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単語以上の単位 - Multi-Word Units -

ドキュメント内 Doctoral Thesis (Tokyo University of Foreign Studies) (ページ 83-86)

第三章 Word Units から Multi-Word Units へ

3.1. 単語以上の単位 - Multi-Word Units -

単語以上の単位は様々な名称で呼ばれており、異なる用語が同じ単位に使用されていた り、同じ用語が異なる単位を示したりしている (Granger and Paquot 2008: 27-28)。た とえば

Nation and Meara (2002: 36)は、以下の 3

つの呼称例とそれらの違いについて挙 げている32

1) Preformulated language:複数語から成る単位がそのまま使用可能な一つの単位

として蓄積されている点を強調した呼び方である。

2) Formulas:ある事柄について述べる際に新しい言い方をその度に生成するのでは

なく、同じ言い方を繰り返す点を強調した名称である。

3) Lexical phrases:日常生活である機能を達成する際に典型的に使用される句に焦

点を当てたものである。これらの重要な特徴は、そのかたまり内の単語を他の単 語と自由に置換することができないことである。

なお、Wray (2002)は « formulaic sequences»という用語を使用している。

Wray

formulaic sequences

の定義として、以下のように述べている(ibid: 9)33

a sequence, continuous or discontinuous, of words or other elements, which is, or appears to be, prefabricated: that is stored and retrieved whole from memory at the time of use, rather than being subject to generation or analysis by the language grammar.

(単語やその他の要素から成る連続的、または非連続的なシークエンスは、既成のものであるかそのようであ

るように見える。シークエンスは、文法規則による生成や分析に従っているのではなく、むしろ既に記憶に 蓄えられ、使用時に記憶から取り出されるのである。)

この定義から、Wrayは

Nation and Meara の 1) Preformulated language

と同じよう な性質を持つものを « formulaic sequences» と呼んでいることが分かる。

またこの他にも、Biber et al. (1999: 990ff) は

Longman Grammar of Spoken and Written English

の中で « Lexical bundles»という用語を初めて使用しており、この語連 続は自然談話で通常使用されている語の連続体であると定義している。これは、上記の

1)

2)

を 組 み 合 わ せ た よ う な 概 念 で あ る と 言 え る 。 さ ら に 、

Ellis (1997: 129)

は、 « fluent units»という用語を用いている。これは、会話で通常の速度かそれよりも速 い速度で発せられる

4

語から

10

語で構成されている節であると定義しており、特に会話

32

下線は筆者が追加したもの

33

下線は筆者が追加したもの

面における語のかたまりについての側面に焦点を当てたものである。また、心理学の分野 では

George Miller

が短期記憶の研究に « chunking»という用語を導入した (Miller 1956)。

また、語連続を構成する語の間の関係性に注目したものが、 « collocation»である。複 数の語の内部に強力な結びつきがある場合、collocation と呼ばれる (Nation and Meara

2002: 36)。Krishnamurthy (1987: 70)は collocation

についての定義として、見出し語が 両端最大

5

語の語彙項目によって伴われており、平均の期待値よりも高い頻度で現れる 語彙項目のかたまりであると定義している。また

Schmid (2003: 239-246)は collocation

の定義として

5

つの基準を提案している:

1)

少なくとも

2

語で構成されている:

自明の理であるが

1

語のみでは連語をなすことができないため、collocation を 構成することはできない。このように実質的には

collocation

2

語以上で構成さ れているが、典型的な多くの

collocation

は、2 語の連合体であることも事実であ る。

2)

問題となる語が近接している。

3)

共起頻度が高い:

もし、あるテクスト内で近接している語が単なる偶然ではなく、頻出する語の かたまりとして使用されているとすれば、それらは

collocation

としてみとめられ る。

4)

相互期待値 (Mutual expectancy, Firth 1957: 195)と予測可能性 (Herbst, 1996:

389):

相互期待値は、共起頻度の欠点を補うものであり、単純に文法構造によって出 現頻度が高くなる語連続や、語連続に含まれる単語同士が互いに共起するかどう か予期できない語連続を排除する基準である。ある

2

語が共起されると考えられ るとき、その言語の母語話者は、2 語の内の1語を見るだけで、もう

1

語の出現 度合いについてある程度正確に予測することができる。

予測可能性は相互期待値を再解釈したものであり、予測可能性は相互期待値と 語用的によく似ている。予測可能性は言語使用者の観点から語連結を見ており、

相互期待値は語自体の言語内在的観点から語連結を見ている。また、先の基準で ある共起頻度の高さと相互期待値および予測可能性は、互いに独立しておらず、2 つの基準間に比例関係がある。collocation の頻度が高ければ高いほど、予測可能 性が上がるからである。

5)

熟合度:

この基準は完全に透明な語連結から完全に慣用語的な語連結までの段階的な基 準である。

このように、語連鎖の研究においてこれらを示す用語は統一されていない。呼び名は一 定ではなく、さらに時には異なる観点に焦点をあてたものであり、指示対象となるものは 全く同じものではないと言える。

Wray (2000) はこの語連鎖を指し示す名称として使用されているものを、以下のように

リスト化している。

(Wray 2000: 465)

上記のように呼称は統一されていないが、Weinert (1995: 182)はこの傾向について以下 のように指摘している:

while labels vary, it seems that researchers have very much the same phenomenon in mind.

(呼び名は変われども、研究者の間ではほとんど同じ現象について理解されているように思われる。)

最も一般的な意味で中立的に使用されている用語は、Multi-Word Units (以下

MWUs)

である。MWUs は、実際の使用によって認められた語彙の固定パターンや繰り返しパタ ーンであると大まかに定義することができる (Grant and Bauer 2004 : 38)。MWUsはこ のように名称が一定ではなく、サブカテゴリー化の試みが行われてきたが、研究者の見解 の一致を得られているものはない。どんなカテゴリー化も周辺的なケースを含み、カテゴ リー間のオーバーラップが避けられないからである (Lewis 1993: 93)。

これらの MWUsを扱う研究をフレイジオロジーと呼ぶことがある。

ドキュメント内 Doctoral Thesis (Tokyo University of Foreign Studies) (ページ 83-86)