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給与所得課税の動向と問題点

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Academic year: 2022

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(1)139. 給与所得課税の動向と問題点. 横 I. は. じ. め. 田. 信. 武. に. 1980年代におけるわが国の財政政策の最夫の課題は,財政再建であろう。国 の予算の約1/3もが長期間,国廣によって賄われ,その累積額が百兆円にも達. しようとしている現在,財政赤字の削減がしきりと主張されている。Lかし, 赤字削減という間題を第一義的に考えてしまうと,歳出カットによる公共サー ピスの低下や増税による歳入増カロヘと短絡的につながる虞れがある。しかも 増税なき再建. が事実上困難にたった現状では,いつどのような形で増税を. おこなうかに焦点が移った感がある。しかしながら,財政再建を目的とLた増 税のコソセソサスをえるためには,まず現行の税制の抜本的な見直しが必要で あろう。とくに,所得税制については昭和52年以来,殆んど変更されず,. 1〕そ. の間イソフレに因る名目所得の上昇によって所得税収入の伸びは,年間収入の. それを3倍も上まわった。これは,赤字に悩む財政当局にとってはまさに天の 恵みであったかも知れないが,納税者にとっては重税感をさらに一層高める以 外の何物でもなかった。所得税の申でも,とりわけ給与所得者の税負担は大き. く増加し,昭和56年度には給与所得老の納税老比率は過去最高の91.5%とな り,ω所得税負担率も5.75%と過去17年間の最高となった。給与所得着は他の. 所得者と異なり,節税する手段を持たず,一方的に税を源泉徴収され,実質的 増税の犠牲となっている。.

(2) 140 本論文では,この給与所得課税を分析対象とし,重ず税負担の推移を諜税最 低隈と税率の面から検討する。次に,負担の公正といラ観点から,給与所得課 税が所得の再分配に及ぽす影響を考察する。最後に,52年以来固定されたまま の所得税制の下で,インフレに基づく名目所得の上昇によってどのように税負. 担が増加したのか,そしてインフレによる弊害を如何に除去したら良いのかを 考察する。. 注(1)厳密には,昭和56年に給与所得控除について部分的な改正がなされている。すな. わち,1,000万円を趨える金額については,従来の10%から5%へと控除率が引き 下げられ,増税が行なわれている。しかし,この改正による税蚊増は小さい。 (2〕参考までにあげると,事業所得者と農業所得老の納税者比率はそれぞれ3τ5%と 9.8%であった(昭和55年)。. lI. 課税最低隈の推移. 戦後わが国の租税政策の展開は,まさに所得減税の歴史であった。所得税負 担の大きさは課税最低隈の水準と税率の累進度とに依存するが,わが国の場合, 課税最低限の引き上げを中心に減税が行なわれてきた。. 課税最低隈は基礎控除,配偶老控除,扶養控除および一定の杜会保険料控除 の合計額からなるが,給与所得者についてはこの合計額に給与所得控除を加え た金額が課税最低隈となる。課税最低限はどの所得階層から所得税負担を求め るべきかという限界を画することの他に,低所得層の所得税負担を軽減させ,. また世帯構成に応じた負担を調整するという機能をもっている。しかし,実際 には課税最低隈は最低所得保障というよりも税務執行上のコストを削滅するた めの措置という性格が強いのである。. 第1表は昭和40年から56年までの課税最低限二の水準を独身老,夫婦者,夫婦. 子1人夫婦子2人世帯について示したものである。昭和52年に至るまで毎年 の如く課税最低限は引き上げられているが,昭和52年以降は据え置かれたまま.

(3) 141. 第1表課税展低隈の累年比較(給与所得老). 名. 目. 課. 猿身者. 税. 最. 夫婦者. 低. 限(平年分). 消賭物価指数. (全国総含 夫婦子2人 55年=100). 夫婦子1人. ■ 金額増加率金額増加率金額増加率金額増加率指数増加率 昭和 40. 41. 千円 202. 226. 劣. 千門 −. 11.9. 劣. 千円. %. 千門. 360. −. 425. −. 397. 10.3. 475. 11.8. 491. 553. %. % −. 32,4. 12,6. 34.1. 6.6. 5.1. 42. 281. 24.3. 478. 20.4. 568. 19.6. 660. 19,3. 35.4. 4.0. 43. 321. 14.2. 534. 11.7. 640. 12.7. 741. 12,3. 37,3. 5.3. 44. 334. 4.0. 560. 4.9. 694. 3.9. 587. 45. 347. 4.8. 741. 6.8. 15.0. 46. 405. 16.7. 672. 14.5. 852. 47. 405. 0.0. 672. 0.0. 852. 48. 451. 11.4. 725. 7.9. 49. 778. ア2.5. 2.8. 1.031. 50. 800. 1,073. 51. 800. 52. 831. 3.9. 53. 831. 0.O工・136. 54. 831. 0.0. 55. 831. 0.0. 56. 831. 0.01.073 1・136. 1,13. 1・136. 0.01・136. 8.4. 937. 42.2. 些.1. 1.309. 0.0. 1.418. 1.418. 5.9. 1・569. 0.01・569 0.0. 0.0. 1.569. 1.569. 0.01・569. 0.0. 820 900. 1.037 1.037. 10.0. 1.149. 39.7. 1.707. 8.3. 1.830. 0.0. 1.830. 10.6. 2・015. 0.02・015 0.0. 2.015. 0.02.015. 0,02・015. 10.7. 3913. 5.2. 9,8. 42.3. 7.7. 15,2. 44,9. 6.1. 0,0. 46,9. 4.5. 10,8. 52I4. 48.6. 6512. 11.7 24.5. 7,2. 72,9. 11.8. 0,0. 79,7. 9.3. 86,1. 8.1. 10,1. 0,0 0,0. 0.0. 0.0. 89,4 92,6. 3.8 3.6. 100.0. 8.0. 104,9. 4.9. (注)潔税最低限は給与の収入金額に応じて一定の杜会傑険料が控除されているものとして計算. されているo (出所)犬蔵省『樹政金麟統計月轄』(糧税特集)各年号,総理府統計局『消費者物価猶測. である。わが国のように物価水準が顕著な上昇を示していた場合には,名目課. 税最低隈だけではなく,物価上昇分を除いた実質課税最低隈をも考察する必要. がある。第1図および第2表は名目課税最低限を消費者物価指数(全国総合,. 55年巨100)でデフレートLたものであ乱実質課税最低隈の増加率はかなり 変動している。すなわち,物価上昇率が5%を越えるようになった昭和43年頃 から実質課税最低限の上昇が鈍化し始めるが,昭和46年に名目課税最低隈が前. 年比15%程度上昇したため実質値も8〜10%台の高い上昇率を示した。47年は 前年に年内減税が実施されたために減税が見送られ,そのため実質課税最低隈.

(4) 142. 第1図. 実質課税最低限と実質平均給与の推移(昭和55年価格). 平均給与. 1\. \、^. へJ. ノ. \. !. /、1・∫㌧\ ・■. \夫婦刊人. ノ/ヘノヘ /!. 夫婦子2人. \. ・一... /\ .\ 1㌔\ 1㌔. 夫婦著. 独身者 \\.. /一㌔/\一 /1. 40. 42. 桃. 46. 48. 50. 52. 54. 56年. は低下しれ48,49年は第一次石油危機による犬幅た物価騰貴を経験し,イン フレ下の物価調整減税が実施されたが,48年は名目課税最低限の引き上げ分が. 物価上昇分に足りず,実質課税最低隈の伸びはマイナスになった。しかし,翌. 49年には給与所得控除の拡充を中心として,名目課税最低限が大幅に引き上げ られたので,実質値でも高い増加率を示した。50年においても名目課税最低限 は引き上げられたが,物価上昇率が依然として10%を越える水準であったため,. 実質値ではマイナスの伸びであった。51年ば減税が実施されず,52年に課税最. 低限の引き上げが行なわれたが,実質値では夫婦子1人および夫婦子2人世帯 について僅かな伸びを示すにとどまった。そして,52年以降課税最低隈は据え. 置かれたま童のため,実質課税最低限は低下の一途を辿っている。このように.

(5) 143. 第2表. 昭和 40. 実質課税最低隈の累年比較(絵与所得者55年基準). %. %. %. %. %. 41. 6,4. 4,8. 6,2. 42. 19.8. 16.0. 15.2. 14.9. 8.8. 43. 8.4. 6.1. 6.9. 6.6. 8.1. 44. −1.3. −0.5. 2.9. 5.0. 8.9. −3I5. −2.6. −0.8. 2.0. 7.8. 7.9. 8.3. 8,6. 5.9. −4.3. 一4.3. 9.9. −. −O.8. 8.0. 45. 46. 10.O. 47. −4.3. −4,3. 48. −0,2. 3,4. 49. 38.6. 50. −8.0. 51. −8,5. 52. −3,9. 53. −3.6. 54. −3.5. 55 56 (出所). −74 −47. 1,6. 7,1. 2.9. 0.O. 12.3. 19.4. −6,9. −2,6. −4.1. −86 −20 −36 −35 一74 一47. −g.0. −8,5. 3.1. 2.4. 19 −37 −35 −74 −47. −O.6. 14.5. −3.7 −3,5. −74 −47. −O.3. 2.0 3.5 −2.2. 0.O. 第1表と同じ鉋. 高度成長と急激恋物価上昇とによって多額の自然増収が生みだされ,放置して. おくと所得税負担が自動的に増大するメカニズムが作用したため,いわゆる物 価調整減税が昭和52年まで実施されたのである。しかし. こういった減税の実. 施にあたって財政当局は常に受身であり,所得税制をどのような方向にもって いこうかという理念に基づいて実施されたのではなかった。. 次に,平均給与額に対する割合によって課税最低隈の相対的な変化をみよう。. 第3表は給与所得者4人世帯の平均給与額のうち課税最低限の占める割合を示 している。この比率は昭和42,43年頃には70%を上まわっていたが,その後名. 目課税最低限の引き上げに応じて時折上昇するものの,概して平均所得の上昇.

(6) 144. 第3表課税最低隈の平均給与額に対する比率と納税者比率. \ 昭和 40 41. 42 43. 4人世帯. 課税最低. 給与額. 隈. ㈹. 予円. 758 831 911 999. 似. 1.174. (B). ⑫)/㈹. 比. 千円. 491 553 660 741 820 900. 増加率. 率. 納税老 比 率. 劣. 劣. 66,5. 2.6. 76,1. 72,4. 8.9. 72,2. 74,2. 2.5. 71,9. 69,8. −5.9. 78,7 83,3. %. 77,0. 64,8. 45. 1.367. 65,8. −5.7. 46. 1.507. 1.037. 68,8. 4.6. 47. 1.687. 1.037. 61,5. −10.6. 87,1. 90,7. 82,3. 48. 2,O04. 1.149. 57,3. −6,8. 49. 2.546. 1.707. 67,0. 16.9. 84,7. 50. 2.823. 1.830. 64,8. −3.3. 81,7. 51. 3.119. 1.830. 58,7. −9.4. 87,1. 52. 3.334. 2,O工5. 60,4. 2.9. 86,1. 53. 3.540. 2,Oユ5. 56,9. −5.8. 87,7. 54. 3.784. 2.015. 53,3. −6.3. 89,4. 55. 4,018. 2,Oユ5. 50.1. −6.O. 90.5. (注)1,. 4人世帯給与額は『民閻給与の実態』(国税庁)に基づく扶養家族3人を. 有する給与所得者の絵与額である0 2.課税最低隈は夫婦予2人の場合の計数であるo 3.繍税者比率ぱ一年を通じて勤務した者について計算したo (出所)国税庁『民間給与の実態』およぴ第1表より作成。. に追いつかず,しだいに低下を示L,55年には50%まで下がってい私52年以 降,課税最低隈は据え置かれたままであるからこの比率は今後はますます低下 し,納税者の負担は高まる一方であろう。. 課税最低隈の水準は,また納税者比率に影響を及ぼす。一般的に所得が上昇 すれば,納税者比率は上昇し,課税最低限が引き上げられれば,納税者比率は 低下する。このことは次の回帰式によっても説明されよう。=1] 〃ω=冨133.2836−79.6245一. 亙. (一6.8888)γ. 戸=O.8964. ここで勿伽は給与所得者の納税者比率,E/γは4人世帯の課税最低隈亙をそ.

(7) 145 の給与額γで割ったものである。課税最低隈の据え置きによって所得税のタッ. クス・ネヅトにかかる者が増え,生活保護世帯をわずかに上まわる低所得世帯. でさえ納税者となり,この納税者比率は55年度で90%を越え,課税最低隈の引 き上げがなされない限り上昇する一方である。 注(1)回帰式のバラメータの下の括弧の中はf値を示す。. 皿. 税率の推移. 所得税における税率構造は,累進的な限界税率とその限界税率が適用される. 課税所得の階層区分(所得ブラケット)とによって決定される。この税率構造 は,本来,所得水準や所得の階層別分布の変化に応じて変更されることが望ま しい。というのは所得が増加し,これに伴い所得分布が変化する場合,税率構. 造が不変のままでは税率構造の累進性が強く作用L,納税者の労働意欲に阻害 効果を及ぽす虞れがあるからである。. 戦後わが国の所得税減税では,課税最低限の引き上げが中心的な役割を演じ,. 税率表の改訂はどちらかと言うと脇役であった。昭和40年以降,税率表の改訂 は都合5回行たわれたが,累進税率の変更を含む本格的た改訂が始まったのは, 昭和44年からであった。それ以前の税率表は,所得ブラケットに対して5%亥回. みで税率を累進させる仕組みをとっていたため,負担の累進性は下位の所得層 ほど相対的に強く感じられる繕果になっていた。本来,累進税率の刻み方とし ては,最低税率適用階層から最高税率適用階層まで,所得の隈界負担能力に応 じて,なめらかに税率を高めていく形が望ましい。昭和43年の税制調査会『長. 期答申』は,税率表を従来の一偉5%刻みから,最低税率適用階層から順に2. %,3%,4%,5%の刻みとすることを提案した。ω. この提案は昭和44年度. および45年度の税制改正により実現し,それ以来,税率の刻み方の変更はたい。. 昭和46年度には課税所得1,000万円以下の所得ブラケットについて税率の緩和.

(8) 146. 第4表絵与所得税の実効税率と累進度(一年を通じて勤務した絵与所得老). \\給与纐・総税額・・/γ・τ/ムγ嚢雛所得ジャ1ク係数 昭和年. 百万円. % 2,43. 441.385. 4,40. 1,58. 12,263.772. 510.317. 4,16. 3,08. 0.6998. 0.4930. 14,603.659. 613.492. 4,20. 4,41. 1.0594. 0.5136. 793.950. 4,44. 5,53. 4,47. 4,58. 1.0316. 0.3734. 8,704.041. 41. 10,025.629. 42 43 44. 45. 百万円. % 4,83. 40. 420.449. 17,865.046. 22・787・639. 1,019.559. 0.4659 0.3281. 1.3171. O.4886 0.4857. 0,仏22. 46. 27・991・533. 1・200・927. 4,29. 3,49. 0.8108. 0.3622. 47. 32・858・174. 1,535・773. 4,67. 6,88. 1.5277. 0.3630. 5,31. 7,74. 4,24. 0,95. 48. 49. 41,228.627. 54・435・301. 2,188.362. 2,309.524. 1.6682. 0.3599. 0.1730. 0.2858. O.2154. 0.2957. 50. 61・559・235. 2・244・500. 3.65. 51. 71,124.750. 2,966.312. 4,17. 7,54. 2.0695. 0.2832. 52. 76,547.213. 3,138.591. 4,10. 3,28. 0.7625. 0.2961. 53. 83,554・603. 3,747.026. 4,48. 8,68. 54. 90,777.058. 4,492.770. 4.95. 10,33. 5,34. 9,99. 55. 98,359.057. 5,249,972. −O.98. −. 2.1191 2.3032 2.0180. 0.2901. 0.2990. 0.2975. (出厨)国税庁『民間総与の実態』. が図られ,さらに49年度の税制改正において,物価調整を目的として所得ブラ. ケットが一葎に拡大され,累進度がやや弱められた。Lかし,昭和50年以降, 税率表の改訂は全く行なわれず,物価上昇による名目所得の増加によってより 高い限界税率が適用され,実質的な税負担の増加が生じている。. 第4表は給与所得税の実効税率とジャック係数による累進度の捷移を示して いる。1到税率表の大幅た改訂が行なわれた昭和44,45,49年にはジャック係数. が顕著な低下を示している。この累進度の低下の様子は,第2図によっても確 かめられる。なお,給与所得に対する平均実効税率は,税率表の改訓こよるよ りも,課税最低限の引き上げに。よって大きな影響を受けている。これは,後者. が所得税減税の中心であり,後老による減税額が前者のそれを大きく上まわっ ていたからである。.

(9) 147. 第2図給与所得税負担の累進度 100%. /慧. 鷲㈱…ソ脇1 ∴/年孟 ・ン/ 、.、・ニシ/. . o%. /. 0% 給与累積百分比. 100%. 税収の所得弾力性が,53年以降,2を越えており,急遠に上昇している。税 収の所得弾力性ηTは,ηド(ムT/τ)÷(・η「)…(△T/△γ)x(ηT)であら. わされるから,限界実効税率(・η△ア)と平均実効税率(T/γ)の逆数との. 積でもある。平均実効税率は徐々に上昇Lているものの急激た変化はみられな い。ところが限界実効税率は,近年犬幅な上昇を示し,これが税紋の弾力性を. 高めた原因である。税制が固定されたままのため,累進棲造によって所得の伸 びを上まわる税収の伸びが実毘されたのである。ただ,限界実効税率は上昇し. ているが,ジャック係数はそれほど変化していない。これは低所得層が名目所 得の増加等により,新たにタヅクス・ネヅトにとらえられ,累進度を弱めるよ うに作用する一方,高所得層ば所得増加のため累進度を高めるように作用し,. これら両方の効果カ湘殺Lて,全体的な累進度はあまり変化Lないが,隈界実 効税率は上昇Lていると考えられる。 注(1)税制調査会『鴻牢長期答車』PP・12−17・.

(10) 148. (2)ジャヅク係数は,縦軸に税額累積比を横軸に所得累積比をとった場合に描かれる. ローレソツ曲線についてジニ係数を計算Lたものであ飢(第2図参照). lV. 所得分配に及ぼす影響. 給与所得税が所得分配に及ぼす影響を考察する前に,まず昭和40年以降の給 与所得分布の推移から考察しよう。. 給与所得分布のジニ係数およびアトキンソン係数(〜呂O.1)の値は,昭和50. 年頃まで低下傾向を示したが,昭和52年頃より上昇しはじめ,近年不平等化へ. と逆行している(第5表参照)。アトキソソン係数のパラメータ. は,杜会厚. 生を考える場合,低所得階層に付ける限界的ウエイトの大きさを意味するが,ω. ∈=10のアトキンソン係数の値は,E=O.1のそれやジニ係数の値とはやや異 なった動きをしている。(以後,簡略化のためξ呈0.1とε=10の場合のアト. キンソソ係数をそれぞれλE=O.1とλE=10と表わす。)ん=10は昭和40年. から仏年までは4. ;0.1やジニ係数とは反対方向に変化していたが,45年以. 降は同一方向に変化L,不平等度を弱めていた。ところが56年(これはλε=. O.1やジニ係数よりも1年早い)からλε:10の値が上昇しはじめ,不平等化 が進行している。. 次に,給与所得から所得税額を差し引いた可処分所得の分布についてみると,. 三つの不平等係数とも基本的には給与所得分布のそれと極めて似通った動きを 示している。しかし,給与所得分布の不平等係数と可処分所得のそれとの差に は,時問的にかたりのバラツキがみられる。. いま,所得税が給与所得分布に及ぽした影響を考察するために再分配比率R を計算してみよう。Rを次のように定義する。. 11. 灰=1一一 1o ここで,1。は課税前の所得分布の不平等度係数,五は課税後の所得分布の不.

(11) 149. H菖oo葛.o. oooト山㊤o︐0. oooooooo.o. Hoo昌8.o. §害トo.0. ⑩o8s.o. o0N寸o︐o. ①山ooo.o. 吋o寸o.o. ㎝寸一〇〇〇H.O. トooooso.o. 寸oo0Ns.o. 墨oo冨o︐o. 一富冨o.o. oo竃oo①山.o. 冒富O㊤.O. 一Hoo寸oo岨.o. 畠竃Φ山.〇. H000oo.0. トOOOOO.O. 卜寸寸oooo.o. 山O山HO山.O. oooo震ooo.o. トト菖s︑〇. トトss.o ①山0NN0.o. 寸等oo寸岨.o. N0oHoooo.o. 竃ト8o.0. 山o§窒.0. 畠詰竃.o. ①トoo寸N0o.o. ooo寸o0N0o.o. H曽OOOト.O. 寸Φ寸o竃.0. 竃トoo豊.o. 寸⑩O①Oト.O. 富NooΦo.o. 山一〇⁝⁝山ト.O. 雪ト等ト.O. NN0ooo①め.o. ooト3寸㊤.o. ooき霜山.o. N0ooo.o. 山曽ooooo.0. NSO.O. ooosN山.o. o§go.o. トo豊N0.o H0oト爵一.o oo等o.o. 蟹ooo0No.o. oo竃N0.o ooooト雪一.o. oo詰o.0. o0N0oos.o. OO専O.O. OH寸O.O. OS菖一︑O. oo尋ト含.o. 専寸ヨo.o ω寸OOΦOO.O. Φ畠o.o トoo岨o.o. Φ實寸o〇一.o oooooooo〇一.o. ㎝Hωo.o. 等88.o OO①OOHO.〇 O㎝⑩寸O〇一IO. トoo岨N00︐o. 一〇〇〇〇〇〇〇〇.o. ○旨2oo.o oo畠oooト.o. 0N岨o.o. NN寸旧HO.^︺. ○ト等g.o. 竃o雪o.o. o〇一〇〇ミo.o. ooooo寸8.o. ︒掻造^判 ﹃濃鍬Q冷護竈慮﹄止嵩歴. ︵医畠︶. oo岨. 寸的. mω. 竈ooo.o. 曽Hoo︐o. oo雪oo.o. N①①N.O. 寸OOOOO.O. ㊤山①N.〇. sN曽o.o ○岨ト彗o.o. ①寸. ○山. 畠. ㎝ω. Φoooo.o. ミ. oo寸. 豊Hoo.0. 寸寸. 山寸. ㊤寸. oooooo︐o. H寸. N寸. oo寸. 寸ooooo︐o. oo畠oo.o. 8Hoo.o. 寸雪oo.o. ooooHoo.o. 冒畠.o. ①o畠.o. 曽ooo.o. oo㎝ooo︐o. Φ雪⑩一〇.o. 曽Φ㎝.o. 一sN.o ㊤ooo雪o.o. トoo竃8.o. 寸山①N.o. ooH蟹.o. 血2雪o.o. 雪竃昌.O. トトΦN.o. トoト曽o︐o. ㊦①OOト一〇.O. 豊oo曽o.o. 寸Φ一山一〇.O. ムト. 熱. 選. 件§浸震. 岨o〇一〇〇︐o. ○尋oo.o. 山oo鶉.o. 塚s.o. ①0N0o.◎. 霊Hoo.o. oooooo.o. o0N0oo︐o. oooo雷.o. 山O岨ト一〇.O. 等o〇一s.o. oooo8s.◎. 一〇〇8き.o. 菖ト20.〇. oo§oo昌.o. ㊦①ト曽◎.o. 雪ト曽O.O. ○ミ雪o.o soo雪o.o. 轟卜雪o.o 霧Φ雪◎︑o 竃⑤彗o.o. 等8き.0. 薯Noo8.o. 8き8.o. H. 熱選︑. \ll. へ 睡崖余黒岸 睡崖ヰ窪 睡俸余黒ぼ 睡忘坤喪 寧佳魚黒向 畦儘ヰ鍍. ト竃o.o. 熱睦. ムト. へ. ◎一1−. 熱墜\︑\. キ}. 静垣窟余陣刈得余寧忘ヰ襲鏑蜆銀. 、6. ooo詰o〇一.o. 余. 〕. 舟. ト、}. oo山oo昌.o. 窟. 陣. 、一 舟6 工\ll. 0N00000.o. ︷. ト、. 寒①oo◎o.o. 齢. ○ 舟H 工\ll.

(12) 150. 第3図. 再分配比率の推移. 0.15. ・・1・\_/\ア、キンソン徽. 。.。島 0,07. ノ. ア1キ川. \/!. 。,、。. アトキンソン係数…=10. 0,06. 0−OOO. \㌔1㌔. :1竃. ノふ/\. 0. /. \/. o.03. 40414243444546474島49505152535455年. 平等度係数を示す。第3図からわかるように,ジニ係数とん=O.1とによる 再分配比率は,極めて相関が高いが(7=O.9938),λε=10の再分配比率は前. 二老とは対照的な動きをみせている。ジニ係数やん…O.1の再分配比率は, 昭和40年以降,若干の変動はあるものの昭和50年童で低下傾向を示していたが,. 51年からは」=昇傾向に転じている。これに対して,瓜=10の場合,再分配比 率は昭和40年以降,49年まで上昇煩向を示し,昭和50年からは逆になだらかな. 下降をみせている。ジニ係数やル茗0,1の再分配比率は昭和45,46年次どの 大幅な所得税減税が行なわれた年には低下しており,税率の変更,課税最低限 の引き上げによって税制の再分配機能が弱まったと考えられる。. ジニ係数とん=0.1の再分配比率1〜について,ジャック係数1,名目課税 最低隈(夫婦子2人)亙,平均実効税率まを説明変数として回帰式をあてはめ てみると,次のようになる。 <ジニ係数〉. 1〜=一1.46856+0.068011−O.003351≡:十〇.83880f (8.5000). (一2.8865). (14.1293).

(13) 151 テ=0.9927. D−W比=1.5525. くノk=O.1〉. R=一3.66543+0.20341−1 (13.9980). 一0.O0051亙十1.79454チ. (一2.4374). テ=O.9963. (16.0450). 1)一W比=2.0904. 各バラメータにそれぞれの説明変数の平均値を掛けて寄与率を計算すると,次 表のようになる。三つの説明変数の中で,平均実効税率のパラメータ符号はプ 説明変数. 1. κ. ジニ係数. 一34. 58. λ∈=O.1. 一33. 67. 且. %. %. 合計. サ. 定数項. 再分配比率. 一10. 86. 一6. 72. %. 100. 彩. 100. ラスであり,寄与率も最も高く,平均実効税率の上昇とともに再分配比率が上. 昇している。また,税率構造の累進性を示すジャック係数はプラスの符号をも. ち,やはり寄与率も高い。Lかし,わが国の所得税減税の中心的役割を果して きた課税最低隈については,寄与率は比較的低いが符号がマイナスであり,負 の再分配効果を及ぼしていたと考えられる。. ん≡10の再分配比率について,同じ回帰式をあてはめた結果は, 1三=2.79978−0.055321+O,00298E+0.12194τ (一1.6790). タ=α8盟5. (0.6240). (0.4988). 1)一W比=1.4884. となり,重相関係数も低く,Eとまのま値は有意水準に達していない。第3図. からも明らかなように,A≡10の場合は上述の説明変数以外の要困によって も影響を受けていると考えられる。累進度を示す∫のバラメータがマイナスの 符号をもっていることから,低所得層に大きな厚生上のウエイトをおいた場合,. 累進度が上昇しても再分配比率は向上しない。亙の符号はプラスであり,とく.

(14) 152 に46年,48年,49年など課税最低限の引き上げを中心とする大幅な所得税減税. が行なおれた年には,再分配比率が大幅に上昇Lていることから,ジニ係数や λξ≡O.1の場合とは反対に,課税最低隈の引き上げが低所得層に有利な再分配 効果をもたらしていると考えられる。 注(1)Atkinson(1970)を参照。. V. 物価上昇による影響. 所得が増加すれば,それに伴い所得税負担も増加する。所得の増加が実質的 な担税力の上昇に結びついていれば間題はないが,インフレの進行が急激な場 合,担税力の増加をともたわずに名目所得の増加により税負担のみが増加する 虞れがある。. わが国の場合,所得税収入の所得弾力性は1を上まわることが多く,高度成 長遇程においては多額の自然増収を生みだし,そのため夫幅な減税が可能であ った。ところが,近年のように実質経済成長が鈍化している状況においても,. イン7レに基因する名目所得の増加によって多額の自然増収が生じてい私し かも昭和52年以来,税制が圃定されたままのため給与所得税収入の所得弾力性 は2を上まわる水準にある(第4表参照)。. わが国の場合,インフレが進行Lているといっても,これまでのところ,所 得は賃上げ要求などにより,少なくとも物価上昇分を相殺する,すなわち実質. 所得を従来の水準に維持する程度には増加する傾向があった。しかし,実質所 得が一定水準に保たれたとしても,所得税制が不変である隈り,納税者はより. 重い負担を強いられ,可処分所得は滅少するのである。その場合の所得税負担. の増加は,次の二つの要因に基づいている。第1の要因は,課税最低隈の水準 が名目値で表示されていることである。もし課税最低限が物価上昇にもかかわ らず,固定されたままであるならば,イソフレによる名目所得の増加分は全て.

(15) 153 課税所得に含まれてしまう。また,これまで非納税者であった者が,新たにタ. ックス・ネヅトに把えられることになる。第2の要困は,税率表の適用区分で ある所得ブラケットが名目値で定められていることである。ω物価上昇による. 課税所得の増加は,納税者をより高い限界税率が適用される所得プラケットヘ と押し上げ(ブラケヅト・クリープ),その結果税負担は増加し,累進課税が. 実質的に強化される。②以上の二つの要因によって,インフレに基づく名目所 得の増加は,より重い税負担を納税老に課すことになる。㈲. 実際に,わが国の所得税制において,物価上昇により税負担がどのように増 加するかを明らかにするため,一つの例を示そう。昭和52年から57年の間に消. 費者物価指数は1.2倍ほど上昇しており,いま物価が20%上昇し,名目個人所. 得も同率だけ上昇したと仮定して,夫婦子2人世帯の税負担がどれだけ増加し たかを第6表に示した。なお,収入金額から課税所得を算出する際,給与所得 控除と人的控除(基礎,配偶者,扶養の諸控除)を差し引いただげで,杜会保. 険料を考慮に入九ていないため通常の課税最低隈よりも低く,したがって,税 額はやや多くなっている。本論では,議論を所得税(国税)に限っているため,. 住民税(都道府県民税と市町村民税)は考慮に入れていないが,住民税,とり. わげ市町村民税は2〜1脇累進税率構造をもっているため,物価上昇がもたら す影響には無視できないものがある。. 20劣の物価上昇による税額の絶対的増加は,適用される隈界税率の高い上位 所得層ほど大きい。しかし,税額の増加率や実効税率の増加率でみると,下位 所得層ほど高く,相対的に税負担が高まっていることが判かる。とくに,課税. 最低限付近の所得者が物価上昇によって受ける影響は大きく,税制の所得再分 配機能という観点からは重大な間題である。 注(1)給与所得控除についても.蚊入金額からの控除率の適用区分が名目値で定められ ているo. (2)単純化のため物緬上昇率と名目所得の増カロ率とが同一であるとし,名目所得をZ.

(16) 1弘. 岨.曽. o10N N.o0N. oo.NN. N.㎝㎝. ○崇■転竈︺. o.尋. oo.寸寸. oo.oo寸. 岨.等. o︑.o寸. 山.0N. Φ.寸N. 00N.N寸o・N. oo寸.ト︸o.N. oo寸.Φト寸︒寸. 〇〇〇︒OOO・㎝H. 〇〇〇. OO寸.寸一. OOO.OOO.O〇一. ooo・ooo・山H. ︵一〜︶. ooo.ooo.NH. ︷血蝿嵩. oooo.帽ooH・oo. OOO.OOO.OH. .. N.富. o◎N︒㎝寸o︑百o. OOO.OOO︒①. 正酢︸嚢濫⁝. o.トH. oo⁝⁝.〇一一.一. oo.o〇一. ooo︒トトo−︒H. ■匪掴⁝如跨嵩割⁝暖邊 ︹︵抵到黎嵩十患灘撫匝︸橿十鐘頚嵩鞠︶1鎧剰ゆ︸瞳卦窪−回欄娼くき︺. 0.旨. ooo.ooo.oo. 〇〇.s. 〇〇㌣きoo. OOO.OOOO.OH. ①. 000・卜N0︒一. ooo.ooo. 〇〇〇. ①ON.H. H.雪. ooo.ooo−ト. oo.〇一. oo㌣一8 OOO^OO寸︒OO. ooo・ooo・o. H.岩. 8. oo①6寺. OOO・OOO︒山. O.ON. 0.o0N. oooo. ト.ト. ooてsoo. ω.自. OOO︐OON︒ト. N.o. OOO. N.o〇一. O. oo寸6萬. ooo.ooo・寸. N.oo寸. o.oo寸. 00㌣寸8. OOO.OOO. ω.ω. ooΦ6o〇一. N.寸N. ト.o0N. ト.⑦. oo?竃寸. ooo.oo寸.岨. ト.寸. oo.o. 〇〇〇〇6o〇一. ooo.ooo.oo. ooo.oo山. oつ ト.oo. 〇〇〇〇一轟. 000.ooo.㎝. ooo.ooω︒N. oo.N. 0o.一. 山.o. ooo6. oo〇一専. 〇〇.①. ト.ト. ooo〇一亀oo. OOO.OOOO︒寸. o.山. ooo・ooo︒⁝⁝. ooo︐ooo.oo. ooo60Nooo.o0N.寸 000〇一一菖. ◎oooぺo0. OOO.OO寸︒N. OO山・寸. ooo〇一轟㎝. oo.①寸. ①.帥. o.山. o.㎝山. 岨.岨㎝. 一.零. oo.一ト. oo.①山. N.o竈o〇. oo. 肛. oo.亀. 8o. ⁝欄o漆. 田. o.竃. ω︑一. 渓. oo.N. 臣. 一︐H畠. 欝員. 『. ︵転章くN中聾伴︶ 敏 唖↑恢占寓︺占剰楓嵩〃倶味い﹁垣︑暴. U凸欧一﹁目阜暴. 饗竪轟灼↓. 畿. O.OO㎝. 蒋員響Q翰. 義.

(17) 155 物価水準を只理税関数をT=1(γ)とすると,案質租税負担〃=ま(r)/Pの 物価上昇に関する弾力性は ∂Tπ. 一一・ ∂P. P. ま1(r). 一_ 工(γ). 一1 必(γ). 一. ま(γ). で表わされる。但し,μ(γ)筥6γ,f(γ)=了■である。 累進税率構造では,一般的に隈界実効税率ま1(γ)が平均実効税率ま(γ)よりも高. いから,上述の弾力性はプラスの値をとる。すなわち,物価上昇により実質税負担 は増加する。. (3)この他に,納税のタイム・ラグの問題がある。所得の発生から納税までの期間が 長い場合,この間におげるイソフレの進行によって,租税債務の実質価値の切り下. げという効果が生じ乱この衝では申告納税老の方が源泉徴収される給与所得者よ. り有利であるといえようo. w. 物価調整減税. 物価上昇による所得税負担の増加は,隠れた増税であり,また政府が意図し ない形での不公正な所得再分配を引き起こす可能性がある。このようなインフ レによる所得課税の歪みを是正するために,物価調整減税措置が考え出されて いる。. 物価調整減税の方法には,自動的な調整方式と裁量的な調整方式とがあ飢 後者は,これまでわが国が採用してきた方式であり,政策当局が物価水準の変 化や一般経済動向を観察し,自由裁量的な判断に基づいて減税を行なうもので ある。しかし,この方式ではイニ■フレによる税負担の増加を正確に調整するこ. とが困難なうえに,景気状況あるいは財政状況により実施されないこともあり うる。. 自動調整方式は,しぱしばインデクセーションと呼ばれる。これは,消費考 物価指数のような物価水準の指標(インデックス)を選び,その水準に租税の 主要なパラメータ(課税標準,課税最低限,税率表の所得ブラケットなど)を リンクさせ,税制の中にイソフレに対する自動的調整方法をピルトインしてお.

(18) 156 く方式である。しかしながらこのインデクセーショソによる物価調整滅税には, 次のような間題点がある。(1)インデクセーションぽ,所得税のビルトイ1■・ス. タビライザーとしての機能を弱める。(2)イソデクセーションに用いる指数にタ. イム・ラグが入るのを避げられず,適切な価格指数を選び出すのが容易ではな い。本来ば,納税老の支出内容に適合した価格指数が選ばれるべきであろう。 また,{劃インデクセーションの良否は,その時々の環境条件に依存するところ. が大きい。例えは,民間需要の抑制が必要なティマソト・プル型のイソフレの. 下ではインデクセーショソによって税収の伸びが低下することは好ましくない であろう。しかし,スタグフレーションの場合は,インデクセーションが有効 かも知れない。ω国民が杜会保障支出(あるいは防衛費)などの公共サービスの. 増大を求め,0NPに占める政府支出の相対的増カロや,あるいは国債残高を滅 らし,財政バラソスの回復等を図ることを認める傾向があるならば,インデク. セーションの必要性は弱まるであろう。この場合,政府当局はせいぜい一時的 な裁量措置によって物価上昇がもたらす分配上の不公正を是正するにとどめよ うとするであろう。. 次に,具体的な物価調整減税の方法としては以下のものが挙げられよう。 (1)人的控除やその他種々の定額形式の控除を物価にスライドさせる。. (2)累進税率が適用される所得ブラケヅトの幅を物価にスライドさせ拡大する。. (3)所得税の税率を比例的に引き下げる。この方法では,平均税率の上昇を食 い止めることはできるが,インフレに基困する名目所得増カ纈によって新た. にタックス・ネットに把えられた低所得層を救済することはできない。 (4)イソフレによる所得増加を課税所得から控除す飢例えぼ,前年の所得額. に当年の物価上昇率を乗じた分だけ,インフレ控除として認める。 (5)基準年に当該年の課税所得をデフレートする方法。すなわち,まず基準年. の物価水準を用いて課税所得と税負担額を算定し,それをまた物価指数を 用いて,当該年の経常価格表示の税負担額に改めるのである。この方法は.

(19) ト.oo. 山.o0. N.oつ. oo.N. 寸.N. N.N. 0︐㎝. 岨.一. 〇〇.一. N.H. 寸.H. ㊤.一. ト.一. ⑩.一. 寸.H. 寸.一. 岨.H. 一.一. 一.H. 一︺.H. 一︑H. H.H. ⑩.O. ト.o. ト.o. oo.o. ト.o. oo.o. oo.o. oo.◎. oo.o. ト.o. oo.o. o.o. H.H. oo.一. o︑一. Φ.◎. o∋.o. o︐H. 〇.一. H.曽. oo.0N. ⑩.o0N. 一.㎝㎝. o.ω. 寸.oo. N.■ N.一H. 寸︑N. 寸.oo. 山.寸. 一.山. N.冒 o.ミ. OO.OOH. 8︑詩oo.oo. ○葛6等 oo寸㎡8一 〇〇⁝⁝︒㎝OOOO^一. 山.o0N. Φ.o〇一. 〇〇1雪. 血.o〇一. oooo6o0N. o⑩︑2︐N 0詩.竃o〇一 富︑oo等︑一. oo.萬. oo︑實. oo.雪. oooo.soo. oo㌣一. 〇〇〇.一. 〇〇︑一. 08︑寸塞.H. 〇〇①. 8①︑専oo︐N. ○鶉︑oo詰一H. 8㌣8H一. や. \. ﹄・. 竈︑一冒. ①︑H. H.帥. ooo〇一竃. o8一筥H. ○山N. oo㈹. ﹃除. 味■蔓寒. く婁Q渥. 竪娼. 00N. ooo〇一爵. 懸. 臣. OOOO㎡H. 3. 如螂臭■\>ふへ氷 ︑ヤ如呼Q盤劃雷く. 嵩. o.o. 肛. 曝溝 如蕪裂. 縮−齪. 齢茜壕蝋. ◎oo〇一〇一. ooo. ooト. oooo. 山.s. 〇〇〇〇一〇㊦. OO.寸H. 8ト6o〇一一. ト.〇一. ○嘗一竈㊤. ooω. 〇s.冒〇一. 〇s一ミoo. ①.oo. oo︑一尋. ○山寸. oo.s. 一.oH. oooo〇一〇〇竈. ①.㊤. ○ぎ一8oo. OO寸. o.一H. N︐oo. ○萬一塞oo. o︑⑩. ooo〇一ト詩. Φ.冨. OOOO〇一H竃. ⑩.o. ooo〇一〇一〇〇. ㎝.血. oωoo. 〇〇.自. ト.ト. ooo寸.§oo. ト.ω. 〇〇〇︑ooo0N. os6曽. 齢嵩壕鍬. 岨.o. 0o.一. 的.N. 匡. 竪. 溝. ○富一〇一. ooo〇一轟. ○篶一塞. 〇S一HOOト. N.o. ooooお8. ①.寸. N.吋. oo.〇一. ト.oo. 岨.岨. 08㎡§. 08一〇〇讐. oo.o. 〇.曽. ト.HH. ト.寸. ①.oo. ①.o. ①.山N. 一.嘗. oo.s. o86雪. ト.o〇一. 山.軸N. ㊤.ooH. o.雪. ト.oo. 寸.o0N. 寸.寸N. H.§. 寸.o〇一. 山.o. 0o.H. oo.N. 〇〇.①. N.き 岨.ト㎝. 〇.⑩N. 寸︑oo守. H.oo彗. へ. ㎝.oooo. oo.o山. ト.N寸. oo.o岨. Φ.N寸N. 籟o.蜆oo. ㊤.§N. 負一︶. ふ. ︵N︶. 靹. J\\ふへ恥\︑如 鑑劉誰忘ヰ襲・星く. ︑. ︵︒︒︶. Q. 如郵裂■︑\ふへ 恥︑︑如屯凶齢溝刈 誰劃睡陰ヰ襲・轟く. KIふ KI尽 KIふ K!尽 齢鶴壕鍬. o.H. ぺ笥. 負醐︶. 史■紬\︑ふへ恥\ヤ. 欝員 響竪. 皇肺︶. Q3. 糊Q静嵩鳶鍬 勲融Q如鄭・. 熱誰. 恥. 157.

(20) 158 計算が複雑すぎるという欠点をもつ。. 以上,理論的には五つの方法が考えられるが,戦後わが国で物価溺整減税と して実施されてきた方法は,自動調整方式ではない自由裁量方式による(1)のや. り方が申心であった。人的控除の引き上げによる滅税が,昭和52年まで毎年の ように行なわれてきたのである。また,(2)の方式に含まれる給与所得控除につ. いても毎年のように控除率やその適用区分の引き上げが行なわれ,この人的控. 除と給与所得控除とを合計した課税最低隈の引き上げという形で物価調整減税 が実施された。しかし,課税最低隈を引き上げ,実質タームで同一に維持する. だけでは,物価調整は不完全である。実質税負担を物価上昇前と同一水準に維 持するためには,累進税率が適用される所得ブラケットを物価にスライドさせ て拡大しなければなら恋い。つまり,(1)と(2)の方式を組み合せて実施すること が必要となる。ω. 第7表は第6表の例について,(1)人的控除をイソデクシングした場合,(2)人. 的控除と給与所得控除の両方をイソデクシングした場合,(3)さらに,その上に. 税率表の所得ブラケットをもインデクシングした場合の三つのケースを示して ある。(ユ)から(3)のケースに移るにつれて,明瞭に実効税率は低下している。ど. のケースについても,インデクシングをしたいときの税額の増加率は,低所得 層ほど高く,物価上昇が低所得層に及ぼす影響は大きい。実効税率についても 低所得層に与える影響は人的控除をイソデクシソグしないときが最も大きい。. しかし給与所得控除の控除率適用区分や累進税率適用の所得ブラケットをイン. デクシングしないとき,その負の影響は上位所得層ほど大きくなっている。と くに,累進税率適用の所得ブラケットを物価にスライドさせて拡犬したい場合, 上位所得層におげる実効税率の上昇は大きい。. 前述のように,昭和52年以降,わが国の所得税制は給与所得控除が一部改正. された以外には固定されたままで,物価調整減税が行なわれておらず,第7表 の例が示すように物価上昇による犬幅な負担増が生じている。121.

(21) 159 注(ユ)宇囲川壕仁(1974)を参鰯。モデルを使って具体的に示している。. (2)本論では分析を所弩税に隈定しているため考察していないが,往民税とくに市町. 村民税について. も物価上昇の影響を考える必要があ飢市町村民税の標準税率表は. 55年に改正され,物価上昇にもかかわらず,累進税率の適用される所得ブラケット が狭められ,増税されている宙. V皿. む. す. び. 本論では,まず給与所得課税について,昭和40年以降の課税最低隈と税率の 推移を考察し,ついで給与所得課税が所得の再分配に如何なる影響を及ぽして いるのか,また近年の物価上昇によってどのような影響を納税者は被っている のかという二つの視点から分析した。. 昭和52年以来,所得税制は殆んど変更されていないため,物価上昇により実 質税負担は増加し,所得再分配機能にも障害が生じている。とくに,低・中所 得層に対する税負担は相対的に増カロしており,早急に何らかの救済措置をとる. 必要があろう。しかし,物価調整減税といっても,自動調整的なインデクセー ショソを導入することは,まだ時期尚早と思われる。その理由は,物価上昇と. いっても2ケタ台の上昇率ではなく,比較的安定しているため,毎年の如く調 整する必要はなく,また財政赤字を抱えている現状では,毎年減税することは 実際上,不可能であろう。. しかL,20%以上の物価上昇のもとで5年問減税なしでは,所得税制に歪み が生じるのが当然であり,少友くとも数ケ年に一度は自由裁量的た調整措置が 必要である。具体的な措置としては,高所得層に有利となる税率表の改訂より も課税最低隈の引き上げが望ましい。給与所得者については,給与所得控除の. 引き上げが望まれる。給与所得者は他g所得者に比較して相対的に不利な立場 におかれており,負担の公平という観点からも是正が必要であろう。所得控除 は高い隈界税率の適用される高所得層ほど有利に作用するという佳質をもつた め,税額控除の形に改めた方が良いかも知れない。しかし,給与所得に関して.

(22) 160 は他の所得よりも高所得者は少ないので,それ程大きな違いはないと思われ乱 最後に,給与所得課税との関違で,所得税制全般について若干触れておこう。. 給与所得老に対する減税の必要性は述べたが,所得税制そのものについても大 幅な見直しが必要であろう。まず,負担の公平という観点からは他の所得に対 する捕捉率を高め,各種控除を見直し,包括的な課税べ一スを確立する必要が ある。また,これまでの物価調整減税によって,所得税の累進性が弱められて. いるが,この他廷も利子配当所得の特別減税や土地譲渡所得の軽課といった政. 策滅税によって所得税全体の累進性はかなり弱められている。これらの政策減 税が,所得再分配に及ぽす負の効果は無視できないものがある。いずれにして も,財政再建のための増税を論議する前に,所得税制の抜本的た再検討と改革. が必要とされよう。. (1982年10月). 参考文献 Aaron,H・J・,(ed・)1幼α〃o椛伽∂肋2∫閉ω刎2. τ伽,The. Brookings. Institution,. 1976.. Atkins㎝,んB。,. On. the. Measurement. of. Inequality,. 力〃舳〜ゲ五ω粥o〃c. τ伽oη,VoI.2.1970.. Mishan且J.and Ecommy,. L. A.Dicks−Mireaux,. Pro餌essive. Taxation. in. an. I舶ationary. 五舳7{ω物Eω閉o〃6灰召砂ξ刎,Sept.,195&. Morga皿,Da切d. R.,0〃脈肋刎肋勉妙1幼α肋捌,The. Institute. of. Economic. A旺airs,. 1977.. 0ECD,τ肋λ勿洲. 刎舳まψ月〃∫o刎11肌o刎召τ伽8ヅ∫ま2刎sカク1切. κo〃,1976.. Tanzi,Vito,1切ακo〃〃6肋θ乃7∫o刎11〃ω〃召丁伽jλ〃1励〃物肋挽α1乃7功20肋2. Cambτidge. U.R,1980。. 石. 弘光『租税政策の効果』棄洋経済新報杜,1979年.. 石. 弘光「課税所得糖捉率の業種間格差」『季刊現代経済』42号,SP血g1981.. 字田川壕仁「経済成長と所得税負担」字田川璋仁・古田精司薯『税制と租税負担』東洋 経済新報杜,1974.. 大蔵省『財政金融統計月報』程税特集,各年.. 税制調査会『長期税制のあり方についての答申及びその審議の内容と経遇の説明』1968. 年7月1.

(23) 161. 林文彦監修『税金のカルテ』ナツメ杜,1981年. 藤田. 晴『日本財政論』動草蕃房,1972年..

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参照

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