原. 著 〔東女医大誌 第63巻 第11号頁1300㌣1309平成5年11月〕
OK−432腫瘍内投与における胃癌所属.リン.パ節の
抗腫瘍的な免疫反応に関する研究
東京女子医科大学 附属第二病院外科(指導 イシ カワ シン ヤ 石 川 信 也 梶原哲郎教授) (受付平成5年6月2日) AStudy on Antitumor Immune.Response of Regional Lymph Nodes in Gastric Cancer Treated by OK・4321utratumor Administration Shinya ISHIKAWA Department of Surgery(Director:Prof. Tetsuro KAIIWARA), Tokyo Women’s Medical College Daini Hospital The purpose of this study was to assess the effects of a 10 KE intratumor dose of OK−432, a strep止ococcal preparation given endoscopically before surgery, on antineoplastic immune response in regional lymph nodes and to elucidate the mechanism of action in 21 patients with early gastric cancer (stu“γgroup). Sixteen patients with early gastric cancer not receiving OK・432 served as controls (control group). The study on ce11−mediated immune response using regional lymph node lymphocytes revealed that, with the T cell subset, treatment with OK・432 significantly increased the CD3十cell ratio in distal lymph nodes and PHA−induced blast formation in proximal lymph nodes. In both proximal and distal regional lymph node lymphocytes, cytotoxic activity was higher in the study group than in the control group. In addition, lymphok量ne activated killer(LAK)cells derived from prox童mal lymph node lymphocytes in the study group showed significantly greater cytotoxic activity than those in the control group. In contrast, OK・432 activated killer(OKAK)cells der三ved from both distal and prox量mal lymph node lymphocytes had greater cytotoxic activity in the study gro如than in the control group. Immunohistological examination with anti−Su streptococcus antibody(anti−Su antibody)in l l patients receiving OK−432 revealed many yellow to brown granules in macrophages in the intermediated sinuses of reg圭onal lymph nodes, indicating that OK・432 injected into the tumor moved to the regional lymph nodes. In brief, OK−432 endoscopical正y administered into the tumor lesion before surgery augmented antineoplastic immune response in regional lymph nodes. OK−432 transported up to the regional lymph nodes may give rise to antineoplastic effects. 緒 言 近年,胃癌に対する術前補助免疫療法として, 溶連菌製剤OK・432の経内視鏡的腫瘍内投与が行 われている1)∼15).本療法の腫瘍に対する作用機序 としては直.接的な抗腫蕩効果,リンパ球やマクロ ファージを介した腫瘍局所,所属リンパ節および 全身の細胞性免疫能賦活効果(宿主介在効果)が 考えられ1),予後との関連からも有用性が報告さ れている2>3)6)14). その所属リンパ節に対する効果は,リンパ節リ ンパ球を活性化して免疫反応を増強させるという 報告10)∼15)はみられるが,その効果発現のメカニズ ムは充分解明されていない.そこで,早期胃癌患 者を対象にOK・432を術前経内視鏡的に腫瘍内投 与し,所属リンパ節リンパ球の免疫反応に与える 効果を細胞性免疫能,細胞障害活性の面から検討 してみた.さらに,OK・432に対する特異抗体とい われる抗Su抗体(抗A群溶連菌Su株血清,ウサ 一1300一ギ,中外製薬16))を用いて免疫組織学的にOK−432 の所属リンパ節への移行性を検索し,その効果発 現のメカニズムを解明しようと試みた. 対象および方法 1.対象 1988年5,月より1992年10,月までに東京女子医科 大学附属第二病院外科で手術され,リンパ節転移 のなかった早期胃癌37症例を対象とした.これら
を手術5日前に溶連菌製剤OK−432を10KE経内
視鏡的腫瘍内投与した21症例(投与群),OK・432非 投与で手術した16症例(非投与群)に分け,両三 について比較,検討した.さらに,投与群のうち 11症例の所属近位リンパ節について,抗Su抗体 を用いて免疫組織学的検索を行った. 2.方法 !)OK−432術前経内視鏡的腫瘍内投与 胃X線および内視鏡検査で早期胃癌と診断さ れた症例に対し,手術5日前,生理食塩水2mlに溶 解したOK−432,10KEを内視鏡を用いて腫瘍近傍 粘膜下に0.5mlずつ4ヵ所に分割して注入した. 2)所属リンパ節の採取 手術時,肉眼および触診で転移陰性と判断した 近位リンパ節(胃癌取り扱い規約17)でいう第1群 リンパ節)および遠位リンパ節(第3群リンパ節) を無菌的に採取した. 3)所属リンパ節の抗腫瘍的な免疫反応の測定 (1)リンパ節リンパ球浮遊液の作製 リンパ節の被膜を剥離し,RPMI−1640で充分に 洗浄,小勢刀で細切したのち,10mlの10%牛胎児 血清(FCS)加RPMI−1640を加え,硝子製のホモジナイザーにてホモジナイズした.ついで
stainless−mesh丘1ter(#150)で濾過し,その濾過 液よりFicoll−Conray比重遠沈法18)(比重1.077) でリンパ節リンパ球を分離した.燐酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄したのち,10%FCS加
RPMI−1640を加えてリンパ球浮遊液とした. (2)リンパ節リンパ球の細胞性免疫能の測定 ①Tcell subsets 1×107/mlに調整したリンパ球浮遊液の0.1ml にFITC標識anti・CD3, CD4, CD8抗体(Ortho 社)をそれぞれ0.01ml加え,室温で30分間反応さ 一1301 せた.RPMI−1640で3回洗浄したのち,細胞自動 解析装置Spectrum III(Ortho社)を用いて各蛍 光陽性細胞を同定,CD3+細胞比, CD4+細胞比, CD8+細胞比を測定した.②PHA幼若化反応
5×105/mlに調整したリンパ球浮遊液を0.2ml ずつculture plate(Nunc社)のwellにtriplicate に加えた.PHAはPHA−P(Difco Lab)を用い, 200μg/mlに調整して, PHA刺激群のwellに 0.02mlずつ添加した.他方, PHA非刺激群の wellには10%FCS加RPMI−1640を加えるのみと した。そして5%CO2培養器で37℃,72時間培養 し,培養終了24時間前に3H−thymidineを各well あたり0.5μCi/mlとなるように調整して加えた. cell hervesterで回収し,放射活性はsciptilation counter(LKB社)を使用して測定した. PHA刺激群,PHA非刺激群とも3つのwellの平均値を
それぞれ求め,PHA幼若化反応のStimulation
Index(SJ.値)は下記の式より計算した. s・値一 (3)リンパ節リンパ球のK−562細胞,Daudi細 胞に対する細胞障害活性 2.0×106/m1に調整したリンパ球浮遊液を0.1 m1ずつculture plateのwellにtriplicateに加え てeffector cellとした. target cellは51Crで標識 したK562細胞, Daudi細胞を用いた.2.5×105/ m1となるように調整し,その0.04mlを加えた (E/Tratio=20:1).そして,5%CO2培養器で 37℃,4時間培養した.ついで,plateのまま1,400 rpmで5分間遠心,各wellから上清を0.1m1吸引 してその中に含まれる51Cr放出量(experimental release)をscintilation counter(Dinabbto社) で測定した(図1).また,effector細胞を加えな い自然放出量(spontaneous release), effector細 胞に代えて,8%detergent 7Xを加えた最大放出 量(maximal release)も測定した.各放出量とも 3つの測定値の平均値を求めたうえ,両細胞に対 する細胞障害活性(Killer活性)を下記の式により 算出した.・・一酬]]、.、聯2
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1。。FC、.RPM.16。。、1.蹴.∪∪.1:唱酬RPM.16、。 .IL−2(十)or OK−432(十) Target cell l 5%CO2・37QC Induction 51Cr labe聞ed ド7端諜購r一一一↓ LA乏麗、幅
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OKAK cells↓%蜘ヅC騰ド
culture supernatant harvest ↓蜘。,㎞__↓ 図1 LAK細胞, OKAK細胞の誘導法と細胞障害活 性の検索法 KHler活性(%)= experimental releaSe一・…
一spontaneous release (4)Lymphokine activated killer(LAK)細胞, OK−432 activated killer(OKAK)細胞の誘導と そのK−562細胞,Daudi細胞に対する細胞障害活 性 2.0×106/mlに調整したリンパ球浮遊液1.2ml を遠沈して2,4×106個のリンパ球を取り出し, recombinant interleukin−2(rIL−2,武田薬品)を2U/m1の割合で含有する10%FCS加RPMI−
1640,あるいはOK−432を0.1KE/mlの割合で含 有する10%FCS加RPMI−1640の1.2mlに再浮遊 させた.その0.1mlずつをculture plateのwell にtriplicateに加え,5%CO2培養器で37℃,24時間培養してLAK細胞およびOK−432で活性化さ
れた細胞を誘導した.後者は森19)にならってOKAK細胞と呼称し,これらLAK細胞, OKAK
細胞のK−562細胞,Daudi細胞に対する細胞障害 活性を1前記の非培養リンパ節リンパ球の場合と 同じ51Cr放出試験で測定した(図1). 4)所属リンパ節におけるOK−432の同定 (1)組織切片の作製 手術で摘出された新鮮リンパ節を10%中性緩衝 ホルマリン液で24時間固定したのち,パラフィン 包埋し,ミクロトームで3μmの切片を作製した.(2)免疫組織学的検索(peroxidase・
antiperoxidase, PAP法) この切片を脱パラフィンして用いた.まず,ブ タ血清で30分間処理して非特異的染色をブロック した.そして,1次抗体として抗Su抗体を30分間 反応させたのちTris buffer生理食塩水(TBS)で 3回洗浄した.次に,2次抗体としてブタ抗ウサギ免疫グロブリンをやはり30分間反応させて
TBSで3回洗浄,さらにペルオキシダーゼ結合抗 ウサギ免疫ペルオキシダーゼ血清(PAP、kit,DAKO)を30分間反応させた.最後にTBSで3回
洗浄,ジアミノベンチジン過酸化水素溶液を10分 間反応させて発色させた.さらに流水で10分間洗 浄し,ヘマトキシリンで核染した.これを乾燥後 封入して光学顕微鏡で鏡検,抗Su抗体陽性細胞 の有無やその局在をみた.判定は1次抗体に正常 ウサギ血清を用いた陰性対照と比較して行い,明 らかに染色されたものを陽性とした. 結 果 1.所属リンパ節の抗腫瘍的な免疫反応 1)OK−432腫瘍内投与とリンパ節リンパ球の細 胞性免疫能 (1)Tcell subsets リンパ節リンパ球のTcell subsetsについてみ た(図2).CD3+細胞比は,近位リンパ節で投与 群60.2±7.9%,非投与群58±11.0%,遠位リンパ 節で各67.0±8.0%,57.0±11.0%となり,遠位リ ンパ節で投与群が有意に高かった(p〈0.05). CD4+細胞比は,近位リンパ節で投与群44.9± 7.2%,非投与群46.0±8.0%,遠位リンパ節で各 46.0±13.0%,45.0±10.0%となり,両群に差は なかった.CD8÷細胞比は,近位リンパ節で投与群 10.4±2.9%,非投与群10.0±3.0%,遠位リンパ 節で各13.0±4.0%,12.0±4.0%となり,両群に 差はなかった. (2)PHA幼若化反応 PHA幼若化反応をみた(図3). SJ.値は,近 位リンパ節で投与群363±174,非投与群177±88, 一1302一% 70 60 50 40 30 20 10 % 70 60 5G 40 30 20 1o 一遠 位一 ヨナ
1が
P<0.G5 干 十 % 20 10 投与群 非投与群 投与群 非投与群 図2 リンパ節リンパ球のTcell subsets モ 一近 位一 N.S. % 20 10 至 一喝 一一 王 N.5、 投与群 非投与群 投与群 非投与群 図4 リンパ節リンパ球のK−562細胞に対する細胞障 害活性 S.1. 500 400 300 200 100 一一゚ 位一 { P〈0.OI S,1. 500 400 300 200 100 一遠 位一 } N、S、 % 20 10 投与群 非投与群 投与群 非投与群 図3 リンパ節リンパ球のPHA幼若化反応 遠位リンパ節で各269±169,232±97となり,近位 リンパ節で投与群が有意に高かった(p<0.01). 2)OK−432腫瘍内投与とリンパ節リンパ球の細 胞障害活性 (1)リンパ節リンパ球のK−562細胞,Daudi細 胞に対する細胞障害活性 リンパ節リンパ球のK−562細胞に対する細胞障 害活性をみた(図4).近位リンパ節で投与群6.4± 2.0%,非投与群1.6±1.0%,‘遠位リンパ節で各 4.6±1.0%,3.0±1.0%となり,近位,遠位とも 投与群が高値であったが有意差は認めなかった. Daudi細胞に対する細胞障害活性をみた(図 5).近位リンパ節で投与群7.3±4、4%,非投与群 2.7±1.8%,遠位リンパ節で各5.1±3.6%,2。8± 1.0%となり,近位,遠位とも投与群が高値であっ たが,有意差は認めなかった. % 20 10 % 20 10 投与群 非投与群 投与群 非投与群 図5 リンパ節リンパ球のDaudi細胞に対する細胞 障害活性 一近 位一 王 Pく0.05 % 20 10 一遠 位一 { P<0,1 投与群 非投与群 投与群 非投与群 図6 LAK細胞のK−562細胞に対する細胞障害活性 (2)LAK細胞のK−562細胞, Daudi細胞に対す る細胞障害活性 LAK細胞のK−562細胞に対する細胞障害活性 一1303一% 20 10 一近 位一 } P〈005 % 20 10 一遠 位一 王 % 20 10 P〈D、1 投与群 非投与群 投与群 非投与群 図7 LAK細胞のDaudi細胞に対する細胞障害活性 一州 位一 }
一一
P<01 % 20 10 一遠 位一 { Pく0.1 % 20 10 上 一五 位一 } Pく0.1 20 10 投与群 非投与群 投与群 非投与群 図8 0KAK細胞のK−562細胞に対する細胞障害活 性 投与群 非投与群 投与群 非投与群 図9 0KAK細胞のDaudi細胞に対する細胞障害活 性 図10 所属近位リンパ節における抗Su抗体陽性細胞 (×400,PAP法) をみた(図6).近位リンパ節で投与群19.2± 8.0%,非投与群11,5±1.1%,遠位リンパ節で各 15.0±3.0%,11.0±4.9%となり,近位リンパ節 で投与群が有意に高く(p〈0.05),遠位リンパ節 で投与群が高い傾向が認められた(p<0..1). Daudi細胞に対する細胞障害活性をみた(図 7).近位リンパ節で投与群26.6±9.8%,非投与 群12.8±3.8%,遠位リンパ節で各17.3±8.8%, 8.9±1.6%となり,近位リンパ節で投与群が有意 に高く(p〈0.05),遠位リンパ節で投与群が高い 傾向であった(p<0.1). (3)OKAK細胞のK−562細胞, Daudi細胞に対 する細胞障害活性 OKAK細胞のK−562細胞に対する細胞障害活 性をみた(図8).、近位リンパ節で投与群14.6± 4.9%,非投与群9.8±5.1%,遠位リンパ節で各 11.0±3.9%,10.6±4.8%となり,近位リンパ節 で投与群が高い傾向であった(p<0.1).遠位リン パ節では両群に差を認めなかった. Daudi細胞に対する細胞障害活性をみた(図 9).近位リンパ節で投与群2σ.4±ユ2.8%,非投与 群10.0±3.0%,遠位リンパ節で各15.2±9.0%, 8.6±4.4%となり,近位,遠位とも投与群が高い 傾向が認められた(p<0.1). 2.腫瘍内投与したOK:・432の所属リンパ節へ の移行性 OK−432を術前経内視鏡的に腫瘍内投与した11 例の所属近位リンパ節について,抗Su抗体を用 いてPAP法による免疫組織学的検索を行った. OK・432の移行をみたところ,全例,リンパ節内に 陽性細胞が認められた.その多くはリンパ節内のintermediate sinus(中間洞)に分布しており,局 在はマクロファージに貧食された黄色∼褐色の二 三として認められた(図10).
考 察
近年,胃癌に対する術前療法としてOK−432の 経内視鏡的腫瘍内投与が行われるようになり,腫 瘍局所,全身だけでなく,所属リンパ節に与える 効果にも期待が寄せられている1>∼15).このOK 432の腫瘍内投与が所属リンパ節に与える効果に ついて,実験的には平野マウスで,臨床的にはヒ ト胃癌や大腸癌で所属リンパ節の抗腫瘍的な免疫 反応を増強させることが報告されている7)∼15)20). しかし,それに関して細胞障害活性の面から詳細 にみた報告はなく,また効果発現のメカニズムに ついては充分解明されていない.そこで,早期胃 癌を対象にOK−432を術前経内視鏡的腫瘍内兜与 し,所属リンパ節の抗腫瘍的な免疫反応に与える 効果ならびに効果発現のメカニズムを明らかにし ょうと試みた.なお,対象を早期胃癌にしぼった のは,動物実験で所属リンパ節の抗腫瘍性が担癌初期で明らかにみられることが報告されてお
り21),所属リンパ節の抗腫瘍的な免疫反応の検索 に適切と考えたからである. まず,細胞性免疫能についてみた.所属リンパ 節リンパ球のTcell subsetsについて,勝部9)は OK−432腫瘍内投与による大きな変動はみられな いとしているが,小林10)はOK−432コ入群と非注入群で比較し,OKT8+細胞の有意の低下と
OKT4/OKT8の上昇を報告している.また,小
尾15)はtwo color解析で検討し, OK432腫瘍内投 与によってhelper inducer T cellが増加すると結 論している.著者の成績では,こうした特徴的な 動きはみられなかったが,投与群の遠位リンパ節 でCD3+細胞比が非投与群に比較して有意に上 昇した.この時,CD4+細胞比, CD8+細胞比の上 昇はみられず,この上昇にはCD3+・CD4一・ CD8一のいわゆるdouble negative T cellが関与 する可能性も示唆された.その多くはγ谷Tcellと いわれるが,熊谷ら22)はヒト末梢血単核球を溶連菌の加熱三体で刺激するとCD3+・CD4+の
helper T cellに加えてCD4一。CD8一のγδT cell が増殖すると報告している.これに関連して興味 深い成績と考えられよう.しかし,リンパ節にお けるγδTcellの分布はきわめて少ないといわれ ており,今後検討すべき点と思われる.いずれに せよ,OK−432腫瘍内投与による所属リンパ節リン パ球のTcell subsetsの変動をみるとき,限られ た抗体によるsingle color解析では限界があると 考えられる. PHA幼若化反応について,小川23)は癌腫近位 リンパ節リンパ球の本反応は低下していることを 明らかにし,早期胃癌を対象にOK−432腫瘍内投 与を行ったところ,第1群リンパ節リンパ球では 投与群のSJ.値が有意に上昇することを報告し ている7).著者の成績も同様で,遠位リ・ンパ節で差 はなかったが,投与群の近位リンパ節ではSJ.値 の有意の上昇を認めた.このPHA.幼若化反応は, 癌患者の免疫状態を適確に表すパラメーターとい われている24).OK−432経内視鏡骨腫瘍内投与に は,癌患者の所属近位リンパ節の抗腫瘍的な免疫 反応を増強する効果があると考えられる. 次に,所属リンパ節リンパ球のK−562細胞, Daudi細胞に対する細胞障害活性についてみた. 前者はいわゆるnatural killer(NK)細胞活性で, 生体の腫瘍に対する自然抵抗性を表すといわれて いる25).このNK細胞活性は,リンパ節リンパ球 ではきわめて低いとされているが26)27),OK−432の 腫瘍内投与によりその活性は増強すると報告され ている9)10).また,その増強機序について,小林10)はOK−432の腫瘍内注入によりprekillerから
killerへの分化が促進されたためと推定してい る.著者の成績では,非投与群との間に有意差は えられなかったが,近位,遠位リンパ節リンパ球 とも投与群が高値であった. Daudi細胞はヒトBurkittリンパ腫由来の継代 株で,NK細胞非感受性の腫瘍細胞として知られ ている.森19)は大腸癌で,所属,遠隔リンパ節リン パ球のDaudi細胞に対する細胞障害活性を測定 し,NK細胞活性よりやや高値を示すこと, OK− 432腫瘍内投与によりその活性が上昇傾向をみる ことを報告している.著者の成績では,先のK−562 細胞に対する細胞障害活性と同様に,近位,遠位 一1305一リンパ節リンパ球とも投与群が高値であった. OK・432腫瘍内投与には,所属リンパ節リ.ンパ球の 細胞障害活性を幅広く増強する効果が期待できる と思われる. さらに,リンパ節リンパ球をrIL・2あるいは OK・432を添加して24時間培養し, LAK細胞, OKAK細胞を誘導し,そのK・562細胞,. Daudi細 胞に対する細胞障害活性を検索した. まず,LAK細胞活性についてみた. LAK細胞 はRosenbergら28)によってはじめて誘導された 腫瘍細胞に対して広範囲な細胞障害活性をもつ killer細胞である. Cytotoxic T cell, NK細胞を おもな前駆細胞とし,NK細胞抵抗性の細胞株や 自己新鮮腫瘍細胞に対しても強いkiller活性を有 する細胞集団といわれている28}∼35).OK−432の経 内視鏡的腫瘍内投与がこの胃癌所属リンパ節リン パ球のLAK細胞活性に与える影響について,戸 田ら11)は増強効果を報告し,森19)も大腸癌所属リ ンパ節リンパ球ではあるが,同じような成績を示 している.著者の成績も同様で,投与群のリンパ 節リンパ球から誘導したLAK細胞の細胞障害活 性は,近位リンパ節リンパ球では非投与群に比較 して有意に高く,遠位リンパ節リンパ球でも高い 傾向を示した.OK432腫瘍内投与には,所属リン パ節リンパ球のLAK細胞活性の増強効果がある と考えられる.
さらに,OKAK細胞活性についてみた.星野
ら36)は末梢血リンパ球をOK−432で刺激すれぽ NK細胞活性の増強がみられること,OK−432を添 加して培養すればIL2刺激と同じように, NK細 胞非感受性のDaudi細胞に対して細胞障害活性 をもつLAK様細胞が誘導されることを報告し, また,早川ら37)は胃癌,大腸癌の所属リンパ節リン パ球について,OK−432の添加培養でrIL−2添加培 養とほぼ同等の細胞障害活性がえられることを報 告している.このように,リンパ球にOK−432を添 加,培養すれぽ強い細胞障害活性をもつ活性化細 胞,すなわち森19)のいうOKAK細胞が誘導でき る.森19)も大腸癌所属リンパ節リンパ球から OKAK細胞を誘導し,そのK・562細胞, Daudi細 胞に対する細胞障害活性は非培養リンパ球に比べ て有意に高いことを報告している.著者の成績で は,投与群の近位リンパ節リンパ球から誘導した OKAK細胞の細胞障害活性は,非投与群に比較し て高い傾向であった.OK−432腫瘍内投与によって 所属リンパ節リンパ球が感作され,このpriming 効果により,培養時のOK−432の再刺激で強い活性をもつOKAK細胞が誘導されたものと思われ
る. 以上,述べてきたOK−432腫瘍内投与の所属リ ンパ節リンパ球の免疫反応に与える効果をまとめ ると,CD3+細胞比, PHA幼若化反応を上昇させる効果,さらにはpriming効果によってLAK細
胞活性,OKAK細胞活性を増強させる効果の二点 を考えることができよう. ここで,最近の早期胃癌に対する治療について 考えてみたい.リンパ節転移状況などをふまえて 内視鏡的治療38),縮小手術39)あるいは合理的手 術40)などが積極的に行われている.この場合,必然 的に所属リンパ節は温存される.術後はその抗腫 瘍性免疫反応が注目されるが,こうした治療の術 前にOK−432を腫瘍内投与すれぽその反応は増強 し,再発防止効果が期待されよう.また,先に述 べたpriming効果とは,温存されたリンパ節を術 後何らかの方法でIL2やOK−432で刺激すれぽ強 いkiller活性をそのリンパ節内に誘導でぎるとい うことである.清水ら41)もbiological response modi飴r(BRM)を用いて癌に対する有効な免疫 を生体に発現させるためには,まず少量投与で全 身感作することが大切と述べている.所属リンパ 節の抗腫瘍性を利用した新しいタイプのBRM療 法の可能性を示唆する成績とも思われる. 最後に,本療法の所属リンパ節リンパ球に与え る効果発現のメカニズムを明らかにする目的で, 腫瘍内投与されたOK−432の所属リンパ節への移 行性を1次抗体に抗Su抗体を用いて免疫組織学 的(PAP法)に検索した.この抗Su抗体は,ウサギにA群3型溶連菌Su株の凍結乾燥門門2.5
mgとFreundの完全補体1mlとのエマルジョン
を9週間にわたり計9回皮内投与し,その3週間 後に採取した静脈血から分離した抗血清である. これをさらに1,6,12型の溶連菌による吸収処理 一1306一で特異性を高めてあり,ポリクローナル抗体では
あるが,OK432に対する特異抗体とされてい
る16).椎葉ら12)もこの抗Su抗体を用いた免疫組織 染色で,OK−432のリンパ節への移行性を確認して いる,著者の検索でも,intermediate sinus(中間 洞)に黄色∼褐色に染色される町回をとり込んだ マクロファージが多数認められ,明らかに近位リ ンパ節にOK・432が移行していることを確認し た. マクロファージは食細胞,分泌細胞であるだけ でなく免疫担当細胞であり42),抗原物質をとり込 んで修飾(processing)し,それをリンパ球に提示 (presentation)して免疫応答を引き起こす抗原提 示機能をもつことが知られている43).著者の成績 は,リンパ節内においてマクロファージが移行し てきた非特異的抗原であるOK−432をとり込み, 抗原提示細胞として働くことを示すものといえよ う.こうして所属リンパ節リンパ球が活性化され, 抗腫蕩的な免疫反応が増強すると考えられる. 以上述べてきたごとく,OK432腫瘍内投与に は,所属リンパ節リンパ球の抗腫瘍的な免疫反応 の増強効果や細胞障害活性の増強効果が認められ た.加えて,その効果発現のメカニズムも明らか にすることができた.この成績は,本療法の免疫 学的意義を立証するものと考えられる. 結 論 早期胃癌患者を対象に,溶連菌製剤OK−432を 術前経内視鏡的に腫瘍内投与し,所属リンパ節の 抗腫瘍的な免疫反応に与える効果およびその効果 発現のメカニズムについて検討し,以下の結論を えた. 1)OK−432の腫瘍内投与により,Tcell subsets では,遠位リンパ節リンパ球のCD3+細胞比が有 意に上昇した.近位リンパ節リンパ球のPHA幼 若化反応も有意に上昇した. 2)OK432の腫瘍内投与により,近位リンパ節 リンパ球のLAK細胞活性は有意に上昇し,遠位 リンパ節リンパ球のそれは上昇傾向をみた. 3)OK−432の腫瘍内投与により,近位,遠位リンパ節リンパ球のOKAK細胞活性は上昇傾向をみ
た. 4)腫瘍内投与されたOK−432は,近位リンパ節 のマクロファージにとり込まれることが認められ た. 5)以上より,OK・432の腫瘍内投与には所属リ ンパ節の抗腫瘍的な免疫反応を増強する効果が認 められた.その効果発現のメカニズムは,所属リ ンパ節に移行してマクロファージにとり込まれた OK−432に起因し,この時,マクロファージが抗原 提示細胞としての役割を果たすことが示唆され た. 稿を終えるにあたり,御指導,御校閲を賜わった梶 原哲郎教授,直接御冷導いただいた小川健治助教授, 御協力をいただいた矢川裕一講師,勝部隆男助手をは じめとする東京女子医科大学附属第二病院外科諸兄 姉,研究室諸兄姉に心より感謝する. 本論文の要旨は第27回日本癌治療学会総会におい て報告した, 文 献 1)合地 明,三輪雪加,松三 彰ほか:胃癌巣内免 疫賦活剤注入時の局所組織所見ならびに全身的非 特異的免疫反応.消と免疫 12:77−81,1984 2)Nakazawa S, Yoshi⑳一J,.Okamura S et al: Clinica重 ef且cacy of endoscopic injection of OK・432 in the treatment of gastric cancer. Scand J Gastroenterol 23:539−545,1988 3)Tsujitani S, Okamura T, Baba H et a1: Endoscopic intratumoral injection of OK−432 and Langerhans’cells in patients with gastric carcinoma。 Cancer 61:1749−1753,1988 4)高崎 健,船橋英昭,今西定一ほか:PSK局注療 法による局所リンパ節免疫能増強効果.医のあゆ み130:201−202,1984 5)飽浦良和,田中紀章,後藤精俊ほか:PSK腫瘍内 注入の胃癌所属リンパ節リンパ球のcytotoxicity に及ぼす影響.医のあゆみ 137:415−416,1986 6)岡林孝弘,掘見忠司,合地 明ほか:胃癌所属リ ンパ節の免疫組織学的解析.日消外会誌 19: 844−848, 1986 7)小川健治,矢川裕一,勝部隆男ほか:胃癌所属リ ンパ節の抗腫瘍的な免疫応答について.日上期会 誌19:862−866,1986 8)小林元壮,田中紀章,飯浦良和ほか:免疫賦活剤 種瘍内注入による胃癌所属リンパ節リンパ球の細 胞障害活性.消と免疫 16:255−258,1986 9)勝部隆男:早期胃癌に対する術前経内視鏡OK・ 432腫聖楽投与に関する研究.日臨外医会誌 一1307一48:1600−1610, 1987 10)小林元町:OK432腫瘍内注入による胃癌所属リ ンパ節リンパ球の抗腫瘍能の増強.日外会誌 91 :68−76, 1990 11)戸田京子,日比紀文,大原 信ほか:OK・432局注 による末梢血および局所リンパ節リンパ球免疫の 変動.Biotherapy 3:862−865,1989 12)椎葉健一,大内明夫,川上一岳ほか:胃癌に対す る術前経内視鏡的OK−432腫瘍内投与に関する研 究一所属リンパ節の病理組織学的反応について 一.Biotherapy 3:1225−1228,1989 13)渡会伸治,米沢 健,山岡博之ほか:胃癌手術に おける術前OK−432腫瘍内局注について.医療 43:1181−1185, 1989 14)合地 明,淵本定義,折田薫三ほか:胃癌術前免 疫療法としてのOK−432経内視鏡的腫瘍内投与の 意義.日外会誌 90:1439−1442,1989 15)小尾芳郎:Biological Response Modi丘er (BRM)の胃癌病巣周囲への局所注射による所属 リンパ節内リンパ球の免疫能の変動。日外会誌 92:293−302, 1991 16)仁尾義則,大垣和久,稲本 俊ほか:ピシパニー ル(OK・432)経口投与の試み(第2報).日曜治療 会誌 19:71−79,1984 17)胃癌研究会編:胃癌取扱い規約 第11版.金原出 版,東京(1985) 18)辻 公美:比重遠沈法によるリンパ球の分離, Conray 400・Ficoll法.免疫実験操作法A(日本免 疫学三編),pp443−446,金沢(1975) 19)森 正樹:大腸癌に対する術前OK・432腫瘍内投 与の免疫学的意義に関する検討..日本大腸肛門病 会誌 44:888−897,1991 20)稲葉俊三:腫瘍所属リンパ節の抗腫瘍性とその賦 活化に関する実験的研究.東女医大誌60: 987−907, 1990 21)中田一也:ド担癌マウスにおける所属リンパ節の抗 腫瘍性に関する実験的研究.東女医大誌 53: 260−272, 1983 22)熊谷勝男,力石秀美:γびT細胞の反応抗原一微生 物抗原と自己ストレス抗原一.臨床免疫 22: 1461−1471, 1990 23)小川健治:胃癌所属リンパ節の機能的,形態的抗 腫瘍性に関する研究.日臨外燈会誌42: 101−113, 1981 24)雑用裕一:消化器癌よりみた世帯生体の細胞性免 疫能に関する研究.東女医大誌 50:842−862, 1980 25)大谷洋一:癌患者のNatura】Killer(NK)細胞活 性に関する臨床的研究.日臨外医会誌45: 569−583, 1984 26)Antonelli P, Stewart W II, Dupont B:Dis− tribution of natural k避ler cdl activity in peripheral blood, cord blood, thymus, lymph nodes, and sp至een and the effect of in vitro treatment with interferon preparation. Clin Immunol Immunopatho119:161−169,1981 27)飯浦良和,田中紀章,後藤精俊ほか:IL2添加培養 による胃所属リンパ節リンパ球のcytotoxicity の増強.日収治療会誌 21:2411−2420,1986 28)Grimm EA, Mazumder A, Zhang HZ et a貰: Lymphokine−activated killer cell phenomenon: Lys三s of natural killer−resistent fresh・so}id tumor cells by interleukin−2 activated autologous human peripheral blood lymphocytes. J Exp Med 155:1823−1841,1982 29)Maureen H,・Ted M, William L et a1:Char acterization and modulation of human lympho− kine(interleukin 2)activated killer cell induc・ tion. Cancer Res 46:2834−2838,1986 30)Richards J]M: Therapeutic uses of interleukin−2 and lymphokine−activated killer (LAK)cells. Blood Rev、3:110」119,1989 31)森山貴志,中村郁夫,松橋信行ほか:LAK (Lymphokine・activated killer)細胞による養子 免疫療法.臨床免疫 20:669−706,1988 32)高木秀二:LAK活性測定法.臨床免疫 19: 245−249, 1987 33)Grimm EA, Ramsey K:M, Mazumder A et al: Lymphokine・activated killer cell phenomenon II. Precursor phenotype.is serologically distinct from peripheral T lymphocytes, memory cytotoxic thymus derived lymphocytes, and natural killer cells. J Exp Med 157:884−897, 1983 34)Rosenberg SA:Lymphokine−activated killer cells:Anew approach to immunotherapy of cancer, J Natl Cancer Inst 75:595−603,1985 35)梅田浩:癌少老末梢血リンパ球における Lymphokine activated killer(LAK)細胞活性 に関する研究東女医大誌 59:1164−1175,1989 36)星野 孝,内田温士:免疫賦活剤OK−432の最近 の動向について一特にOK・432の作用機序と至適 投与法に関する.研究一.Biotherapy.2: 486−495, 1988 37)、早川一博,小田桐弘毅,藤井昌彦ほか:田野患者 所属リンパ節リンパ球のNK, LAK(lymphokine activated killer)活性とin vivoおよびin vitro におけるOK・432の影響。日司会45回総会記: 175, 1986 38)多田正弘,村上敦司,白石裕美ほか:胃癌の内視 鏡川治療法.町田内科6:195−201,1991 39)笹子三津留,木下 平,.丸山圭一ほか:早期胃癌 に対する局所切除.日消外会誌 23:2191−2195, 1990
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