投資信託(証券共同投資組織)の運用規模
その他のタイトル Working Scale of Investment Trust
著者 今西 庄次郎
雑誌名 關西大學商學論集
巻 9
号 4
ページ 291‑312
発行年 1964‑10‑30
URL http://hdl.handle.net/10112/00021590
大きい収益を謳うのは︑矛盾したことになる︶︒
︵今
西︶
一 銘 柄 の 組 入 れ 限 度
の運用規模
証券共同投資組織の運用に於ける規模の問題として︑先ず取上げるべきは︑
一銘柄の組入れ限度である︒
改めて云うまでもなく︑共同投資組織に於ける分散投資の狙いは︑或る銘柄に対する投資が失敗した場合の痛手 を減少せしめんとするにあり︑勿論その減少は他の銘柄に於ける利益で平均化するにより達成されるのである︵従 って︑分散投資は︑又︑他の銘柄の利益を削り鈍化さす仕組でもある︒我国で往々見受る︑分散投資を掲げながら
このため︑分散投資は平均化が出来るよう︑組入れ銘柄数を多く しなければならないのは勿論として︑更に︑そのうちの或る銘柄に集中することを避けなければならないのである︒
素より︑このことから︑分散投資の理想の姿は︑組入れ銘柄に乎等に投資することだとなしてはならない︒組入れ
銘柄数五0
のとき各銘柄に二︒ハーセントづつ投資するが如きは芸のない寧ろ拙ずい投資だと云ってよい︒蓋し共同 投資組織がそれぞれ特色ある運用をなすには︑例えば投機兼投資目的の共同投資組織では或る種の成長株に重点的 な投資をなし︑叉投資本位の共同投資組織では或る種の利回り採算株に最も多くの資金を向けるが如きことを行う べきであるからである︒たゞ共同投資組織ではこのように重点的投資を行うてよいとしても︑その度を越すに至れ
投資信託︵証券共同投資組織︶の運用規模
投資信託︵証券共同投資組織︶
今 西 庄 次 郎
なり
︑
り︑場合によってそれぞれの数と度合を等しくしないとしても︑一応等しいとみるのが穏当とされるという所にあ 投資信託︵証券共同投資組織︶の運用規模
ば︑その銘柄に相当な損失が生じたとき︑他の多くの銘柄で平均することが困難ともならんとし︑ここに分散投資
一銘柄に投資する資金の分量に或る限度をもたさなければならないとなるのである︒
然らば︑共同投資組織に於て一銘柄に投資してよい限度はどの位であろうか︒
これを決する理論的な構想は︑組入れ銘柄のうちの或る︱つの銘柄と残りの全銘柄との関係は︑残りの銘柄の中
にはその或る銘柄と同一方向︑即ち増配︑値上りの方向をとるものと︑逆に減配︑値下りの方向をとるものとがあ
る︒この構想に立つところ︑一銘柄に対する投資率は︑残りの全銘柄に対する投資率の半ばを加えた大いさと︑残
りの全銘柄に対する投資率の半ばの大いさとがバラソスを失しないようにするということが︑分散投資の精神から
当然に要請されることとなる︒尤もどの程度であればバラソスを失っておらず︑又どの程度ならばバランスを失っ
ているかに就いては︑細かい議論の余地はあろうが︑大体の客観的な判断はつくところである︒いま或る銘柄に資
金の三0︒ハーセントを投ずると残余に対する投資率七〇︒^ーセントの半ばは三五︒^ーセントとなるがゆえ︑六五︒ハ
ーセント対三五︒^ーセントの割合となり︑これは明らかにバランスを失している︒或る銘柄に二〇︒^ーセントを投
ずると残余に対する投資率八o·~ーセソトの半ばは四〇。^ーセソトとなるがゆえ、六〇。^ーセント対四〇。^ーセン
トとなり︑なおバランスを得ていないと云わねばならない︒併し或る銘柄に対する投資率を一〇︒^ーセントとすれ
ば︑残余の半ばは四五︒^ーセントあるがゆえ︑五五︒^ーセント対四五︒︿ーセントとなり︑大体バランスがとれてい
ること4なる(一銘柄に対する重点投資率を五。^ーセントとすれば、五ニ・五.ハーセント対四七•五。^ーセントと
一層バラソスが得られるようであるが︑これでは分散組合せ投資の今︱つの特徴である重点投資の意味を失 の趣旨を生かすべく︑
︵今
西︶
ニ四
投資
信託
︵証
券共
同投
資組
織︶
の運
用規
模︵
今西
︶
二五
うこととなる︒別の機会に述べたように︑分散投資の最少投資銘柄数は一0銘柄ということを考慮すると︑重点投
資の度合が五︒^ーセントということはあり得ないわけで︑少くとも一0
︒ハ
ーセ
ソト
とな
ると
ころ
であ
る︶
︒
共同投資組織に於ける一銘柄に対する投資限度は︑投資々金の一〇︒^ーセントということになる︒
以上︑共同投資組織に於ては一銘柄に対する組入れは投資々金の一〇︒^ーセソトを限度とすべきことを明らかに
したが︑彼等の一銘柄組入れ限度の問題は︑単にそれだけで終わらないことを知らねばならない︒規模の大なる共
同投資組織ではその資金の一0バーセント遥か以下でも相当に巨額となり︑投資対象たる或る会社株式の過半︑否︑
殆んど全部を買入れて尚余りあるというケースが生じ得るからである︒尤もこのようなケースについては︑共同投
資組織は︑会社の経営支配を目的とするものでなく︑又そのように或る会社株式の大半を買入れるときはその仕入
れ原価が高まり不利となる︵更に︑転売するときも大量なるため価格を下げて不利となる︶がゆえ︑そのような組
入れはおのずから自制され︑実際には行われないという見方もあるであろうう︒確かに︑或る会社株式を単独の有
力者が大量に掌握するときは︑たとえ仕入れは少量づつ何回にも分けて行うとしても︑結局出来上るその価格位置
は高められ︑所謂割高となることは免れない︒このような事態は一般的には共同投資組織として欲せざるところで
あるが︑然も時には敢えてすることも考えられる︒それは︑所謂成長︑有望株を腹一杯所有しようとする方針に基
づく場合もあるが︑むしろ投資会社株式価格︑投資信託受益証券基準価格を維持︑高めんとする意図の場合である︒
勿論︑このようなことは︑共同投資組織として都合上必要かも知れないが︑彼等の大量所有により株価が不当に割
高に置かれるということは︑株式界にとり好ましくない︒斯くて︑共同投資組織の一銘柄組入れに就いては︑組織
の資
金量
の一
0バーセント以内とするほかに︑投資株式の何︒ハーセント以下とするがように︑国家当局として制限
斯く
て︑
っては︑最悪の状態︑ い︒併し今吾々として注意しなければならないことは︑ えば三00億円の会社ともなれば︑ 億円ぐらいの会社株式の場合だと︑ 三0バーセントというのは︑勿論︑或る場合は一五パーセント程度の掌握で株価吊上げの効き目を現すが︑或る場
合はそれ以上︑三0︒ハーセント位の掌握となって漸く吊上げの効き目が出るという意味である︒而してこのように
掌握の程度に差を斎す事情としては︑会社の資本金の大小︑株式分散度の大小等が挙げられる︒例えば資本金一〇
一五パーセソトの掌握でも相当に株価吊上げの効き目を齋すが︑巨大資本︑例
一五︒ハーセント程度では残余の株式の絶対量は依然莫大であるため︑その価格
吊上げの効き目はそれほど発揮されず︑もっと大量の掌握が要件となるが如くである︒又当該会社株式が比較的大
口の株主によって所有され︑分散が行届いていないときは︑一五︒ハーセントの掌握でもぼっぽつ吊上げの効き目が
現れるが︑分散が進み所謂浮動株に満ちているが如き会社株式では︑より以上の掌握でないと余り効き目を現さな
一会社株式の最高掌握限度というが如きを問題とするに当
つまり最も吊上げられ易い状態にありとして考えるのが無難であるということである︒最悪
の状態としては︑会社の資本金が少く︑株式の分散度も徹底的でない状態が内容となることは贅言を侯たないが︑
その外にもある︒例えば共同投資組織のうちの二者が互にしめし合わせて組入れ銘柄の吊上げを策すが如きことで
ある︒大資本の会社株式は上記の如く︑数量が多く︑そのままでは吊上げは余程でないと効き目を現さない︒けれ ならないが︑従来我国に於ては︑
一五
ー三
0パーセソトというのが一般に認められているところである︒
一五
乃至
投資信託︵証券共同投資組織︶の運用規模
を設けることが矢張り必要となる︒こ4に︑また︑その限度如何が吟味されなければならないのである︒
この限度を決めるポイントが︑一体或る会社株式の幾許を掌握するとその価格が吊上げられるかにあること︑云
うまでもない︒素よりこの分量は理屈で決められるものでなく︑それぞれの国について経験的︑実際的に測らねば
︵今
西︶
二六
︵今
西︶
二七
一 五 ︒ ^
どもそれらの銘柄は数量が潤沢なところから複数の共同投資組織の運用対象となる事例が多く︑勿論各個の投資組
織は通常は互に好敵手として行動するものであるが︑時として受益証券基準価格︵或は投資会社株式価格︶吊上げ
のため諜し合わせてその銘柄の共同大量所有を行うことがあり得るのである︒二つ以上の共同投資組織が諜し合わ
すことは困難だとしても二者ならば十分あり得︑延いて両者合わせて吊上げ可能量以上の掌握となることもあり得
る︒何れにしても︑このような事態のことまで考えるときは︑運用株式の会社資本の大小を問わず︑
組入れ限度は︑その資本︑株式の一五︒ハーセソトとするのが相応わしいと結論されることとなる︒
一会
社株
式の
共同投資組織の一銘柄組入れ限度は発行会社資本の一五.ハーセントを限度とするという制限については︑尚︑附
言しなければならないことがある︒それは︑我国の如く共同投資組織が投資信託制を以て行われ︑
が複数︑否多数の単位投賓組織を運営している所では︑共同投資組織の一銘柄組入れ限度一五︒ハーセントという制 ︱つの委託会社
限はそのまま適用さし難いことである︒蓋し一委託会社傘下の各投資組織は運用上半ばは︱つの組織となり︑延い
て今︑或る単位組織の組入れ率が一五パーセソト以下の銘柄も︑数組織合わせると数十︒ハーセソトとなるに至るこ
ともあるからである︒従って︑共同投資組織の一銘柄組入れ限度は︑投資信託制の場合︑
ととしなければならないのである︒処で︑
して︑然も一面︑ 一委託会社毎に考えるこ
一銘柄組入れ限度は投資信託ではこのように訂正しなければならないと︐
一投資信託委託会社傘下の全投資組織の一銘柄組入れ限度を単個の共同投資組織と同一としてよ
いかに就いても議論の余地が生じる︒蓋し傘下の或る単位組織が或る銘柄を一五︒^ーセント組入れたときは︑他の
単位組織では︑その銘柄が如何に有望であっても最早組入れることが出来なくなるが︑それは投資組織の運用を余
りに窮屈にするからである︒斯くて︑投資信託制の場合︑傘下投資組織全体としての一銘柄組入れ限度は︑
投資信託︵証券共同投資組織︶の運用規模
296
の面であり︑傍系面とは途中に起る脱退︑解約に対応する面である︒ 私はこの共同投資組織の株式組入れ率の合理的な大いさは︑
株 式 組 入 れ 率
公社債投資組織を除き︑各証券共同投資組織は投資々金を殆んど株式に向けることは改めて云うまでもないが︑
その投資財産の凡てが株式形態であってよいわけはない︒或る部分は株式以外の預金︑
なすことが必要とされる︒そこで投資全財産に於ける株式財産の割合︑即ち株式組入れ率は幾許が適当であるかが
問題となる︒従来︑我国では投資信託の株式組入れ率は大体八〇︒^ーセントが限度で︑それ以上は過剰であるとい
う見解が一部に行われているようである︒果してそうであろうか︒
味し︑然る後︑総合して決定するのがよいと思っている︒運用の実体面とは投資組織が投資運用をなす本来の活動
先ず運用の実体面から入ろう︒この面に於て︑どれくらい投資財産を株式形態としてよいか︑見方をかえて︑ど
れくらい株式以外の資金形態を残しておくべきやは︑投資組織の目的︑存在期間等によって異らざるを得ない︒共
同投資組織のうち︑投資目的本位のものにあっては︑組入れられるのは所謂採算株中心であるがゆえ︑元本資金は
殆んど株式︵バランスド型
Ba
la
nc
ed
Ty
pe
などでは一部分公社債︶に運用して差支えない︒たゞ存在が長期であ
り︵多くはオープン・ニンド型︒アメリカの如き投資会社制ではクローズド・ニンド型1交替型l
でも
よい
︶︑
セント位とすべきことが勧められるところである︒ 投資信託︵証券共同投資組織︶の運用規模
ーセントよりも或る程度以上の数字︑例えばその五0
︒ハ
ーセ
ソト
増し
︵ニ
ニ・
五︒
^ー
セン
ト︶
︑
︵今
西︶
一応︑投資運用の実体面と傍系面の二つに分けて吟 コール貸付等の資金形態と ニ八
少くとも二
o ・
^1
投機兼投資目的の共同投資組織には長期存在︵オープン・ニンド型︒投資会社制ではクローズド・ニンド型I
交替型ーもあり得る︶のものと有期限存在のもの︵クローズド・ニンド型投資信託︶とがある︒何れも目的に副
うよう所謂成長株や新興産業株中心に運用されることは変わりない︒処で︑長期存在のものにあっては︑途中︑反
動に向うと思われるときに際会し持株を全部コール形態や公社債にすべきことあり︵恰度船が航海中暴風雨に出会
くらい株式形態にして置くがよいという一般的な率はあり得ない︒或は︑資金を株式に投ずる場合︑一度に全部を
ナソピンなすべきではなく︑出動クイミングを誤ることもあるがゆえ︑或る程度余力を残す︵出来たら難平買い
av
er
ag
in
g
d o
w n
をなし得る︶ため︑一部分を資金形態としておくべきだとの論もなされよう︒併し注意すべきは︑この理由
による一部資金という状態は一時的に止まることである︒仮りにクイミングを誤っていたとして︑その後難平買い
を行えば投資は全部株式形態となってしまい︑又クイミングを誤っていなかったとしても︑残りの資金を何時まで
もそのままに放置してよいわけはなく︑やがて追加的に株式運用を行う筈で︑資産の総べてほ株式化せられるとこ
ろである︒改めて云うまでもなく︑今吾々が共同投資組織に於ける運用資産の株式組入れ率如何というときは︑
投資信託︵証券共同投資組織︶の運用規模 うたとき一時港に避難するが如し︶︑ あ
る︒
︵今
西︶
二九
一定期間毎に収益を分配する方式がとられるがゆえ︑組入れ株式からの配当収入︑公社債からの利子収入や時とし
て得られる値上り実現益は大部分資金形態としておくのが無難とされる︒この資金の割合であるが︑収入︑収益の
大いさに依存するので一概に云えないが︑全資産額の五ー一五︒^ーセントとなして大過がない︒勿論︑収入︑収
益は入るに任かせて保留するので︑当初は0であり︑次第に増して配当の直前の数字がこの程度となるというので
又ここぞと思うときはカ一杯株式としてよい場合もあり︑従って資産をこれ
時的でなく︑如何なる場合でも資金状態にして置かねばならぬその恒常的な割合である︒そうだとすれば︑上の如
き投資クイミングに関連しての一時的待機の資金は︑問題の範囲外となる︒以上︑投機兼投資目的の長期存在の共
同投資組織では︑時には投資財産は全部を資金形態とすべく︑又時にはカ一杯株式形態としてよいことを述べたが︑
そのカ一杯というのは全額株式投資のことだとまで考えてはならない︒蓋し長期存在の共同投資組織は一定期間毎
に収益の分配をなす立前をとるがゆえ︑分配に当てる収益分は資金形態として保留すべきであるからである︒収益
分が運用株式や公社債からの配当利子収入や値上り実現益から成ること︑申し添えるまでもない︒時として︑投機
兼投資目的の共同投資組織としては︑株式投資の好機には︑たとえ収益分配期日までの僅かの間でも︑収益分を株
式運用に向けるべきだとの意見を聞くが︑収益分配のため手持ち株式の一部を急いで市場に売出すときは相場を圧
迫するなどの不利な状態を惹起する虞があるので︑矢張り差控えるべきである︒尤も等しく投機兼投資目的の長期
存在の投資組織でも︑収益の分配に二つの型が考えられ︑或る期日までの収益を総べて分配する型と︑インカムは
殆んど分配するもキャビクル・ゲインは一部分保留し分配の平均を計る型とがあるが︑後者の平均主義の方針の下
では︑収益分の全部を資金形態としておく必要はなく︑キャビクル・ゲインの一部は再投資する意味で株式化して
もよいとなるであろう︒その点は兎も角︑投機兼投資目的の長期存在の共同投資組織にあっては︑株式運用のチャ
ンス時にも︑収益分配に当てる収益分はこれを資金形態として置くのが無難であり︑これは守られるべきである︒
この収益分配用分が全資産の何︒ハーセントとなるかは︑数字的には仲々云い難い︒併し強いて云うならば︑年一回
決算とし︑期の初め五︒ハーセントぐらいから配当直前には全体の資産の一0ーー一五︒ハーセントというのが︑最も
平均的なケースとみてよいのでないかと思う︒ 投資信託︵証券共同投資組織︶の運用規模
︵今
西︶
゜
︵今
西︶
拙稲﹁投資信託の配当政策﹂本誌第七巻第四号一ニー四頁
投機兼投資目的の共同投資組織でも有期限︑就中短期間存在のもの︵我国のユニット型投資信託がその好例であ
ること繰返すまでもない︶にあっては︑事態は︑上来の無期限存在と相当に異らざるを得ない︒短期存在のユニッ
ト型投資信託にあっては︑ここぞと思う株価上昇期を捉えて発足し︑天井期を満期日として解散する立前︵現行の
我国のユニット型投資信託は各委託会社揃うて年がら年中設定しているが︑これは本来の立前を無視した行き方で
ある︶のものであり︑従って存在中は殆んど株式形態をとらざるを得ない︒無期限存在のものの如く︑長い途中に
於て反動期に殆んど全部換金し資金状態となるが如きことはないわけである︒若し予想した株価上昇が急速に実現
し︑満期日までに持株を総べて換金して資金状態となるようなときは︵資金状態のまま︑就中コール運用などをし
一度に資産持株を売却するときは株価への圧迫を斎し不利となるがゆえ満期日に先立つ或る期間内に持株を徐々に
換金すべく︑従って満期日に先立つ或る期間は︑運用資産の或る部分は資金状態とせざるを得ないとの見解もあろ
う︒併し投資信託の計画が当ったときは︑相場は昂騰しており︑満期日に近附いて一時に手持ち株を換金しても市
場への影響は余りないのであり︑又計画がうまくゆかなかったときは︑満期日を延ばすことが一般にとられる︵勿
論これにより一度に換金することは避けられる︶ところとなっているのである︵尚︑上は満期日に当初加入者への
償還が一斉に行われるが如き前提に立っているが︑現実の問題として︑有期限の投資信託に於ては︑解約が自由な
ため︑当初加入者の総べてが満期日まで継続するものでなく︑途中解約により残存元本資産は次第に少くなってお
り︑従って満期日に近附いて株式資産を換金するというも︑それが市価を圧迫するほどの額でないのが寧ろ普通な
投資信託︵証券共同投資組織︶の運用規模 て満期日まで待ってもよいが︑余り意味がない︶︑繰上げ償還を行うことになっている︒或は︑満期日に近附いて
(1)
拙稿
﹁前
掲論
文﹂
三頁
投資信託︵証券共同投資組織︶の運用規模
のである︒但しこの点は︑次の共同投資組織運用の傍系面の事態に属するので︑今は取上げない︶︒以上述べたと
ころでは︑有期限の投機兼投資目的の共同投資組織に於ては︑発足から満期日まで殆んど株式投資の形態を続けて
よいとして︑これらにありても収益配当用分は矢張り資金形態で保留しておく必要がある︒併しこの資金形態保留
分も前の無期限存在の投機兼投資目的共同投資組織の場合に比べては︑遥かに少くてよい︒これは有期限の投機兼
投資目的の投資組織の収益成績が一般に前者のほどに挙がらないからでなく︑その配当政策の特徴に甚づくもので
ある︒その配当政策の詳細は共同投資組織配当論で取上げるべき事項であるが︑ユニット型投資信託では︑途中の
配当を成るべく少くし︑満期償還の時に元利合計額を大にする方針をとるのが常道とされる︒従って︑標準的なI
その国の定期性預金利子率並みのー配当が出来得る限り︑キャピクル・ゲインは勿論︑インカムも再投資に向け
てよいとされるのだ︒結局︑有期限の投機兼投資目的の投資組織でも︑配当用に資産の一部分は資金形態にして置
かねばならないとしても︑それは少くてもよいとなる︒それは数字的に示すことはむつかしいが︑無期限存在のも.
のが全資産の五ー一五︒^ーセントとすれば︑五
‑ 1 0
︒^
ーセ
ント
とい
うと
ころ
であ
ろう
︒
ー
9 ,
ここで共同投資組織の運用の傍系面に於ける資金準備に移ろう︒運用の傍系面とは︑既に断った如く︑投資組織
が存在している途中に於て起る脱退︑解約に対応する面である︒これに於ける吟味の必要は︑共同投資組織として
は収益を高めるため出来得る限り資産を株式形態として置くべきである︑然も脱退のある毎に運用株式を換金して
いては売物による市場圧迫で残存価格に不利を招く虞があるという所から生じ︑吟味の中心ほ︑そのため資産の可
及的一部分を資金形態としておくべきだがその妥当な額如何にあること︑改めて云うまでもなかろう︒勿論︑この
︵今
西︶
るまでもないところであろう︒
︵今
西︶
は︑国民の投資に対する腰の入れ方や相場変動の点は︑一応普通の状態とし︑投資組織の種類を中心として解約の 額は脱退︑解約の度合に応ずるべきであるが︑その脱退︑解約の度合は変幻自在というか︑場合場合によって定まらない︒従ってその度合を予測し︑延いてそれに対応する資金準備を究明することは極めて困難となる︒大局的に云えば︑共同投資組織の脱退の度合は︑先ずその国の投資大衆の投資又は投機に対する腰の入れ方により︵勿論︑腰の入れ方の深い国民性の所では︑少しのことでは脱退しないが︑反対の国民性の所では脱退し易い︶︑相場の変動による︵暴騰又は暴落の時は脱退が多くなり︑相場が余り動かない時は脱退は少い︶ことが挙げられよう︒併し又共同投資組織の種類︑即ち目的や組織︑型等によっても脱退の度合が異るものである︒斯くて︑ここで
度合を吟味し︑延いて必要な資金準備額の大小を検討してみることとする︒共同投資組織のうち株式会社組織︑即
ち投資会社制では︑クローズド・ニンド型のときは脱退ということはなく︑延いてこれは今の吟味から除いてよい
わけだが︑投資会社制でもオープソ・ニンド型は脱退︑加入はあるので︑これは吟味の対象に入ること︑申し添え
さて︑先ず︑投資目的本位の共同投資組織の場合であるが︑これに於ける脱退が投機兼投資目的の共同投資組織
に比べ少いことは︑想像に難くない︒組入れ株式が所謂採算投資株であるので値動きが少く︑これが脱退を少くす
る根本である︒然もこれらの投資組織は殆んどオープン・ニンド型となっているので︑一方に途中加入があり︑こ
の資金で脱退をカバーすることも可能となっている︒投資目的本位の共同投資組織といえども時として相当な値上
り叉は値下りとなることもないではなく︑これらの場合には脱退が増加する傾向をもつが︑このような場合には恰
も途中加入も増加するものであり︑よく脱退をカバーし得る筈である︒このように云うと︑投資目的の共同投資組
投資信託︵証券共同投資組織︶の運用規模 次に株式
投資信託︵証券共同投資組織︶の運用規模
織では脱退に対する資金準備は必要でないようにも思わす︒けれども脱退と途中加入が恰も時を同じうして現われ
ズレのあるのが通例で︑ここに或る程度脱退に対応する資金準備が必要となる︒殊に共同投資組織の運用成績の上
っていないようなときはズレは梢々大きくならんとする︒而してその準備額は数字的にはどれ位となるかであるが︑
まず全資産額の五︒ハーセントというところでないかと思う︒
吾々は既に︑投資目的の共同投資組織は本来の運用面に於て︑期初或は収益分配の直後〇︒^ーセントから始まり
直前には通例五ー一五︒^ーセントを資金状態となすべきことを論じておいた︒いま途中の脱退に対応するため︑
通例五︒ハーセントを準備することを必要とするとすれば︑両者合わして期初には五パーセント︑収益配当直前には
10
ー
ニo ・
ハーセントを資金形態とすべしという結論になるわけである︒
次に︑投機兼投資目的の無期限存在︑即ちオープン・ニンド型共同投資組織の場合は︑投資目的本位のものの場
合よりも脱退の多いこと︑前に一言したが︑もう少し詳しくみてみる必要がある︒株式相場が下落し非常な値下り
損が生じたときは脱退が増加するのは当然として︑株式相場が上昇し非常な値上り益を生じたときも︑途中加入の
増加以上に脱退が増加することすらある︒勿論︑このような大きい・値下り︑値上りの生じたときは特別なケースと
し︑今はそれほどでないときを取上げてよいわけだが︑それとしても運用成績の良くない投資組織では途中加入以
上に脱退が多く︑運用成績の良い投資組織でも脱退は途中加入に劣らないくらいあるものである︒何れにしても︑
投機兼投資目的の共同投資組織に於ては脱退は活発なのであり︑延いて又︑途中加入との時間的ズレも大きくなら
んとする︒では︑一体どれくらい脱退に対する資金準備をすべきかであるが︑通常の場合として少くとも資産全体 るとは限らないことを知らねばならないのだ︒半力年︑一カ年としては均衡がとれても︑短い期間では両者の間に
︵今
西︶
一 四
︵今
西︶
余地のないことも︑今更附言するまでもない︒斯くて︑
一 五
ユニット型投資信託はこのように設定がまとも ユニット型では満期日に近附いたときには
の 一
0バーセントは必要だと云わねばならない︵相場の暴騰︑暴落で脱退が異常に増加しそうなときは︑この数字
を離れて対応すべきこと勿論である︶︒
先に︑投機兼投資目的で無期限存在の共同投資組織の運用面に於ける資金準備として︑収益配当期の初めでも資
産総額の五︒^ーセント︑配当の直前では一0ー一五︒^ーセントが必要であることを述べておいたので︑今︑途中
脱退に対応すべく通常一〇︒^ーセントを準備すべしとすれば︑結局︑両者綜合し︑配当期の初めには一五︒^ーセン
ト︑配当期に近附いて二
0
│
│二五︒ハーセントを準備すべしとなるところである︒
最後に︑投機兼投資目的の有期限存在の共同投資組織︑例えば我国のユニット型投資信託の場合に入ろう︒この
種の共同投資組織は︑株式市場のここぞと思う時に設定され︑然も有期限存在であるがゆえ︑多くの加入者は満期
日までじっと加入を続けるように思われる︒確かに︑順調な運用成績を挙げているときはそうなる︒併し運用成績
が平凡なときは加入者は持続に嫌気をさし︑又設定クイミングを誤って大きい値下りを生じつつあるときは急いで
逃避せんとし︑逆に設定クイミングが図に当り非常な値上りを生じたときは目的を達したとして︑何れも脱退が甚
しくならんとするのだ︒ユニット型に於ては他のオープン・ニンド型の如く︑途中加入によって脱退をカバーする
ユニット型投資信託は︑多くの場合︑脱退は始終行われる
のみならずその程度も甚しいものと云わねばならないのである︵前に︑
残余財産が少くなっているのが普通だと云ったことを想記せよ︶︒
に行われていても脱退が激しい性格をもつが︑我国にみる如くそれが多くの委託会社により殆んど毎月設定せられ
るという不合理な設定の行われている所では︑それは一段と激しからんとする︒毎月設定が行われるに於て︑多く
投資信託︵証券共同投資組織︶の運用規模
勿論
︑ (1)
らな
いが
︑
の実
例で
は︑
ユニット型投資信託の途中解約は相当なものであるのみならず︑一体どの程度であるかの見当もつか
投資
信託
︵証
券共
同投
資組
織︶
の運
用規
模
の単位組織は発足を誤ったものとなり︑運用成績があがらないか︑失敗したものとなることが︑その主要な原因で
ある︒更に︑毎月設定を行うに於ては真の新規加入者を集めることがむつかしく︑おのずから新規加入のため既存
の投資組織︑就中ュニット型投資信託の脱退を惹起さすことも︑大きい原因となるところである︒実際︑我国など
ないくらいとなっている︒勿論︑今は見当が附かないというだけでは済まされず︑何か標準的な数字を立てねばな
一応全資産の二0バーセントを常時的な脱退対応の資金準備額とすべきところと思う︒
拙稿
﹁我
が国
のユ
ニッ
ト型
投資
信託
は現
在の
まま
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阪証
券取
引所
イン
ペス
トメ
ント
︑昭
和三
九年
五月
号二
六ー
ニ
八頁
ユニット型投資信託の綜合的な資金形態の割合は︑運用本来面の必要額にこの脱退対応のための額を加算
すべきであり︑前者が配当計算期の初め
o ・
ハーセントから期の終り五
‑ 1 0
︒^
ーセ
ソト
であ
った
がゆ
え︑
結局
︑
配当計算期の初め二0︒ハーセント︑期末二五ー三〇︒^ーセントが最終的な数字となる︒尚︑念のため云っておき
度いのは︑これらの数字は大低の場合に対応するものであることである︒既に知れる如く︑
めているともみられ︑残存加入分の不利を擁護する必要は薄らいでいるとなるからである︒ ユニット型投資信託で
は時として激しい解約脱退の起ることがあるものであるが︑斯かる場合は最早手持株式をどしどし換金して応ずる
ほかなく︑又それでよいのである︒蓋し大半の解約が行われるということは︑そのユニット型投資信託の解散を求
以上で共同投資組織に於ける資産の株式組入れ率︑見方をかえて資産の何︒ハーセントを資金形態としておくべき
やの吟味を終えたのであるが︑それらは資金形態では利子収入が少く不利益になるということが︱つのファククー
︵今
西︶
一 六
となっていること︑改めて云うまでもない︒最近の我国にみる如く︑
資に劣らない収入を挙げ得る所では︑結論はやや違ったものとなる︒併し我国現在の如き短期資金々利の異常高は
正に異常なのであり︑従って上来の結論は立派に一般的な理論として生きるところである︒
単位共同投資組織そのものの規模と云えば︑これまでの一銘柄組入れ限度や資産全体のうちの株式組入れ率など
と異り︑投資組織の運用に関する問題から外れるように考えられるかも知れないが︑前二者が投資組織運用の内面
に関するのに対しこれは運用の外部に関する事項であり︑運用の問題に属することは︑疑いないのである︒
共同投資組織の規模の問題といった場合︑先ず取上げるべきだと思われるのは︑その最適な規模である︒どれ<
らいの規模であるのが最も運用成績をあげ得るかという問題である︒併しこの問題は正面からそれを解明すること
は至難と云わねばならないのだ︒共同投資組織の規模の最適という的が︑範囲狭く︑且つ比較的固定的︑
り条件によって動かないものであれば︑究明出来ないではない︒併し︑共同投資組織の最適規模には相当な幅があ
りー
ー
l従って最適規模というよりも適当な規模と云った方がよいー更にそれは色々な前提条件によって伸縮する︒
そこで︑共同投資組織の最適規模︑否適当な規模の究明は︑結局︑過小な規模と過大な規模を検討し︑その間の規
模をそれとするほかなしとなる︒要するに︑単位投資組織の規模に就いては︑過小規模と過大規模が直接な課題と
なるのである︒
投資信託︵証券共同投資組織︶の運用規模
︵今
西︶
七
然らば共同投資組織としてどのような規模以下は過小であろうか︒まず余り小規模であると十分に多数の銘柄に
単位共同投資組識の規模
つまり余 コール日歩が高く資金のままの連用が株式投
であ
る︒
投資信託︵証券共同投資組織︶の運用規模
分散投資することが出来ず︑従って分散投資を可能ならしめるに少くともこれくらいの資金額でないといけないと
いう線が考えられる︒確かに分散投資は共同投資組織運用の最大の要件であるが︑単に分散投資を可能ならしめる
だけならば︑それほどの資金額でなくてもよい︒例えば我国として︑価格一00円前後の株式一0銘柄の各々を一
万株づつ投資しても分散投資に適う︒併しこの程度の規模
(1
00
0万円︶の投資組織が︱つの共同投資組織とし
て国民経済社会に通用しないことは想像に難くない︒共同投資組織が︱つの社会的な組織として通用するには︑少
くとも或る数のニキスパート︑運用陣がその仕事に当っているというものでなければならず︑然もこれらの運用組
織は相当な経費を必要とする︒換言すれば共同投資組織の最低規模は︑このような必要最小限の人員スクッフを擁
しそれらが運用活動をするのに必要な人件費︑物件費を賄うに足る報酬を生み出す資金集団がその決め手となるの
このような必要最小限のスクッフといってもそれは国により時代により多少異るであろうが︑幹部ニキスパート
三名内外︑それを補助する要員七名内外︑その他五名というところが大体それとなしてよい︒而してこの運用組織
が活動するに必要な経費は︑今︑現在の我国を中心として計算すれば︑彼等の人件費︵幹部ニキスパートの月額給
与一名一五万円として年五四0万円︑補助スクッフ月額給与一名七万円として年五八八万円︑その他月額給与一名
三万円として年一八0
万円
︶
一三
00
万円︑調査に要する諸費用︑物件費合せて一
00
0万円として︑計二三00
万円となる︒運用に対する報酬を一年につき運用資産額に対する三︒ハーセントとすれば︑上の経費をカバーするに
は少くとも七億円の資産を擁さなくてはならないとなるところである︒
一国の共同投資組織の制度が投資会社制であるときは上の計算通りでよいが︑投資信託制を採っているときは尚吟
︵今
西︶
八
︵今
西︶
解約が進行するものであるか勿論一様でないが︑
九
一応満期日に半減するものとすれば︑当初出発時としては︑最小 一体︑どれくらい るが︑この方向からの批判は今は別論とする︶︒ 我国の共同投資組織がこの投資信託制をとっていること最早周知の通りである︒既に知られるよ
うに︑投資信託制では運用を担当する委託会社は︱つの営利会社として或る程度の利潤を要求する︒我国を例とし
て︑最小規模の運用機関をもつ委託会社の資本金一億円︵五︑六千万円でも足らないではないが︶とすれば︑利潤
としてまず年額一
000
万円は認めてやらねばならない︒そうだとすれば︑経費二三
00
万円
プラ
ス一
00
0万円
は三三
00
万円となり︑これをカバーするための共同投資資金は大体一0億円となる︒尤も投資信託制では︑
委託会社は複数に投資組織を運用することは不可能でない︒但しそれは複数と云っても無闇に多数であってはなら
ない︵我国の委託会社が殆んど毎月ュニット型投資信託を設定しているのはユニット型の本質を無視したものであ
勿論︑委託会社が多数のエキス︒^ートを擁しているならば︑それ
ぞれ分担さすところ︑多数の単位組織を擁しても差支えないが︑前記の最小の運用機関が良心的に受持ち得る投資
組織は︑同種のもの︵異種のものは不可︶二単位か三単位ぐらいである︒仮りに三単位としたときは︑一単位組織
の資金額は三ー四億円ということになる。然らば現在の我国として投資信託の最低規模は資金額三—ー四億円と
結論してよいかというに︑尚附加しなければならない事項が残っている︒それは有期限のユニット型投資信託にあ
りてほ︑時日の経過と共に解約が行われ投資資金は次第に減少する点を考慮すべきことである︒
規模を上記の数字よりも幾分多い目としなければならず︑少くとも五0︒ハーセント増し︑即ち四・五億円乃至六億
円とすべしとなる︒若しラウンド・ナムバーたることを強く要請するならば︑五億円としてもよく︑結局これが現
在の我国の投資信託が発足してよい最低規模ということになるわけである︒
投資信託︵証券共同投資組織︶の運用規模
一 面 ︑
味計算が残る︒
投資信託︵証券共同投資組織︶の運用規模
以上︑共同投資組織の最低規模論を終えたが︑これ以下のものが過小規模となること最早云うまでもない︒処で︑
過小規模のものは設定せられないよう国家当局は指導すべしとして︑存在の途中過小となった場合︑直ちに解散せ
る︒これに対し︑ しめることは少し問題である︒オープン・ニンド型のものは︑得る︒従ってこの種のものは或る期間様子をみ︑その上で同種のものがあれば合併するなどの処置をとるべきであ
ユニット型にありては途中加入がなく回復の望みないがゆえ︑残務整理の意味で他の同種のもの
ここで共同投資組織の過大規模論に入る︒過小規模の方はその最低規模以下即ち最小必要な運用機関の諸経費を
賄うに足る報酬を生む投資々金額以下をいうのであり︑運用経費が主たるファククーとなった︒これに対し過大規
模の主たる決め手となるのは︑運用機関の能力である︒詳しく云えば︑共同投資組織の運用機関の運用能力は機関
の規模の大小に応じそれぞれ大小があるが︑或る規模の運用機関としては一定の能力がある筈であり︑この能力を
越えた多額の投資々金は効率的な運用をなし得ないとして過大規模となるのである︒従って今︑現在の我国として
一組
織一
000
億円の投資信託が設定されたとしても直ちに過大とは限らないのでああり︑その運用に多数の優れ
たニキスパート︑スクッフが当っているならば別段過大でもないとなる︒或は︑過大な共同投資組織の意味はよく
判るが︑或る規模の運用機関の妥当な運用能力は如何にして把握すべきであるかとの質問が起ろう︒この質問は一
応尤もである︒然もこれに答える具体的な明確な算定方法はない︒けれども或る国として︑その国の経済情勢︑会
社経営状態等を勘案し︑一定数の運用スクッフが一定の調査設備の下に受持ってよいとされる投資資産額の大いさ
は大体見当がつく筈である︒素より此種の尺度は社会的経済的な尺度の常として︑多数の識者の見解を集め︑それ にどしどし合併さしてしまう方がよい︒
︵今
西︶
一時的に過小となってもやがて回復することがあり 四〇
る ︶ ︑
四
︵今
西︶
四
一五
︒ハ
ーセ
ント
で六
三00
億円
︑
上に述べたところによれば︑共同投資組織の過小規模が︑最小規模を割ったものとして凡ゆる組織を通じ︱つの
存在であるのに対し︑過大規模の方はそれぞれの運用に当っているスクッフの規模との相対関係に於て成立するも
のとして多数に存在し得る可能性をもったものとなる︒しかし過大規模に就いても︑その運用機関の規模の大いさ
に拘わらずこれ以上の規模のものは存在してはならないという限度的な規模のあることを知らねばならない︒吾々
は先に共同投資組織が組入れ得る一銘柄の限度は︑各会社株式の一五︒^ーセント以内︑投資信託の委託会社の湯合
傘下全体の投資信託としては二〇︒^ーセント以内たるべきことを論じたが︑今このことが働くのである︒仮りに︑
現在の我国として︑投資信託組入れ適格銘柄二五0種︑その株式総量三五0億株︵資本金を一社平均七0億円とす
時価総価額四兆二
000
億円(‑株平均時価︱二0円とする︶とすれば︑
二〇
︒^
ーセ
ント
で八
四00
億円となる︒単位投資信託で六三
00
億円という巨大なものは一寸現れそうにないが︑
一委託会社として八
000
億円の共同投資々金を擁することはそれほど不可能ではない︒何れにしても︑共同投資
組織はその規模にこのような最大限度があり︑延いてこれを越えたものは謂わば絶対的過大規模となるのである︒
一 国 の 共 同 投 資 組 織 全 体 の 規 模
一国の証券資本主義が進行するにつれ︑共同投資組織も発展を続ける︒比較的小規模な組織が数多く存在する姿︑
大規模な組織と中小の組織とが並存している姿︑比較的大規模な組織が数少く存在する姿など︑その存在状態は様
々であろうがーーL大張り次第に後者の姿になりゆくものと予想されるー全体としての共同投資組織は大となりゆ
投資信託︵証券共同投資組織︶の運用規模 らを綜合しなければならない︒
然ら
ば︑
ある
︒
各投資組織が先に述べた一銘柄一五︒ハーセント以内︑
一国の投資組織が株式界を殆んど占有するよ 一委託会社として二0︒ハーセント以内の原則を守っている限 投資信託︵証券共同投資組織︶の運用規模
一国
の
くとみてよい︒勿論︑その発展の程度は︑その国の産業構造の如何︑企業経営が合理的であるか否か︑共同投資組
織運営の上手︑下手等により︑或る程度開きのあるのは免れない︒いまその発展のテンボの劣っている国では兎も
角︑その目覚ましい国では︑やがてその国の株式界︵株式︑勿論社会的な会社株式の総量︶は共同投資組織によっ
て占有されてしまうのでないかの感じを起さすかも知れない︒併しこの考は一寸幻想だと云わねばならない︒蓋し
株式に就いては︑会社経営者やその営業縁故者の如くどうしても直接株式を持たねばならぬ者があり︑又投資者の
中にも飽くまで直接投資を好み︑その能力を備える者もあり︑更に色々な機関投資も存在するからである︒が︑そ
れに
して
も︑
ろで
ある
︒
一国の株式界の大部分は早晩共同投資組織の傘下に置かれる状態となることは十分に考えられるとこ
この情勢に対しては︑それをそのまま進展さしてよいだろうかという政策的な考が浮ばんとする︒先ず︑
共同投資組織がそのような状態となると︑彼等により株価が牛耳られるようになりはせぬかである︒併しこの点は︑
り︑その恐れは余りないといってよい︒それよりも懐かれ易いのは︑
うになると︑彼等の運用活動が有効に行われ難くなりはせぬかの懸念である︒然もこの懸念は当に現実性をもつの
である︒ここに一国の共同投資組織全体の規模如何が共同投資組織運用問題たる性格をもっと共に︑その余りの大
規模は国家当局としてそれをコントロールする方針をとるべしとなり︑政策問題たる性格をももつものとなるので
一国の投資組織全体としての規模は︑どの程度が限界とせられるべきものであろうか︒改めて云うまで
︵今
︶西
四
即ち七五︒^ーセントとなるわけである︒ 4N=3 3 ︑
1 1
ー
11
75
%
4
x+
3(
1
ーx
)1
12
x
1 2
—ーーーX3
I +
︵1
ヽ ︶
13
︵今
西︶
四
一国株式界の半ばに止まるべ もなく︑共同投資組織はニキス︒^ートが運用に当る仕組であり︑従って或る株式銘柄が彼等の運用対象となるところ︑それに対する投資態度は何れの組織に於ても歩調が等しくなる傾向をもつ︒例えば或る銘柄が騰貴すると予想されたとき︑何れの共同投資組織もそれを買仕込み︑既に所有している投資組織はその売却を手控える︒従って彼等の買仕込みが自由に都合よく行われるためには︑共同投資組織以外の者の手に株式の少くとも半分が所有されていることが必要となる︒このことは何れの株式についても同様であり︑共同投資組織が売態度に出る場合にも似た
ことが云われる︒斯くて︑全般的に云って︑共同投資組織の株式界を占める度合は︑
きことが︑まず理論的に出てくる︒処で︑右に共同投資組織はニキス︒^ートに運用されるので総べて同一歩調の行
動をとるとしたが︑実際にはこれは少し観念論過ぎる︒蓋しそれら運用ェキス︒^ートの中にも︑能力の劣った者の
ある点は暫く措き︑時には株価の予想がむつかしくて見解の分れるケースがあり得るからである︒つまり共同投資
組織の運用態度も︑総べてが同一歩調ではなく︑大部分は同一であるが或る部分は違った行動をとらんとするので
ある︒両者の割合は︑場合によって異るが︑平均的に考え︑三分の二対三分の一として大きい狂いはないと思う︒
斯くて︑共同投資組釜が都合よく活動出来る株式界占有度のマキシマムは︑それをX
︒^
ーセ
ント
とす
れば
投資信託︵証券共同投資組織︶の運用規模
同投資組織の規模を眺める方が正直な見方だと云われる︒ 同投資組織部門に入れるよりも寧ろ共同投資組織と同類として取扱う方がよいからである︒斯くて︑上に得た︑国共同投資組織の規模の限界は株式界の七五パーセントという中にこの種の機関投資を含めるべしとなり︑共同投資組織の実質的な規模の限界はそれだけ狭められるとしなければならないのだ︒少くともこういう眼を以て一国共 ハートや整うた運用施設をもち︵勿論資金源は異るが︶︑その点︑共同投資組織と似たものがあり︑これらは非共
上に
︑
投資信託︵証券共同投資組織︶の運用規模
一国の株式界を共同投資組織の占める部分とそれ以外のものが占める部分とに分つに当り︑各種の銀行や
保険会社︑企業年金基金や其他の基金など所謂機関投資を非共同投資組織の部門に入れた︒併しこの取扱は︑実は
幾分問題となる︒蓋し機関投資と云われるもののうち比較的規模の大きいものの中には︑所有株式の運用にニキス
︵今
西︶
四四