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目次案(藻場の移植等に関する配慮事項)

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藻場の復元に関する配慮事項

平成 16 年 3 月

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は じ め に

藻 場も ば は 、 沿 岸 の 浅 海 底 に 分 布 す る 大 型 海 草う み く さ ・ 海 藻か い そ う の 群 落 の 総 称 で あ る 。 海 草 の 群 落 は 主 要 構 成 種 の 名 称 か ら ア マ モ 場 あ る い は 海 草 藻 場 と 呼 ば れ 、 ホ ン ダ ワ ラ 類 や コ ン ブ 類 な ど の 海 藻 の 群 落 は 海 藻 藻 場 な ど と 呼 ば れ る 。 こ れ ら の 藻 場 は 、 沿 岸 生 態 系 に お い て 主 要 な 一 次 生 産 の 場 と な っ て お り 、 物 質 循 環 機 能 や 幼 稚 魚 の 育 成 機 能 な ど の 重 要 な 機 能 を 担 っ て い る 。 藻 場 は 埋 立 、 護 岸 工 事 、 水 質 汚 濁 な ど に よ っ て 著 し く 減 少 し て き て お り 、 近 年 も 依 然 と し て 減 少 が 続 い て い る 。 特 に 、 瀬 戸 内 海 で は 、 1 9 4 5 年 以 降 、 大 規 模 な 埋 立 や 干 拓 な ど の 開 発 行 為 に よ り 、 藻 場 の 面 積 が 大 き く 減 少 し て き た 。 藻 場 造 成 に 関 す る 研 究 は 、 以 前 よ り 水 産 利 用 上 の 有 用 性 の 観 点 か ら 多 く 実 施 さ れ て き て い る が 、 最 近 で は 開 発 行 為 の 実 施 に 伴 う 環 境 保 全 措 置 と し て 、 消 滅 す る 藻 場 の 代 償 措 置 が 検 討 さ れ 、 実 施 さ れ る 事 例 が 多 く み ら れ る 。 し か し 、 代 償 措 置 と し て 造 成 さ れ た 海 草 藻 場 に つ い て は 、 長 期 的 に 持 続 し て い る と 判 断 で き る 例 は 少 な く 、 ま た そ の 措 置 に 当 た っ て 適 切 さ を 欠 く 実 施 事 例 も あ る 。 こ れ は 、 藻 場 の 代 償 措 置 を 検 討 ・ 実 施 す る に 当 た り 、 何 を 目 標 と し 、 ど の よ う な 考 え 方 に 基 づ き 実 際 の 取 組 を 行 う か 、 ま た そ の 際 ど の よ う な 点 に 配 慮 す べ き か と い う 指 針 が こ れ ま で 明 確 に さ れ て こ な か っ た こ と が そ の 一 因 で あ る と 考 え る 。 本 配 慮 事 項 は 、 藻 場 の う ち 、 ア マ モ 場 及 び 奄 美 大 島 以 南 に 分 布 す る 熱 帯 海 草 藻 場 を 対 象 に 、 代 償 措 置 と し て 「 藻 場 の 復 元 」 を 行 う 場 合 、 ど の よ う な 点 に 配 慮 す べ き か を 、 「 配 慮 事 項 」 と し て 示 し た も の で あ る 。 本 配 慮 事 項 に い う 「 藻 場 の 復 元 」 と は、「改変による攪乱を受ける以前に有 していた藻場の無機的及び生物的な構造を、それに関連した藻場の機能とともに、 攪乱以前と同じ状態にまで回復させること」で あ る 。 藻 場 の 環 境 保 全 の 観 点 か ら の 損 な わ れ る 価 値 の 代 償 を 最 大 化 す る た め に は 藻 場 の 復 元 を 目 標 と す る 必 要 が あ る 。 本 配 慮 事 項 は 二 つ の 章 か ら 構 成 さ れ る 。 第 1 章 で 、 ま ず 藻 場 の 現 状 及 び 藻 場 の 重 要 性 、 並 び に 藻 場 の 復 元 の 定 義 及 び そ の 意 義 に つ い て 概 括 し た 上 で 、 第 2 章 で 「 藻 場 の 復 元 に 関 す る 配 慮 事 項 」 を 示 し た 。 ま た 、 巻 末 に 、 藻 場 の 復 元 に 関 す る 事 例 集 及 び 用 語 集 を 添 付 し た 。

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こ の 配 慮 事 項 が 、 藻 場 に 係 る 適 切 な 代 償 措 置 の 実 施 、 ひ い て は 藻 場 も 含 め た 沿 岸 生 態 系 の 保 全 に 資 す る こ と を 期 待 す る 。 な お 、 「 藻 場 の 復 元 に 関 す る 配 慮 事 項 」 の 検 討 に 当 た っ て は 、 学 識 経 験 者 か ら な る 下 記 検 討 委 員 会 を 設 け 、 そ の 指 導 の 下 で と り ま と め を 行 っ た 。 ま た 、 ( 独 ) 水 産 総 合 研 究 セ ン タ ー 瀬 戸 内 海 区 水 産 研 究 所 生 産 環 境 部 藻 場 ・ 干 潟 環 境 研 究 室 の 寺 脇 利 信 室 長 に も 、 適 宜 助 言 を 頂 い た 。 ○ 「 藻 場 の 復 元 に 関 す る 配 慮 事 項 」 検 討 委 員 会 委 員 名 簿 ( 五 十 音 順 ) 相 生 啓 子 青 山 学 院 女 子 短 期 大 学 講 師 岡 田 光 正 ( 座 長 ) 広 島 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 教 授 尾 田 正 岡 山 県 水 産 試 験 場 専 門 研 究 員 香 村 眞 徳 琉 球 大 学 名 誉 教 授 (財 ) 沖 縄 県 環 境 科 学 セ ン タ ー 専 務 理 事 川 崎 保 夫 ( 財 ) 電 力 中 央 研 究 所 C S 推 進 本 部 次 長 前 川 行 幸 三 重 大 学 生 物 資 源 学 部 教 授

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目 次 1.藻場及びその復元について...1 1.1 藻場について...1 1.1.1 対象とする藻場...1 1.1.2 海草の分布・生態...2 1.1.3 藻場の構造と機能...6 (1)藻場の構造...6 (2)藻場の機能...7 1.1.4 藻場の重要性、現状及び課題 ...8 (1)藻場の重要性...8 (2)藻場の現状と課題...11 1.2 藻場の復元について...15 1.2.1 藻場の復元の定義...15 1.2.2 藻場の復元の意義...16 1.2.3 藻場の復元に関する配慮事項の概要 ...16 2.藻場の復元に関する配慮事項...23 2.1 藻場の復元の前提となる検討事項 ...24 2.1.1 回避・低減の優先...24 2.1.2 環境の保全方針の設定 ...28 2.1.3 合意形成...33 2.1.4 専門家の関与...35 2.1.5 藻場の復元に係る技術情報などの提供 ...37 2.2 藻場の復元の検討・計画段階における配慮事項 ...39 2.2.1 藻場の復元に係る目標設定 ...39 2.2.2 藻場の復元措置を実施する場所の選定 ...45 2.2.3 藻場の復元措置に用いる方法・技術の選定 ...47 i

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2.2.4 モニタリング及び維持管理の計画 ...50 2.2.5 藻場の復元に係る計画書の作成 ...53 2.3 藻場の復元措置の実施段階における配慮事項 ...55 2.3.1 復元措置の実施...55 2.3.2 モニタリング及び維持管理の実施 ...56 2.4 藻場の復元の評価における配慮事項 ...58 藻場造成・海草の移植等に関する事例集...61 用語集...87 ii

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1 . 藻 場 及 び そ の 復 元 に つ い て

本 章 で は 、 1 . 1 で 藻 場 の 概 略 に つ い て 、 1 . 2 で 「 藻 場 の 復 元 」 の 定 義 ・ 意 義 に つ い て 示 す 。

1 . 1 藻 場 に つ い て

1 . 1 . 1 対 象 と す る 藻 場

海 中 に 生 育 す る 大 型 海 藻か い そ う ( M a c r o a l g a e ) も し く は 海 草う み く さ ( 海 産 種 子 植 物 、 S e a g r a s s ) の 群 落 と 、 そ れ を 基 礎 と す る 独 特 の 生 物 群 集 や 環 境1)は 、 「 藻 場 ( も ば ) 」 と 呼 ば れ て い る 。 藻 場 は 、 元 来 は 沿 岸 の 浅 い 海 底 に 海 草 が 密 生 し て い る 場 所 を 指 す 漁 業 者 の 地 方 用 語 で 、 ア マ モ 類 の 生 育 し て い る 場 所 ( ア マ モ 場 Z o s t e r a b e d あ る い は ア マ モ 帯 Z o s t e r a b e l t )2)を 指 し て 呼 ん だ 用 語 で あ る 。 た だ し 、 藻 場 に つ い て 、 具 体 的 な 基 準 や 生 物 学 の 用 語 の よ う な 厳 密 な 定 義 は な く3 )、 海 草 あ る い は 海 藻 が あ る 程 度 の 規 模 ( 面 積 ) で 優 占 的 に 群 落 を 形 成 し て い る 場 所 あ る い は そ れ ら の 群 落4)と 解 釈 さ れ て い る 。 藻 場 は 、 例 え ば 表 1 - 1 の よ う に 、 藻 場 を 構 成 す る 主 要 な 植 物 種 に よ っ て 区 分 さ れ5 ) 、 そ れ ぞ れ 藻 場 の 呼 称 も 異 な っ て い る 。 海 草 に よ り 構 成 さ れ る 群 落 は 、 主 要 構 成 種 で あ る ア マ モ ( Z o s t e r a m a r i n a ) の 名 称 か ら ア マ モ 場5 )あ る い は ア ジ モ 場3、6 )と 呼 ば れ る ほ か 、 海 草 藻 場6、7 ) あ る い は 海 草 場 ( s e a g r a s s b e d )8 )と 総 称 さ れ る 場 合 が あ る 。 奄 美 大 島 以 南 に は 温 帯 種 の ア マ モ は 分 布 せ ず 、 熱 帯 性 の 小 型 海 草 類 ( ヒ ル ム シ ロ 科 、 ト チ カ ガ ミ 科 な ど ) で 構 成 さ れ る 海 草 藻 場 が 分 布 す る ( 以 下 、 「 熱 帯 海 草 藻 場 」 と い う ) 。 こ れ ら ア マ モ 場 及 び 熱 帯 海 草 藻 場 は 、 主 に 内 湾 の 砂 泥 底 に 形 成 さ れ る 。 ま た 、 海 草 の 群 落 と 区 別 す る た め に 、 ホ ン ダ ワ ラ 科 や コ ン ブ 科 な ど の 海 藻 か ら 構 成 さ れ る 群 落 を 海 藻 藻 場9 )と 総 称 す る 場 合 も あ る 。 こ れ ら の 海 藻 か ら な る 藻 場 の ほ と ん ど は 、 岩 礁 域 に 形 成 さ れ 、 ホ ン ダ ワ ラ 科 の 海 藻 か ら な る ガ ラ モ 場 、 コ ン ブ 科 の 海 藻 か ら な る コ ン ブ 場 な ど が あ る 。 本 配 慮 事 項 で は 、 次 の 理 由 に よ り ア マ モ 場 及 び 熱 帯 海 草 藻 場 を 検 討 対 象 と し た 。 以 下 特 に 断 り の な い 限 り 、 本 配 慮 事 項 で 使 用 す る 「 藻 場 」 と い う 用 語 は 、 ア マ モ 場 及 び 熱 帯 海 草 藻 場 を 指 す も の と す る 。 1

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-< ア マ モ 場 及 び 熱 帯 海 草 藻 場 を 対 象 と す る 理 由 > ① ア マ モ 場 及 び 熱 帯 海 草 藻 場 は 、 そ の 復 元 措 置 に 当 た っ て 、 岩 礁 性 の 海 藻 藻 場 と 比 べ 、 場 所 ・ 方 法 の 選 定 な ど 、 措 置 の 検 討 ・ 計 画 の 技 術 的 な 困 難 性 が よ り 大 き い と 考 え ら れ る こ と 。 ② 熱 帯 海 草 藻 場 は 、 絶 滅 危 惧 種 を 含 め 、 生 態 が よ く 判 っ て い な い 種 で 構 成 さ れ て い る 場 合 が あ る ( 文 献1 0、1 1)参 照 ) 。 そ の た め 、 環 境 保 全 上 問 題 と な る 可 能 性 が 高 い と 考 え ら れ る こ と 。 表 1 - 1 藻 場 の 区 分 藻 場 タ イ プ の 区 分 構 成 種 ア マ モ 場 ( 含 : 熱 帯 海 草 藻 場 ) ア マ モ 科 な ど の 海 草 類 ( 花 を 咲 か せ 種 子 を 形 成 す る 植 物 ) ガ ラ モ 場 ホ ン ダ ワ ラ 科 ( ヤ ツ マ タ モ ク 、 マ メ タ ワ ラ な ど ) コ ン ブ 場 コ ン ブ 科 ( マ コ ン ブ 、 ミ ツ イ シ コ ン ブ な ど ) ア ラ メ 場 コ ン ブ 科 ( ア ラ メ 、 カ ジ メ な ど ) ワ カ メ 場 チ ガ イ ソ 科 ( ワ カ メ 、 ヒ ロ メ な ど ) 、 コ ン ブ 科 ( ア ン ト ク メ な ど ) テ ン グ サ 場 テ ン グ サ 科 ( マ ク サ 、 オ バ ク サ な ど ) ア オ サ・ア オ ノ リ 場 ア オ サ 科 ( ア ナ ア オ サ 、 ス ジ ア オ ノ リ な ど ) そ の 他 そ の 他 の 藻 場 文 献5 、 1 2 )を 基 に 作 成 。

1 . 1 . 2 海 草 の 分 布 ・ 生 態

藻 場 を 構 成 す る 海 草 は 、 種 子 植 物 ( 花 を 咲 か せ 種 子 を 形 成 し て 繁 殖 ) で あ り 、 世 界 中 で 6 0 種 ほ ど6、1 3 )知 ら れ て い る 。 そ の う ち 、 現 在 我 が 国 の 沿 岸 で は 3 科 8 属 1 6 種1 3 )が 確 認 * さ れ 、 温 帯 種 と 熱 帯 種 に 大 別 さ れ る1 4 )。 1 6 種 の う ち 、 ア マ モ 科 7 種 は 主 に 温 帯 か ら 亜 寒 帯 に 分 布 し て い る 。 一 方 、 ヒ ル ム シ ロ 科1 1 ) 5 種 の 全 て と ト チ カ ガ ミ 科 1 1 ) 4 種 の ほ と ん ど の 種 は 、 熱 帯 か ら 亜 熱 帯 に 分 布 す る 熱 帯 種 で1 3 )、 こ れ ら 2 科 計 9 種 の う ち 8 種 は 、 南 西 諸 島 以 南 に 分 布 す る1 0 ) ま た 、 全 1 6 種 の う ち 、 レ ッ ド デ ー タ ブ ッ ク* * , 1 1 )に 絶 滅 危 惧 種 ( 絶 滅 危 惧 Ⅱ 類 ) と し て 4 種 ( 温 帯 種 2 種 、 熱 帯 種 2 種 ) が 、 準 絶 滅 危 惧 種 と し て 9 種 ( 温 帯 種 2 種 、 熱 帯 種 7 種 ) が 、 そ れ ぞ れ 掲 載 さ れ て い る ( 表 1 - 2 ) 。 * : 最 近 沖 縄 県 内 で 新 た に 2 種 の 海 草 の 生 育 可 能 性 が 指 摘 さ れ て い る 。 * * : レ ッ ド デ ー タ ブ ッ ク ( 「 改 訂 ・ 日 本 の 絶 滅 の お そ れ の あ る 野 生 生 物 − レ ッ ド デ ー タ ブ ッ ク 」1 1 )は 、 生 物 学 的 観 点 か ら 、 環 境 庁 ( 現 環 境 省 ) が 個 々 の 種 の 絶 滅 の 危 険 度 を 評 価 し 、 選 定 し た も の で あ る 。 動 植 物 の 分 類 群 ご と に 選 定 ・ 公 表 さ れ た レ ッ ド リ ス ト ( 絶 滅 の お そ れ の あ る 野 生 生 物 の 種 の リ ス ト ) を 基 に 、 そ れ ぞ れ の 種 の 生 息 状 況 な ど を と り ま と め 、 編 纂 さ れ て お り 、 以 下 の カ テ ゴ リ ー に 区 分 さ れ て い る 。 2

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-・ 絶 滅 危 惧 Ⅰ 類 ( Ⅰ A 類 ; C R 、 Ⅰ B 類 ; E N ) : 絶 滅 の 危 機 に 瀕 し て い る 種 ・ 絶 滅 危 惧 Ⅱ 類 ( V U ) : 絶 滅 の 危 険 が 増 大 し て い る 種 ・ 準 絶 滅 危 惧 種 ( N T ) : 現 時 点 で は 絶 滅 危 険 度 は 小 さ い が 、 生 息 条 件 の 変 化 に よ っ て は 「 絶 滅 危 惧 」 ( 絶 滅 の お そ れ の あ る 種 ) に 移 行 す る 可 能 性 の あ る 種 ・ 情 報 不 足 ( D D ) : 評 価 す る だ け の 情 報 が 不 足 し て い る 種 我 が 国 の 海 草 の 中 で 最 大 の 種 数 を 含 む ア マ モ 科 は 、 全 世 界 で も 最 大 で 、 1 8 種1 0 ) に 分 類 さ れ る 大 き な グ ル ー プ で あ る 。 こ の う ち 、 7 種 の ア マ モ 科 海 草 が 分 布 す る 日 本 列 島 は 、 世 界 で 最 も ア マ モ 科 の 多 様 性 が 高 い 地 域 で あ る 。 日 本 列 島 周 辺 域 の ア マ モ 科 の 系 統 関 係 は 、 D N A 解 析 に よ り 明 ら か に さ れ て い る1 5、1 6 )。 こ れ に よ る と 、 淡 水 水 草 と ア マ モ が 分 岐 し た の は 分 子 進 化 時 間 か ら 約 1 億 年 前 、 ま た タ チ ア マ モ と ア マ モ が 分 岐 し た の は 6 0 0 万 年 前 と 推 定 さ れ て い る 。 ア マ モ は 、 比 較 的 新 し い 種 で あ る に も か か わ ら ず 、 汎 世 界 種 と し て 分 布 を 拡 大 し た と 考 え ら れ て い る1 5、1 6 ) 表 1 - 2 日 本 産 海 草 一 覧 科 名 ( 種 類 数 ) 和 名 ( カ テ コ ゙ リ ー 区 分 * ) 分 布 域 ト チ カ ガ ミ 科 ( 4 ) ウ ミ シ ョ ウ ブ ( V U ) T R リ ュ ウ キ ュ ウ ス ガ モ ( N T ) T R ウ ミ ヒ ル モ ( N T ) T R 、 T E ヒ メ ウ ミ ヒ ル モ ( V U ) ( ト ゲ ウ ミ ヒ ル モ ) T R ア マ モ 科 ( 7 ) ア マ モ T E オ オ ア マ モ ( V U ) T E 、 A R タ チ ア マ モ ( V U ) T E ス ゲ ア マ モ ( N T ) T E 、 T R コ ア マ モ ( D D ) A R 、 T E 、 T R ス ガ モ T E 、 A R (岩礁性) エ ビ ア マ モ ( N T ) T E (岩礁性) ヒ ル ム シ ロ 科 ( 5 ) ベ ニ ア マ モ ( N T ) T R リ ュ ウ キ ュ ウ ア マ モ ( N T ) T R ウ ミ ジ グ サ ( N T ) T R マ ツ バ ウ ミ ジ グ サ ( N T ) T R シ オ ニ ラ ( N T ) ( ボ ウ バ ア マ モ ) T R * カ テ ゴ リ ー 区 分 : V U ; 絶 滅 危 惧 Ⅱ 類 、 N T ; 準 絶 滅 危 惧 、 D D ; 情 報 不 足 ( 文 献 1 1 ) に よ る ) 。 分 布 域 : T R ; 熱 帯 か ら 亜 熱 帯 、 T E ; 温 帯 、 A R ; 亜 寒 帯 。 ス ガ モ 、 エ ビ ア マ モ は 岩 礁 に 生 育 、 他 は 砂 泥 底 に 分 布 。 3

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-海 草 藻 場 の 代 表 的 な 構 成 種 で あ る ア マ モ は 、 北 -海 道 か ら 九 州 ま で 分 布 し 、 静 穏 な 内 湾 や 浅 海 の 砂 泥 底 域4 )に ア マ モ 場 と 呼 ば れ る 群 落 を 形 成 す る 。 ア マ モ の 分 布 南 限 は 、 8 月 の 表 面 水 温 の 2 7 ℃ 等 温 線 が 境 界 で あ る と さ れ て い る1 7 ) 。 ま た 、 8 月 の 平 均 水 温 2 8 ℃ 付 近 が 生 育 上 限 水 温 と 考 え ら れ て い る1 8 )。 温 帯 か ら 亜 寒 帯 に 分 布 す る 海 草 藻 場 で は 、 単 一 種 の 卓 越 す る こ と が 多 い1 9 ) ア マ モ の 生 育 水 深 は 、 大 潮 低 潮 線 か ら 水 深 5 ∼ 6 m ま で の 例 が 多 く 、 最 深 で 1 0 m 付 近 ま で で あ る4 )。 そ の た め 、 ア マ モ 場 は 、 海 岸 線 沿 い に 帯 状 に 分 布 す る こ と に な る 。 た だ し 、 海 岸 線 沿 い に 、 ア マ モ の 生 育 に 適 し た 場 所 が 連 続 し て い る と は 限 ら ず 、 ア マ モ 場 は 斑 状 群 落 を な し て 分 布 す る2 0 )こ と が 多 い 。 生 育 水 深 の 上 限 は 、 主 に 干 潮 時 の 干 出 と 、 波 浪 や 潮 汐 な ど の 海 水 流 動 に よ る 砂 面 移 動 に よ っ て 制 限 さ れ て い る 2 1 )。 ま た 、 生 育 水 深 の 下 限 は 、 海 水 中 を 透 過 し て く る 光 量 に よ っ て 制 限 さ れ て い る2 1、2 2 ) ア マ モ の 生 活 史 は 、 地 域 に よ り 差 が あ る も の の 、 お お よ そ 図 1 - 1 に 示 す と お り で あ る2 3 ) 。 ア マ モ は 雌 雄 同 株 で 、 種 子 に よ る 繁 殖 ( 有 性 生 殖 ) と 地 下 茎 の 生 長 ・ 分 枝 に よ る 繁 殖 ( 無 性 生 殖 ) を 繰 り 返 し 、 群 落 を 拡 大 す る3、4 )。 葉 長 は 初 夏 が 最 大 、 秋 ∼ 冬 に 最 小3、4 )と な り 、 現 存 量 も そ れ に 応 じ て 大 き く 変 化 す る 2 4 )。 草 丈 は 、 日 本 南 西 部 で は 伸 長 期 に 1 m 前 後 、 北 日 本 で は 2 m に 達 す る4 )。 草 丈 が 最 長 8 m 程 度 に な る タ チ ア マ モ ( Z o s t e r a c a u l e s c e n s ) は 、 水 深 1 6 m 付 近 ま で 生 育 す る1 3 ) こ と が あ る 。 ア マ モ は 多 年 生 の 海 草 で あ る が 、 発 芽 後 一 年 以 内 に 種 子 を 作 っ て 枯 死 す る 一 年 生 の ア マ モ 2 5 )が み ら れ る 地 域 も あ る1 3 , 2 6 ) 。 図 1 - 1 ア マ モ の 生 活 環 (神奈川県小田和湾の場合23) 4

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-奄 美 諸 島 以 南 で は 、 熱 帯 種 で あ る リ ュ ウ キ ュ ウ ア マ モ (C y m o d o c e a s e r r u l a t a) や リ ュ ウ キ ュ ウ ス ガ モ (T h a l a s s i a h e m p r i c h i i )な ど の 小 型 の 海 草 が 分 布 す る 。 こ れ ら は 、 多 く の 場 合 、 サ ン ゴ 礁 と 陸 地 の 間 の 礁 湖2 7、2 8 )な ど に 密 生2 7 )し 、 熱 帯 海 草 藻 場 を 形 成 す る 。 ま た 、 単 一 種 が 卓 越 す る こ と は ほ と ん ど な く 、 複 数 種 が 混 生2 9 )し て 複 雑 な 群 落 を 形 成 す る1 9 )。 こ れ ら の 熱 帯 種 は 、 有 性 ・ 無 性 生 殖 を 行 っ て 増 殖 す る 7 )が 、 こ れ ま で 開 花 の 記 録 が ほ と ん ど な い 種1 0 )も あ る 。 そ の 現 存 量 は 、 冬 季 に 低 下 す る も の の 、 顕 著 な 季 節 変 化 は な い2 7 ) 5

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-1 . -1 . 3 藻 場 の 構 造 と 機 能

藻 場 の 復 元 に 当 た っ て は 、 藻 場 の 構 造 と 機 能 の 理 解 が 重 要 で あ る 。 以 下 に そ の 概 略 を 示 し た 。 ( 1 ) 藻 場 の 構 造 生 態 系 は 、 生 物 群 集 と 無 機 的 環 境 か ら 成 る 一 つ の 物 質 系 2 )で あ る 。 こ れ は 、 生 産 者 ・ 消 費 者 ・ 分 解 者 な ど の 生 物 的 構 成 要 素 と 大 気 ・ 水 ・ 土 壌 ・ 光 な ど の 無 機 的 環 境 の 構 成 要 素 か ら な り 、 こ れ ら の 各 構 成 要 素 は 、 環 境 作 用 ( a c t i o n ) ・ 環 境 形 成 作 用 ( r e a c t i o n ) あ る い は 生 物 相 互 作 用 ( c o a c t i o n ) に よ っ て 動 的 に 結 合 さ れ て い る(2 ) 注 : ・ 生 物 群 集 : あ る 場 所 に 有 機 的 集 合 体 と し て 生 活 す る す べ て の 生 物 個 体 群 。 ・ 環 境 作 用 : 環 境 、 す な わ ち 生 物 を 取 巻 く 無 機 的 自 然 が 生 物 に 及 ぼ す 影 響 。 ・ 環 境 形 成 作 用 : 生 物 が 環 境 へ 働 き か け 、 新 し い 環 境 を 作 り 出 す 作 用 。 ・ 生 物 相 互 作 用 : 生 物 相 互 の 間 で ふ つ う 直 接 的 に 関 係 し 合 う こ と2 ) 生 態 系 と し て の 藻 場 も 、 生 産 者 で あ る 海 草 や 付 着 微 細 藻 類 な ど の 植 物 、 藻 場 で 餌 を 採 り 生 育 場 と す る 消 費 者 と し て の 動 物 、 分 解 者 で あ る 細 菌 類 と い っ た 生 物 群 集 ( 生 物 的 構 成 要 素 の 集 合 体 ) 及 び 水 ・ 光 ・ 土 壌 ・ 地 勢 な ど の 無 機 的 環 境 の 構 成 要 素 が 、 上 記 3 つ の 作 用 に よ っ て 動 的 に 結 合 さ れ て い る 一 つ の 物 質 系 で あ る 。 藻 場 の 主 た る 構 成 要 素 の 整 理 例 を 、 表 1 - 3 に 示 す 。 な お 、 表 中 で は 、 生 物 的 構 成 要 素 の う ち 、 生 産 者 ・ 消 費 者 な ど の 分 類 を 、 植 物 及 び 動 物 と い う 構 成 要 素 に 便 宜 的 に 区 分 し て 扱 っ た 。 表 1 - 3 藻 場 の 主 た る 構 成 要 素 区 分 構 成 要 素 構 成 要 素 の 状 態 海 草 類 : 密 度 、 被 度 、 面 積 、 草 丈 、 成 長 率 、 生 産 力 、 繁 殖 力 な ど 植 物 付 着 微 細 藻 類 の 種 組 成 、 現 存 量 、 生 産 力 な ど 葉 上 動 物 ・ 葉 間 性 浮 遊 動 物 な ど の 小 型 動 物 の 種 組 成 、 個 体 数 な ど 魚 類 な ど の 遊 泳 性 動 物 の 種 組 成 、 個 体 数 な ど 生 物 的 構 成 要 素 動 物 底 生 生 物 の 種 組 成 及 び 現 存 量 な ど 水 質 : 濁 度 、 水 温 、 塩 分 、 栄 養 塩 類 濃 度 な ど 水 流 況 : 流 速 、 波 浪 な ど 光 水 中 光 量 な ど 基 質 底 質 : 粒 度 組 成 、 有 機 成 分 組 成 、 漂 砂 、 砂 面 変 動の 状 況 ( 堆 積 物 の 安 定 性 ) な ど 無 機 的 環 境 の 構 成 要 素 地 勢 干 出 の 有 無 、 地 形 、 勾 配 の 状 況 な ど 注 : 文 献3 0 ∼ 3 3 )な ど を 参 考 に 作 成 。 6

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-藻 場 の 構 造 と は 、 生 物 的 構 成 要 素 と 無 機 的 環 境 の 構 成 要 素 が 各 々 あ る い は 一 体 と な っ て な す 構 造 で あ る 。 具 体 的 に は 、 海 草 な ど の 生 物 的 構 成 要 素 の な す 構 造 と し て は 、 種 組 成 を 含 む 群 落 構 造 、 食 物 連 鎖 構 造 な ど の 構 造 が あ り 、 生 物 的 構 成 要 素 と 無 機 的 環 境 の 構 成 要 素 が 一 体 と な っ て な す 構 造 と し て は 、 物 質 生 産 構 造 な ど が あ げ ら れ る 。 藻 場 の 構 造 の 把 握 に 当 た っ て は 、 各 構 成 要 素 の 状 態 や 構 成 要 素 同 士 の 対 応 関 係 を 検 討 す る こ と が 重 要 で あ る 。 ・ 群 落 構 造 : 空 間 的 構 造 と し て は 、 垂 直 的 構 造 − 階 層 構 造 ( 植 物 群 落 内 に み ら れ る 葉 層 の 成 層 構 造2)) 、 水 平 的 構 造 − 個 体 の 空 間 的 分 布 、 種 の 優 占 度 − 密 度 ・ 被 度 ・ 現 存 量 な ど で あ り 、 時 間 的 構 造 と し て は 遷 移 の 進 行 に 伴 う 変 動 、 植 生 変 化 に お け る 種 の 空 間 的 配 置 と 動 的 行 動 の 相 互 関 係 な ど が 含 ま れ る3 4 ) ・ 食 物 連 鎖 構 造 : 生 態 系 に お い て 、 生 産 者 で あ る 植 物 が 生 産 す る 有 機 物 を 基 に 、 群 集 内 で 構 成 さ れ る 互 い に 被 食 者 − 捕 食 者 関 係 に よ る つ な が り 。 元 来 は ひ と つ ひ と つ の 鎖 環 を 指 す の が 本 義 で あ っ た が 、 現 在 で は つ な が り 全 体 ( 食 物 網 ) を 指 し て 使 わ れ る こ と が 多 い3 5 ) ・ 物 質 生 産 構 造 : 光 合 成 植 物 に お け る 、 植 物 体 中 の 水 分 を 除 い た 乾 燥 物 質 量 の 生 産 過 程3 5 )に 係 る 構 造 。 光 合 成 に よ る 有 機 物 の 生 成 が そ の 基 本 を な す 3 5 ) 。 植 物 群 落 の 同 化 系 と 非 同 化 系 の 垂 直 分 布 と 、 群 落 内 の 相 対 照 度 の 垂 直 的 分 布 は 、 物 質 生 産 に 密 接 な 関 係 を 有 す る た め 、 生 産 構 造 と 呼 ば れ る2 ) ( 2 ) 藻 場 の 機 能 生 態 系 の 機 能 は 、 そ の 構 造 と 密 接 に 関 係 し て い る 。 藻 場 に つ い て も 同 様 で あ り 、 そ の 機 能 と し て は 、 表 1 - 4 に 示 す 例 の よ う に 、 物 質 循 環 、 生 物 の 共 存 、 環 境 保 全 の 三 つ に 大 別 さ れ る 。 物 質 循 環 機 能 は 、 一 次 生 産 、 及 び デ ト リ タ ス * を 起 点 と し た 食 物 連 鎖3 6)を 通 じ て 物 質 を 循 環 さ せ る 機 能 に 分 け ら れ る 。 生 物 の 共 存 機 能 は 、 生 物 多 様 性 維 持 、 幼 稚 魚 育 成 、 餌 料 供 給 、 産 卵 場 形 成 と い う 各 機 能 が あ げ ら れ る 。 環 境 保 全 機 能 と し て は 、 水 質 浄 化 、 底 質 安 定 化 、 環 境 形 成 ・ 維 持 機 能 が あ げ ら れ る 。 * 注 : 生 物 体 の 分 解 に よ っ て 生 じ た 非 生 体 的 有 機 物 を 指 す 。 巻 末 の 用 語 集 参 照 。 7

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-表 1 - 4 藻 場 の 機 能 の 例 機 能 の 分 類 特 徴 物 質 循 環 機 能 ・ 一 次 生 産 : 海 草 及 び そ の 葉 上 に 生 育 す る 付 着 藻 類 は 、 太 陽 か ら の 光 の エ ネ ル ギ ー を 化 学 エ ネ ル ギ ー と し て 他 の 消 費 者 が 利 用 で き る 有 機 物 の 形 に 固 定 す る 一 次 生 産 を 行 う 。 ・ 分 解 ・ 物 質 循 環 : 枯 死 し た ア マ モ は 分 解 さ れ て デ ト リ タ ス と な り 、 バ イ オ タ ー ベ ー シ ョ ン ( 生 物 擾 乱 又 は 生 物 攪 乱 ) や 波 浪 に よ る 底 質 の 攪 乱 な ど に よ っ て 底 質 中 に 有 機 物 を 供 給 す る 。 ま た 、 主 に 腐 食 連 鎖 を 通 じ て 、 魚 類 な ど の 高 次 消 費 者 を 支 え る 。 生 物 多 様 性 の 維 持 機 能 多 く の 無 脊 椎 動 物 や 魚 類 の 生 息 場 所 、 採 餌 場 、 隠 れ 場 と し て 利 用 さ れ る 。 そ の た め 、 藻 場 は 多 種 多 様 な 生 物 を 維 持 す る 機 能 を 持 つ 。 幼 稚 魚 育 成 機 能 藻 場 は 、 幼 稚 魚 の 隠 れ 家 と し て の 保 護 機 能 を 持 つ 。 餌 料 供 給 機 能 葉 上 ・ 葉 間 ・ 海 底 に 分 布 す る 珪 藻 類 は 小 動 物 ( ヨ コ エ ビ 類 、 ア ミ 類 な ど ) の 、 ま た 小 動 物 は 幼 稚 魚 の 適 切 な 質 、 大 き さ の 餌 と な る 。 生 物 の 共 存 機 能 産 卵 場 形 成 機 能 海 草 の 地 上 部 ( 葉 、 茎 、 花 枝 な ど ) は 、 付 着 卵 を 産 む 魚 類 ・ イ カ 類 の 産 卵 基 質 と な る 。 水 質 浄 化 機 能 ・ 海 草 類 は 、 そ の 生 育 に 伴 い 、 富 栄 養 化 の 要 因 で あ る リ ン や 窒 素 を 海 水 及 び 底 泥 中 か ら 吸 収 ・ 除 去 す る 。 ・ 繁 茂 し た 葉 部 は 水 の 流 動 を 妨 げ 、 懸 濁 物 質 を 海 底 に 沈 降 さ せ る 。 底 質 安 定 化 機 能 海 草 群 落 の 地 上 部 が 沖 合 か ら の 波 の 力 を 減 衰 さ せ 、 ま た 地 下 茎 を 張 り 巡 ら せ る こ と に よ り 、 底 質 を 安 定 化 さ せ る 。 加 え て 、 漂 砂 な ど を 抑 制 し 、 砂 浜 や 干 潟 の 縮 小 を 防 止 す る 。 環 境 保 全 機 能 環 境 形 成 ・ 維 持 機 能 ・ 上 記 と 同 様 に 、 海 草 の 地 上 部 が 海 水 の 流 動 を 抑 え る こ と に よ り 、 藻 場 内 は 静 穏 状 態 が 形 成 さ れ る 。 ・ 光 合 成 の 際 、 大 気 か ら 海 水 へ と 溶 け 込 ん だ 溶 存 態 炭 酸 ガ ス を 吸 収 す る と と も に 、 海 水 中 に 溶 存 酸 素 を 補 給 す る 。 注 : 文 献3 、 4 、 6 ∼ 8 、 2 0 、 2 1 、 2 4 )な ど を 参 考 に 作 成 。

1 . 1 . 4 藻 場 の 重 要 性 、 現 状 及 び 課 題

( 1 ) 藻 場 の 重 要 性 藻 場 を は じ め と し た 砂 浜 、 磯 、 干 潟 、 河 口 沼 沢 地 な ど は 、 さ ま ざ ま な 海 岸 動 物 や 植 物 の 生 息 地 、 あ る 種 の 海 洋 動 物 の 繁 殖 地 、 鳥 類 な ど の 休 息 地1 3 )な ど と し て 、 沿 岸 生 態 系 の 重 要 な 位 置 を 占 め て い る 。 こ の よ う な 生 物 群 集 を 有 す る 沿 岸 生 態 系 の う ち 、 藻 場 は 漁 業 な ど を 通 じ て 人 間 に と っ て も 昔 か ら 有 用 な 環 境 と し て 認 識 さ れ て き た 。 藻 場 は 、 以 下 の よ う に 、 海 洋 生 物 の 生 産 活 動 ・ 生 活 の 場 や 漁 場 と し て の 特 性 な ど が あ り 、 沿 岸 生 態 系 の 中 で 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る 1 3 ) と い う こ と が で き る 。 8

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-< 一 次 生 産 者 と し て の 重 要 性 > 海 洋 及 び 陸 上 に お け る 主 要 な 生 態 系 の 一 次 生 産 量 の 比 較 を 表 1 - 5 に 示 す3 ) 。 海 洋 の う ち 、 外 洋 ・ 湧 昇 域 ・ 大 陸 棚 の 一 次 生 産 量 の ほ と ん ど は 植 物 プ ラ ン ク ト ン に よ る も の で あ る3 )。 こ れ ら に 対 し て 、 潮 間 帯 ・ 亜 潮 間 帯 と 河 口 域 の 一 次 生 産 量 は 、 主 と し て 海 産 大 型 植 物 ( m a c r o p h y t e : 海 藻 ・ 海 草 ) に よ る も の で 、 こ れ ら の 単 位 面 積 当 た り の 年 平 均 一 次 生 産 量 は 、 陸 上 の 熱 帯 降 雨 林 に 匹 敵 す る 高 い 生 産 性 を 示 す3 )。 海 草 で は 、 珪 藻 な ど 葉 上 の 付 着 微 細 藻 類 に よ る 生 産 量 も 高 く 、 最 大 で 海 草 の 1 / 3 に も の ぼ る1 )。 海 草 を 摂 食 す る 動 物 は ウ ニ 類 や 端 脚 類 の 一 部 な ど ご く 僅 か で 、 他 に ハ ク チ ョ ウ 類 、 ア オ ウ ミ ガ メ 、 海 牛 類 な ど の 脊 椎 動 物 が 知 ら れ て い る1 )程 度 で あ り 、 海 草 が 直 接 利 用 さ れ る 割 合 は 少 な い 。 生 産 さ れ た 海 草 は 、 枯 死 し た 後 、 そ の 大 部 分 が 分 解 さ れ て デ ト リ タ ス ( d e t r i t u s ) と な っ て 腐 食 連 鎖 に 組 み こ ま れ 、 こ れ を 通 じ て 高 次 生 産 者 を 支 え て い る 割 合 の ほ う が 多 い1、2 4 ) こ の よ う に 、 藻 場 は 、 一 次 生 産 及 び 腐 食 連 鎖 を 通 じ て 、 沿 岸 生 態 系 に お け る 物 質 循 環 で 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る 。 表 1 - 5 世 界 主 要 生 態 域 に お け る 一 次 生 産 量 一 次 生 産 量 面 積 単 位 面 積 当 た り の 年 平 均 生 産 量 合 計 ( 年 当 た り ) 1 06k m2 ( g C / m2・ y r ) ( 1 09 t o n s C / y r ) < 海 洋 生 態 域 > 外 洋 3 3 2 . 0 1 2 5 4 1 . 5 湧 昇 域 0 . 4 5 0 0 0 . 2 大 陸 棚 2 6 . 6 3 6 0 9 . 6 潮 間 帯 ・ 亜 潮 間 帯 0 . 6 2 , 0 0 0 1 . 2 河 口 域 1 . 4 1 , 8 0 0 2 . 5 ( 海 洋 合 計 ) 3 6 1 . 0 1 5 2 5 5 . 0 < 陸 上 主 要 生 態 域 > 熱 帯 降 雨 林 1 7 . 0 2 , 0 0 0 3 4 . 0 温 帯 落 葉 樹 林 7 . 0 1 , 2 0 0 8 . 4 ツ ン ド ラ ・ 高 山 8 . 0 1 4 0 1 . 1 沼 沢 地 ・ 塩 沢 地 2 . 0 2 , 5 0 0 5 . 0 砂 漠 2 4 . 0 3 0 . 0 7 ( 陸 上 合 計 ) 1 4 9 . 0 7 2 1 1 0 7 . 4 注 : 文 献3 )を 基 に 作 成 ( 原 典 は 、 C . J . D a w e s ( 1 9 8 1 ) ) 。 9

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-< 生 物 の 共 存 機 能 及 び 環 境 保 全 機 能 の 重 要 性 > ア マ モ を 含 む 海 草 は 、 そ の 他 の 生 物 群 集 が 生 息 場 と し て 利 用 で き る 三 次 元 空 間 を 形 成 す る 。 そ の 結 果 、 陸 上 の 植 物 群 落 と 同 様 に 、 樹 冠 に あ た る 海 草 の 地 上 部 、 及 び 地 下 部 に お い て 、 そ れ ぞ れ 生 息 場 所 を 分 け て 利 用 し て い る 多 様 な 生 物 群 集 が 形 成 さ れ る3 7 ) 。 こ れ ら の 藻 場 の 動 物 群 集 は 、 大 き く 3 つ の 動 物 群 に 分 け ら れ る 。 ・ 葉 上 の 動 物 群 コ ケ ム シ な ど の 固 着 性 動 物 、 葉 上 を 移 動 す る 巻 貝 や 甲 殻 類 な ど3 7 ) 、 付 着 性 ( s e s s i l e ) と 移 動 性 ( m o b i l e ) の グ ル ー プ が あ る 。 体 は 小 型 で あ る が 、 種 数 も 個 体 数 も 極 め て 多 く 、 藻 場 特 有 の 動 物 群 で あ る1 ) ・ 藻 場 を 遊 泳 し 、 自 由 に 出 入 り す る 動 物 群 多 く の 魚 類 や イ カ 類 、 大 型 甲 殻 類 が 含 ま れ る 。 水 産 上 有 用 な 生 物 も 多 い1 ) ・ 藻 場 内 の 海 底 上 又 は 海 底 内 に 生 息 す る 底 生 動 物 藻 場 の 底 生 動 物 は 、 藻 場 以 外 で の 底 生 動 物 に 比 べ て 豊 富 で あ る こ と が 知 ら れ て い る 。 し か し 、 こ れ は 一 次 生 産 の 豊 か さ に よ る も の で あ り 、 藻 場 特 有 の 底 生 動 物 が 多 い わ け で は な い1 ) 。 藻 場 は 、 そ の 存 在 に よ り 、 藻 場 内 の 水 流 な ど の 水 理 的 環 境 を 安 定 さ せ る こ と に よ っ て 比 較 的 静 穏 な 環 境 を 作 り 出 し て い る 。 同 時 に 、 水 中 の 懸 濁 物 を 堆 積 し や す く さ せ る 作 用 、 波 や 流 れ に 対 し て 堆 積 物 を 安 定 化 さ せ る 作 用1 )を 有 す る ほ か 、 水 質 の 浄 化 機 能 や 魚 礁 も 兼 ね た 多 機 能 型 消 波 堤6 ) と 形 容 さ れ る 役 割 も 果 た し て い る 。 < 水 産 上 の 有 用 性 > 従 来 よ り 漁 業 者 は 、 魚 類 が ア マ モ 場 に よ く 集 ま っ て く る こ と を 経 験 的 に 知 っ て お り 、 そ の た め ア マ モ 場 を 大 切 な 漁 場 と 見 な し て き た3 ) ま た 、 藻 場 は 魚 類 や 無 脊 椎 動 物 の 産 卵 場 、 そ し て こ れ ら の 幼 稚 魚 の 採 餌 場 や 成 育 場 と な っ て お り1 )、 水 産 上 ア マ モ 場 が 大 き な 役 割 を 果 た し て い る こ と が 近 年 の 研 究 に よ り 明 ら か に さ れ て き た3 ) 。 10

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-( 2 ) 藻 場 の 現 状 と 課 題 ① 現 状 日 本 の 沿 岸 域 に お い て 、 海 草 ・ 海 藻 が 生 育 で き る 水 深 2 0 m 以 浅 の 海 域 面 積 は 約 3 , 0 8 8 , 0 0 0 h a で あ る3 8 ) 。 1 9 9 1 年 時 点 で 現 存 す る 海 草 藻 場 と 海 藻 藻 場 の 総 面 積 は 2 0 1 , 2 1 2 h a で あ り 、 そ の う ち の 6 . 5 % を 占 め る に す ぎ な い 。 こ の こ と は 、 後 述 の 藻 場 の 減 少 は あ る も の の 、 海 草 及 び 海 藻 は 沿 岸 浅 海 域 の ご く 一 部 の 範 囲 に し か 生 育 で き ず 、 海 草 ・ 海 藻 藻 場 の 分 布 範 囲 も 限 ら れ て い る こ と を 意 味 す る 。 特 に 、 ア マ モ 場 及 び 熱 帯 海 草 藻 場 は 、 沿 岸 浅 海 域 の 低 潮 線 か ら 水 深 数 メ ー ト ル ま で の 静 穏 な 内 湾 砂 泥 地 に し か 生 育 で き な い た め 、 埋 立 、 干 拓 の 影 響 を 直 接 受 け や す い3 9 ) 我 が 国 に お け る 海 藻 藻 場 を 含 む 藻 場 は 、 高 度 経 済 成 長 期 を 通 じ て 、 埋 立 や 護 岸 工 事 な ど に よ っ て 著 し く 減 少 し て き た4 0 )。 例 え ば 、 瀬 戸 内 海 の ア マ モ 場 は 、 1 9 4 5 年 以 降 大 規 模 な 消 滅 ・ 衰 退 が 見 ら れ 、 特 に 1 9 6 5 年 か ら 1 9 7 1 年 の 6 年 間 で 1 1 , 1 7 4 h a か ら 5 , 5 7 4 h a と 、 ほ ぼ 半 減 し て い る1 9 ) 。 環 境 庁 第 4 回 自 然 環 境 保 全 基 礎 調 査 ( 1 9 9 4 ) に よ る と 、 1 9 7 8 年 か ら 1 9 9 1 年 の 間 に 、 我 が 国 の 海 草 藻 場 と 海 藻 藻 場 の 総 面 積 は 2 0 7 , 6 1 5 h a か ら 2 0 1 , 2 1 2 h a へ と 減 少 し 、 1 3 年 間 で 6 , 4 0 3 h a の 消 滅 が 明 ら か と な っ て い る5 ) 。 こ の 消 滅 し た 藻 場 の う ち 、 ア マ モ 場 ( 熱 帯 海 草 藻 場 を 含 む ) の 消 滅 面 積 は 2 , 0 7 7 h a で あ る ( 表 1 - 6 ) 。 ア マ モ 場 の み の 消 滅 比 率 は 4 . 0 % で あ り 、 ガ ラ モ 場 な ど 他 の 藻 場 の 消 滅 比 率 の 中 で 中 間 的 な 値 と な っ て い る 。 し か し 、 表 1 - 7 に 示 す よ う に 、 海 域 に よ っ て は 、 ア マ モ 場 の 消 滅 比 率 が 非 常 に 大 き く な っ て い る と こ ろ も あ る 。 例 え ば 、 日 向 灘 、 播 磨 灘 北 、 天 草 灘 の よ う に 、 消 滅 面 積 が 現 存 ア マ モ 場 よ り も 大 き い 地 域 が あ る 。 ま た 、 陸 奥 湾 、 三 河 湾 、 備 讃 瀬 戸 西 、 八 重 山 列 島 の よ う に 、 ア マ モ 場 の 消 滅 面 積 が 全 消 滅 藻 場 総 面 積 の 大 半 を 占 め て い る 海 域 も あ る 。 11

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-表 1 - 6 現 存 藻 場 と 消 滅 藻 場 面 積 ( 第 4 回 自 然 環 境 保 全 基 礎 調 査 ) 藻 場 の 区 分 現 存 面 積 ( h a ) : a ( 1 9 9 1 年 時 点 ) 消 滅 面 積 ( h a ) : b ( 1 9 7 8 ∼ 1 9 9 1 年 ) 消 滅 比 率 ( % : b / ( a + b ) ) ア マ モ 場 4 9 , 4 6 4 2 , 0 7 7 4 . 0 ガ ラ モ 場 8 5 , 6 8 2 2 , 3 1 5 2 . 6 コ ン ブ 場 3 5 , 7 2 4 5 0 7 1 . 4 ア ラ メ 場 6 4 , 4 8 3 1 , 6 8 7 2 . 5 ワ カ メ 場 3 1 , 3 8 1 1 , 5 5 0 4 . 7 テ ン グ サ 場 1 9 , 0 2 4 1 , 3 8 8 6 . 8 ア オ サ ・ ア オ ノ リ 場 9 , 1 0 9 4 8 9 5 . 1 そ の 他 2 1 , 0 0 9 4 0 3 1 . 9 注 : 文 献5 )よ り 、 ア マ モ 場 及 び 熱 帯 海 草 藻 場 を 対 象 と し て 集 計 。 同 一 の 藻 場 が 複 数 の 区 分 で 報 告 ・ 計 上 さ れ て い る 場 合 が あ る た め 、 合 計 面 積 は 実 際 の 面 積 よ り も 多 く な る 。 表 1 - 7 代 表 的 海 域 の 藻 場 の 消 滅 状 況 ( 第 4 回 自 然 環 境 保 全 基 礎 調 査 ) 消 滅 比 率 ( % ) 海 域 現 存 藻 場 計 ( h a ) 現 存 ア マ モ 場 ( h a ) : a 全 消 滅 藻 場 ( h a ) : b ア マ モ 場 消 滅 面 積 ( h a ) : c c / ( a + c ) 対 全 消 滅 藻 場 ( c / b ) 陸 奥 湾 8 , 9 0 9 6 , 8 6 2 3 7 4 3 6 9 5 . 1 9 8 . 7 三 河 湾 6 3 8 3 9 0 1 6 9 1 6 9 3 0 . 2 1 0 0 . 0 日 向 灘 2 , 1 0 5 1 0 4 6 9 4 4 8 1 . 5 9 . 4 備 讃 瀬 戸 西 1 , 4 7 9 9 7 4 7 9 5 7 5 . 5 7 2 . 2 播 磨 灘 北 5 3 4 1 7 6 3 7 7 2 1 8 5 5 . 3 5 7 . 8 天 草 灘 1 5 , 5 0 7 2 3 , 4 0 6 7 7 9 7 . 5 2 . 3 八 重 山 列 島 4 , 0 9 1 4 , 0 9 1 1 6 1 6 0 . 4 1 0 0 . 0 注 : 文 献5 )よ り 作 成 。 全 消 滅 藻 場 は ガ ラ モ 場 な ど を 含 む 全 て の 藻 場 を 、 ア マ モ 場 は 熱 帯 海 草 藻 場 を 含 む 。 「 現 存 」 は 1 9 9 1 年 時 点 の 、 「 消 滅 」 は 1 9 7 8 ∼ 1 9 9 1 年 の 間 の 消 滅 を 示 す 。 上 記 の 全 藻 場 の 消 滅 原 因 は 、 原 因 が 判 っ て い る も の の 中 で は 、 埋 立 な ど の 直 接 改 変 が 主 た る も の ( 消 滅 原 因 の 2 8 . 1 % ) で あ り 、 他 に 水 質 汚 濁 な ど の 生 育 環 境 の 悪 化 な ど も そ の 一 因 と さ れ て い る5 ) 近 年 の 沿 岸 域 に お け る 埋 立 面 積 は 、 昭 和 4 0 年 代 の 約 5 分 の 1 で あ り 、 埋 立 に よ る 量 的 改 変 の 程 度 は 鈍 化 し て い る4 1 )。 し か し 、 大 面 積 の 埋 立 は 少 な く な っ て き た も の の 、 残 さ れ た 沿 岸 域 や そ の 近 傍 に お け る 埋 立 は 依 然 と し て 継 続 さ れ て い る4 1 ) こ の よ う な 藻 場 の 減 少 を 背 景 に 、 昭 和 4 0 年 代 か ら 沿 岸 漁 場 整 備 事 業 の 一 環 と し て 、 水 産 生 物 の 幼 稚 魚 の 育 成 場 と し て の ア マ モ 場 造 成4 ) の 試 験 研 究 が 進 め ら れ て き た 。 こ れ ら の 活 動 は 、 主 に 瀬 戸 内 海 沿 岸 に お い て 、 播 種 あ る い は 移 植 な ど の 方 法 に よ り 実 施 さ れ て い る4、1 8 ) こ れ ま で の 事 例 は 、 ほ と ん ど が 試 験 段 階 の 小 規 模 の も の4 )で あ り 、 実 12

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-用 的 規 模 で 造 成 し た 事 例 は 少 な い1 8)。 ま た 、 造 成 さ れ た ア マ モ の 群 落 は 一 年 以 内 に 消 滅 も し く は 衰 退 し た も の が 多 く 、 移 植 株 の 活 着 や 種 子 の 発 芽 が 見 ら れ た 例 も あ る も の の 、 長 期 に わ た っ て 維 持 で き た 例 は 少 な い3、4、1 8 ) の が 現 状 で あ る 。 ( 最 近 の 調 査 結 果 か ら み た 藻 場 の 現 状 ) 環 境 庁 第 5 回 自 然 環 境 保 全 基 礎 調 査 に よ る と 、 海 草 ・ 海 藻 藻 場 の 総 面 積 は 、 1 4 2 , 4 5 9 h a と な っ て い る 。 ア マ モ 場 の 面 積 は 2 5 , 8 4 3 h a へ と 減 少 し て い る 。 第 4 回 調 査 と 第 5 回 調 査 で は 集 計 方 法 が 異 な る た め 、 こ れ ら の 結 果 を 単 純 に 比 較 す る こ と は 適 切 で は な い が 、 依 然 と し て 藻 場 の 消 滅 は 続 い て い る こ と が 示 唆 さ れ る 。 ② 課 題 前 節 に 示 し た と お り 、 沿 岸 生 態 系 に お い て 重 要 な 位 置 を 占 め る 藻 場 は 、 そ の 分 布 範 囲 が 浅 海 域 の ご く 一 部 の 砂 泥 底 に 限 ら れ 、 し か も 開 発 の 対 象 と な り や す い た め に 、 そ の 減 少 が 進 行 し て い る 。 一 方 、 近 年 我 が 国 に お い て も 身 近 な 自 然 や 生 物 多 様 性 の 危 機 の 現 状 が 認 識 さ れ 始 め 、 こ れ ら に 対 す る 国 民 意 識 が 急 速 に 高 ま っ て き て い る 。 平 成 1 4 年 に は 「 新 ・ 生 物 多 様 性 国 家 戦 略 」 が 決 定 さ れ 、 同 戦 略 の 中 で も 干 潟 や サ ン ゴ 礁 と 同 様 に 、 藻 場 に つ い て も そ の 保 全 の 必 要 性 が 言 及 さ れ て い る 。 ま た 、 同 年 に は 、 自 然 再 生 推 進 法 ( 平 成 1 4 年 法 律 第 1 4 8 号 ) が 成 立 し 、 平 成 1 5 年 か ら 施 行 さ れ て い る 。 こ の 法 律 は 、 地 域 の 多 様 な 主 体 の 参 加 に よ り 、 自 然 再 生 ( 藻 場 も 含 め 、 河 川 、 湿 原 、 干 潟 、 サ ン ゴ 礁 な ど の 自 然 環 境 を 保 全 、 再 生 、 創 出 、 又 は そ の 状 態 を 維 持 管 理 す る こ と ) 事 業 の 推 進 を 目 的 と し て い る 。 こ の よ う な 政 府 を 中 心 と し た 取 組 も 含 め 、 こ れ 以 上 の 藻 場 の 減 少 を 防 ぐ こ と は 、 藻 場 を 含 む 沿 岸 生 態 系 の 保 全 に と っ て 喫 緊 の 課 題 で あ る 。 そ の た め に は 、 沿 岸 域 で の 開 発 行 為 に よ り 藻 場 に 影 響 が 及 ぶ お そ れ が あ る 場 合 、 ま ず 回 避 又 は 低 減 措 置 が 検 討 さ れ る こ と を 前 提 に 、 適 切 な 代 償 措 置 を 可 能 な 限 り 実 施 す る こ と が 必 要 と な る 。 し か し 、 環 境 影 響 評 価 制 度 等 に お い て 、 こ れ ま で 実 施 さ れ て き た 藻 場 の 環 境 保 全 措 置*に つ い て は 、 環 境 影 響 の 回 避 又 は 低 減*措 置 を 十 分 に 検 討 し て い な い 取 組 が 多 く み ら れ る4 2)。 ま た 、 消 滅 す る ア マ モ 場 に 対 し て 、 そ の 一 部 を 海 藻 藻 場 で 代 償 す る な ど 、 代 償 措 置*の 定 義 13

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-と 異 な る 事 例 も あ っ た 。 ま た 、 熱 帯 海 草 藻 場 を 対 象 -と し た 移 植 事 例 4 3)で は 、 レ ッ ド デ ー タ ブ ッ ク 掲 載 種 や 生 態 が よ く 判 っ て い な い 海 草 種 に 関 す る 環 境 保 全 上 の 配 慮 が 欠 け て い る と 疑 わ れ る 事 例 も あ る 。 注 : * を 付 し た 語 の 定 義 は 、 第 2 章 [ 配 慮 事 項 1 ] 及 び 巻 末 の 用 語 集 参 照 の こ と 。 こ の よ う に 不 適 切 と 思 わ れ る 事 例 が 一 部 に 見 受 け ら れ る 背 景 と し て 、 技 術 的 な 問 題 以 外 に 、 次 の 点 が 指 摘 で き る 。 す な わ ち 、 藻 場 に 対 す る 環 境 保 全 措 置 の 検 討 ・ 実 施 に 当 た り 、 何 を 目 標 と し 、 ど の よ う な 考 え 方 に 基 づ い て そ の 取 組 を 行 う か 、 そ の 際 ど の よ う な 点 に 配 慮 す べ き か と い う 指 針 が こ れ ま で 必 ず し も 明 確 に さ れ て こ な か っ た 、 と い う 点 で あ る 。 藻 場 の 減 少 を 防 ぎ 、 そ の 保 全 を 図 る た め に は 、 開 発 行 為 に 伴 う 藻 場 の 環 境 保 全 措 置 の 検 討 に 際 し 、 や む を 得 ず 代 償 措 置 を 選 択 す る 場 合 に お い て は 、 損 な わ れ る 藻 場 の 環 境 保 全 の 観 点 か ら の 価 値 の 代 償 を 最 大 化 す る こ と が 重 要 で あ り 、 そ の た め の 指 針 と な る 事 項 を 整 理 す る 必 要 が あ る 。 注 : 開 発 行 為 が 同 一 海 域 の 複 数 地 点 で 実 施 さ れ た 場 合 、 結 果 と し て 広 範 囲 の 藻 場 が 消 滅 す る 事 態 が 想 定 さ れ る 。 こ の よ う な 開 発 行 為 に よ る 影 響 に つ い て は 、 本 配 慮 事 項 で 取 り 上 げ る 範 囲 ( p . 2 1 参 照 ) を 越 え る も の で あ る が 、 大 き な 課 題 で あ る 。 な お 、 沿 岸 域 で 行 わ れ る 小 規 模 の 開 発 行 為 に つ い て は 環 境 影 響 評 価 の 対 象 と な ら な い が 、 こ れ ら に つ い て も 環 境 基 本 法 第 八 条 で 示 さ れ て い る よ う に 、 自 然 環 境 へ の 影 響 を 最 小 限 に 抑 え る 配 慮 は 当 然 必 要 と な る 。 ○ 環 境 基 本 法 ( 事 業 者 の 責 務 ) 第 八 条 第 1 項 「 事 業 者 は 、 基 本 理 念 に の っ と り 、 そ の 事 業 活 動 を 行 う に 当 た っ て は 、 こ れ に 伴 っ て 生 ず る ば い 煙 、 汚 水 、 廃 棄 物 等 の 処 理 そ の 他 の 公 害 を 防 止 し 、 又 は 自 然 環 境 を 適 正 に 保 全 す る た め に 必 要 な 措 置 を 講 ず る 責 務 を 有 す る 。 」 14

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-1 . 2 藻 場 の 復 元 に つ い て

前 節 の 藻 場 に 係 る 課 題 の 解 決 に 資 す る た め 、 開 発 行 為 に 伴 う 藻 場 の 代 償 措 置 を 適 切 に 実 施 し て い く た め の 考 え 方 の 指 針 を 、 「 藻 場 の 復 元 に 関 す る 配 慮 事 項 」 と し て と り ま と め る こ と と し た 。 以 下 に 、 藻 場 の 復 元 の 定 義 ・ 意 義 及 び 藻 場 の 復 元 に 関 す る 配 慮 事 項 の 概 略 を 示 す 。

1 . 2 . 1 藻 場 の 復 元 の 定 義

本 配 慮 事 項 で は 、 「 藻 場 の 復 元 」 を 次 の よ う に 定 義 す る 。 「 藻 場 の 復 元 」 : 「 改 変 に よ る 攪 乱 を 受 け る 以 前 に 有 し て い た 藻 場 の 無 機 的 及 び 生 物 的 な 構 造 を 、 そ れ に 関 連 し た 藻 場 の 機 能 と と も に 、 攪 乱 以 前 と 同 じ 状 態 に ま で 回 復 さ せ る こ と 」 本 配 慮 事 項 は 、 開 発 行 為 な ど に 伴 う 藻 場 の 代 償 措 置 の 実 施 に 際 し て 配 慮 す べ き 事 項 を 示 し た も の で あ る 。 代 償 措 置 は 「 損 な わ れ る 環 境 要 素 * が 持 つ 環 境 の 保 全 の 観 点 か ら の 価 値 を 代 償 す る 」 も の で あ り 、 開 発 行 為 な ど の 前 後 で 損 な わ れ る 藻 場 が 持 つ 環 境 の 保 全 の 観 点 か ら の 価 値 の 減 少 を 最 小 化 す る た め に は 、 「 藻 場 の 復 元 」 を 目 標 と す る こ と が 必 要 で あ る 。 * : 環 境 要 素 に つ い て は 、 [ 配 慮 事 項 1 ] を 参 照 の こ と 。 な お 、 自 然 再 生 推 進 法 ( 平 成 1 4 年 法 律 第 1 4 8 号 ) に お け る 「 自 然 再 生 」 は 過 去 に 失 わ れ た 生 態 系 そ の 他 の 自 然 環 境 を 取 り 戻 す 趣 旨 で あ り 、 開 発 行 為 な ど に 伴 う 「 代 償 措 置 」 は 含 ま れ な い 。 本 配 慮 事 項 は 、 「 自 然 再 生 」 の 対 象 と さ れ た 藻 場 を 直 接 想 定 し た も の と は な っ て い な い 。 15

(24)

-1 . 2 . 2 藻 場 の 復 元 の 意 義

藻 場 の 復 元 が そ の 定 義 に 従 っ て 達 成 さ れ る こ と は 、 第 一 義 的 に 、 開 発 行 為 に よ る 藻 場 の 実 質 的 な 減 少 を 防 ぐ と い う 意 義 が あ る 。 そ の こ と は 、 開 発 行 為 実 施 前 と 同 等 の 藻 場 の 構 造 と 機 能 が 維 持 さ れ る こ と を 意 味 す る 。 そ の 場 合 、 高 い 一 次 生 産 力 を 含 む 物 質 循 環 機 能 、 生 物 多 様 性 な ど を 含 む 生 物 の 共 存 機 能 及 び 環 境 保 全 機 能 が 維 持 さ れ る と い う こ と に な る 。 藻 場 が 水 産 上 重 要 な 魚 介 類 の 産 卵 場 や 生 息 ・ 成 育 場 と な っ て い る こ と か ら 、 藻 場 の 復 元 は 漁 業 資 源 の 保 全 に と っ て も 意 義 の あ る こ と と な る 。 ま た 、 藻 場 の 復 元 の 達 成 は 、 周 辺 の 干 潟 や サ ン ゴ 礁 な ど の 重 要 な 沿 岸 生 態 系 の 保 全 と 相 ま っ て 、 多 種 多 様 な 生 物 が 生 き 続 け る こ と が で き る 健 全 な 生 態 系4 4 )の 保 全 に も つ な が る 。

1 . 2 . 3 藻 場 の 復 元 に 関 す る 配 慮 事 項 の 概 要

適 切 な 代 償 措 置 と し て の 藻 場 の 復 元 を 行 う た め に 、 本 配 慮 事 項 に 示 す 取 組 が 必 要 で あ る 。 表 1 - 8 に そ の 概 要 を 示 す と と も に 、 図 1 - 2 に 藻 場 の 復 元 に 関 す る 配 慮 事 項 の フ ロ ー を 示 し た 。 16

(25)

-表 1-8(1) 藻場の復元に関する配慮事項の概要 1.「藻場の復元」の前提となる検討事項 [配慮事項 1]:回避・低減 環境保全措置の検討に当たっては、環境への影響を「回避」又は「低減」することが 優先されていること。 「代償措置」として行われる「藻場の復元」は、「回避」又は「低減」措置が困難な 場合、又は回避・低減を実施しても、藻場への著しい影響が残ると判断された場合に検 討されるものであること。 その際、「回避」又は「低減」が困難な理由が明確にされていること。 [配慮事項 2]:方針設定 対象事業全体について、以下の事項を含む環境の保全方針が設定されていること。 (1)環境保全措置立案の基本的な考え方 (2)環境保全措置の対象 (3)環境保全措置の対象毎の具体的な目標 [配慮事項 3]:合意形成 環境保全措置の検討に当たっては、地域住民を中心とした幅広い関係者との合意形成 が必要であることから、極力早い段階から合意形成に向けた情報提供や意見交換が行わ れていること。 [配慮事項 4]:専門家の関与 環境保全措置の立案の初期段階から代償措置の検討・実施・評価に至るまでの各段階 で、必要に応じて幅広い専門家の助言や指導を受けていること。 [配慮事項 5]:情報提供 藻場の復元に係る検討経緯及び結果が公表され、技術情報が可能な限り提供されるよ う取り計らわれていること。 2.藻場の復元の検討・計画段階における配慮事項 [配慮事項 6]:目標設定 藻場の復元に係る目標が、その評価基準及び評価年次とともに明確に設定されている こ と 。 そ の 際 、 以 下 に 示 す 事 項 が 明 ら か に さ れ て お り 、 目 標 設 定 に 反 映 さ れ て い るこ と。 (1)対象事業実施区域及びその周囲の藻場に関する情報 (2)開発行為に伴い消滅又は衰退する藻場の構造と機能に関する情報 (3)目標の実現性とその根拠 [配慮事項 7]:実施場所の選定 藻場の復元措置の実施場所の選定に当たっては、以下の事項が満たされていること。 (1)対象事業実施区域と同一海域にあること。 (2)復元措置の実施により、藻場の復元措置の実施場所及びその周囲の環境に著しい 影響を及ぼさないこと。 (3)海草の生育制限要因が明らかにされ、その要因を緩和させる措置が実施可能であ ること。 [配慮事項 8]:方法・技術 藻場の復元措置に用いる方法・技術の選定に当たっては、以下の事項が配慮されてい ること。 (1)復元措置に用いる方法・技術の効果や影響が明らかにされていること。 (2)復元措置の方法として移植や播種を行う場合には、同一海域の草体・種子を用い ることにより、その実施場所の周囲における海草の個体群に遺伝的な攪乱を起こ さないよう図られていること。 17

(26)

-表 1-8(2) 藻場の復元に関する配慮事項の概要 [配慮事項 9]:モニタリング・維持管理の計画 藻場の復元に係るモニタリング及び維持管理の計画に当たっては、以下の事項が配慮さ れていること。 (1)モニタリング計画には、藻場の復元に係る評価年次及び中間年次において目標の 達成状況が確認できるよう、調査の項目、方法、範囲、期間、頻度および評価基 準が具体的に示されていること。 (2)復元措置を行った藻場の維持管理の計画について、順応的管理が検討されている こと。 [配慮事項 10]:計画書・再確認 藻 場 の 復 元 に 係 る 計 画 の 内 容 が ま と ま っ た 際 に 、 以 下 に 示 す 取 組 が 行 わ れ て い る こ と。 (1)藻場の復元措置について実施計画書がとりまとめられていること。 (2)とりまとめた実施計画書を基に、藻場の復元措置に係る計画全体の実現性が再確 認されていること。 3.藻場の復元措置の実施段階における配慮事項 [配慮事項 11]:実施段階における配慮 藻場の復元措置の実施に当たっては、実施場所及びその周囲に著しい影響を及ぼさな いこと。 [配慮事項 12]:モニタリング・維持管理の実施 藻場の復元に係る計画に沿って、目標の達成までモニタリングが実施され、その結果 に応じ維持管理が実施されること。 4.藻場の復元の評価における配慮事項 [配慮事項 13]:評価 あらかじめ設定した評価年次(中間年次を含む)において、藻場の復元に係る目標が 達成できているかが客観的に評価され、その結果に応じて適切な措置が実施されるよう 取り計らわれていること。 18

(27)

-環境保全措置の立 案の初期段階から ・ 藻場の復元の検討 ・ 実施 評価に至るま 、 での各段階で 以 下の事項に配慮す 。 る 藻場の復元の 検討・計画段階 藻場の復元措置 の実施段階 環境保全措置の立案 藻場の復元措置 の実施後 代償措置に先立っ て把握すべき事項 環境保全措置の実施 合意形成 [配慮事項3] ︵ ︶ 事業 計画 計画見直し ・ 事業の中 止を 含む 事業 実 施 専門家の関与 [配慮事項4] 情報提供 [配慮事項5] 実施場所の選定 [配慮事項7] モニタリング・   維持管理の計画 [配慮事項9] 方法・技術 [配慮事項8] 目標設定 [配慮事項6] 実施が困難な場合 実行可能な場合 回避 または 低 減 方針設定 ( ) 環境の保全方針の設定 [配慮事項2] 計画書・再確認 [配慮事項10] モニタリング結果を事業に反映 モニタリング・ 維持管理の実施 [配慮事項12] 実施段階における配慮 [配慮事項11] 実施が困難な 場合 残される影響 ( 藻場を対象) 藻場の復元の検討 環境保全措置をより 適切に実施するために ・ 環境保全措置の対象 目標に応じた検討 回避・低減 [配慮事項1] 評価 ( 中間年次を含む ) [配慮事項13] 目標を達成できていない場合 図 1 - 2 藻 場 の 復 元 に 関 す る 配 慮 事 項 の フ ロ ー 19

(28)

-< 第 1 章 引 用 文 献 > 1 ) 巖 佐 庸 ・ 松 本 忠 夫 ・ 菊 沢 喜 八 郎 ・ 日 本 生 態 学 会 ( 2 0 0 3 ) 生 態 学 事 典 . 共 立 出 版 、 6 8 2 p p . 2 ) 沼 田 真 ( 1 9 7 4 ) 生 態 学 事 典 . 築 地 書 館 、 4 6 7 p p . 3 ) 徳 田 廣 ・ 大 野 正 夫 ・ 小 河 久 朗 ( 1 9 8 7 ) ア マ モ 場 . Ⅵ 藻 場 造 成 、 海 藻 資 源 養 殖 学 、 水 産 養 殖 学 講 座 、 第 1 0 巻 . 緑 書 房 、 3 5 4 p p . 4 ) 全 国 漁 場 環 境 保 全 対 策 協 議 会 ( 1 9 9 7 ) ア マ モ 場 の 再 生 に 関 す る 事 例 調 査 報 告 書 、 8 9 p p . 5 ) 環 境 庁 ( 1 9 9 4 ) 第 4 回 自 然 環 境 保 全 基 礎 調 査 海 域 生 物 環 境 調 査 報 告 書 ( 干 潟 ・ 藻 場 ・ サ ン ゴ 礁 調 査 ) 第 2 巻 藻 場 . 環 境 庁 自 然 保 護 局 ・ ( 財 ) 海 中 公 園 セ ン タ ー 、 4 0 0 p p . 6 ) 相 生 啓 子 ( 1 9 9 6 ) 藻 場 生 態 系 − ア マ モ 場 を 中 心 に − . 遺 伝 、 5 0 ( 7 ) : 2 4 - 2 9 . 7 ) 野 島 哲 ( 1 9 9 6 ) 海 草 藻 場 群 集 の 多 様 性 と 安 定 化 機 構 . 生 物 群 集 を 考 え る : 動 物 群 集 の 多 様 性 と 安 定 化 機 構 . 日 本 生 態 学 会 誌 、 4 6 : 3 2 7 - 3 3 7 . 8 ) 川 崎 保 夫 ( 2 0 0 3 ) 海 草 群 落 ( ア マ モ 場 ) の 機 能 と 修 復 ・ 創 生 、 藻 場 ・ 干 潟 を 中 心 と す る 沿 岸 環 境 の 保 全 ・ 修 復 ・ 創 生 . 海 洋 と 生 物 、 2 5 ( 2 ) : 8 5 - 9 1 . 9 ) 豊 原 哲 彦 ・ 河 内 直 子 ・ 仲 岡 雅 裕 ( 2 0 0 0 ) 海 草 藻 場 に お け る 葉 上 動 物 の 生 態 . 海 洋 と 生 物 、 2 2 ( 6 ) : 5 5 7 - 5 6 5 . 1 0 ) 大 森 雄 治 ( 2 0 0 0 ) 日 本 の 海 草 − 分 布 と 形 態 − 、 海 洋 と 生 物 、 2 2 ( 6 ) : 5 2 4 -5 3 2 . 1 1 ) 環 境 庁 ( 2 0 0 0 ) 改 訂 ・ 日 本 の 絶 滅 の 恐 れ の あ る 野 生 生 物 − レ ッ ド デ ー タ ブ ッ ク − 8 植 物 Ⅰ ( 維 管 束 植 物 ) . ( 財 ) 自 然 環 境 研 究 セ ン タ ー 、 6 6 0 p p . 1 2 ) 吉 田 忠 夫 ( 1 9 9 8 ) 新 日 本 海 藻 誌 日 本 産 海 藻 総 覧 . 内 田 老 鶴 圃 、 1 2 2 2 p p . 1 3 ) 相 生 啓 子 ( 1 9 9 8 ) 日 本 の 海 草 − 植 物 版 レ ッ ド リ ス ト よ り . 海 洋 と 生 物 、 2 0 ( 1 ) : 7 - 1 2 . 1 4 ) 相 生 啓 子 ・ 秋 道 智 彌 ・ 大 森 雄 治 ( 2 0 0 1 ) 日 本 に お け る ア マ モ ( 海 草 ) の 資 源 利 用 に 関 す る 文 化 史 的 考 察 と ア マ モ 場 消 滅 に 関 す る 生 態 学 的 研 究 . 環 境 科 学 総 合 研 究 所 年 報 、 2 0 : 1 3 - 1 7 . 1 5 ) T a n a k a N . , J . K u o , Y . O m o r i , M . N a k a o k a , K . A i o i ( 2 0 0 3 ) P h y l o g e n e t i c r e l a t i o n s h i p s i n t h e g e n e r a Z o s t e r a a n d H e t e r o z o s t e r a ( Z o s t e r a c e a e ) b e s e d o n m a t K s e q u e n c e d a t a . J . P l a n t R e s . 1 1 6 : 2 7 3 - 2 7 9 . 1 6 ) K a t o , Y . , K . A i o i , Y . O m o r i , N . T a k a h a t a , Y . S a t t a ( 2 0 0 3 ) P h y l o g e n e t i c a n a l y s e s o f Z o s t e r a s p e c i e s b a s e d o n r b c L a n d m a t K n u c l e o t i d e s e q u e n c e s : I m p l i c a t i o n s f o r t h e o r i g i n a n d d i v e r s i f i c a t i o n o f s e a g r a s s e s i n J a p a n e s e w a t e r s . G e n e s G e n e t S y s t . ( 印 刷 中 ) 1 7 ) M i k i , S . ( 1 9 3 3 ) O n t h e s e a - g r a s s e s i n J a p a n ( I ) . Z o s t e r a a n d P h y l l o s p a d i x , w i t h s p e c i a l r e f e r e n c e s t o m o r p h o l o g i c a l a n d e c o l o g i c a l c h a r a c t e r s . B o t . M a g . , T o k y o , 4 7 ( 5 6 4 ) : 8 4 2 - 8 6 2 . 1 8 ) 川 崎 保 夫 ・ 飯 塚 貞 二 ・ 後 藤 弘 ・ 寺 脇 利 信 ・ 渡 辺 康 憲 ・ 菊 池 弘 太 郎 ( 1 9 8 8 ) ア マ モ 場 造 成 法 に 関 す る 研 究 、 電 力 中 央 研 究 所 報 告 、 U 1 4 、 2 3 1 p p . 1 9 ) 柏 木 正 章 ( 1 9 8 5 ) 我 が 国 の 藻 場 研 究 の 現 状 . 三 重 大 学 環 境 科 学 研 究 紀 要 、 1 0 : 1 8 1 - 2 0 7 . 2 0 ) 菊 池 泰 二 ( 1 9 7 3 ) 藻 場 生 態 系 、 p . 2 3 - 3 7 . 山 本 護 太 郎 編 海 洋 学 講 座 第 9 巻 . 東 京 大 学 出 版 会 、 2 1 3 p p . 2 1 ) 水 産 庁 中 央 研 究 所 ( 1 9 9 7 ) 藻 場 の 機 能 . 水 産 業 関 係 試 験 研 究 推 進 会 議 資 源 増 殖 部 会 「 テ ー マ 別 研 究 の レ ビ ュ ー 」 S e r . 4 、 1 1 0 p p . 2 2 ) A b e , M . , H a s h i m o t o N . , K u r a s h i m a , A . , M a e g a w a , M . ( 2 0 0 3 ) E s t i m a t i o n o f l i g h t r e q u i r e m e n t f o r t h e g r o w t h o f Z o s t e r a m a r i n a i n c e n t r a l J a p a n . F i s h . S c i . 2 3 ) 川 崎 保 夫 ・ 山 田 貞 夫 ・ 本 多 正 樹 ( 1 9 8 8 ) 電 源 立 地 点 の 藻 場 造 成 技 術 の 開 発 第 1 0 報 播 種 に よ る ア マ モ 場 造 成 法 . 電 力 中 央 研 究 所 報 告 U 8 8 0 3 0 、 2 1 p p . 20

(29)

-2 4 ) 向 井 宏 ( 1 9 8 -2 ) ア マ モ Z o s t e r a m a r i n a L . の 生 態 と 生 理 . 海 草 藻 場 ( 特 に ア マ モ 場 ) と 水 産 動 物 に つ い て 、 p . 1 - 4 8 、 日 本 水 産 資 源 保 護 協 会 . 1 4 9 p p . 2 5 ) 川 崎 保 夫 ( 1 9 8 8 ) 藻 場 造 成 の 現 状 と 課 題 、 2 、 ア マ モ 場 . 水 産 の 研 究 、 7 ( 6 ) : 4 4 - 4 8 . 2 6 ) 鷲 山 裕 史 ・ 吉 川 康 夫 ・ 永 谷 隆 行 ・ 石 渡 達 也 ( 2 0 0 2 ) 浜 名 湖 に お け る ア マ モ の 分 布 に つ い て . 静 岡 県 水 産 試 験 場 研 究 報 告 、 3 7 : 3 7 - 4 0 . 2 7 ) 向 井 宏 ( 1 9 9 5 ) 第 4 章 サ ン ゴ 礁 の 草 原 、 1 6 9 - 2 2 5 . 西 平 守 孝 ・ 酒 井 一 彦 ・ 佐 野 光 彦 ・ 土 屋 誠 ・ 向 井 宏 、 サ ン ゴ 礁 − 生 物 が つ く っ た < 生 物 の 楽 園 > . 平 凡 社 、 2 3 2 p p . 2 8 ) 菊 池 泰 二 ( 1 9 8 2 ) ア マ モ 場 の 魚 類 群 集 、 動 物 に と っ て の 機 能 . 海 草 藻 場 ( 特 に ア マ モ 場 ) と 水 産 生 物 に つ い て . 藻 場 特 別 部 会 と り ま と め . 漁 場 環 境 調 査 検 討 事 業 、 P . 4 9 - 1 0 5 . ( 社 ) 日 本 水 産 資 源 保 護 協 会 、 1 4 9 p p . 2 9 ) 渡 辺 雅 子 ・ 仲 岡 雅 裕 ( 2 0 0 0 ) 海 草 の 分 布 と 生 産 に 影 響 を 与 え る 環 境 要 因 ・ 生 物 学 的 要 因 . 海 洋 と 生 物 、 2 2 ( 6 ) : 5 3 3 - 5 4 1 . 3 0 ) 倉 敷 市 大 畠 地 先 ア マ モ 場 環 境 調 査 委 員 会 ( 1 9 9 4 ) 倉 敷 市 大 畠 地 先 ア マ モ 場 環 境 調 査 学 術 報 告 書 、 8 3 p p . 3 1 ) 浅 野 孝 ・ 大 垣 眞 一 郎 ・ 渡 辺 義 公 ( 1 9 9 9 ) 水 環 境 と 生 態 系 の 復 元 − 河 床 ・ 湖 沼 ・ 湿 地 の 保 全 技 術 と 戦 略 − . 技 報 堂 出 版 、 5 9 0 p p . 3 2 ) 和 泉 安 洋 ・ 広 沢 晃 ・ 團 昭 紀 ・ 森 口 朗 彦 ・ 寺 脇 利 信 ( 2 0 0 2 ) 底 質 安 定 化 マ ッ ト に よ る 4 年 間 の ア マ モ の 生 長 と 成 熟 . 水 産 工 学 、 3 9 ( 2 ) : 1 3 9 - 1 4 3 . 3 3 ) 生 物 の 多 様 性 分 野 の 環 境 影 響 評 価 技 術 検 討 会 ( 2 0 0 2 ) 環 境 ア セ ス メ ン ト 技 術 ガ イ ド 生 態 系 . ( 財 ) 自 然 環 境 研 究 セ ン タ ー 、 2 7 7 p p . 3 4 ) 沼 田 真 編 ( 1 9 9 3 ) 新 装 版 生 態 の 事 典 . 東 京 堂 出 版 、 3 8 4 p p . 3 5 ) 八 杉 龍 一 ・ 小 関 治 男 ・ 古 谷 雅 樹 ・ 日 高 敏 隆 編 ( 1 9 9 6 ) 岩 波 生 物 学 辞 典 第 4 版 . 岩 波 書 店 、 2 0 2 7 p p . 3 6 ) 松 政 正 俊 ( 2 0 0 0 ) 海 草 に よ る 環 境 改 変 と 底 生 動 物 . 海 洋 と 生 物 、 2 2 ( 6 ) : 5 5 0 - 5 5 6 . 3 7 ) 相 生 啓 子 ( 2 0 0 0 ) ア マ モ 場 研 究 の 夜 明 け . 海 洋 と 生 物 、 2 2 ( 6 ) : 5 1 6 - 5 2 3 . 3 8 ) 寺 脇 利 信 ・ 新 井 章 吾 ・ 敷 田 麻 美 ( 2 0 0 2 ) 藻 場 回 復 、 p . 8 9 - 9 1 . 2 1 世 紀 初 頭 の 藻 学 の 現 状 、 日 本 藻 類 学 会 創 立 5 0 周 年 記 念 出 版 . 日 本 藻 類 学 会 、 1 5 3 p p . 3 9 ) 環 境 庁 ( 1 9 8 3 ) 第 2 回 自 然 環 境 保 全 基 礎 調 査 報 告 書 ( 緑 の 国 勢 調 査 ) . 5 4 0 p p . 4 0 ) 有 賀 祐 勝 ( 2 0 0 3 ) 藻 場 ・ 干 潟 を 中 心 と す る 沿 岸 環 境 の 保 全 ・ 修 復 ・ 創 生 . 海 洋 と 生 物 、 2 5 ( 2 ) : 7 9 . 4 1 ) 環 境 省 ( 2 0 0 2 ) 新 ・ 生 物 多 様 性 国 家 戦 略 − 自 然 の 保 全 と 再 生 の た め の 基 本 計 画 − . ぎ ょ う せ い 、 3 1 5 p p . 4 2 ) 環 境 省 ( 2 0 0 2 ) 環 境 影 響 評 価 に 関 す る 事 後 調 査 報 告 等 収 集 ・ 整 理 ・ 解 析 事 業 報 告 書 別 冊 ( 動 植 物 の 移 植 等 に 係 る 実 態 調 査 ) . 1 9 3 p p . 4 3 ) 相 生 啓 子 ( 2 0 0 3 ) 藻 場 生 態 系 と 地 球 環 境 、 地 球 環 境 と 海 洋 生 態 系 の 危 機 . 遺 伝 、 5 7 ( 2 ) : 5 3 - 5 8 . 4 4 ) 鷲 谷 い づ み ( 2 0 0 1 ) 生 態 系 を 蘇 ら せ る . N H K ブ ッ ク ス 9 1 6 、 日 本 放 送 協 会 、 2 7 7 p p . 21

(30)
(31)
(32)
(33)

2 . 藻 場 の 復 元 に 関 す る 配 慮 事 項

本章では、開発行為に伴う環境保全措置として「藻場の復元」の検討・計 画及び実施の際に、配慮されるべき事項について示す。 (全体の構成) 2.1 では、「藻場の復元」の前提として、あらかじめ検討されるべき配慮事 項を示す。 このうち、2.1.1 では、代償より回避・低減が優先されるべきことを、2.1.2 では(藻場のみならず)沿岸生態系全体の環境保全措置の方針設定に際して 検討されるべき事項をそれぞれ示す。また、2.1.3 から 2.1.5 では、環境保全 措置に関連する合意形成、専門家の関与、藻場の復元に係る技術情報などの 提供に係る配慮事項を、それぞれ示す。 2.2 以降では、「藻場の復元」の実施に際し、配慮されるべき具体的事項を 示す。 このうち、2.2 では、「藻場の復元」の検討・計画段階における配慮事項と して、復元に係る目標設定、復元措置の実施場所の選定、方法・技術の選定、 モニタリング・維持管理の計画の策定に関する事項を示す。また、2.3 では藻 場の復元措置の実施段階における配慮事項を、2.4 では藻場の復元の評価に係 る配慮事項を、それぞれ示す。 (各配慮事項の構成) 各配慮事項には、番号、項目及び配慮事項本文を枠内に示す。その枠の下 段に、配慮事項の内容を説明する「解説」、続けて「解説」の根拠・背景な どを説明した「考え方」を示す。なお、「解説」では、配慮事項の理解の一 助となるよう、主要な解説項目を< >で示し、それぞれについて説明した。 また、「考え方」も、これに準じた。 《各配慮事項の構成》 ( 解 説 ) 配 慮 事 項 の 内 容 を 説 明 ( 考 え 方 ) 「 解 説 」 の 根 拠 ・ 背 景 な ど 【 番 号 】 項 目 配 慮 事 項 本 文 23

表 1 - 4   藻 場 の 機 能 の 例   機 能 の 分 類 特   徴 物 質 循 環 機 能 ・   一 次 生 産 : 海 草 及 び そ の 葉 上 に 生 育 す る 付 着 藻 類 は 、 太陽 か ら の 光 の エ ネ ル ギ ー を 化 学 エ ネ ル ギ ー と し て 他 の 消費 者 が 利 用 で き る 有 機 物 の 形 に 固 定 す る 一 次 生 産 を 行う 。・  分 解 ・ 物 質 循 環 : 枯 死 し た ア マ モ は 分 解 さ れ て デ ト リ
表 1 - 6   現 存 藻 場 と 消 滅 藻 場 面 積 ( 第 4 回 自 然 環 境 保 全 基 礎 調 査 )   藻 場 の 区 分   現 存 面 積 ( h a ) : a   ( 1 9 9 1 年 時 点 )   消 滅 面 積 ( h a ) : b  ( 1 9 7 8 ∼ 1 9 9 1 年 )   消 滅 比 率 ( % : b / ( a + b ) )   ア マ モ 場   4 9 , 4 6 4 2 , 0 7 7   4
表 1-8(1)  藻場の復元に関する配慮事項の概要      1.「藻場の復元」の前提となる検討事項  [配慮事項 1]:回避・低減  環境保全措置の検討に当たっては、環境への影響を「回避」又は「低減」することが 優先されていること。  「代償措置」として行われる「藻場の復元」は、「回避」又は「低減」措置が困難な 場合、又は回避・低減を実施しても、藻場への著しい影響が残ると判断された場合に検 討されるものであること。  その際、「回避」又は「低減」が困難な理由が明確にされていること。  [配慮事項 2]:
表 1-8(2)  藻場の復元に関する配慮事項の概要      [配慮事項 9]:モニタリング・維持管理の計画  藻場の復元に係るモニタリング及び維持管理の計画に当たっては、以下の事項が配慮さ れていること。  (1)モニタリング計画には、藻場の復元に係る評価年次及び中間年次において目標の 達成状況が確認できるよう、調査の項目、方法、範囲、期間、頻度および評価基 準が具体的に示されていること。  (2)復元措置を行った藻場の維持管理の計画について、順応的管理が検討されている こと。  [配慮事項 10]:計
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参照

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