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イブニングセッション 2 Evening Session 2

3.0 T-MRI 装置における歯科補綴装置の安全性の検討

○長谷川みかげ,阿部 有希,宮田 和幸,石上 友彦*,梅川 義忠*,中林 晋也*

日本大学歯学部歯科補綴学教室Ⅱ講座

*日本大学歯学部総合歯学研究所臨床研究部門

Safety of dental metal prosthesis during 3.0-T magnetic resonance imaging

Hasegawa MAbe YMiyata K Ishigami T*Umekawa Y*Nakabayashi S Department of Partial Denture Prosthodontics, Nihon University School of Dentistry

*Division of Clinical Research, Dental Research Center, Nihon University School of Dentistry

Ⅰ. 目的

MRI検査は,装置の高磁場化・高出力化による 画質の向上や検査時間の短縮が可能となったこと から,医科領域において急激に需要が高まりつつ ある.それに伴い,体内金属装着者において,検 査時に人体への為害作用が問題視されるようにな った.体内金属はMR装置により牽引や加温され,

体内金属の脱落や移動,埋め込み周囲の疼痛を引 き起こす可能性があるため,検査現場では金属に 対して細心の注意が払われている。口腔領域は MRI検査頻度が非常に高い頭頚部と近接している が,大きさや形状の異なる金属製の補綴装置や,

磁性アタッチメント義歯の適応による強磁性体の キーパーなどが口腔内に装着されている場合が多 く存在する.これらの金属に対するMRI装置との 安全性についての情報提示が必要であると考える.

本研究では,ASTM(米国材料試験協会)規格に 準じて,歯科補綴装置の発熱試験と偏向力試験行 い,MRI装置に対する安全性について検討する.

Ⅱ. 方法

測定にはPhilips社製 Achieva 3.0T NovaDual装置 を用いた.測定は,上顎第一大臼歯金属冠(2.58), 第二小臼歯と第二大臼歯支台の3ユニットブリッジ

9.64g),上顎14歯連結冠(24.09g)および,磁 性アタッチメントのキーパー付き補綴装置として

D600 キーパー付き歯科用インプラント (SCREW

IMPLANT Re SETio FIXTURE 10 mm, GC)D600キ ーパー付き根面板を用いた.歯科用合金は,金銀 パラジウム合金(パラトップ12マルチ,デンツプ ライ三金)を用いた.偏向度試験は,MRI装置の 磁場の傾斜が最も強い位置を予備実験にて求め,

各補綴装置を測定器に吊るしMRI装置による吸引 力と重力とのつりあいを測定した.発熱試験は,

磁場の影響を受けない温度計 (AMOTH FL-2000, 安立計器) と光ファイバーセンサー (FS100-5M, 安立計器) を用い, 電気的特性を皮膚と等価にした ファントムに上面から2 cmの深さに各補綴装置を 埋め込んだ.撮像条件は温度上昇を引き起こすよ

うに, SAR (組織非吸収率) が最大となるように設

定し, 20分間の照射を行い,温度上昇を測定した.

Ⅲ. 結果と考察

クラウンおよびブリッジの偏向度は0であり,金 銀パラジウム合金製の歯科補綴装置はMRI検査に おいて,力学的作用を受けないことが分かった.

キーパーは,磁化率の高さとMRI装置の磁場強度 と比較してキーパー自体の自重が非常に軽いため に磁場に強く吸引され,偏向度が安全とされる45度 以下になるまでには荷重を付加する必要があった.

しかし, 要した荷重量は最も大きなキーパーに対 しても9g重程度であった.すなわち, 合着材の合 着力と比較すると非常に小さく, キーパーが根面 板にきちんと合着されている場合には, MRI検査中 に受ける力学的影響はほとんどないと考えられた.

発熱試験での最大温度上昇は, 上顎第一大臼歯金 属冠0.3℃,ブリッジ0.5℃,上顎14歯連結冠0.9℃,

D600 キーパー付き歯科用 インプラント0.4℃,

D600キーパー付き根面板0.6℃であった.温度は時 間の経過とともに上昇したが, 20分間の温度上昇は どの補綴装置も許容範囲である 1.0℃を上回らず,

人体に影響を与える可能性が小さいと考えられた.

今回の測定の結果,金銀パラジウム合金製の歯科 補綴装置およびキーパー付き補綴装置はPhilips社 製 Achieva 3.0T NovaDual装置でのMRI検査におい て,危険性が少ない事が示唆された.

Ⅳ. 文献

1) 長谷川みかげ. MRIにおけるキーパーの安全 性 試 験 の 結 果 に つ い て . 日 磁 歯 誌 20:27-31,2011

2) American society for Testing and Materials (ASTM) International : Standard Test Method for Measurement of Magnetically Radio Frequency Induced Heating Near Passive Implants During Magnetic Resonance Imaging. 2002:

Designation : F2182-02a.

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根分岐部欠損Ⅲ度へ bFGF-2 配合ランダムトンネル型 β -TCP を移植 した後の歯周組織再生

○加藤 剛士,齋藤 彰,齋藤 恵美子*,中島 利徳,弓削 文彦,

上北 広樹,大畑 昇

北海道大学大学院歯学研究科口腔機能学講座リハビリ補綴学教室,

*北海道大学大学院歯学研究科口腔健康科学講座歯周・歯内療法学教室

Periodontal regeneration following FGF-2/random tunnel typed β-TCP of furcation class Ⅲ defects in dogs

○Kato T, Saito A, Saito E*, Nakajima T, Yuge F, Uekita H, Ohata N

Dept.of Oral Rehabilitation, Graduate School of Dental Medicine, Hokkaido University

*Dept.of Periodontology and Endodontology, Graduate School of Dental Medicine, Hokkaido

Ⅰ. 目的

近 年 、basic fibroblast growth factor-2

(bFGF-2)は歯周組織再生に有効であると報

告されている。

一方我々は、新生組織の侵入が生じやす いランダムトンネル型気孔を有するβ-TCP を開発して報告している。

本研究の目的は、ランダムトンネル型β

-TCPにbFGF-2を配合して根分岐部欠損Ⅲ度

へ移植し、歯周組織再生に与える影響を組 織計測によって検索することである。

Ⅱ. 方法

ビ ー グ ル 犬 の 下 顎 前 臼 歯(PM2, PM3, PM4)に根分岐部欠損Ⅲ度を外科的に作製し て、根面のスケーリングルートプレーニン

グおよび24%EDTA処理3分をおこなった。

その後、3群に分けて以下の処置を行った。

TF群 0.3%bFGF-2配合β-TCPを移植(N=8) F群 0.3%bFGF-2を根面塗布(N=8)

C群 移植を行わない(N=8)

すべての移植部位の全層弁を復位し縫合 した。観察期間を8週として、病理組織学 的観察、組織計測を行った。

Ⅲ. 結果と考察

術後の治癒は、肉眼的にすべての部位で概 ね良好であり、歯肉の炎症もほとんど認めら れなかった。

病理組織学的観察では、上皮の根分岐部へ の侵入は、TF群は2.0±2.3%で、C群あるい はF群に対して有意に少なかった。新生セ メント質距離は、TF群は84.1±8.9%で、C 群に対して有意に多かったが、F群とは有 意差は認められなかった。新生骨量は、TF 群とF群いずれもC群より有意に多かった。

さらにTF群はF群に対して有意に多かった。

病理組織計測及び統計分析

術後8週の歯周組織計測 (mean±SD) 計測項目 C F TF上皮の侵入距

(%) 48.1± 2.94 Ɨ 12.9 ± 3.5* 2.0 ± 2.3 Ɨ*

新生セメント

質距離(%) 23.4 ± 11.6 Ɨǂ 71.8 ± 3.6 ǂ 84.1± 8.9 Ɨ

新生骨量(%) 24.3± 9.4 Ɨǂ 51.5 ± 11.0* ǂ 75.8 ± 6.3 Ɨ*

Kruskal-Wallis test

bFGF-2は,歯周組織再生に有効であるこ

とが示され,さらに組織再生が移植法によ り影響を受ける可能性が示唆された。本研 究の根分岐部欠損III度モデルでは,bFGF-2 がランダムトンネル型β-TCPに配合するこ とによって,分岐部欠損にたいする新生骨 の形成領域が増大して,上皮の侵入を抑制 する可能性が示唆された。しかし,臨床的 には欠損形態は多岐にわたるので,より詳 細な検索と,残存β-TCPの吸収と骨組織へ の置換などについて,長期的な観察が必要 であると考えられた

Ⅳ. 文献

1) Murakami S, Takayama S, Ikezawa K, et al. Regeneration of periodontal tissues by basic fibroblast growth factor. J Periodont Res 1999;34:425-430.

2) Murakami S, Takayama S, Kitamura M, et al. Recombinant human basic fibroblast growth factor (bFGF) stimulates periodontal regeneration in class II furcation defects created in beagle dogs. J Periodont Res 2003;38:97-103.

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骨コラーゲンが歯の寿命に寄与する可能性

○松浦尚志,佐々木美智子,片渕三千綱,徳富健太郎,石川美咲,新田悟,

水町栄美理,佐藤博信

福岡歯科大学咬合修復学講座冠橋義歯学分野

Possibility that bone collagen contributes to tooth longevity

Matsuura T, Sasaki M, Katafuchi M, Tokutomi K, Ishikawa M, Nitta S, Mizumachi E, Sato H Section of Fixed Prosthodontics, Department of Oral Rehabilitation, Fukuoka Dental College

Ⅰ. 目的

歯の寿命の予測の成否は固定性補綴治療の長期 的な術後管理を大きく左右する.しかし,歯の寿 命には未知の因子を含めた多因子が関与しており,

その予測は非常に困難である.歯を支える顎骨の 個人差が歯の寿命に大きく寄与する可能性がある が,骨量の寄与に関しては賛否両論であり,骨質 の寄与の可能性は未だ検討されていない領域であ る.骨質決定の主要な因子であるコラーゲンは,

その量と翻訳後修飾の程度の違いによって密接に 骨強度を変化させることが広く認識されている1, 2). そこで,我々は「骨コラーゲンの量と翻訳後修飾 の程度の個人差が骨強度の個人差を生み,歯の寿 命を左右する」という仮説を立てた.この仮説の 信憑性を探るために,本研究ではヒト献体の下顎 骨を用いて,骨基質中のコラーゲンの量および翻 訳後修飾の一つであるリジン残基の水酸化の程度 と残存歯数との関係を調べることとした.

Ⅱ. 方法

福岡歯科大学での教育と研究のために献体され た男性27名(5693歳),女性21名(63103歳)

の計48名の下顎骨を用いた.残存歯は全て歯冠の 崩壊がなく,顕著な動揺も認められなかった.オ トガイから皮質骨を採取し,乾燥骨試料を作製し た.乾燥骨試料の重量測定の後,アミノ酸分析に よりコラーゲン量(μg/mg乾燥骨重量)を算出し,

リジン残基の水酸化の程度としてコラーゲン1モル 中の水酸化リジン量(mole/mole)を算出した.被 験者間の年齢差を考慮し,まず残存歯数,コラー ゲ ン 量 お よ び 水 酸 化 リ ジ ン 量 と 年 齢 と の 関 係

Pearsonの相関係数)を調べた.その後,コラー

ゲン量と水酸化リジン量を少量群(n=24)と多量 群 (n=24) に 分 け ,2群 間 の 残 存 歯 数 の 比 較 を Student’s t-testあるいはWelch’s t-testを用いて行った.

Ⅲ. 結果と考察

残存歯数は年齢との間に有意な負の相関を示し た (r=-0.451, p=0.001) が , コ ラ ー ゲ ン 量 ( r=-0.030, p=0.839) と 水 酸 化 リ ジ ン 量 (r=0.013,

p=0.933)は有意な相関を示さなかった.コラーゲ

ン量および水酸化リジン量の少量群と多量群の間 に年齢の有意差は認められなかった.コラーゲン 量に関して少量群(2.13±0.67本)と比べて多量群

4.83±1.04本)は有意 に多 い残存歯 数を 示した

p=0.034).水酸化リジン量に関しては少量群

3.33±0.99本)と多量群(3.63±0.83本)の間に有

意な残存歯数の相違が示されなかった(p=0.823).

歯の寿命に多因子が関与する中で,本研究によ って骨基質中のコラーゲン量が多いヒトほど残存 歯数が多い傾向にあることが見出され,コラーゲ ン量に関する仮説に信憑性がある可能性が示唆さ れた.骨強度が低下する骨粗鬆症では骨基質中の コラーゲン量も低下する3, 4)ことから,コラーゲン 量が多いほど骨強度も高まる可能性があり,その 結果歯の寿命に有利に働いている可能性が推測さ れる.また,骨粗鬆症ではコラーゲンのリジン残 基の水酸化が増加し3, 4),その増加によってコラー ゲンの線維形成が抑制される4).当初,リジン残基 の水酸化の程度が大きいほど歯の寿命が短くなる と予想していたが,リジン残基の水酸化の程度に 関する仮説には信憑性が見い出されなかった.原 因は不明であるが,本研究で計測されたリジン残 基の水酸化の程度が骨粗鬆症で認められるほどの

高い数値3, 4)でなかったことが結果に反映されてい

るかもしれない.

Ⅳ. 文献

1) Boskey AL, Wright TM, et al. Collagen and bone strength. J Bone Miner Res 1999; 14:330-335.

2) Burr DB. The contribution of the organic matrix to bone’s material properties. Bone 2002; 31:8-11.

3) Saito M, Fujii K, et al. Reductions in degree of mineralization and enzymatic collagen cross-links and increases in glycation-induced pentosidine in the femoral neck cortex in cases of femoral neck fracture. Osteoporos Int 2006; 17:986-995.

4) Tokutomi K, Matsuura T, et al. Characterization of mandibular bones in senile osteoporotic mice.

Connect Tissue Res 2008; 49:361-366.

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