2.1 藻場の復元の前提となる検討事項
2.1.2 環境の保全方針の設定
- 例えば、公有水面埋立という事業特性を有する事業を内湾の閉鎖性水 域という地域特性を有する海域で実施する場合、環境保全措置立案の基 本的な考え方は次のように示される。
「対象事業を行う海域では干潟、藻場が減少傾向にあり、埋立地の存在に より、流況変化及びそれに伴う水質、底質変化が考えられることから、これ らの影響が及ぶ干潟、アマモ場の保全が特に重要となる。自治体の環境保全 方針(干潟・藻場の重視)においても、本地域の干潟・藻場の重要性が示さ れている。従って、地元住民などとの合意形成を図りつつ、干潟・藻場を特 に優先して保全する。」
<環境保全措置の対象>
④ 環境保全措置の対象は、対象事業実施区域及びその周囲において、生 態系の重要な構造と機能*bを支えている類型区分*cとする。例えば、沿 岸生態系では、干潟、岩礁域、砂浜域、藻場などを中心とした場などが 対象となる。本配慮事項は、これらのうち藻場を対象とする。(⇒考え 方④)
*b:藻場の構造と機能については 1 章「1.1.3 藻場の構造と機能」及び用語集参照のこ と。
*c:「類型区分」とは、生態系の構造を把握するための手段として、生物群集と基盤環 境の関係に着目し、そこから捉えられる特徴を有する地域をひとつのまとまりとし て1)把握される区分のことを示す。詳しくは用語集参照。
⑤ 環境保全措置の対象の選定に当たっては、事業による影響要因*dを工 事段階、施設の存在・供用段階に分けて想定し、どの類型区分にどのよ うな影響が及ぶのかを検討する。その際、事業による影響要因と、生態 系の類型区分及び環境要素への影響との関係などを判り易く示した影響 フロー図(図 2-2)や一覧表(図 2-3)などに整理し、対象の選定根拠を 明らかにする方法がある。(⇒考え方④)
*d:「影響要因」とは、環境への影響を及ぼす事業の要因2 )のことを言う。例えば、海 域に関わる事業では、防波堤、護岸、埋立の工事及びこれらの施設の存在などが影 響要因となる。詳しくは用語集参照。
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-図 2-2 影響フローの例2)
図 2-3 影響要因と環境要素の変化、類型区分の一覧表の例2)より作成
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-<環境保全措置の対象毎の具体的な目標>
⑥ 目標は、選定した環境保全措置の対象毎に、その生態系の構造と機能 が開発行為により影響を受ける以前の状態と可能な限り同じ状態で保全 されるように設定する。(⇒考え方⑤)
⑦ 環境保全措置の目標は、環境保全措置の対象毎の重要度や保全対象同 士の関連性、影響の内容や程度、措置の実現性などを踏まえて、複数案 を検討し、最善の措置が実施できるよう設定するものである。その際、
定量的・客観的に把握1)できる指標を用いるよう努め、具体的な目標を 設定する。環境保全措置の対象と目標設定の例を図2-4に示す。
本配慮事項で取り扱う「藻場の復元」は、藻場が環境保全措置の対象 の一つとなり、環境保全措置の対象毎の目標を比較検討した結果、「回 避・低減」を優先しても藻場の代償措置が必要と判断された場合に検討 されるものである。(⇒考え方⑤)
環境保全措置の対象 環境保全措置の目標
干 潟 砂 浜 域 藻 場
当初計画 ・開発行為を行う○haのう ち、Xhaの干潟が改変され る。
・開発行為を行う○haのう ち、Yhaの砂浜域が改変さ れる。
・開発行為を行う○haのう ち、Zhaの藻場が改変され る。
(案1)
回避・低減
代償措置
・地域特性から、干潟の保全 が重要であり、環境影響を 100%回避する(改変面積 をXhaから0haとする)。
・代償措置を行う必要はな い。
・当初計画でYha改変される 砂底域について、Yʼhaの 藻場への影響を回避する。
・回避しても影響が残るY”
ha(Yha−Yʼha)の砂浜 域において、代償措置を行 う。
・改変されるY”haの砂浜域 について、代償措置(流動 制御、砂の補給)が必要と なる。
・干潟および干潟への影響を 回避することから、藻場へ の影響を回避することは難 しい。
・藻場への影響をZʼha低減 しても、Z”ha(=Zha−
Zʼha)の藻場に影響が残 ることから、代償措置をお こなう。
・影響を回避・低減できない Z”haの藻場について、復 元をおこなう。
(案2) (案3)
…
環境保全措置の対象毎の具体的な目標
環境保全措置立案の 基本的な考え方
・埋立地の存在により、流況変化および水質汚濁が考えられることから、これらの影響が及 ぶ対象事業実施区域の周囲に分布する干潟、砂浜域、アマモ場の保全が重要となる。その ため、自治体の環境保全方針(干潟・藻場の重視)との整合を図りつつ、干潟・砂浜域、
アマモ場を優先して保全する
図2-4 環境保全措置の目標設定の例
【考え方】
<対象事業全体>
① 対象事業の実施に当たっては、事業影響を把握することが必要な範囲 だけでなく、環境保全措置の一環として行う工事などが周囲の環境に影 響を与える可能性にも留意する必要がある。
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-<環境の保全方針の設定>
② 対象事業実施区域及びその周囲にどのような環境があり、開発行為に 伴ってどのような影響を受けるのかが明確にされなければ、その環境に とって適切な環境保全措置を立案することはできない。そのため、開発 行為を行う際には、環境の保全方針をあらかじめ明らかにしておく必要 がある。
<環境保全措置立案の基本的な考え方>
③ 環境保全措置は、事業特性や対象事業実施区域及びその周囲における 地域の環境の特性により、環境保全上特にどのような点に留意すべきか を明らかにして実施される必要がある。そのため、既存の文献・情報な どを基にこれらの留意点を整理し、環境保全措置立案の基本的な考え方 としてとりまとめることが重要である。
<環境保全措置の対象>
④ 環 境 保 全 措 置 の 対 象 は 当 該 海 域 の 主 要 な 類 型 区 分 と す る が 、 海 域 全 体 と し て の 一 連 の 生 態 系 の 構 造 と 機 能 を 支 え る 上 で は 、 藻 場 と 藻 場 、 あ る い は 藻 場 と 他 の 類 型 区 分 と の 関 係 性 も 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る 場 合 も あ る 。 そ の た め 、 具 体 的 な 環 境 保 全 措 置 の 検 討 に あ た っ て は 、 こ れ ら の 関 係 性 に つ い て 留 意 す る 必 要 が あ る 。
<環境保全措置の対象毎の具体的な目標>
⑤ 環境保全措置の対象毎に具体的な目標が設定されなければ、沿岸域全 体の保全の検討は困難である。そのため、対象毎の目標は相互に比較検 討できるよう、設定される必要がある。
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