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○坪田有史,深川菜穂*,佐々木圭太*,西村 康*,山崎弘光*,牧野泰千,

橋本 興,山本鉄雄

東京支部,*鶴見大学歯学部クラウンブリッジ補綴学講座 A Clinical Survey of post and cores

-Part 5-

Tsubota YFukagawa N*Sasaki K*Nishimura Y*Yamazaki H*Makino YHashimoto KYamamoto T Tokyo Branch

*Department of Fixed Prosthodontics, Tsurumi University School of Dental Medicine

Ⅰ. 目的

鶴見大学歯学部附属病院補綴科診療室において,

支台築造の術式および材料の選択などの実状を把 握する目的で,過去4回,調査を行い報告してきた.

2001年に実施した第4回調査1)から約10年が経過し,

その間にファイバーポストの認可や接着性材料の 改良が進んでいる.そこで最近の支台築造の実状 について,20112月〜9月の8ヶ月間の調査を行っ たので,その結果を報告する.

Ⅱ. 方法

調査対象は,20112月〜9月の8ヶ月間に鶴見大 学歯学部附属病院補綴科において支台築造を施さ れた支台歯とした.調査方法は,術者へのアンケ ート方式とし,支台築造を装着後,調査用紙に記 入を依頼し,提出された調査用紙を集計した.調 査項目は,対象患者の基礎情報(年齢,性別),

対象歯の状態,選択された支台築造の種類,その 方法などとした.そして,今回集計した結果と,

1977198619932001年における過去4回の調査 結果とを比較検討した.

Ⅲ. 結果と考察

今回の調査対象は,2490歳,平均年齢55.9± 14.2歳の患者209名,支台歯総数260歯であった.

支台歯を部位別に分類すると,前歯93歯,小臼歯 76歯,大臼歯91歯であった.

選択されていた支台築造方法は,金属鋳造体に よる支台築造(以下,鋳造支台築造)とコンポジ ットレジン支台築造(以下,レジン支台築造)の 2種類のみであった(図).その内訳は,鋳造支 台築造が116歯(45%),レジン支台築造が144

55%)であった.この結果を過去4回の調査と 比較すると鋳造支台築造は,1977年で86%,1986 年で68%,1993年で92%,2001年で39%と2001年 に1993年から半減していた比率が今回調査で若干 増加した.一方,レジン支台築造は,1977年で 13%,1986年で28%,1993年で6%であったが,前 回調査の2001年で61%とその比率が著しく増加し たが,今回調査で若干減少した.このことから

1993 年から2001年の間にレジン支台築造の信頼性

が高くなり,支台築造の選択に大きな変化があっ た.その後,近10年の間に若干の減少はあるが,

その傾向は引き続いていることが分かった.

一方,鋳造支台築造時に使用されたセメントの 選択は,接着性レジンセメントが全体の92%を占 め,前回調査の2001年で71%と最も多く選択され ていた接着性レジンセメントがさらに21%増加し ていた.1977年から2011年の約35年で鋳造支台築 造を装着するセメントの選択に関して,その変化 は調査毎に大きく変化していた.しかし,今回の 結果で接着性レジンセメントが前回調査からさら に高い頻度で選択されていたことはその背景を考 えると興味深い結果であった.

レジン支台築造は,直接法が25歯,間接法が119 歯で行われていた.したがって,間接法は83%と 高い比率で選択されていた.また,ファイバーポ ストは45歯で併用されていた.

この一連のデータは1施設での限られたデータ であるため,さらに多施設で調査を行い,その経 過を含め,支台築造の実状を把握する所存である.

Ⅳ. 文献

1) 坪田有史,深川菜穂,西村 康ほか.支台築

造の比較統計的観察 第4報.補綴誌48394

4032004

0% 20% 40% 60% 80% 100%

2011

n=260) 2001

n=311) 1993

n=393) 1986

n=308) 1977

n=265)

鋳造体 成形材料 既製品 その他

図 支台築造方法の変遷 1 ― 4 ― 40

ニッケルアレルギーモデルマウス樹状細胞における 低分子量 G 蛋白質の動態解析

○渡邉 恵,内藤禎人,友竹偉則,市川哲雄

徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部口腔顎顔面補綴学講座

Analysis of G-protein in Dendritic Cells in Nickel Allergy Mouse Model Watanabe MNaito Y, Tomotake Y, Ichikawa T

Department of Oral and Maxillofacial Prosthodontics, The University of Tokushima Institute of Health Biosciences

Ⅰ. 目的

我々はこれまでにニッケル(nickel: Ni)を耳介 と腹腔に2回投与する方法でNiアレルギーモデルマ ウスを作製し,病態解析を行ってきた.

その中で,樹状細胞(dendritic cells: DC)が抗原 提示細胞として,Niを認識して何らかのプロセス を経てT細胞に抗原提示している可能性を明らかに した1).また,Niアレルギー発症過程においてDCMAPキナーゼカスケードを介してアレルギー反 応を制御していることを明らかにした1)2)3) Niアレルギーが病態として成立するには,DCが 抗原を認識して所属リンパ節へ遊走する必要があ り,その過程にはケモカイン・ケモカインレセプ ターおよびインテグリン等の接着分子が関与して いることが知られている.今回,我々は細胞の遊 や骨格調整に関わる因子として知られるRhoファミ リー低分子量Gタンパク質RhoARac1に注目し,

モデルマウスでのNiアレルギー発症過程における DCとケラチノサイト(keratinocyte: KC)上のGタ ンパク質の動態,およびNiで刺激したDCにおける

in vitroでのGタンパク質の動態を解析したので報告

する.

Ⅱ. 方法

1. アレルギーマウス作製方法

生後 68 週齢の C57Bl/6JB6)雌マウス腹部 皮下に1 μmol/ml NiCl250 μlを投与し感作した.2 週間後,右耳介皮下に0.2 μmol/ml NiCl220 μlを投 与し,48 時間後に惹起されたアレルギー反応を耳 介腫脹量により測定した.

2. DC培養方法

RPMI-1640 中で培養する B6 骨髄に 10 ng/ml

GM-CSF3/1週間添加して分化誘導した.

3. 低分子量Gタンパク質解析方法 1) In vivo

上記方法 1 で作製したマウス耳介皮膚からチオ シアン酸アンモニウムを用いて上皮シートを作製 した.作製した上皮シートをRhoAおよびRac1抗 体で染色し,DC およびKC に発現するG タンパ ク質を共焦点顕微鏡で観察した.

2) In vitro

上記 2 の方法で分化誘導した DC1 μmol/ml NiCl2で刺激した.DC 上に発現する RhoA および Rac1を時間経過と共に共焦点顕微鏡,ELISA法,

およびウェスタンブロット法で解析した

Ⅲ. 結果と考察

1. Niアレルギーを誘導した直後のマウス耳介皮 膚から作製した上皮シートでは,KC上にRhoAお よ びRac1の 活 性 化 を 認 め た . ま た ,DC上 に も RhoAの活性化を認めた.しかし,耳介腫脹量が最 大となった2448時間後の耳介シートではどちら のGタンパク質の活性化にも減弱を認めた.

2. In vitroで分化誘導したDCNiで刺激すると,

直後にRhoAの活性化を認めたが,時間経過と共に 活性化は減弱した.

Rhoファミリー低分子量G タンパク質は,細胞 骨格の制御を通して細胞の形態調節に関わり,細 胞の遊走に関与していることが知られている.今 回の実験の結果から,DC およびKC 上の Gタン パク質の活性化がNiアレルギーの発症過程,特に DCの所属リンパ節への遊走に何らかの役割を果た している可能性が示唆された.

Ⅳ. 文献

1) Watanabe M, Ishimaru N, Ichikawa T et al.

A novel DC therapy with manipulation of MKK6 gene on nickel allergy in mice. PLoS One, Apr 22; 6(4): e19017, 2011.

2) 渡邉 恵,実験的ニッケルアレルギーモデル における樹状細胞の役割とT細胞の機能解析,

四国歯誌,第17巻,第1号,2004

3) 渡邉 恵,石丸直澄,市川哲雄ほか,ニッケル

による樹状細胞抗原提示機能の増強,臨床免 疫・アレルギー科,第46巻,第3号,2006 1 ― 4 ― 41

Rothia mucilaginosa 選択培地の開発とその口腔内分布

○内堀聡史,高田和子*,金子珠美,小林平,會田雅啓

日本大学松戸歯学部クラウンブリッジ補綴学講座,*口腔微生物学講座

Development of selective medium and distribution of Rothiamucilaginosa in oral cavity Uchibori S Takada K* Kaneko TKobayashi TAida M

Departments of Crown Bridge Prosthodontics and *Oral MicrobiologyNihon University School of Dentistry at Matsudo

Ⅰ. 目的

Rothia 属菌はデンタルプラークの常在菌であるが,

近年,心内膜炎患者より分離され日和見感染菌とし ての可能性が報告されている.ヒトの口腔から分離 されるRothia属菌種は, R. mucilaginosa1)R.

dentocariosa2菌種である.しかしながら,Rothia 属の口腔内における分布およびその検出比率に関す る報告はほとんどない.そこで,日和見感染起因菌 としての見地から,R. dentocariosaR. mucilaginosa の口腔内分布およびその検出比率を検索し,易感染 宿主である高齢者および義歯装着者における口腔内 分布を比較検討することは日和見感染予防のために 重要であると考えた.しかし,口腔はStreptococcus 属菌およびActinomyces属菌が優勢を占め,Rothia 属菌の検出が困難であることから,この研究を遂行 するためには,Rothia属菌の選択培地の開発が必要 であると考え実験を行った.R. dentocariosaについ ては第53回歯科基礎医学会学術大会(H.239) で発表した.今回は,R. mucilaginosaについて検討 した.

Ⅱ. 方法 1. 供試菌株

主 に Rothia mucilaginosa JCM10910TRothia dentocariosa JCM3067Tを実験に供した.その他主要 口腔常在菌を用いて培地の選択性を検討した.

2. 基礎培地の検討

BHI 寒 天 培 地 ,BHI 血 液 寒 天 培 地 , Heart

Infusion(HI)寒天培地および普通寒天培地におけるR.

mucilaginosa の発育を検討するために供試菌液を

0.05M トリス塩酸緩衝液(pH7.2)にて 10 倍段階希釈

し,それぞれの培地に接種し,37℃,72時間好気培 養した.培養後,培地に発育した集落を算定し集落

形成単位(CFU)を算出した.

3. R. dentocariosa およびActinomyces属菌の抑制 亜セレン酸ナトリウムを0.01%,0.0075%および

0.005%になるようにそれぞれ加えたHI寒天培地に

菌液を接種し,37℃,72時間好気培養後,CFUを 算出し,コントロールと比較検討した.

4. Neisseria属菌の抑制

コリスチンを20µg/ml10µg/mlおよび5µg/ml濃度 になるようにそれぞれ加えたHI寒天培地に菌液を 接種し,37℃,48時間好気培養後CFUを算出し,

コントロールと比較検討した.

5. PCR法によるR. mucilaginosaの菌種同定 純培養した集落を 2.0ml チューブ300µl 滅菌精製 水中に懸濁後,10分間煮沸し,遠沈した上清5µlを テンプレートとし使用した.PCR条件は95℃;5

98℃;1566℃;1 分)35サイクル 66℃;7 分で行った.

Ⅲ. 結果と考察

R. mucilaginosaHIBHI血液寒天培地と同等 の発育を示し,また糖を含まないのでStreptococcus 属菌はほとんど排除できた.そこで選択培地の組成 は,HI寒天培地に亜セレン酸ナトリウム,コリスチ ンを加えたものとした. 選択培地におけるRmucilaginosa 5菌株の回収率は平均85.1%(68.7100%)であった.また,供試R. dentocariosaの阻害 率は平均98.2%(94.9100%)以上であった.対象 者3名における刺激唾液中のR. mucilaginosaの検出

比率はBHI-Y寒天培地に増殖した総菌数の6.9

19.4%であった. なお,選択培地中には多くの小コ ロニーが発育するがR. mucilaginosaはその大きさ,

色調から容易に判別可能だった。

選択倍地に形成された集落はPCR法にていずれ

R. mucilaginosa と同定された.以上の結果より,

この開発した選択培地はR. mucilaginosaの分離に有 用であると考えられた.

Ⅳ. 文献

1) Collins MD, Hutson RA, Baverud V, Falsen E:

characterization of a Rothia-like orgarism from a mouse : description of Rothia nasimurium sp. nov. and

reclassification of Stomatococcus mucilaginosus as Rothia mucilaginosa comb. nov. Int J Microbiol50:1247-1251, 2000.

1 ― 4 ― 42