審 査 論 文 要 旨(日本文)
論文提出者氏名: 伊藤 傑 審査論文
題 名:Low-Dose Glucocorticoid Therapy Complements the Pituitary-Adrenocortical System and Reduced Anxiety and Insomnia in Myasthenia Gravis Patients (重症筋無力症のプレドニゾロン治療における下垂体副腎機能への影響と精神的
QOLとの関連)
著 者:Suguru Ito, Masayuki Masuda, Sachiko Tanaka, Miwa Takagi, Chinami Tanaka, Nao Yamada, Kanako Nakajima, Takao Akashi, Toshihiko Hirano, Hiroya Utsumi
掲載誌:Clinical Neuropharmacology 35: 30-36 (2012)
【目的】重症筋無力症(MG)は骨格筋のアセチルコリン受容体を標的とする自己抗体によっ て引き起こされる自己免疫性疾患である.MG患者は肉体的または精神的なストレスや長期 的な糖質コルチコイド治療の影響によって,下垂体副腎機能に影響を及ぼすと考えられる.
本研究では,prednisolone(PSL)で治療されたMG患者の下垂体副腎機能を調べ,それら の精神的QOLへの影響を評価する.
【方法】対象は47 名.PSL 未投与群(PSL(-) 群;n=29)と,0.5〜20mg/日のPSL で治療 した群(PSL(+) 群;n=18)で検討した.QOL の評価には,the 28-item general health questionnaire(GHQ-28)を用いた.下垂体副腎機能の評価には,朝9時から11 時までの 血漿ACTH濃度および血漿コルチゾール濃度を測定した.
【結果】PSL(+) 群と PSL(-) 群では,罹病期間や Quantitative MG Score for Disease Severity(QMG score)などに有意差はなかった.血漿ACTH濃度および血漿コルチゾール 濃度は,PSL(+) 群のほうがPSL(-) 群と比べ低値であった.PSL(+) 群では,PSL投与量と 血漿コルチゾール濃度で負の相関(P = 0.03)を認めた.また,PSL(+) 群のGHQ-28にお ける不安と不眠のスコアは,PSL(-) 群と比べ有意に低値であった(P = 0.038).PSL(-) 群 では,血漿ACTH濃度と血漿コルチゾール濃度に関連性はみられなかった.一方,PSL(+) 群 の血漿ACTH濃度は,血漿コルチゾール濃度との間に有意な正の相関(P = 0.004)があり,
さらにGHQ-28における不安と不眠のスコアとの間にも有意な負の相関(P = 0.023)を認 めた.
【考察】MG患者において,低用量PSL治療は下垂体副腎機能を正常化し,不安と不眠とい った精神症状を改善させると考えた.
東 京 医 科 大 学