博士(医学) 崔 紅艶 学位論文題名
アスパラギン合成酵素は低グルコース環境下で発現亢進し、
膵癌細胞のアポトーシスを抑制する
学 位論文内 容の要旨
【背景 と日的 ]
癌組織 は正常 組織 より速 く不規 則に増 殖する 結果 ,血流が不足するため酸素やグルコースの不足状態に さらさ れるよ うにな る,癌 細胞 はこう した環 境下で の生存のため様々な適応応答機能を獲得しており,そ れが抗 癌剤耐性をもたらす原因のーっになっている..難治性癌である膵癌も血管が少なく厳しい低酸素低 グルコ ース状 態にあ り,抗 癌剤 抵抗性 を示す ことが 明らかになっている.申請者のグループはこれまで低 酸素誘 導因子 の膵癌 細胞の 生存 維持に おける 役割に っいて検討してきた.しかし,膵癌組織は低酸素状態 である だけで はなく 低グル コー ス状態 でもあ ること から低グルコースで誘導される遺伝子群の中にも膵癌 細胞の 生存維 持に関 与する もの が含ま れる可 能性が 存在 する.
DNA
マ イクロ アレイ 法に より低 グルコ ースで 誘導 される 遺伝子 を検索 した結果,アスパラギン合成酵素 が発現 上昇す ること を見出 した .アス パラギ ン合成 酵素は既に低アミノ酸で発現亢進してくることが報告 されて いる,また細胞周期抑制に関わる因子としても同定されている,更に,抗癌剤としてL‑asparagineを 分解す るL‑asparaginaseが知られているが,アスパラギン合成酵素の発現が自血病細胞ではL‑asparaginase に対す る抵抗 性をも たらす こと が報告 されて いる. 申請者は膵癌においてアスパラギン合成酵素が低グル コース 環境下 で膵癌 細胞の 生存 維持に おいて どのよ うな役割を持っているか,また抗癌剤抵抗性に関与す るかど うかの 解明を 目的と して 研究を 行った .【 実験 方法 】
正 常 グ ル コ ー ス 濃 度 下 及 ぴ 低 グ ル コ ー ス 濃 度 下 で 培 養 し た 膵 癌 細 胞 株 の ア ス パ ラ ギ ン 合 成 酵 素 の 発 現 を Real Time PCRで 調 ぺ た .PCR反 応 に はPlatinum SYBR Green qPCR SuperMix‐UDGを 使 用 し ,ABIPmSM 7900HTSequenceDctcctionSyStcmで 増 幅 産 物 を 検 出 し た , ア ス パ ラ ギ ン 合 成 酵 素 蛋 白 発 現 も ニ つ の 条 件 下 で 検 討 す る た め , 培 養 し た 細 胞 を1mMのPMSFを 加 え たcclIlysisbufrcrで 溶 解 し ,SDS‐I}AGEに よ ル タ ン パ ク の 分 画 を 行 い ,PVDF膜 に 転 写 し た . 細 胞 の ア ポ ト ー シ ス 感 受 性 はpr叩idiumiodideアI) とFITC‐conjugated抗 ーanncxinV抗 体 を 用 い た1、wo‐colorFACS孤alysisに て 検 討 し た . 腫 瘍 細 胞 の 抗 癌 剤 感 受 性 はcolorimetric3. (4, 5.dimethylmiaZol‐2‐yl) ‐5‐(3‐carboxymemoxyphcnyl)‐2‐(4・sulfophenyl)‐2H‐tetr紀olium,inncrsalt(MTS)aSsりを 用 い て 検 討 し た , 更 に , ア ス パ ラ ギ ン 合 成 酵 素 の 細 胞 に 対 す る 防 御 作 用 を 調 ぺ る た め に , 膵 癌 細 胞 の 低 グ ル コ ー ス 環 境 下 で の ア ス パ ラ ギ ン 合 成 酵 素 の 役 割 を 強 制 発 現 の 系 とsiRNAを 用 い た 発 現 抑 制 系 を 用 い て 検 討 した .
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【 結果 】
Real Time PCR
法 に て, 三 種類 の膵癌 細胞に おける アス パラギ ン合成 酵素mRNAの発現 が低グ ルコ ース下 で 亢進 した. また低 グルコ ース 下でア スパラ ギン合 成酵素 発現 は蛋白質レベルでも亢進した結果が得られ た ,siRNA
に て,ア スパラ ギン 合成酵 素の発 現を抑 制する と, 細胞は 低グル コース 誘導 アポトーシスに感受性 が 高く なった ;一方 ,アス パラ ギン合 成酵素 を過剰 発現さ せる と,細胞は低グルコース誘導アポトーシス に 感受 性が低 くなっ た.ま た,siRNA
に て,ア スパラ ギン 合成酵 素の発 現を抑 制す ると,低グルコース下 で 細胞 は抗癌 剤cisplatinに誘 導され るア ポトーシスに感受性が高くなった.一方,アスパラギン合成酵素 を 過剰 発現さ せると ,低グ ルコ ース下 で細胞は抗癌剤cisplatinによって誘導されるアポトーシスに抵抗性 を 誘導 した.ア スパ ラギン 合成酵 素の過 剰発 現細胞 株を用 いて低 グルコ ース 及びcisplatin処 理後のJNK/SAPK活性化を 検 討 した結 果,空 ベク ター導 入株で はJNK/SAPKがりン 酸化さ れたが ,ス パラギ ン合成 酵素の 導入株 では
JN K/SAPK
のり ン酸化 が抑 制され た,こ の結果 はアス パラ ギン合 成酵素 発現が 低グ ルコー スやcisplatin に よ るJNK/SAPKのりン 酸化を 抑制す ること によ ってア ポトー シス抵 抗性 を誘導 してい る可能 性を示 唆す る . そ こ で ,JNK/SAPK
の 阻害剤 の低 グルコ ースcisplatin誘 導アポ トー シスに 対する 効果を 検討 した,JNK/SAPK
の阻 害剤(SP600125)で処 理する と, 低グル コース とcisplatin誘導 アポ トーシスが抑制された.【考察
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本研 究にて 低グル コース はアス パラ ギン合 成酵素 の発現 を誘 導することと発現亢進したアスパラギン合 成酵素 によっ て膵 癌細胞 がアポ トーシ ス抵 抗性と なるこ とを明 らかにした,これらの結果は,アスパラギ ン合成 酵素発 現亢 進が低 グルコ ース環 境そ のもの の誘導 する低 する低グルコース環境への適応応答に関与 し て い る こ と を 初 め て 明 ら か に し た も の と 考え ら れ る . さら に ア ス パ ラギ ン 合 成 酵 素発 現 亢 進 が
JNK/SAPK
活 性化抑 制を 介して 膵癌細 胞のCDDP抵抗性 を誘導 して いる可 能性を 示唆す る,し かし ながら ,5‑FU
をは じめと したほ かの 抗癌剤 もJNK/SAPKの 活性 化を介 してア ポトーシスを誘導するとの報告もあり,今 回の 検 討 結 果 は従 来 の 報 告 とは 完 全 に は 一致 し な い,一 方JNK/SAPKの 活性 化を誘 導するSEKI発現 を ノ ック ア ウ ト す ると 肝 細 胞 やT細胞 のアポ トーシ スを 増強す るとの 報告も あり,
JNK/SAPK
自 身がア ポト ーシス に関し て相 反する 作用を 持って いる 可能性 が提起 されて いる.したがって,アスパラギン合成酵素 発 現 亢 進 の ア ポ ト ー シ ス 阻 害 作 用 の メ カ ニ ズム に 関 し て は今 後 更 な る 検討 が 必 要 と 考え ら れ る .【 結論】