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フランス語学習者の語彙研究

ドキュメント内 Doctoral Thesis (Tokyo University of Foreign Studies) (ページ 74-78)

第二章 語レベルの研究 –Word Units 研究−

2.10. 学習者の語彙研究

2.10.1. フランス語学習者の語彙研究

この研究は

LANCOM (LANgue et COMmunicatio)

コーパスを使用して、フランス語 学習者による口頭インタラクションの実現における問題を分析したケーススタディである。

データは先述のとおり、フラマン語母語話者であるフランス語学習者や母語話者がロール プレイングを行い、それを録音転写したものである。フラマン語母語話者のフランス語に おける発話には、以下の

4

点の特徴が見られた。

1)

制度的特徴に起因する人工的なインタラクション

学習者が行うロールプレイングには、インタラクションにおける発話内行為の 観点でフランス語話者とは異なる社会文化的振る舞いが見られた。たとえば、依 頼人と請負人の関係において、フラマン語母語話者である学習者は依頼人先導で 物事を決定するのに対して、フランス語母語話者は請負人が決定権を持つことが 観察された。

2)

会話の始め方、終わり方の慣例の違い

電話会話において、フラマン語母語話者は始めに身分を名乗るのに対して、フ ランス語母語話者はそれを行わず挨拶から始めた。会話の終わりにはフラマン語 母語話者は別れの挨拶をするにとどめるのに対して、フランス語母語話者はここ で名前を名乗り、連絡先を告げた。このように、フラマン語母語話者とフランス 語母語話者の間に電話会話時における慣例の違いが見られる。つまり学習者はフ ラマン語における慣例をフランス語会話においても適応してしまう例が見られた。

3)

談話・会話の管理

学習者は書き言葉調の話し言葉を使用するのに対して、フランス語母語話者は 対人的コミュニケーションを対話者と構築している。また、学習者は厳密に事実 に即してコミュニケーションを行うのに対して、母語話者は状況に合わせて情報 や提案を提示している。

4)

対人関係の管理

学習者のポライトネスの使用に母語話者との違いが見られた。たとえば、「〜

しなければならない」という文を表現する際に、学習者は

DEVOIR

を使用する のに対して、母語話者は

FALLOIR

を好むことがわかった。また、疑問形におけ る形態統語的な特徴の違いも見られた。学習者は

EST-CE QUE

型の疑問形を用 いるが、母語話者はイントネーション型の疑問形をしている。EST-CE QUE 型 の疑問文のイントネーションは下降調であり、イントネーション型の疑問文は上 昇調である。実際に、イントネーション型の上昇調イントネーションの方が対話 者に対して威嚇的な印象を与えないため、学習者の発話はポライトネスが欠けて いるという印象を与える恐れがある。

2.10.1.2.

David (2008)

この研究は

FLLOC ( French Learner Language oral corpora )を使用して、半自然会話

タスク遂行時における語彙の豊かさを記述し、学年別の比較を行ったものである。この研 究の目的は、先行研究ではあまり行われてこなかった分野である口頭産出におけるフラン ス語の語彙に焦点を当て、中等教育における語彙の発達に関する記述を行うことである。

被験者は、フランス語学習者であるイギリスの

9

年生(13歳)から

13

年生(18歳)である。

研究設問は以下の

2

点である。

1) 5

年の学習期間にわたる横断的、長期的データを通して、語彙の多様性の指標が 有意に上昇したかどうか。

2)

産出語彙の発達の特徴は何か、また、名詞と動詞の発達ペースが同じか。

分析の結果、全体的な産出語彙量はトークン数、タイプ数共に学年が上がるにつれて有 意に増加していることが分かった (トークン数:

F (4, 95)=8.475, p <.001;タイプ数: F (4, 95)=17.216, p <.001)。しかし、チューキー法を使って多重比較を多なった結果、1

学 年ごとの差で有意差が確認できたのは、11年生と

12

年生との間におけるタイプ数だけで あった。

各グループの

D

値の中央値を比較したところ、語彙の多様性も初級から上級まで一定 に上昇傾向であることが分かった。また、1 学年ごとの差について

t

検定を行った所、有 意差が見られたのは

9

年生と

10

年生の間(

p <.05)、10

年生と

11

年生の間(

p <.01)、11

年 生と

12

年生の間(

p <.05)であり、12

年生と

13

年生との間には有意差が見られなかった。

また、使用語の種類の分析については、9 年生から

10

年生までにかけて名詞が占める 割合が増えるが、それから先は徐々に減少していることが分かった。これは、増えた語彙 の種類が名詞のみに偏重しなくなるからである。一方、動詞の割合はこれと反対の様相を 呈する。つまり、学習者は

10

年生から動詞の割合が増えていく傾向がある。また、名詞 と動詞の割合の間に負の相関があることからも、この傾向を裏付けることができた (

r =

−.315,

p= .001)。

2.10.1. 3.

Treffers-Daller (2010)

この研究は、自然タスクではなく統制タスクを使用した話し言葉コーパスに基づくもの である。このコーパスは学習者の語彙使用分析を目的に作成されたもので、学習者グルー プは

2

つあり、3つの言語で構成されている。一つ目の学習者グループはブリュッセルに 住むオランダ語の地域変種であるフラマン語が支配的な話者

25

名から構成されている。

全員がフラマン語を話し、何人かはフランス語とオランダ語の標準語も話すことができる。

もう一つのグループは、パリのビジネススクールに通うフランス語母語話者で、学校の教 育は全て英語で受けている。彼らは全てフランス語の環境で育ち、英語やその他の言語は 中等教育までに学習したのみである。学校では日常的に英語を使用しているが、このグル ープは明らかにフランス語が支配的と言える。このデータ収集の参加者は全てフランス語 を話すことができる。フランス語のタスクとして、Mayer (1969)の

« Frog where are

you ? »という絵本を使用した。英語とオランダ語のタスクは、フランス語のタスクに翻

訳による影響を与えないため、Mayer (1974)の別の絵本 «

Frog goes to dinner »を使用し

て、ストーリーテリングを行った。なお、このコーパスは

Brussels Corpus

として

FLLOC

の一部として収録されている。

全被験者は研究者との個人インタビューを行う前に準備期間が与えられた。全てのデー タは

CHAT

フォーマット(Codes for the Human Analysis of Transcript)で転写され、

CLAN

上で形態統語タグも付与された。タグの曖昧な点や、エラー、不整合は手動で修 正した。加えて、全ての固有名詞、ポーズ、ためらい、驚き、メタ言語的なコメントにつ いて、転写には含めたものの語彙の豊かさの測定時には排除した。

3

つの言語の

D

値の中央値を境界線とし、インフォーマントを低グループと高グルー プに分類した。この方法によって、インフォーマントは

4

つのサブグループへ分類する ことができた。

1)

フランス語優勢のグループ(フランス語能力が高く、オランダ語もしくは英語能力 が低い)

2)

ハイレベルでバランスがとれているグループ(フランス語能力が高く、オランダ語 もしくは英語能力も高い)

3)

低レベルでバランスがとれているグループ(フランス語能力が低く、オランダ語も しくは英語能力も低い)

4)

オランダ語もしくは英語優勢のグループ (フランス語能力は低いが、オランダ語 もしくは英語能力は高い)。

この区分では、パリのインフォーマントの大多数がフランス語優勢グループに属し、

10

名のブリュッセルのインフォーマントがオランダ語あるいは英語優勢グループに属し た。ハイレベルでバランスのとれたバイリンガルのグループは、ブリュッセル出身者で

15

名、パリ出身者で

8

名であった。ブリュッセルのインフォーマント内にはフランス語 優勢グループに属するものはおらず、パリのインフォーマント内にも英語優勢グループの ものはいなかった。

この分析結果から、語彙の豊かさを指標して言語の優勢を決定することができるという ことが明らかになった。また今回使用した方法は、異なる言語背景を持つ話者グループを 区分できる有効な手段であるということも分かった。この方法を使う最大の利点は、規格 化されたテストがない言語や言語変種にこの方法を使うことができるということである。

この測定法は、口頭産出データなどのデータにも応用できる。

2.10.1.4.

Bulté et al. (2008)

この研究は、第二言語における語彙能力の定義と、語彙能力の発達に焦点を当てたもの である。ブリュッセル在住のフラマン語話者のフランス語学習者の語彙の多様性、語彙の 生産性、語彙の洗練性の発達を分析した。学習者

19

名と母語話者

19

名が

Mayer (1969)

の «

Frog where are you ? »のストーリーテリングを行った。データは二年にわたって計

三回収集され、学習者の年齢はデータ収集開始時で

12

歳、終了時で

14

歳である。学習 者はデータ収集時に週

2

回から

4

回の

50

分のフランス語の授業を最低

4

年受けている。

母語話者データは計

1

回の収集で、13歳時に行われた。

語彙能力を測定するために合計

42

の指標が使用されたが、分析に使用されたのはその うちの

22

の指標である。主に指標は、頻度情報、Uber Index、ギロー値が採用されてお り、3つのカテゴリーに分類されている。

1)

標準測定

全体のタイプとトークンの分類

2)

品詞測定

名詞、動詞、形容詞に焦点を当てた測定

3)

頻度に基づく測定

相対的な生起頻度に関する情報や基礎語と上級語の分類

分析の結果、それぞれのカテゴリーについて以下のことが分かった。

1)

標準測定

三年間を通してすべての指標が有意に上昇しているため、学習時間と標準測定 の指標は有意に相関することが分かった。しかし、この上昇は主に

1

年時に見ら れるものであった。語彙の多様性の指標は

1

年時に有意な上昇を見せたが、2 年 時にはその傾向が見られなかった。また、母語話者は学習者よりも常に優れた値 を返していた。

2)

品詞測定

分散分析の結果、学習者は形容詞に関する指標を除いて統計的に上達が見られ た。しかし、これは1年目の名詞と動詞の語彙の多様性が上昇したからであり、2 年目には有意な発達は見られなかった。また、母語話者は常に学習者よりも数値 が上回っていた。

ドキュメント内 Doctoral Thesis (Tokyo University of Foreign Studies) (ページ 74-78)