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様 式 D-14
学 位 論 文 の 要 旨
論 文 題 目
生 体 に お け る リ ン 代 謝 異 常 に 関 す る 研 究
HD15E001 河 村 弘 美
1. 緒 言
リ ン は 生 体 に 必 須 の 栄 養 素 で 、 生 体 機 能 維 持 に 重 要 で あ る 。 血 中 リ ン 濃 度 は 、 副 甲 状 腺 ホ ル モ ン ( PTH)、 活 性 型 ビ タ ミ ン D(1,25[OH]
2D)、 線 維 芽 細 胞 増 殖 因 子 23( FGF23) に よ り 恒 常 性 を 保 っ て い る 。 食 事 か ら 摂 取 し た リ ン は 腸 管 で 吸 収 さ れ て 骨 や 血 中 に 蓄 積 し 、 過 剰 な リ ン は 腎 臓 に よ っ て 尿 中 へ 排 泄 さ れ る が 、 濾 過 さ れ た リ ン の 約 80%は 腎 臓 で 再 吸 収 さ れ る 。 リ ン 酸 ト ラ ン ス ポ ー タ ー を 介 し た 腎 臓 で の 再 吸 収 ・ 排 泄 に よ る 調 節 機 構 は 、 リ ン 調 節 の 中 心 的 役 割 を 担 っ て い る 。 こ れ ら の ホ ル モ ン や 関 連 臓 器 に 異 常 が 生 じ る こ と で リ ン 代 謝 調 節 機 構 が 破 綻 し 、 生 命 予 後 に 悪 影 響 を 及 ぼ す 高 リ ン 血 症 や 低 リ ン 血 症 を 引 き 起 こ す 。 高 リ ン 血 症 を 呈 す る 主 な 病 態 に 、 慢 性 腎 臓 病 ( CKD) が あ る 。 腎 機 能 低 下 に よ っ て リ ン 排 泄 が 不 十 分 と な り 血 中 リ ン 濃 度 が 上 昇 し 、 心 血 管 疾 患 ( CVD) に つ な が る 。 CKD患 者 に お け る 高 リ ン 血 症 の 管 理 に は 、 食 事 か ら の リ ン 摂 取 制 限 が 必 須 で あ る 。 し か し 、 リ ン は 食 品 添 加 物 と し て 多 用 さ れ て い る た め 、 リ ン の 管 理 は 困 難 で あ る 。 そ こ で 、 リ ン 制 限 に 有 用 な 食 事 療 法 の 探 索 の た め 、 リ ン の 形 態 差 に 着 目 し て 血 管 内 皮 機 能 へ の 影 響 を 検 討 し た 。 低 リ ン 血 症 を 呈 す る 主 な 病 態 と し て 、 リ フ ィ ー デ ィ ン グ 症 候 群 ( RFS ) が あ る 。 RFSは 、 低 栄 養 患 者 に 急 速 に 栄 養 補 給 を 行 っ た 際 に 起 こ る 代 謝 性 疾 患 で あ る 。 し か し 、 リ フ ィ ー デ ィ ン グ に よ る 低 リ ン 血 症 の 発 症 メ カ ニ ズ ム の 詳 細 は 不 明 で あ る 。 そ こ で 、 低 リ ン 血 症 を 呈 す る RFSモ デ ル を 動 物 で 作 製 し 、 発 症 メ カ ニ ズ ム の 解 明 を 試 み た 。
2. 食 事 性 無 機 リ ン 摂 取 が 血 管 内 皮 機 能 に 及 ぼ す 影 響 2-1. 背 景
食 事 か ら 摂 取 す る リ ン は 、 主 に 天 然 食 品 に 由 来 す る 有 機 リ ン と 食 品 添 加 物 に 由 来 す る 無 機 リ ン に 大 別 さ れ 、 腸 管 で の 吸 収 率 が 異 な る 。 近 年 、 リ ン は 食 品 添 加 物 と し て 加 工 食 品 に 多 用 さ れ て お り 、 過 剰 摂 取 が 問 題 と な っ て い る 。
高 リ ン 血 症 の 影 響 の 一 つ に 、 動 脈 硬 化 に 関 与 す る 血 管 内 皮 細 胞 の 機 能 障 害 が あ る 。 先 行 研 究 に て 、 高 リ ン 食 摂 取 に よ り 血 管 内 皮 機 能 が 低 下 す る こ と が 報 告 さ れ て い る が 、 リ ン の 形 態 差 に よ る 影 響 の 違 い は 不 明 で あ る 。 本 研 究 で は 、 有 機 リ ン ま た は 無 機 リ ン を 多 く 含 む 高 リ ン 食 の 摂 取 に よ り 、 リ ン の 形 態 差 が 血 管 内 皮 機 能 に 及 ぼ す 影 響 に つ い て 検 討 し た 。
2-2. 対 象 と 方 法
健 常 男 性 6名 を 対 象 に 、 ク ロ ス オ ー バ ー デ ザ イ ン を 用 い た 喫 食 試 験 を 行 っ た 。 試 験 食 に は 、 高 有 機 リ ン 食 ( 有 機 リ ン 1,200 mg) と 高 無 機 リ ン 食 ( 有 機 リ ン200 mg、 無 機 リ ン 1,000 mg) を 用 い た 。 試 験 食 の 摂 取 前 お よ び 摂 食 後 30、 60、 120 分 に お い て 、 血 中 リ ン (Pi)、 カ ル シ ウ ム ( Ca )、 1,25(OH)
2D 、 intact PTH 、 FGF23 の 測 定 、 尿 中 Pi 、 Ca 、 ク レ ア チ ニ ン
( Cre ) の 測 定 、 血 管 内 皮 機 能 と し て 血 流 依 存 性 血 管 拡 張 反 応 ( FMD) 測 定 を 行 っ た 。
2-3. 結 果 お よ び 考 察
血 清 Pi濃 度 は 、 高 有 機 リ ン 食 で は 摂 取 後 の 変 化 は 見 ら れ な か っ た が 、 高 無 機 リ ン 食 摂 取
後 で は 有 意 に 増 加 し た 。 試 験 食 間 を 比 較 す る と 、 高 無 機 リ ン 食 は 高 有 機 リ ン 食 に 比 し て 有
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意 に 高 値 を 示 し た ( Fig.2-1)。 ま た 尿 中 Pi値 も 、 高 有 機 リ ン 食 に 比 し て 高 無 機 リ ン 食 に お い て 摂 取 後 60、 120 分 で 有 意 に 高 値 を 示 し た 。 血 清 1,25(OH)
2D、 intact PTH 、 FGF23 濃 度 は 、 試 験 食 間 の 差 は 見 ら れ な か っ た 。
%FMDは 、 高 有 機 リ ン 食 で は 摂 取 後 30 分 、 高 無 機 リ ン 食 で は 摂 取 後 30分 、 60分 に お い て 、 0 分 よ り 有 意 に 低 下 し た 。 個 人 差 が 見 ら れ た た め 、 %FMD を 0分 か ら の 変 化 率 を 検 討 し た 結 果 、 摂 取 後 30分 で 、 高 無 機 リ ン 食 で 有 意 な 低 下 を 示 し た ( Fig.2-2)。
本 研 究 で は 、 高 有 機 リ ン 食 に 比 し て 、 高 無 機 リ ン 食 は 血 中 P i濃 度 お よ び 尿 中 P i排 泄 を 上 昇 さ せ 、 %FMDを 低 下 さ せ る こ と が 示 さ れ た 。 以 上 よ り 、 健 常 男 性 に お い て 、 有 機 リ ン に 比 し て 無 機 リ ン が 血 管 内 皮 機 能 に 強 い 影 響 を 及 ぼ す こ と が 明 ら か と な っ た 。
3. 血 中 リ ン と 血 管 内 皮 機 能 に 及 ぼ す 水 溶 性 食 物 繊 維 の 効 果 3-1. 背 景
前 述 の よ う に 、 高 リ ン 摂 取 は 血 管 内 皮 機 能 を 低 下 さ せ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 血 中 Pi 濃 度 を 低 下 さ せ る 方 法 と し て 、 一 般 に リ ン 吸 着 薬 が 使 用 さ れ て い る が 、 副 作 用 に よ り QOL が 低 下 す る 可 能 性 が あ る 。 食 事 に よ る 高 リ ン 血 症 の 予 防 法 と し て 、 CKD モ デ ル ラ ッ ト に お い て 水 溶 性 食 物 繊 維 の 摂 取 に よ り 血 中 リ ン 上 昇 を 防 ぐ こ と が 報 告 さ れ て い る 。 本 研 究 で は 、 無 機 リ ン に よ る 血 管 内 皮 機 能 低 下 を 防 ぐ 手 段 の 探 索 と し て 、 血 中 リ ン と 血 管 内 皮 機 能 に 及 ぼ す 水 溶 性 食 物 繊 維 の 効 果 に つ い て 検 討 し た 。
3-2. 対 象 と 方 法
健 常 男 性 17名 を 対 象 に 、 グ ァ ー 豆 酵 素 分 解 物 100%水 溶 性 食 物 繊 維 18 g/日 を 2週 間 、 原 則 1 日 3 回 食 前 に 摂 取 さ せ た 。 摂 取 前 後 に 、 食 事 調 査 、 便 調 査 、 身 体 計 測 、 採 血 を 行 い 、 血 管 機 能 調 査 と し て 心 臓 足 首 血 管 指 数 ( CAVI)、 足 関 節 上 腕 血 圧 比 ( ABI)、 血 管 内 皮 機 能 検 査 と し て FMDを 測 定 し た 。
3-3. 結 果 お よ び 考 察
血 中 Pi濃 度 は 、 摂 取 前 後 の 変 化 は な か っ た 。 摂 食 前 に 行 っ た 食 物 摂 取 頻 度 調 査 で は 、 リ ン 摂 取 量 は 目 安 量 を 上 回 り 、 食 物 繊 維 摂 取 量 は 基 準 を 満 た し て い な か っ た 。 食 事 調 査 お よ び 便 調 査 に お い て 、 摂 取 前 後 で 変 化 は 示 さ れ な か っ た 。
血 管 機 能 で は 、 CAVIお よ び ABIに 変 化 は 見 ら れ な か っ た 。 一 方 、 %FMD は 食 物 繊 維 摂 取 後 に 有 意 な 上 昇 を 示 し た 。 さ ら に 、 摂 食 前 の 血 中 リ ン 濃 度 で 正 常 高 値 ( Pi≧ 3.5 mg/dL) と 正 常 低 値 ( Pi<3.5 mg/dL) に 分 け 、 %FMDの 変 化 を 検 討 し た 結 果 、 血 中 リ ン 正 常 高 値 群 で 有 意 に %FMD が 改 善 し た 。 ま た 、 摂 食 前 の FMDを 3 分 位 に 分 け 、 上 位 群 と 下 位 群 の %FMDを 比 較 し た 結 果 、 FMD下 位 群 に お い て % FMDの 有 意 な 上 昇 が 示 さ れ た 。
以 上 よ り 、 水 溶 性 食 物 繊 維 の 摂 取 に よ っ て 血 管 内 皮 機 能 の 改 善 効 果 が 示 さ れ た 。 さ ら に 、 Fig.2-1 Changes in serum Pi
Changes in serum Pi over time. *p<0.05, **p<0.01.
Fig.2-2 Changes in %FMD
Influence of organic and inorganic Pi meals on endothelial function over time. Time course of relative change of %FMD from preprandial. *p<0.05.
○ High organic Pi meal
● High inorganic Pi meal