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○長谷英明,新谷明一*,**、横山大一郎*、新谷明喜*、髙橋 裕

福岡歯科大学咬合修復学講座有床義歯学分野 *日本歯科大学生命歯学部歯科補綴学第2講座

**トゥルク大学

The influence of loading condition in Aramany class IV obturator prostheses on supporting alveolar bone and obturator prostheses moving

Hase H, Shinya A*,**, Yokoyama D*, Shinya A*, Takahashi Y

Division of Removable Prothodontics, Department of Oral Rehabilitation, Fukuoka Dental College

*The Nippon Dental University School of Life Dentistry at Tokyo Department of Crown and Bridge

**Department of Biomaterials Science, BioCity Turku Biomaterials Research Program Institute of Dentistry, University of Turku

Ⅰ. 目的

顎 欠 損 を 伴 う 患 者 の 顎 義 歯 補 綴 治 療 で は, 咀 嚼,嚥 下,発 音 等 の 機 能 回 復 が 必 要 と な る.特 に 顎 欠 損 の 大 き い 症 例 で は,少 数 の 残 存 歯 に 維 持 を 求 め る 必 要 が あ り,支 台 歯 へ の 負 担 過 重 が 原 因 と な る 歯 槽 骨 吸 収 が 生 じ る 可 能 性 が あ る.そ の た め,顎 義 歯 の 設 計 に あ た り 支 台 歯 の 負 担 に も 配 慮 す る こ と は 良 好 な 予 後 を 得 る た め に 重 要 で あ る.本 研 究 で は,三 次 元 有 限 要 素 法 (3D FEM) 解 析 を 用 い 、片 顎 臼 歯 を 支 台 歯 と し た2種 類 の ク ラ ス プ 形 態 を 有 す る AramanyIV級 顎 義 歯 を 用 い て , 荷 重 条 件 の 違 い が 支 台 歯 周 辺 の 支 持 歯 槽 骨 と 顎 義 歯 の 挙 動 に 与 え る 影 響 に つ い て 検 討 し た.

Ⅱ. 方法

Aramanyの 分 類1)IV級 の 顎 欠 損 様 式 お よ び ニ ッ シ ン 歯 列 模 型D50-555を 参 考 に 顎 義 歯 の レ プ リ カ を 作 製 し た2). そ の レ プ リ カ を 計 測 し, 24,25,26,27番 歯,支 持 歯 槽 骨,顎 堤 粘 膜 と , 義 歯 床,Co-Cr製 ク ラ ス プ か ら な る 抽 象 化 し た 右 側 上 顎 欠 損3D FEMモ デ ル を 構 築 し た . ク ラ ス プ の 設 計 は 双 子 鉤 と 連 続 ロ ー チI型 鉤 の2種 類 を 想 定 し た . 荷 重 条 件 は 欠 損 側 臼 歯 部 14,15,16,17番 歯 咬 合 面 相 当 部 に 歯 軸 方 向 か ら 咬 合 面 部 に 各50N,合 計200Nの 節 点 集 中 荷 重 を 設 定 し た も の と ,13,14,15番 歯 咬 合 面 相 当 部 に 各50N, 合 計150Nの 頬 側 に45°,近 心 側 に45° 傾 斜 さ せ た 節 点 集 中 荷 重 を 設 定 し , 支 持 歯 槽 骨 底 部 の 完 全 拘 束 を 設 定 し た . 材 料 特 性 値 は 過 去 の 報 告 を 参 考 に し た.モ デ ル の 構 築 及 び 解 析 は 汎 用 有 限 要 素 法 解 析 プ ロ グ ラ ム ANSYS10.0上 で 行 っ た . な お,本 解 析 で は 相 当 応 力 に よ る 評 価 を 行 っ た .

Ⅲ. 結果と考察

連 続 ロ ー チI型 モ デ ル で , 支 持 歯 槽 骨 に 認 め ら れ た 最 大 主 応 力 の 最 大 値 は , 垂 直 荷 重 の

場 合 は 双 子 鉤 モ デ ル と 比 べ55% 程 低 い 値 で あ り , 傾 斜 荷 重 の 場 合 は 双 子 鉤 モ デ ル と 比 べ 60% 程 低 い 値 で あ っ た . 顎義歯モデルの変位 量は両荷重条件とも連続ローチI型モデルの方が大 きかったが,傾斜荷重の場合は特に連続ローチI型 モデルにX軸方向(欠損側方向へ向かって水平的)

への変位が大きく認められた.双子鉤モデルは

24,25番歯隣接面のやや口蓋側寄りを中心に顎義歯

が変位しており,連続ローチI型モデルでは27番歯 遠心を中心に顎義歯が変位していたが,傾斜荷重 時には垂直荷重時に比べ,これらの変位の少ない 所により顕著に応力の集中が現れた.

以上の実験により,傾斜荷重は支持歯槽骨や顎 義歯の挙動に影響を及ぼし,少ない荷重にも関わ らず支持歯槽骨に高い応力の分布を示すことが明 らかとなった.また,両荷重条件どちらにおいて も連続ローチI型モデルの方が支持歯槽骨に認めら れた応力は低い値となった.

Ⅳ. 文献

1) Aramany MA. Basic principles of obturator design for partially edentulous patients. Part I:

Classification. J Prosthet Dent 1978;40:554-557.

2) Aramany MA. Basic principles of obturator design for partially edentulous patients. Part II; Design principles. J Prosthet Dent 1978;40:656-62.

1 ― 4 ― 19

組織非特異型アルカリフォスファターゼ G403S の解析

○牧田早織,Hiba A. Al-Shawafi*Sara Sultana,**,織田公光*,野村修一

新潟大学大学院医歯学総合研究科包括歯科補綴学分野,*口腔生化学,**顎顔面口腔外 科学

Biochemical Characterization of Tissue-non-specific Alkaline Phosphatase Mutant with a G403S Substitution

Makita SHiba A*Sara S**Oda K*Nomura S

Division of Comprehensive Prothodontics*Division of Biochemistry**Division of Oral-Maxillofacial surgeryNiigata University Graduate School of Medical and Dental Sciences

Ⅰ. 目的

低フォスファターゼ症は,骨や歯の石灰化の欠 陥に特徴づけられる先天性異常疾患である.臨床 症状では,ほとんど骨の石灰化が見られず子宮内 で死産する重症例から,乳歯や永久歯の早期脱落,

成人の偽骨折まで多様である.永久歯の喪失に対 する審美的・機能的回復には,骨格的症状の見ら れない軽症例で,インプラントによる修復も報告 されている.この疾患の原因は,組織非特異型ア ルカリフォスファターゼ(TNSALP)遺伝子の様々な 突然変異である.これまでに全世界で254例の変異 が知られており,そのうち,403番目に位置するグ リシンがセリンに変異した例が,周産期の患者で 報 告 さ れ た . 本 研 究 で は , こ の 変 異 型 酵 素

TNSALP(G403S)に注目して,その分子機序の解明

を目的に,その細胞生物学的特質を解析した.

Ⅱ. 方法

アミノ酸の置換がTNSALPに与える影響を検討 するにあたり,この変異を有する酵素を2つの実験 系で解析した.1つは一過性の発現系である

COS-Ⅰ細胞,もう1つは条件発現系であるCHO-K1 Tet-On 細胞(以下CHO細胞)を用い,それぞれに野生型 (Wild)と変異型酵素のTNSALP(G403S)を発現させ た.なお,条件発現系では,DOX(ドキシサイクリ ン)の用量依存的に遺伝子発現を誘導した.解析方 法は,p-nitrophenylphosphateを基質とした活性測定 や蛍光抗体法染色,そして,immunoblottingを用い た.その他,ショ糖密度勾配遠心法によりG403S が細胞内においてどのような状態で存在するかを 検討した.

Ⅲ. 結果と考察

Wildに比べG403Sは,COS-Ⅰ細胞,CHO細胞に おいてアルカリフォスファターゼの活性は著しく 減少した().また,合成されたG403Sは,

COS-Ⅰ細胞では非還元下で66kDa(未熟型) 80kDa(成 熟型)に加え高分子量凝集物を観察した.しかし,

CHO細胞ではWildと同様,80kDa(成熟型)のみを観 察し,ホスファチジルイノシトール特異的ホスホ

リパーゼ処理により,細胞表面に出現することを 確認した.しかし,ショ糖密度勾配遠心法の解析 により,Wildは非共有結合による二量体を形成し ているのに対して,G403Sはモノマーとして存在 していることが判明した.以上より,アミノ酸の 置換は,細胞内輸送にはほとんど影響を与えない と考えられるが,二量体形成には著しい影響をも たらすこと,そしてその結果,酵素活性を失うこ とが明らかになった.また,この二量体形成の阻

害には,TNSALPにおける403番目のアミノ酸が位

置するcrown domainが,構造上サブユニットの中

央に位置していることが大きく関わっていると推 測される.これらのことから,G403Sは骨芽細胞 や肥大軟骨細胞の表面に発現すると考えられるが,

Wildとは異なり完全に活性を失っているために,

石灰化不全に代表される重篤な臨床症状(致死的)

を引き起こしたと考察される.

Ⅳ. 文献

1) Mornet E, Stura E, Lia-Baldin AS et alStructural evidence for a functional role of human tissue nonspecific alkaline phosphatase in bone mineralization J Biol Chem 276 (2001) 31171–

31178

アルカリフォスファターゼの酵素活性 (CHO K1 Tet-On 細胞)

1 ― 4 ― 20

Na

+

/H

+

exchanger 10 を標的とした顎堤の骨吸収抑制法に 関する研究

○峯 裕一,牧平清超*,首藤崇裕*,寺田善博*,二川浩樹

広島大学大学院医歯薬学総合研究科口腔健康科学講座口腔生物工学分野

*九州大学大学院歯学研究院口腔機能修復学講座クラウンブリッジ補綴学分野 Study on the the Inhibitory Treatment of Alveolar Bone Resorption Targeting Na+/H+ exchanger 10

Mine Y, Makihira S*, Shuto T*, Terada Y*, Nikawa H

Department of Oral Biology and Engineering, Division of Oral Health Science, Graduate School of Biomedical Sciences, Hiroshima University

*Section of Fixed Prosthodontics, Division of Oral Rehabilitation, Faculty of Dental Science, Kyushu University

Ⅰ. 目的

歯槽骨は,天然歯をはじめ義歯床やインプラン トを支持するために重要な役割を果たしている. しかしながら,歯周病やインプラント周囲炎,義 歯による不適切な荷重が原因となり高度な歯槽骨 の吸収が引き起こされることがある.このような 病態では,破骨細胞が異常に活性化され骨吸収が 促進していると考えられている1).成熟した破骨細 胞はイオンポンプやイオンチャネルによりH+Cl -を細胞外に放出することで細胞外環境を酸性化し 骨を吸収する.

本研究では,イオンポンプの一つであるNa/H exchangerNHE)ファミリーの中でも,特に破骨 細胞に高発現するNHE10に着目し,抗NHE10モノ クローナル抗体のin vitroおよびin vivoにおける破骨 細胞の活性抑制効果を検討した結果、興味ある知 見を得たので報告する.

Ⅱ. 方法

本実験には RAW264.7 細胞を用いた.RAW264.7 細胞は,可溶性 RANKL 存在下で培養することで TRAP 陽性多核巨細胞へと分化する破骨細胞のセル ラインである.RAW264.7 細胞を可溶性 RANKL 存 在下で培養し, NHE10 の発現変化および細胞局在を RT-PCRreal-time RT-PCRwestern blotting,免疫染 色法および免疫電子顕微鏡法を用いて検討した.ま た,RAW264.7細胞に対してNHE10-RNAi処理を行 った後,可溶性RANKL 存在下または非存在下で培 養した.同様に抗 NHE10 モノクローナル抗体を添 加後,可溶性 RANKL 存在下または非存在下で培養 した. 各条件で培養した RAW264.7 細胞に対して,

TRAP染色および骨吸収活性評価を行った. 次に,抗NHE10モノクローナル抗体がLPS誘導 性 骨 吸 収 に 与 え る 影 響 に つ い て 6 週 齢 雄 性 C57BL/6jcl 系マウスを用いて検討した(広島大学動 物実験倫理員会No.A10-98).抗NHE10モノクロー ナル抗体またはコントロールラットIgG1日毎に 計4回マウスに投与した.また,初回の抗体投与か

1日および4日後にE.coli由来のLPSをマウスに

投与した.初回の抗体投与から8 日後にマウスを屠 殺後,大腿骨の組織学的解析を行った.

Ⅲ. 結果と考察

可溶性 RANKL 刺激は,RAW264.7 細胞における

NHE10の発現を RNAおよびタンパク質レベルで促

進した.また,免疫染色および免疫電子顕微鏡法解 析によって,NHE10タンパク質が可溶性RANKLで 誘導されたRAW264.7の細胞と細胞が融合している 箇所に多く発現していることが判明した.さらに,

NHE10-siRNA で処理した RAW264.7 細胞に可溶性 RANKL を添加した場合,negative-siRNA で処理し た群と比較して TRAP陽性多核巨細胞の出現数は有 意に減少した.抗 NHE10 モノクローナル抗体を添 加した場合においても NHE10-siRNA 処理と同様の 結果を得た.

一方,LPS投与により骨吸収を誘導したマウス において,コントロールラットIgGLPSを投与し た群と比較して抗NHE10モノクローナル抗体と LPSを投与した群では,大腿骨におけるTRAP陽性 細胞数が減少していた.

以上の結果より,NHE10は破骨細胞の細胞融合 および歯槽骨をはじめとした骨吸収に関与してい ることが示された.さらに抗NHE10モノクローナ ル抗体は歯槽骨の骨吸収抑制物質として応用でき る可能性が示唆された.

Ⅳ. 文献

1) 牧平清超,Kawai T,二川浩樹ほか.顎堤吸 収抑制法の開発.補綴誌 200549147. 図 TRAP染色による多核巨細胞形成の評価 1 ― 4 ― 21