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大 澤 絢 子 博士(学術)

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Academic year: 2021

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氏 名

学 位 の 種 類 学 位 記 の 番 号 学 位 授 与 年 月 日 学 位 授 与 の 条 件 学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員

大 澤 絢 子 博士(学術)

乙第 63 号

2014(平成 26)年 7 月 24 日 学位規則第4条第2項該当

食品・微生物に含有される天然抗酸化カロテノイドに関する研究

主査 新藤一敏 (食物・栄養学専攻 教授)

副査 大越ひろ (食物・栄養学専攻 教授)

副査 川澄俊之 (食物・栄養学専攻 教授)

副査 藤井惠子 (食物・栄養学専攻 准教授)

副査 作田庄平 (東京大学大学院准教授)

論 文 の 内 容 の 要 旨

カロテノイドは、微生物、藻類、植物、海洋動物等、自然界に広く分布する赤~黄色の脂溶性色素の総 称で、現在、様々な食品(野菜類、果実類、藻類、一部の魚介類等)に含まれる有用機能性成分として大 きな注目を集めている。近年の研究では、既知機能性カロテノイドが生活習慣病リスク低減作用や眼病予 防作用等、様々な有用な生理作用を示すことが明らかとなっており、そのような有用な既知機能性カロテ ノイドを食事から摂取することはヒトの健康の維持増進をはかる上で重要であると考えられる。しかしな がら、含有される既知機能性カロテノイドの種類、量が明らかとなっていない食品は未だ多く、それらに 含有される既知機能性カロテノイドの組成と量を明らかとする研究には、自然界におけるカロテノイドの 分布を知るという基礎科学的な価値のみでなく、機能性カロテノイド供給源としての食品の有用性を明ら かとする上でも大きな意義がある。

一方で、新規或いは希少な構造を有するカロテノイドを探索する研究も極めて重要である。それらから は既知機能性カロテノイドには無い、或いは既知機能性カロテノイドより優れた有用作用が見出される可 能性があり、将来においてヒトの健康に寄与する新たな情報を入手できる可能性がある。

そこで本研究では、上記2つの研究「含有されるカロテノイドの種類、量が未知である食材について含 有されるカロテノイドを詳細に分析する研究」(研究A)、「大量調製可能な新規または希少有用カロテノイ ドを探索する研究」(研究B)を並行して実施し、ヒトの健康の維持増進に寄与し得るカロテノイド含有食 材に関する新知見を収集すること、様々な可能性を有する新規・希少カロテノイドを見出すことを目指し た。

本論文は全3章(研究A-第1章、研究B-第2・3章)から構成される。

研究A:含有されるカロテノイドの種類、量が未知である食材について含有されるカロテノイドを詳細に

(2)

- 2 -

分析する研究 (第1章)

本研究では、未だ含有されるカロテノイドの種類、量が判明していない4種の食用十脚目甲殻類「タラ バガニ」、「ヤシガニ」、「オオコシオリエビ」、「アナジャコ」について含有されるカロテノイドを初めて詳 細に分析し、それぞれにどのようなカロテノイドが含有されているかを明らかとした上で、生活環境や餌 がこれら十脚目甲殻類に含有されるカロテノイドに与える影響について総合的に検討した。本研究の結果、

これら4種の十脚目甲殻類に含有されるカロテノイドは、生活環境や餌にかかわらず、その 97%以上が astaxanthin およびその脂肪酸エステル体(astaxanthin monoester、astaxanthin diester)であることを、

astaxanthin の光学異性体存在比率、astaxanthin 脂肪酸エステル類の構成脂肪酸組成まで含めて、初めて 明らかとすることができた。

研究B:大量調製可能な新規または希少有用カロテノイドを探索する研究 (第2章・第3章)

一般にバクテリアは大量培養が比較的容易であることが多く、見出したカロテノイドをより簡便に大量 調製できる可能性が高い。また、種が非常に多様であり、特有のカロテノイド生合成能を有する場合も多 いことから、様々な新規、希少構造を有するカロテノイドを生産する可能性がある。そこで研究Bでは、

国内外の共同研究者が海洋或いは土壌より分離したカロテノイド生産菌のうち、その抽出エキスが優れた 抗酸化活性{一重項酸素(1O2)消去活性}を有し、かつ生産するカロテノイドの種類が同定不能であるもの を入手し(=新規あるいは希少カロテノイドである確率が高い)、含有されるカロテノイドの単離精製、構 造解析を実施した。また、単離したカロテノイドについては1O2消去活性を評価し、その抗酸化活性を検討 した。

第2章では、黄色コロニーを形成する耐塩性バクテリア

Micrococcus yunnanensis

が産生するカロテノ イドを単離、構造解析し、それらを希少 C50カロテノイドである sarcinaxanthin 及びその配糖体

(sarcinaxanthin monoglucoside、sarcinaxanthin diglucoside)であると明らかにした。本研究ではMS, NMR を用いた詳細な構造解析を通して、sarcinaxanthin 及びその配糖体の FAB MS/MS 測定データ及び sarcinaxanthin 配糖体アセチル化物の1H NMR の完全な帰属を初めて報告することができた。さらに、

sarcinaxanthin 及びその配糖体が優れた1O2消去活性を有することについても初めて明らかにすることが できた。

第3章の研究では、オレンジ色コロニーを形成するグラム陽性放線菌

Rhodococcus sp.

CIP から、優れた

1O2消去活性を有する新規カロテノイド OH-chlorobactene glucoside hexadecanoate、及び希少カロテノイ ド OH-chlorobactene glucoside、OH--carotene glucoside、4-keto OH--carotene glucoside hexadecanoate を単離精製、構造解析した。OH-chlorobactene をアグリコンとして有するカロテノイドが土壌から分離さ れた

Rhodococcus

属から見出されるのは本研究が初めてである。さらに、これらのカロテノイドが優れた

1O2消去活性(IC50 6-14 M)を有することも、本研究により初めて明らかとなった。

(3)

- 3 -

論文審査結果の要旨

カロテノイドは微生物・藻類・植物・海洋動物等自然界に広く分布する赤~黄色の脂溶性色素の総 称で、現在、様々な食品(野菜類・果実類・藻類・一部の魚介類等)に含まれる有用機能性成分とし て大きな注目を集めている。近年の研究では、既知機能性カロテノイドが生活習慣病リスク低減作用 や眼病予防作用等、様々な有用な生理作用を示すことが明らかとなっており、そのような有用な既知 機能性カロテノイドを食事から摂取することはヒトの健康の維持増進をはかる上で重要であると考え られる。しかしながら、含有される既知機能性カロテノイドの種類、量が明らかとなっていない食品 は未だ多く、それらに含有される既知機能性カロテノイドの組成と量を明らかとする研究には、自然 界におけるカロテノイドの分布を知るという基礎科学的な価値のみでなく、機能性カロテノイド供給 源としての食品の有用性を明らかとする上でも大きな意義がある。

一方で、新規或いは希少な構造を有するカロテノイドを探索する研究も極めて重要である。それら からは既知機能性カロテノイドには無い、あるいは既知機能性カロテノイドより優れたカロテノイド の有用作用が見出される可能性があり、将来においてヒトの健康に寄与する新たな情報を入手できる 可能性がある。

そこで本研究では、これら 2 つの研究目的を対象として「含有されるカロテノイドの種類、量が未 知である食材について含有されるカロテノイドを詳細に分析する研究」 (研究 A) 、 「大量調製可能な新 規または希少有用カロテノイドを探索する研究」 (研究 B)を並行して実施し、ヒトの健康の維持増進 に寄与しうるカロテノイド含有食材に関する新知見を収集すること、様々な可能性を有する新規・希 少カロテノイドを見出すことを目指している。博士論文としては上記研究 A, B を 3 章構成でまとめてお り、以下に各章の内容について概略を列記する。

第 1 章では、未だ含有されるカロテノイドの種類、量が判明していない 4 種の食用十脚目甲殻類「ヤ シガニ」、 「タラバガニ」 、 「オオコシオリエビ」 、 「アナジャコ」について含有されるカロテノイドを初 めて詳細に分析し、それぞれにどのようなカロテノイドが含有されているかを明らかとした上で、生 活環境や餌がこれら十脚目甲殻類に含有されるカロテノイドに与える影響について総合的に検討した

(研究 A) 。本研究の結果、これら4種の十脚目甲殻類に含有されるカロテノイドは、生活環境や餌に かかわらず、その 97%以上が astaxanthin およびその脂肪酸エステル体(monoacylastaxanthin、

diacylastaxanthin)であることを、astaxanthin の光学異性体存在比率、astaxanthin エステル類の 構成脂肪酸組成まで含めて、初めて明らかとすることができた。

一般にバクテリアは大量培養が比較的容易であることが多く、見出したカロテノイドをより簡便に大量調製 できる可能性が高い。また、種が非常に多様であり、特有のカロテノイド生合成能を有する場合も多いことか ら、様々な新規、希少構造を有するカロテノイドを生産する可能性がある。そこで研究 B として、国内外の共 同研究者が海洋あるいは土壌より分離したカロテノイド生産菌のうち、その抽出エキスが優れた抗酸化活性

{一重項酸素(

1

O

2

)消去活性}を有し、かつ生産するカロテノイドの種類が同定不能であるものを入手し(=新

規或いは希少カロテノイドの確率が高い)、含有されるカロテノイドの単離精製、構造解析を実施した。また、

単離したカロテノイドについては

1

O

2

消去活性を評価し、その抗酸化活性を検討した。

(4)

- 4 -

第 2 章では、黄色コロニーを形成する耐塩性バクテリア Micrococcus yunnanensis が産生するカロテ ノイドを単離、構造解析し、それらを希少 C

50

カロテノイドである sarcinaxanthin 及びその配糖体

(sarcinaxanthin monoglucoside、 sarcinaxanthin diglucoside)であると明らかにした。 本研究では MS, NMR を用いた詳細な構造解析を通して、sarcinaxanthin 配糖体アセチル化物の

1

H NMR の完全な 帰属および FAB MS/MS 測定データを初めて報告することができた。さらに、sarcinaxanthin およびその 配糖体が優れた

1

O

2

消去活性を有することについても初めて明らかにすることができた。

第 3 章の研究では、オレンジ色コロニーを形成するグラム陽性放線菌 Rhodococcus sp. CIP から、優れ た

1

O

2

消去活性を有する新規カロテノイド OH-chlorobactene glucoside hexadecanoate、および希少 カロテノイド OH-chlorobactene glucoside、OH--carotene glucoside、4-keto OH--carotene glucoside hexadecanoate を単離精製、構造解析した。 OH-chlorobactene をアグリコンとして有する カロテノイドが土壌から分離された Rhodococcus 属から見出されるのは、本研究が初めてである。さ らに、これらのカロテノイドが優れた

1

O

2

消去活性(IC

50

6-14 M)を有することも、本研究により 初めて明らかとなった。

上記第 1 章の研究の結果、これまで我々が食材として摂取していながら含有されるカロテノイドの 種類・量が不明であった 4 種の十脚目甲殻類について、それらを初めて明らかにすることができた。

本結果はどのような生物種にどのようなカロテノイドが含有されているかを明らかにするという基礎 科学的な知見集積の一環として重要であるばかりでなく、我々がこれら十脚目甲殻類を摂取するとき に、どのようなカロテノイドをどの程度の量摂取しているかを理解する上でも重要な新知見が得られ ている。

第 2, 3 章の研究の結果としては、我々は数種の新規・希少カロテノイドの存在、調製方法について の新しい知見を明らかにすることができた。これらの結果も前述した基礎科学的知見として重要であ るばかりでなく、今後これらのカロテノイドの生理活性、安全性に関する研究をさらに進展させるこ とにより、我々の生活に有用な新たな知見が得られる可能性を開いたという意味でも大変重要な研究 であると考えられる。

以上を総合すると、本研究は研究目的の重要性・独創性、研究手法の高度性・妥当性、研究結果の

信頼性から博士論文として十分な内容となっていると判断したことを、ここに報告する。

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