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TOP > 予防・検診 > がん検診について

がん検診について

更新日:2008年03月21日 掲載日:2006年10月01日  1.はじめに   2.がん検診の考え方   3.わが国におけるがん検診   4.がん検診アセスメン ト;基本編   5.がん検診アセスメント:有効性評価のまとめ   6.がん検診実施マネジメント 

1.はじめに

がん検診によりがん死亡を減少させるためには、有効な検診を正しく実施する必要があり ます。

平成10年3月の「がん検診の有効性評価に関する研究班」報告書(主任研究者 久道 茂)をはじめとして、平成11年3月、平成13年3月と過去3回にわたるがん検診の有効 性評価が行われました。がん検診による死亡率減少効果を検討することが、がん検診アセ スメントであり、有効ながん検診を行うための最も重要な情報となります。

有効性が確立されたがん検診を正しく行う(がん検診実施マネジメント)ための重要課題 は、受診率対策と精度管理です。わが国におけるがん検診の受診率は10∼30%と欧米諸 国に比べ低率で、精度管理には地域差がみられます。

今後のがん検診を正しく推進するため、がん検診のアセスメントや実施マネジメントにつ いて、科学的根拠に基づく情報を提供していきます。

2.がん検診の考え方

がん検診アセスメントとは、死亡率減少効果について、その有効性を検討するものです。 一方、がん検診実施マネジメントは、有効性の確立したがん検診を正しく行うための対策 です。

がん検診を正しく行うためには、どちらが欠けていてもうまくいきません。がん検診アセ スメントと実施マネジメントの両者がそろって行われることで、はじめて適切ながん検診 として成立します。

1)がん検診アセスメント

がん検診として有効と判断するには、適切な根拠が必要となります。そのため、対象とな

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るがんの死亡ががん検診により減少することを証明しなくてはなりません。こうした評価 の根拠には、直接的証拠と間接的証拠があります。

直接的証拠とは、死亡率減少効果を評価した研究です。無作為化比較対照試験や症例対照 試験が該当します。

間接的証拠とは、研究のエンドポイントを発見がんなどの中間的結果に設定した研究や検 査精度に関する研究が含まれます。これらは、個々の研究だけでは、がん検診による死亡 率減少効果を証明することが困難なことから、複数の研究の集積により死亡率減少効果の 可能性が示唆されるものです。

がん検診の有効性評価には、直接的証拠と間接的証拠のどちらも重要です。しかし、あく までも、死亡率減少効果を証明した直接的証拠が優先します。

2)がん検診実施マネジメント

有効性が確立されたがん検診を実際に導入する場合、対象集団での罹患率、経済性、利用 可能な医療資源、他の健康施策との優先度など、他の多くの要因を考慮しなくてはなりま せん。がん検診の導入に関与する情報を提供するとともに、わが国における受診率および 精度管理に関する対策を検討し、改善を支援します。

さらに、有効性が確立されたがん検診を推進していくためには、受診者の方々にも、がん 検診を理解していただくことが必要です。精度管理のためには、受診者の精密検査結果な どの追跡情報が必要であり、その収集について、受診者にも協力していただかなくてはな りません。そのためのがん検診に関するパンフレットや説明用スライドなど、啓発ツール を開発し、提供していきます。

3.わが国におけるがん検診

わが国におけるがん検診の実施体制は、住民検診型の対策型検診と人間ドック型の任意型 検診に大別されます。

1)対策型検診

対策型検診とは、集団全体の死亡率減少を目的とし、公共的な予防対策として行われてい ます。偶発症や受診者の身体的負担などの不利益を最小限とすることが基本条件となりま す。

市町村が行う住民検診としての集団検診・個別検診や職域の法定健診に付加して行われる がん検診が該当します。

対策型検診では、対象者名簿に基づく系統的勧奨、精度管理や追跡調査が整備された組織 型検診(Organized Screening)を行うことが理想的です。北欧や英国では、乳がん検診や 子宮頸がん検診の組織型検診が行われ、高い受診率を維持しています。

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2)任意型検診

任意型検診は、個人の死亡リスクの減少を目的とし、医療機関や検診機関が任意で提供す るがん検診が該当します。

表1 対策型検診と任意型検診 検診方

対策型検診 (住民検診型)

Population-based screening

任意型検診

(人間ドック型) Opportunistic screening 定義

目的 対象集団全体の死亡率を下げる 個人の死亡リスクを下げる 検診提

供者

市区町村や職域・健保組合等のがん対

策担当機関 特定されない

概要 予防対策として行われる公共的な医療 サービス

医療機関・検診機関等が任意に提供す る医療サービス

検診対 象者

検診対象として特定された集団構成員 の全員(一定の年齢範囲の住民な ど)。ただし、無症状であること。有 症状者や診療の対象となる者は該当し ない

定義されない。ただし、無症状である こと。有症状者や診療の対象となる者 は該当しない

検診費 用

公的資金を使用。無料あるいは一部少 額の自己負担が設定される

全額自己負担。ただし、健保組合など で一定の補助を行っている場合もある 利益と

不利益

限られた資源の中で、利益と不利益の バランスを考慮し、集団にとっての利 益を最大化する

個人のレベルで、利益と不利益のバラ ンスを判断する

特徴 提供体

公共性を重視し、個人の負担を可能な 限り軽減した上で、受診対象者に等し く受診機会があることが基本となる

提供者の方針や利益を優先して、医療 サービスが提供される

受診勧 奨方法

対象者全員が適正に把握され、受診勧

奨される 一定の方法はない

受診の 判断

がん検診の必要性や利益・不利益につ いて、広報等で十分情報提供が行われ た上で、個人が判断する

がん検診の限界や利益・不利益につい て、文書や口頭で十分説明を受けた上 で、個人が判断する。参加の有無につ いては、受診者個人の判断に負うとこ ろが大きい

検診方 法

死亡率減少効果が示されている方法が 選択される。有効性評価に基づくがん

死亡率減少効果が証明されている方法 が選択されることが望ましい。ただ

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検診ガイドラインに基づき、市区町村 や職域・健保組合等のがん対策担当機 関が選ぶ

し、個人あるいは検診実施機関によ り、死亡率減少効果が明確ではない方 法が選択される場合がある

感度・ 特異度

特異度が重視され、不利益を最小化す ることが重視されることから、最も感 度の高い検診方法が必ずしも選ばれな い

最も感度の高い検査の選択が優先され がちであることから、特異度が重視さ れず、不利益を最小化することが困難 である

精度管 理

がん登録を利用するなど、追跡調査も 含め、一定の基準やシステムのもと に、継続して行われる

一定の基準やシステムはなく、提供者 の裁量に委ねられている

具体例

具体例

市区町村の住民検診(集団・個別) 労働安全衛生法による法定健診に付加 して行われるがん検診

検診機関や医療機関で行う人間ドック や総合健診

慢性疾患等で通院中の患者に、かかり つけ医の勧めで実施するがんのスク リーニング検査 

注1)対策型検診では、対象者名簿に基づく系統的勧奨、精度管理や追跡調査が整備された組織型検診 (Organized Screening)を行うことが理想的である。ただし、現段階では、市区町村や職域における対策型検 診の一部を除いて、組織型検診は行われていないが、早急な体制整備が必要である。

注2)2005年に公開した大腸がん検診ガイドラインでは、対策型検診を一元的にOrganized screeningとし たが、2006年の胃がん検診ガイドラインでは、わが国における対策型検診の現状を考慮し、現状の対策型検 診(Population based screening)と対策型検診の理想型である組織型検診(Organized screening)を識別 し、その特徴を明らかにした。

注3)任意型検診の提供者は、死亡率減少効果の明らかになった検査方法を選択することが望ましい。がん検 診の提供者は、対策型検診で推奨されていない方法を用いる場合には、死亡率減少効果が証明されていないこ と、及び、当該検診による不利益について十分説明する責任を有する。

3)がん検診の現状

昭和58年の老人保健法施行以来、市区町村では、胃がんおよび子宮頸がん検診の実施を 開始し、続いて、肺がん、乳がん、大腸がん検診が行われています。平成11年度から、 がん検診は一般財源化され、検診の実施、検査方法の選択などは市区町村の判断に委ねら れています。表2に、平成16年度のがん検診の実績を示しました。

表2 がん検診の実績(平成16年度 地域保健・老人保健事業報告)

がん検診 胃がん 大腸がん 肺がん 乳がん 乳がん 子宮頸がん

検査方法 胃X線 便潜血 胸部X線

視触診及び マンモグラ

フィ

視触診 細胞診

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受診者数

(人) 4,376,699 6,430,450 7,138,878 1,099,713 1,599,234 3,587,439 がん発見率

(%) 0.15 0.16 0.04 0.24 0.15 0.05 要精検率

(%) 11.1 7.0 2.8 8.9 4.7 1.1 精検受診率

(%) 74.1 54.1 70.2 81.2 75.7 64.2

(平成16年 地域保健・老人保健事業報告)

肺がんおよび大腸がん検診の受診率はやや増加していますが、他の検診の最近10年間の 受診率はいずれも横ばいです(図1)。一方、英国、米国の受診率は、乳がん検診では 60%以上、子宮がん検診では80%以上となっています(図2)。検診の対象年齢や算出 方法の相違はあるものの、わが国におけるがん検診の受診率は極めて低い状況にありま す。

図1 がん検診受診率の推移

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図2 諸外国の受診率の国際比較

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copyright

4.がん検診アセスメント;基本編

1)有効性評価の考え方

昭和58年の老人保健法における導入以来、がん検診はわが国の公共政策として実施され ています。公共政策として実施されるためには、その有効性を科学的な方法で検証する必 要があります。しかし、「がん検診」と称されている検診のなかには、科学的根拠のない 方法もあります。国民の健康を改善するという目的から考えると、有効性の不明ながん検 診を行うことは、わが国に大きな損失を及ぼすものになりかねません。なお、有効性評価 とは、信頼性の高い研究方法によりがん検診の効果が証明されていることで、個々人の価 値観、医療従事者の私見や不適切な指標による評価は該当しません。

2)有効性評価の方法 (1)有効性評価の指標

がん検診の有効性を評価するためには、適切な指標を設定する必要があります。がん検 診の評価指標は、がんの死亡率です。このため、死亡率減少効果を示すことで、がん検 診としての有効性が証明されます。

(2)なぜ「発見率」ではだめなのか

がん検診の評価方法としてよく用いられるものとして「発見率」や「生存率」がありま す。これらの方法は算出が容易で、医療従事者になじみやすいものです。しかし、両者

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ともに検診を評価するためのバイアスがあることから、真にがん検診の有効性を示す指 標とはなりません。

「発見率」は検診方法の精度だけでなく、対象となる集団の有病率の影響を受けます。 がんの罹患は年齢が高くなるほど、増加しますし、性別によっても異なります。たとえ ば、胃がんでは60歳以上の受診者が多い地域検診では発見率が高く、30∼40歳代が中 心の職域検診では発見率が低くなります。

表3は、高齢者の多いA市と40歳代の多いB市で胃がん検診を行った結果を示してい ます。発見率は、A市がB市の2倍以上になります。この理由は、検診の精度ではな く、もともとA市のほうが高齢者が多く、検診を行えば多くのがんが見つかるからで す。A市とB市で検診を行った医療機関の差より、がんの有病率が発見率を大きく左右 してしまいます。

発見率の差は、がん検診の方法の精度や診断能力の差よりも対象集団の年齢や性別に影 響を受けます。従って、「発見率」の高い検診機関が必ずしも診断精度が高い優良施設 とは限りません。

表3 発見率の比較

男性 (/100000)胃がん有病率

間接X 線 感度

A市 B市

対象者 数

胃がん発見 数

対象者 数

胃がん発見 数 40∼44歳 68 0.7 5000 2.4 35000 16.7 45∼49歳 118.4 0.7 5000 4.1 40000 33.2 50∼54歳 211.8 0.7 10000 14.8 20000 29.7 55∼59歳 360.4 0.7 10000 25.2 15000 37.8 60∼64歳 582.6 0.7 15000 61.2 15000 61.2 65∼69歳 790.8 0.7 30000 166.1 10000 55.4 70∼74歳 1030.6 0.7 40000 288.6 5000 36.1 75∼79歳 1206.8 0.7 30000 253.4 5000 42.2 合計 145000 815.6 145000 312.1 がん発見率

(%) 0.56 0.22

(3)なぜ「生存率」ではだめなのか

「生存率」を用いて、がん検診の評価を行うことがありますが、この場合もがん検診特 有のバイアスが紛れ込む可能性があります。バイアスとは偏りのことで、真の状況から はかけ離れた状態を示すものです。生存率の評価にはリードタイム・バイアスやレング ス・バイアスが紛れ込みます。リードタイム・バイアスは、がんの成長や進展に関与す るもので、検診によって発見された患者は有症状のために外来を受診した患者に比べ、

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がん発見が早いことから、見かけ上生存率が増加することで生じます(図3)。また、 レングス・バイアスは、検診で成長のゆっくりしたがんを見つけやすく、外来患者のが んに比べ予後が良くなる可能性を示しています(図4)。

「発見率」や「生存率」を根拠に新しい検診方法の導入を検討する場合には、こうした 問題点を考慮する必要があります。

図3 リードタイム・バイアス

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図4 レングス・バイアス

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(4)直接的証拠と間接的証拠

死亡率減少効果を示す証拠は、直接的証拠と間接的証拠に大別されます。

直接的証拠は無作為化比較対照試験や症例対照研究により、がん検診による死亡率減少 効果が証明されたものです。

間接的証拠は、エンドポイントを発見がんなどの中間的結果に設定した研究や検査精度 に関する研究が含まれます。これらは、個々の研究だけでは検討対象となるがん検診に よる死亡率減少効果を証明することが困難なことから、複数の研究の集積により死亡率 減少効果が示唆されるものです。

がん検診の有効性評価には、直接的証拠と間接的証拠のどちらも重要です。しかし、あ くまでも、死亡率減少効果を証明した直接的証拠が優先します。

(5)有効性評価のための研究方法

有効性評価の方法として最も信頼性が高いのは無作為化比較対照試験(Randomized Controlled Trial :RCT)です。次善の方法として、コホート研究や症例対照研究があり ますが、その信頼性は表4の下段に進むに従い低下します。したがって、がん検診の有 効性は、専門家の意見だけで判断することはできません。

表4 有効性評価のための研究方法 信頼性 研究方法

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高い

低い

無作為化比較対照試験

(Randomized Controlled Trial) コホート研究

症例対照研究 記述的研究 横断研究 症例報告 専門家の意見 (6)無作為化比較対照試験

無作為化比較対照試験(Randomized Controlled Trial :RCT)はスクリーニングの対 象となるがんの死亡率が、対照群に比べて検診群で低下するかどうかを検証します(図 5)。

はじめに、がん検診の対象となる検診群(検診を受ける群)と非検診群(検診を受けな い群)をランダムに割り付け、両方の受診者の特性を近似させます。さらに、両群を長 期にわたって追跡し、そのがんによる死亡率が減少したかどうかを比較検討します。 図5 無作為化比較対照試験(Randomized Controlled Trial :RCT)

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(7)症例対照研究

症例対照研究は、がんの死亡者(症例群)と現在健康に暮らしている人(対照群)のがん 検診の受診歴を比較検討する方法です。対照群は、死亡群と同じ年代や性別であり、死 亡群と同じがん検診を受ける機会のあった人が選ばれます。両群について過去にがん検 診を受診しているかどうかを調べ、がん検診を受けることで、そのがんによる死亡率が 減少したかどうかを調べます(図6)。

図6 症例対照研究

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5.がん検診アセスメント:有効性評価のまとめ

1)久道班報告書第3版(2001.3)

わが国におけるがん検診の有効性評価は、平成10年3月の厚生省老人保健推進費補助 金 老人保健福祉に関する調査研究等事業「がん検診の有効性評価に関する研究班」報告 書(主任研究者 久道茂)をはじめとし、過去3回にわたる評価が行われました。

「効果あり」とされたがん検診は、信頼性の高い研究方法により、がん死亡率減少効果が あると判定された6つの検診(赤い字の検診)です。その結果をまとめたのが表5です。 判定が保留になっている検診方法や、検討の対象外になっている方法(胃内視鏡や大腸内 視鏡検査など)は、2001年の時点で十分な研究が行われていないため、正確な判断がで

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きなかったものです。

表5 久道班第3版におけるがん検診の評価判定

対象 検診方法 評価判定 根拠の質

胃がん

胃X線検査 有効 症例対照研究

血清ペプシノゲン法 保留 なし ヘリコバクターピロリ抗体 無効 その他

子宮頸がん 細胞診 有効 症例対照研究

ヒトパピローマ・ウィルス 保留 なし

子宮体がん 細胞診 保留 なし

超音波(経膣法) 保留 なし

卵巣がん 超音波 保留 なし

超音波+腫瘍マーカー 保留 なし

乳がん

視触診 保留 症例対照研究

視触診+マンモグラフィ 有効 無作為化比較対照試験

視触診+超音波 保留 なし

肺がん 胸部X線+喀痰細胞診 有効 症例対照研究 らせんCT+喀痰細胞診 保留 なし

大腸がん 便潜血検査 有効 無作為化比較対照試験

肝臓がん 超音波 保留 なし

肝炎ウィルスキャリア検査 有効 無作為化比較対照試験 前立腺がん 前立腺特異抗原(PSA) 保留 なし

直腸診 無効 症例対照研究

2)有効性評価に基づくがん検診ガイドライン:作成手順(2005.3)

平成15年度から、厚生労働省がん研究助成金「がん検診の適切な方法とその評価法の確 立に関する研究」班(主任研究者 祖父江友孝)では、これまでの久道班での成果を踏ま え、わが国独自のがん検診ガイドラインの作成手順を定式化しました。

(1)作成手順の概要

無症状の一般的な健常者を対象としたがん検診による死亡率減少効果を明らかにするた め、最新の知見も含めた対象文献の系統的総括を行います。各検診方法の死亡率減少効 果と不利益に関する科学的根拠を示し、わが国において集団を対象とした対策型検診お よび個人を対象とした任意型検診として実施の可否を推奨として総括します。さらに、 がん検診に関与するすべての人々への有効性評価に関するガイドラインの情報を提供し

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ます。

(2)死亡率減少効果の証拠

死亡率減少効果について、直接的証拠と間接的証拠の両者を採用します。ただし、間接 的証拠は、単独ではなく、直接的証拠のある検診方法との比較検討が可能な場合にの み、採用します。直接的証拠とは、死亡率減少効果を検討した研究です。一方、間接的 証拠とは、個々の研究だけでは検討対象となるがん検診による死亡率減少効果を証明す ることが困難なことから、複数の研究の集積により死亡率減少効果が示唆されるもので す。

(3)ガイドライン作成手順(図7)

がん検診ガイドラインの作成は、対象となるがん検診を選定し、Analytic

Framework(図8)に基づいて検討課題を明らかにします。評価のための文献収集を 行い、チェック・リストを用いて、個別研究の評価を行います。個別研究は検診方法別 にエビデンス・テーブルとして統括され、証拠のレベル(表6)と不利益に基づいて推奨 が決定されます。ガイドライン・ドラフトは、外部評価、公開フォーラムでの討議を経 て、ガイドラインとして公開します。ガイドラインは、その理解度や普及度などについ てアンケート調査で定期的にモニタリングを行います。この調査結果を参考に、新たな 検診方法の評価を加え、5年以内にガイドラインが更新される予定です。

図7 ガイドラインの作成過程

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図8 Analytic Framework(大腸がん検診の例)

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(4)推奨の過程

対象となる検診の直接的証拠と間接的証拠を検討し、研究デザインと研究の質に基づ き、8段階に分類される証拠のレベルを決定します(表6)。

表6 証拠のレベル 証拠の

レベル

主たる研究

方法 内容

1++

無作為化 比較対照 試験

死亡率減少効果の有無を示す、質の高い無作為化比較対照試験が 行われている

系統的総

死亡率減少効果の有無を示す、質の高いメタ・アナリシス等の系 統的総括が行われている

1+

無作為化 比較対照 試験

死亡率減少効果の有無を示す、中等度の質の無作為化比較対照試 験が行われている

系統的総

死亡率減少効果の有無を示す、中等度の質のメタ・アナリシス等 の系統的総括が行われている

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AF組み 合わせ

Analytic Frameworkの重要な段階において無作為化比較対照試 験が行われており、2++以上の症例対照研究・コホート研究が行 われ、死亡率減少効果が示唆される

1-

無作為化 比較対照 試験

死亡率減少効果に関する質の低い無作為化比較対照試験が行われ ている

系統的総 死亡率減少効果に関するメタ・アナリシス等の系統的総括が行わ れているが質が低い

2++

症例対照 研究/コ ホート研 究

死亡率減少効果の有無を示す、質が高い症例対照研究・コホート 研究が行われている

2+

症例対照 研究/コ ホート研 究

死亡率減少効果の有無を示す、中等度の質の症例対照研究・コ ホート研究が行われている

AF組み合わせ

死亡率減少効果の有無を示す直接的な証拠はないが、Analytic Frameworkの重要な段階において無作為化比較対照試験が行わ れており、一連の研究の組み合わせにより死亡率減少効果が示唆 される

2-

症例対照 研究/コ ホート研 究

死亡率減少効果に関する、質の低い症例対照研究・コホート研究 が行われている

AF組み合わせ 死亡率減少効果の有無を示す直接的な証拠はないが、Analytic Frameworkを構成する複数の研究がある

3 その他の研究 横断的な研究、発見率の報告、症例報告など、散発的な報告のみ でAnalytic Frameworkを構成する評価が不可能である

4 専門家の意見 専門家の意見

AF: Analytic Framework

注1)研究の質については、以下のように定義する

質の高い研究:バイアスや交絡因子の制御が十分配慮されている研究。 中等度の質の研究:バイアスや交絡因子の制御が相応に配慮されている。 質の低い研究:バイアスや交絡因子の制御が不十分である研究。

注2)系統的総括について、質の高い研究とされるものは無作為化比較対照試験のみを対象とした研究に限 定される。無作為化比較対照試験以外の研究(症例対照研究など)を含んだ系統的総括の研究の質は、中等 度以下と判定する。

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対象となるがん検診の特性を考慮し、各検診方法別の不利益についての検査方法の受診 者の負担や偶発症について対比し、委員会内で検討します。証拠のレベルと不利益を考 慮し推奨レベル(表7)が決定されます。推奨は、対策型検診と任意型検診として実施 の可否を総括します。

すなわち、死亡率減少効果を認め、対策型検診および任意型検診として実施を勧めるA およびB、死亡率減少効果を認めるものの不利益を無視できないことから、集団には実 施を勧めないC、死亡率減少効果を認めないことから、実施を勧めないD、証拠不十分 で判定保留のIとします。

表7 推奨のレベル 推

表現

対策型検診

(住民検診型)

任意型検診

(人間ドック型) 証拠のレベル

A

死亡率減少効果を示す十分な 証拠があるので、実施するこ とを強く勧める。

推奨する 推奨する 1++/1+

B

死亡率減少効果を示す相応な 証拠があるので、実施するこ とを勧める。

推奨する 推奨する 2++/2+

C

死亡率減少効果を示す証拠が あるが、無視できない不利益 があるため、対策型検診とし て実施することは勧められな い。

任意型検診として実施する場 合には、安全性を確保し、不 利益に関する説明を十分に行 い、受診するかどうかを個人 が判断できる場合に限り、実 施することができる

推奨しない 条件付きで実施で きる

1++/1+ /2++/2+

D

死亡率減少効果がないことを 示す証拠があるため、実施す べきではない。

推奨しない 推奨しない 1++/1+ /2++/2+

I

死亡率減少効果の有無を判断 する証拠が不十分であるた め、対策型検診として実施す ることは勧められない。 任意型検診として実施する場 合には、効果が不明であるこ

推奨しない

個人の判断に 基づく受診は妨げ

ない

1-/2-/3/4

(17)

とと不利益について十分説明 する必要がある。その説明に 基づく、個人の判断による受 診は妨げない。

注1)対策型検診は、公共的な予防対策として、地域住民や職域などの特定の集団を対象としている。その 目的は、集団におけるがんの死亡率を減少させることである。対策型検診は、死亡率減少効果が科学的に証 明されていること、不利益を可能な限り最小化することが原則となる。具体的には、市区町村を実施主体と した住民検診や職域において法定健診に付加して行われるがん検診が該当する。

注2)任意型検診とは、医療機関や検診機関が任意で提供する保健医療サービスである。その目的は、個人 のがん死亡リスクを減少させることである。がん検診の提供者は、死亡率減少効果の明らかになった検査方 法を選択することが望ましい。がん検診の提供者は、対策型検診では推奨されていない方法を用いる場合に は、死亡率減少効果が証明されていないこと、及び、当該検診による不利益について十分説明する責任を有 する。具体的には、検診センターや医療機関などで行われている総合健診や人間ドックなどに含まれている がん検診が該当する。

注3)推奨Iと判定された検診の実施は、有効性評価を目的とした研究を行う場合に限定することが望まし い。

資料1 有効性評価に基づくがん検診ガイドライン作成手順・普及版

(PDF:488KB)

資料2 有効性評価に基づくがん検診ガイドライン作成手順・完全版

(PDF:3.43MB)

3)有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン(2005.3)

(1)背景

わが国における、大腸がんの罹患数は94,500人(1999年推定値)、死亡数は38,900人 (2003年概数)であり、それぞれ、2番目、3番目に多いがんです。現在、市区町村を 実施主体とした住民検診では、主として便潜血検査を用いた大腸がん検診が行われてい ますが、職域、人間ドックなどでは、全大腸内視鏡検査を含め、多様な検診が行われて います。

(2)目的

本ガイドラインは、がん検診に関連するすべての人々への情報提供を目的としていま す。大腸がん検診による死亡率減少効果を明らかにするため、最新の知見も含めた関連 文献の系統的総括を行い、各検診方法の死亡率減少効果と不利益に関する科学的根拠を 示し、わが国において対策型検診および任意型検診として実施の可否を推奨として総括 しました。

(3)対象および方法

検診の対象は、無症状の一般的な健常者です。大腸がん検診の方法として、便潜血検査

(化学法・免疫法)、全大腸内視鏡検査、S状結腸鏡検査、S状結腸鏡検査と便潜血検

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査化学法の併用法、注腸X線検査、直腸指診について、死亡率減少効果を証明する直接 的証拠および間接的証拠について検討しました。科学的根拠となる文献は、

MEDLINE、医学中央雑誌を中心に1985年1月から2003年6月に至る関連文献を抽出 しました。さらに、EMBASE、CINHAL、諸外国の臨床ガイドライン、日本消化器集 団検診学会誌、日本消化器内視鏡学会誌についても追加的に利用しました。各検診方法 別の直接的および間接的証拠に基づいて証拠のレベルを判定しました。不利益について は、受診者の負担や偶発症について、検査方法間の対比を行いました。最終的に、証拠 のレベルおよび不利益の評価から、推奨のレベルを決定しました。

(4)証拠のレベル

1) 便潜血検査(化学法・免疫法)には死亡率減少効果を示す直接的証拠を認めまし た。

2) S状結腸鏡検査には死亡率減少効果を示す直接的証拠を、S状結腸鏡検査と便潜血 検査化学法の併用法、全大腸内視鏡検査および注腸X線検査には複数の間接的証拠を認 めました。ただし、これらの検査に伴う不利益は無視できないものと判断しました。 3) 直腸指診は、死亡率減少効果を示す証拠が認められませんでした。

(5)推奨のレベル

死亡率減少効果を示す十分な証拠があることから、対策型検診および任意型検診とし て、便潜血検査(化学法・免疫法)を強く勧めます。免疫法は、化学法と比較し、感 度・特異度が同等以上であり、受診者の食事・薬剤制限の必要がないことから、免疫法 を選択することが望ましいと判断しました。全大腸内視鏡検査、S状結腸鏡検査、S状 結腸鏡検査と便潜血検査化学法の併用法、および注腸X線検査には無視できない不利益 があることから、対策型検診としては勧められません。ただし、安全性を確保し、不利 益を十分説明したうえで、個人を対象とした任意型検診として行うことは可能です。直 腸指診は、死亡率減少効果を示す証拠がないことから、検診の実施は勧めません。 表8 大腸がん検診の推奨のまとめ

検査方 法

証 拠

表現

便潜血 検査化 学法

1++ A

死亡率減少効果を示す十分な証拠があるので、対策型及び任意型検 診として、便潜血検査化学法による大腸がん検診を実施することを 強く勧める。

便潜血 検査免 疫法

1+ A

死亡率減少効果を示す十分な証拠があるので、対策型及び任意型検 診として、便潜血検査免疫法による大腸がん検診を実施することを 強く勧める。便潜血検査化学法に比べて、感度が優れている点、受 診者の食事・薬剤制限を必要としない点から、化学法より免疫法を 選択することが望ましい。

S状結

腸鏡検 1+ C

死亡率減少効果を示す十分な証拠があるが、内視鏡到達範囲外につ いての死亡率減少効果は期待できない可能性が高い。一方、検査に

(19)

伴う不利益は、小さいとは言い切れないため、対策型検診として実 施することは勧められない。任意型検診として実施する場合には、 安全性を確保すると共に、到達範囲外の死亡率減少効果は不明なこ とや、前投薬、検査による不利益について十分説明する必要があ る。

S状結 腸鏡検 査と便 潜血検 査化学 法の併 用法

2+ C

S状結腸鏡検査と便潜血検査化学法、個々の検査については、死亡 率減少効果を示す十分な証拠があるが、各々単独の検診と比較して 両検査を併用することにより死亡率減少効果がどの程度増分される かは定かではない。一方、検査に伴う不利益は、小さいとは言い切 れないため、対策型検診として実施することは勧められない。任意 型検診として実施する場合には、安全性を確保すると共に、前投 薬、検査による不利益について十分説明する必要がある。

全大腸 内視鏡 検査

2+ C

死亡率減少効果を示す相応の証拠があるが、検査に伴う不利益が無 視できないため、対策型検診として実施することは勧められない。 任意型検診として実施する場合には、全大腸内視鏡検査に伴う、前 処置、前投薬、検査による不利益を事前に十分に説明することが必 要である。その実施は、事前の説明が可能なこと、さらに緊急時の 対応可能な施設に限定される。

注腸X

線検査 2+ C

死亡率減少効果を示す相応の証拠があるが、検査に伴う不利益が無 視できないため、対策型検診として実施することは勧められない。 任意型検診として実施する場合には、注腸X線検査に伴う、前処 置、前投薬、検査による不利益を事前に十分に説明することが必要 である。その実施は、事前の説明が可能なこと、さらに緊急時の対 応可能な施設に限定される。

直腸指

2+ D

死亡率減少効果がないことを示す証拠があるため、対策型及び任意 型検診として、実施することは勧められない。

資料3 有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン・普及版

(PDF:965KB)

資料4 有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン・完全版

(PDF:7.31MB)

4)有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン(2006.3)

(1)背景

わが国における、胃がんの罹患数は103,685人(1999年推定数)、死亡数が49,535人 (2003年確定数)であり、罹患数では第1位、死亡数では肺がんに次いで2番目に多い がんです。現在、市区町村を実施主体とした住民検診では、主として胃X線検査を用い た胃がん検診が行われていますが、職域、人間ドックなどでは、胃内視鏡検査を含め、

(20)

多様な検診が行われています。

(2)目的

本ガイドラインは、検診に関与するすべての人々へ胃がん検診の有効性評価に関する情 報提供することを目的としています。胃がん検診による死亡率減少効果を明らかにする ため、関連文献の系統的総括を行い、各検診方法の死亡率減少効果と不利益に関する科 学的根拠を示し、わが国における対策型・任意型検診としての実施の可否を推奨として 総括しました。

(3)対象および方法

検診の対象は、無症状である者が該当し、有症状者や診療の対象となる者は含みませ ん。胃がん検診の方法として、胃X線検査、胃内視鏡検査、ペプシノゲン法、ヘリコバ クターピロリ抗体について、死亡率減少効果を証明する直接的証拠および間接的証拠を 検討しました。

科学的根拠となる文献は、MEDLINE、CINHAL、医学中央雑誌を中心に、1985年1 月から2005年2月に至る関連文献を抽出しました。さらに、久道班報告書第3版、 PDQ、日本消化器集団検診学会誌、日本消化器内視鏡学会誌を参考にし、委員会の検 討を経て、文献を補足しました。各検診方法別の直接的および間接的証拠に基づき、証 拠のレベルを判定しました。不利益は、受診者の負担や偶発症について、検査方法間の 対比を行いました。最終的に、証拠のレベルおよび不利益の評価から、推奨のレベルを 決定しました。

(4)証拠のレベル

1) 胃X線検査には死亡率減少効果を示す直接的証拠を認めました。

2) 胃内視鏡検査およびペプシノゲン法には検査精度に関する間接的証拠を認めました が、死亡率減少効果を示す直接的証拠として、評価判定が可能な研究はありませんでし た。

3) ヘリコバクターピロリ抗体については、検診としての有効性評価を行うための根拠 となる研究はなく、また間接的証拠も、検査精度や除菌の効果など限定的でした。

(5)推奨のレベル

胃X線検査については、死亡率減少効果を示す相応な証拠があるので、対策型および任 意型検診として、胃がん検診を実施することを勧めます。胃内視鏡検査、ペプシノゲン 法およびヘリコバクターピロリ抗体については、胃がん検診として死亡率減少効果の有 無を判断する証拠が不十分であるため、対策型検診としては勧められません。任意型検 診として実施する場合、がん検診の提供者は、死亡率減少効果が証明されていないこ と、および、当該検診による不利益について十分説明する責任を有します。その説明に 基づく、個人の判断による受診は妨げません。ただし、死亡率減少効果が不明である方 法については、有効性評価を目的とした研究の範囲内で行われることが望ましく、一定 の評価を得るまで対策型検診として取り上げるべきではありません。

表9 胃がん検診の推奨のまとめ

(21)

検査方法 表現

胃X線検査 2++ B

死亡率減少効果を示す相応な証拠があるので、対策型検診及び 任意型検診として、胃X線検査による胃がん検診を実施するこ とを勧める。ただし、間接撮影と直接撮影では、不利益の大き さが異なることから、事前に不利益に関する十分な説明が必要 である。

胃内視鏡検

2- I

臨床診断及びその範疇で行なわれる胃X線検査後の精密検査と しては標準的方法として行われている。しかし、胃がん検診と して行うための死亡率減少効果を判断する証拠が不十分である ため、対策型検診として実施することは勧められない。任意型 検診として実施する場合には、効果が不明であることについて 適切に説明する必要がある。

ペプシノゲ

ン法 2- I

死亡率減少効果の有無を判断する証拠が不十分であるため、対 策型検診として実施することは勧められない。任意型検診とし て実施する場合には、効果が不明であることについて適切に説 明する必要がある。

ヘリコバク ターピロリ 抗体

2- I

死亡率減少効果の有無を判断する証拠が不十分であるため、対 策型検診として実施することは勧められない。任意型検診とし て実施する場合には、効果が不明であることについて適切に説 明する必要がある。

資料5 有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン・普及版

(PDF:1.89MB)

資料6 有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン・完全版

(PDF:11.67MB)

5)有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン(2006.9)

(1)背景

わが国における、肺がんの罹患数は67,890人(2000年推定値)、死亡数は59,922人 (2004年確定数)であり、それぞれ、3番目、1番目に多いがんです。現在、市区町村 を実施主体とした住民検診では、主として胸部X線検査と高危険群に対する喀痰細胞診 の併用による検診が行われていますが、一部の市区町村、職域、人間ドックなどでは、 低線量CTを組み合わせた検診が行われています。

(2)目的

本ガイドラインは、検診に関与するすべての人々へ肺がん検診の有効性評価に関する適 正な情報を提供することを目的としています。肺がん検診による死亡率減少効果を明ら かにするため、関連文献の系統的総括を行い、各検診方法の死亡率減少効果と不利益に

(22)

関する科学的根拠を示し、わが国における対策型・任意型検診としての実施の可否を推 奨として総括しました。

(3)対象および方法

検診の対象は、無症状である者が該当し、有症状者や診療の対象となる者は含みませ ん。本ガイドラインでは、肺がんを標的疾患とし、その死亡率減少を目的としたものに 限定して、肺がん検診と定義します。この評価の対象とした方法は、現在、わが国で主 に行われている非高危険群に対する胸部X線検査、および高危険群に対する胸部X線検 査と喀痰細胞診併用法、低線量CT(Computed Tomography)です。胸部X線検査と喀 痰細胞診の単独の有効性については、付随して検討を行いましたが、通常線量による CTに関しては、評価の対象としていません。

根拠となる文献は、MEDLINE、医学中央雑誌を中心に、さらに関連学会誌のハンド・ サーチを加え、1985年1月から2005年7月に至る関連文献を抽出しました。各検診 方法別の直接的および間接的証拠に基づき、証拠のレベルを判定しました。不利益につ いて、検査方法間の対比を行いました。最終的に、証拠のレベルおよび不利益の評価か ら、推奨レベルを決定しました。

(4)証拠のレベル

1) 非高危険群に対する胸部X線検査、および高危険群に対する胸部X線検査と喀痰細 胞診併用法には死亡率減少効果を示す直接的証拠を認めました。

2) 低線量CTについては、肺がん検診としての試行的研究は認められましたが、死亡 率減少効果を示す直接的証拠はありませんでした。

(5)推奨のレベル

非高危険群に対する胸部X線検査、および高危険群に対する胸部X線検査と喀痰細胞診 併用法は、肺がん検診として死亡率減少効果を示す相応な証拠があるので、対策型およ び任意型検診として実施することを勧めます。低線量CTは、肺がん検診として死亡率 減少効果の有無を判断する証拠が不十分であるため、対策型検診としては勧められませ ん。任意型検診として実施する場合、がん検診の提供者は、死亡率減少効果が証明され ていないこと、および、当該検診による不利益について十分説明する責任を有します。 その説明に基づく、個人の判断による受診は妨げません。ただし、死亡率減少効果が不 明である方法については、有効性評価を目的とした研究の範囲内で行われることが望ま しく、一定の評価を得るまで対策型検診として取り上げるべきではありません。

表10 肺がん検診の推奨のまとめ 検査方法

拠 推

表現

非高危険群に 対する胸部X 線検査、及び 高危険群に対

2+ B

死亡率減少効果を示す相応な証拠があるので、対策型検診及び 任意型検診として、非高危険群に対する胸部X線検査、及び高 危険群に対する胸部X線検査と喀痰細胞診併用法による肺がん 検診を実施することを勧める。ただし、死亡率減少効果を認め

(23)

する胸部X線 検査と喀痰細 胞診併用法

るのは、二重読影、比較読影などを含む標準的な方法(注1) を行った場合に限定される。標準的な方法が行われていない場 合には、死亡率減少効果の根拠はあるとはいえず、肺がん検診 としては勧められない。また、事前に不利益に関する十分な説 明が必要である。

低線量CT 2- I

死亡率減少効果の有無を判断する証拠が不十分であるため、対 策型検診として実施することは勧められない。任意型検診とし て実施する場合には、効果が不明であることと不利益について 適切に説明する必要がある。なお、臨床現場での撮影条件を用 いた非低線量CTは、被曝の面から健常者への検診として用い るべきではない。

注1) 標準的な方法とは、「肺癌取扱い規約」の「肺癌集団検診の手引き」に規定されているような機器 および方法に則った方法を意味している。したがって、撮影電圧が不足したもの、二重読影を行わないも の、比較読影を行わないものなどは、ここで言う標準的な肺がん検診の方法ではない。

資料7 有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン・普及版(PDF:1.2MB) 資料8 有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン・完全版

(PDF:12.8MB)

6.がん検診実施マネジメント

1)精度管理の考え方

がん検診の目的を達成するためには、有効性の確立したがん検診を正しく行う必要があり ます。精度管理の最終的な目的は、質の高いがん検診を行うことにより、確実に死亡率減 少を達成することにあります。このため、精度管理は、技術的な管理だけではなく、他の 医療サービスと同様に、構造(ストラクチャー)・過程(プロセス)・結果(アウトカム) の3段階の管理が必要です。

がん検診の質を向上させるための精度管理システムには、計画を立案し、システムを実 施・コントロールしたうえで、精度管理を行います。この過程において、評価を繰り返し 行うことで、さらに質の改善を目指します。

精度管理指標の設定には、対象となる集団の死亡率が理想的ですが、通常は、代替的指標 として、がん発見率、要精検率、早期がん割合などが用いられます。

2)精度管理の現状

老人保健事業については、各都道府県の成人病検診管理指導協議会が精度管理の中心的役 割を担うことになっています。具体的には、検診実施方法や精度管理のあり方などについ て、専門的な見地から適切な指導を行うことになっています。しかし、一部を除いて十分

(24)

な機能を果たしていない現状にあります。

市区町村においても、対象者の把握と管理、記録の整備、発見がんの追跡調査などが求め られています。このため、「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取り扱いの ためのガイドライン」では、公衆衛生上の目的として、医療機関の精密検査結果の情報提 供は、本人同意がなくても行える例外事項に含まれています。

3)精度管理のための対策

わが国におけるがん対策の一環として、精度管理を系統的に進めていく準備が進められて います。平成16年から開始した厚生労働省がん検診検討会において、精度管理システム のチェックリスト(都道府県版・市町村版・検診機関版)が公表されています。

資料9 乳がん検診チェックリスト市町村版(PDF:346KB) 資料10 乳がん検診チェックリスト検診機関版(PDF:338KB) 資料11 子宮がん検診チェックリスト市町村版(PDF:342KB) 資料12 子宮がん検診チェックリスト検診機関版(PDF:159KB) 資料13 大腸がん検診チェックリスト都道府県版(PDF:138KB) 資料14 大腸がん検診チェックリスト市町村版(PDF:163KB) 資料15 大腸がん検診チェックリスト検診機関版(PDF:160KB)

がん検診の技術的管理については、関連学会が中心となって検診方法に関するガイドライ ンなどを公表しています(表10)。また、医療従事者の認定制度などを行っています。 表11 検診方法に関するガイドライン

検診 精度管理指針 編集 年

胃がん 新・胃X線撮影法(間接・直接)の基

準   日本消化器がん検診学会 2002

大腸が

ん 大腸がん検診マニュアル 厚生省老人保健福祉部老人保

健課 1992

肺がん 臨床・病理 肺癌取扱い規約:肺癌集団

検診の手引き 日本肺癌学会 2003

乳がん マンモグラフィによる乳がんの手引き 精度管理マニュアル作成に関

する委員会 2002

マンモグラフィガイドライン マンモグラフィガイドライン

委員会 2004

(25)

乳房撮影委員会 子宮が

子宮がんの手引き 日本母性保護産婦人科医会 1997

表12 がん検診における医療従事者の認定制度 がん検

認定団体

認定 医

認定技 師

備考

胃がん 日本消化器集団検診学会 ○ ○ △ 試験は放射線技師の 大腸が

ん 日本消化器集団検診学会 ○    

肝臓が

ん 日本消化器集団検診学会 ○   超音波検査医対象

肺がん 日本肺癌学会        

肺がん 日本臨床細胞学会 ○ ○ ○ 全臓器の細胞診対象 乳がん マンモグラフィ精度管理中央委員

○  

子宮が

日本臨床細胞学会 ○ 全臓器の細胞診対象 4)諸外国における精度管理

ECでは、乳がん検診の精度管理のガイドラインを作成し、精度管理指標となる、がん発 見率、要精検率などについて、許容レベルや推奨レベルを定めていいます。がん検診の成 果をこうした基準値と比較検討したうえで、査察などの実施調査を行うなど、精度の維 持・改善に努めています。

表13 ヨーロッパにおける乳がん検診精度管理ガイドライン:許容レベルと推奨レベル

精度管理指標   許容レベル 推奨レベル

対象者中の受診率   70%以上 75%以上

要精検率 初回 7%以下 5%以下

  経年 5%以下 3%以下

乳がんの発見率 初回 罹患率の3倍 それ以上

  経年 罹患率の1.5倍 それ以上

進行がん割合 初回 25% それ以下

(ステージII以上) 経年 20% それ以下

(26)

検診外発見例の割合 1年以内 罹患率の30% それ以下

  1­2年 罹患率の50% それ以下

罹患率:検診が実施されない場合の期待罹患率

参照

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