2.1 藻場の復元の前提となる検討事項
2.1.1 回避・低減の優先
[配慮事項1]:回避・低減
環境保全措置の検討に当たっては、環境への影響を「回避」又は「低 減」することが優先されていること。
「代償措置」として行われる「藻場の復元」は、「回避」又は「低減」
措置が困難な場合、又は回避・低減を実施しても、藻場への著しい影響が 残ると判断された場合に検討されるものであること。
その際、「回避」又は「低減」が困難な理由が明確にされていること。
【解説】
<環境保全措置>
① 環境保全措置*aとは、事業の全体又は一部を実行しないことによって 環境要素*bへの影響を発生させないようにする「回避」、開発面積を少 なくするなどの何らかの手段で影響要因または影響の発現を最小限に抑 えること、または、発現した影響を何らかの手段で修復する「低減」か ら、避けられない影響を「代償」する措置までを含む幅広い概念である
1)。この回避、低減、代償の検討を通して、環境保全に関する基準や目 標を達成することが環境保全措置の目的となる。(⇒考え方①)
② 環境保全措置の検討に当たっては、以下に示す事項を可能な限り具体 的に明らかに1)しておく。(⇒考え方②)
・環境保全措置の具体的な実施内容及び効果
・環境保全措置の実施に伴う他の環境への影響
・環境保全措置の実施によっても残る環境影響の程度
・環境保全措置の効果に関する不確実性、及びその影響に関する不確実性
*a:環境影響評価法における環境保全措置は、「環境影響評価法第四条第九項の規定に よる主務大臣及び国土交通大臣が定めるべき基準並びに同法第十一条第三項及び第 十二条第二項の規定による主務大臣が定めるべき指針に関する基本的事項を定める 件」(平成9年環境庁告示第 87 号)(以下、「基本的事項」と言う。)の中で以 下のように規定されている。
「環境保全措置は、対象事業の実施により選定項目に係る環境要素に及ぶおそれの ある影響について、事業者により実行可能な範囲で、当該影響を回避し、又は低減 すること及び当該影響に係る各種の環境保全の観点からの基準又は目標の達成に努 めることを目的として検討されるものとする。」(基本的事項第三・一・(2))
*b:環境影響評価では、「評価対象として項目を選定する視点」2 )として「環境要素」
という区分を設けているが、これはいわゆる「環境」を区分するものではない2 )。
「環境要素」は環境影響評価における便宜上の区分であるため、カテゴリーの異な るものが含まれる場合があることに注意が必要となる。
例えば、「生物の多様性の確保及び自然環境の体系的保全」という「環境要素」
の大区分の中には「生態系」があげられており、「藻場」はこの「生態系」の中の 細区分された評価対象の項目として取り扱われることが考えられる。一方、第1章 に示したように、「藻場」は、生態学的には生物的構成要素と無機的環境の構成要
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-素 か ら 構 成 さ れ る も の で あ る が 、 環 境 影 響 評 価 に お い て は 、 「 藻 場 」 そ の も の も
「環境要素」となりうる。同時に、「藻場」の生物的構成要素である「植物」及び
「動物」、無機的環境の構成要素の状態を表すと考えられる「水質」、「底質」な ども、環境影響評価の「環境要素」としてあげられる場合が生じる。
<回避・低減の優先>
③ 開 発 行 為 に 係 る 環 境 保 全 措 置 の 検 討 に 当 た っ て は 、 後 述 の 「 代 償措 置」に優先*cして「回避」又は「低減」するための措置1)(以下、「回 避又は低減措置」という)を検討する(図 2-1)。その際に、事業計画の 見直し(事業の中止、事業規模の縮小、施設の形状変更など)も含めた 複数案の比較検討2)を考慮する。(⇒考え方③)
*c:環境保全措置の優先順位については、「基本的事項」の中で以下のように規定され ている。
「環境保全措置の検討に当たっては、環境への影響を回避し、又は低減することを 優先するものとし、これらの検討結果を踏まえ、必要に応じ当該事業の実施により 損なわれる環境要素と同種の環境要素を創出すること等により損なわれる環境要素 の持つ環境の保全の観点からの価値を代償するための措置(以下「代償措置」とい う。)の検討が行われるものとすること。」(基本的事項第三・二・(1))
図2-1 代償措置の前提となる検討事項と残る影響1)
<代償措置>
④ 代償措置は、回避又は低減措置の効果が十分でない、あるいはその実 施が不可能と判断された場合に、損なわれる環境要素の価値を補う取組 である(図2-1)。本配慮事項で扱う「藻場の復元」は、この代償措置と して実施されるものである。
代償措置として藻場の復元を実施する場合、環境影響の十分な回避又 は低減措置が採れない理由及びその検討経緯を明らかにする。(⇒考え 方④・⑤)
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-⑤ 原則として、代償措置*dは、損なわれる環境要素と同種の環境要素*c に関して行われるものである。(⇒考え方⑥)
*d:代償措置の検討に当たっては、「基本的事項」の中で以下のように規定されている。
「代償措置を講じようとする場合には、環境への影響を回避し、又は低減する措置 を講ずることが困難であるか否かを検討するとともに、損なわれる環境要素と代償 措置により創出される環境要素に関し、それぞれの位置、損なわれ又は創出される 環 境 要 素 の 種 類 及 び 内 容 等 を 検 討 す る も の と す る こ と 。 」 ( 基 本 的 事 項 第 三 ・ 二・.(4))
【考え方】
<環境保全措置>
① 環境影響評価法第一条に規定されている環境影響評価の目的は、「法 によって定められた手続きなどに従って行われた環境影響評価の結果を、
環境保全措置や事業内容の決定に反映することによって、環境保全への 適正な配慮がなされることを確保すること」と要約される2)。つまり、
環境保全措置の立案が、環境影響評価を実施していく上で最も重要なも のの一つとして位置づけられている1)。そのため、開発行為を行う際に は、環境保全措置の検討を適切に行うことが重要である。
② 環境保全措置が十分に検討され妥当な内容であるか否かが、環境影響 評価が適切かつ客観的に行われるかどうかを左右することになる。その ため、検討内容の妥当性について十分に確認し、その検討経過が明らか にできるよう整理される必要がある。
<回避・低減の優先>
③ 環境保全措置の検討に際しては、開発行為による環境影響の回避や低 減が優先されるべき措置であり、代償措置は他の対策がとれないか十分 でない場合の措置として考えるべきものとなる3)。
<代償措置>
④ 生態系は、極めて多くの生物と環境要素の複雑な関係の上に成立して いることから、事業自体が中止されない限り、開発行為に伴う影響は厳 密な意味で回避できない1)。また、開発行為により損なわれる生態系と 全く同じ生態系をつくりだすことは、生態系に関する現在の研究や技術 レベルでは困難である*e。
そのため、環境保全措置の検討に当たっては、事業計画の変更や中止 も考慮し、事業者の実行可能な範囲で、影響の回避又は低減を図らなけ ればならない。
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-*e:「藻場の復元」も厳密な意味において、その完全な実施は困難であるが、p.14 に 示したように、開 発 行 為 な ど の 前 後 で “ 損 な わ れ る 藻 場 が 持 つ 環 境 の 保 全 の 観 点 か ら の 価 値 ” の 減 少 を 最 小 化 す る こ と が 可 能 と な る 。
⑤ 「基本的事項」(第三・二・(4)、(5))において、「代償措置を講じよ うとする場合には、環境影響を回避し、又は低減する措置を講ずること が困難であるか否かを検討する」とともに、この検討を含めた環境保全 措置に関する検討の経過を明らかにする必要があるとしている。そのた め、事業者は、実行可能な範囲内でいかに回避又は低減措置を検討した か、その上で、これ以上の回避・低減が困難であると判断する理由を示 す必要がある。
藻場の復元を検討する場合も同様に、当該海域において藻場の環境保 全上の位置付けを踏まえ、その藻場への影響をいかに回避・低減したか を明らかにする必要がある。
⑥ 代償措置の定義から、例えば消失するアマモ場の代償としてガラモ場 を造成するような取組は、原則として「代償措置」として認められない。
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