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インターロイキン2活性化ヒト正常NK細胞の表面マーカー

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原 著 〔東女医大誌 第64巻 第5号頁456∼462平成6年5月〕

インターロイキン2活性化

ヒト正常NK細胞の表面マーカー

東京女子医科大学 血液内科学教室(主任          フク   ダ    ジユン   コ          福  田  淳 子 溝口秀昭教授) (受付平成6年1月20日) Surface Markers of Interleukin 2−Act量vated Human Normal Natllral Killer Ce皿s

         Junko FUKUDA

Department of Hematology, Tokyo Women’s Medical College   In human normal, resting, natural killer(NK)cells, the CD16 antigen董s brightly positive (CD16b「ight), and the CD56 antigen iS dimly pOSitive(CD56dim). ACtivatiOn antigenS CD71 and HLA・DR are almost undetectable, and neither the expression of CD210r CD30 has been described. The multidrug resistance gene(MDR1)is known to be expressed, and Fas antigen is reported to be negative. In this study, we examined the surface markers of NK cells before and after activation with interleukin 2(IL・2).   Large granular lymphocytes were obtained from the peripheral blood mononuClear cells of three normal donors, and NK cells were purified after the deletion of CD3+Tcells from large granular lymphocytes. NK cells were cultured for 3 to 7 days with 1,000 U/ml of IL2, and stained with 3 colors. The antigenic expression on CD3−CD56+NK ce11s was analyzed by a flow cytometer.   With the increase in the levels of activation antigens HLA−DR and CD71, the levels of CD21, CD30, CD56, Fas, and MDRI antigens also increased or became posit量ve after culture。 The CD16 antigen was strongly expressed before culture, but weakened after culture. These findings indicated that the NK cellS Of a CD16dim CD56b「ight SUbSet are preSent not only in already knOwn immatUre NK cells but also in activated mature NK cells. The Epstein・Barr virus(EBV)has been suggested to be responsible for the transformation of NK cells. Because our studies demonstrated that NK cells bear the EBV receptor CD21 antigen, EBV may infect NK cells through the CD21 antigen, and transform them thereafter。        緒  言  natural killer(NK)細胞は抗原による感作な しにある種の標的細胞を殺すことのできるリンパ 球で,末梢血リンパ球の10∼15%を占める1)2). large granular Iymphocyte(LGL)の形態を有し, 表面マーカーはCD3一, T細胞レセプター(TCR) 陰性,CD16+, CD56+で,機能的にはmajor his− tocompatibility complex(MHC)非拘束性キラー

活性を有する,T細胞でもB細胞でもないリンパ

球であるD2).多くのNK細胞はCD2, CD7, CDllc,

CD38, CD57抗原毛発現し,インターロイキン2

(IL2)などで活性化すると, CD25, CD71, HLA− DR抗原も発現することが知られている2).また成

熟NK細胞ではCD16抗原の発現は強いが

(CD16b「ight), CD56抗原の発現は弱く(CD56dim),

幼若NK細胞では逆にCD16d正mCD56b「ightである

といわれている3)∼5).われわれは最近鼻腔原発の

NK細胞リンパ腫の1例を経験したが,表面マー

カーはCD16+CD21+CD30+CD56+CD71+HLA−

DR+Fas+で,多剤耐性遺伝子(MDR1)由来のP

(2)

糖蛋白が陽性(MDR1+)で,かつ強いNK活性を

有していた.腫瘍細胞へのEpsteinBarrウィルス

(EBV)の感染も認められた(福田ら,論文投稿

中).しかしこれまでは正常のNK細胞での

CD21, CD30抗原の発現については報告がなく, Fas抗原は陰性とされている6).また本例ではNK 活性が強いにもかかわらずCD16dimCD56b「ightで

あったことから,活性化NK細胞では幼若NK細

胞と同様にCD16d蚤m CD56b「ightのマーカーを示す のではないかと考えられた.

 そこで本研究では,正常ドナー末梢血よりNK

細胞を純化し,これらのマーカーを調べるととも

に,IL2活性化NK細胞におけるマーカーの変化

を検討した.       方  法  1.NK細胞の純化7)8)  健常人3名の末梢血をヘパリン採血し,Ficoll−

Conray比重遠心法で単核球を分離した後,ナイ

ロンウールカラムを通し,ナイロンウール付着性

のBリンパ球と単球を除去した.次にナイロン

ウール非付着細胞(T細胞十NK細面)からPer−

coll不連続密度勾配遠心法で, LGLを単離した.

さらにイムノビーズ法でCD3+のT細胞を除去

し,NK細胞を純化した.純化NK細胞のうち

CD56+細胞は73±10%を占めた.

 2.NK細胞の培養

 上記の方法で得られたNK細胞を,10%ヒト

AB血清とIL−21,000U/mlを加えたRPMI1640

に浮遊させた.2×106/2ml/wellずつ,24穴の培養 プレート(Linbro Division, Flow Laboratories Inc., McLean, VA, U.S.A.)に入れ,37℃,5%

CO2培養器で3∼7日培養した.

 3.細胞の三重染色(図1)

 リン酸緩衝生理食塩水(PBS)にて2回洗浄し

抗マウスFITC標識抗体

       \轟くi芸体

       /1\        PE標識抗CD56抗体        図1 三重染色法 表1 実験に用いたモノクローナル抗体 抗 原 抗原の性状,分布 商品名 会 社 名 CD3 成熟T細胞 Leu4 Becton−Dickinson, San iose, CA, U.SA. HLA−DR HLAクラスII抗原,単球, B細 E,活性化T細胞 OKIa オーソ・ダイアグノステ Cック・システムズ,東京 CD71 トランスフェリンレセプター, ?ォ化B,T細胞,マクロファ∼ W,増殖細胞

OKT9

オーソ・ダイアグノステ Bヅク・システムズ CD30 Ki4抗原,活性化T細胞, Reed−

rternberg細胞 HRS−4 Immunotech, Marseille,erance

CD16 FcγレセプターIII,穎粒球, NK

ラ胞,マクロファージ

Leu11

OKNK

Becton・DickinsonIーソ・ダイアグノステ Cック・システムズ

CD56 MCAM−1, NK細胞,一部T細 E,神経細胞

Leu19 Becton−Dickinson

Fas apoptosisを誘導する抗原 抗Fas抗体 MBL,名古屋.

MDR1

P糖蛋白(P170)

MRK16

コスモ・バイオ,東京 CD21 C3d, EBVレセプター,成熟B ラ胞 CR2 Becton−Dickinson CD23 FcεレセプターII,活性化B細

E

Leu20 Becton−Dickinson

(3)

た後,10%ウシ胎児血清(FCS)の入った

PRMI1640に細胞を1×106個浮遊させた.抗体の

非特異的結合を抑制する目的でヒトガンマグロブ リン液を10分間氷中で反応させたのち,表1に示

すような抗CD21抗体,抗CD23抗体,抗CD30抗

体,抗CD71抗体,抗Fas抗体,抗P糖蛋白抗体

をそれぞれ5μ1ずつ加え,氷中で30分反応させた.

次に5%FCS添加RPMI1640で2回洗浄後,

Huorescein isothiocyanate(FITC)標識抗マウス 免疫グロブリン抗体(GAM−FITC, Coulter Co., Hialeah, FL, U.S.A.)を10μ1加え,30分紅中で 反応させた.抗CD16抗体は,ヒトガンマグロブリ ンでブロックせず,その後は他の抗体と同様に細 胞と反応させ,FITCで標識した.2回洗浄後,純

化マウスガンマグロブリン(Organon Teknika

Corp., West Chester, PA, U.S.A.)を5μ1ずつ 加え,10分間氷中で反応させた.さらに表1に示 すperidinin・chlorophyll−protein(perCP)標識抗 CD3抗体, phycoerythrin(PE)標識抗CD56抗体

を10μ1ずつ加え氷中で30分反応させた後,PBS

で洗浄した.なお,対照としては,特異性のない

モノクローナル抗体UPC10(Sigma Chemical

Co., St. Louis, MO, U.S.A.)を加えたのち, FITC 標識2次抗体,perCP標識抗CD3抗体, PE標識抗 CD56抗体を反応させたものを用いた. 表2 1L2培養前,培養後の3名のNK細胞の表面  マーカー 培養前 3日培養 7日培養 1.HLA・DR 33±13 41±20 53±23 2.CD71 21±1 40±15 77±6 3.CD30 3±2 10±7 35±25 4.Leu11 80±8 14±4 48±17

5.OKNK

90±5 48±3 76±19 6.CD56 64±12 53±1 74±8 7.Fas 7±8 46±19 84±15 8.MDR1 20±16 25±4 42±11 g.CD21 33±13 47±22 59±13 10.CD23 3±2 10±2 8±5 数値は,陽性細胞の平均±S.Dの%.

HLA−DR

CD71

CD30

fresh 葛i 24

3days

7days

お 程 ≡ 藩 : 三 器 」 ↑

読 …叫}「一

下:

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fluorescence intensity(1Qg scale)       図2 活性化抗原の発現の変化 実線が抗体添加時,点線は対照,右上の数字は陽性細胞の%.

(4)

 4.フローサイトメーターによる解析  上記の方法で染色した細胞をEPICS Pro丘le 2 (Coulter Co.)で測定し, CD3−CD56+の細胞群に ゲートをかけ,CD3−CD56+NK細胞に占める各抗 原陽性細胞の割合をフローサイトメーター解析ソ フトImmuno 4(Coulter Co.)を用いて算出した.          結  果

 表2にIL2で培養前後のNK細胞の表面マー

カーの変化を示す.数字は3名のドナーの陽性細 胞の割合の平均±S.D.である.また,代表的な例の 培養前後のフローサイトメーターでの解析の結果 を図2∼5に示す.  HLA・DR, CD71, CD30等の活性化抗原は培養

するにつれ増加しているのがわかる(図2).

Leu11,0KNKで認識されるCD16抗原は培養前,

強陽性であったが,3日培養でその陽性率はさが り,その後,7日培養で再び上昇した.CD56抗原 は強度を増した(図3).Fas抗原は培養するにつ

れ,陽性率が増加した.MDR1の発現は培養前よ

り弱陽性であったが,培養により増加した(図4). CD21抗原は培養により増加し, CD23は陰性のま まであった(図5).  なおIL・2を加えないで3∼7日間培養すると,

死細胞が増えて非特異的な蛍光を発するように

なったため,評価はできなかった.

         考 察

 活性化抗原であるHLA・DR, CD71, CD30は,

NK細胞ではIL−2による活性化により上昇する

ことが示された,HLA−DR,およびCD71は,活性

化されたNK細胞に発現することがすでに知ら

れている9).CD30はKi・1抗原と呼ばれ, Hodgkin 病のReed−Sternberg細胞に特異的に発現すると 最初に報告されたマーカーであるが,その後,正

常リンパ組織,活性化T・B細胞,一部のT・B細

胞型リンパ腫にも発現することが報告された10).

しかし,NK細胞でのCD30抗原の発現に関して

は,これまでは報告されていない.今回の実験で

は,IL・2で活性化すると正常NK細胞にもCD30

が発現することがわかった.

 NK細胞を同定する際のマーカーとしては,主

Leu11

OKNK

CD56

fresh 3 覧 与i ㌧.,.副帥畔幡

3days

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7days

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fluorescence intensity(log scale)      図3 NK細胞関連抗原の発現の変化 実線が抗体添加時,点線は対照,右上の数字は陽性細胞の%. 1沁卿

A 70

(5)

Fas

MDR1

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3days

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5     →     flUOresCenCe intenslty(IOg scale)        図4 Fas, MDR1の発現の変化 実線が抗体添加時,点線は対照,右上の数字は陽性細胞の%.

CD21

CD23

fresh 41

3days

雪 彗 ξ 8 .塁 董 9

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7days

i「:}郵

=i.’  ・ 7 醍・.肌 …民

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『蝿{L唖_一鴫     →     fiuorescence lntensity(【og sca【e)      図5 CD21, CD23抗原の発現の変化 実線が抗体添加時,点線は対照,右上の数字は陽性細胞の%. にCD16とCD56が用いられる.Naglerら3)の報告 によると,NK細胞は,①CD16negCD56b「igit,② CD16dimCD56b「19it,③CD16bnghtCD56dimの3群に 分かれ,大部分はCD16b「ightCD56dlmに属する.NK

(6)

細胞は①→②→③へと分化し,NK活性も強く

なってゆくと考え.られている.胎児肝,騰帯血,

成人末梢血の比較研究でもNK細胞は上記の①

→②→③の順に分化するのではないかと考えられ ている4>5).

 しかし,われわれが経験した鼻のNK細胞リン

パ腫は,非常に強いNK活性を有したにもかかわ

らずCD16dimCD56bnghtであった.このことより①

→②→③と分化,成熟したNK細胞は,活性化さ

れると再びCD16dimCD56b「ightに戻るのではない かと考えた.今回の実験で,異なるエピトープを

認識すると考えられるLeu11とOKNKの2種類

の抗CD16抗体でその発現を観察したところ,両

者とも培養前強陽性であったものが,3日培養で

は特にLeu11の陽性率がより強く低下することが

確かめられた.CD16抗原は,通常Leu11抗体によ

り解析されることが多く,OKNKを用いた報告は

まれである.今回の成績から,IL2活性化NK細

胞では,CD16抗原は減少しCD56抗原は増強する

ため,幼若なNK細胞(サブセット②)と同様の

マーカーを有する細胞に変化した.すなわち②の

サブセットのマーカーのNK細胞が活性化に

よっても得られることが明らかになった.なお,

Leu11とOKNKのモノクローナル抗体が認識す

るCD16抗原の発現様式がなぜ異なっているのか

は解っていない.

 リンパ球のapoptosisを誘導する細胞表面膜分

子として最近注目されているのがFas抗原であ

る1D. Miyawakiら6)はヒト末梢血リンパ球におけ

るFas抗原の発現を観察し, CD16+NK細胞に

Fas抗原は発現していないと報告した.われわれ

の実験でも培養前にはFas抗原はほとんど陰性

であったが,活性化するにつれて陽性となること がわかった.

 MDR1の発現は,培養前より弱陽性で,培養に

より増加した.正常NK細胞にMDR1が発現して

いるという報告があるが12),活性化による変化に

ついては報告されていない.活性化NK細胞由来

の腫瘍が種々の化学療法に抵抗性であるのは13),

MDR1の発現が関係している可能性が,考えられ

る.

 EBVは, B細胞やT細胞に感染してバーキッ

トリンパ腫などの腫瘍を引き起こすことが知られ ている14).CD21抗原は, EBVのレセプターであ り15),B細胞やT細胞に発現していることが知ら

れている.EBVはおそらくCD21を介してB細胞

やT細胞に感染し,腫瘍化するものと考えられて

いる.一方,CD23は, IgEのFc部分に対するレ

セプターでEBV感染やサイトカイン刺激により

活性化されたB細胞で強く発現すると言われて

いる16).今回の実験で,IL−2による培養によりNK

細胞のCD21抗原は増強したが, B細胞関連の

CD23抗原は陰性のままであった.最近, NK細胞 白血病17)や鼻腔原発の悪性リンパ腫18)もまた,

EBVが原因である可能性が指摘されている.われ

われが経験した鼻腔原発のNK細胞リンパ腫に

も,EBVが感染していた.今回の実験で, NK細

胞にCD21抗原が発現していることが明らかに

なったことから,NK細胞でも,おそらくCD21を

介してEBVが感染し腫瘍化を起こすものと思わ

れる.CD21陽性NK細胞に実際にEBVが感染す

るか否かについては,今後in vitroの研究で明ら かにされる必要がある.          結  語

 NK細胞を純化しIL2で培養すると, HLA−DR

やCD71などの活性化抗原の発現の増強に伴い,

CD21, CD30, CD56, Fas, MDR1抗原の発現も

増強または陽性化することがわかった.一方,

CD16抗原は,活性化により発現が低下した.この ことから,CD16dimCD56b「[9htの表面マーカーを有

するNK細胞サブセットは,これまでに報告され

ているような幼若NK細胞のみならず活性化

NK細胞にも見出されることが明らかになった.

NK細胞の腫蕩化にEBVが関与している可能性

が指摘されているが,今回の研究でNK細胞にも

EBVのレセプターであるCD21抗原が発現して

いることが明らかになった.EBVは, CD21抗原を

介してNK細胞に感染しこれを腫瘍化する可能

性が考えられた. 稿を終えるにあたり,御指導,御校閲を賜わりまし た溝口秀昭教授,押味和夫教授,金子多香子先生に深

(7)

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