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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 環 境 科 学 ) 堤    正 純

     学 位論 文 題名

Community structure and activity of aerobic methane oxidizing bacteria in forest soils and freshwater lakes

(森林土壌および淡水湖沼における好気性メタン酸化細菌の群集構造と活性)

学位論文内容の要旨

  好 気 性メ タン酸化細菌(MOB)は、メタンを酸素で酸 化し、炭素源およびエネルギー源 として利用できる細菌であり、メタンと酸素の両方を利用できる様々な環境に生息してい る。その性質により、MOBは地球の炭素循環において重要な役割を果たしていると考えら れている。その役割のーっは、重要な温室効果ガスであるメタンの消費である。大気中の メタン濃度は、大気への放出と消費のバランスにより決まる。メタンは、湿地や湖沼の底 泥などの嫌気的な環境においてメタン生成菌により生成される。この生成されたメタンの 大半は、大気へ放出される前に 好気的な環境においてMOBにより消費される。大気へ放出 されたメタンは、成層圏において化学反応により分解されるが、森林や草原のような十分 に好 気 的な 土壌 に生 息す るMOBに よ って も消費される。また、MOBを起点とした食物網 も存在する。例えば湿原や湖沼 においては、メタンを構成する炭素からMOBによって合成 された有機物が、従属栄養生物の炭素源として重要な位置を占めるという例が報告されて いる。これらのことから、MOBの活性とその決定要因を知ることは、メタン動態、ひいて は地球上の炭素循環の包括的な 理解のために重要である。MOBの存在量はその場のメタン 酸化活性に反映され、その生理学的特性は系統により異なる。したがって、環境中におけ るMOBの存 在量 と群 集構 成(MOB群 集 構造 )や その 決定 要因 を知 るこ とは、メタン酸化 活性の決定要因を知るために重 要である。また、MOB群集を構成する系統から、その環境 に対する応答についての知見も得ることができると期待される。これまで、様々な環境に おけるMOB群集構造が調べられてきたが、これらの多くは、綱レベルか属レベルでの解析 が主であった。しかし、細菌の多くは、種以下のレベルでもその生理学的特性は異なる。

したがって、本論文では、環境 中のMOB群集構造を種レベル以下の解像度で解析すること により、各種環境要因への応答 について調査した。調査地は、そこに生息するMOBがメタ ン動態や地球上の炭素循環へ大きな影響を与えている、森林土壌および淡水湖沼である。

MOB群 集構 造は 、16S rRNA遺伝子や、主要なメタン酸 化酵素である粒子性メタン一酸化 酵 素 の の サ ブユ ニッ トを コー ドす るpm04遺 伝 子を 対象 とし た手 法に より 解析 した 。   第2章では、大気メタンの吸収源である森林土壌において調査を行った。森林生態系は、

林床 に植生が繁茂しており、その分布や密度は空間的に非常に不均一である。本章では、

北海 道の森林林床で幅広く繁茂しているササに注目した。林床にクマイザサが繁茂した針 広混 交林およぴミズナラ林、チシマザサが繁茂したダケカンバ林およぴチシマザサを除去 した ダケカンバ林の4つの調査地 を選択した。これらの調査地において、土壌の大気メタ ン吸 収速度および土壌中のMOB群 集構成を解析した。メタン吸収速度はクローズドチャン バ ー 法 に よ り 、MOB群 集 構 成 はpm04遺 伝 子を 対 象に したPCR,DGGE法 (PCR.変 性剤 濃度 勾配ゲル電気泳動法)により解析した。その結果、ササ除去区において、ササが繁茂 して いる調査地より2倍程度高い大気メタン吸収活性が見られた。また、MOB群集構成は、

林床 植生が共通している混交林とミズナラ林では同様であったが、他の調査地間では異な って いた。ここで検出されたp皿 甜遺伝子はいずれも、陸上土壌における大気メタン消費 を主 に担っていると考えられている属レベルの系統(USCa) に属していた。メタン吸収

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活性お よびMOB群集構 成の調査 地間の違 いと、 土壌の温 度、含水率、pHおよぴ灼熱減量 の間で 関連性は見られなかった。以上の結果から、ササにより土壌中のMOB活性が抑制さ れてい る可能性が示唆された。また、MOB群集構成は、林冠植生ではなくササの種類の影 響を強 く受けて 決定づ けられて いること が示唆 された。

  第3章では 、部分循環湖である淡水ダム湖において調査を行った。一般に部分循環湖の 深層は年間を通じて嫌気的であり、全層が淡水の場合には深層の湖水中にはメタンが蓄積 され ている。 この深層 部のメ タンの大 部分は、大気へ放出される前に好気的な湖水中の MOBに よ り消費さ れる。本 章では 、様々な 季節に おいて、 各水深 におけるMOBの優 占度 お よび 群 集 構 成を 解 析 した 。MOBの 優 占度 は 、 定量PCR法 に よ り決定し たpm04遺伝 子 と 全 バ ク テ リ ア の16SrRNA遺 伝 子 の コ ピ ー 数 の 比 率 と し て 求 め た 。MOBの16SrRNA 遺 伝子 を 対象とし たPCR.DGGE法によ りMOB群集構成 の鉛直プ ロファ イルを調 べ、代 表 的な 深度にお いてp皿D4遺伝子対象のクローニング法を用いてその構成をより詳細に解析 した 。その結 果、MOBは、酸素とメタンが同時に多く供給されている好気ー嫌気境界層付 近で最も優占していた。この水深付近では、メタンの炭素安定同位体比船よびメタン濃度 から、活発なメタン酸化が起きていると推測された。また、好気層におけるメタン極大層 に おい て もMOB優 占 度の ピ ー クが 見 られた。DGGE法およ びクロ ーニング 法により 得ら れた 配列の大 半は脇め ゆぬcたlr属で あった が、その 構成は 深度により異なっていた。

DGGEバン ドパター ンは、 温度や酸 素濃度 の変動に伴って垂直的に変化していた。以上の 結果 から、湖 水中のMOBの活性および存在量は、酸素とメタンの両方により決定づけられ てい ることが 示唆された。また、MOB群集構成は、温度や酸素濃度によって決定づけられ ていることが示された。

  第4章では、 水面から底泥表面まで好気的な淡水湖沼の底泥において調査を行った。こ の湖の 水深の異 なる2地点において、底泥の好気的な表層から嫌気的な深層にかけて、潜 在的な 好気的メ タン酸化 活性、pm04遺伝子 のコピー 数およびMOB群 集構成を解析した。

メタン酸化活性は、十分に好気的な条件下でのメタン消費速度とした。p皿D4遺伝子コピー 数 は 、 定 量PCR法 に よ り決 定 し た 。群 集 構 成は 、MOBの16SrRNA遺 伝 子を 対 象 と した PCR‐DGGE法により解析した。その結果、いずれの地点においても潜在的なメタン酸化活 性は深くなるにっれて減少していた。一方で、p閲D4遺伝子コピー数は、好気的な表層より も嫌気 的な深層 の方が多かった。MOB群集は脇吐皿 ぬcぬr属により構成されており、地 点間およぴ深度間で優占する系統に違いは見られなかったが、一部の系統の相対量に違い が見ら れた。こ れらの結果から、嫌気的な底泥深層に存在するMOBの遺伝子は、その場で メタン を酸化し ているMOB群集ではなく、過去に好気的な表層において増殖し嫌気的な深 層に 埋 没 したMOB群集に 由来す ると考え られた。 一つの 属により 構成さ れたMOB群集構 成の違いは、地点間や過去の環境要因の違いによってもたらされていることが推測された。

  本 論文で 、環境中のMOB群集の活性や構造は、様々な環境要因により決定づけられてい る ことが 示された 。そして、MOBの自然環境中における生理生態学的特性は、種以下のレ ベ ルで異 なること が示唆された。本論文は、MOB群集構造を調べる際に綱や属よりも低い レ ベルで 解析する ことの重要性を示している。本論文で示されたMOB群集と環境要因との 関 連性は 、他の調 査地でのMOB群集を調査する上で有用な情報となるだろう。今後、森林 土 壌や淡 水湖沼だ けではな く様々 な生態系 のMOB群集構造 をより で細かな系統で調べる こ とで、MOB群集 の環境への応答についての新たな知見を得ることができるだろう。この こ と は 、 地 球 上 の 炭 素 循 環 に つ い て の 理 解を 深 め るこ と に 繋が る と 期待 さ れ る。

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学位論文審査の要旨

    学 位 論 文 題 名

Community structure and activity of aerobic methane oxidizing bacteria in forest soils and freshwater lakes

( 森 林 土 壌 お よ び 淡 水 湖 沼 に お け る 好 気 性 メ タ ン 酸 化 細 菌 の 群 集 構 造 と 活 性 )

  好気J陸メ タン 酸化 細菌(MOB)は、 メタンを 酸素で酸化し、炭素源およびェネルギー源とし て 利用 でき る細 菌で あ り、 メタ ンと 酸素の両 方を利用できる様々な環境に生息している。そ の 性質 によ り、MOBは地球の炭素循環において 重要な役割を果たしていると考えられている。

その役割の ーっは、重要な温室効果ガスであるメタンの消費である 。大気中のメタン濃度は、

大気への放 出と消費のバランスにより決ま,る。メタンは、湿地や 湖沼の底泥などの嫌気的な 環 境に おい てメ タン 生 成菌 によ り生 成される 。この生成されたメタンの大半は、大気へ放出 さ れる 前に 好気 的な 環 境に おい てMOBに より消費される。これらのことか ら、MOBの活性とそ の 決定 要因 を知 るこ と は、 メタ ン動 態、ひい ては地球上の炭素循環の包括的な理解のために 重 要で ある 。MOBの存在量はその場のヌタン酸 化活性に反映され、その生理学的特性は系統に よ り異 なる 。し たが っ て、 環境 中に おけ るMOBの 存 在量 と群 集構 成(MOB群集構造)やその決 定 要因 を知 ること は、メタン酸化活性の決定要因を知るために重要である 。また、MOB群集を 構成する系 統から、その環境に対する応答につしゝての知見も得ることができると期待される。

こ れま で、 様々な 環境におけるMOB群集構造が 調べられてきたが、これらの多くは、綱レベル か 属レ ベル での 解析 が 主で あっ た。 しかし、 細菌の多くは、種以下のレベルでもその生理学 的 特性 は異 なる。 したがって、本論文では、環境中のMOB群集構造を種レベル以下の解像度で 解 析す るこ とによ り、各種環境要因への応答について調査した。調査地は 、そこに生息するM OBがヌ タン 動態 や地 球 上の 炭素 循環 ヘ大きな 影響を与えている、森林土壌および淡水湖沼で ある。MOB群集構造は、16S rRNA遺伝子 や、主要なメタン酸化酵素である粒子l'ftメタン一酸化 酵 素 のaサ プ ュ ニ ッ ト を コ ー ド す るpmoA遺 伝 子 を 対 象 と し た 手 法 に よ り 解 析 し た 。   第2章 では 、大 気ヌ タン の吸 収源 であ る森 林土 壌 にお いて 調査 を行った。本章では、北海 道の森林林 床で幅広く繁茂してしゝるササに注目した。ササ除去区におしゝて、ササが繁茂して い る調 査地 より2倍程 度高 い大 気ヌ タン 吸収活性が見られた。また、MOB群集構成は、林床植     ―1165一

学 章

裕 弥

   

   

正 康

井 川

原 島

授 授

授 教

   

   

教 教

准 助

査 査

査 査

主 副

副 副

(4)

生が共通している混交林とミズナラ林では同様であったが、他の調査地間では異なっていた。

以上の結果から、ササにより土壌中のMOB活性が抑制されている可能性が示唆された。また、

MOB群集構成は、林冠植生ではなくササの種類の影響を強く受けて決定づけられていることが 示唆された。

  第3章では、部分循環湖である淡水ダム湖におしゝて調査を行った。一般に部分循環湖の深 層は年間を通じて嫌気的であり、全層が淡水の場合には深層の湖水中にはヌタンが蓄積され ている。本章では、様々な季節において、各水深におけるMOBの優占度および群集構成を解析 した。その結果、MOBは、酸素とヌタンが同時に多く供給されている好気一嫌気境界層付近で 最も優占してしゝた。この水深付近では、メタンの炭素安定同位体比およびヌタン濃度から、

活発なメタン酸化が起きていると推測された。DGGE法およびク口ーニング法により得られた 配列の大半は脆thyloぬピ′刮禹であったが、構成バターンは、温度や酸素濃度の変動に伴って 垂直的に変化してしゝた。以上の結果から、湖水中のMOBの活性およぴ存在量は、酸素とヌタン の両方により決定づけられていることが示唆された。また、MOB群集構成は、温度や酸素濃度 によって決定づけられていることが示された。

  第4章では、水面から底泥表面まで好気的な淡水湖沼の底泥において調査を行ったところ、

嫌気的な底泥深層に存在するMOBの遺伝子は、その場でメタンを酸化しているMOB群集ではな く、過去に好気的な表層において増殖し嫌気的な深層に埋没したMOB群集に由来すると考えら れた。一つの属により構成されたMOB群集構成の違いは、地点聞や過去の環境要因の違いによ ってもたらされていることが推測された。

  本論文で、環境中のMOB群集の活性や構造は、様々な環境要因により決定づけられているこ とが示された。そして、MOBの自然環境中における生理生態学的特性は、種以下のレベルで異 なることが示唆された。本論文は、MOB群集構造を調べる際に綱や属よりも低いレベルで解析 することの重要性を示している。本論文で示されたMOB群集と環境要因との関連性は、他の調 査地でのMOB群集を調査する上で有用な情報となるだろう。今後、森林土壌や淡水湖沼だけで はなく様々な生態系のMOB群集構造をよりで細かな系統で調べることで、MOB群集の環境への 応答についての新たな知見を得ることができるだろう。このことは、地球上の炭素循環につ いての理解を深めることに繋がると期待される。

  審査委員一同は,これらの成果を高く評価し,また研究者として誠実かつ熱心であり,大 学院博士課程における研鑽や修得単位などもあわせ,申請者が博士(環境科学)の学位を受 けるのに充分な資格を有するものと判定した。

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参照

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