学 位 論 文 審 査 要 旨 公開審査日 2014 年 6 月 25 日(水)
報告番号: 乙 第 2075 号 氏名: 伊藤 傑
論文審査
担当者 主査 教授 小田原 雅人 印
副査 教授 林 由起子 印
副査 教授 菅野 義彦 印
審査論文の題目:Low-Dose Glucocorticoid Therapy Complements the Pituitary-Adrenocortical System and Reduced Anxiety and Insomnia in Myasthenia Gravis Patients. (重症筋無力症のプレドニゾロン治療 における下垂体副腎機能への影響と精神的QOLとの関連)
著 者: Suguru Ito, Masayuki Masuda, Sachiko Tanaka, Miwa Takagi, Chinami Tanaka, Nao Yamada, Kanako Nakajima, Takao Akashi, Toshihiko Hirano, Hiroya Utsumi
掲載誌: Clinical Neuropharmacology 35: 30-36 (2012)
論文要旨:重症筋無力症(MG)患者の下垂体副腎機能は肉体的、精神的ストレスやステロイド治療によっ て影響される。47 名の PSL 未投与群(PSL(-) 群;n=29)と、0.5〜20mg/日の PSL で治療した群(PSL(+) 群;n=18)で下垂体副腎機能と、精神的 QOL への影響を評価した.評価には、the 28-item general health questionnaire(GHQ-28)を用い、下垂体副腎機能は、午前 9 時から 11 時の血漿 ACTH 濃度および血 漿コルチゾール濃度で評価した。罹病期間、Quantitative MG Score for Disease Severity(QMG score)
は両群で有意差はなかった.ACTH、コルチゾール濃度は,PSL(+) 群のほうが低値であり、PSL 投与量と 血漿コルチゾール濃度に負の相関(P = 0.03)を認めた.PSL(+) 群の GHQ-28 における不安と不眠のス コアは,PSL(-) 群と比べ有意に低値であった(P = 0.038)。PSL(-) 群では,血漿 ACTH 濃度と血漿コ ルチゾール濃度に関連性はみられなかった.一方,PSL(+) 群の血漿 ACTH 濃度は,血漿コルチゾール濃 度との間に有意な正の相関(P = 0.004)があり、GHQ-28 での不安と不眠のスコアとの間にも有意な負 の相関(P = 0.023)を認めた。MG 患者に低用量 PSL 治療は下垂体副腎機能を正常化し,不安、不眠を 改善させると考えられた。
1. 審査過程:MGの病態、本研究の目的、治療法、対象患者背景、方法、結果、考察について適切な説明が 行われ、血中ACTH, cortisolの測定時間ならびに臨床重症度の判定時間について適切な回答が得られた。
2. 低用量プレドニゾロン療法による ACTH-コルチゾール系への影響と血中コルチゾール値との関連につい て、また低用量服用患者で、より不安、不眠の程度が軽かった理由について、適切な回答が得られた。
3. 重症筋無力症患者のうち、ステロイド大量療法中、あるいはステロイド離脱経過良好群について、また他 のステロイド長期服用中の神経筋疾患患者の心理テストに関する質問に適切な回答が得られた。
4. MG症例の重症度の背景の違いによるデータへの影響についての質問に対して適切な回答が得られた。
5. QMG score, GHQ-28スコアと男女差、罹病期間との関連についての質問に適切に答えることができた。
6. PSL+/- 例の併合解析の可能性についての質問にも適切に回答できた。
価値判定:本研究は、増加傾向にある重症筋無力症患者に対して、プレドニゾロン療法を行うことによ って精神症状を含めた患者 QOL がどのような影響を受けるかについて示唆に富む知見を明らかにして おり、臨床的に有意義な研究であり、学位論文としての価値を認める。