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{第1報}

S- PRG フィラー含有 MMA レジンの口腔内細菌への影響

○上松信助,砂治よう子,山本良子,瀧田史子,東野嘉文,苦瓜明彦,岩堀正俊,都尾 元宜

朝日大学歯学部口腔機能修復学講座歯科補綴学分野

Influence of MMA resin including S-PRG filler on oral bacteria

Uematsu SIsaji YYamamoto RTakita HHigashino YNigauri AIwahori MMiyao M Department of Prosthodontics School of Dentistry Asahi University

Ⅰ. 目的

MMA常温重合レジンは,臨床において使用頻度 が極めて高い材料の一つである.しかし,細菌付 着やプラーク形成も大きい材料であり,長期間使 用する症例において2次齲蝕や歯周病の問題が懸念 される.本研究ではMMA常温重合レジンの細菌付 着およびプラーク形成の抑制を目的とした酸反応 性フッ素含有ガラスフィラー(以下,SPRG1) を含有したMMA常温重合レジンを試作し,in vitro にて細菌付着性試験を行うと共に口腔内細菌等へ の影響を観察した.

Ⅱ. 方法 1.供試材料

本実験では試作したMMA常温重合レジンは S-PRGフィラーをそれぞれ5wt%10wt%20wt%含 有したものを使用した.コントロールとしては,

S-PRGフィラーを含有しないMMA常温重合レジ

ン(以下contと略す)を用いた.

2. 細菌付着性試験(in vitro)

供試細菌にはStreptococcus mutans ATCC25175 以下S.mutans)を用いた.Thymidine3Hでラベルし

S.mutansを液体培地に接種し,18時間嫌気条件下

で培養した.ラベルされた調整菌液中に72時間ヒ ト唾液に浸漬した各試料と無処理の各試料を2時間,

4時間,8時間浸漬し,シンチレーションカウンタ ーにて測定した.2

3.口腔内細菌等への影響

供 試 細 菌 はPorphyromonas gingivalis (以 下P.

gingivalis)およびCandida albicans(以下C.albicans) を用いた.

供試細菌を寒天培地にて培養後,調整菌液を作製 した.血液寒天培地上に調整菌液を滴下し塗布後,

試作MMAレジン片を留置,培養し周囲への影響 を観察した.

Ⅲ. 結果と考察

1.細菌付着性試験(in vitro)

混合菌液での細菌付着性試験の結果,試料を唾液 浸漬した群では,2時間,4時間のS.mutans5wt%

試料,10wt%試料,20wt%試料にコントロールと比

較して有意に細菌付着の低下を認めた.また,供 試細菌単体菌液において,S.mutansでは試料を唾液 浸漬した群で2時間,4時間,8時間の5wt%試料,

10wt%試料,20wt%試料に有意に細菌付着の低下を

認めた.

この結果から今回試作した酸反応性フッ素含有 ガラスフィラー(S-PRG)を含有したMMAレジンは,

抗プラーク性を有する材料であり,鉤歯に隣接す る床部に使用することにより鉤歯の齲蝕罹患を減 少させ,鉤歯の保存に有用である可能性が示唆さ れた.

Ⅳ.文献

1) 山本宏治,大橋静江,作誠太郎.抗プラーク性 を有する機能性高分子材料の開発.岐歯学誌.

200430115-132

2) Saku SKotake HScougall-Vilchis R Ohashi SHotta MHoriuchi SHamada KAsaoka KTanaka E and Yamamoto KAntibacterial activity of composite resin with glass–ionomerfiller particlesDent Mater J201029193-198

細菌付着性試験 1 ― 4 ― 11

ノンクラスプデンチャー用材料の諸性質

○濵中一平,岩本実紗,宮口 嚴,勝俣辰也,池浦政裕,清水博史,髙橋 裕

福岡歯科大学咬合修復学講座有床義歯学分野 Properties of denture base resins for non-clasp denture

Hamanaka I, Iwamoto M, Miyaguchi T, Katumata S, Ikeura M, Shimizu H, Takahashi Y

Division of Removable Prosthodontics, Department of Oral Rehabilitation, Fukuoka Dental College

Ⅰ. 目的

義歯床用材料として数種の熱可塑性樹脂,いわ ゆるノンクラスプデンチャー用材料が臨床で使用 されている.このノンクラスプデンチャー用材料 には,ポリアミド系樹脂,ポリエチレンテレフタ レート系樹脂,ポリカーボネート系樹脂,アクリ ル系樹脂などがある.しかし,これらの材料の比 較検討を行った研究はあまりみられない.本研究 の目的は,ノンクラスプデンチャー用材料の諸性 質を検討することである.

Ⅱ. 方法

実験方法として機械的性質を検討するため三点 曲げ試験とシャルピー衝撃試験を行い,常温重合 レジンとの接着性を検討するため,剪断接着試験 を行った.

実験材料は,ノンクラスプデンチャー用床用材 料として,1) ポリアミド系樹脂(バルプラスト,バ ルプラストジャパン,VAと略す)2) ポリアミド 系樹脂(ルシトーンFRS,デンツプライ三金,LUと 略す)3) ポリエチレンテレフタレート系樹脂(エ ステショット,アイキャスト,ESと略す)4) ポ リカーボネート系樹脂(レイニング樹脂,東伸洋行,

REと略す)5) アクリル系樹脂(アクリトーン,ハ イデンタルジャパン,ATと略す)5種を,対照と して従来の加熱重合型アクリルレジン(アクロン,

GCACと略す)を使用した.

ISO 1567:1999/Amd 1:2003に準じて試料を作製し,

三点曲げ試験およびシャルピー衝撃試験を行った.

試料数は各10個とした.三点曲げ試験は,オート グラフを用いて,比例限での曲げ強さ(MPa)および 曲げ弾性係数(GPa)を求めた.シャルピー衝撃試験 は , シ ャ ル ピ ー 衝 撃 試 験 装 置 を 用 い 衝 撃 強 さ (KJ/m2)を測定した.

また,各種ノンクラスプデンチャー用材料を耐

水研磨紙# 400で平面研磨した剪断接着試験用試料

を作製し,直径5 mmの円形の被着面に常温重合レ ジン(ユニファストⅢ,GC)を築盛した.37℃水中 に24時間保管後,オートグラフを用いて剪断接着

強さ(MPa)を測定した.試料数は各10個とした.

Ⅲ. 結果と考察

弾性係数は,AC>RE>ES>LU=AT>VAであった.

比例限での曲げ強さは,AC>ES=RE>LU>AT>VA であった.衝撃強さは,LU>RE>VA=ATES=AC であった.剪断接着強さは,ES=ATAC=RE

LU=VAであった.

以上のことから,ノンクラスプデンチャー用材 料は,比較的硬いもの,中等度のもの,比較的軟 らかいものの3つに分けることが出来た.比較的硬 いものは,ESREであり,両者ともACと同等か それ以上の剪断接着強さを示し,REは耐衝撃性が あった.中等度のものは,LUATであり,LUは 剪断接着強さが低かったが,耐衝撃性は高かった.

比較的軟らかいものは,VAであり,耐衝撃性や剪 断接着強さが低く,変形しやすい特徴を示した.

ノンクラスプデンチャー用材料には多種あり,

その性質も材料ごとに特徴があるため,それらを 理解した上で義歯の設計や支台歯の状態を考慮し,

症例にあった最適な材料を選択する必要があると 考えられる.

Ⅳ. 文献

1) Hamanaka I, Takahashi Y, Shimizu H.

Mechanical properties of injection-molded thermoplastic denture base resins. Acta Odontol Scand. 2011;69:75-9.

2) Takahashi Y, Hamanaka I, Shimizu H. Effect of thermal shock on mechanical properties of injection-molded thermoplastic denture base resins. Acta Odontol Scand. In print.

1 ― 4 ― 12

各種義歯床用アクリルレジンの熱衝撃試験後の機械的性質

○岩本実紗,濵中一平,髙橋智子,新郷由紀子,中 四良,小柳進祐,清水博史,髙橋 裕

福岡歯科大学咬合修復学講座有床義歯学分野

Mechanical properties of denture base acrylic resins after thermocycling.

Iwamoto M, Hamanaka I, Takahashi T, Singou Y, Naka S, Koyanagi S, Shimizu H, Takahashi Y Division of Removable Prosthodontics, Department of Oral Rehabilitation, Fukuoka Dental College

Ⅰ. 目的

現在,重合様式の異なる各種の義歯床用アクリ ルレジンが臨床で用いられている.それらは,技 工手順の簡便さや重合時間,収縮率などさまざま な理由から選択されている.アクリルレジンは重 合様式の違いにより添加物や重合度等が異なるた め,長期使用時に機械的性質が変化することが推 測される.本研究の目的は,重合様式の異なるア クリルレジンの熱衝撃試験後の機械的性質を検討 することである.

Ⅱ. 方法

実験材料は,1)加熱重合型アクリルレジン(アク ロン,GCACと略す)2)マイクロ波重合型アク リルレジン(アクロンMCGCMCと略す)3)常 温 重 合 型 ア ク リ ル レ ジ ン(パ ラ プ レ ス バ リ オ , Heraeus KulzerPAと略す)を使用した.重合条件 はACでは水中7090分後に10030分重合を行い,

その他のものはメーカーの指示通りに重合を行っ た.その後,ISO 1567:1999/Amd 1:2003に準じて試 料を作製し,三点曲げ試験を行った.三点曲げ試 験用試料は,64 x 10 x 3.3 mmに作製した.試料は 5 ℃と55 ℃の水中に交互に1分間浸漬する水中熱 サイクル試験を0回と10,000回負荷した.試料数は 各10個とした.三点曲げ試験は,オートグラフ

(AGD-J,島津製作所,東京)を用いクロスヘッドス

ピード: 5.0 mm / min にて行い,最大応力(MPa)お よ び 比 例 限 で の 曲 げ 強 さ(MPa), 曲 げ 弾 性 係 数

(GPa)を求めた.測定結果は,一元配置分散分析お

よ び 多 重 比 較 検 定 (Newman-Keuls post-hoc comparisonp =0.05)により統計処理を行った.

Ⅲ. 結果と考察

水中熱サイクル試験後に,最大応力はACおよび PAが有意に低下し,MCは水中熱サイクル試験前 後で差はみられなかった(1).比例限での曲げ強 さは,ACおよびMCが有意に低下したが,PAは水 中熱サイクル試験前後で差はみれれなかった(2). 弾性係数は,すべての床用レジンが有意に高くな った(3)

本研究では,熱衝撃試験である水中熱サイクル 試験を用いた.水中熱サイクル試験は吸水や加水 分解,温度変化等による影響を用いて材料の耐久 性を推測することができる試験である.

また,評価方法として比例限での曲げ強さを用 いることで永久変形を検討した.

本研究の結果から水中熱サイクル10,000回後で は,すべての重合様式で弾性係数が有意に高くな り,最大応力はMCを除いて有意に低くなるため,

アクリルレジンは,長期使用することで硬くなり 脆弱になることが推測された.比例限での曲げ強 さはPAを除いて有意に低くなった.また,過去の 研究1)から長期水中に浸漬することでPAは有意に 低くなることが示唆されており,アクリルレジン は,長期使用することで永久変形をおこしやすく なる傾向が推測された.

これらのことから重合様式の異なるアクリルレ ジンは,初期の機械的性質に違いらみられ,さら に熱衝撃試験後に機械的性質が変化することが明 らかになった.

Ⅳ. 文献

1) Takahashi Y, Chai J, Kawaguchi M.

Equilibrium strengths of denture polymers subjected to long-term water immersion. Int J Prosthodont. 1999 ;12:348-52.

1 最大応力

2 比例限での曲げ強さ

3 弾性係数 1 ― 4 ― 13

耐衝撃性義歯床用レジンの開発

○藤本達也

株式会社ジーシーデンタルプロダクツ Development of high impact denture base resin Fujimoto T

GC DENTAL PRODUCTS CORP.

Ⅰ. 目的

義歯床用材料において,破折という問題があり,

義歯作製時の石膏からの掘り出しで破折し,歯科 医師および歯科技工士に再設計が余儀なくされる.

そこで,破折しにくい材料として,耐衝撃性レジ ンが広く使用されているが,まだ十分とは言えな い.

そこで,本研究ではさらに耐衝撃性を向上させ た材料の開発を行い,ダインスタット衝撃値およ び破壊靱性特性を測定し,市販の加熱重合型レジ ンとの比較を行ったので報告する.

Ⅱ. 方法

使用した材料は,試作レジン(GC)および市販さ れている耐衝撃性加熱重合型レジンのラクソン (GC)を使用した.従来の加熱重合型レジンのアク ロン(GC)との比較検討も行った.

ダインスタット衝撃試験の評価としては,各材 料をメーカー指定条件にて重合を行い,自動切断 機でカットして,耐水研磨紙を用いて#400#600

および#1200の順に湿式研磨後,研磨用コンパウン

(5μmア ル ミ ナ 縣 濁 液)を 用 い て 試 験 片 が 幅 (15±0.2mm)×厚 さ(2.5±0.2mm)×長 さ(10±2mm)に な るように調整した.ダインスタット衝撃試験機 (No.500:東洋精機社製)に試料を設置し,0.49Jのエ ネルギー量にて衝撃破壊試験を実施した.

破壊靱性の評価としては,ISO 20795-1に従い,

試験片を調整し,オートグラフ(AG-5KNXplus:島 津製作所社製)を使用して測定を行い,最大応力係 数および全破壊仕事の算出を行った.

各試験により得られたデータは,Fisher’s PSLD の多重比較検定により比較検討を行った.

Ⅲ. 結果と考察

1.ダインスタット衝撃値

耐衝撃性レジンであるラクソンのダインスタッ ト衝撃値は,アクロンと比較して高い値を示して いるが,試作品はラクソンよりもさらに高い値を 示し,統計的に有意差が認められた(1)

2.破壊靱性

試作品はラクソン以上の最大応力拡大係数を示 し,統計的に有意差が認められた(1)

全破壊仕事についても,試作品はラクソンの1.6 倍以上の値を示し,統計的に有意差が認められた.

以上の結果より,試作品は現在市販されている 加熱重合型レジンのアクロンはもちろん,耐衝撃 性レジンのラクソンよりもダインスタット衝撃値,

破壊靱性特性が向上しており,臨床において破折 しにくく,十分な耐衝撃性を有する優れた材料で ある可能性が示唆された.

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18

試作品 ラクソン アクロン

ダインスタット衝撃値(kJ/m2 ) (n=6) **: p<0.01 *: p<0.05

*

**

**

1.各試料のダインスタット衝撃値

1.各試料の破壊靱性値 1 ― 4 ― 14