24 〔平成25年度佐竹高子研究奨励賞受賞者研究発表〕 1. 8temness遺伝子の発現異常によって惹起される非 アルコール性脂肪肝炎由来の肝発癌機構の解析 (消化器内科学) 小木曽智美 〔背景〕癌の発生に癌幹細胞の関与が報告されている が,肝癌においては不明な点も多い.今回我々は,Jffi性 幹細胞の特徴である多分化能と自己複製能の維持に関与 する stemness遺伝子であるNanogやEpCAMなどの癌 幹細胞マーカ一発現,さらに酸化的DNA傷 害 マ ー カ -8-0HdG発現を非アルコール性脂肪肝炎由来の肝細胞癌 (NASH-HCC)を用いて検討した. (方法
J
1999~2013 年 に当院で肝切除施行例中 NASH-HCC 20例および性・ 年齢を一致させた C型肝炎ウイルス感染を基盤とする HCC (HCV-HCC) 24例を対象とし,①非癌部と癌部の Nanog, EpCAM, 8-0HdGの免疫染色所見,②非癌部の 線維化の程度別(線維化軽度群NASH-HCC/HCV-HCC 4/10例と F3以上の高度線維化群16/14例)で比較検討 した. (染色結果の評価は 10聞く50%の染色細胞を認める ものを弱陽性, 50%以上を強陽性とした.) (成績〕① Nanogは細胞質に発現し非癌部での陽性率は,弱陽性 NASH聞HCC15%/HCV同HCC5% 強陽性85%/95%,癌 部では弱陽性25%/15%,強陽性15%/0%で,強陽性例 は 全 例 癌 部 にsteatohepatitic (SH)の 特 徴 を 呈 す る SH-HCCであった.8-0HdGは核に染色され,非癌部で は弱陽性60%/65%,強陽性20%/20%,癌部では陽性 30%/35%,強陽性50%/45%であった.EpCAMは細胞 膜 に 発 現 し 非 癌 部 弱 陽 性25%/41
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7 % , 強 陽 性 10%/41
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7%,癌部弱陽性5%/8.3%,強陽性5%/8.3%で あった②線維化の程度別比較では, Nanog, 8-0HdG に は 差 が な く , 軽 度 線 維 化 群 でEpCAM弱 陽 性 0%/60 % , 強 陽 性0%/20% , 高 度 線 維 化 群 弱 陽 性 6.3 % /85.7%,強陽性50%/14.3%であった. (結論〕癌部 のNanog強 発 現 例 はNASH-HCCに 高 頻 度 で , 全 例 SH-HCCであった.非癌部では高度線維化群でEpCAM 発現が高度で肝癌の発症・進展に関与している可能性が 考えられた. 2. Fibroblast growth factor-23の慢性腎臓病における 作用 (東医療センター内科) 小川哲也 慢性腎臓病 (CKD)において心血管合併症は第一位の 死因である.近年,冠動脈や大動脈の血管石灰化がCKD 患者の心血管疾患の発症・進展に関与していることが報 告されている.血管石灰化は,末期腎不全患者において 著明であり腎機能障害に伴うカルシウム (Ca),リン (p) 代謝の異常がその主因子であるが, Ca, P代謝にfibro -blast growth factor-23 (FGF23)が関与していることが 報告されている.FGF23は,近位尿細管でのP再吸収抑 制および1-25(OH) 2Dの低下による血清Pを低下作用 が確認されている.近位尿細管でのFGF23の作用は, FGF23の1型受容体と FGF23および老化に関与する Klothoから形成される Klotho・FGF23複合体により作用 を発揮する.腎機能障害時には, FGF23の上昇と Klotho の低下が報告されており,Klotho-FGF23複合体の低下が 予想され血清P値が高値となる.維持透析患者で心血管 系合併症の危険因子として血清P高値だけでなく近年, 血清FGF23の高値自体が心血管系合併症の危険因子で あるとの報告を認めるが FGF23の血管石灰化への関与 については明らかではない.動物実験では FGF23ノッ クアウトマウスで血管石灰化を認めることから,FGF23 は石灰化抑制に働く可能性がある.今回,血清FGF23値 抗5
年間の経過において維持透析患者において大動脈弓部石 灰化抑制の独立した因子であること (svalue=-
1
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395, F= 4.54,1p = 0.0296),および血清FGF23は全患者ではな く,女性および心血管の既往がある患者のみで有意に死 亡率が高値であること (hazaradratio 9.52, 95 % confi目 dence in terval1
.
56・86,1. pニ0.0129)を見いだしFGF23 が心血管疾患の直接的な危険因子ではない可能性が示唆 された. 3.家族性AL8関連変異8001蛋白の細胞外放出と毒 性解析 (病理学(第一)) 新井田素子 -24-〔背景と目的〕筋萎縮性側索硬化症 (ALS)は進行性の 運動ニューロン選択的細胞死により,発症から数年で死 に至る神経変性疾患である.運動ニューロン死の原因は 未だ不明であり,有効な治療法も存在しない.スーパー オキシドジスムターゼ(SOD1)遺伝子変異は家族性ALS 患者の約20%にみられる.変異SOD1蛋白が運動ニュー ロン死を誘導するメカニズムとして,グリア細胞による 神経炎症を促進する説が提唱されている.我々は,変異 SOD1蛋白がグリア細胞に及ぼす役割を解析するため に,遺伝子導入実験を行った. (材料と方法〕代表的な ALS関連遺伝子変異であるG93A-SODl変異プラスミド および野生型であるWT-SOD1プラスミドを作製し,培 養アストロサイトおよび培養ミクログリアに遺伝子導入 を行い, SODlの発現状態を免疫細胞化学染色,ウエス タンブロット法およびELISA法を用いて解析した. (結 果〕アストロサイトでは, SODl免疫活性は,細胞質に 局 在 し 特 に G93A-SOD1導入細胞では,細胞質凝集体 が観察された.一方, ミクログリアでは, SODl免疫活 性は総じて弱く,細胞質凝集体は観察されなかった.ウエ スタンブロットおよびELISA解析では,アストロサイ トにおいてWT-SOD1とG93A-SOD1の発現量は同等で あったが, ミクログリアにおいて, WT-SOD1と比較す ると, G93A-SODlの発現量が低下していた. (考察〕以 上の結果は, ミクログリアにおいて, G93A-SODl蛋白の合成低下,分解克進もしくは,細胞外放出が起こって いる可能性を示唆している. 4.腫蕩・炎症組織におけるリンパ管新生の形態学的 解析 (解剖学・発生生物学) 森川俊一 リンパ管新生は悪性腫蕩や種々の炎症性疾患において 観察されるが,それぞれの疾患の病態生理への具体的な 関連性には不明の部分が多い.本研究ではアトピー性皮 膚炎および転移腫蕩モデルマウスを材料にして, リンパ 管新生がそれぞれの疾患においてどのような役割を果た すのかについて検索を行った 腫蕩モデルでは.3LL Lewis肺癌細胞の皮下移植2週 間後に採取した腫蕩組織にpodoplanin陽性のリンパ管 新生を観察したが,これらリンパ管は同時に観察された 新生血管に比べて非常に少数であった.また.BrdU染 色により細胞増殖性を検討したところ,血管内皮細胞に 比べてリンパ管内皮細胞は増殖性も極めて低いことが明 らかとなった.さらに,血管内には腫蕩細胞と考えられ る大型で増殖性を示す細胞が頻繁に侵入する一方,リン パ管内には同様の場面は認められなかった.本腫蕩モデ ルでは移植後に肺転移がみられるが,以上の結果からは, その転移ルートには血行性ルートがリンパ行性ルートよ りも有効に機能していることが強く示唆された アトピー性皮膚炎を耳介に誘導したモデルでは,耳介 の真皮および皮下組織に顕著な浮腫が観察されたが,こ れら結合組織中には内腔が異常に拡張したリンパ管が数 多く観察された.また これらのリンパ管内皮細胞には 活発な増殖性が認められた.以上の所見からアトピー性 皮膚炎モデルでは 既存の結合組織中のリンパ管が内皮 細胞の分裂増殖を起こして内腔径を拡張させる様式のリ ンパ管新生を主に行い,浮腫による大量の組織液の排出 に対処することが強く窺われた.