国際医療福祉大学審査学位論文(博士)
大学院医療福祉学研究科博士課程
慢性腰痛を有する高齢者への固有感覚に対する
局所振動刺激時の姿勢動揺に関する研究
平成
27 年度
保健医療学専攻・理学療法分野・応用理学療法学領域
学籍番号:
13S3008 氏名:伊藤 忠
研究指導教員:久保 晃 教授
副研究指導教員:柊幸伸 教授
題目 「慢性腰痛を有する高齢者への固有感覚に対する局所振動刺激時の姿勢動揺に関する研究」 著者名 伊藤 忠 要旨 本研究の目的は,慢性腰痛高齢者の局所振動刺激時の体幹筋機能と重心動揺の変化との関連性を明らか にすることである.対象は慢性腰痛高齢者28 名とした.振動デバイスを用いて,左右の腓腹筋および傍 脊柱筋に振動刺激を与え,Wii board を用いて姿勢動揺を測定し,周波数は 30,60,240Hz とした.各 CoP の比較と各 CoP と VAS,背筋力および傍脊柱筋断面積との相関を検証した.結果は,傍脊柱筋に与 えた240Hz の CoP が腓腹筋に与えた 240Hz の CoP 以外と有意差が認められた.VAS と傍脊柱筋の 60Hz の CoP,背筋力と傍脊柱筋の 240Hz の CoP との間に相関が認められた.慢性腰痛高齢者の姿勢不 安定性は,体幹のファーターパチニ小体の数の減少と背筋力低下が関係していることが示唆された.一 方,腰痛増悪が体幹の筋紡錘の反応低下と関連していることが示された.このことから,慢性腰痛高齢者 は疼痛コントロールと背筋力向上と同時に体幹の固有感覚に対して多様な固有感覚刺激による評価を実施 する必要がある. キーワード 慢性腰痛 高齢者 固有感覚 姿勢動揺 局所振動刺激
Title
Study of Postural sway at Local Vibratory Stimulation for Proprioceptive Sensation to Older Persons with Chronic Low Back Pain.
Author Tadashi ITO Abstract
The purpose of this study was to examine the relationship between the trunk muscle function and change of postural sway during local vibratory stimulation of older persons with chronic low back pain (CLBP). The subjects were 28 older persons with CLBP. We measured postural sway using a Wii board while vibratory stimulations of 30, 60, or 240 Hz were applied to the subjects' paraspinal or gastrocnemius muscles. Postural sway were comparisoned by each CoP. Correlation between each CoP were evaluated by VAS, back strength and paraspinal muscle cross-sectional area. Paraspinal muscle 240Hz CoP showed significant differences in any other gastrocnemius muscles 240Hz CoP. A correlation was found between paraspinal muscle 240Hz CoP and back strength. Also, correlation was found between paraspinal muscle 60Hz CoP and VAS. These data suggest the possibility that reduced posture instability in older persons with CLBP results from a reduction in the number of corpuscle of Vater-Pacini in the trunk and back strength decline. Also, Muscle spindle response decline in the trunk was associated with exacerbation of LBP. At the same time as providing pain control and back strength improvement, a variety proprioception stimulation assessment for proprioception is also needed for older persons with CLBP.
Keyword
目次
序論 ... 1 1-1 緒言 ... 1 1-2 腰痛患者における固有感覚低下に伴う姿勢制御 ... 3 1-3 慢性腰痛を有する高齢者への固有感覚低下に着目した姿勢動揺の評価の意義 ... 5 1-4 高齢者の腰部疾患における腰痛の発症因子と姿勢調節障害 ... 5 1-5 椎間関節に関する固有受容器と傍脊柱筋に関する固有受容器の役割 ... 6 1-6 本研究の仮説 ... 7 1-7 目的 ... 8 1-8 倫理的配慮 ... 9 第1 章 ... 10 慢性腰痛を有する高齢者への局所振動刺激時の姿勢動揺 ... 10 2-1 はじめに ... 10 2-2 対象者 ... 12 2-3 除外基準 ... 14 2-4 測定方法 ... 14 2-5 固有感覚低下による姿勢制御の定義 ... 18 2-6 体幹機能と腰痛の評価 ... 20 2-7 統計処理 ... 20 2-8 結果 ... 20 2-9 考察 ... 29 第2 章 ... 35 先行研究と比較:固有受容加重比率と傍脊柱筋断面積との関連 ... 35 3-1 目的 ... 35 3-2 測定方法 ... 36 3-3 統計処理 ... 38 3-4 先行研究と比較した結果 ... 38 3-5 考察 ... 42 第3 章 総括 ... 44 第4 章 結論 ... 47 4-1 本論文の有用性 ... 47 4-2 本論文の限界 ... 48 謝辞 ... 50 引用文献 ... 51 3 年間の研究業績 ... 60 本論文に関連する研究業績 ... 60 その他研究業績 ... 62 受賞歴 ... 681
序論
1-1 緒言 平成 22 年度の厚生労働省による国民生活基礎調査の腰痛に関する結果から 1),症状別 において男性では第 1 位,女性では第 2 位を占めており,我が国の腰痛発生率は極めて高 く加齢に伴い上昇していくことが示されている(図 1). 図 1.性別にみた有訴者率の上位5症状(複数回答)平成 22 年度国民生活基礎調査, 2010(引用改変) 先行研究によれば,腰痛患者では体幹筋収縮反応速度が遅れると報告されている 2).一 方では,腰部疾患に罹患した患者は身体動揺が大きくなり,不意な外力や状況変化への対 応が困難となり腰椎部への負担が増大することによって,疾患の増悪につながると指摘し ている 3).腰痛を有する高齢者における転倒とバランス機能の改善は古くから問題視され ており,解決策としてバランス運動の重要性が指摘されてきた 4,5).しかしながら,腰痛疾2 患を有する高齢者においてはコンプライアンスや危険性の問題などから広く普及している とはいえない. 過去の研究によれば,腰痛患者では体幹筋における固有感覚の低下が姿勢の不安定性を 招くと指摘されている 6).人間は姿勢を保つために,運動機能および感覚機能を用いてい る.運動機能としては,筋骨格系,感覚機能としては,視覚,前庭覚,固有感覚などがあ る(図 2). 図 2.人間が姿勢を保つための要素 姿勢調節障害の原因として,視力や筋力低下,局所筋群や腱に存在する固有受容器より発 せられた固有感覚の鈍麻などが挙げられる.なかでも,局所筋群や腱に存在する固有受容 器より発せられた固有感覚の低下が,姿勢調節障害の原因となり,転倒リスクを著しく上
3 昇させると指摘されている 7).また,腰痛を有する高齢者の場合も,固有感覚低下による 姿勢不安定性が報告されており 8-10),固有感覚入力による姿勢動揺の評価は重要な課題で あると思われる.このように,腰痛患者の転倒の主な原因の 1 つは,固有感覚低下に伴 う姿勢不安定性であることが考えられ,転倒事故防止のためには,固有感覚入力に伴う姿 勢動揺の評価が必要である. 1-2 腰痛患者における固有感覚低下に伴う姿勢制御 これまで,腰痛を有する者を対象とした研究では,固有感覚低下による姿勢不安定性が 報告されている 8-11).このうち固有感覚は,腰痛患者で悪化するといわれ,関節位置覚・ 運動覚・筋収縮・知覚などを含む姿勢制御において重要な感覚である 11,12).固有感覚を提 供する器官は固有受容器と呼ばれ,筋や腱に多数存在しており,代表的な固有受容器は, マイスネル小体,筋紡錘,ファーターパチニ小体などがある 13).これらの応答周波数は, 固有受容器の種類ごとに異なる.固有受容器は,応答周波数に応じた外部からの振動刺激 に対して高い反応を示すことで知られている 14).一方で,姿勢を安定させるために中枢神 経系は,そのときの条件に応じて選択され,機能的に最も信頼性の高い情報を提供してい る感覚入力(視覚,前庭覚,固有感覚)に焦点を当てるといわれている 15). 腰痛患者の中枢 神経系は,股関節や体幹からの固有感覚のシグナルに頼らず,足関節部の入力シグナルに 頼っているといわれている 16). 一方で,腰痛患者と健常人での比較対照試験においても, 腰痛患者では腰部多裂筋での姿勢制御機能が低下し,腓腹筋優位の反応を示し姿勢が不安 定になることが報告されている 17, 18).このように,腰痛患者の姿勢制御は,固有感覚の入
4 力が中枢神経系に大きく関わっていると思われ,下肢のみならず体幹筋からの固有感覚入 力も姿勢安定性に重要である 19).しかしながら,いずれの研究も,対象としている固有受 容器は筋紡錘であり,固有受容器の応答周波数が多種である以上, 腰痛や姿勢制御を司る 固有受容器が筋紡錘のみとは考えにくい. これらの知見から,腰痛患者は局所筋群に機械的振動刺激を与えられたときの姿勢制御 は,視覚や前庭覚よりも固有感覚に頼っている可能性がある(図 3). 図 3. 傍脊柱筋と腓腹筋に振動刺激を与えた際の姿勢制御
5 1-3 慢性腰痛を有する高齢者への固有感覚低下に着目した姿勢動揺の評価の意義 1-1,1-2 でも述べたように,慢性腰痛を有する高齢者の局所振動刺激に対する姿勢不 安定性は,固有感覚低下による影響が大きいと思われ,局所振動刺激を与えた際の姿勢制 御の方略を検証することは,慢性腰痛を有する高齢者に対する姿勢調節障害の評価の一助 となるかもしれない. これまでの先行研究は,腰痛を有する若年者や腰痛を有する高齢者を対象とした研究が 多く,慢性腰痛を有し腰部疾患に罹患した高齢者を対象とした研究は,ほぼ見当たらな い.このことから,慢性腰痛特有の固有感覚低下による 姿勢不安定性の知見を得ることが できると思われる.そして,傍脊柱筋の固有受容器の感受性低下が,マイスネル小体,筋 紡錘,ファーターパチニ小体のいずれかの固有受容器であることを特定できれば,慢性腰 痛特有の応答周波数帯の機械的振動刺激を与えることで,姿勢不安定性の要因の知見を得 ることができるだろう. 1-4 高齢者の腰部疾患における腰痛の発症因子と姿勢調節障害 人間は他の哺乳類と異なり直立二足歩行をするために,脊柱は3 つの弯曲を伴いなが ら垂直方向に伸びた.最下部の腰椎は前弯を強いられ,これが腰痛を生じる構築上の問題 点とされている 20). 高齢者の腰痛は,腰椎の支持性を維持する椎間板,椎間関節,各種靱帯,脊柱起立筋 の疲労や加齢変化によるものが原因であるといわれている 21).脊柱起立筋の筋持久力は
6 腰痛発生と関連があり,持久性に乏しい場合では腰痛が発症しやすいと報告されている 22,23). 高齢者の腰部疾患の代表である腰部脊柱管狭窄症における腰痛の発現頻度とそのタイ プ別の病態について,詳細に検討されている報告を以下に述べる. 腰部脊柱管狭窄症に おける腰痛は 53%に認められ,そのうち間欠跛行型の腰痛を呈するものが 67.9%であ り,腰痛性間欠跛行では動作時腰痛と比べ,下肢痛と腰痛の左右一致率が高く,多裂筋に おける酸素化が不良であり,神経性の多裂筋障害が腰痛発生に関与している可能性がある と報告されている 24). 腰部脊柱管狭窄症は,脊柱管の狭窄による馬尾神経や神経根の慢性的な圧迫が原因と なって下肢筋力の低下や間欠性跛行が出現し,歩行バランス障害や姿勢調節障害を起こす といわれている 25). 1-5 椎間関節に関する固有受容器と傍脊柱筋に関する固有受容器 の役割 椎間関節の周囲の筋・腱・靱帯には,多くの機械受容器が同定され,関節包の内尾側 部や辺縁部,関節突起への筋付着部に多く分布しているといわれている 26).機械受容器 の中には,位置覚,運動覚などの固有感覚の受容に関与する固有受容器が存在する . 筋や関節の固有受容器(マイスネル小体,筋紡錘,ファーターパチニ小体)からの情報が 中枢に伝達された後に,統合された指令が効果器に送られ,姿勢制御を維持することがで きる.
7 一方で,人間の胎児の傍脊柱筋には,高密度の筋紡錘が存在すると報告されている27, 28).このことから,傍脊柱筋の固有受容器は筋長を制御し,姿勢安定性に重要な役割を 担っていると考えられる. 1-6 本研究の仮説 1-1,1-2,1-4,1-5 の見解から,固有受容器の応答周波数が多種である以上,姿勢 制御を司る主要な固有受容器は筋紡錘のみではないと思われる.以上のことを踏まえ,本 研究では 2 つの仮説を立てた.「局所振動刺激に対する姿勢制御は,傍脊柱筋の固有感覚 低下によって姿勢不安定性を招くが,感受性が低下しやすい固有受容器は筋紡錘のみでは ない可能性がある」を仮説①とした. 次に,「局所振動刺激に対する姿勢制御は,体幹機 能低下や腰痛の訴えが強い者程,マイスネル小体,筋紡錘,ファーターパチニ小体のいず れかの固有受容器による感受性が低下し,姿勢不安定性の因子となる可能性がある」を仮 説②とした.ここで用いる機械的振動刺激は,各固有受容器の応答周波数に応じたものと する. 腰痛と固有感覚との関係の考察を行うことで,各周波数における振動刺激に対する生 体反応の評価から腰痛患者のための固有感覚低下に伴う姿勢動揺 の評価が詳細にできる可 能性がある.
8 1-7 目的 緒言でも述べたように,腰痛患者の転倒に関わる姿勢の不安定性は,固有感覚低下が 1 つの因子となっている.その固有感覚低下を示すものとして,下腿と体幹に対して局所振 動刺激を与えた際に体幹の固有感覚が低下し,下腿優位となる姿勢動揺が報告されている 8-11,16-19). これまで,機械的振動刺激と姿勢動揺の変化との関連性に対する調査研究がさまざま な視点より行われてきた.
評価法としては,足圧中心(Center of Pressure:以下 CoP),総軌跡長,外周面積など
が挙げられるが,機械的振動刺激与えた姿勢動揺の研究で多く用いられている評価法は,
CoP と固有受容加重比率(Relative Proprioceptive Weighting ratio : 以下 RPW)である.
RPW は,固有受容優位の追加情報を得るために用いられている計算式であり,詳細は後 の章で述べることとする. 過去の報告では機械的振動を一定にした研究が多く,多様な固有受容器に対する姿勢 制御については一定の見解を得ていないのが現状である.これらのことから,マイスネル 小体,筋紡錘,ファーターパチニ小体の応答周波数に応じた,局所振動刺激を傍脊柱筋と 腓腹筋に与え,低下しやすい固有受容器を特定することは重要である.さらに傍脊柱筋と 腓腹筋のどちらの固有感覚が低下しやすいのかを検証する必要がある. そこで,本研究の目的は,慢性腰痛を有し腰部脊柱管狭窄症および変形性脊椎症と診 断された高齢者を対象とし,振動装置を使用して,体幹および下腿に固有受容器の応答周
9 波数に応じた局所振動刺激を与え,固有感覚入力における姿勢制御を CoP と RPW の指 標を用いて横断調査によって検証する. 1-8 倫理的配慮 ヘルシンキ宣言に基づいた倫理原則を遵守し,「臨床研究に関する倫理指針(厚生労働 省告示)」に従って実施した.また,国立長寿医療研究センター倫理・利益相反委員会, 国際医療福祉大学倫理審査委員会(承認番号 14-Ig-51)の承認を受けた.
10
第
1 章
慢性腰痛を有する高齢者への局所振動刺激時の姿勢動揺
2-1 はじめに 固有感覚は姿勢制御にとって重要な感覚であるが, 近年腰痛患者では体幹における固 有感覚の低下から下腿優位での姿勢制御となることが示されている 16-19,29).また,腰痛 患者における体幹の筋紡錘の機能低下が報告されている 16,17,30).一方で,腰痛患者は固 有感覚の低下から姿勢が不安定となり,腰痛との関連性があるとも報告されている 31, 32).このことから,腰痛を伴う高齢者では体幹と下肢での固有感覚の相違が生じているこ とが考えられる.さらに,高齢者が慢性腰痛を有し腰部疾患に罹患していた場合,慢性腰 痛の影響から体幹機能と体幹の固有感覚が低下して,姿勢調節機能を著しく低下させる可 能性がある. 本研究の予備実験として,固有感覚が低下している可能性があり,腰部疾患に罹患した 後期高齢者を対象とし,転倒経験者と未経験者に分けて筋紡錘への局所振動刺激時の重心 動揺と転倒リスクとの関係性を検証した.その結果,転倒経験者は未経験者よりも下腿優 位の姿勢制御を示し,転倒スコアとの正の相関が認められた 33).したがって,腰部疾患 に罹患した高齢者は,体幹の固有感覚低下が姿勢調節障害を起こす可能性が高いことが考 えられる. 緒言 1-2 でも述べたように,固有感覚を提供する器官は固有受容器と呼ばれ,筋や腱に11 多数存在している.固有受容器は,運動および姿勢の変化や外部接触などの圧迫などで起 こる,皮膚,筋腱,関節の変化を感受する細胞である. これらの代表的な固有受容器は, マイスネル小体,筋紡錘,ファーターパチニ小体がある 13).例えば,マイスネル小体は 皮膚の触知を感受し,筋紡錘は筋の長さとその伸長速度を感受し,ファーターパチニ小体 は皮膚への振動を感受する.さらに,それぞれの受容器が応答周波数を持つ.これらのこ とを詳細に述べると,マイスネル小体は,毛のない皮膚,手掌や足の裏などのコラーゲン で構成される皮膚上にみられる.マイスネル小体は,表皮下付近に位置し,表皮の組織に 結合され,振動刺激の周波数範囲 16~31.5Hz に反応すると考えられている 34).筋紡錘 は,筋の長さと収縮速度を感受し,その筋収縮の程度は活動している運動単位の発射頻度 の単位数による.さらに,筋紡錘は筋を支配する感覚神経の 1 つであり,筋紡錘に存在す る第 1 次終末を支配するのは GIa 線維である.筋を強制的に振動させた場合,この GIa 線 維は非常に敏感に反応し,高頻度発射をおこし,30 Hz~60Hz まで Gla 線維の発射は増加 するといわれている 35).ファーターパチニ小体は,手掌,足の裏に多く分布し,皮膚だ けでなく関節部分,靭帯などの組織上にもみられる.ファーターパチニ小体は,真皮に位 置し,タマネギ状の薄い層により構成されている. 比較的大きな受容器であり(最大 2mm),大きなものであれば肉眼でみることも可能である.周波数 100Hz~250Hz の振動 刺激に反応すると考えられている 34,36). 姿勢を維持する上で,感覚受容器からの入力の割合は年齢により異なり,健常成人で は閉眼時には動揺の増加は軽微なものであるが,65 歳以上は感覚受容器の入力の割合に 変化が起こり,動揺は増加すると報告されている 8).また,人間の姿勢制御は 20 代~50
12 代が非常に安定しており,65 歳以上から次第に不安定になるとも報告されている 8).一 方で,傍脊柱筋の正確な筋紡錘の入力が腰部の位置制御に重要であるといわれている 37).さらに,腰痛患者は腰部多裂筋での姿勢調節機能が低下し,体幹の筋紡錘に頼ること が困難となり,腓腹筋優位の反応を示し姿勢が不安定になる といわれている 16- 18).ただ し,姿勢制御に大きく関与している固有感覚は,筋紡錘の他に,マイスネル小体,ファー ターパチニ小体などがある.これまで,慢性腰痛を有し腰部疾患に罹患した高齢者での研 究や筋紡錘の振動刺激以外での姿勢制御を評価した研究は多いとはいえない. 慢性腰痛における姿勢調節障害の発生機序は,痛み,協調運動の低下,固有感覚低下 などが挙げられるが,どの固有受容器の感受性低下が姿勢不安定性の要因となるのか詳細 な理由は明白でない. そこで本研究は,特に固有感覚が低下していると思われ,慢性腰痛を有する高齢者を 対象に,応答周波数を変化させて体幹と下腿に機械的振動刺激を与え,低下しやすい固有 感覚を特定し,慢性腰痛特有の姿勢制御の方略を検証する.次に,腰痛,背筋力,傍脊柱 筋断面積が,どの固有受容器(マイスネル小体,筋紡錘,ファーターパチニ小体)の感受性 低下による姿勢制御の方略と関連しているかを検証する. 2-2 対象者 痛みが3 ヶ月以上継続している慢性腰痛を有し,腰部脊柱管狭窄症および変形性脊椎 症と診断され入院中の 65 歳以上の高齢者 28 名(年齢±標準偏差 75.5±5.1 歳,平均身長 152.1±7.4cm,平均体重 56.9±11.6kg,男性 10 名,女性 18 名)を対象とした.
13
慢性腰痛の診断は,脊椎外科専門医が問診し,Roland-Morris Disability Questionnaire(以
下 RDQ)が 1 点以上(図 4),Visual Analogue Scale(以下 VAS)(図 5)が 3 点以上のどちらか
一方でも該当し,痛みが 3 ヶ月以上継続している者を慢性腰痛と診断した.また,対象者
は重心動揺の測定前に 1 分間の閉眼立位保持が可能であることを,医師,理学療法士,実
験補助員らによって確認された.
14 図 5.慢性腰痛の診断と主観的な痛みの評価に使用した VAS の問診票 2-3 除外基準 進行性の重篤な麻痺のため早急に手術が必要な者,疼痛または神経障害により起立保 持不可能および歩行困難な者,重篤な筋疾患を伴う者,意思疎通に難渋し測定が困難な者 は分析対象から除外した. 2-4 測定方法 対象者には,振動偏位固定・周波数可変型の振動デバイスを用いて,左右の腓腹筋およ び傍脊柱筋に対して機械的振動刺激を与えた(図 6).
15 図 6.本研究で使用した偏位・振動デバイス(振動デバイス)装置 振動デバイスの構成は,ノート型パーソナルコンピュータ(株式会社東芝),オーディオ アンプ(アイワ株式会社),ロータリースイッチ,ボイスコイル型振動子で構成されてい る.振動子の振動刺激は前後方向のみであり,振動子の振動刺激が重心動揺計の波形に影 響を与えないことを周波数解析で確認した.また,同時に 2 箇所に対し同一刺激を体表 から触知可能な筋に与えることができるよう製作した.
16
振動刺激の周波数は 30Hz(マイスネル小体),60Hz(筋紡錘),240Hz(ファーターパチニ
小体)とした.振動子部分は,人体に直接ゴムバンドで取り付け,下腿と腹囲の周径から,
振動デバイスの着用バンドの長さを調整し,振動刺激の強さを対象者間で一定となるよう
にした.重心動揺計は, Wii Balance Board(任天堂株式会社)を用いた.
Wii Balance Board は,臨床現場で用いられている専用の重心動揺計と同様に動作原理
に歪みゲージセンサを用いており,その計測結果と高い相関があるとの報告がある 38-41).
Wii Balance Board に Bluetooth 規格で配線接続されたコンピュータで,制作した専用の
ソフトにより,重心動揺計のデータを取得した.このソフトウェアは,CoP の座標(軌跡長) の時系列データを 100Hz のサンプリング周波数で取得可能である.専用のソフトを用い ることで,時系列に連続した計測データを複数区間に分割して解析することができる. 計測データは,測定と,振動刺激の開始と終了を示すフラグが含まれており,振動前, 振動中のデータを連続して計測し,各条件での計測データを分割して解析可能である. 計 測の手順は,振動刺激を腓腹筋と傍脊柱筋に交互に与え,合計 6 セットの計測を行った. 計測条件は閉足,閉眼とした.計測時間は(1 回 30 秒間)を,15 秒ごとの 2 区間に分けて 解析を行った.区間の条件を前半の 15 秒に対して振動刺激なし(Pre),後半の 15 秒に対 して振動刺激あり(During)とし,Pre-During の間で振動刺激を計測した.各計測後に,60 秒間の座位休息を設けた(図 7).
17
図 7.対象者への振動刺激を与える際の測定手順
重心動揺の分析で,振動刺激による 前後方向の動揺(Center of Pressure:以下 CoP)に
おける平均位置の変化量を算出した.この変化量を dy とし,dy = -Y d – -Y pre で求め
た.ここで -Y d は During 間における前後方向(以下 CoPy)の平均位置, -Y pre は Pre
間の CoPy の平均位置を表す.
対象者に振動刺激を与えた際に,dy が正であれば CoP が前方に移動,負であれば後方
18 図 8.CoP 前後偏位:ΔMY ∆𝑴𝒀=𝑴𝒀𝑫𝒖𝒓−𝑴𝒀𝑷𝒓𝒆 2-5 固有感覚低下による姿勢制御の定義 Brumagneら16)は,傍脊柱筋と腓腹筋それぞれに60Hzの機械的振動刺激を与えた結果, 傍脊柱筋では若年者と高齢者のどちらも重心動揺が前方へ推移し,腓腹筋では若年者と高 齢者のどちらもCoP偏位は後方へ推移すると報告している.一方で,体幹と下腿のCoP偏 位は後方へ推移するが,高齢者の推移量は若年者より小さいといった報告もあり8,9),こ れらの見解は未だ一致していないのが現状である. 筋紡錘の場合,機械的振動刺激によって,環らせん終末に変形が起き,受容器電位が 発生し,Ia線維に放電が起こり,脊髄での運動ニューロンが活性化され,下腿および体幹 の姿勢制御は安定する42,43).また,筋紡錘に対する機械的振動刺激は,筋の伸張反射を引 き起こすことが古くからいわれており44-46),CoP偏位は後方へ推移する.マイスネル小体 やファーターパチニ小体の場合も,機械的振動刺激に素早く反応して受容器電位を発生 さ
19 せ,中枢神経系から効果器へ信号が伝わり姿勢安定性を保持し,CoP偏位は筋紡錘と同様 に後方へ推移すると思われる. そこで,先行研究8,9,16)と比較するために,20代の健常若年者10名と65歳以上の高齢者 を対象に,60Hzの振動刺激を筋紡錘に与えた際のCoP偏位を調べる実験を行った.その結 果,健常若年者と高齢者の両群において,傍脊柱筋と腓腹筋のCoPの偏位が後方へ推移す ることが確認できたが,高齢者は傍脊柱筋のCoP偏位の後方推移は僅かであった(図9)47). 先行研究と予備実験の結果を参考に,本研究の対象者の姿勢制御は固有感覚が低下し ていなければ,CoPの偏位が後方へ推移すると定義し,前方へ推移した場合は対応する振 動刺激の固有感覚が低下していると定義した.また,前方にも後方にもほとんど推移しな い場合は,振動刺激を与えられてから対応する固有感覚の反応強度が弱いためどちらにも 推移しないと定義した. 図 9. 60Hz の振動刺激を与えた際の健常若年者と高齢者の下腿(左図)と腰部(右図)の姿 勢動揺の変化(文献 47 引用一部改変)
20 2-6 体幹機能と腰痛の評価
画像による評価として,磁気共鳴画像法(Magnetic Resonanse Imaging:以下 MRI)で
L1/L2 および L4/L5 高位での脊柱起立筋と腰部多裂筋断面積の計測を面積計算ソフトウェ ア(SYNAPSE®,富士フイルムメディカル株式会社)を用いて行った. 筋力評価として,背筋力は端坐位で体幹を30°後方に伸展させ,ハンドヘルドダイナモ メーター(Isoforce GT-300,310,オージー技研株式会社)を使用して等尺性最大筋力を測定 した.痛みの評価には,VAS を用いて主観的な腰痛の程度を測定した. 2-7 統計処理
各CoP の差は,多重比較検定を Bonferroni の補正を用いて実施した.さらに各 CoP
と傍脊柱筋断面積,背筋力,VAS との相関の有無を検証するために Pearson 相関係数を
用いた.解析には IBM SPSS statistics ver. 19(日本アイ・ビー・エム株式会社)を用い有
意水準は 5%とした.
2-8 結果
対象者の基本属性を表1 に示す. Bonferroni の補正による多重比較検定の結果,傍
脊柱筋に240Hz の振動刺激を与えた際の CoP が,腓腹筋に 240Hz の振動刺激を与えた
21
図 10.各周波数による傍脊柱筋と腓腹筋への振動刺激時の姿勢動揺の変化
22
図 11.240Hz(傍脊柱筋)の CoP 偏位と背筋力との相関図
傍脊柱筋に240Hz の振動刺激を与えた際の CoP と背筋力との間で有意な負の相関が
認められた(r=-0.39:p<0.05)(図 11).その他の振動刺激を与えた際の CoP と背筋力との
23
図 12.30Hz(傍脊柱筋)の CoP 偏位と背筋力との相関図
24
図 14.30Hz(腓腹筋)の CoP 偏位と背筋力との相関図
25
図 16.240Hz(腓腹筋)の CoP 偏位と背筋力との相関図
VAS と有意な相関が認められたのは,傍脊柱筋に 60Hz の振動刺激を与えた際の CoP
であった(r=0.43:p<0.05)(図 17).しかしながら,その他の振動刺激を与えた際の CoP
26
図 17.60Hz(傍脊柱筋)の CoP 偏位と VAS との相関図
27
図 19.240Hz(傍脊柱筋)の CoP 偏位と VAS との相関図
28
図 21.60Hz(腓腹筋)の CoP 偏位と VAS との相関図
29 振動刺激を与えた際のすべてのCoP と傍脊柱筋断面積との間に相関は認められなかっ た(表 2). 2-9 考察 機械的振動刺激に対する固有感覚の応答は周波数により異なり,30Hz がマイスネル小 体,60Hz が筋紡錘,240Hz がファーターパチニ小体に応答する 13).結果より,慢性腰 痛を有する高齢者は,傍脊柱筋へ 240Hz の局所振動刺激を与えた際の CoP 偏位は,前方 に推移していくことが認められた.先行研究によれば,固有感覚が低下していない高齢者 の姿勢制御は,全てのケースで CoP 偏位が後方へ推移することが報告されている8,9).一 方,その他の局所振動刺激を与えた際の CoP 偏位は,後方へ推移しており,体幹と下腿
30 のマイスネル小体と筋紡錘,下腿のファーターパチニ小体の姿勢制御は先行研究と同様の 結果であった 8,9).以上のことから,傍脊柱筋に 240Hz の局所振動刺激を与えた際に姿勢 制御が前方推移の方略を示す者は,ファーターパチニ小体の感受性が低下していることが 考えられる.さらに,本研究の結果より,マイスネル小体と筋紡錘よりも,体幹のファー ターパチニ小体の機械的振動刺激に対する感受性が低下していると思われる.また,体幹 のファーターパチニ小体の感受性が低下している者程,背筋力が低下していることが示さ れた. 腰部疾患に罹患した高齢者の固有感覚は,体幹の筋紡錘の感受性が加齢に伴い低下し, 下腿優位となることが考えられるが 33),本研究では体幹の筋紡錘の感受性は特に低下し ているような傾向は認められなかった. このことから,体幹での高周波数(ファーターパチニ小体)に対する感受性が低下してい る場合,代償的に傍脊柱筋の低周波数(マイスネル小体および筋紡錘)に対する感受性が優 位となり,体幹の姿勢制御の安定性を保持している可能性が高いと考えられる.Frost ら 48)は,神経根障害を有する慢性腰痛の若年患者は,足底面の高周波数の振動刺激に対す る反応が低下すると報告している.一方で,多裂筋の一部の筋線維が椎間関節の関節包に 付着し,ファーターパチニ小体を保護しているとの報告もある 49,50). 本研究の対象者の場合,ファーターパチニ小体を保護している多裂筋の一部の筋線維 は,機械的振動刺激に対する感受性が低下していることが考えられ,さらに背筋力低下に 伴い姿勢制御が前方に推移している可能性が示唆される.しかしながら,体幹に 240Hz の局所振動刺激を与えた際の CoP と L1/L2 および L4/L5 多裂筋断面積との間には有意な
31 相関は認められなかった.これらの理由は,多裂筋断面積の萎縮に伴う背筋力低下より も,多裂筋の一部を含めた傍脊柱筋の筋出力低下により皮膚の張力低下が生じ,表在感覚 受容器の閾値が低下したことにより 51),ファーターパチニ小体の発火が小さくなったた めではないかと考えられる.しかしながら,これらの詳細な理由は不明であり,今後更な る検証が必要だろう. したがって,慢性腰痛を有する腰部脊柱管狭窄症および変形性脊椎症と診断された 高 齢者は,体幹のファーターパチニ小体の感受性低下と背筋出力低下が生じることによっ て,体幹の固有感覚に頼ることが上手く行えず,体幹の姿勢不安定性を招き姿勢制御が前 方推移していくことが推察される. 振動覚などの固有感覚は加齢に伴い低下することで知られている52-54).このことよ り,慢性腰痛を有し腰部脊柱管狭窄症や変形性脊椎症と診断された 高齢者は,ファーター パチニ小体の受容器の感受性が低下することで,末梢の受容器を支配している感覚線維も 減少するのではないかと考えられる.これらの理由から,体幹の末梢神経障害によってフ ァーターパチニ小体の感受性が低下し,局所振動刺激に応じた体幹の姿勢調節が困難にな っていることが示唆される 55). 一方,60Hz の機械的振動刺激に対する体幹の筋紡錘の感受性が低下している者程,主 観的な痛みが増悪していることが示された.これは,慢性腰痛と診断され VAS が高値で ある高齢者は,体幹の筋紡錘の感受性が低下しやすく姿勢制御が不安定になりやすいこと を意味している. 過去の研究では,筋疲労が腰痛患者の固有感覚を低下させると報告している56-58).立
32 位姿勢を保持する場合,上位腰椎傍脊柱部の筋群に疲労をきたしやすく,疼痛が誘発され やすいとの報告もある 59).また,脊椎に変形増悪因子がある場合,姿勢を保つために背 筋が持続的な活動をしなければならず,筋疲労性の腰痛が出現しやすくなるともいわれて いる 60). これまでの研究で,固有感覚に関係する受容器は多く知られており ,皮膚受容器とと もに筋紡錘が中心的な役割を担っていると報告されている 61,62).筋疲労は関節を不安定 にさせ,筋紡錘の感受性低下を招くとも報告されており 63),中心的な役割を担うことが できないことが示唆される. このことから,慢性腰痛を有した腰部脊柱管狭窄症および変形性脊椎症と診断された 高齢者は,同じ姿勢を維持することにより筋疲労をきたし,脊椎の不安定性が惹起された ことによって主観的な痛みの増悪だけでなく,結果として下腿よりも体幹の筋紡錘の感受 性低下による姿勢不安定性が生じると思われる.また,腰痛に伴う筋の過緊張による負荷 の影響により,筋紡錘からの Ia 求心性神経活動の低下と筋緊張低下が体幹の姿勢不安定 性に繋がるのかもしれない. これらの改善には,疼痛コントロールと同時に筋紡錘を賦活させるための 機能向上プ ログラムを立案していくことが重要だろう. 運動覚や振動覚は,加齢に伴い低下し64,65),また固有感覚の低下は高齢者の姿勢の不 安定性や転倒発生リスクに関連性があるといわれている 66-69).一方で,股関節や膝関節 よりも足関節で固有感覚は加齢に伴い低下するといわれている 70-72).このような加齢の 影響によって,高齢者の固有感覚は足部および下腿から低下していく.しかしながら,慢
33 性腰痛を有する腰部脊柱管狭窄症および変形性脊椎症と診断された 高齢者の場合,加齢に 伴う脊椎の変形や神経根障害の影響によって,下腿よりも体幹の固有感覚が低下している 可能性が高い.さらに,本研究の対象者は,体幹の固有感覚低下に伴い傍脊柱筋断面積が 萎縮していることが予測されたが,体幹と下腿に局所振動刺激を与えた際の全ての CoP と傍脊柱筋断面積との相関は低かった.これは,慢性腰痛を有し腰部脊柱管狭窄症および 変形性脊椎症と診断された高齢者の固有感覚低下に伴う姿勢不安定性の要因が,体幹の筋 断面積よりも背筋出力低下や主観的な痛みが関連していることを示唆している . したがって,慢性腰痛を有する高齢者の姿勢動揺を評価する際には,背筋の出力低下 が顕著な場合には,傍脊柱筋に局所振動刺激を与えてファーターパチニ小体の感受性を評 価することが重要である.また,主観的な痛みを強く訴える場合には,傍脊柱筋に局所 振 動刺激を与えた筋紡錘の感受性の評価を実施することが重要である. 以上のことから,症状に応じて応答周波数を変えながら傍脊柱筋および下腿へ局所振 動刺激を与えて,背筋出力や痛みを考慮した姿勢動揺の評価が重要であろう.また,重心 動揺計で測定される CoP の偏位やロンベルグ率,片脚立位の評価のみならず,傍脊柱筋 および腓腹筋への局所振動刺激による CoP の偏位による姿勢制御の方略の検証が評価指 標のひとつとして活用できるといえる.さらに,リハビリテーション評価への応用が期待 できると考えられる. 限界として,腰部脊柱管狭窄症および変形性脊椎症と診断された慢性腰痛と非腰痛高 齢者における局所振動刺激時の姿勢制御による違いを,今後比較検証しなければならな い.また地域在住高齢者や健常若年者での比較検証を行っていないため,これらの対象者
34 における局所振動刺激の固有感覚評価は慎重に検討しなければならない. このような制約はあるものの,先行研究で最も用いられている筋紡錘のみならず,フ ァーターパチニ小体の応答周波数に応じた機械的振動刺激を与えた評価を取り入れること で,固有感覚低下による姿勢不安定性の要因を詳細に検証することができるであろう. これまで,傍脊柱筋と腓腹筋に局所振動刺激を与えた固有感覚入力による姿勢制御の 評価を転倒リスクの高い,腰部疾患を有する高齢者に応用する試みは,ほぼ見当たらなか った.これらの評価により,傍脊柱筋のマイスネル小体や筋紡錘よりもファーターパチニ 小体の感受性低下が姿勢不安定性の因子となることが示唆された.また,傍脊柱筋のファ ーターパチニ小体の感受性低下に伴い,姿勢制御は 前方推移の方略となることが示され た.今後,慢性腰痛を有する腰部脊柱管狭窄症や変形性脊椎症の高齢者の場合,体幹のフ ァーターパチニ小体の感受性低下と背筋出力低下が姿勢不安定性を招く可能性が高いこと を視野に入れて,傍脊柱筋および腓腹筋への局所的振動刺激を与えた固有感覚入力による 姿勢動揺の評価を行うことが重要であり,臨床研究として本研究は意義がある.
35
第
2 章
先行研究と比較:固有受容加重比率と傍脊柱筋 断面積との関連
3-1 目的 第1 章では,体幹のマイスネル小体や筋紡錘よりもファーターパチニ小体の感受性低 下が姿勢不安定性を招き,前方推移となる姿勢制御を示すことが認められた. これまでの 報告との違いは,傍脊柱筋の筋紡錘の感受性低下ではなく,ファーターパチニ小体の感受 性低下が姿勢不安定性の危険因子になることである.したがって,傍脊柱筋に存在する固 有感覚の応答周波数に適合させる局所振動刺激は,特定の固有感覚低下に伴う姿勢制御の 方略を評価できる可能性が考えられる. 腰痛の多くは,日常生活の活動低下と体幹機能低下に関連する広範囲の病態である 73,74).Taimela ら 75)は,腰部の筋疲労が腰痛患者と健常者で体幹の固有感覚を低下させ ると報告している.本研究の事前調査において,腰部脊柱管狭窄症および変形性脊椎症と 診断された高齢者に,傍脊柱筋と腓腹筋に対して局所振動刺激を与えた RPW と傍脊柱筋 断面積との関連を調査した.その結果,L1/L2 脊柱起立筋断面積の萎縮している者程,体 幹の筋紡錘の感受性が低下し,腓腹筋の筋紡錘の情報を増加させ,下腿優位になる傾向を 示すことが分かった 76).これらのことから,腰部疾患に罹患した高齢者の固有感覚低下 は,体幹機能の低下に伴い傍脊椎筋の萎縮が影響している可能性が高い.そのため ,体幹 での姿勢保持が不安定となり,下腿に頼らざるをえない姿勢保持となっているのかもしれ36 ない. しかしながら,慢性腰痛を有する高齢者における傍脊柱筋の萎縮がRPW と関連があ り,下腿優位を示す特定の固有感覚が明らかとなっていない.また,傍脊柱筋に与えた局 所振動刺激時の固有感覚の感受性と傍脊柱筋断面積との関連性は,慢性腰痛と非腰痛の患 者では異なる可能性があるが,これらの関連性について も十分明らかとなっていないこと から,慢性腰痛を有する場合の RPW と傍脊柱筋断面積との関連性を知る必要がある. このことから,慢性腰痛を有する高齢者の腰部脊柱起立筋および腰部多裂筋のどちら が固有感覚の感受性低下と関連性があるのかを,慢性腰痛を有さない高齢者での先行研究 の結果と比較して,その傾向を明らかにすることは重要だろう.さらに,慢性腰痛の有無 によって体幹の固有感覚が低下しやすい受容器と筋をそれぞれ特定することができ,体幹 の姿勢不安定性を招く要因を詳細に評価できると考えられる. 本章の目的は,異なる応答周波数による局所振動刺激時のRPW が傍脊柱筋断面積の萎 縮と関連があるのかを先行研究と同様の解析を行い検証した. 3-2 測定方法 対象者には,第1 章および先行研究と同様の方法で振動偏位固定・周波数可変型の振動 デバイスを用いて,左右の腓腹筋および傍脊柱筋に対して機械的振動刺激を与えた. 振動刺激の周波数は30Hz(マイスネル小体),60Hz(筋紡錘),240Hz(ファーターパチニ 小体)とした.振動子部分は,人体に直接ゴムバンドで取り付け,下腿と腹囲の周径か
37
ら,振動デバイスの着用バンドの長さを調整し,振動刺激の強さを対象者間で一定となる
ようにした.重心動揺計は, Wii Balance Board(任天堂株式会社)を用いた.
計測の手順は,第1 章および,先行研究と同様に振動刺激を腓腹筋と傍脊柱筋に交互 に与え,合計 6 セットの計測を行った.計測条件は閉足,閉眼とした.計測時間は(1 回 30 秒間)を,15 秒ごとの 2 区間に分けて解析を行った.区間の条件を前半の 15 秒に対し て振動刺激なし(Pre),後半の 15 秒に対して振動刺激あり(During)とし,Pre-During の 間で振動刺激を計測した.各計測後に,60 秒間の座位休息を設けた(図 7). 重心動揺の分析で,振動刺激による 前後方向の動揺 CoP における平均位置の変化量も 第 1 章と同様の方法で算出した. 固有受容優位に関する追加情報を得るために,相対的なRPW を次の式により計算し た. 𝑹𝑷𝑾 = (𝐚𝐛𝐬 𝐝𝐲 𝐆𝐒) (𝐚𝐛𝐬 𝐝𝐲 𝐆𝐒) + (𝐚𝐛𝐬 𝐝𝐲 𝐋𝐌) ×100[%]
abs dy GS,abs dy LM は,それぞれ腓腹筋刺激,傍脊柱筋刺激時の平均 CoPy の偏位
(dy)の絶対値である.この計算式によって,腓腹筋と傍脊柱筋のどちらを優位にして姿勢 制御を行っているかを算出した. RPW が 100%に近づく程,腓腹筋の固有受容器優位の 姿勢制御に相当し,0%に近づく程,傍脊柱筋の固有受容器優位の姿勢制御に相当する 77-79). 画像による評価としてMRI で L1/L2 および L4/L5 高位での脊柱起立筋と腰部多裂筋断 面積の計測を面積計算ソフトウェア(SYNAPSE®,富士フイルムメディカル株式会社)を用 いて行った.
38 3-3 統計処理 統計解析は,RPW の結果と,L1/L2 脊柱起立筋断面積,L4/L5 脊柱起立筋断面積, L1/L2 腰部多裂筋断面積,L4/L5 腰部多裂筋断面積との関連性を検証するために Pearson 相関係数を用いた.各傍脊柱筋(例:脊柱起立筋断面積[L1/L2,L4/L5],腰部多裂筋断面 積[L1/L2,L4/L5])を従属変数,各 RPW を独立変数としたステップワイズ法による重回
帰分析を行った.解析には,IBM SPSS statistics ver. 19 を用いて有意水準は 5%とし
た.
3-4 先行研究と比較した結果
各RPW と傍脊柱筋断面積の結果を本章と先行研究,それぞれ図 23,24,25,26
に示す.
39
図 24.腰部脊椎症の高齢者の各 RPW(文献 76 のデータを引用)
40
41 30,60,240Hz の各 RPW は,L1/L2 および L4/L5 脊柱起立筋断面積,L1/L2 およ び L4/L5 腰部多裂筋断面積とは有意な相関関係を示さなかった(表 3).また,重回帰分析 は,すべて有意な関連は認められなかった.先行研究では,L1/L2 脊柱起立筋断面積と RPW60Hz との間で負の相関関係が認められ(表 4),L1/L2 脊柱起立筋断面積を従属変数 とした重回帰分析による回帰係数は,RPW60Hz で有意に関連が認められている(β=-0.26,p < 0.05)76).
42 3-5 考察 本章の結果より,先行研究はRPW60Hz が L1/L2 脊柱起立筋断面積と関連していたに も関わらず,本章の結果では全てのケースで関連が認められなかった.先行研究では,傍 脊柱筋断面積の中でも最も大きい L1/L2 の脊柱起立筋断面積の萎縮が筋紡錘の感受性低 下に繋がり,体幹の不安定性を招くことを示唆している 76).一方で,女性高齢者は,男 性高齢者よりも傍脊柱筋断面積が萎縮しており,筋紡錘の感受性低下から 下腿優位となる 姿勢制御となり,不安定な場所での活動時に腰部の固有感覚の入力が弱いことが指摘され ている 80).しかしながら,慢性腰痛を有した場合,マイスネル小体,筋紡錘,ファータ ーパチニ小体の RPW は,体幹および下腿どちらが優位であっても,傍脊柱筋断面積の萎 縮と関連して姿勢不安定性に繋がる要因にはならないことが示された. 第1 章の結果では,慢性腰痛を有した高齢者は,体幹のファーターパチニ小体の感受 性低下から CoP 偏位は前方推移の姿勢制御の方略を示した. したがって,慢性腰痛を有する場合,体幹の筋紡錘よりもファーターパチニ小体の感 受性低下から姿勢制御が前方推移を示す者程,姿勢が不安定になりやすい と考えられる. 以上のことから,慢性腰痛を有さない高齢者では,L1/L2 脊柱起立筋断面積の萎縮と筋 紡錘の感受性低下に伴い,RPW は下腿優位の反応を示す要因にはなるが,慢性腰痛を有 した場合は,L1/L2 脊柱起立筋断面積の萎縮が下腿優位を示す要因にはならないことが示 された. 慢性腰痛を有さない高齢者は,体幹の筋紡錘の感受性低下と体幹の姿勢保持に必要な
43 L1/L2 脊柱起立筋断面積が萎縮することにより,体幹の姿勢不安定性に繋がると考えられ る 81).しかしながら,L1/L2 脊柱起立筋断面積は,慢性腰痛を有する高齢者の場合,す べてのRPW と相関が認められなかった.このことから,慢性腰痛を有する高齢者は,体 幹の固有感覚低下と L1/L2 脊柱起立筋断面積の萎縮が,姿勢不安定性の要因にはならな いと考えられる.ただし,今回の結果では,詳細な要因を明らかにすることはできず,こ れらの解明には今後更なる調査が必要である. 本章で得られた新たな知見は,傍脊柱筋と腓腹筋に局所振動刺激を与えた姿勢動揺の評 価において,L1/L2 脊柱起立筋断面積の萎縮と体幹の筋紡錘の感受性低下との関連を,慢 性腰痛の有無によって異なる結果を示すことができたことである. 以上のことから,慢性腰痛を有する高齢者はRPW が傍脊柱筋断面積萎縮とは関連して おらず,下腿優位の反応を示す一要因とはならないため,姿勢動揺の評価を実施する場合 には,これらの視点を考慮して,CoP 偏位を指標に用いることで適切な固有感覚低下に 伴う姿勢制御の知見を得ることができるだろう.
44
第
3 章 総括
固有感覚低下に伴う姿勢調節機能低下の報告は,高齢者に対する病態の解明やスポー ツ医学領域におけるパフォーマンスの向上といった研究に限られていた.これまで多くの 研究では,筋紡錘の感受性低下が姿勢不安定性に繋がることが報告されてきた. 近年,異なる応答周波数による振動刺激を与えた報告もあるが,わずかであり決して 多いとはいえないのが現状である.また,腰痛や転倒に対する予防戦略として腰部疾患に 罹患した高齢者に応用する試みはみあたらない. 本研究の新規性は,振動装置を使用し,応答周波数に応じた固有受容器に機械的振動 刺激を与え,腰部脊柱管狭窄症および変形性脊椎症と診断された高齢者に対して,体幹と 下腿どちらの固有受容器の感受性が低下し,姿勢不安定性を招く要因となるのかを評価し たことである. 腰部脊柱管狭窄症および変形性脊椎症と診断された高齢者は,体幹の固有感覚と筋機 能が低下しやすい.さらに,姿勢調節障害を伴うことから固有感覚を考慮した姿勢動揺の 評価の取り組みが必要である.また,固有受容器の応答周波数が多種であり,体幹の応答 周波数が個々において一定であるとはいえない.代表的な固有感覚の応答周波数には,筋 紡錘の他にマイスネル小体,ファーターパチニ小体がある. 本研究では,慢性腰痛を有する腰部疾患に罹患した高齢者を対象に体幹と下腿に局所 振動刺激を与え,各応答周波数事による感受性の差と,VAS,傍脊柱筋断面積および背筋 力との相関関係を検証した.その結果,体幹のファーターパチニ小体の感受性 がマイスネ45 ル小体や筋紡錘よりも有意に低下しており,姿勢制御は前方推移の方略となることが示さ れた.さらに,体幹のファーターパチニ小体の感受性が低下し,姿勢制御が前方推移の方 略となる者程,背筋力が低下していることが示された.一方,体幹の筋紡錘の感受性が低 下し,姿勢制御が前方推移の方略となる者程,主観的な痛みが増悪していることが示され た. これは,ファーターパチニ小体の感受性低下と背筋出力低下が体幹の姿勢不安定性に 影響を与え,さらに,筋紡錘の感受性低下と疼痛の増悪が体幹の姿勢不安定性に影響を及 ぼす結果を示す可能性を示唆するものである. したがって,病態に応じて応答周波数を変えて,体幹および下腿に対する局所振動刺 激を与えた際の姿勢動揺の評価によって,詳細に体幹および下腿のどちらの固有感覚低下 が,姿勢不安定性を招く要因となりやすいのかを検証することが可能になると 解釈でき る. 次に,第2 章では RPW の応答周波数の違いが傍脊柱筋断面積と関連性があるのかを先 行研究の結果から検証した.先行研究では,体幹の筋紡錘の感受性が低下している者程, L1/L2 の脊柱起立筋断面積が萎縮しており関連性が認められるが,慢性腰痛を有する対象 者は,すべての固有感覚と傍脊柱筋断面積に関連性は認められなかった.これは横断的な 結果であるものの,慢性腰痛を有する高齢者の場合,傍脊柱筋断面積の萎 縮が体幹の固有 感覚低下に伴う姿勢不安定性の要因にはならないと 解釈できる. これまで,体幹と下腿に局所振動刺激を与えた際の姿勢動揺の評価を,慢性腰痛を有 する腰部脊柱管狭窄症および変形性脊椎症と診断された 高齢者に応用する試みは,ほぼ見
46 当たらない. 本研究の結果から,慢性腰痛を有する高齢者の姿勢不安定性の因子は,体幹のファー ターパチニ小体の感受性低下である可能性が示唆された.また,マイスネル小体や筋紡錘 よりも姿勢制御は前方推移の方略となることが示された.以上のことから,先行研究で多 く用いられている筋紡錘への機械的振動刺激のみならず,ファーターパチニ小体への機械 的振動刺激を与えることで,慢性腰痛を有する腰部疾患に罹患した高齢者の体幹の姿勢不 安定性を詳細に検証することができるであろう.
47
第
4 章 結論
4-1 本論文の有用性 本研究では,慢性腰痛を有する腰部疾患に罹患した高齢者を対象に体幹と下腿に局所 振動刺激を与えた結果,体幹のファーターパチニ小体の感受性がマイスネル小体や筋紡錘 よりも有意に低下していることを示した.また,体幹に局所振動刺激を与えた際に,ファ ーターパチニ小体の感受性が低下していると姿勢制御は前方推移の方略となることが示唆 された.さらに,体幹の姿勢不安定性を招く要因になる可能性があり,固有感覚低下に着 目した姿勢動揺の評価の重要性が示された. 慢性腰痛を有し,腰部脊柱管狭窄症および変形性脊椎症と診断された高齢者は,ファ ーターパチニ小体の感受性低下と背筋出力低下が体幹の姿勢不安定性に関与し,さらに 筋 紡錘の感受性低下と疼痛の増悪が体幹の姿勢不安定性に関与している可能性が示された. 一方で,慢性腰痛を有する高齢者は,傍脊柱筋断面積が萎縮している者程,RPW が下腿 優位の反応を示す要因とはならない可能性が示唆された. 以上のことから,慢性腰痛を有する腰部脊柱管狭窄症および変形性脊椎症と診断され た高齢者の場合,病態に応じて応答周波数を変化させ,傍脊柱筋および腓腹筋 に対する局 所振動刺激時の固有感覚入力による姿勢動揺の評価が重要である.また,RPW よりも CoP 偏位の指標を用いることによって,詳細に体幹と下腿の固有感覚低下に伴う姿勢制 御の検証が可能であろう. これらのことから,重心動揺計で測定される一般的なCoP 偏位やロンベルグ率,片脚48 立位の評価のみならず,体幹および下腿への局所振動刺激時の CoP 偏位による姿勢制御 の方略の検証が,ひとつの指標として重要であることが示された. 4-2 本論文の限界 本論文の研究は,慢性腰痛を有する腰部脊柱管狭窄症および変形性脊椎症と診断され た高齢者に対して,局所振動刺激時の姿勢動揺を評価した.結果として,傍脊柱筋のファ ーターパチニ小体の感受性低下と背筋出力低下が,体幹の姿勢不安定性を招く 1 つの要 因となることを示した.また,体幹の筋紡錘の感受性低下が主観的痛みと関連し,姿勢不 安定性に繋がる可能性を示唆した.しかしながら,これらすべての結果は,前向き横断研 究であるため因果関係までは証明できていない.高齢者の姿勢不安定性による転倒の因子 には,視力,前庭,筋緊張低下,神経系の退行変性,内服薬による薬剤の副作用の影響, 肢体不自由などが含まれている.また,各固有感覚(マイスネル小体,筋紡錘,ファータ ーパチニ小体)からの入力が中枢にどの程度の影響を与えているかを証明することまでは 難しく,詳細なことは分からない.このことから, 傍脊柱筋のファーターパチニ小体と筋 紡錘の感受性低下が姿勢不安定性を招き,転倒を引き起こす重要な因子と断定することま では難しい. 今後の研究の課題として,腰部脊柱管狭窄症および変形性脊椎症と診断された慢性腰 痛と非腰痛高齢者における局所振動刺激時の姿勢制御による違いを縦断研究で 比較検証し なければならない.また,地域在住高齢者での比較検証を行っていないため,これらの対
49 象者における検討も必要だろう. さらに,同対象者に対して体幹筋トレーニングや腰痛治療などの介入後に,同じ姿勢 動揺の評価で体幹のファーターパチニ小体および筋紡錘の感受性が向上し,姿勢制御が後 方に推移していくのかを証明する介入研究が必須であると考える.また, これまでの結果 に基づいて追跡調査を行い,加齢に伴う固有感覚低下が姿勢動揺にどのような変化がある のかを明らかにすることも重要である. これらのことを踏まえて,臨床現場での応用に繋げるには,腰部脊柱管狭窄症や変形 性脊椎症の手術前や手術後の比較や,手術後におけるリハビリテーション介入前後の縦断 研究を行う必要があり,臨床現場における姿勢不安定性の評価指標として臨床的意義に繋 がっていくものと考える.
50
謝辞
本論文の作成にあたり,研究指導から論文指導まで終始,熱心に惜しみなく日々ご指 導,有意義なご助言を賜りました,国際医療福祉大学大学院 教授久保晃先生に,心より深 く感謝いたします.また,本論文をまとめることができたのも, 家族と親族や非常に多く の方々による日頃のご支援とご協力の賜物であり,ここに感謝の意を表します. 本研究を実施するにあたり,最適な研究環境と測定に関するご指導ご助言を頂きまし た,国立長寿医療研究センター先端診療部脊椎外科医長酒井義人先生に深く感謝いたしま す.日頃から研究活動を見守ってくださった国立長寿医療研究センター予防老年学研究部 長島田裕之先生,測定に協力していただいた,藤田保健衛生大学臨床工学科助教山﨑一德 先生,名古屋工業大学工学部教授森田良文先生,助教佐藤徳孝先生,大学院生の大野泰生 氏(現ブラザー工業),中村英士氏(現川崎重工業),山田彩加氏,学部生の五十嵐知真氏, 元名古屋市立大学大学院准教授であり指導教員であった太田和義先生に深く感謝いたしま す.また,研究活動の環境を提供してくださった国立長寿医療研究センター病 院長原田敦 先生と整形外科病棟のスタッフの方々に深く感謝いたします. 最後に本研究の遂行にあたり,ご協力とご助言を頂きました 久保研究室の修了生,同 期,後輩の皆様とすべての対象者様に深く感謝いたします.51
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