1.演 題 2.研 究 者 名 主題 V まれな先天性胆道拡張症 静岡県立こども病院小児外科 3.所 属 4.研 究 要 旨 【はじめに】戸谷分類Ⅰ -a、Ⅰ -c およびⅣ -A に分類される先天性胆道拡張症 (CBD) は、その ほとんどに膵・胆管合流異常 ( 合流異常 ) を合併するとされ、発生機序には関連があると考え られている。一方、前述の型の CBD で合流異常を伴わないものの報告もされている。我々の 施設でも乳児期早期に発見された合流異常を伴わない CBD の 2 例を経験したため、報告する。 【症例 1】初診時生後 5 か月。肝機能障害を主訴に当院に紹介、超音波および DIC-CT で総胆 管および肝内胆管の拡張を認め、先天性胆道拡張症 ( 戸谷分類 Ic 型 ) と診断した ( 図 1)。肝機 能は徐々に改善したため外来で経過観察、胆管拡張は残存したため、1 歳 2 か月時に経皮的胆 嚢造影を施行、膵管は描出されず、合流異常の診断には至らなかった。この際に採取した胆汁 中のアミラーゼは 14IU/L であった。以後も経過観察を行ったが、症状、検査所見の増悪はな く経過した。 図 1.DIC-CT 総胆管および肝内胆管の紡錘状拡張を認めた。 【症例 2】 在胎 30 週 0 日、破水および前置胎盤のため帝王切開で出生した女児。出生体重 980g。出生 後スクリーニング目的の超音波で胆管拡張を指摘されたため NICU 退院後も外科でフォローを 行い、DIC-CT( 図 2A) および MRCP( 図 2B) にて先天性胆道拡張症 ( 戸谷分類Ⅳ -A 型 ) と診断 した。肝機能障害、胆管炎などの症状はなく経過、5 歳時に腹腔鏡下胆嚢造影を行ったが、胆 管の形状は著変なく、胆汁中のアミラーゼも 20IU/L 以下と上昇は認めなかった。6 歳時には ERCP を行い、胆管の造影は困難であったものの、膵管造影で胆管の描出はなく、合流異常は ないものと判断した ( 図 2C)。以後も経過観察を行っているが、胆管の形態は著変なく、無症 三み や け宅 啓ひろむ、福本弘二、矢本真也、中島秀明、小山真理子、関岡明憲、 山田 豊、漆原直人 膵・胆管合流異常を伴わない先天性胆道拡張症の 2 例
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3 図 2.A:DIC-CT および B:ERCP ではいずれも総胆管の紡錘状拡張および総肝管の嚢腫状拡張を 認める。C:ERCP では膵管造影時に胆管は造影されず 【考察】 2012 年に公開された日本膵・胆管合流異常研究会と日本胆道学会による診療ガイドラインで は、戸谷分類Ⅰ a、Ⅰ c およびⅣ -A 型の胆道拡張症はそのほぼ全例に合流異常を合併すると されている。一方で、数は少ないが合流異常のない胆道拡張症の報告もある。しかしながら自 験例のように乳児期早期に診断された症例はまれで、先天性の拡張であると確定できる症例は ほとんどないと思われ、先天性胆道拡張症の病因を考える上で非常に興味深い症例であると考 えている。先行報告の多くが合流異常を認めなくても分流手術を行っているが、我々は膵液の 胆管内への逆流がなければ分流手術は必要ないと判断し、経過観察を行っているが、合流異常 のない胆道拡張症に対する分流手術後の遺残胆管癌の報告もあるため、慎重かつ厳密な評価が 必要であると考えている。 参考文献 1) 土田ら . 先天性胆道拡張症と膵・端軟合流異常との関連性をめぐる問題点 . 胆と膵 34:235-239 2013
2) Todani et al. Clkindrical dilatation of thw choledochus: A special type of congenital bile duct dilatation. Surgery 98: 964-969 1985.
3) 世古口ら . 膵・胆管合流異常を合併しない嚢腫状先天性胆道拡張症の 1 例 . 日消外会誌 32: 1213-1216 1999.
4) 石戸ら . 膵・胆管合流異常を伴わない先天性胆道拡張症に対する分流手術後 13 年で膵内遺 残胆管に発生した胆管癌の 1 例 . 日消外会誌 43: 172-178 2010.
2.研 究 者 名 主題 V まれな先天性胆道拡張症
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3.所 属 4.研 究 要 旨 先天性胆道拡張症のうち、胆管拡張が総胆管に限局する Ib 型 ( 文節型 ) はきわめてまれであ り、なかでも膵 ・ 胆管合流異常を伴った症例はほとんど報告されていない。 われわれは膵 ・ 胆管合流異常を伴った Ib 型胆道拡張症の 1 例を経験したので報告する。 【症例】45 才女性、腹痛を主訴に当院救急外来を受診。受診時 AST158 IU/L, ALT135 IU/L,APL441 IU/L と肝胆道系酵素の上昇とアミラーゼ値 593 IU/L と高値を認め、CT では膵頭部 の腫大と周囲脂肪織の濃度上昇を認めたため、急性膵炎の診断で入院となった ( 図 1)。急性膵 炎は保存的治療で軽快したが、受診時の CT で総胆管の拡張を指摘されたため、精査を施行した。 造影 CT では胆嚢壁の肥厚と総胆管の拡張を認めたが、拡張胆管内に結石や腫瘍性病変は指摘 できず、膵管の拡張も認めなかった。矢状断では膵 ・ 胆管合流異常が示唆された ( 図 2)。 MRCP では総胆管は 20mm と紡錘状に拡張し、胆嚢管は拡張部上縁に合流していた。また総 胆管末端には陰影欠損を認め,胆管結石が疑われた ( 図 3)。EUS では拡張胆管内に腫瘍性病変 は認められず、蛋白栓と思われる高エコー像が存在した。膵 ・ 胆管は十二指腸壁外で共通管を 形成しており、膵 ・ 胆管合流異常と診断された ( 図 4)。 以上より膵 ・ 胆管合流異常を伴った Ib 型胆道拡張症と診断し、分流切除を施行した。手術 は拡張胆管を肝側は総肝管で、十二指腸側は膵上縁で切離し、拡張胆管を胆嚢とともに摘出し た。次いで非拡張胆管を膵内まで追求して合流部直上で切離した。R-Y を作成し総肝管空腸吻 合を行い再建した。胆管内胆汁、胆嚢内胆汁のアミラーゼは 120000 IU/L と高値であった。 摘出標本では拡張胆管内に結石は無く、胆嚢および拡張胆管内に悪性所見は認められなかっ た。術後経過は良好で、現在約 3 年が経過しているが、フォロー CT では、結石、腫瘍や胆管 拡張は認められない。 図1.救急外来受診時 CT 岩い わ た田 真まこと、田端正己、阪本達也、藤村 侑、前田光貴、大澤一郎、 加藤憲治、三田孝行 松阪中央総合病院 外科 膵・胆管合流異常を合併した戸谷 Ib 型胆道拡張症の 1 例 1.演 題
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図2.造影 CT 総胆管 主 膵管
図3 MRCP 十二指腸壁
【目的】 2.研 究 者 名 3.所 属 4.研 究 要 旨 1.演 題 主題 V まれな先天性胆道拡張症 【目的】 肝内胆管に限局した拡張を呈する先天性胆道拡張症は戸谷Ⅴ型に分類され,膵・胆管合流異 常を伴わないことが特徴である.戸谷Ⅴ型は,Caroli 病との鑑別も含め,疾患概念・治療法と も確立しているとは言えない.今回,乳児期に戸谷Ⅴ型と診断した 1 例を経験したので報告 する. 【症例】 現在 1 歳の男児.在胎 40 週,出生体重 3182g で出生した.胎児期の超音波検査では異常 所見は指摘されなかった.新生児期に治療の必要な黄疸はみられず,便色も正常であった.生 後 3 ヵ月時に他疾患の精査のために施行した超音波検査で肝右葉に嚢胞を指摘され,当院に 紹介された.当科での腹部超音波では , 肝右葉に限局した最大径 30mm の薄い壁を有する分 葉状の嚢胞性病変を認めた ( 図 1).腹部 MRI では,内部に隔壁様の構造物を伴う嚢胞状腫瘤 として描出され,総胆管の拡張はなく,合流異常の存在は明らかではなかった ( 図 2).肝内胆 管の拡張を疑い,DIC-CT を施行.嚢胞内に造影剤の貯留を認め,嚢胞と胆管との交通が証明 された ( 図 3).以上の画像所見より,嚢胞性病変は右肝内胆管の限局性拡張で,末梢胆管には 異常がみられなかった.拡張部位は右肝管と右前後区域枝の領域で,結石・その他陰影欠損は 認めなかった.また総胆管の拡張はなく,胆嚢にも異常所見はなかった.すなわち,肝内胆管 の限局性拡張が最も考えられ,戸谷Ⅴ型先天性胆道拡張症と診断した.右肝管限局性拡張以外 の病変がなく無症状であるため,経過観察することにした.現在 1 歳になるが,腹部症状の 出現や,超音波検査での嚢胞の拡大傾向は認めていない.今後の外科的介入の時期および術式 について,検討中である. 【考察】 先天性肝内胆管拡張を呈する疾患では,肝内末梢胆管の数珠状拡張をみる Caroli 病が代表 的である.Caroli 病では,合併する先天性肝線維症や肝外病変である腎嚢胞性疾患が予後規定 因子となり,肝・腎移植を考慮する場合もある.一方,戸谷Ⅴ型先天性胆道拡張症は,肝内中 枢側胆管に限局した単発もしくは複数の嚢胞状拡張を呈し,膵・胆管合流異常を伴わない極め て稀な病態であり,小児報告例はほとんどみられない.戸谷Ⅴ型成人例は,肝内胆管結石や胆 管炎,胆管癌で発見されたもの,肝切除後に肝内胆管の乳頭状過形成や肝実質の線維増生を認 めたものが報告されている.本邦で小児例は 3 例認められており,1 例は生後 3 ヵ月時に拡 張した右肝管を閉鎖し,肝外に突出した嚢腫壁を切除し空腸と吻合している.残る 2 例は無 症状とのため経過観察とされていたが,その後の報告はない.本症例においては現時点で合併 病変を認めておらず,肝機能障害もなく無症状で経過している.無症状の場合,いつまで経過 観察が可能か,将来の肝線維化予防のためドレナージ ( 嚢胞空腸吻合,嚢胞縫縮など ) を行うか, 岡山大学病院 小児外科 納の う そ所 洋ひろし、野田卓男、尾山貴徳、谷本光隆 戸谷Ⅴ型先天性胆道拡張症の1乳児例
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図1 超音波検査 図2 腹部 MRI/MRCP
図3 DIC-CT
1.演 題 2.研 究 者 名 3.所 属 4.研 究 要 旨 主題 V まれな先天性胆道拡張症 京都府立医科大学 小児外科 【はじめに】胆道系の形態異常のうち,重複胆管は総胆管が2本存在する極めて稀な奇形である. 今回我々は,重複胆管を伴った先天性胆道拡張症を経験したので報告する. 【症 例】2歳女児.繰り返す嘔吐を主訴に近医小児科を受診し,血清アミラーゼ 958 IU/L と高値を認めたため,急性膵炎の診断で入院となった.腹部 CT にて 10mm 径の総胆管拡張 を認め,先天性胆道拡張症の診断で当院紹介となった.MRCP にて総胆管が重複して認められ ため,DIC-CT を追加したところ,重複胆管は右肝管から分岐して膵側に向かっていたが,膵 側は描出不明瞭であった.以上より,重複胆管を伴った先天性胆道拡張症と診断し,開腹術を 施行した.胆嚢管および総胆管から術中胆道造影を行ったところ,肝外胆管は2本存在し,本 来の総胆管は,通常の解剖通り,左右肝管が合流したのち,主乳頭から十二指腸へ開口してい た.副総胆管は,右肝管より分岐して胆嚢管および総胆管と交差して走行し,膵体部で主膵管 と合流していた.以上の所見より,齊藤分類(日外会誌,1988)Ⅲ b 型と診断した.肝外胆 管の剥離を行ったところ,総胆管および副総胆管は共通壁を形成しており分離が困難であった ため,一塊にして切除し,総胆管・副総胆管共に膵内まで十分剥離して切除した.Roux-en-Y 胆道再建を施行し,手術を終了した.胆嚢内アミラーゼ値は 1,266,399 IU/L と高値であった. 術後経過は良好であった. 【考 察】重複胆管は極めて稀な疾患で,特に小児例は,検索し得た限りでは英文,和文を含 めて 8 例目であった.全て先天性胆道拡張症を合併しており,大部分は術中に診断されており, DIC-CT,MRCP で術前に非侵襲的に診断されたものは自験例が初めてであった.重複胆管の 分類として斎藤分類が知られており,このなかでⅢ b 型は小児の重複胆管においてこれまで 報告はない.また、胆嚢内胆汁中アミラーゼ高値は,副総胆管から逆流した膵液が右肝管を経 て本来の総胆管および胆嚢内に濃縮した結果と考えられ,通常の膵胆管合流異常とは異なる膵 液動態が考えられた.治療方針としては,膵液暴露による胆道発癌のリスクは,通常の合流異 常と同程度であり,肝外胆管切除は必須と考えられた.術前画像診断・術中胆道造影により詳 細な画像診断が得られたことで,胆管切離部位の同定に極めて有用であった. 馬 まにわ じゅんのすけ 庭淳之介、文野誠久、竹内雄毅、三浦紫津、坂井宏平、東 真弓、 青井重善、古川泰三、田尻達郎 重複胆管を伴った先天性胆道拡張症の一例
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・これまでに報告された詳細の明らかな小児重複胆管の8例(和文・英文を含む)
1.演 題 2.研 究 者 名 3.所 属 4.研 究 要 旨 主題 V まれな先天性胆道拡張症
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先天性胆道拡張症においては、ほぼ全例に膵・胆管合流異常症を合併しており、共通管内の 蛋白栓による反復性の腹痛を認めることがある。当科では症例により、内視鏡的逆行性胆管膵 管造影(ERCP)、および乳頭切開術(EST)を先行させ、症状改善後に分流手術を施行している。 【症例 1】13 歳女児。繰り返す上腹部痛を主訴に前医を受診した。血液検査にて胆道系酵素、 膵酵素の上昇を認め、画像検査にて紡錘状の総胆管拡張および共通管内の蛋白栓を認めたため 精査加療目的に当科に紹介となった。(図 1a)保存的治療に抵抗性であったため、分流手術に 先行して ERCP および EST を施行し蛋白栓を除去した。(図 1b)経過は順調で症状の軽快を認 めたため、1 ヶ月後に肝外胆管切除、肝管空腸吻合術を施行した。術中胆道鏡検査にて共通管 内に蛋白栓の遺残を確認し、内視鏡的に洗浄除去した。術後経過は良好で腹痛の再燃を認めて いない。 図1a MRCP 図1b ERCP 自治医科大学 小児外科 小お の野 滋しげる、柳澤智彦、馬場勝尚、薄井佳子、河原仁守、永薮和也 EST を先行させた先天性胆道拡張症の 2 例11
【症例 2】13 歳女児。以前より月に 1、2 回の上腹部痛を認めていた。強い上腹部痛を主訴に 前医を受診し、血液検査にて血清 AMY 930 と高値を認め急性膵炎と診断された。画像検査に て、紡錘状の総胆管拡張、および十二指腸乳頭部の嚢胞性病変を認めた。(図 2a, 2b)保存的 治療にて血清 AMY の改善後、ERCP および EST を施行し、蛋白栓を除去した。臨床症状は改善し、 血液検査は正常化した。画像再検査にて十二指腸乳頭部の嚢胞性病変は消失していたが、総胆 管の拡張が残存していたため、4 ヶ月後に分流手術を施行した。術中胆道鏡検査では、遺残蛋 白栓は認めなかった。術後経過は良好である。 図2a CE-CT 図 2b MRCP 【まとめ】症状を有する共通管内蛋白栓に対して、ERCP および EST を先行させることは、先 天性胆道拡張症の治療ストラテジーの一つとなりうると考える。
1.演 題 主題 V まれな先天性胆道拡張症 【背 景】 近年,ダブルバルーン小腸内視鏡(DBE)による術後再建腸管に対する内視鏡的処置の有用 性が報告されている。DBE のまれな合併症の一つとして急性膵炎があり,重篤化する例も報 告されている。今回,先天性胆道拡張症(CBD)術後の肝内結石に対する DBE 施行後に重症 急性膵炎を発症した症例を経験したのでこれを報告する。 【症 例】 18 歳女性。2 歳時に CBD(戸谷Ⅳ -a)に対し総肝管空腸吻合を施行された。肝内胆管の拡 張は残存していたが,術後順調に経過しており定期受診は受けていなかった。今回,18 歳時 に上腹部痛で発症し,近医を受診して肝内結石を疑われ,当科に転院となった。MRCP および DIC-CT にて左右肝管の拡張残存と数個の結石を認め,これに対し第 8 病日に DBE による採石 術を施行した。胆管空腸吻合部の狭窄を認め,バルーン拡張と多量の胆泥除去を施行した。検 査時間は 2 時間 45 分であった。処置中より腹痛が出現し,検査直後より血清アミラーゼ値の 上昇を認めた(1,600 IU/L)。造影 CT で膵体尾部に Grade3 の膵炎像を認め,絶食,膵酵素阻 害剤による保存的加療を行った。徐々に症状は軽快し,画像上も膵体尾部の造影不良部位は縮 小を認めた。その後他に合併症なく,第 57 病日の MRI にて膵体尾部はやや萎縮しているが ほぼ正常像となり,退院となった。 【考 察】 DBE 後の高アミラーゼ血症と膵炎発症率には検査時間とスコープ深度が関係していると報 告されている。本例ではスコープによる Treitz 靱帯の進展と長時間の処置による侵襲が膵炎 の原因と考えられた。また,もっとも外力をうけると考えられる膵体尾部が炎症の主座となり, 画像上壊死が疑われたが,膵嚢胞,動脈瘤形成などの合併症なく経過と共に改善していった。 しかし,致死的となった症例も報告されており,本検査において最も留意すべき合併症と考え られた。 文 ふみの しげひさ 野誠久1)、井口雅史1)、三浦紫津1)、坂井宏平1)、東 真弓1)、青井重善1)、 古川泰三1)、鎌田和浩2)、十亀義生2)、田尻達郎1) 2.研 究 者 名 京都府立医科大学小児外科1)、 同 消化器内科2) 3.所 属 4.研 究 要 旨 ダブルバルーン小腸内視鏡による肝内結石処置後に重症膵炎を発症した胆 道拡張症Ⅳ a の一例
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13 DB 小腸内視鏡処置中: 十二指腸 C-loop から Treitz 靱帯 にかけて直線化されている. Day 0 Day8 Day16 CT:膵尾部〜体部にかけて実質の造影効果の欠損 → 時間経過と共に改善
【目的】 1.演 題 2.研 究 者 名 3.所 属 4.研 究 要 旨 主題 V 興味ある症例
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【緒言】南回りの後区域胆管枝のほとんどが総肝管、総胆管また は胆嚢に直接流入し、いわゆる副肝管と呼ばれるものであり、 cholangiography では胆嚢に寄り添うように胆嚢と総肝管の間を 緩やかに下行する(Figure 1)1), 2)。しかし、今回我々は胆管拡 張型膵・胆管合流異常の症例において、総肝管の右側を上行して 右肝管に合流するタイプの南回りの後区域胆管を経験したので局 所所見と分流手術の手技を中心に報告する。 【症例】40 歳代女性。10 歳ころから上腹部痛を繰り返していた。 40 歳を過ぎてからこれまでにない激しい上腹部痛を自覚したため 近医を受診し、精査の結果、胆道拡張型膵・胆管合流異常と診断 され手術目的に当科へ紹介された。既往歴は、虫垂炎手術、帝王 切開、卵巣嚢腫手術、橋本病。画像上、胆嚢に 7mm 大の有茎性 ポリープを認めたがその他に malignancy を示唆する所見を認め なかった。MRCP、ERCP では共通幹の長さは約 25mm、総胆管 は最大で 12mm に拡張し narrow segment を有していた。肝内 胆管の拡張はなかったが、総肝管の右側を上行して右肝管に合流 する南回りの後区域胆管を認めた(Figure 2)。手術は腹腔鏡下 に施行した。胆嚢と肝円策を横隔膜側に吊り上げ挙上して術野を 確保し、胆嚢管は漏斗部寄りで一旦離断した。総胆管を全周性に 露出して肝門に向かって剥離を進め、総肝管背側を通過する右肝 動脈との間を剥離した。南回りの後区域胆管枝は Rouviere 溝を 通過した後に三管合流部近くまで胆嚢管と並走し、その後は総肝 管に寄り添うように右肝管に向かって上行し、胆嚢管・ 総肝管とともに線維性結合織によって取り囲まれてい た。胆嚢管との間は安全に剥離できたが、総肝管との 間を剥離する際に南回りの後区域胆管枝に小孔が開い た(Figure 3)。それ以上の総肝管の剥離は困難と考え、 そこで総肝管を離断した。離断した総胆管を腹側に引 きながら膵内へ向かって総胆管の剥離を進め narrow segment の最上部で結紮離断した。胆管空腸吻合に先 行して 5Fr の膵管ステント(12cm)を南回りの後区域胆管の小孔から右肝管に向けて挿入し、 総肝管断端内腔からその先端を引き出した。その先端をさらに引いてステントの反対側先端を 都立駒込病院 外科 本ほ ん だ ご ろ う田五郎、倉田昌直、坂元克考、本間祐樹、本庄真彦 南回り後区域胆管を有する拡張型膵・胆管合流異常の 1 例 Figure 2【緒 Figure 1【緒言】南 Figure 3 総肝管断端 南回り後区域胆管に 開いた小孔 右肝動脈15 そ の 後 小 孔 を 5-0Maxon 糸 2 針 で 縫 合 閉 鎖 し た (Figure 4)。胆管空腸吻合は連続縫合で行い、南回り 後区域胆管枝に留置されたステントの先端は空腸内に 留置した。手術時間 406 分、出血 0g、術後経過良好 で 11 日目に退院した。術後 6 か月の時点では肝内胆 管の拡張はなく、肝胆道系酵素の値も正常である。 【考察】南回りの後区域胆管枝は胆道癌に対する左側 肝切除の際の後区域胆管離断部位の planning 時に問 題となる以外にも、胆嚢摘出術時の胆管損傷のハイリ スク要因として知られているが、多くの症例では注意深い画像診断によって術前に検出してお くことにより、胆管損傷を回避することが可能である。しかし、本症例では胆嚢管と近接した 部位が線維組織によって胆嚢管と比較的強固に接していたため、術前に検出していても損傷す る危険性が高い。本症例のような総肝管の右側を上行して右肝管に合流するタイプの南回りの 後区域胆管枝は非常に稀であり、膵・胆管合流異常と何らかの関係を有する可能性がある。 【文献】 1) 倉田昌直,本田五郎,奥田雄紀浩,他.腹腔鏡下胆嚢摘出術前の胆道検査による胆道走行 異常のスクリーニングの有用性と対処法の検討 . 胆道 26(5), 663-667, 2012
2) Kurata M, Honda G, Okuda Y, et al: Preoperative detection and handling of aberrant right posterior sectoral hepatic duct during laparoscopic cholecystectomy. J Hepatobiliary Pancreat Sci 22:558-562, 2015.
Figure 4
縫合閉鎖部
1.演 題 3.所 属 2.研 究 者 名 主題 V 興味ある症例 【はじめに】今回、肝門部胆管合流形態異常のある膵胆管合流異常症を 1 例経験したので報告 する。 【症例】11歳男児。腹痛を主訴に近医を受診。血清アミラーゼ 1608U/L、リパーゼ 1231 U/ L と膵酵素の上昇みられ、急性膵炎の診断にて緊急入院となった。前医での精査にて膵胆管合 流異常症が疑われ、加療目的にて当科転院となった。腹部エコーでは胆嚢・膵臓の腫大がみられ、 総胆管は径 8mm と拡張が認められた。MRCP でも同様に、膵腫大、総胆管・膵管の拡張、長 い共通管 (12mm) が認められ、膵胆管合流異常症と診断した。膵炎症状の改善を待ち開腹手 術(肝外胆管切除・肝門部肝管空腸吻合術)を行った。胆嚢管・総胆管からの術中胆道造影で 長い共通管・膵胆管合流異常を確認し、肝門部胆管は右肝管と左肝管が合流する形態と判断し た。肝門部肝管を切離したところ、総肝管の後面に門脈右枝の頭側を乗り越えるように走行(北 回り)する右後区域胆管が認められた。このためこの右後区域胆管を切離した後、右前区域胆 管と左肝管の合流した胆管と右後区域胆管の 2 本で共通管を形成し、肝管空腸吻合を行った。 【考察】肝門部胆管の合流形態異常について検討された報告は少ない。今回の症例は右後区域 胆管が肝管に合流する位置と胆嚢管が総肝管に合流する位置が近接しており、右前区域胆管 (A) と左肝管 (L) が合流した後、右後区域胆管 (P) が流入 (P-AL) する型(図1)で、この P-AL 型は Huang らの分類では Type A5 で頻度は 1.6%、Nakamura らの分類では Type 4b で 5.5% と稀な合流形態異常であった。また、後区域胆管の走行は、通常後区域胆管が門脈右枝の頭側 を乗り越えて前区域胆管(または総胆管、左肝管)と合流(北回り)するが、竹口らは肝門部 が P-AL の合流形態を示す場合、後区域胆管の走行は門脈の下方を走行(南回り)する頻度が 極めて高いと報告しており、本症例のような P-AL で北回りの走行は非常に稀と考えられた。 本例のような P-AL 型の肝門部胆管合流形態異常は、術前画像検査や術中胆道造影での把握 が困難な場合があるため、胆管切離部位の同定には十分な注意が必要である。今回本症例の画 像を呈示し、肝門部胆管の合流形態異常について文献的考察を加え報告する。 4.研 究 要 旨 国立成育医療研究センター 外科 田 たはら かずのり 原和典、朝長高太郎、竹添豊志子、右田美里、大野通暢、渡邉稔彦、 渕本康史、金森 豊 肝右葉後区域胆管の走行異常が見られた膵胆管合流異常症の1例
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主題 V 興味ある症例 【背景】 膵・胆管合流異常の中で「複雑な合流」は 5.5% と稀であり、膵管癒合不全や輪状膵が関与 していると考えられているが、詳細は不明で個々の症例によってその解剖も様々である。今回、 不完全型膵管癒合不全を合併した膵・胆管合流異常の 1 例を経験したが、膵・胆管合流異常 の発生機序に基づいて複雑な解剖を解釈したので報告する。 【症例】 67 歳の男性。62 歳時、健診で総胆管拡張(19mm)を指摘され経過観察されていたが、拡張 が進行し、手術目的に当科紹介となった。ERCP にて主乳頭から造影すると総胆管拡張(26mm) を伴う膵・胆管合流異常を認め、腹側膵管の分枝が背側膵管の分枝に合流し、不完全型膵管癒 合不全を合併していた(図)。総胆管拡張を伴う膵・胆管合流異常に対して総胆管切除+肝管 空腸吻合術を施行した。病理組織学には悪性所見はなく、第 9 病日に退院した。 【考察】 膵管癒合不全を合併する膵・胆管合流異常症例の解剖の把握は難しいが、発生機序を腹側膵 の形成異常であると解釈すれば理解しやすい。また、膵・胆管合流異常の原因を胆道系の発生 異常とする報告もあるが、腹側膵の形成異常であると解釈すると、本症例のように膵管癒合不 全を合併することも一元的に説明できるため、最も妥当な発生機序であると思われた。 自治医科大学消化器・一般外科1)、自治医科大学移植外科2) 眞 さなだ ゆきひろ 田幸弘1,2)、森嶋 計1)、笠原尚哉1)、三木 厚1)、遠藤和洋1)、小泉 大1)、 笹沼英紀1)、佐久間康成1)、佐田尚宏1)、安田是和1) 2.研 究 者 名 3.所 属 4.研 究 要 旨 「複雑な合流」を呈する膵・胆管合流異常症例から推測される膵・胆管合 流異常の発生機序
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1.演 題19 1.演 題 鍵か ぎ や た く じ谷卓司1,2)、須貝道博1)、石戸圭之輔1,2)、齋藤 傑1,2)、木村俊郎1,2)、 袴田健一1,2) 弘前大学医学部附属病院 小児外科1)、弘前大学大学院医学研究科 消化 器外科学講座2) 症例は 1 歳 4 か月の女児で、1 か月前から黄疸と軟便が認められていた。感冒症状で近医 を受診した際に、骨盤内に至る巨大腫瘤を触知した。超音波検査で肝内および肝外胆管の拡張 を指摘され当科紹介となった。CT で左右肝内胆管の拡張と腹腔内を占める径 11cm の巨大な 総胆管の拡張が認められ、戸谷Ⅳ -A 型の先天性胆道拡張症と診断した。その後、胆管炎によ る敗血症性ショックを引き起こしたため、胆管外瘻造設術を必要とした。ドレナージ治療後、 拡張胆管切除、肝管空腸吻合術を施行した。拡張胆管切除に際しては、胆管壁に接して結紮、 切離を施行し、膵管の損傷を防いだ。総胆管が巨大で末端部の狭小化が著明であったため、術 中胆道造影では膵・胆管合流異常は同定できなかった。巨大な先天性胆道拡張症の原因として は、膵・胆管合流異常の胆管合流型末梢胆管が狭小で、胆汁が総胆管内にうっ滞したことによ る。胆汁うっ滞に細菌感染をきたし、胆管炎による敗血症をきたしたため、ドレナージ治療を 必要とした。本症例の発生機序・治療方法について文献的考察を加えて報告する。 4.研 究 要 旨 3.所 属 2.研 究 者 名 胆管炎による敗血症性ショックを呈した巨大な先天性胆道拡張症の 1 幼 児例
1.演 題 主題 V 興味ある症例 清し み ず水 貴たかし、味木徹夫、松本 拓、篠崎健太、浅利貞毅、後藤直大、外山博近、 木戸正浩、福本 巧、具 英成 神戸大学医学部附属病院 肝胆膵外科 2.研 究 者 名 3.所 属 4.研 究 要 旨 症例は 66 歳女性。2002 年より近医で総胆管の拡張を指摘、手術加療をすすめられていた が自覚症状なく、本人が手術に同意せず経過観察されていた。2015 年 1 月自動車の後部座席 に乗車中にトラックに衝突され前医に救急搬送された。精査にて左第 4 〜 10 肋骨骨折、右第 4 肋骨骨折、左血気胸、第 1 腰椎圧迫骨折、第 2 腰椎横突起骨折と診断され同日入院となった。 保存的加療により全身状態の改善を認めたが、事故後 14 日目上腹部痛、肝胆道系酵素の上昇 を認めた。胆嚢炎が疑われ、保存的に加療を行ったが改善を認めないため、精査加療目的に事 故後 24 日目に当院に転院となった。転院時の血液検査では肝胆道系酵素の上昇(AST:338U/I、 ALT:400U/I、ALP:1135U/I、T-Bil:1.3mg/dl)は認めるものの炎症反応の上昇は認めなかった。 腹部造影 CT にて肝外胆管の嚢状拡張、胆嚢腫大を認めたが、下部胆管に明らかな閉塞起点は 認めず、膵癌や胆管癌を疑う所見はなく、MRI でも同様の所見であった。膵胆管合流異常症、 総胆管のう腫と診断し、外傷に伴う膵炎発症とそれに伴う胆管狭窄を疑った。ERCP は腰椎圧 迫骨折による体動制限や処置による腰椎圧挫の増悪および脊髄損傷の可能性等を考慮し、十分 な精査が不可能であったが、膵管にカニュレーションし造影を行うも最初胆管は造影されず、 共通管〜胆管の狭窄が疑われた。最終的には、ENBD を留置して終了した。経口摂取を開始し 栄養状態の改善を行った後に手術予定とした。胆管合流型、戸谷Ⅰ a 型、嚢胞径 48mm、共 通管長 26mm、胆汁中膵アミラーゼ 2164U/ml と診断し、転院後 38 日目に総胆管嚢腫切除、 胆嚢摘出術を施行し、肝門部の膜様部分を切開し Roux-en-Y にて胆道再建を行った。胆嚢内 膵アミラーゼ 20U/ml 未満、胆 管内膵アミラーゼ 26U/ml と胆 汁中膵アミラーゼ上昇が見られ ず、胆管閉塞の影響が考えられ た。病理所見では再生異型を部 分的に認めたが、dysplasia や 悪性所見は認めなかった。術後 は大きな問題なく経過し術後 20 日目に前医にリハビリ目的 で転院となった。 今回我々は交通事故による多発 外傷を契機として有症状化した 総胆管嚢腫、膵胆管合流異常症 交通事故による多発外傷を契機にした膵炎で発症した先天性胆道拡張症の 1 例
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21 1.演 題 2.研 究 者 名 【はじめに】 先天性胆道拡張症の中には、肝門部が嚢胞状の胆道閉鎖症と鑑別困難な症例が存在する。今回、 出生前に先天性胆道拡張症と診断し、出生後黄疸増強のため早期手術を施行した症例で、最終 的に胆道閉鎖症と診断した症例を経験したので報告する。 【症例】 症例は日齢 37 の女児。前医産婦人科で在胎 30 週に腹部嚢胞状病変を指摘され、32 週に当 院産婦人科に紹介された。37 週の腹部超音波検査で、肝門部に 15 × 13mm 大の嚢胞性病変 が認められ、先天性胆道拡張症と診断された。在胎 39 週 3 日、2,805g で出生。Apgar score 9/9。腹部超音波検査、MRCP(図 1)を施行し、当科でも経過をみていたが日齢 31 に T.Bil 6.8mg/dl, D.Bil 4.9mg/dl と黄疸の増強を認め、フォロー目的の腹部超音波検査で胆道閉鎖症 の可能性も否定できないと考え、日齢 37 に手術を施行した。術中胆道造影(図 2)にて肝内 胆管の描出ありと読影し、先天性胆道拡張症と診断し、嚢胞切除・肝管空腸吻合、Roux-Y 再 建を行った。術後、ドレーンより胆汁漏出を認め保存的加療を行うも奏効せず、術後 14 日目 (日齢 51)に再手術を施行した。吻合部前壁が破綻しており、左右肝管口は 1mm 程度と細く、 肝管空腸吻合は困難と判断し、葛西手術に準じて肝門部空腸吻合を行った。術後経過は良好で 再手術後 30 日で退院した。その後、生後 8 か月時に胆管炎で入院加療を要し、1 歳 1 か月の 現在外来で胆道閉鎖症としてフォロー中である。 【考察】 出生前診断という点からは、先天性胆道拡張症の出生前診断 6 例の経験(文献)から、本症 例のような在胎 37 週で 15mm 大の胆道拡張症も否定できなかった。本症例では経時的な変 化を調べることができず、一点だけの計測値では両者の鑑別は困難であり、経時的な変化をみ ることができていれば出生前に鑑別できたかもしれない。 術中胆道造影の読影については、十二指腸側の閉塞と肝内胆管の不整な造影所見から先天性胆 道拡張症よりも胆道閉鎖症と診断すべきであったかもしれない。 手術術式の選択という点からは、先天性胆道拡張症と診断した場合でも、吻合部の肝管が細い 場合には初回手術から肝門部空腸吻合術を選択するべきであったかもしれない。 【文献】 先天性胆道拡張症と胆道閉鎖症は出生前に鑑別できるか ―嚢腫径と嚢腫占有率の経時的変化 からの検討―.高田晃平、荒木吉朗、中村有佑、宮内雄也、服部健吾、佐藤正人、濵田吉則. 第 36 回日本膵・胆管合流異常研究会プロシーディングス第 36 巻、74-57, 2013. 4.研 究 要 旨 関西医科大学外科学講座 小児外科 3.所 属 白し ら い井 剛つよし、中村有佑、八田雅彦、高橋良彰、濵田 洋、佐藤正人、 濵田吉則 先天性胆道拡張症と鑑別困難であった胆道閉鎖症の 1 例
主題 V 興味ある症例 図 1 生後 6 日の MRCP 図 2 胆嚢からの術中胆道造影 肝内胆管は左右とも二次分岐を越えて造影されているが、ところどころに数珠状の拡張や造 影欠損がみられ、末梢胆管に至るまで径が不規則に変化していてスムーズな先細りではない。 しかし I cyst 型などの胆道閉鎖症でいわれる典型的な雲母状、枯れ枝状ではない。 一方、十二指腸側の総胆管末梢は造影剤が流れず丸く造影され、完全閉塞していてこちらは 胆道閉鎖症に合致する所見である。
23 1.演 題 2.研 究 者 名 3.所 属 4.研 究 要 旨 【背景】 膵・胆管合流異常症は高率に胆道癌を発症することが知られている。発癌機構には epigenetic 修 飾 と genetic 修 飾 が 存 在 す る が、 我 々 は epigenetic 修 飾 に 関 与 す る HADC(Histone deacetylase)と genetic 修飾に関与する遺伝子の変異活性を有する AID (activation-induced cystidine deaminase) に着目し、成人膵・胆管合流異常症例における発癌ポテンシャルについ て報告してきた (Hepatogastroenterology 2014, 日本癌治療学会 2012)。今回、当科で分流手 術を施行した小児先天性胆道拡張症における発癌と上記経路との関連性について AID を中心 に検討した。 【方法】 当科で分流手術を施行した先天性胆道拡張症の小児症例 4 例および成人膵・胆管合流異常症 例 13 例を対象とした。悪性腫瘍を除く膵頭十二指腸切除術 4 例をコントロールとした。胆 嚢及び胆管上皮における Ki67、K-ras、HDAC、AID の発現を免疫組織化学染色で評価した。 K-ras は陽性細胞 / 全細胞が 10% 以上を陽性とした。 【結果】
小児先天性胆道拡張症の胆嚢上皮において、Ki67 発現、HDAC 陽性率、K-ras 陽性率、AID 陽 性率は成人症例と同様にコントロールと比較して有意に高かった (Ki67; 8.7 ± 6.0%:1.3 ± 1.0%, P<0.05、HDAC; 51.7 ± 22.5%:13.6 ± 13.6%, P<0.05、K-ras;100%:25%, P<0.05、 AID; 79%:1.25%, p<0.05)。
また、小児先天性胆道拡張症の胆管上皮においても、コントロールと比較して、Ki67 陽性率 および AID 陽性率は増加傾向を認め、HDAC 陽性率と K-ras 陽性率は、胆道拡張症例で有意 に 高 く(Ki67;25.0 ± 21.8%:3.8 ± 0.9%, P=0.10、HDAC;76.7 ± 23.1%:5.7 ± 5.9%, P<0.05、K-ras;100%:25%, P<0.05、 AID; 43% : 1.25%, p=0.06)、成人症例と同様の結果であっ た。 【結語】 膵・胆管合流異常症小児例の胆道上皮においても成人症例と同様に epigenetic および genetic 修飾を介した発癌ポテンシャルを有する可能性がある。 徳島大学病院 小児外科・小児内視鏡外科 矢や だ け い ご田圭吾、石橋広樹、島田光生 小児先天性胆道拡張症の胆道上皮における発癌関連遺伝子発現の検討
2.研 究 者 名 3.所 属 1.演 題
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【背景】 胆嚢癌の危険因子として、膵胆管合流異常 (PBM) や高位合流が挙げられるが、近年、PBM や 高位合流が存在しない潜在的膵液胆管内逆流も胆道悪性疾患の危険因子となりうることが指摘 されている。今回、胆嚢癌の危険因子としての膵液胆管内逆流に注目して、ERCP 時に採取し た胆汁中アミラーゼ値の胆嚢癌術前診断における意義について検討した。 【方法】 2007 年 7 月 1 日から 2015 年 6 月 30 日までに当科で胆嚢腫瘍が疑われ、術前に胆汁内アミラー ゼ濃度を測定して手術を行った 52 例を対象とし、PBM と高位合流合併の有無、胆汁中アミラー ゼ値と切除後病理診断の対比を行った。 【結果】 切除後の病理診断で 22 例が胆嚢癌、30 例が良性病変であった。PBM あるいは高位合流の 合併は悪性群が 13 例 (59%)、良性群が 8 例 (27%) であり、有意に悪性群で頻度が高かった (p=0.02)。胆汁アミラーゼ値は胆嚢癌群の中央値 6,516U/l (84-225,900)、良性群 513IU/l (2-30,344) で、胆嚢癌群で有意に高かった(p <0.01)。また胆嚢癌 22 例中、ERCP で PBM あ るいは高位合流が確認されなかった 9 例の胆汁アミラーゼ値 (中央値 1,363 IU/l, 185-3,325) も良性群 ( 中央値 414, 2-1,293) に比べて有意に高値 (P=0.01) であった。胆嚢癌を陽性とする 胆汁アミラーゼ値の ROC 曲線での AUC は 0.78 であり、1,338IU/l をカットオフ値とした際 の感度、特異度はそれぞれ 76%、79% であった。 【結語】 画像検査で胆嚢癌が疑われた場合、ERCP で PBM や高位合流が証明されない例でも胆汁アミ ラーゼ値が高値である場合には、潜在的膵液胆道逆流現象が存在する可能性があり、胆嚢癌リ スクが高いと考えられた。 4.研 究 要 旨 九州大学 臨床・腫瘍外科 藤 ふじもと たかあき 本崇聡、大塚隆生、後藤佳登、中島陽平、伊達健治朗、木村英世、 松永壮人、森泰寿、宮坂義浩、中村雅史 主題 I 胆管形態と発癌機構 胆嚢癌の術前診断における膵胆管合流異常と胆汁アミラーゼ値の意義25 1.演 題
2.研 究 者 名 3.所 属
【目的】Forme Fruste Choledochal Cyst (FFCC) とは、肝外胆管の拡張を伴わない、または軽微 な拡張しか伴わない膵胆管合流異常である。今回我々は FFCC の長期予後について検討を行っ た。 【方法】当科にて加療された 231 例の胆道拡張症症例を対象とし後方視的に検討を行った。本 研究では、肝外胆管の直径が 10mm 未満の症例を FFCC とした。 【結果】FFCC は 22 例(9%)であった。21 例全てに膵・胆管合流異常を認めた。胆管切除術 時の年齢は平均 3.2 歳であった。19 例に総肝管空腸吻合(端々吻合 13 例、端側吻合 6 例)が、 3 例に十二指腸空腸吻合が施行された。19 例のうち 3 例は腹腔鏡下手術を施行した。肝外胆 管の直径は平均 7.1mm で、吻合は 4-0 または 5-0 吸収糸による一層縫合を行った。切除標本 を病理学的に検索した結果、肝外胆管の 31.8%に粘膜のびらん脱落を、47.6%に線維化を、 42.8%に炎症細胞浸潤を認めた。平均 16.8 年の追跡期間中、胆管炎や吻合部狭窄などの術後 合併症は認めていない。 【考察】FFCC の適切な治療法は肝外胆管切除・総肝管空腸吻合術と考えられ、慎重に施行さ れれば後期合併症も認めず、長期フォローにおいても経過良好である。 4.研 究 要 旨 順天堂大学 小児外科 古こ が ひ ろ ゆ き賀寛之、中島秀明、岡和田 学、土井 崇、 宮野 剛、末吉 亮、 山高篤行
1.演 題 齋 さいとう 藤 裕ゆう1, 2)、島田 光生1, 2)、石橋 広樹1, 2)、森根 裕二1, 2)、窪田 正幸2)、 安藤久實2) 徳島大学 外科学 1)、日本膵・胆管合流異常研究会事務局 2) 【目的】我々は以前から膵・胆管合流異常症において、総胆管の拡張・非拡張別に全国登録症 例の解析を報告しており、非拡張症例において有意に胆道癌発生頻度が高いことを報告してい る。一方で、近年共通管の拡張形態も重要視されており、小児症例において共通管の拡張・非 拡張別にその臨床像を報告してきた(第 37 回膵胆管合流異常研究会)。今回、日本膵・胆管 合流異常研究会に登録された成人症例において、共通管の拡張・非拡張別にその臨床像を検討 したので報告する。 【対象】1990 年〜 2011 年の年齢 15 歳以上の成人全国登録症例は 1,701 例で、そのうち共 通管の形態が不明な 227 例と未手術の 88 例を除外して、1,386 例の成人例で検討した。これ らの症例を共通管の拡張の有無で 2 群に分けた。なお、共通管の拡張の定義に関しては現在、 明確なものがなく、登録施設での判断で拡張ありと報告されたデータで検討した。このうち先 天性胆道拡張症は 1063 例で、胆管非拡張型合流異常は 323 例であった。さらに共通管拡張 群 403 例、非拡張群 983 例であった。 【結果】(合流形態)合流異常研究会では、全国登録に際して、膵管に胆管が合流する typeA、 胆管に膵管が合流する typeB、それ以外の複雑に合流する typeC と合流形態を3つに分類して いる。これで合流形態をみると、共通管拡張群では A 型 47.4%、B 型:46.4%、C 型:5.2%、 不明:1.0% で、非拡張群では A 型:54.7%、B 型:37.5%、C 型:5.5%、不明:2.3% であった。 (総胆管拡張)(図 1)共通管拡張群 86.3%、非拡張群 73.3% と総胆管拡張は共通管拡張群で 高頻度であった。 (症状)初発症状としては、共通管拡張群において嘔気・嘔吐が高頻度であったが、腹痛・背部痛・ 黄疸・腹部腫瘤・発熱・灰白色便では差がなかった。また、共通管拡張群では、有意に術前に 急性膵炎、肝障害を合併する頻度が高く、胆道穿孔の頻度も有意に高かった(2.0% vs 0.6%)。 (膵石・胆石)(図 2)共通管拡張群では有意に膵石の合併率が高かったが(15.9% vs 4.6%)、 その成分は、どちらも蛋白栓が 90% 以上を占めており、差はなかった。胆石の合併率には差 を認めなかった。 (術後合併症)共通管拡張群 19.4%、非拡張群 20.8% と差はなかった。 (胆道癌発症)(図 3)共通管拡張群 13.0%、非拡張群 16.3% と、非拡張型において、胆道癌 発生頻度が多い傾向を認めた(p=0.12)。以前から報告している総胆管拡張・非拡張別に比較 した場合、総胆管拡張群 9.7%、非拡張群 34.9% と、非拡張型において胆道癌発生頻度は有意 に高値であり、その非拡張症例において、さらに、共通管拡張・非拡張別に胆道癌発生頻度を 比較したが、共通管拡張群 29.6%、非拡張群 36.0% と胆道癌発生頻度に差を認めなかった(図 4.研 究 要 旨 3.所 属 2.研 究 者 名 成人膵・胆管合流異常における共通管拡張・非拡張別の臨床像 — 合流異常研究会登録症例の解析 — 主題 I 胆管形態と発癌機構
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27 【考察】共通管が拡張した症例では、総胆管拡張症例が多く、また、有症状例が多く、術前に 急性膵炎、肝障害を合併する頻度が高く、胆道穿孔のリスクも高く、蛋白栓合併率が高いとい う特徴が判明した。共通管の拡張が存在することにより、蛋白栓が出来やすく、それにより胆 管・膵管内圧が上昇し、穿孔、膵炎、胆管炎などの病態に繫がることが推測され、今回の検討 からは、成人症例において総胆管の拡張の有無より、臨床的には共通管の拡張の有無を把握す ることの重要性が示唆された。また、胆道癌発生頻度に関しては、総胆管拡張・非拡張別に比 較した場合ほどは、有意差を認めなかったが、共通管非拡張型で、癌発生頻度が高い傾向を認 めた。今後は、追跡調査による長期的な予後調査も必要と思われた。
【目的】 1.演 題 2.研 究 者 名 3.所 属 4.研 究 要 旨 主題 I 胆管形態と発癌機構 【目的】 膵・胆管合流異常診断基準 2013 で胆管拡張の診断は,年齢に相当する総胆管径の基準値を 参考にするとされたが,それまでに報告されてきた非拡張型合流異常の多くが自己申告である ため基準が不明である.非拡張型の合流異常には胆嚢がんの合併が圧倒的に多いとされている が,非拡張の規準が変わると統計が変わる可能性がある.今回,自験例を含めて胆嚢がんに非 拡張型合流異常を伴っていたとされる症例の総胆管の形態を評価した. 【方法】 2000 年以降に非拡張型合流異常に胆嚢がんが合併したとする報告を医中誌,PubMed で抽 出して胆管の画像があるものを対象とした.自験例でも合流異常を伴った胆嚢がん症例を検索 した.昨年に報告した胆管のプロポーション値『(総胆管の最大径)/(総肝管の最小径)』を 出した. 【結果】 胆嚢がんに膵・胆管合流異常を伴っていた症例を 4 例経験しているが,非拡張型合流異常と 判断している症例は 1 例のみであった.文献からは表の 8 例の報告を見つけることができた. 以前報告したように,ERCP は MRCP の 26% 増しの値になることから,修正値を出した. 年齢 性別 総胆管径(画像診断) 胆管プロポーション値 1 58 y.o. 女 11mm(ERCP) 8.7mm 2 2 50 男 8(ERCP) 6.4 1.5 3 57 女 12(MRCP) 1 4 72 女 8(ERCP) 6.4 2.7 5 67 女 (ERCP) 1.8 6 48 女 (ERCP) 2.7 7 55 男 10(MRCP) 1.8 8 62 女 ( 術中造影) 1.8 自験例 61 女 7.1(MRCP) 1.3 大阪市立大学 小児外科1)、大阪市立大学 肝胆膵外科2) 諸 もろとみ よしき 冨嘉樹1)、北田智弘1)、栄 由香里1)、久保田雪乃1)、久保正二2) 胆嚢がん合併非拡張型合流異常報告例の胆管形態
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29 【考察】 病態,症状,術式に違いがあるのであれば,非拡張型合流異常を拡張型から分ける必要があ る.もし非拡張型には胆摘のみでいいということになれば,非拡張と拡張のどこで線引きする かが大きな問題になる.また,胆管拡張の基準を明らかにしないと非拡張型には胆嚢がんが圧 倒的に多いという今までの統計結果自体の信用がなくなってしまう. 年齢別の胆管拡張の参考値は 40 歳代 6.8mm 以上,50 歳代 7.3mm 以上,60 歳代 7.8mm 以上,70 歳代 8.6mm 以上となっている.また,昨年に発表したように胆管のプロポーショ ン値は生体肝移植ドナーから導き出した 1.3 を正常値とし,Ⅰ c 型のプロポーション値の平均 は 2.8 であった. 今回の自験例を含めて 9 症例中,新診断基準とプロポーション値の両方ともに非拡張型に 当てはまるのは,自験例のみである. 非拡張型の膵・胆管合流異常の存在は思っている以上に稀有な存在である可能性が高い. Ⅰ c 型に分流手術が必要なことは意見が一致しており,非拡張型には胆摘のみでいいという意 見が近年は多くなっている.非拡張型はまれであることから,今後は「いわゆる」非拡張型と して報告されている胆管プロポーション値が 2.8 に満たない forme fruste(不完全型)に分流 手術が絶対適応なのかを調査していく必要がある. 参考文献 諸冨嘉樹,ほか:胆管プロポーション値による病的胆管拡張の診断.胆と膵 35:947-950,2014 濵田義則,ほか:胆管径から見た胆管拡張の定義.胆と膵 35:943-945,2014
1.演 題 2.研 究 者 名 【背景】 近年、画像診断の進歩とともに、膵胆管合流異常を診断する機会が増えており、胆嚢癌を合併 した膵胆管合流異常症の報告も増加している。今回、術前に胆道拡張症を伴う膵胆管合流異常 症に合併した胆嚢癌と診断し、拡大胆嚢摘出術を施行した症例で、術後の病理結果で 2 箇所 に胆嚢癌を認めた一例を経験したので報告する。 【症例】 61歳男性。背部痛を主訴に前医を受診され、尿管結石の疑いで施行した CT で胆嚢腫瘍を指 摘され、精査加療目的に当科紹介受診となった。CT では、胆嚢頸部に造影効果のある腫瘍と 胆嚢壁の肥厚を認めた。また軽度の総胆管拡張を認めた。MRI と ERCP 所見より、戸谷分類Ⅰ b 型の胆道拡張症と Pancreatic duct type の膵胆管合流異常症と診断。胆汁中のアミラーゼは 84,880IU/L と高値であった。FDG-PET 検査では、胆嚢頸部の腫瘍に一致して、MaxSUV 4.1 の FDG 集積を認めた。以上より、総胆管拡張を伴う膵胆管合流異常症に合併した胆嚢癌と診 断し、拡大胆嚢摘出術、肝外胆管切除再建、リンパ節郭清を施行した。術後の病理結果にて胆 嚢頸部と、胆嚢底部から体部にかけての 2 箇所に胆嚢癌を認めた。両腫瘍間に連続性はなく、 胆嚢内の重複癌と診断した。胆嚢頸部の腫瘍は、papillary-expand type で、胆嚢体部の腫瘍は flat type であった。いずれも壁進達度が T1b で N0M0 の Stage Ⅰであった。術後に軽度の膵 炎を合併したが、保存的加療にて軽快し、術後 15 日目に退院。術後半年が経過し、無再発生 存中である。 【考察 / 結語】 膵胆管合流異常には胆道癌の合併が多く、嚢胞状拡張型の胆道拡張症では胆管癌が、非拡張 型では胆嚢癌の合併が多いことが報告されている。また発癌機序として、膵液の胆管内への逆 流により、胆道粘膜に持続する炎症と再生が生じることから、細胞周期の回転が亢進し、過形 成、異形成、癌が発生し得るとされている。今回の症例のように、膵胆管合流異常症の症例で 胆道系に重複癌を認めた症例の報告も散見されており、胆道拡張症、膵胆管合流異常症と診断 した際には、重複癌も念頭に診断、治療を行うことが重要であると考えられた。 4.研 究 要 旨 群馬大学医学部附属病院 外科診療センター 肝胆膵外科 久く ぼ の り お保憲生、新木健一郎、星野弘毅、石井範洋、塚越真梨子、五十嵐隆通、 渡辺 亮、平井圭太郎、齊藤文良、桑野博行 胆道拡張症を伴う膵胆管合流異常症に合併した重複胆嚢癌の一例
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主題 III 同時性・異時性発癌 3.所 属31 1.演 題 2.研 究 者 名 3.所 属 症例は 77 歳女性。胸焼けを主訴に前医を受診し、CT で肝内胆管拡張を認めた。内視鏡的逆 行性膵胆管造影で膵・胆管合流異常と中部胆管の狭窄を認め、細胞診で Class V であり中部 胆管癌と診断され、精査加療目的に当院を紹介された。非拡張型膵・胆管合流異常は P-C 型 で、新古味分類ではⅡ b 型であった。CT, 腹部エコーでは胆嚢底部に隆起性病変を認め、胆嚢 癌の合併が疑われた。腫大した近傍リンパ節以外には転移を示唆する所見はなかった。胆管 癌 T4N1M0 stage Ⅳ a, 胆嚢癌 T1N0M0 stage Ⅰの診断で拡大肝門部胆管切除、肝床切除、膵 頭十二指腸切除術を施行した。術後は胃内容排出遅延を合併したが保存的に軽快し、術後 47 日目に退院した。病理組織学的診断は、胆管癌は tub2, T4, N1, stage Ⅳ a, 胆嚢癌は tub1, Tis-RAS, pN0, stage Ⅰであった。両病変間には正常胆管上皮を認め連続性はなく、重複癌である と診断した。 【考察】膵胆管合流異常における胆嚢癌と胆管癌の合併は、先天性胆道拡張症で 4.7%, 胆管非 拡張型で 4.1% とされ稀である。胆管拡張の有無と重複癌の関連について文献的考察を加え報 告する。 4.研 究 要 旨 横浜市立大学大学院医学部 消化器・腫瘍外科 浅あ さ の ふ み お野史雄、森 隆太郎、松山隆生、平谷清吾、澤田 雄、大田洋平、 熊本 宜文、武田和永、遠藤 格 胆管非拡張型膵胆管合流異常に胆嚢癌・胆管癌を併発した1例
1.演 題 【はじめに】 先天性胆道拡張症術後の長期合併症には,吻合部狭窄,肝内結石,遺残胆管癌などが挙げられる. 今回我々は術後 4 年後より吻合部狭窄が出現,肝内胆管の拡張とともに肝内結石が形成され, その後遺残胆管癌を発症した 1 例を経験したので報告する. 【症例】 症例は 52 歳女性.42 歳時に先天性胆道拡張症に伴う遠位胆管癌の診断で ( 図 1),肝外胆管 切除術,D2 リンパ節郭清及び胆道再建術を施行された.胆管癌は pT3N0M0 で Stage Ⅲ.術 後 3 年を経過した頃より,肝内胆管の拡張と繰り返す胆管炎を認めた.さらに 5 年を経過し た頃からは,吻合部近傍の胆管壁肥厚,肝内胆管の拡張,肝内結石も指摘されていたが,経過 観察,繰り返す胆管炎については保存的に加療されていた.初回手術後 10 年目の CT 検査に て肥厚した胆管壁の不整を指摘されたため ( 図 2),同部位の精査が施行された.小腸内視鏡検 査にて,吻合部付近の生検を行い遺残胆管癌と診断.その後の加療目的に当科紹介となった. 外側区域胆管より経皮経肝胆道ドレナージ (PTBD) を施行し,胆道造影検査を施行した.胆道 造影検査および造影 CT 検査より胆管内での腫瘍の進展範囲について評価を行った。肝門部胆 管の腫瘍性病変は左肝管を中心に進展,左側では B2,3 分岐部まで明らかに進展が認められた が,右側でも前後分岐部付近まで進展していると考えられた(図 3).小腸内視鏡下に施行し た胆管の生検では,肝門部,前区域胆管より採取した標本のいずれも癌と診断されたが,後 区域の胆管は充満する結石のために生検を行うことができなかった.左優位の肝門部胆管癌 であり左葉切除は不可避であること,CT 画像上後区域胆管では壁肥厚が認められず癌の進展 は積極的には疑われないことから(図 4),左 3 区域切除を行うことで後区域の胆管断端を断 端陰性することができると判断した.経皮経肝門脈塞栓術(PTPE)により門脈左枝および前 区域枝の塞栓術を行ったのち手術を施行した.左 3 区域切除術を施行,後区域胆管は B6,B7 分岐部で切離 , 断端の術中迅速組織診で陰性と診断された.再建は前回の再建部を切除し再度 Roux-Y 法にて胆管空腸吻合を行った.術後は胆汁漏を併発したものの,保存的に軽快した. 東北大学大学院 消化器外科学分野 4.研 究 要 旨 3.所 属 2.研 究 者 名 有ありあけ きょうへい明恭平、大塚英郎、森川孝則、中川 圭、林 洋毅、坂田直昭、水間正道、 深瀬耕二、石田晶玄、益田邦洋、川口 桂、岡田 良、前田晋平、内藤 剛、 元井冬彦、海野倫明 胆管癌を伴う先天性胆道拡張症術後 10 年目に発症した肝門部胆管癌の 1 例 主題 III 同時性・異時性発癌
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33 【考察】 分流手術後の長期合併症として,遺残胆管癌があげられる.遺残胆管癌の発癌率は 0.7% 〜 5.4% と報告されており,残存胆管が分流手術前に長期間逆流した膵液に暴露され,胆管上皮にすで に癌化に関わる強い障害を受けていたと考えられる.また術後の吻合部狭窄による胆管炎や肝 内結石の発生といった,残存胆管に慢性的に刺激を加える因子が出現することで,発癌のリス クはより高くなるとされる.遺残胆管癌を発症した場合,その切除率は肝門部領域の遺残胆管 癌が 64.3%,肝内発生の胆管癌は 25% と決して高いものではなく,非切除症例を減らすため にもリスク症例に対しては,特に注意深いフォローが必要と考える. 遺残胆管癌は分流手術後平均 10.6 年(1 〜 26 年)と比較的長期間を経てから生じるとされる. このことから本疾患は術後経過観察を生涯すべきであるとされている.しかしながら無再発期 間が長期にわたった場合,フォロー目的の画像検査をどの程度の間隔で行うべきかについて, 現在明確な基準は設けられていない.当科では胆管炎や胆管狭窄などを来たしていない場合, 通常 5 年目以降の画像フォローは年 1 回程度としている.また経過中に肝内結石が指摘され るなど,発癌に対してハイリスクと考えられるような症例に対しては,結石に対しての治療を 積極的におこなうとともに,除去できない症例に対しては半年に 1 回程度の画像評価が妥当 であろうと考える. 本症例は先天性胆道拡張症に胆管癌を併発しており,胆管上皮の障害は進んでいた可能性が高 いと考える.胆道再建を行ったのちに吻合部狭窄から胆管炎を繰り返し,肝内結石も出現して いたことから,遺残胆管癌についてハイリスクな症例であった.初回手術から 5 年を経過し た頃から肝内結石を認めていたが,PTCD などの治療が困難であったこともあり結石除去術な どの結石に対する積極的な治療はなされていなかった.そのため,遺残胆管癌を考慮し,比較 的短い間隔での画像検査によるフォローがなされており,胆管壁の微細な変化をとらえること 可能であったと考える.精査にて胆管癌と診断され肝切除を行うこととなったが,胆管癌の進 展範囲は広く,左 3 区域切除での治癒切除が可能であったことから,診断が遅れることで非 切除となった可能性は十分にあったものと考える. 今後分流手術後の長期経過症例の増加に伴い,発癌症例が増えていくことが予想される.これ らの症例の早期診断のためにも,リスク症例を選別と早期対応が必要と考えられた.
1.演 題 2.研 究 者 名
症例は 67 歳の女性、7 年前の検診で胆嚢ポリープを指摘されたが、経過観察となった。2 年前の検診で再度、胆嚢ポリープを指摘され、近医で腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した。術後 病理診断は胆嚢癌であり、肝床部切除+リンパ節廓清を追加した。胆嚢癌の最終病理結果は pap, pT2p(ss), pN1 ,M0, stageIII, ly1, v0 であった。今回、再発フォロー目的の CT で、主膵管 の拡張を認めたため当院内科へ紹介受診となった。身長 147.5cm, 体重 54.2kg, BMI24.9, 既 往歴に糖尿病と慢性膵炎はない。喫煙歴や大量飲酒歴なし。血液検査 CEA1.3ng/ml, CA19-9 12.03U/ml。 【Dynamic CT】門脈中央から始まる体尾部の主膵管拡張を認めるが、膵臓に主膵管狭窄をきた す明らかな腫瘤性病変は認めない。主膵管狭窄から離れた位置の膵鉤部に IPMN を認める。 【ERCP】膵・胆管合流異常を認め、共通管の長さは 7.2mm である。主膵管に狭窄部を認める。 【EUS】膵頭部に 14mm 大の淡い低エコー領域を認め、内部を口径不整な主膵管が貫通する。 【膵液細胞診】Class V
以上より、術前診断は IPMN 併存膵癌 (Tis, N0, M0, cstage0) と考え、幽門輪温存膵頭十二指 腸切除術を施行した。
【術後病理結果】膵癌:invasive ductal carcinoma(tub1, intermediate type, INF γ , ly0, v0, ne0, mpd(+), Ph, pTS1, pT1, pN0, M0, stageI) であった。病変の大部分は in situ 病変 ( 進展範 囲 18mm) だが、小範囲(<3mm)で微小な間質浸潤を認めた。背景の膵組織には、PanIN-1b までの膵管上皮の異型を認めた。IPMN は intraductal papillary-mucinous adenoma, with mild atypia であった。 本症例につき、若干の文献的考察を加え報告する。 CT(主膵管狭窄部) ERCP(共通管) ERCP(主膵管狭窄部) 4.研 究 要 旨 3.所 属 山梨大学医学部 第一外科 細 ほそむら なおひろ 村直弘、藤井秀樹、川井田博充、渡邉光章、雨宮秀武、河野 寛、 松田政徳 胆嚢癌術後に膵癌を発生した非拡張型膵・胆管合流異常 主題 III 同時性・異時性発癌
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35 1.演 題 2.研 究 者 名 症例は 38 歳 , 女性 . 15 年前 , 繰り返す胆管炎を契機に , 前医で先天性胆道拡張症 (Ib) と診 断された . 前医で手術となったが , 胆管周囲の高度炎症のために胆管切除は断念され , 総胆管 と挙上空腸の側々吻合のみの手術を施行されていた . また 7 年前より総胆管結石 , 肝内結石を 認め , 内視鏡による治療が繰り返されていた . 3 ヶ月前より頻回に胆管炎を繰り返すようになったため , 当院を紹介受診された . 超音波内 視鏡検査で肝門部領域胆管に壁肥厚を認めたため , 生検を施行したところ腺癌の診断であった . 手術目的で当科紹介となった . 術前の Dynamic CT では , 肝門部領域胆管に腫瘍を認め , 右肝管は前後区が泣き別れとなっ ていた . 前回手術吻合部から前区域胆管に stent を留置し , B3 には経胃経肝的に EUS-BD を施 行し , stent を留置した . 右肝動脈は空腸脚の背側で腫瘍の浸潤を受けており , 門脈は左右分岐 部で浸潤が疑われた . B4 は左肝管との合流部で浸潤を受けており , B2, B3 の合流部は intact と考えられた . また下部胆管まで腫瘍進展が予想された . PET/CT では , SUV max: 4.54 で , 遠 隔転移を認めなかった . ICG-K: 0.173, ICGR15: 4.9 であった . 以上より , 拡大肝右葉切除術 + 門脈合併切除再建 (+ 膵頭十二指腸切除術 ) を予定した . 術中は高度炎症のために胆管周囲の操作に難渋した . 腫瘍進展による門脈左右分岐部への浸 潤を疑う所見を認めたため , 門脈の合併切除再建を行った . 膵上縁で総胆管を切離するも断端 に腺癌の進展を認めた . 拡大右葉切除を行い , 左肝管を切離して断端を迅速病理診断に提出し たところ腫瘍進展は認めなかったため , 膵頭十二指腸切除術を併施することで治癒切除可能と 判断し , 膵頭十二指腸切除術を追加して施行した . 最終病理診断では , 肝十二指腸間膜内の3つのリンパ節に腺癌の転移を認めたが , 断端はす べて陰性であり , 膵頭十二指腸切除術を伴う拡大肝右葉切除術 , 肝外胆管切除術 , 胆管空腸吻 合術によってR0切除となった . 術後経過はGrade B (ISGPF分類 ) の膵瘻と , 胃内容排 泄遅延を認めたが , いずれも保存的に改善し , 術後 30 日目に軽快退院となった . 術後45日目より術後補助化 学療法としてS-1内服を開始し , 現在も良好な経過と なっている . 繰り返す胆管炎による高度炎症によって , 胆管切除が 断念され , 残存していた胆管に若年で胆管癌の発生を認 めた症例を経験した . 今回は上記の拡大手術によって R0手術を施行し得たが , 追加手術のタイミングや , より 適切なフォローアップに関して示唆に富む症例と考え報告する . 4.研 究 要 旨 3.所 属 須 すとう ひろのぶ 藤広誠1)、岡野圭一1)、浅野栄介1)、岸野貴賢1)、山本尚樹1)、赤本伸太郎1)、 藤原理朗1)、臼杵尚志1)、下野隆一2)、鈴木康之1) 香川大学 消化器外科1)、香川大学 小児成育外科2) 先天性胆道拡張症術後に発生した胆管癌に対し膵頭十二指腸切除を伴う拡 大肝右葉切除術を施行した 1 例