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主題 III

同時性・異時性発癌

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【考察】

分流手術後の長期合併症として,遺残胆管癌があげられる.遺残胆管癌の発癌率は 0.7% 〜 5.4%

と報告されており,残存胆管が分流手術前に長期間逆流した膵液に暴露され,胆管上皮にすで に癌化に関わる強い障害を受けていたと考えられる.また術後の吻合部狭窄による胆管炎や肝 内結石の発生といった,残存胆管に慢性的に刺激を加える因子が出現することで,発癌のリス クはより高くなるとされる.遺残胆管癌を発症した場合,その切除率は肝門部領域の遺残胆管 癌が 64.3%,肝内発生の胆管癌は 25% と決して高いものではなく,非切除症例を減らすため にもリスク症例に対しては,特に注意深いフォローが必要と考える.

遺残胆管癌は分流手術後平均 10.6 年(1 〜 26 年)と比較的長期間を経てから生じるとされる.

このことから本疾患は術後経過観察を生涯すべきであるとされている.しかしながら無再発期 間が長期にわたった場合,フォロー目的の画像検査をどの程度の間隔で行うべきかについて,

現在明確な基準は設けられていない.当科では胆管炎や胆管狭窄などを来たしていない場合,

通常 5 年目以降の画像フォローは年 1 回程度としている.また経過中に肝内結石が指摘され るなど,発癌に対してハイリスクと考えられるような症例に対しては,結石に対しての治療を 積極的におこなうとともに,除去できない症例に対しては半年に 1 回程度の画像評価が妥当 であろうと考える.

本症例は先天性胆道拡張症に胆管癌を併発しており,胆管上皮の障害は進んでいた可能性が高 いと考える.胆道再建を行ったのちに吻合部狭窄から胆管炎を繰り返し,肝内結石も出現して いたことから,遺残胆管癌についてハイリスクな症例であった.初回手術から 5 年を経過し た頃から肝内結石を認めていたが,PTCD などの治療が困難であったこともあり結石除去術な どの結石に対する積極的な治療はなされていなかった.そのため,遺残胆管癌を考慮し,比較 的短い間隔での画像検査によるフォローがなされており,胆管壁の微細な変化をとらえること 可能であったと考える.精査にて胆管癌と診断され肝切除を行うこととなったが,胆管癌の進 展範囲は広く,左 3 区域切除での治癒切除が可能であったことから,診断が遅れることで非 切除となった可能性は十分にあったものと考える.

今後分流手術後の長期経過症例の増加に伴い,発癌症例が増えていくことが予想される.これ らの症例の早期診断のためにも,リスク症例を選別と早期対応が必要と考えられた.

1.演 2.研 究 者 名

症例は 67 歳の女性、7 年前の検診で胆嚢ポリープを指摘されたが、経過観察となった。2 年前の検診で再度、胆嚢ポリープを指摘され、近医で腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した。術後 病理診断は胆嚢癌であり、肝床部切除+リンパ節廓清を追加した。胆嚢癌の最終病理結果は pap, pT2p(ss), pN1 ,M0, stageIII, ly1, v0 であった。今回、再発フォロー目的の CT で、主膵管 の拡張を認めたため当院内科へ紹介受診となった。身長 147.5cm, 体重 54.2kg, BMI24.9, 既 往歴に糖尿病と慢性膵炎はない。喫煙歴や大量飲酒歴なし。血液検査 CEA1.3ng/ml, CA19-9 12.03U/ml。

【Dynamic CT】門脈中央から始まる体尾部の主膵管拡張を認めるが、膵臓に主膵管狭窄をきた す明らかな腫瘤性病変は認めない。主膵管狭窄から離れた位置の膵鉤部に IPMN を認める。

【ERCP】膵・胆管合流異常を認め、共通管の長さは 7.2mm である。主膵管に狭窄部を認める。

【EUS】膵頭部に 14mm 大の淡い低エコー領域を認め、内部を口径不整な主膵管が貫通する。

【膵液細胞診】Class V

以上より、術前診断は IPMN 併存膵癌 (Tis, N0, M0, cstage0) と考え、幽門輪温存膵頭十二指 腸切除術を施行した。

【術後病理結果】膵癌:invasive ductal carcinoma(tub1, intermediate type, INF γ , ly0, v0, ne0, mpd(+), Ph, pTS1, pT1, pN0, M0, stageI) であった。病変の大部分は in situ 病変 ( 進展範 囲 18mm) だが、小範囲(<3mm)で微小な間質浸潤を認めた。背景の膵組織には、PanIN-1b までの膵管上皮の異型を認めた。IPMN は intraductal papillary-mucinous adenoma, with mild atypia であった。

本症例につき、若干の文献的考察を加え報告する。

  CT(主膵管狭窄部)     ERCP(共通管)      ERCP(主膵管狭窄部)

4.研 究 要 旨

3.所 山梨大学医学部 第一外科 ほそむら なおひろ

村直弘、藤井秀樹、川井田博充、渡邉光章、雨宮秀武、河野 寛、

松田政徳

胆嚢癌術後に膵癌を発生した非拡張型膵・胆管合流異常 主題 III

同時性・異時性発癌

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35 1.演

2.研 究 者 名

 症例は 38 歳 , 女性 . 15 年前 , 繰り返す胆管炎を契機に , 前医で先天性胆道拡張症 (Ib) と診 断された . 前医で手術となったが , 胆管周囲の高度炎症のために胆管切除は断念され , 総胆管 と挙上空腸の側々吻合のみの手術を施行されていた . また 7 年前より総胆管結石 , 肝内結石を 認め , 内視鏡による治療が繰り返されていた .

 3 ヶ月前より頻回に胆管炎を繰り返すようになったため , 当院を紹介受診された . 超音波内 視鏡検査で肝門部領域胆管に壁肥厚を認めたため , 生検を施行したところ腺癌の診断であった . 手術目的で当科紹介となった .

 術前の Dynamic CT では , 肝門部領域胆管に腫瘍を認め , 右肝管は前後区が泣き別れとなっ ていた . 前回手術吻合部から前区域胆管に stent を留置し , B3 には経胃経肝的に EUS-BD を施 行し , stent を留置した . 右肝動脈は空腸脚の背側で腫瘍の浸潤を受けており , 門脈は左右分岐 部で浸潤が疑われた . B4 は左肝管との合流部で浸潤を受けており , B2, B3 の合流部は intact と考えられた . また下部胆管まで腫瘍進展が予想された . PET/CT では , SUV max: 4.54 で , 遠 隔転移を認めなかった . ICG-K: 0.173, ICGR15: 4.9 であった . 以上より , 拡大肝右葉切除術 + 門脈合併切除再建 (+ 膵頭十二指腸切除術 ) を予定した .

 術中は高度炎症のために胆管周囲の操作に難渋した . 腫瘍進展による門脈左右分岐部への浸 潤を疑う所見を認めたため , 門脈の合併切除再建を行った . 膵上縁で総胆管を切離するも断端 に腺癌の進展を認めた . 拡大右葉切除を行い , 左肝管を切離して断端を迅速病理診断に提出し たところ腫瘍進展は認めなかったため , 膵頭十二指腸切除術を併施することで治癒切除可能と 判断し , 膵頭十二指腸切除術を追加して施行した .

 最終病理診断では , 肝十二指腸間膜内の3つのリンパ節に腺癌の転移を認めたが , 断端はす べて陰性であり , 膵頭十二指腸切除術を伴う拡大肝右葉切除術 , 肝外胆管切除術 , 胆管空腸吻 合術によってR0切除となった .

 術後経過はGrade B (ISGPF分類 ) の膵瘻と , 胃内容排 泄遅延を認めたが , いずれも保存的に改善し , 術後 30 日目に軽快退院となった . 術後45日目より術後補助化 学療法としてS-1内服を開始し , 現在も良好な経過と なっている .

 繰り返す胆管炎による高度炎症によって , 胆管切除が 断念され , 残存していた胆管に若年で胆管癌の発生を認 めた症例を経験した . 今回は上記の拡大手術によって R0手術を施行し得たが , 追加手術のタイミングや , より

適切なフォローアップに関して示唆に富む症例と考え報告する . 4.研 究 要 旨

3.所

すとう ひろのぶ

藤広誠1)、岡野圭一1)、浅野栄介1)、岸野貴賢1)、山本尚樹1)、赤本伸太郎1) 藤原理朗1)、臼杵尚志1)、下野隆一2)、鈴木康之1)

香川大学  消化器外科1)、香川大学  小児成育外科2)

先天性胆道拡張症術後に発生した胆管癌に対し膵頭十二指腸切除を伴う拡 大肝右葉切除術を施行した 1 例

1.演 2.研 究 者 名

【目的】先天性胆道拡張症では,そのほとんどが膵胆管合流異常を伴い,膵液の胆道内逆流に より高率に胆道癌を合併する.そのため,胆嚢および拡張胆管の切除と胆道再建とによる分流 手術が標準治療となっている.近年,分流手術後の遺残胆管に発癌した症例の報告が散見され るが,分流手術後の異時性胆管癌発生率と長期予後を検討した報告は少ない.本研究の目的は,

胆道拡張症に対する分流手術の遠隔成績を解析し,分流手術後の異時性胆管癌発生率および長 期予後を明らかにすることである.

【方法】2006 年までに当施設で手術が行われた,先天性胆道拡張症に対する分流手術 94 症例

(16 歳未満 65 例,16 歳以上 29 例)を対象とし,診療録および電話聞き取りによる予後の 調査を行った.また,和文英文での分流手術後の異時性胆管癌既報告 57 例とあわせ,その治 療成績を検討した.当施設での分流手術後経過観察期間中央値は 196 か月であった.

【成績】当施設において,分流手術後に発症した異時性胆管癌を 4 例(4.3%)に認めた.胆管 癌発症年齢の中央値は 41 歳(27 〜 65 歳)であり,分流手術後から胆管癌発症までの期間中 央値は 234 か月(145 〜 384 か月)であった.胆管癌の発生部位は,膵内胆管 1 例,肝門部 胆管 1 例,肝内胆管 2 例であった.分流手術後の累積胆管癌発生率は術後 15 年,20 年,25 年でそれぞれ 1.6%,3.5%,8.9% であった.分流手術後に発症した胆管癌 4 例中,3 例に根 治手術を施行したがそれぞれ術後 9 か月,15 か月,35 か月に再発死した.残り 1 例(肝内 胆管癌)は放射線化学療法,PEIT を行ったのち,化学療法を継続し,肝内胆管癌の治療を開 始してから 43 か月経過した時点

で,担癌状態で生存中であった.

当施設で分流手術後に発症した胆 管癌 4 例の生存期間中央値は 15 か月であり,2 年,3 年累積生存 率 は 各 々 50%,25% で あ っ た.

分流手術後の異時性胆管癌既報告 例において,積極的治療を行った 32 例の生存期間中央値は同様に 15 か月であった.

【結論】先天性胆道拡張症に対す る分流手術後の異時性胆管癌発生 は若年発症であり,分流手術後 15 年余の長期経過を経て発生す 4.研 究 要 旨

新潟大学大学院 消化器・一般外科1)、 同 小児外科2) 3.所

おおはし

橋 拓たく1)、廣瀬雄己1)、滝沢一泰1)、坂田 純1)、小林 隆1)、若井俊文1) 荒井勇樹2)、窪田正幸2)

先天性胆道拡張症に対する分流手術後の異時性胆管癌発生率と長期予後 主題 III

同時性・異時性発癌

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