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VocabProfil に基づく研究

ドキュメント内 Doctoral Thesis (Tokyo University of Foreign Studies) (ページ 78-81)

第二章 語レベルの研究 –Word Units 研究−

2.10. 学習者の語彙研究

2.10.2. VocabProfil に基づく研究

VocabProfil

を使用したフランス語学習者の研究は、まだまだ数少ない。本論文では、

書き言葉の研究であるが

VocabProfil

に基づく先駆的な研究である

Goodfellow et al.

(2002)と、話し言葉の研究に VocabProfil

を用いた

Ovtcharov et al. (2006)、Thomas (2008)について俯瞰する。

2.10.2.1.

Goodfellow et al. (2002)

Goodfellw et al. (2002)

は、

VocabProfil

に基づいて初級学習者書き言葉コーパスに基 づく検証を行った。被験者は通信教育を行っている

Open University

のフランス語学習 者

36

名であり、レベルは初中級である。被験者は議論型のエッセイを執筆し、それを分 析した。分析には頻度

1

位から

1000

位までの

K1、1001

位から

2000

位までの

K2、

ELRA Parole French Corpus

31から抽出したアカデミックリスト、リスト外単語の

4

つ の頻度層を用いた。これらの各頻度層におけるタイプ数と、教師による評価を比較した。

なお、教師による評価には内容に関する項目が

2

つ、正確さに関する項目が

1

つ、そし て語彙のレンジに関する項目が

1

つ用意されており、各項目は

25

点満点から得点付けさ れた 。なお、語彙の評価のため、内容に関する評価は分析には含まれなかった。

評価と頻度層におけるタイプ数の相関を分析した所、正確さとレンジにおいて

K1

には 負の相関が見られ(正確さ:

r =-.35, p =.05;レンジ: r =-.35, p =.05)、アカデミックリスト

とリスト外単語においては有意な相関が得られなかったが、K2 レベルにおいてレンジと 正確さに中程度の正の相関が見られた(正確さ:

r =.42, p =.01;レンジ: r =.45, p =.01)。

31

European Language Resources Association

のホームページ(http://www.elda.fr)から入手可能

2.10.2.2.

Ovtcharov et al. (2006)

英語学習者について、語彙の豊かさと言語能力の相関関係はある程度認められているが、

英語以外の言語ではその研究があまり行われてこなかった点を

Ovtcharov et al.は指摘し、

フランス語学習者についての研究を行った。この研究は、外国語としてのフランス語の会 話研究と、会話における語彙の豊かさを測定するために

LFP

を使用したパイオニア的研 究である。まず、言語能力には語彙の深い知識が必要であるという仮定を立て、その仮定 を検証した。そして学習者がどのように語彙知識の獲得を促進できるかを模索した。学習 者の語彙能力が高ければ高いほど、特殊語や低頻度語を使用するという仮定を基に、さら に

3

つに細分化した仮定を立てた。

1)

二つの異なるレベルの学習者間では、中頻度語と低頻度語において、その使用割 合に統計的有意差がある

2)

レベルの高い学習者は、レベルの低い学習者と比較してより多くの特殊語や低頻 度語を使用する

3)

レベルの高い学習者の語彙のプロファイルは、母語話者のプロファイルと近似し ている。

被験者は、カナダで行われる試験である

Evaluation de Langue Seconde ( ELS )の前に 9〜10

ヶ月フランス語の学習を行った。その後、学習者のレベルは中級グループの

B

と 上級グループの

C

と大きく

2

つに分けられ、さらにグループ内で上下の

2

つに下位分類 された。

Commissions de la Function Publique du Canada ( CFP )によって開発されたイ

ンタビューモデルの大半は、

American Council on the Teaching of Foreign Language ( ACTFL )によって制作された Oral Proficiency Interview ( OPI )から着想を得ている。

まず仮定

1)の検証のため、頻度 1001

位から

2000

位までの

K2

2001

位以降の

K3+Off-list

のトークンの比率を用いて、グループ

B

とグループ

C

について

t

検定を行っ

た所、有意差が見られた(K2 :

t =2.92, p =.00; K3+Off-list : t =8.96, p =.00)。仮定 2)につい

ては、K3+Off-list におけるトークンの比率について学習者の4グループの差を分散分析 で検定を行った所、有意差が見られた(

F =90.65, p =.00)。また K3+Off-list

についてチュ ーキーの

HSD

を用いて多重比較を行った所、学習者の全てのグループ間に有意差が見ら れ、低頻度語(K3+Off-list)の単語数と学習者のレベルには強い関係があると結論付けられ

た。仮定

3)について、母語話者グループと各学習者グループの比較をカイ二乗検定で行

った所、グループ

B

と母語話者グループには有意差が見られたが、よりレベルが高いグ ループ

C

については母語話者グループとの有意差が見られなかった。したがって、レベ ルが上がるにしたがって、母語話者の語彙使用に近似することが分かった。

2.10.2.3.

Thomas (2008)

Thomas (2008)は VocabProfil

を使用して、留学生の話し言葉における語彙の発達を量

的質的の両観点から分析した。被験者は、カナダのオンタリオ州南部の大学生で、フラン

スでフランス語プログラムの三年に在籍している英語母語話者

48

名である。比較対象と して、オンタリオ州でフランス語を学習している

39

名の学生を選択した。発話タスクは

4

つあり、インタビュー形式の口頭試問、写真を基に状況記述を行うもの、自身のカナダ の大学を宣伝するための記述文、そして自身の生い立ちについて語るものである。つまり、

インタラクション型のタスクとモノローグ型のタスクの

2

種類が行われている。新学年 の始めと終わりにプレテストとポストテストとして同じタスクが行われた。

分析には、語彙の発達を観察するため、Ovtcharav et al. (2006)と同様に

2001

位以降

K 3+Off-list

のトークンの比率に着眼し、使用語彙の比率が

2

つのテスト間で上昇す

れば、その被験者の語彙の発達を認めることができるという仮定を基に、分析を行った。

その結果、フランス留学中の学習者も、カナダで学習している学習者ともプレテストとポ ストテストで比率の上昇が見られなかった。しかし、全体の発話量を見てみると、フラン ス留学中の学習者の発話量の伸びが

11.7%と顕著だったのに対して、カナダに残留中の

学習者の発話量はわずかに

1.7%上昇するのみにとどまった。

また、頻度

3000

位以降である

Off-list

にリスト化された単語の性質を分析した所、質 的な変化が見られた。留学生はフランス語圏で生活することによって、語の短縮、平俗も しくは品のない話し方、母語話者のような表現、そして « truc »や « machin »のようなコ ミュニケーションの中断を防ぐために使用される万能語の使用と行った者を習得したこと が明らかになった。

この研究は、外国語学習者による語彙の量的かつ質的発達の分析を行ったものであり、

第二言語研究分野において、この研究の意義は大きい。さらにこの研究は、英語学習者で はなくフランス語学習者を対象としている所が重要である。なぜなら、このような研究は 英語教育で多く行われているが、その他の言語ではほとんど行われていないからである。

2.10.2.3.

Sugiyama (2012)

本論文は、日本語を母語とするフランス語学習者の口頭産出における語彙の豊かさを分 析したものである。Ovtcharov et al. (2006) や

Thomas (2008) による先行研究では、日

本人学習者よりも言語能力の高い学習者を対象にしていたが、本研究では、フランス語学 習歴

1

年半の学習者から留学歴のある学習者までの多様な学習背景を持つフランス語学 習者を対象に行った。また、 2つの先行研究では

VocabProfil

を用いて各頻度層における トークンの比率についての分析を行っており、語彙の洗練性の測定のみに焦点が当てられ ていたが、本研究では語彙の洗練性の測定に加えて、各頻度層における語彙の多様性、そ して内容語と機能語を測定する語彙密度の三つの観点をもって、語彙の豊かさの指標とし ている。

フランス語学習者

28

名についてこの指標を用いてクラスター分析を行った所、学習者 のフランス語能力別にグループ分けを行うことが可能であることが分かった。また、グル ープ間の比較を行うため、一元配置分散分析を行った所、頻度上位

1

位から

2000

位まで の内容語(K1内容語)と

3000

位以下の単語(Off-list)について全グループ間で有意差が見ら れた。さらに各頻度層別の相関を調べた所、K1内容語と

1001

位から

2000

位までの内容 語 (K2)に強い相関が見られたため、日本人学習者の話し言葉における使用語彙の観点か

ら学習者を分類する場合には、これらの頻度層の語彙の多様性がレベル分けの指標と成り うることが分かった。

ドキュメント内 Doctoral Thesis (Tokyo University of Foreign Studies) (ページ 78-81)