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循環器病の診断と治療に関するガイドライン ( 年度合同研究班報告 ) 目 急性動脈閉塞症 慢性動脈閉塞症 身体所見 無侵襲診断 画像診断 急性肢虚血

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(1)

【ダイジェスト版】

末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン

Guidelines for management of peripheral arterial occlusive diseases(JCS 2009)

合同研究班参加学会:日本循環器学会,日本血管外科学会,日本血管内治療学会,日本血栓止血学会,       日本心臓血管外科学会,日本心臓病学会,日本糖尿病学会,日本脈管学会,日本老年医学会 班長 重 松   宏 東京医科大学外科学第二講座(血管外科) 班員 池 田 康 夫 早稲田大学理工学術院先進理工学部 生命医科学科 石 丸   新 戸田中央総合病院血管内治療センター 岩 井 武 尚 つくば血管センター 大 内 尉 義 東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座 太 田   敬 愛知医科大学医学研究科外科学 門 脇   孝 東京大学大学院医学系研究科糖尿病 ・代謝内科 栗 林 幸 夫 慶應義塾大学放射線診断科 小 室 一 成 大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学 古 森 公 浩 名古屋大学大学院医学系研究科血管外科 笹 嶋 唯 博 旭川医科大学第一外科 島 田 和 幸 自治医科大学循環器内科 協力員 新 本 春 夫 榊原記念病院末梢血管外科 市 来 正 隆 JR仙台病院血管外科 井 上 芳 徳 東京医科歯科大学血管外科 岡 留 健一郎 共済会福岡総合病院外科 協力員 北 川   剛 東京通信病院外科 佐 藤   成 東北大学先進外科学 佐 藤   紀 埼玉医科大学総合医療センター血管外科 重 松 邦 広 東京大学医学部附属病院血管外科 根 岸 七 雄 日本大学心臓血管外科 平 井 正 文 東海病院下肢静脈瘤・リンパ浮腫・ 血管センター 布 川 雅 雄 杏林大学心臓血管外科 古 屋 隆 俊 国保旭中央病院血管外科 保 坂 晃 弘 青梅市立病院外科 正 木 久 男 川崎医科大学心臓血管外科 松 尾   汎 松尾循環器科クリニック 宮 田 哲 郎 東京大学大学院医学系研究科血管外科 森 下 竜 一 大阪大学大学院医学系研究科臨床遺 伝子治療学 渡 部 芳 子 東京医科大学外科学第二講座(血管外科) 外部評価委員 安 藤 太 三 藤田保健衛生大学心臓血管外科 種 本 和 雄 川崎医科大学胸部心臓血管外科 永 井 良 三 東京大学大学院医学系研究科循環器内科 松 原 純 一 博愛会病院 安 田 慶 秀 北海道中央労災病院せき損センター (構成員の所属は2009年10月現在)

(2)

目  次

Ⅰ.閉塞性動脈病変の分類・症状・徴候……… 1573 1.急性動脈閉塞症 ……… 1573 2.慢性動脈閉塞症 ……… 1573 Ⅱ.動脈疾患の診断〈方法論・目的・適応・意義〉 …… 1575 1.身体所見 ……… 1575 2.無侵襲診断 ……… 1575 3.画像診断 ……… 1575 Ⅲ.動脈疾患の病態生理と血行動態……… 1576 1.急性肢虚血 ……… 1576 2.間歇性跛行 ……… 1576 3.重症虚血肢 ……… 1576 Ⅳ.血管形成異常……… 1577 1.分類 ……… 1577 2.主たる形態,解剖学的異常 ……… 1577 3.診断と治療・予後 ……… 1577 Ⅴ.血管損傷……… 1578 1.血管損傷の発症機序 ……… 1578 2.病態 ……… 1578 3.治療方針 ……… 1578 4.治療手技 ……… 1578 Ⅵ.急性動脈閉塞(TASCⅡを考慮) ……… 1579 1.疾患概念 ……… 1579 2.病因,頻度 ……… 1579 3.病態生理 ……… 1579 4.臨床症状,診断,検査 ……… 1579 5.治療方針 ……… 1580 6.予後 ……… 1581 Ⅶ.閉塞性動脈硬化症(TASC Ⅱを考慮) ……… 1581 1.疫学 ……… 1581 2.治療方針の選択(手術適応・血管内治療の適応) … 1581 3.薬物療法およびその他の治療法 ……… 1584 Ⅷ.頸動脈,椎骨動脈……… 1586 Ⅸ.腹部内臓動脈……… 1587 1.急性腸間膜動脈閉塞症 ……… 1587 2.慢性腸間膜動脈閉塞症 ……… 1588 3.腹腔動脈起始部圧迫症候群 ……… 1588 4.腸間膜血行不全症(非閉塞性腸間膜虚血症) … 1589 Ⅹ.腎動脈……… 1589 1.原因 ……… 1589 2.頻度 ……… 1589 3.治療方針 ……… 1589 4.治療手技 ……… 1590 5.予後 ……… 1591 Ⅺ.高安動脈炎……… 1591 1.疾患の概要 ……… 1591 2.病因と病態 ……… 1591 3.症候と診断 ……… 1591 4.治療と予後 ……… 1592 5.結語 ……… 1594 Ⅻ.Behçet病 ……… 1594 1.疫学 ……… 1594 2.動脈病変 ……… 1594 3.動脈病変に対する治療 ……… 1594 ⅩⅢ.Buerger病 ……… 1594 1.病因 ……… 1594 2.疫学 ……… 1594 3.臨床症状 ……… 1595 4.検査所見 ……… 1595 5.診断 ……… 1595 6.治療 ……… 1595 7.予後 ……… 1595 ⅩⅣ.膠原病 ……… 1596 1.結節性多発動脈炎(PN) ……… 1596 2.アレルギー性肉芽腫性血管炎(AGA) ………… 1597 3.Wegener肉芽腫症(WG) ……… 1597 4.SLE ……… 1597 5.関節リウマチ(RA),特に悪性関節リウマチ(MRA) … 1598 ⅩⅤ.糖尿病性足疾患 ……… 1598 1.糖尿病性足疾患の分類 ……… 1598 2.疫学 ……… 1598 3.診断 ……… 1598 4.治療 ……… 1598 ⅩⅥ.動脈の機能性疾患 ……… 1599 1.肢端紅痛症(erythromelalgia) ……… 1599 2.Raynaud現象 ……… 1599 3.カウザルギー ……… 1599 ⅩⅦ.胸郭出口症候群・鎖骨下動脈盗血症候群 ………… 1600 1.胸郭出口症候群 ……… 1600

2.鎖骨下動脈盗血症候群(Subclavian steal syndrome) … 1600 ⅩⅧ.膝窩動脈外膜嚢腫 ……… 1601 1.膝窩動脈外膜嚢腫とは ……… 1601 2.診断 ……… 1601 3.治療方針の選択 ……… 1601 4.治療手技 ……… 1601 ⅩⅨ.膝窩動脈捕捉症候群 ……… 1601 1.膝窩動脈捕捉症候群とは ……… 1601 2.臨床像 ……… 1602 3.診断手順 ……… 1602 4.治療 ……… 1602

ⅩⅩ.Blue toe syndrome ……… 1602

1.病態 ……… 1602 2.症状と診断 ……… 1602 3.治療 ……… 1602 ⅩⅪ.遺残坐骨動脈 ……… 1603 1.病態 ……… 1603 2.頻度と分類 ……… 1603 3.診断 ……… 1603 4.治療 ……… 1603 (無断転載を禁ずる)

(3)

本ガイドラインにおいてはエビデンスレベルは他のガイ ドラインと同様の基準とし,クラス分類は広く用いられ ている基準に準拠した. エビデンスレベル  レベルA 複数の無作為介入臨床試験またはメタ解 析で実証されたもの  レベルB 単一の無作為介入臨床試験または大規模 な無作為ではない臨床試験で実証された もの  レベルC 専門家および/または小規模臨床試験で 意見が一致したもの クラス分類  クラスⅠ 手技・治療が有効,有用であるというエ ビデンスがあるか,あるいは意見が広く 一致している  クラスⅡ 手技・治療の有効性,有用性に関するエ ビデンスあるいは見解が一致していない     Ⅱa エビデンス,見解から有用,有効である 可能性が高い     Ⅱb エビデンス,見解から見て有用性,有効 性がそれ程確立されていない  クラスⅢ 手技,治療が有効,有用ではなく時には 有害であるとのエビデンスがあるか,あ るいはそのような否定的見解が広く一致 している

閉塞性動脈病変の分類・

症状・徴候

1

急性動脈閉塞症

1

原因

動脈塞栓症:心原性が多い(心房細動,僧帽弁・大動脈 弁疾患,急性心筋梗塞,人工弁,奇異性脳塞栓症等). 動脈血栓症:高齢男性に好発.狭窄病変による症状が先 行. 急性動脈解離 外傷性動脈閉塞 その他:凝固異常症等.

2

症状・徴候

①四肢動脈 “5つのP”(6P) 疼痛(pain) 脈拍消失(pulselessness) 蒼白(pallor/paleness) 知覚鈍麻(paresthesia) 運動麻痺(paralysis/paresis) [虚脱(prostration)] ②腹部内臓動脈  急激な腹痛や下痢・下血で発症し,その後腹膜炎を併 発すると腹膜刺激症状が出現する.  鑑別診断:非閉塞性腸管虚血症,上腸間膜静脈血栓症 等 ③腎動脈  塞栓症では急速な側腹部痛,血尿の出現.血栓症では 症状や腎機能への影響が軽度なことがある.  動脈解離は腎動脈硬化症や線維筋性異形成を伴う患者 での発症が多い. ④頸動脈,椎骨動脈  閉塞原因および側副路の形成状況によって,無症候性 から一過性脳虚血発作,脳梗塞まで様々である.

2

慢性動脈閉塞症

1

下肢動脈

症状:Fontaine分類 Ⅰ度:無症状(冷感,しびれ感) Ⅱ度:間歇性跛行 Ⅲ度:安静時の疼痛 Ⅳ度:潰瘍,壊死 ①閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans: ASO) 疫学:50歳以上の高齢男性に好発 動脈硬化の危険因子を有しているものが多い. 主幹動脈,特に腸骨,大腿動脈が侵されやすいが, 糖尿病患者や透析患者では下腿病変を合併しやす い.

(4)

症状:間歇性跛行:脊柱管狭窄症や腰椎疾患等による神 経性跛行と鑑別 潰瘍,壊死:静脈うっ滞性潰瘍や糖尿病性潰瘍と 鑑別 症候:罹患肢の皮膚温の低下,「やせ」,蒼白からチアノ ーゼ,勃起不全 末梢動脈拍動の減弱,消失,thrill触知,血管雑 音聴取 ② Buerger病〔閉塞性血栓血管炎,ビュルガー(氏)病, バージャー(氏)病,thromboangiitis obliterans: TAO〕 疫学:50歳以下の喫煙歴のある男性に好発 指趾末端の潰瘍の発生率が高い 症状:上肢の虚血症状 足底の跛行 遊走性静脈炎 ③その他 1) 膝窩動脈捕捉症候群 若年者,特に運動選手 膝伸展・足関節背屈位での末梢動脈拍動の消失 2) 膝窩動脈外膜嚢腫 若年から中年男性 膝関節伸展時には認められる末梢の動脈拍動が,関節を 強く屈曲すると消失する 3) 遺残坐骨動脈 閉塞性病変による下肢虚血 瘤を形成し下肢への塞栓源となる 大腿動脈拍動が減弱または消失しているにもかかわら ず,膝窩動脈や足部動脈の拍動を触知する 4) 膠原病関連の血管病変 (1)Raynaud現象 (2)潰瘍,壊死

2

上肢動脈

①閉塞病変が上肢のみに見られ,Raynaud 現象を 伴う場合 1) 膠原病 2) 胸郭出口症候群 3) 振動病 4) Buerger 病等 ②上腕動脈や橈骨動脈の拍動が減弱し血圧に左右 差が見られる場合 1) 高安動脈炎 2) 動脈硬化による鎖骨下動脈閉塞症

鎖骨下動脈盗血症候群(subclavian steal syndrome):患 側上肢の運動に際して脳虚血症状(頭痛,眼前暗黒感, めまい)と上肢の虚血症状(運動時の脱力,しびれ,疼 痛) 3) Buerger 病 等

3

大動脈

1) アテローム硬化 2) 高安動脈炎(大動脈炎症候群,高安病,脈なし病) 男女比は1:9と女性に多く,20∼40歳代に好発する 全身症状(発熱,易疲労感,全身倦怠) Ⅰ型(弓分枝閉塞型):脳および上肢の血行不全による 視力障害や脈なし症状,上肢血圧の左右差 Ⅱ型(胸腹部閉塞型):異型大動脈縮窄を来たし,高血 圧が主症状 Ⅲ型(広範囲閉塞型):Ⅰ型とⅡ型の混合症状 Ⅳ型(動脈瘤形成型):動脈瘤の形成,大動脈弁閉鎖不 全を伴うこともある

4

腹部内臓

1) 原因 (1)動脈硬化 (2)線維筋性異形成 (3)血管炎 (4)壁外性圧迫(腹腔動脈起始部圧迫症候群) 2) 症状 (1)腹部アンギーナ(食後の腹痛) (2)体重減少 (3)消化機能障害(下痢,便秘)

5

腎動脈

原因:アテローム性動脈硬化(高齢者),線維筋性異形 成(若年者),高安動脈炎,大動脈解離等 症候:腎血管性高血圧症(30歳以前の高血圧の発症あ るいは55歳以降の重症高血圧の発症で疑う)

6

頸動脈,椎骨動脈

原因:アテローム硬化性狭窄,高安動脈炎 症候:一過性脳虚血発作(病変対側の四肢麻痺,構語障 害,黒内障,めまい,意識消失発作)

(5)

〈方法論・目的・適応・意義〉

動脈疾患の診断

1

身体所見

1

脈拍の触知

大腿動脈,膝窩動脈,後脛骨動脈,足背動脈(足背動脈 は先天的に欠損している場合や通常の位置より異なった 走行をする場合があるため注意)

2

血管雑音

特に腹部,鼠径部でよく聴取される.

3

局所所見

(1)チアノーゼ,冷感,蒼白,下肢の萎縮,爪の変形, 脱毛,潰瘍,壊死等 (2)挙上試験:両下肢を挙上して30∼60秒間足趾を屈 伸させると虚血肢では蒼白になる (3)下垂試験:狭窄・閉塞があると色調の回復が1分以 上遅れる

2

無侵襲診断

1

四肢血圧

①超音波ドプラ法

  足 関 節 上 腕 血 圧 比(Ankle brachial pressure index: ABI):足関節収縮期血圧/上肢収縮期血圧  正常値:1.0∼1.3  0.9以下:何らかの虚血がある.0.4以下は重症  1.3以上:慢性腎不全や糖尿病等,動脈の石灰化が著 明な患者  トレッドミル歩行によるABIの回復時間:間歇性跛 行の重症度評価にも有用 ②オシロメトリック法 40mmHg以下は測定できない. 脈波伝播速度も測定できる

足趾上腕血圧比(Toe brachial pressure index: TBI):

 足趾収縮期血圧/上肢収縮期血圧 動脈の石灰化によりABIが正確に測定できない症例に も有用 正常値:0.7∼1.0

2

近赤外線分光法(near infrared

spectroscopy: NIRS)

トレッドミル歩行による間歇性跛行の重症度評価あるい は治療効果の判定

3

経 皮 的 酸 素 分 圧(transctaneous

oxygen tension; tcPO

2

重症虚血肢の評価 潰瘍治癒の可能性や緊急性,および治療効果の判定

4

皮膚還流圧(skin perfusion

pressure: SPP)

重症虚血肢の評価

5

サーモグラフィー

薬物療法の効果 冷水負荷試験:Raynaud現象の診断

6

指尖容積脈波

手指および足趾の虚血の診断

3

画像診断

1

(DSA)

Digital subtraction angiography

利点:少ない造影剤で鮮明な画像が得られる.ステント 内の評価に優れる.流れを経時的に観察できる. 欠点:外部情報は得られない.不十分な呼吸停止や腸管 運動はアーチファクトとなる.

2

MR angiography(MRA)

利点:被曝がない.撮影範囲が広い. 欠点:空間分解能ではDSAやCTに劣る.造影剤(ガド リニウム)による合併症.MRI非対応ステント を挿入した場合には,留置後は内腔の評価が困難.

3

CT

利点:動脈の壁の性状を見るのに適している.周辺情報 が得られる.

(6)

欠点:造影剤の量が多い.被曝.

Multidetector-row CT angiography(MDCTA):下肢全体 および腹部を含めて高速撮像が可能.動脈石灰部 位では内腔の評価に技術が必要.

4

超音波検査

利点:安全で何度も行うことが可能. 欠点:時間がかかる.検者の技量に左右されやすい.下 腿動脈の詳細な全体像は把握困難.

動脈疾患の病態生理と

血行動態

1

急性肢虚血

〈推奨事項〉 クラスⅠ  急性動脈閉塞で救肢が可能な患者には,閉塞の解剖学 的なレベルを決定し,早急な血管内または外科的血行再 建術に導く評価を行う(エビデンスレベルB).  肢のみならず生命も脅かすことがある.

1

原因

①塞栓症 心房細動,僧房弁狭窄症,腫瘍塞栓(心内腫瘍等), 動脈瘤の壁在血栓による塞栓等.微小塞栓の場合には 足指に青色斑点様の皮膚の色調変化を生じる(Blue toe syndrome). ②血栓症 動脈硬化や血管炎による狭窄部や人工血管吻合部等に おける血栓形成. ③大動脈解離 ④外傷 ⑤その他

2

病態と症状

 突然の強い疼痛や脱力感で発症し,神経障害(知覚, 運動障害)から水疱形成,皮膚および筋肉壊死へと進行 し,全身衰弱から死に至る.重症度はその経過や閉塞部 位と範囲,側副血行による代償,血栓形成の進行速度等 により影響を受ける.早期症状には「5つのP徴候」が ある.(→Ⅰ閉塞性動脈病変の分類・症状・症候 ◯1急性 閉塞性疾患)

3

重症度および救肢の可能性と危機の

判別

→Ⅵ.急性動脈閉塞 表3

2

間歇性跛行

〈推奨事項〉 クラスⅠ  間歇性跛行をを有する患者では,血行再建術の前に, 症状の改善が見込まれるような有意な機能障害はない か,跛行が改善されても同等の運動を制限するような他 の疾患(例:狭心症,心不全,慢性呼吸器疾患,または 整形外科的な制限)がないかについて留意する(エビデ ンスレベルC).  間歇性跛行を有する患者で安静時のABIが正常の場 合には,運動後にABIを計測するのが有用である(エ ビデンスレベルB).  しばらく歩くと下肢のだるさや痛み等から歩けなくな り,しばらく休むと再び歩けるようになる症状が間歇性 跛行である.速足や階段,坂道の歩行では平地歩行より も症状が出やすくなる.腸骨・大腿動脈の病変では腓腹 部,内腸骨動脈への血流障害では臀部(臀筋跛行),下 腿以下の病変では下腿末梢や足底部に出やすい.  同じABIでも歩ける距離に個人差があるが,これは 血行動態の代償機能に違いがあるからである.虚血肢で は歩行負荷にてABIが低下する.ABIの回復時間が代償 機能を反映している.  間歇性跛行の重症度評価や治療効果判定には歩行負荷 ABI測定や近赤外線分光法等の客観的な機能的検査が必 要であるが,トレッドミルを使っての最大歩行距離測定 (主観的)で代用されているのが現状である.

3

重症虚血肢

 重篤な血流障害により引き起こされる安静時の下肢の 疼痛や,趾肢の喪失が切迫した状態と定義される.慢性 閉塞性動脈疾患の虚血が進行して安静時疼痛,皮膚潰瘍, 壊死を呈した病態を指す.  ABIは0.4未満,足関節血圧は50~70mmHg以下,足 趾血圧は30mmHg以下のことが多い.多くは多発性病 変による広範な領域での血流障害によって起こり,膝窩

(7)

動脈以下の閉塞が加わると重症化しやすい.糖尿病患者 で末梢神経障害も併発していると,急速に無症候性に進 行することがある.このようなマクロ的な灌流圧の低下 に加えて,細動脈攣縮,微小血栓,組織浮腫,血小板と 白血球の活性化等による微小循環障害や局所感染の併発 は,虚血を増悪させる.  一般に重症虚血肢ほど心臓,脳,腎臓等の重要臓器に も動脈硬化が進行している.

血管形成異常

1

分類

 形成の過程において,遺伝的因子や薬物,感染症,放 射線被曝等の外的因子が原因で様々な異常が生ずる.

1

Hamburg 分類(1988 年)

(1)動脈系の形成異常 (2)静脈系の形成異常 (3)動脈と静脈の異常短絡を主とする異常 (4)複合型のリンパ系の異常

2

Diehm らの分類

(1)無形成・低形成 (2)狭窄・閉塞 (3)拡張 (4)屈曲・蛇行 (5)遺残 (6)動静脈瘻 (7)異形成等  閉塞性病変,血行障害を引き起こす形成異常は,無形 成・低形成,狭窄・閉塞,動静脈瘻が主たるものである.

2

主たる形態,解剖学的異常

1

無形成・低形成

2

狭窄,閉塞

 大動脈縮窄症,線維筋性異形成,走行異常,分岐異常

3

拡張

 血栓症,塞栓症を起こさない限り,拡張病変のみでは 血行障害を生じない.

4

走行・分岐・数の異常

①膝窩動脈捕捉症候群   静 脈 も 圧 迫 さ れ る こ と も あ る(popliteal vascular entrapment syndrome). ②ナットクラッカー症候群  左側の腎静脈が上腸間膜動脈と大動脈との間で圧迫さ れ,血尿,腰痛等を来たす.左腎静脈捕捉症候群とも呼 ばれる.

5

遺残(遺残坐骨動脈)

6

異形成(線維筋性異形成,

(fibromuscular dysplasia:FMD)

 血管壁の筋組織,線維組織の異常により血管壁が拡張, 狭窄を起こす.腎動脈に好発し,腎血管性高血圧症の原 因になるが,頸動脈や四肢の動脈にも見られる.しばし ば左右対称的に生ずる.塞栓症の原因にもなる.血管造 影で,特異的な数珠様陰影が見られる.血行再建術やカ テーテル治療が行われる.

7

動静脈瘻(複合型の形成異常)

 動脈と静脈の間に生じた非生理学的な短絡で,外傷等 による後天性もある.潰瘍,壊死を来たすこともある.

3

診断と治療・予後

 血管腫や静脈拡張等体表に徴候が観察されれば,診断 は比較的容易である.動脈血行障害の症状では,血管形 成異常の存在を念頭に診断を進める.無徴候,無症状の 症例では,他疾患精査中に偶然に発見されることが珍し くない.  血管形成異常では根治が難しく,対症療法のみとなる 症例も少なくない.カテーテル治療やレーザー治療の発 達,手術手技や人工血管の改良等により治療適応となる 症例が増加している.治療は専門医への受診が薦められ る.

(8)

血管損傷

 我が国では銃創等の鋭的外傷は少ないが交通事故,労 働災害,スポーツによる鈍的外傷が多く,血管内治療に 伴う医原性損傷も増加している.日本血管外科学会アン ケート報告によると血管外傷中の医原性損傷は2005年 61.7%(234/379),2006年57.7%(226/392)であった.

1

血管損傷の発症機序

1

急性血管損傷

2

慢性血管外傷

  仮 性 動 脈 瘤( 仮 性 瘤 ), 動 静 脈 瘻(arteriovenous fistula:AVF)等.反復鈍的損傷では内膜肥厚,瘤様拡張, 末梢塞栓を起こすことがある(胸郭出口症候群,膝窩動 脈捕捉症候群).

3

医原性血管損傷

 動脈造影や血管内治療等で,仮性瘤やAVFを生じる ことがある.多くは圧迫しにくい深部の動脈や動脈の側 壁寄りに穿孔部がある.カテーテル,ガイドワイヤー, ステントグラフト,バルーン拡張等では,穿孔,解離, 内膜損傷,粥腫塞栓が起こりうる.

2

病態

 出血,血腫,血流低下,ショック等の多彩な症状を呈 す.感染や多発骨折,頭部・胸腹部・骨盤部の多発外傷 を伴うことが多い.上肢では上腕動脈が多く,側副路が 良好で神経損傷がなければ予後は良い.下肢では浅大腿 動脈が最も多い.膝関節脱臼では膝窩動脈閉塞が起きや すく,迅速に再建しないと切断リスクが高い.

3

治療方針

 以下の多くはエビデンスレベルCである.

1

診断法

 骨折,脱臼,筋挫滅の疼痛や神経損傷による麻痺と鑑 別 を 要 す る. 確 定 診 断 は 超 音 波 検 査,duplex scan, ABI,CT,血管造影等がある.

2

手術適応

 多発骨折や多臓器損傷合併例は,重症度に応じて治療 順序を決定する.急性循環不全は4~6時間が“golden period”とされる.上肢は虚血に強く,下腿は損傷動脈 が1本で足部循環が良好なら経過観察できることが多い が,膝窩動脈閉塞は側副路が期待できない.カテーテル 穿刺後の拍動性血腫は適切な圧迫で治癒しうるが,圧迫 止血が不可能であった際や,筋膜下血腫による神経麻痺 や仮性瘤等を合併した場合等は,手術適応となる.

4

治療手技

 感染制御と循環動態の安定をはかり,血行再建後の再 灌流障害(myonephropathic metabolic syndrome:MNMS) やコンパートメント症候群に注意する.

1

止血

 出血部の盲目的鉗子操作はなるべく回避する.四肢の 出血は,駆血帯やFogartyカテーテルでコントロールす ることもできる.  鋭的損傷やカテーテル穿刺部出血等は,連続ないし結 節縫合で閉鎖できることが多い.血管壁の挫滅がある際 は,切除して端々吻合ないしグラフト移植を要すること が多い.

2

血栓除去

 血行再建前にFogartyカテーテルで血栓除去を行う.

3

血行再建

 骨折を合併する場合,骨折治療と血行再建のどちらを 先行させるかを検討する.膝窩動脈損傷では腓骨神経麻 痺や切断率が高いと言われ,血行再建を優先するのが良 いとの意見がある.  病変部が短い損傷では,病変部切除・端々吻合が可能 である.鈍的損傷では,内膜損傷部を残すと血栓閉塞の 原因となりうるので,病変部の切除,十分な血栓除去, 血管移植等で対処する.開放創では感染の恐れから,可 能であれば自家静脈グラフトを使用する.

4

血管内治療

 到達しにくい部位の出血や仮性瘤に対して,塞栓術や ステントグラフト治療も選択肢となりうる.

(9)

(TASCⅡを考慮)

急性動脈閉塞

1

疾患概念

 急性動脈閉塞症は,迅速な診断と適切な治療を行わな ければ肢壊死や虚血再灌流障害(myonephropathic meta-bolic syndrome: MNMS)を併発し,多臓器障害により 死に至る可能性のある重篤な疾患である.多くの症例で は全身疾患が潜み,特に,心血管,脳血管疾患を併存す る頻度が高い.

2

病因,頻度

1

塞栓症

 90%前後が心原性.粥腫等大動脈壁の血栓による塞 栓症が10%.発症部位はHaimoviciの320例の検討では, 上肢16.0%,大動脈9.1%,腸骨動脈領域16.6%,大腿 動脈34%,浅大腿動脈4.5%,膝窩動脈14.2%,3分岐 以下5.6%であった.

2

血栓症

 閉塞性動脈硬化症,Buerger病等の血管炎等により障 害された動脈壁が血栓性閉塞を来たす.バイパス手術後 のグラフト閉塞も増加傾向にある(表1).

3

病態生理

 虚血部位から乳酸,ピルビン酸が産生され,次第にカ リウム,ミオグロビン,CPK,GOT,GPT,LDHが細 胞外に流出する.ミオグロビンによる腎尿細管の障害, さらに代謝性アシドーシス,全身的代謝障害となり MNMSへと進行し腎不全,呼吸不全等の重篤な多臓器 障害を引き起こしやすい.虚血肢の神経は4~6時間, 筋肉は6~8時間,皮膚は8~12時間で不可逆的変化を 生ずると言われており,塞栓症や外傷は6~8時間が救 肢の目安である.

4

臨床症状,診断,検査

1

症状

 “5つのP”(6P)(→Ⅰ.閉塞性動脈病変の分類・症状・ 症候 ◯2急性閉塞性疾患)  塞栓症は突然に発症するのに比べ,血栓症は側副血行 が存在する場合が多くやや緩慢に発生する.

2

診断

 既往歴,現病歴の聴取(表2)  理学的所見:皮膚の色,冷感,斑紋状チアノーゼ,浮 腫,知覚障害,筋肉硬直,水疱形成,壊死,動脈の拍動

3

検査

〈推奨事項〉 急性下肢虚血が疑われる患者はすべて,症状発現後速や かに末梢の脈拍をDopplerで評価するべきである(エビ デンスレベルC). クラスⅠ  急性動脈閉塞で救肢が可能な患者には,閉塞の解剖学 的なレベルを決定し,早急な血管内または外科的血行再 建術に導く評価を行う(エビデンスレベルB). 血液検査:生化学検査,凝固系検査,血液ガス分析 表 1 急性動脈閉塞症の原因 塞栓症 血栓症 頻度の高い 原因 心原性 心房細動,不整脈 血管性 閉塞性動脈硬化症  僧帽弁膜症  バージャー病  心筋梗塞後壁在血栓  大動脈解離  左室瘤  膝窩動脈瘤  心筋症  グラフト閉塞  人工弁置換術後 血管性  大動脈瘤,末梢動脈瘤  shaggy aorta syndrome

まれな原因 心原性 血管性  心臓腫瘍(左房粘液腫) 膝窩動脈外膜嚢腫  卵円孔開存  膝窩動脈捕捉症候群 血管性  外傷  動静脈瘻  医原性 その他 その他  空気,腫瘍  多血症  カテーテル検査  血小板増多症  悪性腫瘍

(10)

心電図 胸部X-P Dopplerを用いた血流音聴取 画像検査:血管造影,MDCT,MRA等 塞栓症:逆U字型の閉塞,側副血行路の発達がない. 血栓症:側副血行路の発達が著しい.閉塞性動脈硬 化症では石灰化や虫食い像等の動脈硬化性変化が見ら れる.

4

鑑別診断

 慢性動脈閉塞症の急性増悪は,一般的には急性虚血と は言わない.

5

重症度

 TASCⅡによる分類(表3).

  全 身 状 態 の 把 握:SIRS(systemic inflammatory re-sponse syndrome)の有無,患肢血カリウム値と全身血 カリウム値の差(1.5mEq/l以上),MNMSの有無.

5

治療方針

〈推奨事項〉  すべての急性下肢虚血患者において,即時の非経口抗 凝固療法が適応となる(エビデンスレベルC).  急性動脈閉塞症の診断が確定した時点で,二次血栓予 防目的のためheparin投与を行う.TASC区分Ⅰ,Ⅱaは, 経カテーテル直接血栓溶解療法(catheter directed throm-bolysis:CDT)も可能である.区分Ⅱbでは,血栓塞栓 除去術等の外科的血行再建の適応となる.区分Ⅲは不可 逆性であり,壊死部の切断となる.  塞栓症では,発症6時間(golden time)以内であれば, 血栓塞栓除去術の良い適応である.血栓症では,可逆的 な早期であればCDTの良い適応であると考えられてい る.ただしCDTだけでは不十分な場合も少なくなく, この場合は適切な時期に外科的血行再建術を追加する.

1

血栓溶解療法(catheter directed

thrombolysis: CDT)

2

外科治療

3

術後管理

 区分Ⅱ以上の血栓除去例ではMNMSを考慮する.コ ンパートメント症候群に対しては減張切開術を行う.  塞栓症の再発予防としては,心房細動例では抗凝固療 法を行う.経食道超音波検査等で原因検索を行う.血栓 症例で血栓除去術が不成功な場合は,血行再建を考慮す る. 表 2 病歴聴取のポイント 現病歴 発症は突発的か漸次的か 発症から来院までの時間 知覚障害の有無 運動麻痺の状況 間歇性跛行の有無 既往歴 心筋梗塞の有無 心不全(弁膜症)の有無 不整脈の有無 出血性素因の有無 閉塞性動脈硬化症の有無 Buerger病の有無 血管検査・手術の有無 表 3 急性下肢虚血の臨床的分類(SIS/ISVS 分類を修正) 区分 説明 /予後 知覚消失 所見 筋力低下 動脈Doppler信号静脈 Ⅰ. Viable(下肢循環が維持され ている状態) ただちに下肢生命が脅かされることはない なし 聞こえる 聞こえる Ⅱ.Threatened viability   (下肢生命が脅かされる状態) a.Marginally   (境界型) 早急な治療により救肢が可能 軽度(足趾)またはなし なし (しばしば)聞き取れない 聞き取れる b.Immediately   (緊急型) ただちに血行再建することにより救肢が可能 足趾以外にも,安静時痛を伴う 軽度~中等度 聞き取れない 聞き取れる Ⅲ.Irreversible   (不可逆的な状態) 組 織 大 量 喪 失 ま た は,恒久的な神経障害が避 けられない 重度 重度 聞き取れない 聞き取れない 知覚消失 麻痺(筋硬直)

(11)

6

予後

 急性動脈閉塞症の死亡率は15∼20%にのぼる.

(TASC Ⅱを考慮)

閉塞性動脈硬化症

1

疫学

 我が国での閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliter-ans: ASO)の発生頻度を人口比から検討したものは見ら れないが,いくつかの地域調査や糖尿病患の疫学から算 出すると,症候性のASO患者数は40万人前後と考えら れる.無症候性のものを含めると50∼80万人前後の患 者群がいると推測される.

2

治療方針の選択(手術適応・

血管内治療の適応)

 ASOの診療について,American College of Cardiology

(ACC)/American Heart Association(AHA)Practice Guidelines 2005, お よ びTransatrantic intersociety con-sensus(TASC)Ⅱ2006をもとに検討した.ただし,治 療の適応・選択には医療保険や医療経済の国際的相違が 影響するため,この問題を踏まえた上で,血行再建術の 適応,選択基準,手技,治療成績等を解説する.

1

血行再建術の基本原則

 大動脈-大腿動脈バイパスや浅大腿動脈閉塞に対する 大腿-膝上膝窩動脈バイパスでは人工血管が使用され る.末梢の下腿∼足部動脈へのバイパスでは自家静脈グ ラフトが使用される.

  経 皮 的 血 管 形 成 術percutaneous transluminal balloon angioplasty(PTA)/ステント成功の条件は,inflow(腸 骨動脈病変)再建では,浅大腿動脈と大腿深動脈の両方 が開存している例(run-offの良好)である.

2

虚血重症度による血行再建術の適応

 血行再建の意義は,QOLの改善や健康寿命の延長効 果等の側面から考える必要がある.

①間歇性跛行(intermittent claudication: IC)  無症状ならば,原則的には血行再建の適応はない.跛 行距離の長短よりも,患者にとって跛行が障害になって いるか否かが重要な決定因子である(表4,5).

表 5 間歇性跛行に対する血管内治療 (ACC/AHA Practice Guidelines より) クラスⅠ:  1) 腸骨動脈閉塞症に対して:間歇性跛行により仕事や日 常生活が障害される場合で,血管内治療により症状が 改善する見通しがあり,かつ a)運動療法や薬物療法 では満足できる改善がなかった場合,and/or b)十分 な risk/benefit ratioが期待される(エビデンスレベルA)  2) 血管内治療が薦められる腸骨動脈,大腿∼膝窩動脈病

変は TASC type Aである(エビデンスレベルB)  3) 造影で50∼75%の狭窄病変は拡張術前に有意性を診 断するため圧較差を評価すべきである(エビデンスレ ベル C)  4) 救急ステント留置:手技的失敗や不十分なPTAで,圧 較差がある場合,50%以上の狭窄の遺残,血流を障害 する解離等がある場合は,救済措置としてステント留 置が適応となる(エビデンスレベル B)  5) 総腸骨動脈狭窄・閉塞病変のPTA/ステント:第一選択 の治療として有効である(エビデンスレベルB)  6) 外腸骨動脈の狭窄・閉塞病変に対するステント:第一 選択治療として有効である(エビデンスレベル C) クラスⅡ a:  1) 大腿,膝窩,脛骨動脈へのPTA失敗に対するステント および他の補助的手技:手技的失敗や不十分な PTAで, 圧較差がある場合,50%以上の狭窄の遺残,血流を障 害する解離等がある場合は,救済措置として大腿,膝窩, 脛 骨 動 脈 へ ス テ ン ト 留 置 や LASER,cutting balloon, atherectomy,thermal device等は有効となりうる(エビ デンスレベル C) クラスⅡ b:  1) 大 腿 ∼ 膝 窩 動 脈 領 域 に お い てstent,LASER,cutting balloon,atherectomy,thermal device等はその有効性 が確立されていない(エビデンスレベル A)  2) 膝下領域においてuncovered/uncoated stents,LASER, cutting balloon,atherectomy,thermal device等 は そ の 有効性が確立されていない(エビデンスレベル C) クラスⅢ:  1) 血管内治療は圧較差がない場合は適応とならない(エ ビデンスレベル C)  2) 大腿,膝窩,脛骨動脈領域の一期的ステント留置は薦 められない(エビデンスレベル C)  3) 血管内治療は無症状の患者における予防的治療として は適応すべきでない(エビデンスレベル C) 表 4 間歇性跛行に対する血行再建の適応 (ACC/AHA Practice Guidelines より) 1)患者が困っていること

2)薬物治療が無効であったこと 3)他に重大な合併疾患がないこと 4)病変が形態病理学的に治療できること 5)risk / benefit ratioが低いこと

(12)

〈推奨事項〉 血行再建の非適応(表5) クラスⅢ 1)CLIへの進行を防止するための予防的血行再建術は 適応として妥当でない(エビデンスレベルB). 2)若年者IC例(<50歳)に対する外科的血行再建の 有用性は不明確である(エビデンスレベルB). ②重症虚血肢(CLI)  CLIは通常,多発閉塞型をする.一般に血行再建の適 応条件は,危険因子が手術侵襲に耐えられる範囲にあり, 1年以上の生存が期待できることである. 1)CLI に対する血管内治療(表6)  Inflow(腸骨動脈)病変再建により改善が得られない 場合にはoutflow再建が必要となるが,その適応は感染, 潰瘍,壊疽等が存続して治癒せず,通常はABI<0.8で ある. 2)CLI に対する外科的血行再建(表7)  生命予後が不良な合併疾患の存在,肢関節拘縮,広範 な足壊疽,全身状態不良等の制限がなければ適応される. ただし広範囲な壊疽に対し,必ずしも一期的切断が第一 選択とは言えない.

3

閉塞型からみた血行再建術の適応

①大動脈 - 腸骨動脈病変の血行再建  びまん性病変に対する血管内治療成績は大動脈-両側 大腿動脈バイパスに比べて劣っているが(表8,9),死 亡率や合併症の発生率,日常生活への復帰の点では有意 に優れている.血管内治療と外科的血行再建術の選択は, 患者の全身状態や病変の解剖学的所見によって決められ る(表10). 1)血管内治療(表10-A,表11)

 血管拡張術,ステント,atherectomy,laser,cutting balloons,thermal angioplasty,fibrinolysis(thrombolysis) が含まれる.

 治療成績は,長い狭窄や閉塞病変,びまん性病変,末 梢run-off不良,糖尿病,腎不全(維持透析),喫煙,

表 6 重症虚血肢に対する血管内治療 (ACC/AHA Practice Guidelines より) クラスⅠ: 1)inflow およびoutflow 動脈に有意病変を有する多発閉塞 重症虚血肢ではまず inflow病変を治療する(エビデン スレベル C) 2)多発閉塞例のinflow病変に対する血行再建で重症虚血 症状や感染が改善しない場合には outflow病変にも血行 再建を加える(エビデンスレベル B) 3)inflow 狭窄病変の血行力学的有意性が明らかでない場 合は,血管拡張薬投与下に圧較差を測定する(エビデ ンスレベル C) 表 7 重症虚血肢に対する外科的血行再建 (ACC/AHA Practice Guidelines より) クラスⅠ: 1)inflow およびoutflow 動脈に有意病変を有する多発閉塞 重症虚血肢ではまず inflow病変を治療する(エビデン スレベル B) 2)inflow およびoutflow 動脈に有意病変を有する多発閉塞 重症虚血肢で inflow病変に対する血行再建後に重症虚 血症状や感染が続く例には outflow病変の血行再建を行 うべきである(エビデンスレベル B) 3)足底体重加重域の壊疽,修復不能な関節拘縮,肢不全 麻痺,高度の安静時疼痛,敗血症,合併疾患による生 命予後不良等では一期的切断を考慮すべきである(エ ビデンスレベル C) クラスⅢ: 重症虚血症状がなくてかつ下肢血行が高度に障害されてい る例(ABI<0.4)は外科的血行再建および血管内治療の適 応がない(エビデンスレベル C) 表 8 大動脈腸骨動脈閉塞病変に対する腸骨動脈拡張術の成績 (TASC Ⅱより) 間歇性跛行例 技術的成功率 一次開存率 1年 3年 5年 76% (81-94) (90-99)96% (81-94)86% (72-90)82% (64-75)71% 表 9 大動脈腸骨動脈閉塞病変に対する大動脈 - 両側大腿動脈 バイパス術成績 5年 10年 間歇性跛行(例数)       (肢数) 85%(85-89)91%(90-94) 79%(70-85)86%(85-92) 重症虚血肢(例数)       (肢数) 80%(72-82)87%(80-88) 72%(61-76)81%(78-83) 表 10-A 大動脈 - 腸骨動脈病変の血行再建:推奨事項 (TASC Ⅱより) TASC A病変: 血管内治療,D病変はバイパスが第一選択の 治療である(エビデンスレベル C) TASC B病変: 血管内治療,C病変は手術治療が推奨される が,患者のリスク,手術成績等を考慮し選択 されるべきである(エビデンスレベル C) 表 10-B Inflow(大動脈腸骨動脈)病変に対する外科的血行再建

(ACC/AHA Practice Guidelines より) クラスⅠ: 1)再建が必要な大動脈-両側腸骨動脈病変には大動脈両側 大腿動脈バイパスが推奨される(エビデンスレベル A) 2)一側腸骨動脈病変では腸骨動脈の内膜摘除術,パッチ 形成術,大動脈腸骨動脈バイパス,腸骨大腿動脈バイ パス等が選択されるべきで,また大動脈両側大腿動脈 バイパスが適さない両側腸骨動脈病変例では,上記と 大腿大腿動脈バイパスの併用による再建が選択される べきである(エビデンスレベル B) 3)腋窩大腿大腿動脈バイパスは広範な大動脈腸骨動脈病 変の重症虚血肢で他の治療法が適さない場合に選択さ れるべきである(エビデンスレベル B)

(13)

CLI等で低下する.PTA/ステント治療後の血栓閉塞防 止 と し て, 術 中 はheparin, 長 期 的 に はaspirinや clopidogrelの生涯投与が推奨されている. 2)外科的血行再建(表10-B)  術式には,バイパス術と血栓内膜摘除術がある.びま ん性閉塞に対しては,大動脈-両側大腿動脈バイパスが 第一選択術式である.  非解剖学的アプローチは全身リスクの高い症例で選択 され,腋窩-大腿動脈バイパスや大腿-大腿動脈交差バイ パスが行われる(表12). ②大腿 - 膝窩動脈病変の血行再建(表13,表14) 1)血管内治療(表14,表15)  バイパス術との臨床比較試験では,浅大腿動脈狭窄・ 閉塞で病変が長い例では,バイパスが明らかに優ってい た(82%対43%). 2)外科的血行再建術(表14-B)  膝上,膝下とも自家静脈グラフトが最良の開存率を示 すが(エビデンスレベルA),膝上膝窩動脈へのバイパ スには人工血管が使用される場合が多い. ③膝下膝窩動脈以遠の血行再建  CLIに対する救肢が目的となる.自家静脈グラフトに よるバイパスが第一選択の治療であるが,時にはPTA の併用が有効な例がある. 表 12 非解剖学的バイパス術の 5 年開存率 5年開存率 腋窩 -片側大腿動脈バイパス 腋窩 -両側大腿動脈バイパス 大腿 -大腿動脈バイパス 51%(44-79) 71%(50-76) 75%(55-92) 表 14-A 大腿 - 膝窩動脈病変に対する血行再建: 推奨事項(TASC Ⅱより)  TASCの適応推奨は,inflow再建と同様である:  TASC A病変は血管内治療,D病変は手術  (バイパス)が第一選択の治療である(エビデンスレベル C)  TASCB病変は血管内治療が望ましく,C病変はリスクが高 くなければ手術治療が推奨されるが,患者のリスク,手術成 績等を考慮し選択されるべきである 表 11 大動脈腸骨動脈病変の TASC 分類(TASC Ⅱより) A 型病変 CIAの片側あるいは両側狭窄 EIAの片側あるいは両側の短 い(≦ 3cm)単独狭窄 B 型病変 腎動脈下部大動脈の短い(≦ 3cm)狭窄 片側 CIA閉塞 CFAには及んでいないEIAで の 3∼10cmの単独あるいは 多発性狭窄 内腸骨動脈または CFA起始 部を含まない片側 EIA閉塞 C 型病変 両側 CIA閉塞 CFAに は 及 ん で い な い3∼ 10cmの両側EIA狭窄 CFAに及ぶ片側EIA狭窄 内腸骨動脈および /または CFA起始部の片側EIA閉塞 内腸骨動脈および /または CFA起始部あるいは起始部 でない,重度の石灰化片側 EIA閉塞 D 型病変 腎動脈下部大動脈腸骨動脈 閉塞 治療を要する大動脈および 腸骨動脈のびまん性病変 片 側 CIA,EIAお よ びCFAを 含むびまん性多発性狭窄 CIAおよびEIA両方の片側閉 塞 EIAの両側閉塞 治療を要するがステントグ ラフト内挿術では改善が見 られない AAA患者,あるい は大動脈または腸骨動脈外 科手術を要する他の病変を 持つ患者の腸骨動脈狭窄 CIA;総腸骨動脈,EIA;外腸骨動脈,CFA;総大腿動脈, AAA;腹部大動脈瘤 表 13 大腿膝窩動脈病変の TASC 分類(TASC Ⅱより) A 型病変 単独狭窄≦ 10cm長さ 単独狭窄≦ 5cm長さ B 型病変 多発性病変(狭窄または閉塞), 各≦ 5cm 膝 下 膝 窩 動 脈 を 含 ま な い ≦ 15cmの単独狭窄または閉塞 末梢バイパスの流入を改善する ための脛骨動脈に連続性を持た ない単独または多発性病変 重度の石灰化閉塞≦ 5cm長さ 単独膝窩動脈狭窄 C 型病変 重度の石灰化があるかあるいは ない,全長> 15cmの多発性狭 窄または閉塞 2回の血管内インターベンショ ン後に,治療を要する再発狭窄 または閉塞 D 型病変 CFAま た はSFA( >20cm, 膝 窩動脈を含む)の慢性完全閉塞 膝窩動脈および近位三分枝血管 の慢性完全閉塞 CFA;総大腿動脈,SFA;浅大腿動脈

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1)バイパス術  バイパス先は,病変のない足部へ連続する流出路を有 する動脈が選択される.手術死亡率は1~6%である. 2)血管内治療  成功の条件として閉塞分節が短く,標的血管数が少な いこと等が挙げられる.PTAを行うにあたっては,失敗 後の救肢的バイパス術が困難とならないように,末梢吻 合部やoutflow血管を温存する等,適応範囲に関して綿 密な検討を行う.末梢型広範病変(多発分節狭窄・閉塞) においては,一般にPTAの成功率は低い.

3

薬物療法およびその他の治療法

 TASCⅡに沿いながら,ただし薬物療法に関しては日 本で使用可能な薬品で,日本での臨床試験の結果を踏ま えながら指針を示した.  間歇性跛行に対する治療の基本は,薬物療法と運動療 法である.重症虚血肢には,可能な限り血行再建術を行 う.全身の心血管リスクを低減させるべく,二次予防や 基礎疾患の管理も求められる.

1

運動療法

〈推奨事項〉 クラスⅠ 1.すべての間歇性跛行患者に対する初期治療の一環と して,監視下運動療法を推奨する(エビデンスレベル A). 2.最も効果的な運動法として,トレッドミルまたはト ラック歩行が推奨される.跛行を生じるに十分な強度 で歩行し,疼痛が中等度になれば安静にすることを繰 り返し,1回30~60分間行う.基本的に週3回3か月 間行う(エビデンスレベルA). クラスⅡa 1.監視下運動療法を行うのが難しい場合に,内服薬併 用在宅運動療法が間歇性跛行治療の第一選択になりう る(エビデンスレベルC).  TASCⅡで推奨される運動処方がある(本文参照).  患者は(1)心血管リスクファクターの評価,(2)筋骨 格系の制限・神経学的障害等による機能障害,(3)ASO 重症度評価 を行った後,監視下運動療法に参加する. 効果の継続には運動の継続が必要である.

2

薬物療法

〈推奨事項〉 クラスⅠ 1.間歇性跛行患者の歩行距離改善のため,心不全がな い場合,第一選択薬物療法としてcilostazolを投与す る(エビデンスレベルA). 2.血行再建・血管内治療後の開存性向上のために,低 用量aspirinを投与する(エビデンスレベルA). 3.全身の血管イベント抑制のために,他の心血管疾患 の病歴の有無にかかわらず,低用量aspirinを長期処 方する(エビデンスレベルA). クラスⅡa 1.間歇性跛行患者の歩行距離改善のため,cilostazol投 表 14-B Outflow(鼠径以下)の病変に対する外科的血行再建 (ACC/AHA Practice Guidelines)

クラスⅠ: 1)膝上膝窩動脈バイパスは可能ならば自家大伏在静脈を 使用すべきである(エビデンスレベル A) 2)膝下膝窩動脈バイパスは可能ならば自家大伏在静脈を 使用すべきである(エビデンスレベル A) 3)バイパスの中枢吻合部は上流に20%以上の狭窄のない 最遠位部に設定するべきである(エビデンスレベル B) 4)末梢バイパス吻合部は足部動脈に連続する血行路を有 する脛骨動脈か腓骨動脈に設定すべきである(エビデ ンスレベル B) 5)大腿脛骨動脈バイパスは同側大伏在静脈を用いるべき で,それが使用できない場合には下肢および上肢静脈 を使用する(エビデンスレベル B) 6)大腿-膝窩-脛骨動脈sequential bypassおよび足部動脈 への側副血行を有する isolated popliteal segmentへのバ イパスはいずれも有用な血行再建法であり,他に有効 な自家静脈によるバイパス法がない場合には考慮すべ きである(エビデンスレベルB) 7)切断に瀕している例で,自家静脈が使用できない場合, 人工血管による大腿 -脛骨動脈バイパスおよび動静脈瘻 増設や静脈グラフトとのコンポジットグラフト,静脈 カフ等の補助的手段を用いるべきである(エビデンス レベル B) クラスⅡ a: 自家静脈が使用できない場合,大腿膝下膝窩動脈バイパス に対する人工血管の使用は有効に使用しうる(エビデンス レベル B) 表 15 大腿膝窩動脈拡張術の成績(TASC Ⅱより) 1年開存率 3年開存率 5年開存率 狭窄 閉塞 狭窄 閉塞 狭窄 閉塞 PTA単独 77%(78-80) 65%(55-71) 61%(55-68) 48%(40-55) 55%(52-62) 42%(33-51) PTA+ステント 75%(73-79) 73%(69-75) 66%(64-70) 64%(59-67) − −

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与が不可能な患者には,他の血管拡張作用を有する抗 血小板薬を投与する(エビデンスレベルC). クラスⅢ 1.間歇性跛行患者の治療としてのvitamin E投与は推奨 されない(エビデンスレベルC). 2.Vitamin B群や葉酸の補充によるホモシステイン高値 の是正では,心血管イベントの予防効果は実証されて おらず,推奨されない(エビデンスレベルB). ①薬物療法の目的 1)症状および虚血の改善  間歇性跛行の改善に対しては,血管拡張作用を有する 経口抗血小板薬を基本とする.安静時疼痛や虚血性潰瘍 に対しては血行再建術を基本とし,補助療法として薬物 療法を併用する. 2)血行再建・血管内治療による開存率の向上  TASCⅡでは,血行再建後は禁忌がない限り抗血小板 薬を長期にわたり継続すべきであるとされている. 3)全身の血管イベント抑制  無症候性患者を含め,ASO患者は複数のアテローム 性動脈硬化症疾患のハイリスク集団である. ②各種薬剤の特徴 1)cilostazol(シロスタゾール)  抗血小板作用,血管収縮抑制作用,心拍数増加作用が ある.跛行に対して有用とのエビデンスを有する.鼠径 靱帯以下のバイパス術後のグラフト開存性に関しする有 効性,および潰瘍縮小効果が報告された.現在日本では, 心不全患者には禁忌とされている. 2)aspirin(アスピリン)  心血管イベント抑制効果が確実であるが,症状に対す る改善効果は認められていない.鼠径部以下の動脈グラ フト開存性の維持に有効とされる. 3)ticlopidine(チクロピジン)および clopidogrel(ク ロビドグレル)  強力な抗血小板作用,アテローム性動脈硬化の進行抑 制効果を有し,血行再建術後のグラフト開存への有効性 を示した(エビデンスレベルA).副作用を軽減した薬 品clopidogrelは,我が国では末梢動脈疾患への適応認可 がない. 4)sarpogrelate(サルポグレラート)  抗血小板作用と血管収縮抑制作用がある.血圧や心拍 数に影響を与えず,作用時間が短いため比較的安全に使 用できる.冷感,間歇性跛行,安静時疼痛,潰瘍の改善 効果が報告されている. 5)prostaglandin(プロスタグランジン)  血管拡張作用および抗血小板作用を有す. Prostaglan-din E1(PGE1)として,limaprost alfadex(リマプロス

トアルファデクス),alprostadil alfadex(アルプロスタ ジルアルファデクス),lipo PGE1であるalprostadil

alfa-dex(アルプロスタジル)がある.PGI2誘導体として beraprost(ベラプロスト)がある.間歇性跛行,安静時 疼痛および潰瘍治癒に対し有用性とされる. 6)eicosapentaenoic acid(EPA:イコサペンタ酸エチ ル)  日本人の高コレステロール血症患者を対象としstatin と併用した長期投与で,冠動脈イベント抑制と脳卒中の 再発抑制が認められた. 7)argatroban(アルガトロバン)  抗トロンビン薬であり,潰瘍,疼痛,冷感の改善効果 が示されている. 8)脂質低下薬  statinは,アテローム性動脈硬化症における血管内皮 および代謝異常を改善する. 9)その他の医薬品  跛行治療におけるvitamin E投与,ホモシステイン降 下療法は,効果が立証されていない.

3

重症虚血肢に対する補助療法

①血液浄化療法  ASOで次のいずれにも該当するものが適応である(1 クールにつき3か月間に限り10回を限度). 1. Fontaine分類Ⅱ度以上の症状を呈する. 2. 薬物療法で血中総コレステロール値220mg/dLま たは,LDLコレステロール値140mg/dL以下に下が らない高コレステロール血症. 3. 外科的治療が困難で,かつ従来の薬物療法では十 分な効果を得られない.  適切な頻度や回数および有効性に関するエビデンスは 得られていない. ②潰瘍ケア  可能な限り安静・免荷とする.靴は足に合うものを選 び,胼胝も足を傷つけぬよう注意して手入れする.(→ ⅩⅤ.糖尿病性足疾患 ⃝4 -2)足病変に対する治療) ③感染制御  菌に感受性のある抗生薬を投与し,ドレナージとデブ リドマンを行う.虚血を改善しないと感染も改善しない

(16)

場合が多い.全身状態等によっては患部切断も考慮する. ④交感神経ブロック・切除  跛行の改善効果はない.切断端や潰瘍の治癒を補助す る手段として用いられる. ⑤温熱療法  炭酸泉足浴等.安全性で容易であるが,効果の持続性 は高くないと考えられている. ⑥高気圧酸素療法  効果の検証が不足していること,費用が高いことが問 題である. ⑦血管新生療法  虚血性難治性潰瘍に対する先端医療として,HGF, VEGF,FGFといった遺伝子治療や自己骨髄単核球細胞 移植,末梢血単核球細胞移植が行われているが,現段階 では研究的医療である.HGF遺伝子治療と自己骨髄単 核球細胞移植に関しては,我が国での臨床試験で有効性 が報告された.

4

心血管リスクファクターの管理

(無症候性患者を含む)

〈推奨事項〉 クラス1 1.低用量aspirinを投与する(エビデンスレベルA). 2.β遮断薬はPADにとって禁忌ではない(レベルA). 3.無症候性下肢虚血を有する患者には,禁煙,減量, および高脂血症,糖尿病,高血圧の現行の国の治療ガ イドラインに従った治療が勧められる(エビデンスレ ベルB).  β遮断薬は,冠動脈疾患を合併するASO患者には心 保護作用による利益も望め,高血圧治療に使用してもよ い.喫煙は疾患の重症度,切断リスクの増大,死亡率お よび血行再建術後のグラフト閉塞に悪影響を与える.  

頸動脈,椎骨動脈

 ここではNASCETで用いられた狭窄率を基準とする.  NASCETで用いられた狭窄率:(1-狭窄部の最小内腔 径/内頸動脈が平行になった部位での内腔径)×100

1

頸動脈狭窄症に対する頸動脈内膜摘

除術の治療基準

① 70 ~ 99%の有症状頸動脈狭窄 〈推奨事項〉 クラスⅠ  有症状頸動脈狭窄については手術リスクが6%以下の 患者で,最近6か月以内に一過性脳虚血発作,あるいは 中等度以下(Rankin Score 2以下)の脳梗塞を伴う70% 以上の有症状頸動脈狭窄が手術(周術期合併症,死亡が 6%以下の外科医による)の最も良い適応である(エビ デンスレベルA).  症状発症から1年以内が最も脳梗塞の発症頻度が高 く,3年以上経つと年間5%以下となることから,症状 発現後ある程度以上時間が経つと手術の有用性は低下す る. ② 50 ~ 69%の有症状頸動脈狭窄 〈推奨事項〉 クラスⅠ  手術リスクが3%以下で少なくとも5年以上の生存が 見込まれる患者においては最近6か月以内に一過性脳虚 血発作,あるいは中等度以下の脳梗塞を伴う50~69% の有症状頸動脈狭窄に対しても年齢,性別,並存疾患, 最初の症状の重症度によっては手術の適応となる(エビ デンスレベルA). クラスⅡa  手術適応の場合は症状出現後,2週間以内の手術が有 効である(エビデンスレベルB).  具体的には75歳以上,男性,高度な狭窄,一過性脳 虚血発作よりは脳梗塞,黒内障よりは大脳半球に関連す る症状を有する症例で手術がより有効と考えられた. ③ 50%以下の有症状頸動脈狭窄 〈推奨事項〉 クラスⅢ  狭窄度が50%以下の場合は手術の適応はない(エビ デンスレベルA). ④有症状頸動脈閉塞 〈推奨事項〉 クラスⅢ

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 有症状頸動脈閉塞に対して頭蓋外/頭蓋内バイパス手 術は常には勧められない(エビデンスレベルA). ⑤無症候性頸動脈狭窄に対する治療適応 〈推奨事項〉 クラスⅠ  手術リスクが3%以下で少なくとも5年以上の生存が 見込まれる患者においては,60%以上の無症候性頸動 脈狭窄が頸動脈内膜摘除術の適応と考えられる(エビデ ンスレベルA).

2

頸動脈内膜摘除術のハイリスク群

 病変が第2頸椎より高位まで存在する場合,頸動脈内 膜摘除術後の再狭窄,頸部廓清手術の後,頸部放射線療 法のあと,重篤な心不全,呼吸不全,心筋梗塞を起こし て6か月以内の患者,冠動脈バイパスとの同時手術等.

3

合併症がある場合の治療適応

 重症の腎,肝,呼吸,心不全,コントロール不良な糖 尿病,高血圧,5年以上の生存が期待できない悪性腫瘍 等が併存する場合,脳塞栓を起こす心原性等の他の原因 が認められる場合,頸動脈分岐部と同等以上の末梢病変 が存在する場合は内科的治療が選択される.

4

頸動脈ステント留置術の適応

〈推奨事項〉 クラスⅡb  70%以上の有症状頸動脈狭窄で狭窄が手術で到達す るには難しい場合,手術リスクを大きく増大させる健康 状態が存在する場合,あるいは放射線治療後の頸動脈狭 窄,頸動脈内膜摘除術後再狭窄等の特殊な条件下では頸 動脈ステント留置術は手術に対して成績は劣らず適応が 検討される(エビデンスレベルB). クラスⅡa  頸動脈ステント留置術は周術期合併症率,死亡率が4 ∼6%の術者によりなされるべきである(エビデンスレ ベルB).

 有症状高度狭窄に対するdistal protection deviceを用 いた頸動脈ステント留置術が認可され,我が国でもハイ リスク有症状高度狭窄に限り頸動脈ステント留置術が認 可された.

5

頭蓋外椎骨動脈狭窄

〈推奨事項〉 クラスⅡb  抗血栓薬,脂質低下薬,その他の危険因子の治療薬等 の内科的治療にもかかわらず症状が治まらない有症状頭 蓋外椎骨動脈狭窄に対して血管内治療が適応となりうる (エビデンスレベルC).

腹部内臓動脈

1

急性腸間膜動脈閉塞症

 主な原因は塞栓症,動脈血栓症,易血栓形成状態,急 性動脈解離等である.

1

診断

〈推奨事項〉 クラスⅠ 1.腹部の理学所見がなくても,心血管疾患の既往のあ る患者の急性腹痛では急性腸管虚血の可能性がある (エビデンスレベルB). 2.内臓血管周囲や中枢血管の血管内治療を行った症例, 心房細動等の不整脈や心筋梗塞直後の症例での急性腹 痛では,急性腸管虚血の可能性がある(エビデンスレ ベルC). クラスⅢ 1.慢性腸管虚血とは異なり,急性腸管虚血では腹部超 音波検査は診断に有用性が低い(エビデンスレベル C).  高齢の男性に多い.初めは腹膜刺激所見がない.特異 的な検査結果やレントゲン所見はない.腸管虚血を示す CT所見は,腸管血管の動脈硬化所見,動脈内血栓,小 腸拡張,腸管壁肥厚,腹水貯留,等である.腸管気腫, 門脈ガス像は発症後期での所見である.造影CTが有用 なことが多い.  腸管梗塞が疑われる場合には,外科的治療の適応があ る.血管造影は確定診断が可能であり,引き続き血管内 治療を行える点でも有用である.  発症が緩やかであり,非閉塞性腸管虚血症( nonocclu-sive mesenteric ischemia: NOMI)が疑われる場合には初

(18)

めに血管造影を行う適応がある.

2

外科治療

〈推奨事項〉 クラスⅠ  急性腸管虚血の外科治療には血行再建,壊死腸管切除, 必要なら血行再建術後24∼48時間後でのsecond look operationを行う(エビデンスレベルB).  血栓除去やバイパス術による血行再建術,血行再建後 の腸管虚血の評価等が含まれる.温存可能な腸管と切除 が必要な腸管切除を見定めるためには,second look operationも有用である.

3

血管内治療

〈推奨事項〉 クラスⅡb  経皮的治療(血栓溶解療法,バルーン拡張術,ステン ト留置術)は適応患者を選択的に行えば適切である.治 療後にも開腹術を必要とする可能性は残る(エビデンス レベルC).  血栓溶解療法等薬物療法は無効なことも多く,主に外 科的治療が行われる.

2

慢性腸間膜動脈閉塞症

 やや女性に多く40∼60歳に好発し,典型的症状は, 食事により誘発される腹痛,体重減少,便通異常である.

1

診断

〈推奨事項〉 クラスⅠ 1.原因不明の腹痛,体重減少患者で特に心血管系疾患 を有する患者では,慢性腸管虚血の可能性がある(エ ビデンスレベルB). 2.診断のためにただちに行う検査として,超音波,CT angiography(CTA),MRA検査は有用である(エビ デンスレベルB). 3. 確 定 診 断 に は 血 管 造 影 で の 側 面 像 ま た は3D-CT angiographyが有用で,腸間膜動脈の狭窄または閉塞 と,側副血行を認める(エビデンスレベルB).  特異的な血液検査所見はない.病変は大動脈からの起 始部に形成されることが多く,超音波検査による描出も 可能である.

2

血管内治療

〈推奨事項〉 クラスⅠ  慢性腸間膜動脈閉塞性疾患には血管内治療の適応があ る(エビデンスレベルB).

3

外科治療

〈推奨事項〉 クラスⅠ  慢性腸管虚血には手術治療の適応がある(エビデンス レベルB). クラスⅡb  大動脈や腎動脈の動脈硬化性疾患の治療歴がある場 合,無症状の腸間膜動脈閉塞性病変に対して血行再建術 を考慮してもよい(エビデンスレベルB). クラスⅢ  大動脈や腎動脈の動脈硬化性疾患の治療歴がない無症 状例においては,血行再建術の適応ではない(エビデン スレベルB).  外科的治療としては血栓内膜摘除術やバイパス術があ る.

3

腹腔動脈起始部圧迫症候群

 腹腔動脈が横隔膜正中弓状靭帯によって圧迫されるこ とで血流障害が生じ,腹痛等の内臓虚血症状を引き起こ す疾患群である.

1

診断

 体位により変化する食後の腹痛(37%),嘔気,嘔吐, 下痢(65%),体重減少(61%).  側面,斜位での血管造影で腹腔動脈が圧迫され,特に 深呼吸時に狭窄が高度となる.

2

治療

 通常は腹腔動脈根部の露出と正中弓状靭帯の切開が第 一選択であるが,十分な血流改善が得られない場合には バイパス術も考慮する.腹腔鏡下での正中弓状靭帯の切 開も可能である.

(19)

4

腸間膜血行不全症

(非閉塞性腸間膜虚血症)

 非閉塞性腸管虚血症(NOMI: nonocclusive mesenteric ischemia)は器質的な血管閉塞は存在せず,主幹動脈が 開存しているにもかかわらず,腸管の虚血を来たし腸管 壊死にも至る予後不良な疾患である.

1

診断

〈推奨事項〉 クラスⅠ 1.非閉塞性腸管虚血は,心拍出量減少や心原性ショッ ク患者での腹痛時に疑われる(エビデンスレベルB). 2.基礎疾患の治療にもかかわらず速やかに改善が見ら れないNOMI疑い症例では,血管造影の適応がある (エビデンスレベルB).  特異的な理学所見や検査所見はない.血管造影では特 徴的な血管のスパズムが描出できる.

2

治療

〈推奨事項〉 クラスⅠ 1.ショック状態離脱の治療が最優先である(エビデン スレベルC). 2.治療抵抗性のNOMIでは開腹術と壊死腸管の切除の 適応である(エビデンスレベルB). クラスⅡa  経カテーテル的血管拡張薬の使用は全身的治療が無効 な場合,またはコカインやエルゴットによる腸管虚血の 患者に対して適応である(エビデンスレベルB).  腹膜刺激症状や発症後12時間以上経過した症例では 腸管壊死の可能性が高く,内科的治療にもかかわらず腹 部症状が持続する時は,すみやかに開腹術や腸管切除を 考慮する.

腎動脈

1

原因

 腎動脈狭窄(renal artery stenosis: RAS)の約90%は 動脈硬化が原因である.次いで線維筋性異形成( fibro-muscular dysplesia: FMD)が多く,その他の原因に高安 動脈炎,腎動脈瘤,塞栓症,Williams症候群,神経線維 腫症,腎動脈解離,動静脈奇形,外傷等がある.

2

頻度

 心臓カテーテル検査の際,我が国では7%,欧米では 30%にRASが見られたという報告がある.欧米では65 歳以上において6.8%との推計がある.

3

治療方針

 ACC/AHAガイドラインで「腎動脈」についての指針 が述べられている.

1

薬物療法

〈推奨事項〉 クラスⅠ 1.アンジオテンシン変換酵素阻害薬は片側性RASに伴 う高血圧治療に有効である(エビデンスレベルA). 2.アンジオテンシン受容体拮抗薬は片側性RASに伴う 高血圧治療に有効である(エビデンスレベルB). 3.カルシウム拮抗薬は片側性RASに伴う高血圧治療に 有効である(エビデンスレベルA). 4.β遮断薬はRASに伴う高血圧治療に有効である(エ ビデンスレベルA).  レニン-アンジオテンシン系抑制薬により,両側性 RAS患者では腎機能の急速な悪化が見られる場合があ る.動脈硬化患者ではあわせて禁煙,糖尿病や脂質異常 の管理,抗血小板薬投与等が行われる.

表 5 間歇性跛行に対する血管内治療 (ACC/AHA Practice Guidelines より) クラスⅠ:  1) 腸骨動脈閉塞症に対して:間歇性跛行により仕事や日 常生活が障害される場合で,血管内治療により症状が 改善する見通しがあり,かつ a)運動療法や薬物療法 では満足できる改善がなかった場合,and/or b)十分 な risk/benefit ratioが期待される(エビデンスレベルA)  2) 血管内治療が薦められる腸骨動脈,大腿∼膝窩動脈病
図 1 Buerger 病の動脈閉塞様式

参照

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