72 ─ 332 ポリエーテルケトンケトン(略号 PEKK)は高い生体親和性を示すことから,インプラント治療への応用に期待されてい る.しかし,PEKK とレジンセメントを化学的に接着させることは困難であることが知られている.そこで,本研究では簡 便な表面処理法であるロカテック処理およびサンドブラスト処理を用いて,各種接着システムの種類が PEKK とレジンセメ ントの接着強さに及ぼす影響を検討した. 各種接着システムは Superbond/V primer(SB/VP), Superbond/PZ primer(SB/PZP), Panavia V5/Clearfil Ceramic Primer Plus(PV5/CP),グラスアイオノマーセメント(GI)を使用した.セメントおよびプライマーをメーカー指示どお りに用い,PEKK 接着試験体を製作し,せん断接着強さを測定した.また,走査型電子顕微鏡(SEM)による観察ならびに 表面処理後の PEKK 表面の表面粗さの測定も行った. その結果,PEKK 表面にロカテック処理またはサンドブラスト処理すると,すべての接着システムにおいて接着強さの向 上が認められた.しかし,ロカテック処理法はサンドブラスト処理法よりも有意に低い値を示し,多くの接着欠陥を認め た.サンドブラスト処理した PEKK 表面に SB/PZP を用いると最大接着強さを示した.両処理面の表面粗さに有意差は認 めなかった. 以上より,PEKK 表面にロカテック処理を施すと,形成されたシリカコーティング膜は剝離膜として作用したため,サン ドブラスト処理した場合よりも低い接着強さを示したと考えた.また,各接着システム間においては異なる接着強さの値を 示した. キーワード:ポリエーテルケトンケトン,接着強さ,サンドブラスト処理,ロカテック処理
表面処理法および各種接着システムの種類が
ポリエーテルケトンケトンの接着に及ぼす影響
緒 言
近年,CAD/CAM システムなどのデジタル機器が進歩 し,チタンやコバルトクロム,ジルコニアなどを用い て,アバットメントやインプラント上部構造を製作する ことが可能となった.しかし,これらの材料は弾性率 (剛性率)が高いため1~3),インプラント体が咀嚼時の荷 重を直接歯周組織に伝達し,インプラント体の生存率を 低下させる可能性がある4,5). スーパーエンジニアリングプラスチックの一つである ポリエーテルケトンケトン(略号 PEKK)はチタンやコ バルトクロム,ジルコニアに比べ弾性率が低く,ヒト皮 質骨や天然歯象牙質の弾性率に近似しているため6,7), PEKK がインプラントのアバットメントやフレームワー クに応用できれば,ショックアブソーバーとしてインプ ラント体に加わる咀嚼時の荷重を軽減できる可能性が指 摘されている8~10).PEKK で製作されたアバットメント やインプラント上部構造を長期間口腔内に維持させるた めには,レジンセメントを用いてインプラント体に PEKK 製作物を強固に接着させる必要がある.しかし, PEKK は化学的に安定な構造を有しているため,化学的 にレジンセメントを接着させることは困難である. これまでレジンセメントを接着させるため,PEKK 表 面の前処理法が種々検討されている.SCHMIDLIN らは 1) 一般社団法人日本インプラント臨床研究会(施設長: 田中譲治) 2) 日本大学松戸歯学部クラウンブリッジ補綴学・口腔イ ンプラント学講座 3) 関東・甲信越支部 2019 年 5 月 30 日受付村上 高宏
1,2)田中 譲治
1)菅野 岳志
1)笹谷 和伸
1)水口 稔之
1)岩野 義弘
1)三輪 武人
3)PEKK 表面を濃硫酸で処理するとレジンセメントと PEKK との接着強さが大きく向上するが,濃硫酸で処理 すると PEKK の表面構造が過剰に破壊され,機械的な 強さの低下を招くことを指摘している11).また,ZHOU らや SCHWITALLA らは,プラズマ発生装置を用いて PEKK 表面に官能基を導入すると,レジンセメントの接 着強さが向上することを報告しているが12,13),プラズマ 発生装置は大規模な設備を必要とするため,臨床的に応 用するのは困難であると考えられる. 一方,ロカテック処理法は,被着面にシリカコーティ ングされたアルミナ粒子をブラスト処理することで,微 小嵌合ならびにシリカコーティング層を同時に形成する 手法であるが,最も簡便な表面処理法として知られてい る14).多くの研究者らは,ロカテック処理を施したジル コニア被着面に,MDP 含有セラミックプライマーと接 着性レジンセメントを応用すると,ジルコニアとレジン セメントの接着強さは大きく向上することを報告してい る15~17). そこで本研究では,ジルコニアの接着に有効であるロ カテック処理法に着目し,ロカテック処理法とサンドブ ラスト処理法の比較検討ならびに各種接着システムの種 類が,PEKK とレジンセメントの接着強さに及ぼす影響 を検討した.
材料および方法
本研究では,レジンセメントとして,MMA 系レジン セメント(Superbond:略号 SB,サンメディカル,守山) とコンポジット系レジンセメント(Panavia V5:略号 PV5,クラレ,東京)を使用した(表 1).接着性プラ イマーとして,SB に付属する金属接着性プライマー(V primer:略号 VP,サンメディカル)ならびにセラミッ クプライマー(PZ primer:略号 PZP,サンメディカル) を用い,以下,前者を SB/VP 接着システム,後者を SB/ PZP 接着システムとした.また,PV5 に付属する接着 性プライマーとして,セラミックプライマー(Clearfil Ceramic Primer Plus:略号 CP,クラレ)を用い,以下, PV5/CP 接着システムとした.なお,コントロールとしてグラスアイオノマーセメント(Ketac Cem Easymix: 略号 GI,3M ESPE,Minnesota,USA)を用いた.
PEKK 被 着 体 と し て,Pekkton (Cendres+Métaux, Biel, Switzerland, 90mass%:PolyEtherKetoneKetone, 10mass%:Titanium dioxide)をディスク状(直径 12 mm,高さ 5 mm)に切削・加工し,その表面を耐水研 磨紙 (#240, 320, 400, 600, 800, 1000, 1200, 1500, 2000 の 順 に ) に て 注 水 下 で 研 磨 し た. こ の 条 件 を PEKK 研磨面とした.その後,PEKK 研磨面を蒸留水に て超音波洗浄し,エアー乾燥して実験に供した. 1. PEKK 被着面の調製 PEKK 研磨面に平均粒径 110 nm のシリカコーティン グアルミナ粒子(Rocatec Sand Puls,3M ESPE)を Jet Blast Ⅱ(モリタ,京都)にて噴射した.なお,噴射圧 は 0.2 MPa, ブ ラ ス ト 時 間 は 10 秒 間, ノ ズ ル か ら PEKK 表面までの距離は 10 mm とした.この条件を PEKK ロカテック面とした. また,同条件で PEKK 研磨面に平均粒径 110 nm のア ルミナ粒子(Cobra,Renfert,Germany)をブラスト処 理した.その後,蒸留水にて超音波洗浄し,エアー乾燥 して被着面とした.この条件を PEKK ブラスト面とした. 2. 表面粗さの測定
PEKK 研磨面,PEKK ロカテック面,PEKK ブラスト 面の表面粗さは,表面粗さ測定器(SURFCOM130A,東 京精密,東京)を用い,算術平均粗さ(Ra)を求めた. なお,各試験体の被着面中央部をそれぞれ 10 個,合計 で 30 個測定した. 3. PEKK 研磨面,PEKK ロカテック面および PEKK ブラスト面へのプライマー処理 メーカー指示書に従い,PEKK 研磨面,PEKK ロカ テック面および PEKK ブラスト面にそれぞれのプライ マーを所定時間作用させた.その後,10 秒間エアーブ ロ ー し,PEKK 研 磨 面,PEKK ロ カ テ ッ ク 面 お よ び PEKK ブラスト面にプライマー処理を行った. 接着システム セメント プライマー 成分 製造 SB/VP SB/PZP PV5/CP GI Superbond C&B Superbond C&B Panavia V5 Ketac Cem Easymix
V primer
PZ primer Liquid A Liquid B Clearfil Ceramic Primer Plus ─ 0.5% VBATDT, acetone MMA,MDP, others MMA,c-MPTS MDP,c-MPTS,Ethanol ─ サンメディカル サンメディカル クラレ 3M ESPE 表 1 本研究で使用したセメントおよびプライマーの組成
4. 接着試験体の作製 プライマー処理した PEKK 研磨面,PEKK ロカテック 面,PEKK ブラスト面にシリコーン製リング(内径 3.2 mm,高さ 1.0 mm)を両面テープにて仮着し,リング 内にそれぞれのレジンセメントを充填した.SB/VP 接 着システム,SB/PZP 接着システムの場合は室温(25℃) に 10 分間放置し,SB を重合させた.PV5/CP 接着シス テムの場合は PV5 を充填した後,ただちに光照射器 (MiniLED Ⅲ,ACTEON,Marseille,France)を用いて 10 秒間光照射,室温に放置し,PV5 を重合させた. な お,GI は PEKK 研 磨 面,PEKK ロ カ テ ッ ク 面, PEKK ブラスト面に直接充填し,10 分間室温にてセメ ントを硬化した. レジンセメントまたは GI を室温に放置して硬化させ た後,シリコーン製リングを除去し,作製した接着試験 体を 37℃温水中に保管した. 各表面処理法および各接着システムにおいて,接着試 験体をそれぞれ 10 個ずつ作製し,合計で 120 個の接着 試験体を作製した. 5. せん断接着強さの測定 37℃温水中に 24 時間浸漬した試験体について,せん 断接着強さを万能試験機(TG-5kN,ミネベアミツミ, 長野)にて測定した.なお,クロスヘッドスピードは 1 mm/min の条件にて行った. 6. 統計処理 表面粗さおよびせん断接着強さのデータから平均値な らびに標準偏差を算出した後,一元配置分散分析および Scheffé の多重比較検定により統計解析し,有意差判定 を行った.なお,危険率は 5%に設定した. 7. 破壊様式の分類 せん断接着強さの測定を行った後,各接着試験体の PEKK 被着面を実体顕微鏡(LEICA M60,Leica,Wetz-lar,Germany)にて観察し,破壊様式の分類を行った. 破壊のタイプは,次の 3 つのカテゴリーに分類した.す なわち,Category 0 は PEKK 表面でのレジンセメント の界面剥離,Category 1 は PEKK 表面での界面剥離と レジンセメントの凝集破壊からなる混合破壊,Category 2 はレジンセメントの凝集破壊である. 8. 走査型電子顕微鏡像(SEM 像) シリカコーティングアルミナ粒子,アルミナ粒子, PEKK ロカテック面,PEKK ブラスト面,および接着試 験後の試験体表面にイオンコーター(IB-3,エイコー, 東京)にて金─パラジウム合金を蒸着した後,SEM(S-3400N,日立,東京)を用いて,PEKK 表面の観察を行っ た. なお,シリカコーティングアルミナ粒子とアルミナ粒 子は 300 倍,PEKK ロカテック面と PEKK ブラスト面 は 300 倍と 1,000 倍,接着試験後の試験体表面は 1,000 倍でそれぞれ観察した.
結 果
1. 表面処理法が PEKK 表面の性状に及ぼす影 響 シリカコーティングアルミナおよびアルミナの粒子径 (図 1a,b)と比較して,PEKK 表面の衝突痕の大きさ は非常に小さく,ロカテックとサンドブラスト処理の間 で衝突痕の大きさに相違は認められなかった(図 1c~f). 2. 表面処理法および各接着システムの種類が PEKK の接着強さに及ぼす影響 PEKK 研磨面にロカテックまたはサンドブラスト処理 すると,表面粗さは有意に上昇した(表 2,p<0.05). また,接着強さも同様に,すべての接着システムにおい て有意な上昇が認められた(p<0.05). しかし,ロカテックおよびサンドブラスト処理した PEKK 表面粗さにおいて有意差を認めなかったが(p> 0.05),各接着システムの接着強さはロカテック処理の ほうがサンドブラスト処理よりも低い値を示し,ロカ テック処理とサンドブラスト処理との間には統計学的な 有意差が認められた(p<0.05). また,すべての表面処理法において,SB/PZP 接着シ ステムは最も高い接着強さを示し(表 2),PEKK 研磨 面にサンドブラスト処理と SB/PZP 接着システムを併 用すると最大接着強さを示した(p<0.05). 3. 表面処理法および各接着システムの種類がせ ん断試験後の破壊様式に及ぼす影響 PEKK 研磨面において,すべてのレジン接着システム は PEKK 表面からレジンセメントが界面剥離し,破壊 のモードは Category 0 を示した(表 3).しかし,PEKK 研磨面をロカテックまたはサンドブラスト処理すると, その表面にレジンセメントが残留し,すべてのレジン接 着システムにおいて,破壊モードは Category 1 の混合 破壊を示した(表 3). また,コントロールとして用いた GI のロカテックお よびサンドブラスト処理破断面においてセメントの凝集 破壊が認められ,破壊モードは Category 1 の混合破壊を示したが,残留物は少なかった(表 3). せん断試験後の PEKK 表面の SEM 像を図 2 に示す. ロカテック処理面またはサンドブラスト処理面に GI を 接着した場合,GI 接着システムの界面破壊・剥離に原 因する接着欠陥およびセメント内の気泡を認めた(図 2a,b).また,SB/VP 接着システム,SB/PZP 接着シ ステム,PV5/CP 接着システムのロカテック処理または サンドブラスト処理破断面も同様に,レジンセメントの 界面破壊・剥離に原因する接着欠陥が観察された(図 2c~h).すべての接着システムにおいて,接着欠陥数 はロカテック処理破断面のほうがサンドブラスト処理破 断面より多く観察された(図 2a~h). 図 1 表面処理した PEKK 表面の SEM 像 (a)シリカコーティングアルミナ粒子の SEM 像(300 倍),(b)アルミナ粒子の SEM 像(300 倍),(c)PEKK ロカテック面の SEM 像(300 倍),(d)PEKK ブラスト面の SEM 像(300 倍),(e)PEKK ロカテック面の SEM 像(1,000 倍),(f)PEKK ブラスト面の SEM 像(1,000 倍) シリカコーティングアルミナ粒子 粒子 (a) (b) (c) (d) (e) 50 μm 50 μm 50 μm (f) アルミナ粒子 表面処理した PEKK 表面 研磨面 ロカテック面 サンドブラスト面 表面粗さ(nm) 接着強さ(MPa) SB/VP SB/PZP PV5/CP GI 0.50 (0.03)A 1.9 (0.4)a A 2.1 (0.4)a A 0.5 (0.5)b A 0.3 (0.5)b A 0.73 (0.03)B 6.9 (1.4)a B 8.0 (0.7)a B 4.7 (1.6)b B 2.4 (0.9)c B 0.72 (0.04)B 10.0 (1.7)a C 11.1 (1.6)a C 8.1 (1.3)b C 4.4 (0.6)c C 表 2 表面処理法および各種接着システムの種類が PEKK の接 着強さに及ぼす影響(n=10) 小文字の異なるアルファベットは各種接着システム間での有意 差を示し,大文字の異なるアルファベットは各種表面処理法に おける有意差を示した.(p<0.05) 研磨面 ロカテック面 サンドブラスト面 SB/VP SB/PZP PV5/CP GI [10/0/0] [10/0/0] [10/0/0] [10/0/0] [0/10/0] [0/10/0] [0/10/0] [0/10/0] [0/10/0] [0/10/0] [0/10/0] [0/10/0] 表 3 表面処理法および各種接着システムの種類がせ ん断試験後の破壊様式に及ぼす影響(n=10) [0/1/2];Category 0:PEKK 表面でのセメントの 界面剥離,Category 1:PEKK 表面での界面剥離と セメントの凝集破壊からなる混合破壊,Category 2:セメントの凝集破壊.
考 察
ポリエーテルエーテルケトン(略号 PEEK)は金属よ りも高い審美性と生体親和性を有しており,良好な化学 的特性を示すことから,可撤性義歯のフレームワークや クラスプなどに応用されている18~20).しかし,固定性 歯冠補綴装置として用いる際,PEEK の機械的強度では 不十分である可能性が示唆されており21),現在,PEEK は暫間的な補綴装置に用途が限られている22).一方, PEKK は PEEK よ り も 約 80 % 高 い 圧 縮 強 度 を 示 し, PEEK と同等の高い生体親和性を有していることか ら23),インプラント体,アバットメント,インプラント 上部構造への応用に期待されているため,本研究で用い た. 本研究では,3 種のレジンセメント接着システムを用 い,PEKK の表面処理法がレジンセメントの接着強さに 及ぼす影響について検討した.その結果,3 種のレジン セメント接着システムにおいて,PEKK 研磨面にロカ テック処理あるいはサンドブラスト処理を施すと,レジ ンセメントの接着強さは PEKK 研磨面より有意に上昇 した.これは,ロカテック処理およびサンドブラスト処 理により形成された PEKK 表面の凸凹内部にレジンセ メントが侵入し,これを重合させることにより形成され たレジンタグが PEKK 表面に機械的に嵌合したためと 考えられた. しかし,レジンセメントの接着強さは 3 種のレジンセ メント接着システムにより大きく異なり,SB を用いた 2 種の接着システムは,PV5 を用いた接着システムよ り,すべての実験群において高い接着強さを与えた. SB が高い接着強さを示した理由として,シリカフィ ラーと多官能性モノマー(網目状高分子)から構成され る PV5 は,PMMA(線状高分子)を主成分とする SB よりも破壊靱性値が低く,応力集中を起こしやすいため と考えられた. ロカテック処理あるいはサンドブラスト処理における SB の接着強さは,プライマーの組成によって異なり, MDP とシランカップリング剤(略号 c-MPTS)を含有 する PZP は金属接着性モノマー(略号 VBATDT)を含 有する VP より高い接着強さを与えた.この結果は,c-MPTS のほうが VBATDT より PEKK 接着に有効である ことを示唆するものである.しかし,プライマーに含有 される c-MPTS のシリコーン官能基や VBATDT のジス ルフォキシド基は PEKK 表面に化学吸着し,レジンセ メントと化学的な接着を誘導しないため,長期的な接着 安定性は担保できないものと考えられる. PEKK ロカテック面の表面粗さは PEKK ブラスト面 とほぼ同等の値であったが,ロカテック処理した PEKK 表面に対するレジンセメントの接着強さは,サンドブラ スト処理した PEKK 表面よりも有意に低い値を示した. また,多くの接着欠陥が観察され,レジンが界面破壊す る面積の増加が認められた.IWASAKI らは,ロカテッ ク処理したジルコニア表面にシラン処理を施すと,ジル 図 2 せん断試験後の PEKK 表面の SEM 像(1,000 倍) 白矢印:接着欠陥 ロカテック処理面 破断面 サンドブラスト処理面 GI GI (a) (b) SB/VP SB/VP (c) (d) SB/PZP SB/PZP (e) (f) PV5/CP PV5/CP (g) (h) 50 μmコニア表面に形成されたシランコーティング層(SiO2) とシランカップリング剤のシラノール基(Si-OH)が化 学的に結合し,レジンセメントの化学的な接着を誘導す るため,ロカテック処理はサンドブラスト処理よりもレ ジンセメントの接着強さを向上させることを報告してい る24).しかし,本研究ではロカテック処理のほうがサン ドブラスト処理よりレジンセメントの接着強さは低く, IWASAKI らの報告とは異なる結果が得られた.MAR-TINS らは,ロカテック処理したジルコニア表面の算出 平均粗さ(Ra)を測定した結果,約 1.4 nm を示したと 報告しているが25),PEKK 表面においてはその 1/2 の大 きさの衝突痕であった.これは,PEKK が脆性材料であ るジルコニアと異なり,高分子材料特有の粘弾性を示す ためと考えられた.すなわち,シリカコーティングアル ミナ粒子が PEKK 表面に衝突したエネルギーを弾性変 形により吸収し,衝突痕部が弾性回復を起こすことで, 衝突痕は小さく,その深さは浅くなり,完全なシリカ コーティング層の形成が行われなかったためと考えた. その結果,PEKK 表面に形成されたシリカコーティング 膜は剥離膜として作用したものと推察した. また,GI においても,PEKK 研磨面を機械的に粗糙 化すると,GI の接着強さは有意に上昇したが,その値 はレジンセメントの接着強さより有意に低く,レジンセ メントの接着強さの値の 1/3 程度であった.これは, GI の機械的強さがレジンセメントより低いためと考え られた.
結 論
本研究では,ロカテック処理およびサンドブラスト処 理を用いて PEKK 表面を改質し,表面改質法およびレ ジンセメント接着システムがレジンの接着強さに及ぼす 影響を検討した. その結果,以下の結論を得た. 1.PEKK 表面にロカテック処理あるいはサンドブラ スト処理を施すと,接着強さは向上した. 2.PEKK の接着強さは,各レジンセメント接着シス テム間で異なる値を示した. 3.PEKK 表面にサンドブラスト処理を施し,SB/PZP 接着システムを用いると,最大接着強さを示した. 本論文において,開示すべき利益相反状態はない. 文 献1) Coray R, Zeltner M, Özcan M. Fracture strength of implant
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Influence of Surface Treatment Method and Type of Bonding System
on the Adhesion of Polyetherketoneketone
MURAKAMI Takahiro1,2), TANAKA Jyoji1), KANNO Takeshi1), SASAYA Kazunobu1),
MIZUGUCHI Toshiyuki1), IWANO Yoshihiro1) and MIWA Taketo3)
<Original Paper>
1)Clinical Implant Society of Japan (Chief:TANAKA Jyoji) 2)Department of Fixed Prosthodontics and Oral Implantology, Nihon University School of Dentistry at Matsudo
3)Kanto-Koshinetsu Branch
Polyetherketoneketone (PEKK) is expected to be applied to abutments and implant superstructures, since it has been shown to act as a shock absorber and reduce the pressure on the implant body during chewing. PEKK has a chemically stable structure, and it is known to be difficult to bond the resin cement chemically. In this study, the effects of various bonding systems on the bonding strength of PEKK and resin cement were investigated using rocatec treatment and sandblasting treatment, which are simple surface treatment methods. This study used various bonding systems:Superbond/V primer bonding system (SB/VP), Superbond/PZ primer bonding system (SB/PZP), Panavia V5/Clearfil Ceramic Primer Plus bonding system (PV5/CP), and glass ionomer cement (GI). The PEKK polished surface was subjected to rocatec treatment or sandblasting treatment. Thereafter, the primer of the bonding system was allowed to act for the predetermined time according to the manufacturer’s instruction, and then resin cement was filled and polymerized to prepare PEKK bonding specimens. Next, the shear bond strength was measured with the universal tester for PEKK bonding specimens. PEKK specimens were observed by scanning electron microscope (SEM), and the surface roughness of the PEEK surface treated by rocatec or sandblasting was measured. As a result, the bonding strength of the PEKK surface subjected to rocatec or sandblasting treatment was improved in all the bonding systems. However, the rocatec treatment showed significantly lower values than the sandblasting treatment, and many adhesion defects were observed by SEM. The maximum bond strength was attained when the PEKK surface was treated by sandblasting and SB/PZP was applied. On the other hand, there was no significant difference in the surface roughness between rocatec and sandblasting treatment. From the above, it was considered that when rocatec was applied to the PEKK surface, the silica coating layer that formed on the PEKK surface acted as a peeling layer, and therefore the bonding strength was lower than with sandblasting treatment. In addition, the bonding strength showed different values for each bonding system.