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非行少年における感情学習プログラムの効果検証

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Jap. J. Crim. Psychol.,Vol. 58, No. 2 (2021)

非行少年における感情学習プログラムの効果検証

山 脇 望 美

*

・反 中 亜 弓

**

, †

・河 野 荘 子

*

Effects of emotional learning programs in juvenile delinquents

Nozomi Yamawaki, Ayumi Tannaka and Shoko Kono

キーワード:感情学習プログラム,自閉スペクトラム症傾向,アレキシサイミア傾向,攻 撃性,非行少年 問題と目的 矯正教育 平成27年に少年院法が改正され,年齢,心身 の障害の状況,犯罪的傾向の程度など,個々の在 院者の特性に応じた矯正教育の充実が謳われて いる。特に,特定生活指導では,個々の在院者 の問題性に応じ,(1)被害者の視点を取り入れた 教育,(2)薬物非行防止指導,(3)性非行防止指 導,(4)暴力防止指導,(5)家族関係指導,(6)交 友関係指導を行っている。これらの指導のうち, 薬物非行防止指導や性非行防止指導においては, 認知行動療法を中核として体系化されたプログラ ムが効果検証を繰り返しながら実施されている。 この他,在院生への指導にあたっては,アサー ショントレーニング,ソーシャルスキルトレーニ ング,マインドフルネスストレス低減法等といっ た手法が適宜取り入れられるようになっている。 以上のような指導を実施するなかで,第一種 少年院では,矯正教育課程を指定する際の留意点 として,支援教育課程について特記している。支 援教育課程とは,知的障害や発達障害の診断を受 けてはいないが,対人スキルの未熟さ等により, 社会的な行動が困難な少年を対象とした教育課程 のことである。第一種少年院では,I∼IIIの支援 教育課程(N1∼N3)が設けられており,少年の 特徴に応じて,教育的配慮がなされている。ま た,矯正教育課程では,知的障害や情緒障害,発 達障害の診断がない場合であってもその疑いのあ る者(法務省,2018),いわゆるボーダーライン の少年に着目する傾向もある。実際に,少年院で は,「発達上の課題を有する在院者に対する処遇 プログラム実施ガイドライン」が取り入れられ, 発達的な支援が行われている(藤原,2016)。 しかしながら,手厚い指導が行われている にも関らず,少年の再非行率は低下していると は言い難い。犯罪白書(法務省法務総合研究 所,2018)によると,少年院への再入院率は, doi: 10.20754/jjcp.58.2_35 資 料

* 名古屋大学大学院教育発達科学研究科 (Graduate School of Education and Human Development, Nagoya Univer-sity)

** 瀬戸少年院 (Seto Juvenile Training School)

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2年以内で10.5%,5年以内では15.1%であり, 5年以内に再入院した人々のうち,約7割の人が 2年以内に再入院している。この原因の一つに は,以前より指摘されている少年の資質の問題が 影響している可能性が高い。法務省法務総合研究 所(2005)の調査によると,「最近の非行少年の 処遇において,以前より大きくなっていると感じ る資質面の問題には,どのようなものがあります か」という質問に対して,半数以上の少年院の教 官が「人に対する思いやりや人の痛みに対する理 解力・想像力に欠ける」や「自分の感情をうまく コントロールできない」といった感情・情緒に関 する回答を挙げていると示されている。また,こ の調査では,感情・情緒面の困難さゆえに,自分 でも理由を説明できない凶悪で冷酷な非行に至る 者もいる可能性があると指摘されている。 非行少年が非行に至るまでには,家族関係や 友人関係,経済的状況の問題など,あらゆる要因 の影響が考えられる。しかしながら,これらの指 摘は,少年の非行問題の背景に,障害と,その障 害に関連した特徴が影響している可能性も少なか らずあることを予測させる。このことについて, 山脇・河野(2020)は,社会的相互作用の困難 や感情的相互作用の困難から,自閉スペクトラム 症傾向とこれに関連するアレキシサイミア傾向に 着目し,非行少年の粗暴行為への影響について検 討している。 自閉スペクトラム症傾向とアレキシサイミア傾向 との関連 自閉スペクトラム症傾向とは,継続的な社会 的コミュニケーションおよび相互関係における 障害と,反復行動,興味の限局といった特徴と

定義されている(American Psychiatric

Associa-tion, 2013)。これらの特徴を測定するために,

Baron-Cohen, Wheelwright, Skinner, Martin, & Clubley(2001)は,自閉スペクトラム症指数 (The Autism-Spectrum Quotient: AQ)を開発し

た。AQは,自閉スペクトラム症傾向の特徴を示 す三つ組の領域(社会性の障害,コミュニケー ションの障害,想像力の障害)と認知的異常性の 領域の内容から構成された「社会的スキル」,「注 意の切り替え」,「細部への注意」,「コミュニケー ション」,「想像力」により健常範囲の知能を持つ 成人の自閉症傾向(特性)の程度を測定できる尺 度である。 犯罪における自閉スペクトラム症傾向につい て,近藤・渕上(2005)は,質問紙調査により, 自閉スペクトラム症傾向に該当すると判断された 鑑別所に入所している少年が,武器を使用して攻 撃したり,動物を虐待したり,強奪をしたりと いった経験が多いことを示している。また,アス ペルガー障害の診断を受けた非行少年を対象に非 行の発生基盤について検討した熊上(2006)は, DSM-4の診断基準にある「局限された興味関心」 や「対人相互性の障害」が起因となって,人混み の中で予期せぬ状況に直面してパニックを起こし た結果,周囲に危害が及ぶケースがあることを示 している。さらに,「対人関心・接近時の過誤」 のため,仲間や集団・異性などに関心が高まった 時に,適切な接近や参与の方法が分からないが故 に,悪意のないまま法に抵触してしまう場合があ ることも示した。 一方で,アレキシサイミア傾向とは,自分の 感情や身体の感覚に気づいたり,区別したりす ることが困難であり,感情を表現することが難 しく,想像力が欠如し,外的な事実に関心が向 かいやすい特徴と定義される(小牧他,2003; Sifneos, 1973)。元来,アレキシサイミアは,心 身症患者の心理的特徴を表現する概念であるが, 他の精神障害や一般人にも存在する人格特性ない し個人差とみなされている。そのため,質問紙に よって性格特性的に測定される個人差を表現する 場合は,アレキシサイミア傾向と表現される(後 藤,2012)。アレキシサイミア傾向の測定には,

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TAS-20(Bagby, Parker, & Taylor, 1994) が 使 用

されている。TAS-20は,感情の同定困難(

dif-ficulty identifying feelings),感情の伝達困難( dif-ficulty describing feelings),外的志向( externally-oriented thinking)といった3つの下位概念から 成る質問紙である。感情の同定困難は,感情を識 別することの難しさや感情や身体の感覚を区別す ることの難しさを測定する。感情の伝達困難は, 他人に感情を伝える難しさを測定し,外的志向 は,感情を理解して問題を解決することや,物語 の中の隠された意味を理解することの困難さを測 定する。また,最近では,10代のほうが20代よ りもアレキシサイミア傾向が強いと示唆されなが らも,各年代における違いや経時的変化などが明 確にされていないことへの反省から,児童期や青 年期を対象としたアレキシサイミア尺度の開発も 進められている(反中・寺井・梅沢,2014)。青 年期を対象としたアレキシサイミア尺度は,青年 期用アレキシサイミア尺度と呼ばれ,感情識別困 難,感情伝達困難,外的志向と命名された3つ の下位尺度から構成されている。 このような自閉スペクトラム症傾向とアレキ シサイミア傾向との関連について,Fitzgerald & Bellgrove(2006)は,社会的相互作用の困難, 独特なスピーチ,ノンバーバル表現使用の困難, 感情的相互作用の困難,事実に基づく思考スタ イルなどの特徴において共通点があり,両者は オーバーラップすると指摘している。また,Liss,

Mailloux, & Erchull(2008)は,自閉スペクトラ ム症傾向の特徴である乏しい社会的スキルや乏し いコミュニケーションがアレキシサイミア傾向の 特徴と関連すると指摘している。さらに, Man-ninen et al. (2011)は,アレキシサイミア傾向が, 社会的相互作用や感情的相互作用の問題などと関 連すると示している。 非行少年における粗暴行為の喚起 これらの指摘から,山脇・河野(2020)は, 自閉スペクトラム症傾向とアレキシサイミア傾向 が社会的相互作用や感情的相互作用における問題 において,関連する可能性があると考えた。そ して,非行少年が粗暴行為1)を引き起こすこと について,アレキシサイミア傾向が攻撃性や攻 撃行動とも関連することから(Evren et al., 2015;

Teten, Miller, Bailey, Dunn, & Kent, 2008; Velotti et al., 2016),アレキシサイミア傾向が関連する 自閉スペクトラム症傾向が攻撃性と関連すること により粗暴行為が引き起こされるという仮説を検 討した。その際,アレキシサイミア傾向は青年期 用アレキシサイミア尺度を使用した。その結果, アレキシサイミア傾向の感情識別困難,感情伝達 困難,外的志向と関連した自閉スペクトラム症傾 向のコミュニケーションの乏しさが,攻撃性を高 めて粗暴行為を増大させることがわかった。ま た,アレキシサイミア傾向の感情識別困難,感情 伝達困難,外的志向と関連した想像力の乏しさも 直接的に粗暴行為を増大させることが明らかと なった。これらの結果から,非行少年は,自分自 身の感情を理解することが困難であり,さらに, 誰かにそれを伝えることが難しい状態では,攻撃 性が高まり,粗暴行為を引き起こす可能性がある といえる。また,自分自身の感情を理解し,他者 に伝達することや,感情に着目すること自体が難 しくなると,半ば衝動的に粗暴行為を相手に向け やすくなるともいえる。つまり,自閉スペクトラ ム症傾向の特徴と関連するアレキシサイミア傾向 という感情的・情緒的な問題が非行少年の粗暴行 為を促進しており,ゆえに,少年の非行問題の背 景には,障害の特徴と,障害の特徴に関連のある 心理特性が存在していると予測される。 1)山脇・河野(2020)では,粗暴行為は,他者に対す る「殴る」,「蹴る」,「悪口を言う」,「仲間外れにする」, 「シカトする」といった暴力行為と定義し,行為者は, 非行や犯罪を行った人々と捉えている。

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感情学習プログラム では,非行少年の粗暴行為を抑制するために は,どのような教育が必要なのだろうか。大江・ 亀田(2015)は,非行少年の再犯防止には,再 犯防止に関する知識やスキルを学習させるだけで なく,周囲の状況や自分の感情を適切にモニタ リングする力が必要と指摘している。また,宮 地・神谷・吉橋・野村・ 井(2008)や吉井・ 吉松(2003)も,感情学習を取り入れた教育が 対人関係のトラブルや社会的不適応行動を抑制す るために重要だと示している。さらに,Hadwin,

Baron-Cohen, Howlin, & Hill(1996) は, 自 閉 スペクトラム症の子どもたちには「心の理論」が 欠落しているが,感情について指導することによ り感情理解が可能になると示唆している。加え て,神谷・宮地・吉橋・ 井(2007)は,自分 自身の感情理解の困難さは,様々なスキルを獲得 する際の障壁となり,問題行動や不適応行動の原 因となるために,他者の感情理解だけでなく,自 分自身の感情理解の乏しさにも注目する必要があ ると示している。 そこで,筆者らは(反中・山脇・宇田・田頭・ 市 村,2017; 山 脇・ 反 中・ 市 村・ 宇 田,2016), 社会的相互作用や感情的相互作用に着目した自他 の感情理解を促進する心理教育プログラム(感情 学習プログラム)を独自に開発し,非行少年の粗 暴行為への介入を試みた。感情学習プログラム は,自分自身と他者の顕在的な感情(表出された 感情)と潜在的な感情(表出されなかった感情) を考慮し,感情により駆動された考え方や問題行 動の原因について考えるプログラムである。この プログラムの特徴は,自分自身や他者の顕在的感 情と潜在的感情の双方に着目することにより,自 分自身の考えや行動と他者の考えや行動を適切に 捉えることができるようになることである。つ まり,自分自身の意図や他者の意図が分からず に,他者に対して否定的な信念や態度,猜疑心や 不信感を抱いていた人々が,自分自身や他者の顕 在的および潜在的な感情を適切に認識することに より,本来の自分自身や相手の感情を知ることが できるようになることを目指している。したがっ て,非行少年に対して感情学習プログラムを実施 することは,自分自身や他者の感情を適切に捉え るとともに,最終的に,感情理解の困難さによっ て促進される暴力行為を抑制できると考える。 目 的 本研究では,感情学習プログラムの実施によ り,感情の理解が促された結果,非行少年の粗暴 行為を促進する自閉スペクトラム症傾向得点,ア レキシサイミア傾向得点,攻撃性得点に変化があ るのかを検討する。その際,自閉スペクトラム症 傾向とアレキシサイミア傾向の高い非行少年,ど ちらか一方の特性を有する非行少年,いずれの傾 向にも該当しない非行少年に着目することによ り,プログラムの効果が認められやすい対象者も 検討する。また,プログラムの効果が出院時まで 継続されるのかについても検討する。 方 法 参加者 2016年4月∼2019年4月に第一種少年院に入 院しており,感情学習プログラムを受講した男子 少年92名から回答を得た。平均年齢は17.45歳 (SD =1.60)であった。また,本研究は,欠損値 のあった少年2名のデータとプログラム実施中 に出院した少年10名のデータは含めず,最終的 に80名を分析対象とした(平均年齢17.45歳, SD =1.48)。また,調査期間中に出院した少年 は,49名(平均年齢17.51歳,SD =1.46)であっ たが,そのうち欠損値のあった7名のデータは 含めず,42名を対象とした(平均年齢17.45歳, SD =1.40)。 プログラムの内容及び実施方法 感情学習プログラムは,自己と他者の顕在的

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感情と潜在的感情を理解することにより,自己や 他者の感情から派生した意図を適切に理解し,自 分自身の想いを相手に伝えることで,感情の理解 力不足により生じる対人間のトラブルや攻撃行動 の喚起を未然に防ぐことを目的にしている。本プ ログラムでは,「感情」という言葉の理解に困難 を示す少年もいることから,「気持ち」や「想い」 という言葉を使用した。以下,各単元の詳細につ いて示す(Table 1)。 単元1では,「気持ちについて知ろう」という タイトルのもと,気持ちには様々な種類があり, 気持ちが表情や行動を引き起こしていることを理 解させる。単元2では,「自分の気持ちと家族の 気持ち」として,顕在的な気持ちと潜在的な気持 ちを想像する大切さを学ぶ。単元3では,「謝る ことと受け入れること①」として,相手の言葉や 動作から相手の気持ちに気がつき受け入れること を学ぶ。また,単元4では,「謝ることと受け入 れること②」として,相手の気持ちを受け入れ て,謝罪と感謝を知り,伝える大切さを学ぶ。単 元5では,「信頼関係を保つには」というタイト ルのもと,気持ちを知ることにより,自分や相 手の気持ちや行動が変化することを学ぶ。単元6 では,「お互いにある想い」として,自分と相手 に主張があることを理解し,気遣うことの大切さ を学ぶ。単元7では,「お互いが大切にするもの」 として,相手の気持ちと行動の理由を想像し,自 分の気持ちや行動を正確に説明する必要性を学 ぶ。単元8では,「過去のトラブルを見直そう」 というタイトルのもと,これまでの経験を見直 し,自分と相手の気持ちが適切に理解できなかっ たことにより生じたトラブルについて,円滑な 人間関係を形成するための方法を考えさせた2) プログラムは,3ヶ月を1クールとして,1回あ たり90分を週1回実施した。また,プログラム は,全8単元により構成され,1クール8∼10名 で実施した。 効果測定の測度 デモグラフィック変数 年齢,性別について の回答を求めた。 自閉スペクトラム症傾向 自閉スペクトラム 症傾向が測定可能な日本語版自閉スペクトラム症 指数(以下,AQ尺度と表記;若林・東條・ Bar-on-Cohen・Wheelwright, 2004)を使用した。こ の測度は,社会的スキル,注意の切り替え,細部 への注意,コミュニケーション,想像力といった 下位尺度により測定される。50項目により構成 され,4件法(1:あてはまる,2:どちらかとい Table 1 プログラムの内容 単元 単元名 目的 1 気持ちについて知ろう 気持ちには様々な種類があり,多くの表情や行動を引き起こすことを理解 させる 2 自分の気持ちと家族の気持ち 顕在的な気持ちと潜在的な気持ちを想像する大切さを学ぶ 3 謝ることと受け入れること① 相手の言葉や動作から相手の気持ちに気がつき,受け入れる 4 謝ることと受け入れること② 相手の気持ちを受け入れて,謝罪と感謝を知り,伝える大切さを学ぶ 5 信頼関係を保つには 気持ちを知ることにより,自分や相手の気持ちや行動が変化することに気 づかせる 6 お互いにある「想い」 自分と相手に主張があることを理解し,気遣いの大切さを学ぶ 7 お互いが大切にするもの 相手の気持ちと行動の理由を想像し,説明できることを学ぶ 8 過去のトラブルを見直そう これまでの経験を見直し,円滑な家族関係を形成する方法を考える 2)最終単元の事例は,これまでの単元と異なり,少年 自身に事例を考えてもらった。なお,事例については 事前に担当教官が回収し,内容について確認したうえ で加筆修正を行い,授業において使用した。

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えばあてはまる,3:どちらかといえばあてはま らない,4:あてはまらない)により回答を求め る。採点方法は,各項目で自閉スペクトラム症傾 向とされる側に該当する回答を選択すると1点 が与えられる。AQ尺度は4件法であるが,「ど ちらかといえばあてはまる」,「どちらかといえば あてはまらない」も含めて1点と換算するため, 実質的には2件法とみなして合計得点を算出す る。各下位尺度は10項目であり,本研究では合 計得点を使用している。合計得点が高得点である ほど自閉スペクトラム症の特徴を顕著にもつこ とを示す。本研究における信頼性係数は,Table 2に示した。先行研究におけるこの尺度の信頼性 係数は,合計得点α=.81,社会的スキルα=.78, 注意の切り替えα=.63,細部への注意α=.57, コミュニケーションα=.64,想像力α=.51と十 分な値が示されている(若林他,2004)。 アレキシサイミア傾向 青年期用アレキシサ イミア尺度(反中他,2014)を使用した。この 尺度は,アレキシサイミア評定で最も使用され

る自記式尺度Twenty-item Toronto Alexithymia

Scale(以 下TAS-20と 記 す;Bagby et al., 1994) をベースに開発された子ども用アレキシサイミ ア尺度(Alexithymia Questionnaire for Children: Rieffe, Oosterveld, & Terwogt, 2006)を邦訳して

作成されている。TAS-20と同様に20項目によ り構成され,5件法により回答を求める自記式尺 度である。合計得点が高いほどアレキシサイミア 傾向が強いことを示す。この尺度は,感情識別 困難,感情伝達困難,外的志向の3つの下位尺 度から構成されている。アレキシサイミア評定 においてはTAS-20が多用されているが, TAS-20を10代の少年に適応した場合には,項目の言 い回しを簡潔にするなどの工夫が必要であると指 摘されており,青年期アレキシサイミア尺度はそ うした課題を考慮して作成されている。青年期用 アレキシサイミア尺度は,一部の因子については 十分な信頼性が得られておらず解釈には慎重にな Table 2 各尺度の基本統計量(プレ得点とポスト得点:N80) プレ得点 ポスト得点 平均 SD α 平均 SD α 自閉スペクトラム症傾向 社会的スキル 3.30 2.29 .66 3.40 2.34 .66 注意の切り替え 4.58 2.05 .52 4.99 2.20 .50 細部への注意 6.26 2.38 .68 6.36 2.17 .59 コミュニケーション 3.96 2.18 .60 3.83 2.35 .68 想像力 3.26 1.30 −.13 3.21 1.51 .21 自閉スペクトラム症傾向合計得点 21.36 6.10 .73 21.79 6.36 .74 アレキシサイミア傾向 感情識別困難 20.01 6.97 .83 19.89 6.68 .79 感情伝達困難 15.78 4.99 .87 16.23 4.59 .87 外的志向 20.70 4.75 .64 20.65 4.36 .54 アレキシサイミア傾向合計得点 56.49 13.70 .88 56.76 11.73 .82 攻撃性 短気 15.38 4.86 .77 15.44 4.66 .77 敵意 19.69 5.04 .77 19.95 4.86 .78 身体的攻撃 17.85 6.23 .85 16.76 5.56 .77 言語的攻撃 15.60 3.69 .61 15.33 3.74 .63 攻撃性合計得点 54.79 12.69 .82 54.14 12.16 .83

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る必要があるが(合計得点:α=.72,感情識別 困難:α=.82,感情伝達困難:α=.64,外的志 向:α=.32),尺度の内的整合性(α=.72)や因 子的妥当性,内容的妥当性の検討がなされている (反中他,2014; 反中・寺井・梅沢,2017)。本研 究における信頼性係数はTable 2に示した。 攻 撃 性  攻 撃 性 の 測 定 可 能 な 日 本 版 Buss-Perry攻撃性質問紙(安藤他,1999)を用いた。 この測度は,24項目から構成され,5件法によ り回答を求める。攻撃性は,短気と敵意,身体的 攻撃,言語的攻撃により測定される。合計得点が 高得点であるほど攻撃性が強いことを示す。本研 究における信頼性係数は,Table 2に示した。先 行研究におけるこの尺度の信頼性係数は,合計得 点α=.81,短気α=.74,敵意α=.72,身体的攻 撃α=.78,言語的攻撃α=.70と十分な値が示さ れている(安藤他,1999)。 手続き まず,入院時に,取得が可能であったすべて の少年から,年齢,性別,自閉スペクトラム症傾 向,アレキシサイミア傾向,攻撃性の回答を求め た。また,プログラムの受講者においては,プロ グラム実施前に,年齢,自閉スペクトラム症傾 向,アレキシサイミア傾向,攻撃性を測定した。 そして,プログラムの実施終了後,一週間以内 に,再度,自閉スペクトラム症傾向,アレキシサ イミア傾向,攻撃性を測定した。また,出院前に 取得が可能であったプログラム受講者からは,再 度,出院前に自閉スペクトラム症傾向,アレキシ サイミア傾向,攻撃性の回答を得た3) なお,調査用紙は,調査協力が得られた少年 院において法務教官が少年に配布して実施した。 調査時に集団寮で生活していた少年については, 寮内で一斉配布の後,回答の終了した少年から提 出してもらった。また,個室にて生活していた少 年については,調査用紙を配布した後,居室内で 回答した。配布の際,倫理的な配慮から施設での 成績や処遇とは関係ないこと,収集した情報は匿 名にして研究以外では利用しないこと,個人情報 の管理を徹底し第三者に知られることはないこと を法務教官から伝えられた。 結 果 記述統計量 プログラム受講者の自閉スペクトラム症傾向 の合計得点とその下位尺度,アレキシサイミア傾 向の合計得点とその下位尺度,攻撃性の合計得 点とその下位尺度のプレの平均値(M),標準偏差 (SD),信頼性係数,ポストの平均値(M),標準 偏差(SD),信頼性係数をTable 2に示した。各 尺度の信頼性係数について,自閉スペクトラム症 傾向の想像力はかなり低い数値を示したが,先行 研究においても低い数値を示していたことを勘案 して,使用に耐えうると判断した。その他の尺度 は,概ね先行研究と同様の数値を示した。 また,取得が可能であった受講者(71名,平 均年齢=17.56歳,SD =1.42)の入院時のデータ と非受講者(147名,平均年齢=17.48歳,SD = 1.26)の入院時に取得したデータを比較し,感情 学習プログラム受講前の受講者の特徴について検 討した。その結果,攻撃性の合計得点,短気,身 体的攻撃の得点が受講者よりも非受講者の方が有 意に高くなった。しかし,効果量を検討した結 果,小さい値となったため,受講群と非受講群の 得点には顕著な差はないといえる。その他,自閉 スペクトラム症傾向の合計得点とその下位尺度, アレキシサイミア傾向の合計得点とその下位尺度 において,受講者と非受講者に有意な差は認めら れなかった(Table 3)。

Pre

得点と

Post

得点の比較 プログラム受講者のうち,カットオフ得点26

点(Woodbury-Smith, Robinson, Wheelwright, &

3)プログラム実施終了後から出院前までの期間は少年 により異なった。

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Baron-Cohen, 2005)により自閉スペクトラム症 傾向に該当すると判断されたのは,13名であっ た(平均年齢17.8歳,SD=1.69)。本研究では, 該当者を自閉スペクトラム症傾向者と記載した。 また,14∼19歳男子における青年期用アレキシ サイミア尺度得点のMean + 1SD以上を高アレ キシサイミア得点群(反中・寺井・梅沢,2016) とみなした結果,本研究では69点以上が高ア レキシサイミア得点群となった。該当したのは, 10名であり(平均年齢17.4歳,SD =1.96),本 研究では,該当者をアレキシサイミア傾向者と記 載した。さらに,以上の分析により,自閉スペク トラム症傾向とアレキシサイミア傾向の両群に該 当すると判断されたのは,7名であった(平均年 齢17.6歳,SD =1.27)。本研究では,該当者を 両傾向者と記載した。最後に,どの傾向にも属さ ない少年を非該当者とした結果,50名が該当し たため(平均年齢17.4歳,SD =1.38),非該当 者と記載した。両傾向者,自閉スペクトラム症傾 向者,アレキシサイミア傾向者,非該当者の位置 づけに関する詳細は,Figure 1に示した。 以上の結果を踏まえて,両傾向者,自閉スペ クトラム症傾向者,アレキシサイミア傾向者,非 該当者における感情学習プログラム実施前の各尺 度得点(以下,Pre得点と表記)と実施終了後の 各尺度得点(以下,Post得点と表記)について, 対応のあるt検定を行った(Table 4)。 Figure1 各傾向者の位置づけ Table 3 受講群と非受講群の入院時データの比較 受講群(N=71) 非受講群(N=147) F pη2 平均 (SD) 平均 (SD) 自閉スペクトラム症傾向 社会的スキル 3.59 2.53 3.18 2.21 1.53 .217 0.01 注意の切り替え 4.65 2.08 4.69 1.76 0.02 .885 0.00 細部への注意 5.52 2.34 5.64 2.06 0.14 .705 0.00 コミュニケーション 4.01 2.50 3.93 2.01 0.07 .795 0.00 想像力 3.24 1.57 3.22 1.74 0.00 .951 0.00 自閉スペクトラム症傾向合計得点 21.01 6.58 20.66 5.43 0.18 .675 0.00 アレキシサイミア傾向 感情識別困難 19.92 6.75 19.99 6.73 0.01 .936 0.00 感情伝達困難 15.99 4.83 15.47 4.42 0.62 .434 0.00 外的志向 20.94 4.18 21.20 4.13 0.18 .673 0.00 アレキシサイミア傾向合計得点 56.85 12.71 56.66 11.08 0.01 .912 0.00 攻撃性 短気 14.58 5.03 16.65 5.12 7.92 .005 0.04 敵意 19.18 5.17 20.10 4.62 1.72 .191 0.01 身体的攻撃 16.51 6.29 19.24 5.95 9.73 .002 0.04 言語的攻撃 15.65 3.41 15.94 3.91 0.29 .592 0.00 攻撃性合計得点 65.92 13.31 71.92 13.98 9.10 .003 0.04

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Table 4  受講者の各尺度のプレ得点とポスト得点の比較 両傾向者( N = 7 ) 自閉スペクトラム症傾向者( N = 13 ) アレキシサイミア傾向者( N = 10 ) 非該当者( N = 50 ) Pre ( SD ) Post ( SDt p 効果量 (Δ ) Pre ( SD ) Post ( SDt p 効果量 (Δ ) Pre ( SD ) Post ( SDt p 効果量 (Δ ) Pre ( SD ) Post ( SDt p 効果量 (Δ ) 自閉スペクトラム症傾向 社会的スキル 5.57 ( 1.72 ) 6.14 ( 1.68 ) 2.83 .030 0.33 6.15 ( 1.28 ) 5.15 ( 1.52 ) 2.45 .031 0.78 4.00 ( 1.76 ) 3.80 ( 2.78 ) 0.45 .662 0.11 2.10 ( 1.63 ) 2.48 ( 1.93 ) 1.96 .055 0.23 注意の切り替え 6.57 ( 2.57 ) 7.29 ( 3.73 ) 0.74 .489 0.28 6.46 ( 1.33 ) 6.62 ( 1.89 ) 0.43 .673 0.12 4.40 ( 1.26 ) 4.60 ( 1.78 ) 0.31 .764 0.16 3.84 ( 1.79 ) 4.32 ( 1.65 ) 2.30 .026 0.27 細部への注意 6.29 ( 3.04 ) 6.14 ( 2.19 ) 0.24 .818 0.05 6.85 ( 1.86 ) 6.85 ( 1.34 ) 0.00 1.000 0.00 4.20 ( 1.99 ) 4.50 ( 2.32 ) 0.58 .576 0.15 6.52 ( 2.32 ) 6.64 ( 2.17 ) 0.50 .622 0.05 コミュニケーション 6.71 ( 1.25 ) 7.00 ( 1.83 ) 0.79 .457 0.23 5.46 ( 1.33 ) 5.23 ( 1.54 ) 0.61 .553 0.17 5.30 ( 1.70 ) 4.90 ( 1.97 ) 0.94 .373 0.24 2.92 ( 1.84 ) 2.80 ( 1.98 ) 0.57 .573 0.07 想像力 4.57 ( 1.51 ) 4.43 ( 1.40 ) 0.35 .736 0.09 4.08 ( 0.86 ) 3.69 ( 1.49 ) 0.89 .391 0.45 3.00 ( 1.05 ) 3.40 ( 2.07 ) 0.60 .565 0.38 2.92 ( 1.23 ) 2.88 ( 1.30 ) 0.26 .799 0.03 自閉スペクトラム症傾向合計得点 29.71 ( 2.69 ) 31.00 ( 5.00 ) 0.99 .362 0.48 29.00 ( 3.24 ) 27.54 ( 4.48 ) 1.75 .106 0.45 20.90 ( 3.00 ) 21.20 ( 4.85 ) 0.32 .758 0.10 18.30 ( 4.46 ) 19.12 ( 4.96 ) 1.68 .099 0.18 アレキシサイミア傾向 感情識別困難 29.00 ( 2.58 ) 25.00 ( 4.83 ) 2.47 .048 1.55 21.23 ( 5.89 ) 21.23 ( 5.75 ) 0.00 1.000 0.00 28.10 ( 3.38 ) 24.80 ( 5.57 ) 1.99 .078 0.98 16.82 ( 5.58 ) 17.84 ( 6.48 ) 1.69 .097 0.18 感情伝達困難 21.71 ( 1.98 ) 21.29 ( 1.60 ) 0.66 .534 0.21 17.62 ( 4.48 ) 17.85 ( 2.82 ) 0.16 .875 0.05 20.30 ( 2.67 ) 17.10 ( 4.89 ) 1.69 .125 1.20 13.56 ( 4.29 ) 14.92 ( 4.60 ) 3.28 .002 0.32 外的志向 22.86 ( 5.70 ) 22.29 ( 4.23 ) 0.53 .618 0.10 19.69 ( 3.59 ) 19.31 ( 4.07 ) 0.42 .684 0.11 24.90 ( 4.36 ) 23.40 ( 3.37 ) 1.33 .216 0.35 19.82 ( 4.51 ) 20.22 ( 4.44 ) 0.82 .414 0.09 アレキシサイミア傾向合計得点 73.57 ( 4.16 ) 68.57 ( 8.14 ) 2.29 .062 1.20 58.54 ( 10.44 ) 58.38 ( 7.76 ) 0.07 .944 0.02 73.30 ( 4.14 ) 65.30 ( 7.51 ) 2.84 .029 1.93 50.20 ( 11.40 ) 52.98 ( 11.78 ) 2.78 .008 0.24 攻撃性 短気 19.71 ( 3.64 ) 17.86 ( 4.14 ) 3.65 .011 0.51 14.69 ( 4.29 ) 15.69 ( 4.35 ) 1.54 .150 0.23 18.80 ( 3.33 ) 16.90 ( 4.95 ) 1.63 .138 0.57 14.26 ( 4.84 ) 14.74 ( 4.69 ) 0.98 .330 0.10 敵意 24.29 ( 5.15 ) 25.00 ( 4.16 ) 0.47 .656 0.14 21.85 ( 2.76 ) 20.77 ( 3.72 ) 1.62 .131 0.39 20.70 ( 5.56 ) 18.90 ( 6.24 ) 0.73 .486 0.32 18.28 ( 4.87 ) 19.24 ( 4.56 ) 1.87 .068 0.20 身体的攻撃 21.29 ( 7.43 ) 18.14 ( 6.15 ) 2.03 .089 0.42 15.31 ( 6.82 ) 14.00 ( 6.11 ) 1.64 .126 0.19 22.20 ( 6.11 ) 17.00 ( 6.00 ) 2.10 .065 0.85 17.16 ( 5.46 ) 17.24 ( 5.19 ) 0.15 .881 0.02 言語的攻撃 14.57 ( 5.41 ) 14.71 ( 5.38 ) 0.15 .887 0.03 15.69 ( 3.79 ) 14.46 ( 3.78 ) 1.64 .128 0.33 15.40 ( 4.01 ) 14.40 ( 4.43 ) 0.87 .405 0.25 15.76 ( 3.42 ) 15.82 ( 3.35 ) 0.16 .872 0.02 攻撃性合計得点 79.86 ( 14.85 ) 75.71 ( 13.83 ) 1.70 .140 0.28 54.62 ( 9.80 ) 53.15 ( 9.48 ) 0.89 .392 0.15 63.00 ( 11.11 ) 54.60 ( 13.77 ) 2.60 .019 0.76 65.46 ( 11.54 ) 67.04 ( 12.06 ) 1.28 .206 0.14

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Table 5  受講者の各尺度のポスト得点と出院前の得点との比較 両傾向者( N = 3 ) 自閉スペクトラム症傾向者( N = 6 ) アレキシサイミア傾向者( N = 6 ) 非該当者( N = 27 ) Post ( SD ) 出院前 ( SDt p 効果量 (Δ ) Post ( SD ) 出院前 ( SDt p 効果量 (Δ ) Post ( SD ) 出院前 ( SDt p 効果量 (Δ ) Post ( SD ) 出院前 ( SDt p 効果量 (Δ ) 自閉スペクトラム症傾向 社会的スキル 7.00 ( 1.00 ) 6.67 ( 1.15 ) 1.00 .423 0.33 5.17 ( 1.84 ) 5.50 ( 2.26 ) 0.36 .732 0.18 4.67 ( 3.27 ) 4.17 ( 2.32 ) 0.66 .542 0.16 2.63 ( 1.93 ) 1.85 ( 1.63 ) 3.31 .003 0.41 注意の切り替え 5.67 ( 3.22 ) 6.00 ( 2.65 ) 0.50 .667 0.10 7.17 ( 2.04 ) 6.83 ( 2.14 ) 0.79 .465 0.17 4.00 ( 1.90 ) 5.00 ( 1.10 ) 1.46 .203 0.53 4.19 ( 1.30 ) 3.96 ( 1.26 ) 0.84 .406 0.18 細部への注意 6.67 ( 3.22 ) 6.67 ( 1.53 ) 0.00 1.000 0.00 6.50 ( 1.64 ) 6.17 ( 2.14 ) 0.50 .638 0.20 5.67 ( 2.07 ) 5.50 ( 2.43 ) 0.54 .611 0.08 6.41 ( 2.22 ) 6.33 ( 2.27 ) 0.24 .816 0.04 コミュニケーション 6.00 ( 1.73 ) 6.00 ( 2.00 ) 0.00 1.000 0.00 4.67 ( 1.03 ) 6.17 ( 1.47 ) 1.96 .107 1.45 5.50 ( 1.98 ) 6.00 ( 2.00 ) 0.45 .673 0.25 2.67 ( 1.86 ) 2.63 ( 1.80 ) 0.13 .898 0.02 想像力 5.33 ( 1.16 ) 5.00 ( 2.65 ) 0.28 .808 0.29 3.50 ( 1.76 ) 5.33 ( 2.16 ) 3.05 .028 1.04 4.00 ( 2.53 ) 3.33 ( 2.16 ) 2.00 .102 0.26 3.07 ( 1.39 ) 2.74 ( 1.35 ) 1.12 .272 0.24 自閉スペクトラム症傾向合計得点 30.67 ( 2.08 ) 30.33 ( 4.73 ) 0.14 .899 0.16 27.00 ( 3.90 ) 30.00 ( 7.38 ) 1.39 .224 0.77 23.83 ( 2.99 ) 24.00 ( 4.94 ) 0.10 .926 0.06 18.96 ( 4.64 ) 17.52 ( 5.03 ) 2.66 .013 0.31 アレキシサイミア傾向 感情識別困難 25.00 ( 6.56 ) 26.33 ( 6.11 ) 0.38 .739 0.20 20.83 ( 6.82 ) 21.67 ( 5.32 ) 0.38 .718 0.12 24.00 ( 3.63 ) 25.50 ( 1.38 ) 0.92 .399 0.41 17.41 ( 6.34 ) 16.81 ( 7.05 ) 0.83 .417 0.09 感情伝達困難 21.33 ( 1.53 ) 17.00 ( 6.08 ) 1.63 .246 2.83 18.17 ( 2.86 ) 17.17 ( 2.40 ) 0.66 .542 0.35 18.17 ( 3.43 ) 18.67 ( 3.20 ) 0.46 .665 0.15 15.07 ( 4.18 ) 13.30 ( 4.44 ) 2.86 .008 0.43 外的志向 24.67 ( 3.06 ) 24.00 ( 2.65 ) 0.76 .529 0.22 18.50 ( 3.62 ) 22.17 ( 3.13 ) 1.48 .198 1.01 23.67 ( 3.39 ) 22.50 ( 3.39 ) 0.72 .504 0.35 20.22 ( 4.22 ) 18.63 ( 4.46 ) 2.01 .055 0.38 アレキシサイミア傾向合計得点 71.00 ( 9.64 ) 67.33 ( 10.12 ) 0.79 .514 0.38 57.50 ( 8.62 ) 61.00 ( 5.29 ) 1.12 .314 0.41 65.83 ( 7.22 ) 66.67 ( 6.62 ) 0.22 .833 0.12 52.70 ( 10.83 ) 48.74 ( 11.66 ) 2.36 .026 0.37 攻撃性 短気 17.33 ( 3.06 ) 17.00 ( 1.73 ) 0.28 .808 0.11 12.50 ( 3.21 ) 12.83 ( 1.94 ) 0.31 .771 0.10 17.00 ( 4.65 ) 17.67 ( 2.58 ) 0.53 .618 0.14 15.22 ( 4.14 ) 13.41 ( 5.06 ) 3.47 .002 0.44 敵意 24.00 ( 5.57 ) 21.00 ( 6.08 ) 1.19 .355 0.54 21.67 ( 4.08 ) 20.50 ( 3.78 ) 1.56 .180 0.29 20.17 ( 4.96 ) 21.50 ( 4.28 ) 0.74 .492 0.27 19.41 ( 4.24 ) 18.56 ( 5.03 ) 1.20 .242 0.20 身体的攻撃 17.00 ( 5.29 ) 16.67 ( 2.08 ) 0.09 .939 0.06 10.50 ( 4.59 ) 10.00 ( 4.65 ) 0.24 .822 0.11 18.67 ( 7.03 ) 19.00 ( 5.06 ) 0.18 .863 0.05 17.00 ( 5.51 ) 15.89 ( 6.04 ) 1.33 .194 0.20 言語的攻撃 12.67 ( 7.64 ) 13.33 ( 6.51 ) − 0.76 .529 0.09 13.50 ( 4.89 ) 15.17 ( 3.76 ) 1.21 .282 0.34 14.50 ( 4.14 ) 14.67 ( 4.41 ) 0.09 .932 0.04 15.89 ( 3.80 ) 15.81 ( 3.34 ) 0.13 .901 0.02 攻撃性合計得点 60.33 ( 11.59 ) 68.00 ( 6.25 ) − 0.89 .470 0.66 47.50 ( 7.01 ) 58.50 ( 5.01 ) 3.96 .011 1.57 58.17 ( 14.25 ) 72.83 ( 13.66 ) 4.44 .007 1.03 53.37 ( 11.06 ) 63.67 ( 13.85 ) 5.39 .000 0.93

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両傾向者 Pre得点とPost得点において,ア レキシサイミア傾向の感情識別困難,攻撃性の短 気の得点が有意に低下した。 自閉スペクトラム症傾向者 Pre得点とPost 得点において,自閉スペクトラム症傾向の社会的 スキルの得点が有意に低下した。 アレキシサイミア傾向者 Pre得点とPost得 点において,アレキシサイミア傾向の合計得点, 攻撃性の合計得点が有意に低下した。 非該当者 Pre得点とPost得点において,有 意に得点が低下した下位尺度はなかった。

Post

得点と出院時得点との比較 プログラム受講者のうち,調査期間中に出院 した42名のうち,両傾向者は,3名(平均年齢 =18.00歳,SD =1.00),自閉スペクトラム症傾 向者は,6名(平均年齢=18.50歳,SD =0.84), アレキシサイミア傾向者は,6名(平均年齢= 17.33歳,SD =2.42),非該当者は,27名だった (平均年齢=17.19歳,SD =1.18)。 以上の結果を踏まえて,プログラム受講者の Post得点と出院時の得点について,t検定を行っ た(Table 5)。 両傾向者 Pre得点とPost得点において変化 のみられたアレキシサイミア傾向の感情識別困難 と,攻撃性の短気の得点において,Post得点と 出院時の得点について比較した結果,有意な差は なかった。 自閉スペクトラム症傾向者 Pre得点とPost 得点において変化のみられた自閉スペクトラム症 傾向の社会的スキルの得点において,Post得点 と出院時の得点について比較した結果,有意な差 はなかった。 アレキシサイミア傾向者 Pre得点とPost得 点において変化のみられたアレキシサイミア傾向 の合計得点において,Post得点と出院時の得点 について比較した結果,有意な差はなかった。 非該当者 Pre得点とPost得点の比較において 有意な結果は得られなかった。しかし,Post得点 と出院時の得点について比較した結果,自閉スペ クトラム症傾向の社会的スキルと自閉スペクトラ ム症傾向の合計得点が有意に低下した。また,ア レキシサイミア傾向の感情伝達困難の得点とアレ キシサイミア傾向の合計得点も有意に低下した。 さらに,攻撃性の短気の得点も有意に低下した。 考 察 本研究では,両傾向者,自閉スペクトラム症傾向 者,アレキシサイミア傾向者,非該当者の非行少年 を対象に感情学習プログラムの効果について検討 することが示された。また,プログラムの実施によ り変化した特徴が出院時まで継続されているのかを 検討した。 その結果,感情学習プログラムの実施により両 傾向の高い非行少年は,アレキシサイミア傾向の 「感情識別困難」,攻撃性の「短気」が有意に低下 することが示された。また,アレキシサイミア傾 向に該当する非行少年においては,アレキシサイ ミア傾向の「合計得点」,攻撃性の「合計得点」 が有意に低下することが示された。感情識別困難 やアレキシサイミア傾向合計得点は,自閉スペク トラム症傾向の特徴と関連することがわかってい る(山脇・河野,2020)。また,攻撃性の合計得 点は,攻撃行動を促進する要因であることも示さ れている(Conner, 2002)。つまり,自閉スペク トラム症傾向とアレキシサイミア傾向者の非行少 年や,アレキシサイミア傾向の非行少年は,感情 学習プログラムの受講により,粗暴行為を促進す る要因を低下できる可能性があると考えられる。 すなわち,彼らは,プログラムの受講により,自 分自身の感情認識を促進し,さらに,相手の感情 認識のズレと関連した攻撃性を抑制させることが できるため,適切な感情理解が可能となり,他者 に対する攻撃的な表現を抑えることが可能となる といえる。そして,結果として,粗暴行為も生じ

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させにくくなると考える。そのため,感情学習プ ログラムは,自閉スペクトラム症傾向とアレキシ サイミア傾向者の非行少年,アレキシサイミア傾 向の非行少年の粗暴行為の抑制に効果があるとい える。また,この傾向は,出院前まで継続された ため,感情学習プログラムの教育的効果は持続す る可能性が高いと考える。 一方で,自閉スペクトラム症傾向に該当する 非行少年においては,自閉スペクトラム症傾向の 「社会的スキル」の得点が有意に低下した。この結 果は,感情学習プログラムの内容が他者との相互 作用において感情を学習するプログラムであった ことから,特に社会的スキルの乏しい自閉スペク トラム症傾向の非行少年には効果があったと考え られる。しかし,自閉スペクトラム症傾向のその 他の特徴や,アレキシサイミア傾向の特徴,攻撃 性において変化はみられなかった。自閉スペクト ラム症は,脳の器質的な障害により発症するとの 指摘もあることから(橋本,2008),自閉スペクト ラム症傾向者には,感情学習プログラムによる教 育的な効果は小さいのかもしれない。近年,自閉 スペクトラム症のコミュニケーションに特化した ワークブックなどが多数出版されていることを鑑 みると,自閉スペクトラム症の特徴には,直接的 に介入できるプログラムが必要なのかもしれない。 以上から,全ての群に該当しない少年に効果 がみられなかったことも踏まえると,感情学習プ ログラムは,アレキシサイミア傾向に該当する非 行少年や両傾向に該当する非行少年において効果 的に働くプログラムといえる。そのため,非行少 年の粗暴行為の抑制には,社会的相互作用や感情 的相互作用に着目した自他の感情理解を促すプロ グラムが有効といえる。 今後の課題 以上のような結果が示されたが,6つの課題も 残された。1つめの課題は,自閉スペクトラム症 傾向とアレキシサイミア傾向の両方の特徴を有す る非行少年においては,自閉スペクトラム症傾向 の「社会的スキル」の得点がプログラムの実施後 に有意に上昇したことである。感情学習プログラ ムは,自他の感情理解を促進するプログラムであ るが,両方の特徴を有する非行少年にとっては, 自他の感情理解の促進が社会的スキルを活用する ような対人相互場面においては,どちらの方略を 活用すべきか不明となり,感情理解と社会的スキ ルの活用の狭間で混乱を生じさせたのかもしれな い。そのため,感情学習プログラムを実施する際 には,プログラム受講者の特徴について実施前に 十分に把握し,混乱を生じさせないように適切に 指導していく必要があると考える。また,非該当 者においては,自閉スペクトラム症傾向の「注意 の切り替え」の得点とアレキシサイミア傾向の 「感情伝達困難」の得点,「合計得点」が感情学習 プログラムの実施後に有意に上昇した。つまり, 非該当者においては,注意の切り替えを困難にさ せ,また,感情の伝達を困難にする結果となっ た。前述したように,感情学習プログラムは,自 他の感情を学習させるプログラムであるため,も しかすると,ある程度の感情理解が可能である非 該当者は,感情学習プログラムを受講することに より,感情の着目に注意が集中し,これまで滞り なく行われていた感情伝達が困難になったのかも しれない。そのため,感情学習プログラムでは, 受講者の感情の理解度等も個別に把握しておく必 要もあるのかもしれない。 2つめの課題は,プログラム受講後と出院前の 得点について比較した結果,自閉スペクトラム症 傾向者では,想像力の得点と攻撃性の合計得点が 有意に上昇したことである。アレキシサイミア傾 向者と非該当群においても攻撃性の合計得点が有 意に上昇した。これらの結果は,分析対象者と なった参加者がわずかであったため,頑健な結果 とは言い切れない。しかし,想像力の乏しさが促 進され,攻撃性の合計得点が高まったことについ

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ては,プログラム受講後に定期的に感情学習に関 する課題を設けるなどの対応が必要であることを 示唆するのかもしれない。今後は,出院まで継続 的に感情について学習できる課題について検討す る必要がある。 3つめの課題は,自閉スペクトラム症傾向とア レキシサイミア傾向は,オーバーラップするとい

われているが(Fitzgerald & Bellgrove, 2006; Liss

et al., 2008),本研究では,自閉スペクトラム症 傾向の特徴に顕著な効果がみられなかったことで ある。そのため,今後は,自閉スペクトラム症傾 向とアレキシサイミア傾向の概念の異同について 精査し,関連については再度検討していく。 4つめの課題は,自閉スペクトラム症の診断を 受けていない非行少年を対象としたことにより, 自閉スペクトラム症の診断を受けた非行少年を対 象とした場合とは異なる結果が得られる可能性が あることである。そのため,自閉スペクトラム症 の診断を受けた非行少年にも同様の結果が得られ るのかについて,検討の余地がある。 5つめの課題として,本研究では,感情学習プ ログラムを受講した参加者の効果検証により,プ ログラムの効果について検討してきた。しかし, 少年院では様々な指導や教育が行われているた め,本研究の結果が感情学習プログラムの効果だ けによるものとは言い切れない。実際に,非該当 者においては,プログラム実施後から出院前まで の期間において,自閉スペクトラム症傾向の「社 会的スキル」の得点と「合計得点」,アレキシサ イミア傾向の「感情伝達困難」の得点と「合計得 点」,攻撃性の「短気」の得点が有意に低下した。 そのため,今後は,プログラムを受講した受講者 のPre時とPost時と同時期に取得されたプログ ラムを受講していない非受講者のデータを比較す ることにより,感情学習プログラムの効果につい て検討していく必要がある。 最後に,自閉スペクトラム症傾向の一部の下 位尺度の信頼性係数は,先行研究よりも低い値や 負の値を示した。特に,α=−.13を示した想像 力のプレ得点は,ω係数も.07であった。そのた め,自閉スペクトラム症傾向に感情学習プログラ ムの効果は弱いと考えられるが,効果測定の尺度 も踏まえて再度検討する必要がある。 謝 辞 本論文に際し,北川浩己先生(現所属:宮川医 療少年院,調査時所属:瀬戸少年院),知久潤一 郎先生(瀬戸少年院),田頭千里先生(瀬戸少年 院),宇田正志先生(現所属:茨城農芸学院,調 査時所属:瀬戸少年院)には貴重なご意見を賜り 心より感謝申し上げます。また,調査にご協力い ただきました少年院の皆様に御礼申し上げます。 付 記 本研究の一部は,日本犯罪心理学会第56回大 会において発表された。 引 用 文 献

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Abstract

The purpose of this study was to investigate whether implementing an emotional learning program decreased scores for autistic traits, alexithymia traits, and aggressiveness in juvenile delinquents. Fur-thermore, in this study, we examined whether the effect of the program would continue until the time of leaving the juvenile school. The participants were 80 juvenile delinquent boys who attended the emotional learning program, of which 42 leaved the juvenile school. Their autistic traits were measured using the Autism-Spectrum Quotient, alexithymia traits were determined using the Alexithymia Scale for Ado-lescence, and aggressiveness was measured using the Buss-Perry Aggression Questionnaire. As a result of analysis, juvenile delinquent boys with autistic and alexithymia traits showed a significant decrease in difficulty describing feelings related to alexithymia and anger related to aggressiveness. Additionally, juvenile delinquent boys with autistic traits showed a significant decrease in social skill related to autism. Furthermore, juvenile delinquent boys with alexithymia traits showed a significant decrease in total scores for alexithymia, and total scores for aggressiveness. In addition, juvenile delinquent boys with no traits showed all traits were no significant. On the other hand, as a result of investigating whether the effect of the emotional learning program would continue until the time of leaving the juvenile school, all features that were reduced by the program remained reduced. Therefore, the emotional learning program is that brings a certain educational effect to delinquent boys with autistic traits and alexithymia traits.

Key words

: emotional learning program, autistic traits, alexithymia traits, aggressiveness, juvenile

delin-quents

Table 4 受講者の各尺度のプレ得点とポスト得点の比較 両傾向者(N=7)自閉スペクトラム症傾向者(N=13)アレキシサイミア傾向者(N=10)非該当者(N=50) Pre(SD)Post(SD)tp効果量 (Δ)Pre(SD)Post(SD)tp効果量(Δ)Pre(SD)Post(SD)tp効果量(Δ)Pre(SD)Post(SD)tp効果量(Δ) 自閉スペクトラム症傾向 社会的スキル5.57(1.72)6.14(1.68)2.83.0300.336.15(1.28)5.15(1.52)2.45.03
Table 5 受講者の各尺度のポスト得点と出院前の得点との比較 両傾向者(N=3)自閉スペクトラム症傾向者(N=6)アレキシサイミア傾向者(N=6)非該当者(N=27) Post(SD)出院前(SD)tp効果量 (Δ)Post(SD)出院前(SD)tp効果量(Δ)Post(SD)出院前(SD)tp効果量(Δ)Post(SD)出院前(SD)tp効果量(Δ) 自閉スペクトラム症傾向 社会的スキル7.00(1.00)6.67(1.15)1.00.4230.335.17(1.84)5.50(2.26)0.36.7

参照

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