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博士(医学) 崔 紅艶 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(医学)   崔   紅艶 学位論文題名

アスパラギン合成酵素は低グルコース環境下で発現亢進し、

膵癌細胞のアポトーシスを抑制する

学 位論文内 容の要旨

【背景 と日的 ]

  

癌組織 は正常 組織 より速 く不規 則に増 殖する 結果 ,血流が不足するため酸素やグルコースの不足状態に さらさ れるよ うにな る,癌 細胞 はこう した環 境下で の生存のため様々な適応応答機能を獲得しており,そ れが抗 癌剤耐性をもたらす原因のーっになっている..難治性癌である膵癌も血管が少なく厳しい低酸素低 グルコ ース状 態にあ り,抗 癌剤 抵抗性 を示す ことが 明らかになっている.申請者のグループはこれまで低 酸素誘 導因子 の膵癌 細胞の 生存 維持に おける 役割に っいて検討してきた.しかし,膵癌組織は低酸素状態 である だけで はなく 低グル コー ス状態 でもあ ること から低グルコースで誘導される遺伝子群の中にも膵癌 細胞の 生存維 持に関 与する もの が含ま れる可 能性が 存在 する.

  DNA

マ イクロ アレイ 法に より低 グルコ ースで 誘導 される 遺伝子 を検索 した結果,アスパラギン合成酵素 が発現 上昇す ること を見出 した .アス パラギ ン合成 酵素は既に低アミノ酸で発現亢進してくることが報告 されて いる,また細胞周期抑制に関わる因子としても同定されている,更に,抗癌剤としてL‑asparagineを 分解す るL‑asparaginaseが知られているが,アスパラギン合成酵素の発現が自血病細胞ではL‑asparaginase に対す る抵抗 性をも たらす こと が報告 されて いる. 申請者は膵癌においてアスパラギン合成酵素が低グル コース 環境下 で膵癌 細胞の 生存 維持に おいて どのよ うな役割を持っているか,また抗癌剤抵抗性に関与す るかど うかの 解明を 目的と して 研究を 行った .

【 実験 方法 】

  正 常 グ ル コ ー ス 濃 度 下 及 ぴ 低 グ ル コ ー ス 濃 度 下 で 培 養 し た 膵 癌 細 胞 株 の ア ス パ ラ ギ ン 合 成 酵 素 の 発 現 を Real Time PCRで 調 ぺ た .PCR反 応 に はPlatinum SYBR Green qPCR SuperMixUDGを 使 用 し ,ABIPmSM 7900HTSequenceDctcctionSyStcmで 増 幅 産 物 を 検 出 し た , ア ス パ ラ ギ ン 合 成 酵 素 蛋 白 発 現 も ニ つ の 条 件 下 で 検 討 す る た め , 培 養 し た 細 胞 を1mMPMSFを 加 え たcclIlysisbufrcrで 溶 解 し ,SDSIAGEに よ ル タ ン パ ク の 分 画 を 行 い ,PVDF膜 に 転 写 し た . 細 胞 の ア ポ ト ー シ ス 感 受 性 はpridiumiodideI) とFITCconjugated anncxinV抗 体 を 用 い た1wocolorFACSalysisに て 検 討 し た . 腫 瘍 細 胞 の 抗 癌 剤 感 受 性 はcolorimetric3. (4 5.dimethylmiaZol‐2‐yl) ‐5‐(3‐carboxymemoxyphcnyl)‐2‐(4・sulfophenyl)‐2H‐tetr紀olium,inncrsalt(MTS)aSsりを 用 い て 検 討 し た , 更 に , ア ス パ ラ ギ ン 合 成 酵 素 の 細 胞 に 対 す る 防 御 作 用 を 調 ぺ る た め に , 膵 癌 細 胞 の 低 グ ル コ ー ス 環 境 下 で の ア ス パ ラ ギ ン 合 成 酵 素 の 役 割 を 強 制 発 現 の 系 とsiRNAを 用 い た 発 現 抑 制 系 を 用 い て 検 討 した .

    ―350

(2)

【 結果 】

Real Time PCR

法 に て, 三 種類 の膵癌 細胞に おける アス パラギ ン合成 酵素mRNAの発現 が低グ ルコ ース下 で 亢進 した. また低 グルコ ース 下でア スパラ ギン合 成酵素 発現 は蛋白質レベルでも亢進した結果が得られ た ,

siRNA

に て,ア スパラ ギン 合成酵 素の発 現を抑 制する と, 細胞は 低グル コース 誘導 アポトーシスに感受性 が 高く なった ;一方 ,アス パラ ギン合 成酵素 を過剰 発現さ せる と,細胞は低グルコース誘導アポトーシス に 感受 性が低 くなっ た.ま た,

siRNA

に て,ア スパラ ギン 合成酵 素の発 現を抑 制す ると,低グルコース下 で 細胞 は抗癌 剤cisplatinに誘 導され るア ポトーシスに感受性が高くなった.一方,アスパラギン合成酵素 を 過剰 発現さ せると ,低グ ルコ ース下 で細胞は抗癌剤cisplatinによって誘導されるアポトーシスに抵抗性 を 誘導 した.

ア スパ ラギン 合成酵 素の過 剰発 現細胞 株を用 いて低 グルコ ース 及びcisplatin処 理後のJNK/SAPK活性化を 検 討 した結 果,空 ベク ター導 入株で はJNK/SAPKがりン 酸化さ れたが ,ス パラギ ン合成 酵素の 導入株 では

JN K/SAPK

のり ン酸化 が抑 制され た,こ の結果 はアス パラ ギン合 成酵素 発現が 低グ ルコー スやcisplatin に よ るJNK/SAPKのりン 酸化を 抑制す ること によ ってア ポトー シス抵 抗性 を誘導 してい る可能 性を示 唆す る . そ こ で ,

JNK/SAPK

の 阻害剤 の低 グルコ ースcisplatin誘 導アポ トー シスに 対する 効果を 検討 した,

JNK/SAPK

の阻 害剤(SP600125)で処 理する と, 低グル コース とcisplatin誘導 アポ トーシスが抑制された.

【考察

1

  

本研 究にて 低グル コース はアス パラ ギン合 成酵素 の発現 を誘 導することと発現亢進したアスパラギン合 成酵素 によっ て膵 癌細胞 がアポ トーシ ス抵 抗性と なるこ とを明 らかにした,これらの結果は,アスパラギ ン合成 酵素発 現亢 進が低 グルコ ース環 境そ のもの の誘導 する低 する低グルコース環境への適応応答に関与 し て い る こ と を 初 め て 明 ら か に し た も の と 考え ら れ る . さら に ア ス パ ラギ ン 合 成 酵 素発 現 亢 進 が

JNK/SAPK

活 性化抑 制を 介して 膵癌細 胞のCDDP抵抗性 を誘導 して いる可 能性を 示唆す る,し かし ながら ,

5‑FU

をは じめと したほ かの 抗癌剤 もJNK/SAPKの 活性 化を介 してア ポトーシスを誘導するとの報告もあり,

今 回の 検 討 結 果 は従 来 の 報 告 とは 完 全 に は 一致 し な い,一 方JNK/SAPKの 活性 化を誘 導するSEKI発現 を ノ ック ア ウ ト す ると 肝 細 胞 やT細胞 のアポ トーシ スを 増強す るとの 報告も あり,

JNK/SAPK

自 身がア ポト ーシス に関し て相 反する 作用を 持って いる 可能性 が提起 されて いる.したがって,アスパラギン合成酵素 発 現 亢 進 の ア ポ ト ー シ ス 阻 害 作 用 の メ カ ニ ズム に 関 し て は今 後 更 な る 検討 が 必 要 と 考え ら れ る .

【 結論】

  

アスパ ラギン 合成酵 素は低 グル コース 下での 膵癌細胞の生存維持に重要な役割を果たしている.臨床に お いてす でに アスパ ラギン 合成酵 素阻 害剤の 有効性が示唆されており,今後膵癌治療においてもアスパラ ギ ン合成 酵素 阻害剤 が候補 薬剤と なり うる可 能性が ある,

(3)

学位論 文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

アスパラギン合成酵素は低グルコース環境下で発現亢進し、

     膵癌細胞のアポトーシスを抑制する

   膵 癌は血管が 少ない厳 しい低酸 素・低グ ルコース状態下にあるにも関わらず、

活 発 な増 殖 ・ 浸潤 能 カを有し 、抗癌剤 抵抗性を 示す。膵 癌の低酸 素下での 活発 な 増 殖・ 浸 潤 能に は 低酸 素 誘 導転 写 因 子(HIF‑1) が関 与してい ることが 明らか に さ れて き た 。し か し、膵癌 組織は低 酸素状態 であるだ けでなく 低グルコ ース 状 態 でも あ る こと か ら、低グ ルコース で誘導さ れる遺伝 子群の中 にも膵癌 細胞 の 生 存維 持 に 関与 す るも の が 含ま れ る 可能 性 があ る。 DNA マイクロ アレイ法 に よ り 低グ ル コ ース で 誘導され る遺伝子 を検索し た結果、 アスパラ ギン合成 酵素 (ASNS) が 発 現 上 昇 す る こ と を 見 出 し た 。 申 請 者 は 低 グ ル コ ー ス 下 で ASNS が 膵 癌細 胞 の 生存 維 持におけ る役割に っいて検 討した。 低グルコ ース下で ASNS は ATF4 依 存 的 に発 現 亢進 し 、 低グ ル コ ース 誘 導性 ア ポ トー シ スか ら 膵 癌細 胞 を 保 護 し た 。 低 グ ル コ ー ス 下 で 誘 導 され る ASNS は 抗癌 剤 であ る cisplatin と carboplatin 誘 導性アポト ーシスに も抵抗性 をもたら した。ま た、アス パラギン 合 成 酵 素 の 過 剰 発 現 細 胞 株 を 用 い て 低 グ ル コ ー ス 及 び cisplatin 処 理 後 の JNK/SAPK 活 性 化 を 検 討 し た 結 果 、 空 ベ ク タ ー 導 入 株 で は JNK/SAPK が り ン 酸 化 さ れ たが 、 ア スパ ラ ギン 合 成 酵素 の 導入 株 で はJNK/SAPK の り ン酸 化 が 抑 制 された。こ れらの結果から、アスパラギン合成酵素が低グルコースや cisplatin に よ る JNK/SAPK を 介 し た シ グ ナ ル 伝 達 系 を 抑 制 す る こ と に よ っ てア ポ ト ー シ ス抵抗性を 誘導して いる可能 性が示唆 された。

   口 頭 発表 に 際 し、 副 査の 畠 山 教授 よ り ASNS の 抗 ア ボト ー シス 効 果 には ア ス パ ラ ギ ン の 量 は 関 係 が な か っ た の か 、 ASNS は ど の よ う な メ カ ニ ズ ム によ り JNK/SAPK に 作 用 す る の か 、 ま た JNK/SAPK の 上 流 の シ グ ナ ル 伝 達 系 を 解 析 し て いる か ど うか 、 さら に 低 グル コ ー ス下 で のTCA サイク ルの回転 低下によ ル ア ミ ノ酸 合 成 が抑 制 され 、 そ の結 果 と して ASNS が 上昇する feedb ack 機構もあ

(4)

りうるのではないかとの質問があった。これに対して申請者は、 ASNS による JNK/SAPK の抑 制 のメ カ ニズ ム は現 時 点で は 明ら か ではなくJNK/SAPK の上 流のシグナル伝達系と ASNS の関係についてはまだ検討していなぃこと、低グ ルコース下でアミノ酸合成が抑制されることによりASNS が上昇するfeedback 機構が存在する可能性は否定できないことを回答した。副査の守内教授より膵 癌にL‑asparagmase が効くのかどうかまたは文献上そのような報告があるか、

低酸素下でATF4 が発現誘導されるか、さらに、低グルコース下でグルタミン 合成酵素の発現は変動するかどうかについて質問があった。これに対し申請者 は、文献上、膵癌に正常グルコース濃度下では L‑asparagmase が効くとの報告 もあったが、論理的には低グルコース下ではASNS が発現亢進するので、低グ ルコース下では効きにくいと思われると回答した。また、低酸素下でATF4 の 発現が誘導されること、低グルコース下でグルタミン合成酵素の発現亢進は見 られないと回答した。最後に主査の浅香教授から、正常膵組織と比較して膵癌 で ASNS タンパク質の発現が上昇しているのか、また他の膵癌以外の癌細胞で は ASNS の発現はどのようになっているのかにっいて質問があった。これに対 し申請者は正常膵組織でのASNS の発現については検討していないが、他の組 織に由来する正常細胞を用いた解析では低グルコース下で ASNS の発現上昇は 見られ栓い事から、低グルコース下での ASNS の発現上昇は癌特異的である可 能性があること、また膵癌以外の癌細胞においても低グルコース下でASNS の 発現亢進が見られたことを回答した。

   本研究は ASNS が低グルコース下で膵癌細胞の生存維持に重要な役割を果た し てい る こと を 初め て 明ら か にし た こと で 高く 評 価され、今 後、 ASNS が JNKISAPK を抑制する メカニズム がさらに解 明されるこ とと、 ASNS を分子標 的とした膵癌治療への応用が期待されるぃ

   審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得

単位なども併せ申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有する

ものと判定した。

参照

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