2.2 藻場の復元の検討・計画段階における配慮事項
2.2.3 藻場の復元措置に用いる方法・技術の選定
[配慮事項8]:方法・技術
藻場の復元措置に用いる方法・技術 ※ の選定に当たっては、以下の事 項が配慮されていること。
(1)復元措置に用いる方法・技術の効果や影響が明らかにされている こ と。
(2)復元措置の方法として移植や播種を行う場合には、同一海域の草体・
種子を用いることにより、その実施場所の周囲における海草の個体群 に遺伝的な攪乱を起こさないよう図られていること。
【解説】
<方法・技術の選定>
① 藻場の復元措置に用いる方法・技術としては、表 2-3 に示すものがあ げられる。このうち、生育基盤の整備の検討を優先して行い、その上で 移植・播種の必要性を検討する。
選定した方法・技術に関しては、(ア)選定根拠、(イ)期待される効果及び 周囲の環境への影響、(ウ)不確実性の程度、などを明らかにできるよう整 理しておく。(⇒考え方①)
表 2-3 藻場の復元措置の方法・技術の例
方 法 技 術
生育基盤の整備 ・ 底質基盤の整備(嵩上げ)・改良
・ 流動制御工 など
移植 ・ 固定具を用いた種苗の移植など
播種 ・ 種子の散布、着底基質に種子を固定するなど
注:表は、文献12〜14 )を基に作成した。
② 選定した方法・技術の効果や影響を、既存事例やシミュレーションな どを踏まえ、予測、把握する。これらの情報からその効果や影響が把握 できない方法・技術については、その効果が確認できる規模で復元措置 を試験的に行い、現場での適用を検証する。(⇒考え方②)
※ 「 方 法 」 は 復 元 措 置 の 行 為 ( 例 え ば 、 基 盤 整 備 、 移 植 、 播 種 な ど ) を 示 し 、 「 技 術 」 は 復 元 措 置 の た め の 具 体 的 な 手 段 ( 例 え ば 、 移 植 で は 、 栄 養 株 を 固 定 具 を 用 い て 植 え る 技 術 な ど ) を 示 す 。
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-③ 方法・技術の選定に当たっては、実施場所の選定([配慮事項 7]参照)
とあわせて、その影響と範囲を予測し、復元措置の実施による影響の少 ないものを検討する。(⇒考え方②)
<同一海域の草体・種子>
④ 移 植 ・ 播 種 を 行 う 場 合 に は 、 ま ず 開 発 行 為 に 伴 い 消 滅 す る 藻 場 の草 体・種子を用いる。それだけでは量的に不十分な場合、同一海域の藻場 の草体・種子を用いる。(⇒考え方③)
【考え方】
<方法・技術の選定>
① 藻場の復元措置を検討する場所は、何らかの生育制限要因があり、そ の要因が改善されない限り、藻場の復元はできないと考えられる。その ため、方法・技術は、[配慮事項 7]で明らかにした海草の生育制限要因を 緩和させることが可能なものを選定する必要がある。
移植や播種は、海草の繁茂を早める程度の効果を期待して行う12)取組 であり、生育基盤の整備などにより生育制限要因の緩和ができなければ 成功は難しい。
② 藻場の復元に用いる方法・技術の効果や影響が十分に把握されていな い場合には、復元に係る目標の達成の不確実性が高くなるとともに、周 囲の環境に著しい影響を及ぼす可能性も考えられる。そのため、用いる 方法・技術については、その効果や影響を十分に把握しておく必要があ り、それが十分に把握されるまで、復元措置を実施すべきではない。
<同一海域の草体・種子>
③ 日本列島のアマモは、大きな系群として、日本海側と太平洋側の系群 に分岐しており、また地域により特異的な変異がみられることから、遺 伝子交流は限られている*aものと考えられている。そのため、海草の移 植・播種に当たっては、遺伝的多様性を確保し、遺伝的な攪乱*bを防ぐ 意味でも、まずは消滅する藻場の草体・種子を用い、量的に不十分な場 合には可能な限り近隣の個体群を用いることが必要である。
また、近隣の草体・種子を採取して移植・播種を行う場合には、アマ モの生殖株や栄養株の採取地となる藻場に著しい影響を及ぼさないよう 十分に配慮する必要がある。
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-*a:日本列島のアマモは、核遺伝子の解析結果から、日本海側と太平洋側 に明確な遺伝子多型ハプロタイプの分化がみられ、地域分化は能登の 一例のみ太平洋側のハプロタイプがみつかった。クロロプラスト遺伝 子配列による地域分化は少ない。クロロプラスト遺伝子の突然変異率 が低く倍数性がないためと考えられる。日本海側と太平洋側の遺伝子 交流は非常に限られている15)。
注:ハプロタイプ(Haplotype)とは、複数の遺伝子がある定まった 組として遺伝する場合の組合せを指す用語である。通常、染色体 上で近接した遺伝子群に対して用いられるが、ミトコンドリア DNAにコードされた遺伝子の組合せ、すなわちミトコンドリア DNAの型を示す語としても用いられる16)。クロロプラストとは、
葉緑体のことである。
*b:遺伝的な攪乱により、有性生殖が行われなくなる、あるいは病気や攪 乱の影響を受け易くなる7)など、個体群の存続に悪影響を及ぼすおそ れ17)がある。
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