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振動による屋根雪滑動時の動摩擦係数と粘性減衰係数に関する研究

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(1)

北海道の雪氷  No.33(2014)

屋根雪滑動時における力の釣り合い 構造体(1階)

( ) t

x &&

0

x

0 s

x

m &&

g

ms

µ

k

屋根雪

構造体(1階)

( ) t

x &&

0

x

0 s

x

m &&

g

ms

µ

k

(

s 1

)

s x x

C

&

&

屋根雪

振動による屋根雪滑動時の動摩擦係数と粘性減衰係数に関する研究 

Study on Coefficients of Friction and Damping on Sliding Snow during Seismic Ground Motion

 

工藤  純也(北海道科学大学大学院),千葉  隆弘,苫米地  司(北海道科学大学) 

高橋  徹(千葉大学) 

KUDO Junya, CHIBA Takahiro, TOMABECHI Tsukasa TAKAHASHI Toru

 

1.はじめに 

  筆者らはこれまでに,地震時における屋根 雪の動的挙動を考慮した構造体の応答性状を 実験的に検討し,その実験を再現する解析モ デルの検証を行ってきた 1).振動時の屋根雪 には,地震動による慣性力に加えて,屋根雪 と屋根葺材との界面に諸抵抗力が生じるが,

これまでの研究では,図1に示すように,摩 擦抵抗力のみを考慮した解析モデルを用いて 時刻歴応答解析を行った.その結果,振動に よる屋根雪の滑動と構造体の応答性状との関 係を概ね再現することができ,その妥当性を 明らかにした.しかし,屋根雪と屋根葺材と の界面に介在する融雪水の影響は考慮してお らず,その影響は不明な点が多い.

  このような背景から本研究では,屋根雪と屋根葺材との摩擦係数のみを考慮した解析モデル に加えて,粘性減衰係数を考慮した場合の解析モデルを実験的および解析的に検討した.

2.研究方法 

  本研究では,試験体を用いた振動実験を行うとともに,動摩擦係数

μ

kと粘性減衰係数

C

sを 考慮した運動方程式を用いて時刻歴応答解析を行い,実験結果に近似する

μ

k

C

sを導いた.

また,振動実験と同時に融雪実験を行い,

μ

kおよび

C

sの含水率依存性を検討した.

  振動実験の状況を写真1に示す.写真のように,試験体は,陸屋根平屋建てを想定したもの であり,屋根の大きさは

350

×

550mm

である.このような試験体を

450

×

450mm

の振動台に据 え付けて振動実験を行った.屋根雪には自然雪(しまり雪

ρ=313kg/m

3)を用い,屋根上に

3.0kg

の雪を載せて実験を行った.実験に使用した屋根葺材は,塗装鋼板(

SG

),つや消し塗装鋼板

SM

),およびフロート板ガラス(

GL

)の

3

種類とした.なお,試験体重量は,

3

4kg

であ る.加振方法は,始めに,屋根雪が積載された状態で試験体の固有振動数を測定し,次に,試 験体の応答倍率が約

2.0

となるように調和振動加振した.また,振動実験は低温実験室内で行 い,屋根雪は

-5

℃に保たれた環境で試験体に堆積させ,その後

5

℃まで室温を上昇させてから 一定に保ち,

0.5

1

時間ごとに加振した.なお,振動台,試験体,および屋根雪の挙動は,加 速度計で測定し,サンプリング周波数は

200Hz

とした.このような振動実験と同時に行った融

Copyright © 2014  公益社団法人日本雪氷学会北海道支部

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(2)

北海道の雪氷  No.33(2014)

2  SG

における経過時間毎の加速度時刻歴 雪実験は,写真

2

に示すように,振動実験で

使用した同じ屋根を約

5

°の傾斜をつけて重 量計の上に載せるとともに,その屋根上に振 動実験と同じ重さの自然雪を載せ,融雪量の 時刻歴を測定した.屋根雪と同じ重さの氷に ついても同様の実験を行い,氷と屋根雪との 融雪状況の差異から屋根雪の含水率を求めた.

  振動実験を再現する解析については,

Newmark-β

法(平均加速度法:

β=0.25

)に基 づいて行った.ここで,試験体および屋根雪 の質量を

m

1

m

s,試験体および屋根雪の粘性 減衰係数を

C

1

C

s,試験体の剛性を

K

1,屋根 雪および試験体の変位を

x

1

x

sとした場合に おける解析に用いた運動方程式を

1)

式に示す.

 ・・・1) sgn 0

sgn 0

0 0 0

0

1 1

1 1

0 0 1 1

=



 + −







 

 +







 

− + +





 +

 +

 

g x m

x K

x x C C

C C C x

x x x m m

s k s

s s s

s s s

s

µ

&

&

&

&

&

&

&

&

&

&

  このように,試験体と屋根雪の

2

質点とし たせん断型モデルであり,屋根雪の粘性抵抗 力および摩擦抵抗力と反対向きの力が試験体 へ伝達するものとした.本解析では,

μ

k

C

s

を様々に変化させて実験結果と近似するそれ ぞれの値を求めた.

3.研究結果 

3.1  各屋根葺材の実験・解析結果 

2

に,

SG

の場合における振動実験で得られた加速度時刻歴と解析結果とを比較したものを 示す.なお,実験室内の

5

℃に設定してからの経過時間ごとに示している.図のように,解析 では,実験で得られた屋根雪の加速度時刻歴に近似させたが,試験体の時刻歴においても解析

写真

振動実験の状況 写真

2  融雪実験の状況 

屋根雪

試験体

振動台

加速度計 加速度計

屋根雪 試験体

雪止め はかり

融雪水受け

-15 -10 -5 0 5 10 15

5.0 5.5 6.0

応答加速度(m/s2

時間(s)

試験体−実験 試験体−解析

-10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10

5.0 5.5 6.0

応答加速度(m/s2

時間(s)

屋根雪−実験 屋根雪−解析

【SG-0時間経過 μk=0.07 Cs=2.94N・s/m】

-15 -10 -5 0 5 10 15

5.0 5.5 6.0

応答加速度(m/s2

時間(s)

試験体−実験 試験体−解析

【SG-3時間経過 μk=0.25 Cs=24.50N・s/m】

-10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10

5.0 5.5 6.0

応答加速度(m/s2

時間(s)

屋根雪−実験 屋根雪−解析

-15 -10 -5 0 5 10 15

5.0 5.5 6.0

応答加速度(m/s2

時間(s)

試験体−実験 試験体−解析

【SG-9時間経過 μk=0.22 Cs=10.78N・s/m】

-10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10

5.0 5.5 6.0

応答加速度(m/s2

時間(s)

屋根雪−実験 屋根雪−解析

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(3)

北海道の雪氷  No.33(2014)

3  SM

における経過時間毎の加速度時刻歴 図

4  GL

における経過時間毎の加速度時刻歴 で十分に再現できている.経過時間ごとに試験体および屋根雪の時刻歴をみると,

0

時間経過 の場合は,屋根雪の応答が小さくなっており,いずれの係数においても小さな値となった.こ れに対し,

3

時間経過の場合をみると,試験体および屋根雪のいずれにおいても応答が大きく なり,いずれの係数においても前述に比べて増加した.一方,

9

時間経過をみると,屋根雪の 応答が減少し,粘性減衰係数の減少傾向が顕著であった.このように,SG の場合は,時間の 経過に伴い屋根雪の応答が増減した.

SM

の場合における振動実験で得られた加速度時刻歴と 解析結果とを比較したものを図

3

に示す.図のように,SG と同様に,時間の経過に伴い試験 体および屋根雪のいずれにおいても応答が増減している.しかし,

3

時間経過の場合をみると,

実験と解析が適合しない箇所が存在している.実験で得られた屋根雪の挙動をみると,滑動と 停止を繰り返す場面がみられ,そのような挙動は解析で捉えられていないのが適合しない要因 の一つであると考えられる.次に,GL の場合における振動実験で得られた加速度時刻歴と解 析結果とを比較したものを図

4

に示す.図のように,

0.5

時間経過の場合をみると,試験体お よび屋根雪の応答が大きくなり,解析で得られた

μ

kは小さいものの,

C

sについては,極めて大 きな値となった.一方,

3

時間経過の場合をみると,屋根雪の応答が急激に減少し,

C

s

2.94N

s/m

にまで減少した.フロート板ガラスの表面は親水性が高く,屋根雪とガラスとの界面には 水膜が形成される.その影響により

μ

k

C

sが小さくなったものと考えられる。

9

時間経過の応 答をみると,

3

時間経過と同様の傾向を示す.

以上の結果をみると,いずれの屋根葺材においても

C

sの影響を無視できないといえる.

【GL-0.5時間経過 μk=0.08 Cs=115.64N・s/m】

GL-3時間経過 μk=0.06 Cs=2.94Ns/m

GL-9時間経過 μk=0.03 Cs=4.90Ns/m -15

-10 -5 0 5 10 15

5.0 5.5 6.0

応答加速度(m/s2

時間(s)

試験体−実験 試験体−解析

-15 -10 -5 0 5 10 15

5.0 5.5 6.0

応答加速度(m/s2

時間(s)

屋根雪−実験 屋根雪−解析

-15 -10 -5 0 5 10 15

5.0 5.5 6.0

応答加速度(m/s2

時間(s)

試験体−実験 試験体−解析

-10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10

5.0 5.5 6.0

応答加速度(m/s2

時間(s)

屋根雪−実験 屋根雪−解析

-15 -10 -5 0 5 10 15

5.0 5.5 6.0

応答加速度(m/s2

時間(s)

試験体−実験 試験体−解析

-10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10

5.0 5.5 6.0

応答加速度(m/s2

時間(s)

屋根雪−実験 屋根雪−解析 -15

-10 -5 0 5 10 15

5.0 5.5 6.0

応答加速度(m/s2

時間(s)

試験体−実験 試験体−解析

-10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10

5.0 5.5 6.0

応答加速度(m/s2

時間(s)

屋根雪−実験 屋根雪−解析

【SM-0時間経過μk=0.17 Cs=17.6N・s/m】

【SG-3時間経過 μk=0.43 Cs=14.70N・s/m】

SG-7時間経過 μk=0.18 Cs=3.92Ns/m -40

-30 -20 -10 0 10 20 30 40

3.0 3.5 4.0

応答加速度(m/s2

時間(s)

試験体−実験 試験体−解析

-15 -10 -5 0 5 10 15

3.0 3.5 4.0

応答加速度(m/s2

時間(s)

屋根雪−実験 屋根雪−解析

-25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25

5.0 5.5 6.0

応答加速度(m/s2

時間(s)

試験体−実験 試験体−解析

-10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10

5.0 5.5 6.0

応答加速度(m/s2

時間(s)

屋根雪−実験 屋根雪−解析

Copyright © 2014  公益社団法人日本雪氷学会北海道支部

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(4)

北海道の雪氷  No.33(2014)

3.2  屋根雪の含水率と諸抵抗係数との関係 

  本研究では,解析で得られた実験結果と近似する

μ

kおよび

C

sの含水率依存性を検討した.

融雪実験で得られた融雪量と推定した屋根雪の含水率の時刻歴を図

5

に示す.図のように,氷 の融雪量をみると,一定の割合で融雪している.これに対し,屋根雪の場合をみると,始めは 融雪する割合が小さく,

15

18

時間経過した後から融雪する割合が大きくなっている.これは,

屋根雪の場合,融雪水が雪の中で蓄えられて融雪水が外側に流出せず,屋根雪における飽和含 水量に達してから流出は始まったことを表している.従って,屋根雪重量における始めの減少 は蒸発によるものである.このような実験で得られた氷の融雪量から屋根雪が蓄えた融雪水,

すなわち,含水率を推定した.その結果をみると,含水率は時間の経過に伴い一定の割合で増 加し,含水率が

30

35%

に達した時点から融雪水の流出が始まったことがわかる.

推定した屋根雪の含水率と各屋根葺材の

μ

kおよび

C

sとの関係を図

6

に示す.図のように,

SG

の場合をみると,屋根雪が融雪した直後では,

μ

kが小さく

C

sが極めて大きくなり,その後

μ k

は一旦大きくなるものの,含水率の増加に伴い

μ

kおよび

C

sが徐々に減少している.

μ

kが一旦 増加する要因としては,屋根雪の重量による垂直抗力に加えて毛管現象による垂直抗力が作用 したためであると考えられる.このような傾向は

SM

でも同様であり,

μ

kの増加・減少傾向が

SG

に比べて顕著である.これに対し,GL の場合をみると,融雪直後に

C

sが急増する傾向は

SG

と同様であるものの,含水率が

5%

と小さい段階においても

μ

k

C

sが急激に減少している.

4.まとめ 

本研究では,屋根雪と屋根葺材との界面に介在する融雪水の影響を考慮し,既往の研究に加 えて粘性減衰係数を考慮した場合の解析モデルを検証した.その結果,粘性減衰係数を考慮す ることによって解析の精度が格段に向上することが明らかとなった.また,動摩擦係数と粘性 減衰係数の含水率依存性を検討した結果,含水率の増加に伴いこれらの係数は減少し,飽和含 水率に達する以前においては,粘性減衰係数や屋根雪の毛管現象の影響を無視できないことを 明らかにした.

【参考文献】

1) 千葉隆弘,高橋徹,植松武是,苫米地司,2013:屋根雪の動的挙動を考慮した構造体の地震応答解析と積雪期の 地震による木造住宅の被害状況について.日本雪工学会誌,29(1),3–12.

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

0 10 20 30 40 50 60

蒸発量+融雪量(kg

時間(hour)

塗装鋼板 つや消し塗装鋼板 フロート板ガラス

0%

10%

20%

30%

40%

50%

0 5 10 15 20 25 30

含水率(%

時間(hour)

塗装鋼板 つや消し塗装鋼板 フロート板ガラス

5  融雪実験で得られた融雪量

0 30 60 90 120 150

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

0% 10% 20% 30% 40%

粘性減衰係数CsNs/m

動摩擦係数μk

屋根雪の含水率(%)

μk Cs

0 30 60 90 120 150

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

0% 10% 20% 30% 40%

粘性減衰係数CsNs/m

動摩擦係数μk

屋根雪の含水率(%)

μk Cs

0 30 60 90 120 150

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

0% 10% 20% 30% 40%

粘性減衰係数CsNs/m

動摩擦係数μk

屋根雪の含水率(%)

μk

【SG】 【SM】 Cs 【GL】

6  各屋根葺材における屋根雪の含水率と諸係数との関係

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