な役割 とな るの では なか ろ うか 。

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応 用 倫 理 学 の 方 法 論 をめ ぐっ て73

5.方 法 と して の パ テ ィ キ ュ ラ リズ ム の 可 能 性

さ て、 これ まで フ ァン ・デ ン ・ホ ーベ ン と ウ ィ トベ ックの 議 論 を紹 介 し なが ら、 応 用 倫 理 学 の 方 法 論 につ い て 述 べ て きた が 、 そ こ に は2つ の 異 な った取 り組 み方 が あ る こ とが 明 らか に な った 。 フ ァ ン ・デ ン ・ホ ーベ ン が取 り組 ん だの は、 応 用 倫 理 学 の 実 際 的諸 問 題 につ い て の道 徳 判 断 を正 当 化 す る の に必 要 な道 徳 原 則 を確 立 す る た め の 方 法 論 で あ っ た。 そ れ に対 し て 、 ウ ィ トベ ックが 強 調 した の は、 私 た ち が 現 実 の 道 徳 問題 に取 り組 む ま さ にそ の 時 点 ・現 場 で 必 要 と され る、 対 処 法 につ い て の 方 法 論 で あ った 。 フ ァ ン ・デ ン ・ホ ー ベ ンは、WREに よっ て 原 則 に 柔 軟 な改 定 可 能 性 を 与 える こ とに よ って 、 技 術 革 新 等 に よっ て もた ら され る新 た な状 況 に対 応 で きる 道 徳 判 断 の 正 当化 の方 法 を提 案 した とい え る。 しか し、 そ れ は あ く

まで も状 況 に応 じた 原 則 の改 定 可 能 性 を広 げ よ う とす る試 み で あ り、 そ れ は場 合 に よっ て は私 た ち の基 本 的 な倫 理 原 則 の 場 当た り的 な 変 更 を正 当化 す る論 理 と言 え な くもな い 。 とい うの も、WREの 方 法 を明 らか にす る こ

とは容 易 で は な く、 常 識 的 道 徳 判 断 と原 則 との 問 の均 衡 を どう とる か に関 して は、 パ テ ィ キ ュ ラ リ ズ ム と 同 じ よ う な曖 昧 さ を抱 え て い る か らで あ る。

また 、 私 た ち は確 か に 、 道 徳 判 断 を行 う際 に 基 本 的 な倫 理 原 則 に拘 束 さ れ て い る 。 しか し、 そ れ は倫 理 問題 へ の 対 応 にお い て 、 道 徳 原 則 が 一 つ の 制 約 と して働 い て い る とい う こ とで あ っ て 、 そ れ 以 外 の 制 約 条 件 や状 況 に 応 じて、 そ の 原 則 が どの 程 度 の重 み を持 つ か は、 や は りそ のつ ど変 化 す る で あ ろ う。 道 徳 問 題 を様 々 な 条 件 との トレー ドオ フの 中で 考 え よ う とす る ウ ィ トベ ッ クの 考 え は、 ま さに この よ うな 道 徳 問 題 の特 徴 をふ ま え た考 え で あ る とい う こ とが で きる。 フ ァ ン ・デ ン ・ホ ー ベ ン 自身が 、 応 用 倫 理 学 の 方法 の 妥 当性 に 関す る基 準 と して 設 定 した 「基 準2」 、 す な わ ち 、 「道 徳

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的 推 論 の 〈ダ イ ナ ミク ス〉 をモ デ ル 化 し、 推 論 の 跡 を た どる 助 け と な る」

た め に も、 この よ うな状 況 に応 じた 変 化 に対 応 で きるモ デ ル が 必 要 と な る だ ろ う。 したが って 原 則 主 義 も、 フ ァ ン ・デ ン ・ホ ー ベ ン 自身 が エ ン ジニ ア リ ング ・モ デ ル に 対 して 加 え た批 判 を免 れ な い とい う問題 を抱 え て い る の で あ る。

さ らに、 原 則 につ い て の われ わ れ の 知 識 の 在 り方 とい う点 で も、 彼 の 理 解 で は 原 則 その もの が 命 題 化 され う る抽 象 的 知 識 と して しか 考 え られ て い な い。 しか し、 わ れ われ は そ う した知 識 を単 な る 抽 象 的 な 命題 と して で は な く・ 原則 と事 例 が 結 びつ い た経 験(事 例)や 物 語 とい う形 で 参 照 して い るの で は な い か とい う批 判 に も応 え られ な い もの と思 わ れ る(25)。そ の 意 味 で 、 フ ァ ン ・デ ン ・ホー ベ ンの試 み は、 た と え新 た な状 況 で の 道 徳 判 断 を正 当化 す る た め の 方 法論 を述 べ た もの と理 解 し た と して も、 不 十 分 な も の とい わ ざる を え な い。 そ して もち ろ ん 、 正 当 化 の 文 脈 を離 れ て 、 さ らに

「行 為 者 」 と して の 私 た ちの 現 実 の 道 徳 的 推 論 の 方 法 を明 らか に す る もの と も言 え な い。

行為 者 の 視 点 に 配 慮 した 上 で正 当 化 の 問 題 を考 え て み る と、 フ ァ ン ・デ ン ・ホ ーベ ンの 正 当化 が 、 既 に定 式 化 され た 問 題 を観 察 者 の 視 点 か ら行 わ れ る もの と想 定 され て いた の に対 して 、 わ れ わ れ の 日常 的 道 徳 判 断 の正 当 化 は 、行 為 の 中 で常 にそ のつ ど何 が 問題 なの を改 め て定 式 化 し直 す 作 業 と 同 時 に進 め て い る点 に注 目す る必 要 が あ る。 ウ ィ トベ ックが 強 調 した よ う に、 われ われ の 行 為 の 判 断 は、 時 間 的 推 移 の 中 で 、 状 況 の 変 化 や 、 新 た な 情 報 の 追加 に伴 っ て 、 そ のつ ど変 化 して い か ざ る を え な い。 もち ろ ん 、 あ る一 定 の 時 間 で 区 切 る こ とに よっ て 、 状 況 を固 定 させ て考 え る こ とが 必 要 な場 合 もあ るだ ろ う。 しか し、 そ れ は実 際 の道 徳 判 断 の 一 つ の 断 面 に す ぎ ず 、 実 際 の わ れ わ れ の道 徳 判 断 は 、 そ もそ も何 が 問 題 で あ る の か に 関 す る 了解 や 、 ど こ まで が 共 通 認 識 と され て い る の か に 関 す る問 題 で あ る こ とが

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応 川 倫 理 学 の 方 法 論 を め ぐっ て75

多 々 あ り、 こ う した す れ 違 い を解 消 して い く こ と 自体 が 道 徳 的推 論 の重 要 な構 成 要 素 だ と考 え られ る。

こ の よ うな 原 則 主 義 の 問 題 とわ れ わ れ の 道 徳 判 断 の特 徴 を 考 え た場 合 、 上 に述 べ た極 端 で ない 形 で のパ テ ィキ ュ ラ リズ ム の 可 能性 を こそ 、 さ らに

追 究 す る必 要 が あ るの で は な か ろ うか 。 こ う考 え た と き、 ウ ィ トベ ックの 立場 を批 判 的 に捉 え直 す こ とが 必 要 だ と思 わ れ る。 と い うの も、 彼 女 の 立 場 は 、 行 為 者 の 視 点 か らの道 徳 的 思 考 が 、何 らか の 理 論 を現 実 の 場 面 に 当 て は め る だ け で は 対 処 で きな い 問 題 で あ る と捉 え る点 でパ テ ィキ ュ ラ リズ ム の 立場 に立 つ もの と も言 え るか らで あ る。 彼 女 の 議 論 は、 道 徳 問題 の解 決 法 をで きる だ け ブ ラ ッ クボ ッ クス 化 させ な い た め に必 要 な手 続 きに つ い て 、 設 計 問題 との ア ナ ロ ジー を用 い なが ら検 討 した もの と見 る こ とが で き る。 私 た ちが 倫 理 問 題 を考 え る際 、 確 か に様 々 な 条 件 の トレー ドオ フに 配 慮 しなが ら、 常 にそ の つ ど一 定 の状 況 の 中 で の最 善 の 選 択 をす る こ とが 求 め られ て い る。 しか も、 そ れ は最 終 的 な解 決 で は な く、 何 が トレー ドオ フ にか け られ るべ きか も当 の 問 題 解 決 の過 程 に お い て は じめ て 明 らか に な る とい っ た場 合 が しば しば で あ る。 こ う した 点 を重 視 し、 問題 の 創 造 的 解 決 を方 法 は、 分 析 で は な く総 合 的 思 考 が必 要 で あ るが ゆ え に、 そ れ を言 語 化 す る こ とは完 全 に は不 可 能 だ と して も、 で き るだ け明 らか にす る必 要 が あ る。

しか し、 こ こで2つ の 点 に留 意 して お く必 要 が あ る 。 一 方 で 、 ウ ィ トベ ッ クは、 カ ズ イス トリー や ケ ー ス ・メ ソ ッ ドとい っ た 方 法 を とる従 来 の パ テ ィキ ュ ラ リズ ムが 、 事 例 を選 択 問 題 と して扱 っ て きこ とを批 判 して い る こ と を忘 れ て は な らな い とい う こ とで あ り、 他 方 で 、 ウ ィ トベ ックの 考 え を離 れ れ ば、 そ れ らの パ テ ィキ ュ ラ リス テ ィ ッ クな思 考 法 が 、 行 為 者 の 視 点 か らも有 用 で あ る 点 を見 落 と して は な ら ない とい う こ とで あ る 。 ウ ィ ト ベ ック は 、既 に述 べ た よ うに、 行 為 者 が 倫 理 問 題 を考 え る際 に、 発 見 と総

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合 の 能 力 が 必 要 で あ る こ と を指 摘 して い る。 こ う した 発 見 と総 合 は、 ゼ ロ か ら可 能 に な る わ け で は な く、 これ まで の経 験 の積 み 重 ね を経 て 、 行 為 者 が持 つ 一 つ の技 能 と して習 得 され る 能力 で あ るが 、 そ れ は カ ズ イス トリー の 方 法 に あ る他 の 事 例 との類 比 を用 い た り、事 例 の なか に含 まれ る問 題状 況 の 具体 的 な在 り様 や 関係 者 の 感 情 な ど とい っ た様 々 な要 因 に配 慮 す る能 力 と して培 わ れ る もの であ る。

したが っ て 、 行 為 者 の視 点 か らの 道 徳 的 思 考 を、 パ テ ィキ ュ ラ リス テ ィ ック な道 徳 的 思 考 法 と して 明 確 化 して い くこ と こそ 、 そ の 手法 の ブ ラ ック ボ ックス 化 を 防 ぎ、 なお か つ 教 育 的 な視 点 か ら も有 効 な応 用 倫 理 学 の方 法 論 を構 想 す る こ とに な る と考 え られ る。

この よ うな視 点 か らウ ィ トベ ック の議 論 を振 り返 っ てみ る と、 例 え ば彼 女 は 人権 の尊 重 とい った よ う な最 低 限 の 条 件 を ク リアす る な どの 条 件 を示 す こ とに よ って 、 複 数 の解 の 中 に も誤 った 解 が あ る こ と を明記 す る こ とに よ っ て、 状 況 に 即 した解 が す べ て 正 当化 され る わ け で は な い こ と を示 して い る。 しか し、 こ う した条 件 に な りうる判 断 基 準 は何 か が 問 題 に な る。 何 が 保 障 され るべ き人 権 なの か は文 脈 に よっ て 変 化 し う る。 また 、 そ の他 の 一 般 的 な 療理 ・原則 との整 合 性や、 さ ま ざ まな 制約 を どれ だ け調 和 的 に充 足 して い る か も、 一 定 の基 準 と して 機 能 し うる と して も、 そ れ らは いず れ も妥 協 の 産 物 で あ る こ とは 間違 い な い 。 した が っ て 、 そ の 妥 協 が 倫 理 的 に 正 当 化 し うる か ど うか が 問 わ れ る こ とに な る。

た しか に 、倫 理 問 題 を単 に既 存 の 諸 価 値 問の 制 約 の 中 で 考 え る だ け で な く、 問 題 を新 た に組 み 替 え、 行 為 の 新 た な選 択 肢 を創 造 す る とい う総 合 的 な思 考 が重 要 で あ る とは い え 、 そ の 方 法 を よ り具 体 的 に定 式 化 す る こ とは 容 易 で は な い 。 た だ 、 彼 女 が 述 べ る よ う に、 「倫 理 問 題 の場 合 、 問 題 を よ く問 い た だす こ とに よっ て新 た な 情 報 が得 られ る た び に、 と りう る対 応 策 の 望 ま し さは た え ず 変 わ っ て い く」(26)も の で あ り、 した が っ て 、 従 来 の

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応 用 倫 理 学 の 方 法 論 をめ ぐ って77

倫 理学 が 判断の正 当化 を考 える際 には既 に当然 の前提 とされてい て十分 に 考慮 されてい なか った、問題 を生 じさせ て い る状 況 をで きるだけ詳 し く調 べ るこ と、つ ま りその状 況 に働 きか け、揺 り動 かす こ とに よって 問題 の新 た な側 面 を浮か び上 が らせ る ことの重要性 を指摘 す るな どは、 そ のつ どの 判断の正 しさの程度 を考 える際 には、重 要 な指標 となるだ ろ う。

また、倫 理の問題が 人間関係の 中で生 じる ものであ る ことを考慮 すれ ば、

そ うした総合的思考 を、単 に一 人の人 間の抽 象的思考 の 中に閉 じこめ るの で はな く、 われ われの相互交渉 の中での 人間関係の在 り方 の変化 や経時 的 な考 えの変化 を も考 慮 に入れ なが ら、問題へ の対処 を考 えてい くことが 必 要だ と言 えるだろ う。道徳 問題 を、0人 の 主体 的個 人の個 々の行 為 を単位 に してその対処の仕 方の問題 として考 えた場 合、試行錯 誤 に よる正 当化 の 過程 を取 り込め な くな るの に対 して、道徳 問題へ の対 処 を、 人々の 間で の 人 間関係 の変化 に よって 問題 を解消 してい く過 程 だ と捉 える こ とに よっ て、設計 問題への対 応 と同様 に、 人 々の 問で問題 に関す る何 らかの解 を提 示す る こ とが、 当の道徳 問題へ の最 終的 な(正 当化 を必要 とされ る)解 と なる行為 と してではな く、 む しろ よ りよい(問 題が意 識 されない とい う意 味で)人 間関係 の構 築の ための一種 の正 当化の過程 として捉 える ことが 可 能 とな るの では なかろ うか。 これ につ いて彼女 は次 の よ うに述べ ている。

「ど うすれ ば よいエ ンジニ ア、 よい教 師、 よい親 、 よい友 人 になれ る か とい う個 々の人 間にかか わる問題 に して も、 医療 制 度の整備や環 境 保護 の ように社 会 にかかわ る問題 に して も、 お よそ急 を要す るすべ て の 問題 は さまざまな制約 を ともな う もので あ り、そ の解 決 には、多 く の 人 々や組 織 が た えず意 見 を述べ 、監 視 しつづ け る こ とが 必 要 に な

る。」(27)

こう した手法 は、人 々の間での合意形 成の ルー ル とい った形式的 ・手続 き

的正義 を求 め るこ とにな るか もしれ ない。 ただ し、そ れは設計 問題 との ア

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7$

ナ ロ ジー か らは 直接 に導 か れ る もの で は な い た め 、行 為 者 中心 的 ア プ ロー チ の 内 実 を よ り詳 細 に検 討 して い くこ とが 、今 後 の課 題 とな ろ う(28)。

6.ま と め

す で に見 た よ う に、 近代 倫 理 学 は、 道 徳 判 断 の 正 当化 の根 拠 とな る原 則 の基 礎 付 け を主 要 な 課 題 と して きた。 しか し、 い わ ゆ る応 用 倫 理 的 諸 問 題 へ の 対 応 にお い て 、一 つ の 、 あ る い はい くつ か の 原理 ・原 則 を持 ち 出す こ とに よ って 現 実 の倫 理 問題 につ い て の 正 解 を見 出 そ う とす る試 み が 困 難 で あ る こ とが 明 らか に な っ た。

こ う した状 況 にお い て 、 フ ァ ン ・デ ン ・ホ ー ベ ンは、 状 況 の変 改 に柔 軟 に対 応 で きる よ うに 原 則 を変 更 す る た め の 手 続 き と してWREと い う方 法 を提 示 した 。 そ れ は 、 私 た ち が倫 理 判 断 の過 程 で、 原 理 ・原則 を参照 し

て い る とい う現 実 をふ ま えれ ば、 倫 理 学 に お い て 必 要 な作 業 だ と考 え られ る。 しか しそ れ は、 人 々が 現 実 の行 為 の 中 で ど う考 え る か につ い て の方 法 論 で は な く、 正 当化 の 原 則 を どの よ うに 修 正 す べ きか につ い ての 方 法 論 で あ り、 行 為 者 の視 点 か らの 道 徳 判 断 の た め の 方 法 論 で は な い 。 つ ま り、 彼 はWREに よ って 原 則 と実 践 の往 復 に よ る、 原 則 そ の もの の 実 践 的 視 点 か らの 見 直 しの必 要 性(現 場 に即 したmidlevelの 原 則 をつ くる必 要)を 述 べ たが 、 そ れ を使 用 す る実 際 の 行 為 の 場 面 で は、 や は り原則 の 「応 用 」

を念 頭 に置 い て い た の で あ る。 した が っ て 、 彼 の 考 えで は、 現 実 の 道 徳 問 題 が 、単 に原 理 ・原 則 を参 照 す るだ け で は解 決 で きる もの で は な い とい う

こ とへ の 配慮 が 十 分 に な され てい な い と言 え る。

私 た ちは 道 徳 判 断 の 過 程 にお い て、原 理 ・原 則 を適 用 す る だ け で は な く、

何 が 道 徳 的 に 問 題 で あ るの か 、 何 が 考 慮 に入 れ られ るべ き事 実 なの か とい った こ とを常 に規 定 し直 しな が ら、 そ の状 況 に も っ と もふ さ わ しい対 処 を

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応 川 倫 理 学 の 方 法 論 をめ ぐ って7g

探 して い く作 業 こそ が 、 道 徳 的推 論 の過 程 で あ り、 そ う した 推 論 の現 実 の 姿 に即 した道 徳 的 推 論 の あ るべ き姿 を構 築 して い くこ と こそ が 、 応 用 倫 理 学 の 方 法 論 と して も必 要 不 可 欠 だ と考 え られ る。 ウ ィ トベ ック の 方 法 は、

… 般 的 な 原理 ・原 則 の必 要性 を認 め な が ら も、 行為 の 場 面 で の パ テ ィキ ュ ラ リス テ ィ ック な方 法 を強 調 す る もの と言 え る。 両 者 と も極 端 な ジ ェ ネ ラ リ ズ ム と極 端 なパ テ ィ キ ュ ラ リ ズ ム を廃 す る 点 で 共 通 す る もの で は あ る が 、 そ の 間 に は大 きな溝 が あ る と も言 え る。 こ こで は ウ ィ トベ ッ クに与 す る立 場 か ら、 フ ァ ン ・デ ン ・ホ ー ベ ンが パ テ ィキ ュ ラ リ ズム の 問 題 と して 批 判 した 正 当化 の 問 題 に対 処 す る方 法 を 、 ウ ィ トベ ックが あ る程 度 明 らか に して い た こ と、 そ して そ れ を さ らに探 求 して い く必 要 が あ る こ とが指 摘 され た 。 そ の際 、 一 方 で フ ァ ン ・デ ン ・ホ ー ベ ンが 目指 した よ うな0般 的 な ルー ル につ い て の 合 意 形 成 の 方 法 と、 そ う した0般 的 な ルー ル と個 別 の 決 断 との 関係 を よ り詳 細 に考 察 す る必 要 が あ る だ ろ う。

注

(1)J.vandenHoven,ComputerEthicsandMoralMethodology,inCiberethics‐

5̀,c'α1&〃̀,rα1'5∫L̀8∫fη'加Cθ 配 ρL̀'θrAgθ 一,ed.R.M.Baird,R.Ramsowerand S.E.Rosenbaum,PrometheusBooks,2000,p.Sl.

(2)ibid.,p.82.

(3)ibid.,pp.82‑4.

(4)ibid.,p.86.

(5)ibid.,pp.87‑8.

(6)ibid.,pp.88‑90.

(7)1:記 の 他 に 、 川 本 隆 史 『現 代 倫 理 学 の 冒 険 一 社 会 理 論 の ネ ッ ト ワ ー キ ン グ へ 一 』 創 文 社 (1995)、104‑5頁 も 参 照 。

(8)以 ド、CrolineWhitbeck,ProblemsandCases=NewDirectionsinEthics1980‑1996

を 参 照 。 引 川 は ド記 の ウ ェ ブ サ イ ト を 利 川 し た た め ペ ー ジ 数 は 記 し て い な い 。 http:〃onlineethics.org/essays/education/probcase.html

(22)

80

(9)CarolineWhitbeck,EthicsinEngineeringPractic.・eandResearch,Cambridge

UniversityPress,X998,P.72.(邦 訳:C.ウ イ トベ ッ ク 『技 術 倫 理1』 、 札 野 ・飯 野 訳 、 み す ず 書 房 、1!192頁)

(10)ibid.,p.54.(邦 訳 、69頁) (11)ibid.,p.55.(邦 訳 、69頁) (12)ibid.,P.55.(i月 信 尺、70[t‑' (13)ibid.,p.55.(邦 訳 、69頁) (14)ibid.,P.55.σ …陥 尺、70∫ ご) (15)ibid.,P・55.G耶 匪沢 、70ア{) (16)ibid.,P,57.(邦 訳 、72頁) (17)ibid.,p.58.(タ1〜 満尺、73‑4ttF) (18)ibid.,P.60.(邦 訳 、76‑7頁)

(19)ibid.,pp.62‑6.(邦 訳 、79‑85頁)参 照 。

(20)伊 藤 均 「設 計 に も と つ く]:学 倫 理 」(齋 藤 ・岩 崎 編 『工 学 倫 理 の 諸 相 』 ナ カ ニ シ ヤ 出 版 、 2005所 耳又)、98頁 。

(21)伊 藤 均 「設 計 問 題 と 倫 理 問 題 の ア ナ ロ ジ ー‑1:学 倫 理 教 育 を 接 点 と し て 」、 『Prospectus』

No.4(京 都 人 学 哲 学 研 究 室)。

(22)石 原 孝 一=「 」二学 倫 理 に 外 的 な 視 点 を 導 人 す る 必 要 牲 」(『 社 会 哲 学 研 究 資 料 集1』2002所 収) 234頁 。

(23)1司 」=、234‑5∫{。

(24)Whitbeck,ob.cit.,PP.62‑fi.(邦 訳 、79‑85.fir1)参lli,,,.。

(25)こ う し た 批 判 に つ い て は 、 例 え ば 、 レ イ ヴ ら に よ る 正 統 的 周 辺 参 加 論 や 、 わ れ わ れ の 実 践 知 の 在 り 方 に 関 す る ド レ イ フ ァ ス や ベ ナ ー の 議 論k+,j一を 紹 介 し た ド記 の 拙 論 を 参 照 さ れ た い 。 坪 井 雅 史 「道 徳 的 行 為 を 導 く も の 一 ケ ア の 倫 理 と 道 徳 的 行 為 へ の 思 考(1)一 」、 『哲 学 』

第4917r1(広 島 哲 学 会)、1997年 、85‑96頁 。 (26)ibid.,p.64.(非1̀,沢 、82頁)

(27)ibid.,P.73.(邦 訳 、93頁)

(28)こ う し た 取 り 組 み の 環 と し て 、 筆 者 が 既 に)Gし た も の に は 次 の よ う な も の が あ る 。 坪 井 雅 史 「医 療 情 報 と 物11トNBMの 視 点 一 」(越 智 ・板 井 編 『医 療 情 報 と 生 命 倫 理 』 太 陽 出 版 、2004年 所 収)。

参照

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