第七章 コロケーション分析
7.1.2.8. tout
母語話者コーパスの中で多く見られた
tout
を含むMWUs
は、tout le
+名詞、(pas ) du tout
、et tout
であった。tout
の総頻度数に対するこれらのMWUs
の生起回数の割合 について、母語話者と学習者の頻度を比較して有意差を検定したところ、以下の通りとな った。表 119
tout
を含むMWUs
母語話者コーパス 学習者コーパス
χ
2統計量、有意確率tout le+名詞 22 3 χ
2=0.24 ; p>.05
(pas) du tout 21 2 χ
2=0.02 ; p>.05
et tout 14 0 NA
tout le
+名詞と(pas ) du tout
については、MWUsの共起頻度とtout
自体の頻度との関 係について、両グループ間で有意差が見られなかった。しかし、et tout
というMWU
について、学習者コーパスで一例も見られなかった点については、注目すべきである。
et tout
は話し言葉でよく使用されるMWU
である。「〜など」という意味を持ち、文を曖 昧にする曖昧性付加句としての機能を働く。このような機能として使われたのは、母語話 者コーパスには11
例見られたが、学習者コーパスには一例も見られなかった。mec ça te dit pas qu’on aille bouffer un au resto ça serait plutôt sympa ça c’est fait un bail et tout (FT16) des séries dessins animés HESIT et tout (FT29)
quand on se voit on est toujours ensemble et tout et HESIT elle est elle est super (FT35)
表 120 学習者による
tout
の共起語L3 頻度 L2 頻度 L1 頻度 KW 頻度 R1 頻度 R2 頻度 R3 頻度
— — — — — — TOUT 49.23
(14) — — — — — —
表 121 母語話者による
tout
の共起語L3 頻度 L2 頻度 L1 頻度 KW 頻度 R1 頻度 R2 頻度 R3 頻度
— — PAS 32.80
(17) DU 40.52
(21) TOUT 260.50
(135) LE 42.45
(22) — — — —
ET 27.02
(14)
7.2. 自由会話コーパス
7.2.1. 過剰使用語との共起語
前節で抽出した自由会話コーパスに見られた過剰使用語について、調整頻度
20
回以上 共起した語を前後3
語ずつまとめた。これらのMWUs
について、個々に分析を行ってい く。なお、表における共起語および、特徴語の隣にある数字は調整頻度を示し、カッコ内 の数字は生起回数を示している。まず、表をもとに学習者コーパスと母語話者コーパスにそれぞれ特徴的なコロケーショ ンおよびコリゲーションを選択して比較する。次に、その使用について学習者間で差があ るかどうかを比較する。学習者のレベルについては、「語彙の豊かさ」で分類した「初中 級学習者」と「上級学習者」の
2
レベルに基づくこととする。7.2.1.1.
INT
自由会話において、学習者によってもっとも過剰使用されていたものは間投詞であった。
間投詞は、主に話し言葉の単位である。感情を示し、話者の認知的変化を指し示す単位語 もしくは短い定型句のことである。また、間投詞は隣接した節から分布的に独立しており、
節レベルで統語関係を確立することはできないが、談話レベルでは重要な機能を持ち、日 常会話で出来事を話す際の構成において、特別な役割を持つ(Norrick 2008 :439)。
間投詞の使用について母語話者との比較だけではなく、上級学習者と初中級学習者との 間にも違いがあるかどうか調べた。生起頻度は上級学習者が
433
回 、初中級学習者は467
回であった 。それぞれ3
グループの総語数とINT
の数に有意差があるかどうか検定 したところ、以下のような結果となった。表 122
INT
のグループ別頻度母語話者 上級学習者 初中級学習者
χ
2統計量、有意確率INT 612.89 (402) 1765.40 (433) 4674.21 (467) χ
2=1168.76 ; p<.001
そこで、ボンフェローニの補正を用いて有意水準を
1.67%として多重比較を行ったと
ころ、以下のようになった。INT
初級学習者>上級学習者>母語話者したがって
INT
の多用は初中級学習者に特徴付けられたものであるといえる。次に、MWUsレベルでの比較を行う。間投詞と共に多く用いられていたのは、
oui
、ouais
、non
といった副詞であった。これらの副詞との共起頻度を調べたところ、以下のようになった。
表 123
INT
を含むMWUs (1)
母語話者 上級学習者 初中級学習者
INT oui 95 116 49
INT ouais 77 26 2
INT non 29 15 7
総頻度
201 157 58
INT
の総頻度においてoui/ ouais/non
とともに使用されたINT
の使用頻度の割合につ いて、母語話者、上級学習者、初中級学習者との間で検定を行ったところ、有意差が見ら れた(χ2= 145.86 ; p <.001)。そこでボンフェローニ補正を適応し多重比較を行ったところ、
以下のようになった(有意水準
1.67%)。
INT
+oui/ ouais/non
初中級学習者<上級学習者<母語話者つまり、間投詞自体は学習者の方が使用しているものの、間投詞とこれらの副詞を共に 使用する割合は母語話者が最も高く、初級学習者がもっとも低いということが分かる。
また両コーパスに共通して見られた間投詞を含む MWUsとして、INT+
bon
やINT+
d’accord
があった。これらについても同様に、INTに占める割合について有意差を調べた。
表 124
INT
を含むMWUs(2)
母語話者 上級学習者 初中級学習者
χ
2統計量、有意確率INT bon 15 5 9 χ
2=6.66 ; p<.05
INT d’accord 17 30 12 χ
2=9.99 ; p<.01
多重比較を行ったところ、INT+
bon
については初中級学習者と母語話者との間に有意 差は見られなかったが、上級学習者よりも母語話者の方が多くこのMWU
を使用してい た。また、INT+d’accord
については、初中級学習者と上級学習者の間に有意差が見られ、その傾向は上級学習者に顕著であった。
INT+bon
上級学習者<母語話者INT+d’accord
上級学習者>初中級学習者また、学習者の間投詞の使用の表には
INT INT
といった間投詞の連続も見られた。INT
の総頻度におけるこの連続使用の頻度について、母語話者、上級学習者、初中級学 習者の間に有意差があるかどうかを調べたところ、有意差が見られた。表 125
INT
の繰り返し母語話者 上級学習者 初中級学習者
χ
2統計量、有意確率INT INT 5 6 19 χ
2=20.67 ; p<.001
そこで、どのグループ間に有意差があるのかどうかを調べるため、ボンフェローニ補正 を適応して多重比較を行ったところ、INTが使用される際、INT INTは初中級学習者に よって有意に多く使われていることが分かる。
INT INT
初中級学習者>上級学習者=母語話者以上より、 INT の生起頻度は学習者の方が多く、初中級学習者によって特に多く用い られていたことを確認した。しかし
MWUs
レベルで見ると、INTとともに使用される語 句には、母語話者に特徴的なものも見られるということが分かった。表 126 学習者による
INT
の共起語L3 頻度 L2 頻度 L1 頻度 KW 頻度 R1 頻度 R2 頻度 R3 頻度
INT 37.66
INT 81.12
INT 78.22
INT 2607.34
OUI 478.01
EST 162.23
EST 121.68
(13) (28) (27) (900) (165) (56) (42)
C’ 26.07
C’ 31.87
NP 49.25
C’ 170.93
ACCORD 121.68
C’ 66.63
(9) (11) (17) (59) (42) (23)
ET 23.18
BC 28.97
HESIT 49.25
D’ 133.26
C’ 118.78
JE 63.73
(8) (10) (17) (46) (41) (22)
EST 20.28
EST 26.07
OUI 43.46
JE 95.6
OUI 75.32
OUI 60.84
(7) (9) (15) (33) (26) (21)
J’ 20.28
EN 23.18
BC 37.66
OUAIS 81.12
JE 60.84
J’ 60.84
(7) (8) (13) (28) (21) (21)
LA 20.28
DE 20.28
EST 31.87
J’ 63.73
J’ 37.66
NP 46.35
(7) (7) (11) (22) (13) (16)
FW 23.18
NON 63.73
MAIS 37.66
DE 31.87
(8) (22) (13) (11)
NP 55.04
DE 34.76
BC 31.87
(19) (12) (11)
FW 55.04
BC 34.76
A 26.07
(19) (12) (9)
BC 40.56
AI 31.87
OK 26.07
(14) (11) (9)
MAIS 40.56
HESIT 31.87
MAIS 23.18
(14) (11) (8)
BON 40.56
ÉTAIT 28.97
TU 23.18
(14) (10) (8)
TU 34.76
NON 28.97
BIEN 23.18
(12) (10) (8)
DONC 31.87
NP 26.07
NON 20.28
(11) (9) (7)
ET 28.97
TU 23.18
À 20.28
(10) (8) (7)
LA 26.07
ET 23.18
QUE 20.28
(9) (8) (7)
OK 26.07
Y 20.28
(9) (7)
MOI 23.18
SUIS 20.28
(8) (7)
LE 23.18
D’ 20.28
(8) (7)
HESIT 20.28
ÇA 20.28
(7) (7)
À 20.28 (7) DANS 20.28 (7) EN 20.28 (7) IL 20.28 (7)
表 127 母語話者による
INT
の共起語L3 頻度 L2 頻度 L1 頻度 KW 頻度 R1 頻度 R2 頻度 R3 頻度
— — — — — —
INT 612.89
OUI 144.84
C’ 33.54
EST 28.96
(402) (95) (22) (19)
OUAIS 120.44
OUI 32.02
(79) (21)
C’ 38.11
EST 32.02
(25) (21)
NON 32.02
ACCORD 25.92
(21) (17)
D’ 27.44
MAIS 22.87
(18) (15)
BON 22.87
(15)