• 検索結果がありません。

学位論文内容の要旨

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "学位論文内容の要旨"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博 士 ( 歯 学 ) 崔   成   基

    学位論文題名

Single treatment with cisplatinum or UFT,but not their combination treatment enhances metastatic capacity of mouse fibrosarcoma cells   (マウス線維肉腫細胞の肺転移能獲得に及ぼす抗癌剤UFTとCDDPの影響)

学位論文内容の要旨

【背景】

化学療法は癌治療において有カな手段であるが、治療後の抗癌剤耐性癌細胞の 出現や悪性化進展(tumorprogre ssion)した癌細胞の増加などの危惧が指摘さ れている。悪性化進展とは癌細胞がその増殖の過程で高い増殖能や強い浸潤、

転移能などの悪性形質を獲得することである。このような悪性形質を獲得した 癌細胞は選択され、そのポピュレーションが増加してくるために、この悪性化 進展は、癌の診断や治療方法が発達した現在でも、癌の治療をより困難にして いると考えられる。この悪性化進展は遺伝子の変異を伴っており、炎症性サイ トカインや活性酸素により促進されることが明らかになっている。また、遺伝 子毒性を示す抗癌剤や放射線によっても促進される恐れがある。しかし、この ような癌細胞の悪性化進展の要因あるいは抑制の研究は少ない。それは、癌細 胞の悪性化進展を検討する実験系の開発が遅れているためと思われる。Okada ら、Hamadaらはそれぞれマウス、ラットの退縮型癌細胞を用いて、癌組織局 所に随伴する急性、慢性炎症による癌細胞の悪性化進展を検討する実験系を樹 立した。これらの実験系は癌化学療法による癌細胞の悪性化進展の研究にも用 いうると考えられる。

【目的】

本研究では、化学療法後の悪性化進展のヌカーニズムの解明を目的とし、化学 療法後の腫瘍細胞の悪性化進展のin vivo実験モデルの樹立を試み、癌細胞の悪 性 化 、 特 に 転 移 能 獲 得 に 及 ぼ す 抗 癌 剤 の 影 響 に つ い て 検 索 し た 。

【実験方法】

1)実 験 にはC57BL/6マ ウ ス由 来のMCA誘 発可移植性 線維肉腫(BMT―11)の ク口ーン培養細胞を変異原物質ケルセチンで処理した後得られた退縮型ク口ー ンQR―32SK細胞を用いた。QR―32SK細胞は同系マウスに大量(lxl06個以上)

移植すると致死的に増殖するが、通常の細胞数(2xl05個以下)の皮下移植では生 着せず、また、転移能も弱く、lx10b個を静脈内接種しても肺に転移結節を形成 しない生物学的性格を持っている。

(2)

2) 大 量 のQR―32SK細 胞(lx107個 ) を 同系 マ ウ ス に 皮 下 移植 し、 腫瘤 形成 後 化学療法を施行した。

3)癌化学療法として、第一群ではcis―diammine−dichloroplatinum(II) (CDDP;

4 mg/kg/clay)を 癌 細 胞 移 植 後11日 目 から15日 目 ま で 一 日お きに 三回 、マ ウ ス の 腹 腔 内 に 投 与 し た 。 ま た 、 第 二 群 で はLTFT(20mg/kg/day)を 癌 細 胞 移 植 後5日 目 か ら21日 目 ま で 毎 日 経 口 投 与 し た 。 第 三 群 で はCDDPとUFTの 両者併用治療を施行した。

4)21日 目 後 に 、 増 殖 し た 腫 瘍 か ら、 非 治 療 群 ,CDDP単 独 治 療 群 ,UFT単 独 治 療 群 お よ びCDDP/UFT併 用 治 療 群 の 腫 瘍 か ら 樹 立 し た 培 養 細 胞株 を そ れ ぞ れ QRL,QRL/CDDP, QRL/LTFTお よ びQRL/CDDP/LTFTと 呼 称 し た 。 5)悪 性化 進展 は、 樹立 され た培 養癌 細胞 (lxl06個 )を それ ぞれ5匹の 同系マ ウ ス に 尾 静脈 内 接 種 し 、 それ ぞれ 肺転 移形 成能 を親Q R‑32SK細胞 のそ れと 比 較し判定した。

6)lXl06個の 樹立 培養細 胞を 無血 清培 地に て24時間 培養 し、cell lysateと培 養上 清中 のcollagenase活性 をそ れぞ れgelatinを基質としたザイモグラフイー で検索した。

7) RTー PCR法 に よ っ て 樹 立 培 養 細 胞 の tissueinhibit orsof metalloproteinaseー1(TIMP一1)の発現を検索した。

8) ′Franswell Chamberを 用 い て 樹 立 培 養 細 胞 のfibrone ctinに 対 す る chemotactic assayを行った。

9)Transwell ChamberにMat rigelを 敷い て 培 養 細 胞 のfibrone ctinに対 す るinvasion assayを行った。

10) 樹 立 し た 培 養 細 胞 のCDDPあ る い は5―FU感 受 性 をcolony形 成 法 で 検 討し、IC50値で表現した。

【実験結果】

1) 再 樹 立 培 養 癌 細 胞 はQRL9株 ,QRL/CDDP10株 ,QRL/LTFT8株 お よ び QRL/CDDP/UFT9株であった。

2) 転 移 結 節 形 成 はQRL細 胞 接 種 マ ウ ス で は45匹 の 中12匹(27% ) に 観 察 さ れ た の に 対 し 、QRL/CDDP細 胞 で は50匹 の 中32匹(64% ) ,QRL  /U FT細 胞 で は40匹 の 中25匹(65% ) でQRL細 胞 に 比 べ 、 有 意 に 高 率 で あ っ た (pく 0.001) 。 一 方 、QRL/CDDP/UFT細 胞 で は45匹 の 中5匹 (11% ) に し か 転 移結節形成が観察されなかった。

3) 転 移 能 を 獲 得 し た 細 胞 株 で は92kDaの タ イ ブrvコ ラ ゲ ナ ー ゼ(MMP―9) 活 性 が 親QR−32SK細 胞 の それ に比 ベ、 有意 に増 強さ れて いる 傾向 であ った が

、72kDaの タ イ プIVコ ラ ゲ ナ ー ゼ(MMP−2) 活 性 お よ びMMP−9のnatural inhibitorで あ るTIMP−1のmRNA発 現 は 転 移 能 の 獲 得 と は 相 関 しな か っ た 。 4) 転 移 能 を 獲 得 し た 細 胞 株 で は 加vitroに お け る 運 動 能 を 示 す fibrone ctin (FN)に対するchemotactic activityが亢進している傾向にあった。

‑ 519 ‑

(3)

しかし、MatrigelTranswell Chamberを用いた浸潤能は全体に弱く一定の傾向 を示さなかった。

5)転移能 を獲得しな い癌細胞株 ではMMP―9の産生 能およびche motactic activityの両者ともに低かった。

6)各細胞株の転移能と薬感受性を示すIC50値との間には有意な相関関係が認 められなかった。

【考察】

本研究の成果は非転移性QR−32SK細胞が同系マウス皮下で増殖する過程で弱 いなが ら転移能を獲得するが、CDDPあるいはUFT単独による化学療法はその 転移能 獲得をさらに促進することを示している。一方、CDDPとUFTと併用化 学療法は、むしろその転移能獲得を抑制する傾向にあった。また、これら加vivo の転移能獲得はin vitroの92kDaのタイプIVコラゲナーゼ(MMP―9)産生能あ るいはfibronectin(FN)に対するchemotactic activitvの亢進とよく相関した。

すなわちMMP―9産生能とchemotactic activityの両者がともに弱い細胞株は 加vivo転移能を示さなかった。これらの成績は癌細胞の生物学的性格が化学療 法により恒常的に変化することにより転移能が亢進した可能性を示している。

これら癌細胞の生物学的性格が抗癌剤により恒常的に変化する機構の解析は今 後の研究によらなければならない。化学療法による転移能の亢進が薬剤耐性と 関連するとの報告もあるが、本研究ではそれぞれの株化癌細胞の薬剤耐性と転 移能亢進とは相関しなかった。一方、癌化学療法を施行された担癌動物で転移 が促進されるという報告は多いが、そのような実験系では癌細胞の悪性化進展 とともに免疫能や血管内皮など転移形成に関与する宿主要因に対する抗癌剤投 与の影響が関与すると考えられる。本研究の特徴は、転移能亢進、すなわち悪 性化進展の判定を抗癌剤の投与されてない正常マウスで検討していることにあ る。すなわち、抗癌剤の宿主への影響がないため、癌細胞の生物学的性格の変 化(癌細胞の悪性化進展)のみを判定しうる。今後、癌細胞の転移能を制御す る各種遺伝子発現を解析することにより、癌化学療法による癌細胞の悪性化進 展の機序が明らかになることが期待される。この機序に関連して、悪性化進展 をそ れぞれ単独 では促進さ せたCDDPとUFTが、併用す るとむしろ 抑制傾向 を示したことが注目される。

【結語】

生体 内に増殖す るマウス線 維肉腫に抗 癌剤CDDPおよびUFTを単独 投与する とその転移能が亢進した。しかし、両抗癌剤を併用投与すると転移能の獲得は 起きなかった。これらin丶rivo転移能獲得と細胞外マトリックスに対する癌細胞 のchemotaxisおよ びMMP―9の産生 能など転移 能に関係す るinvitroの性 格 の亢進が相関し、この実験系が抗癌剤による癌細胞の転移能獲得機序の解明に 有用なモデルであることが示唆された。

(4)

学位論文審査の要旨 主査    教授    戸塚靖則 副査    教授    向後隆男 副査    教授    福田    博 副査   教授   細川真澄男

    学 位論 文 題 名

Single treatment with cisplatinum or UFT,but not their combination treatment enhances metastatic capacity of mouse fibrosarcoma cells   (マ ウス 線維 肉腫 細胞 の肺 転移 能獲 得に及 ぼす 抗癌 剤UFTとCDDPの影響 )

  審査は 、提 出論 文と それ に関 連し た学 科目について、申請者に対して各審査員 が 個 別 に 口 頭 試 問 に より 行い 、各 審査 員の 報告 を下 に主 査が その 結果を まと め た。審査論文の概要は以下の通りである。

  癌細胞 の悪 性化 進展 は遺 伝子 の変 異を 伴うもので、炎症性サイトカインや活性 酸 素によ り促 進さ れる こと が明 らか にさ れている。本研究は、化学療法後の悪性 化 進展の メカ ニズ ムを 解明 する 目的 で、 化学療法後の腫瘍細胞の悪性化進展のjn Vj VO実 験モ デルの樹立し、癌細胞の悪性化、特に転移能獲得に及ぼす抗癌剤の影 響について検索したものである。

  C57BL/6マ ウ ス 由 来 のMCA誘 発可 移植 性線 維肉 腫(BMT‑11)の クロ ーン培 養細 胞 を 変 異 原 物 質 ケ ル セ チン で処 理し た後 に得 られ た退 縮型 クロ ーンQR‑32SK細 胞1 x107個 を 同 系 マ ウ ス に皮 下移 植し た後 、化 学療 法を 施行 した 。化 学療法 剤と し て、第一群ではcis‑diammine‑dichloroplatinum(II)(CDDP;4mg/kg/day)を癌細胞移植 後11日 目 か ら15日 目 ま で 隔 日 に3回 、 腹 腔 内 投 与 し 、第 二群 ではUFT(20mg/kg/

day)を癌 細胞 移植 後5日目 から21日目 まで 連日 、経 口投 与し 、第 三群 ではCDDPと UFTの両者を併用投与した。

21日 目 後 に 、 増 殖 し た腫 瘍か ら培 養細 胞株 を樹 立し た。 樹立 され た培養 癌細 胞 は 、 非 治 療 群 で は9株(QRL)、CDDP治 療 群 で は10株(QRL/CDDP)、UFT単独 治療 群 で は8株(QRL/UFT)、 ま たCDDP/UFT併 用 治 療 群 で は9株(QRL/CDDP/UFT)で あ っ た。

  ま ず 悪 性 化 進 展 の 有無 をみ るた め、 樹立 され た培 養癌 細胞lxl06個を 各々5匹 の 同系マ ウス に尾 静脈 内接 種し 、そ れぞ れの 肺転 移形 成能 を親株QR‑32SK細胞の そ れと比 較し た。 転移 結節 の形 成は 、QRL細胞接種マウスでは45匹中12匹(27%)

に 観 察 さ れ た の に 対 し、QRL/CDDP細胞 では50匹 中32匹(64%) 、QRL/UFT細胞 で は40匹中25匹(65%)とQRL細胞に比ベ、有意に高率であった(pく0.0 01)。一方、

QRL/CDDP/UFT細 胞 で は45匹 中5匹 (11% ) に し か 観 察 さ れ な か っ た 。 次 にlXl06個 の樹 立培 養細 胞を 無血清 培地 で24時間培養し、cell lysateと培養上

(5)

清中のcollagenase活性をザイモグラフイーで検索した。結果は、転移能を獲得した 細 胞株 では92kDaのタ イプIVコ ラゲ ナー ゼ(MMP‑9)活 性が 親QR‑32SK細胞 のそ れに 比 べて 有意 に増 強さ れて いた が、72kDaのタ イプIVコ ラゲ ナー ゼ(MMP‑2)活性 及び MMP‑9のnatural inhibitorで あるTIMP‑1のmRNA発 現と 転移 能獲 得と の間 に相 関は 認め られ なか った。 さら に、RT‑PCR法により樹立培養細胞のtissue inhibitors of metallo‑ proteinase ‑1 (TIMP‑1)の発現を検索し、またTranswell Chamberを用いて樹 立培養細胞のfibronectinに対するchemotactic assayならぴに1nvasion assayを行つ た。転移能を獲得した細胞株では、而yj troにおける運動能を示すfibronectin(FN)に 対するchemotactic activityの亢進がみられたが、浸潤能は全体に弱く一定の傾向を 示 さ な かっ た 。 な お 、 転 移 能 を 獲 得し なか った 癌細 胞株 ではMMP‑9の産 生能 及ぴ chemotactic activityはともに低かった。

  樹立 した 培養 細胞 のCDDPな らぴ に5‑FUに対 する 感受 性をcolony形 成法 で検 討し たが 、各 細胞 株の転 移能 と薬剤感受性を示すICso値との間に有意な相関は認められ なかった。

  論 文の 審査 にあた って 、論文申請者による研究の要旨の説明後、本研究ならびに 関連 する 研究 につい て質 問が行われた。いずれの質問についても、論文申請者から 明快 な回 答が 得られ 、ま た将来の研究の方向性についても具体的に示された。本研 究は、抗癌剤による癌細胞の転移能獲得機序の解明に有用なfn  vi vo実験モデJレ、特 に抗 癌剤 の宿 主への 影響 がないモデルを樹立したこと、ならびに癌化学療法後の悪 性化 進展 が癌 細胞の 生物 学的性格の恒常的な変化によるものであり、本実験系では 癌細 胞の 転移 能獲得 は細 胞外 マト リッ クス に対 する 癌細胞のchemotaxisやMMP‑9産 生能 と密 接に 関連し てい ること、さらに抗癌剤の種類や組み合わせにより悪性化進 展は 一様 では ないこ とを 明らかにしたことが高く評価された。本研究の業績は、口 腔外科の分野はもとより、関連領域にも寄与するところ大であり、博士(歯学)の学 位授与に値するものと認められた。

参照

関連したドキュメント

しかしながら生細胞内ではDNAがたえず慢然と合成

の多くの場合に腺腫を認め組織学的にはエオヂ ン嗜好性細胞よりなることが多い.叉性機能減

添付)。これらの成果より、ケモカインを介した炎症・免疫細胞の制御は腎線維

 Schwann氏細胞は軸索を囲む長管状を呈し,内部 に管状の髄鞘を含み,Ranvier氏絞輪部では多数の指

び3の光学活`性体を合成したところ,2は光学異`性体間でほとんど活'性差が認め

カバー惹句

創業当時、日本では機械のオイル漏れを 防ぐために革製パッキンが使われていま

したがって,一般的に請求項に係る発明の進歩性を 論じる際には,